特許第6372436号(P6372436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372436
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】半導体装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20180806BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 21/22 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01L29/78 301G
   H01L21/302 101B
   H01L21/22 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-141764(P2015-141764)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-27975(P2017-27975A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−356554(JP,A)
【文献】 特開平06−349801(JP,A)
【文献】 特開平09−197694(JP,A)
【文献】 特開平10−301310(JP,A)
【文献】 特開2009−188257(JP,A)
【文献】 特開平04−023435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/22
H01L 21/3065
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の作製方法であって、
カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で、フッ素を含むガスを用いてシリコン基板をエッチングした後、前記プラズマエッチング装置をアノードカップリング方式に切り替え、前記シリコン基板にフッ素を含むガスを用いてプラズマ処理を行い、フッ素を前記シリコン基板の表面に堆積させる工程と、
前記フッ素が堆積されたシリコン基板に熱処理を行い、前記堆積されたフッ素を前記シリコン基板の中に拡散する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
前記熱処理を800℃以上、1050℃以下で行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲート酸化膜における酸化膜/シリコン界面やpn接合構造の表面などでは、界面準位が電気特性に大きく影響するため、界面準位密度の低減が必要である。MOS(Metal Oxide Semiconductor)構造を例にとると、界面準位密度が大きくなるとキャリア移動度に影響したり、閾値電圧の変動の原因となる。また、pn接合構造では、表面再結合速度(表面発生電流)として影響を及ぼす。
【0003】
界面準位密度の低減方法としては、古くは450℃程度の温度にて水素を含むガスで熱処理する、いわゆるシンター処理が行われてきた。しかし、水素は非特許文献1に記載されているように、熱処理により脱離しやすく、効果が限定的になる可能性がある。
【0004】
この水素によるシンター処理とは別の方法として、フッ素をイオン注入することで界面準位を改善する手法が、特許文献1に開示されている。フッ素が水素の代わりに界面準位を改善するというものである。しかし、この手法ではフッ素のイオン注入装置が必要であり、実施が大がかりなものとなってしまう。
【0005】
これ以外には、たとえば、特許文献2には、シリコン基板中に埋め込まれた酸化膜にフッ素を含ませておく方法が記載されている。しかし、フッ素がシリコン基板の裏面側へも拡散するため、酸化膜に含ませることのできるフッ素量にも限界があり、フッ素の導入効率が悪いという問題が考えられる。この点の改善方法として、特許文献3にあるように、フッ素の拡散防止層を形成する方法も提案されているが、構造が複雑になる。
【0006】
また、特許文献4には、あらかじめSOI(Silicon On Insulator)基板の半導体層にフッ素をイオン注入した後に、酸素雰囲気のアニール処理で結晶性を回復させる方法が開示されている。この方法は、SOI基板には適応できるが、バルクウェーハには適応が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−269492号公報
【特許文献2】特開平3−149821号公報
【特許文献3】特開2011−40422号公報
【特許文献4】特開2005−116607号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K. Ohyu, T. Itoga, Y. Nishioka, and N. Natsuki, “Improvement of SiO2/Si Interface Properties Utilizing Fluorine Ion Implantation and Drive−in Diffusion”, Jpn. J. Appl. Phys., 28, 1041 (1989)
