【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
界面準位密度測定の試料として、ボロン(B)をドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を用いた。このシリコン単結晶基板の抵抗率は、10Ω・cmである。この基板に対して、フッ素を含むエッチングガスとしてCF
4を用いて、プラズマエッチングを行った。エッチング条件は、ガス種及び流量が、CF
4:O
2=80sccm:20sccm、高周波出力Rfが600W、チャンバー内圧力を0.05Paとして、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で2分間エッチングを行った後、そのプラズマエッチング装置をアノードカップリング方式に切り替え、同じ条件で2分間、プラズマ処理を行い、フッ素を堆積させた。尚、このプラズマ処理には、エッチング及びフッ素の堆積が含まれる。その後、フッ素を堆積させたシリコン単結晶基板に、N
2雰囲気下で、1000℃、30分間の熱処理を行った後に、SC1洗浄(水酸化アンモニウム/過酸化水素水/純水からなる混合薬液による洗浄)を行った。
【0038】
そして、SC1洗浄後のシリコン単結晶基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リン(P)をドープしたPoly−Si(多結晶シリコン)層を、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により厚さ300nmで堆積した。その際、この多結晶シリコン層のシート抵抗が30Ω/sq.になるようにした。このシリコン単結晶基板に、フォトリソグラフィーを行い、多結晶シリコン層を選択的にエッチングして、面積が1mm
2の電極を基板上に形成した。
【0039】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、表1に示すような値になった。表1は、実施例1と後述する比較例1−5で求めた界面準位密度を示す表である。実施例1では、後述する比較例2に示した水素シンター処理を行った場合と同様に、界面準位密度の低減処理を行わなかった比較例1に比べ、界面準位密度が低下していることが分かった。尚、CV法による界面準位密度の測定方法については、たとえば、非特許文献2に詳しく記載されている。
【0040】
【表1】
【0041】
(比較例1)
界面準位密度測定の試料として、ボロンをドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を用いた。この基板の抵抗率は、10Ω・cmである。このシリコン単結晶基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リンをドープしたPoly−Si層をCVD法により300nmの厚さで堆積し、その層のシート抵抗が30Ω/sq.となるようにした。このシリコン単結晶基板にフォトリソグラフィーとエッチングを行い、面積が1mm
2の電極を基板上に形成した。
【0042】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、上記のように界面改善処理を行わないと、表1に示すように、界面準位密度が非常に大きいことが分かった。
【0043】
(比較例2)
界面準位密度測定の試料として、ボロンをドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を用いた。この基板の抵抗率は、10Ω・cmである。この基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リンをドープしたPoly−Si層をCVD法により300nmの厚さで堆積した。その際、この層のシート抵抗が30Ω/sq.となるようにした。このシリコン単結晶基板にフォトリソグラフィーとエッチングを行い、面積が1mm
2の電極を基板上に形成した。その後、水素を2%混合した窒素雰囲気ガスで、30分間熱処理を行った(水素シンター処理)。
【0044】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、表1に示すように、水素シンター処理を行ったことで、界面準位密度が改善されていた。
【0045】
このように、水素シンター処理でも、実施例1とほぼ同レベルの界面準位密度の低減効果があるが、前述した非特許文献1に開示されているように、水素は熱処理により脱離しやすく、効果が限定的になる可能性がある。このため、実施例1のように、効果が安定しているフッ素を用いることが好ましい。
【0046】
(比較例3)
界面準位密度測定の試料として、ボロンをドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を用いた。この基板の抵抗率は10Ω・cmである。この基板に対して、フッ素を含むエッチングガスとして、CF
4を用いてプラズマエッチングを行った。エッチング条件は、ガス種及び流量が、CF
4:O
2=80sccm:20sccm、高周波出力Rfが600W、チャンバー内圧力を0.05Paとして、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で2分間エッチングを行った。アノードカップリング方式でのプラズマ処理は実施しなかった。その後、このシリコン単結晶基板に対して、1000℃のN
2雰囲気下で30分間熱処理を行った後に、SC1洗浄を行った。
【0047】
そして、SC1洗浄後のシリコン単結晶基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リンをドープしたPoly−Si層をCVD法により300nmの厚さで堆積した。その際、この層のシート抵抗が30Ω/sq.となるようにした。このシリコン単結晶基板にフォトリソグラフィーとエッチングを行い、面積が1mm
2の電極を基板上に形成した。
【0048】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、表1に示すようにカソードカップリング方式のエッチングのみでは、実施例1ほどは界面準位密度が改善されていないことが分かった。
【0049】
(比較例4)
界面準位密度測定の試料として、ボロンをドープしたP型で直径200mmシリコン単結晶基板を用いた。この基板の抵抗率は10Ω・cmである。この基板に対して、ガス種及び流量が、CF
4:O
2=80sccm:20sccm、高周波出力Rfが600W、チャンバー内圧力を0.05Paとして、比較例3で用いたプラズマエッチング装置と同じ装置を用いて、アノードカップリング方式にしたうえで、2分間、プラズマ処理を行った。カソードカップリング方式でのエッチングは行わなかった。その後、このシリコン単結晶基板に対して、1000℃のN
2雰囲気下で30分間熱処理を行った後に、SC1洗浄を行った。
【0050】
そして、SC1洗浄後のシリコン単結晶基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リンをドープしたPoly−Si層をCVD法により300nmの厚さで堆積した。その際、この層のシート抵抗が30Ω/sq.となるようにした。このシリコン単結晶基板にフォトリソグラフィーとエッチングを行い、面積が1mm
2の電極を基板上に形成した。
【0051】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、表1に示すように、アノードカップリング方式のプラズマ処理のみでは、実施例1ほどは界面準位密度が改善されていないことが分かった。
【0052】
(比較例5)
界面準位密度測定の試料として、ボロンをドープしたP型で直径200mmのシリコン単結晶基板を用いた。この基板の抵抗率