【非特許文献2】D. K. Schroder, Semiconductor Material and Device Characterization 3ed ed.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方で、フッ素を含むガスはシリコンなどの基板加工用のガス、すなわちエッチングガスとして一般的に使用されるガスである。このフッ素を含むガスを用いたエッチングは、真空チャンバー内に電極を設置し、真空チャンバー内にシリコン基板を入れて、高周波電源を用いてプラズマを発生させてエッチングする方法である。電極がチャンバー内の上下に設置され、下部電極側にシリコン基板を設置するのが一般的である。この際、高周波電源をシリコン基板側の電極に接続したものはカソードカップリング(陰極結合)方式、対向する電極に接続したものはアノードカップリング(陽極結合)方式とそれぞれ呼ばれる。シリコン基板側の電極に高周波電源が接続されているカソードカップリング方式は、イオンをシリコン基板に物理衝突させることから、基板のダメージが大きいと一般的には言われている。
【0010】
以上で説明したように、フッ素はエッチングガスとして有用であり、また、界面準位密度の改善にも非常に有効であるが、フッ素を用いて界面準位密度を改善するためにはフッ素のイオン注入工程が追加的に必要になるなどの課題があった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、フッ素のイオン注入工程や特別な構造の形成を必要とせずに、界面準位密度を改善することができる半導体装置の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、半導体装置の作製方法であって、
カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で、フッ素を含むガスを用いてシリコン基板をエッチングした後、前記プラズマエッチング装置をアノードカップリング方式に切り替え、前記シリコン基板にフッ素を含むガスを用いてプラズマ処理を行い、フッ素を前記シリコン基板の表面に堆積させる工程と、
前記フッ素が堆積されたシリコン基板に熱処理を行い、前記堆積されたフッ素を前記シリコン基板の中に拡散する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
【0013】
このように、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で、フッ素を含むガスを用いてシリコン基板のエッチングを行い、その後、アノードカップリング方式に切り替えてプラズマ処理を行えば、フッ素のイオン注入工程を行わなくても、エッチング工程を利用することで界面準位のフッ素パッシベーションを効率よく行うことができ、工程数の増加を抑えることができる。また、界面準位密度の改善のために、シリコン基板に特別な構造を設ける必要もなく、半導体装置作製のコストの増加を抑えることができる。
【0014】
このとき、前記熱処理を800℃以上、1050℃以下で行うことが好ましい。
【0015】
このような温度の熱処理であれば、効果的に界面準位密度を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、エッチング工程を利用して界面準位のフッ素パッシベーションを効率よく行うことが可能になり、界面準位密度の低減に要する工程数の増加を抑え、それにより、コストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の半導体装置の作製方法の工程フローを示す図である。
図2】カソードカップリング方式((a))とアノードカップリング方式((b))を示す概略図である。
図3】カソードカップリング方式とアノードカップリング方式を切り替え可能なプラズマエッチング装置の一例を示す概略図である。
図4】熱処理温度と界面準位密度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。
上記のように、半導体装置の作製方法において、フッ素のイオン注入工程や特別な構造の形成を行わずに、界面準位密度を改善することができる半導体装置の作製方法が求められている。
【0019】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で、フッ素を含むガスを用いてシリコン基板をエッチングした後、プラズマエッチング装置をアノードカップリング方式に切り替え、シリコン基板にフッ素を含むガスを用いてプラズマ処理を行い、フッ素をシリコン基板の表面に堆積させる工程と、
フッ素が堆積されたシリコン基板に熱処理を行い、堆積されたフッ素をシリコン基板の中に拡散する工程と、
を有する半導体装置の作製方法が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
まず、図2に、カソードカップリング方式((a))及びアノードカップリング方式((b))のそれぞれの概略図を示す。図2(a)及び(b)では、チャンバー1の内部に、ウェーハ(基板)3、電極4又は7、及び、ウェーハ3を載置するステージ2が設けられている。そして、エッチングガス6がチャンバー1内に導入される。エッチング後の廃ガスは排気口(不図示)から排出される。ここで、ウェーハ3側に高周波発振器5が設置されているカソードカップリングタイプ(方式)は、生成したプラズマ中で発生したイオンをウェーハ3側に引き付けるため、基板にダメージが導入されやすい。一方のアノードカップリングタイプ(方式)は、基板上部に主に電位が掛かるために、基板へのダメージが少ない。プラズマエッチングにおいては、カソードカップリングタイプでは生成イオンの物理衝突を利用してエッチングが進み、アノードカップリングタイプではラジカル成分による化学反応によりエッチングが進行する。
【0022】
以下では、本発明の半導体装置の作製方法について、図1に示した工程フローを参照して説明する。
【0023】
上述したカソードカップリング方式とアノードカップリング方式のエッチングの特徴を利用して、まず、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で、フッ素を含むガスを用いてシリコン基板のエッチングを行う。このエッチングはまた、高電界を印加しエッチングガスから生じたフッ素イオンをシリコン基板中へ導入する役目を果たす。次に、アノードカップリング方式に切り替え、シリコン基板にフッ素を含むガスでプラズマ処理を行い、ダメージ層を化学エッチング(等方性エッチングでもある)により除去し、さらに、フッ素をシリコン基板の表面に堆積させておく(図1のA工程)。
【0024】
この後、アニール(熱処理)を行い、カソードカップリング方式のエッチングで導入されたダメージの回復とシリコン基板の表面に堆積したフッ素の拡散を行う(図1のB工程)。これにより、プラズマダメージを回復させつつ、フッ素をシリコン基板の中に拡散させることができる。
【0025】
尚、カソードカップリング方式からアノードカップリング方式への切り替えについては、一例として図3に示したような、切り替えスイッチを備えるプラズマエッチング装置を用いれば、切り替えを容易に行うことができて好ましい。図3に示したプラズマエッチング装置60は、チャンバー11内に上部電極17及び下部電極18が設けられている。ウェーハ13は、下部電極18の上に載置されている。下部電極18は、ウェーハステージの機能も兼ねている。そして、エッチングガス16が、チャンバー11内に導入される。
【0026】
プラズマエッチング装置60は、高周波発振器15に接続された端子21、接地された端子22、及び、切り替えスイッチ20を備えている。図3においては、上部電極17は接地側の端子22に接続しており、下部電極18は高周波発振器側の端子21に接続しているので、カソードカップリングである。切り替えスイッチ20を操作して、上部電極17の接続を接地から高周波発振器15側に、下部電極の接続を高周波発振器15側から接地側に切り替えると、アノードカップリングになる。
【0027】
さらに、以下では、実験的に求めた、熱処理温度と界面準位密度の関係について、図4を参照して説明する。
【0028】
まず、ボロンをドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を準備した。この基板の抵抗率は、10Ω・cmである。この基板に対して、フッ素を含むガスとして、CFを用いてプラズマエッチングを行った。エッチングの条件は、ガス種及び流量が、CF:O=80sccm:20sccm、高周波出力Rfが600W、圧力は0.05Paであり、カソードカップリング及びアノードカップリングの順に、2分間、それぞれエッチング及びプラズマ処理を行った。
【0029】
プラズマエッチングを行う際のガス流量比や高周波出力、圧力、エッチング時間は加工に必要な深さ、形状で変動する。エッチングの要求深さが深ければ、一般的に、高い高周波出力、長時間エッチング、及び高ガス流量が必要とされる。その分、多くのフッ素にさらされることになり、エッチング時間とフッ素パッシベーションは正の相関関係にあると考えられる。
【0030】
次に、フッ素が堆積されたシリコン単結晶基板を、窒素雰囲気で30分、熱処理温度を変えてアニール(熱処理)した。その後、アニールしたシリコン単結晶基板の界面準位密度を測定した。その測定結果を図4に示す。
【0031】
図4は、熱処理温度と界面準位密度の関係を示すグラフである。熱処理温度が800℃以上、1050℃以下の温度であれば界面準位密度の低減に効果的であることが分かる。
【0032】
熱処理の温度を1050℃よりも高くしても、効果は変わらない。また、イオン注入などにおいて、ダメージの回復には1000℃程度の熱処理が利用されることから、このエッチングによるダメージの回復についても、1050℃以下で十分であると判断される。
【0033】
また、雰囲気は窒素(N)が一般的である。酸化雰囲気ではシリコン単結晶基板の表面が酸化され、フッ素が導入された領域が後の別のエッチング工程で除去されてしまう可能性もある。
【0034】
さらに、熱処理時間は30分前後で十分である。1時間以上熱処理を行っても、効果に差はない。
【0035】
尚、本発明の半導体装置の作製方法は、リソグラフィーを行った後に被加工膜を選択的に除去するエッチングに対しても適用することができ、また、シリコン基板の全面に形成された膜を除去するエッチングに対しても適用することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
界面準位密度測定の試料として、ボロン(B)をドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を用いた。このシリコン単結晶基板の抵抗率は、10Ω・cmである。この基板に対して、フッ素を含むエッチングガスとしてCFを用いて、プラズマエッチングを行った。エッチング条件は、ガス種及び流量が、CF:O=80sccm:20sccm、高周波出力Rfが600W、チャンバー内圧力を0.05Paとして、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で2分間エッチングを行った後、そのプラズマエッチング装置をアノードカップリング方式に切り替え、同じ条件で2分間、プラズマ処理を行い、フッ素を堆積させた。尚、このプラズマ処理には、エッチング及びフッ素の堆積が含まれる。その後、フッ素を堆積させたシリコン単結晶基板に、N雰囲気下で、1000℃、30分間の熱処理を行った後に、SC1洗浄(水酸化アンモニウム/過酸化水素水/純水からなる混合薬液による洗浄)を行った。
【0038】
そして、SC1洗浄後のシリコン単結晶基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リン(P)をドープしたPoly−Si(多結晶シリコン)層を、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により厚さ300nmで堆積した。その際、この多結晶シリコン層のシート抵抗が30Ω/sq.になるようにした。このシリコン単結晶基板に、フォトリソグラフィーを行い、多結晶シリコン層を選択的にエッチングして、面積が1mmの電極を基板上に形成した。
【0039】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、表1に示すような値になった。表1は、実施例1と後述する比較例1−5で求めた界面準位密度を示す表である。実施例1では、後述する比較例2に示した水素シンター処理を行った場合と同様に、界面準位密度の低減処理を行わなかった比較例1に比べ、界面準位密度が低下していることが分かった。尚、CV法による界面準位密度の測定方法については、たとえば、非特許文献2に詳しく記載されている。
【0040】
【表1】
【0041】
(比較例1)
界面準位密度測定の試料として、ボロンをドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を用いた。この基板の抵抗率は、10Ω・cmである。このシリコン単結晶基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リンをドープしたPoly−Si層をCVD法により300nmの厚さで堆積し、その層のシート抵抗が30Ω/sq.となるようにした。このシリコン単結晶基板にフォトリソグラフィーとエッチングを行い、面積が1mmの電極を基板上に形成した。
【0042】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、上記のように界面改善処理を行わないと、表1に示すように、界面準位密度が非常に大きいことが分かった。
【0043】
(比較例2)
界面準位密度測定の試料として、ボロンをドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を用いた。この基板の抵抗率は、10Ω・cmである。この基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リンをドープしたPoly−Si層をCVD法により300nmの厚さで堆積した。その際、この層のシート抵抗が30Ω/sq.となるようにした。このシリコン単結晶基板にフォトリソグラフィーとエッチングを行い、面積が1mmの電極を基板上に形成した。その後、水素を2%混合した窒素雰囲気ガスで、30分間熱処理を行った(水素シンター処理)。
【0044】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、表1に示すように、水素シンター処理を行ったことで、界面準位密度が改善されていた。
【0045】
このように、水素シンター処理でも、実施例1とほぼ同レベルの界面準位密度の低減効果があるが、前述した非特許文献1に開示されているように、水素は熱処理により脱離しやすく、効果が限定的になる可能性がある。このため、実施例1のように、効果が安定しているフッ素を用いることが好ましい。
【0046】
(比較例3)
界面準位密度測定の試料として、ボロンをドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を用いた。この基板の抵抗率は10Ω・cmである。この基板に対して、フッ素を含むエッチングガスとして、CFを用いてプラズマエッチングを行った。エッチング条件は、ガス種及び流量が、CF:O=80sccm:20sccm、高周波出力Rfが600W、チャンバー内圧力を0.05Paとして、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で2分間エッチングを行った。アノードカップリング方式でのプラズマ処理は実施しなかった。その後、このシリコン単結晶基板に対して、1000℃のN雰囲気下で30分間熱処理を行った後に、SC1洗浄を行った。
【0047】
そして、SC1洗浄後のシリコン単結晶基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リンをドープしたPoly−Si層をCVD法により300nmの厚さで堆積した。その際、この層のシート抵抗が30Ω/sq.となるようにした。このシリコン単結晶基板にフォトリソグラフィーとエッチングを行い、面積が1mmの電極を基板上に形成した。
【0048】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、表1に示すようにカソードカップリング方式のエッチングのみでは、実施例1ほどは界面準位密度が改善されていないことが分かった。
【0049】
(比較例4)
界面準位密度測定の試料として、ボロンをドープしたP型で直径200mmシリコン単結晶基板を用いた。この基板の抵抗率は10Ω・cmである。この基板に対して、ガス種及び流量が、CF:O=80sccm:20sccm、高周波出力Rfが600W、チャンバー内圧力を0.05Paとして、比較例3で用いたプラズマエッチング装置と同じ装置を用いて、アノードカップリング方式にしたうえで、2分間、プラズマ処理を行った。カソードカップリング方式でのエッチングは行わなかった。その後、このシリコン単結晶基板に対して、1000℃のN雰囲気下で30分間熱処理を行った後に、SC1洗浄を行った。
【0050】
そして、SC1洗浄後のシリコン単結晶基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リンをドープしたPoly−Si層をCVD法により300nmの厚さで堆積した。その際、この層のシート抵抗が30Ω/sq.となるようにした。このシリコン単結晶基板にフォトリソグラフィーとエッチングを行い、面積が1mmの電極を基板上に形成した。
【0051】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、表1に示すように、アノードカップリング方式のプラズマ処理のみでは、実施例1ほどは界面準位密度が改善されていないことが分かった。
【0052】
(比較例5)
界面準位密度測定の試料として、ボロンをドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を用いた。この基板の抵抗率は、10Ω・cmである。この基板に対して、フッ素を含むエッチングガスとしてCFを用いてプラズマエッチングを行った。エッチング条件は、ガス種及び流量が、CF:O=80sccm:20sccm、高周波出力Rfが600W、チャンバー内圧力を0.05Paとして、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で2分間エッチングを行った後、そのプラズマエッチング装置をアノードカップリング方式に切り替え、同じ条件で2分間、プラズマ処理を行った。その後、SC1洗浄を行った。
【0053】
そして、SC1洗浄後のシリコン単結晶基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リンをドープしたPoly−Si層を、CVD法により厚さ300nmで堆積した。その際、この層のシート抵抗が30Ω/sq.になるようにした。このシリコン単結晶基板に、フォトリソグラフィーとエッチングを行い、面積が1mmの電極を基板上に形成した。
【0054】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、表1に示すように、熱処理を行わないと実施例1ほどは界面準位密度が改善されていないことが分かった。
【0055】
このように、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で、フッ素を含むエッチングガスを用いてシリコン基板をエッチングした後、アノードカップリング方式のプラズマエッチング方式に切り替え、フッ素を含むガスでプラズマ処理を行い、フッ素を堆積させ、その後、熱処理を行うことで、界面準位密度を効果的に低減することができた。これに対して、カソードカップリング方式のエッチング、アノードカップリング方式のプラズマ処理、及び、熱処理のいずれかを実施しないと、界面準位密度の改善は限定的であった。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
1…チャンバー、 2…ステージ、 3…ウェーハ、 4…電極、
5…高周波発振器、 6…エッチングガス、 7…電極、 11…チャンバー、
13…ウェーハ、 15…高周波発振器、 16…エッチングガス、
17…上部電極、 18…下部電極、 20…切り替えスイッチ、
21…高周波発振器側の端子、 22…接地側の端子、
60…プラズマエッチング装置。
図1
図2
図3
図4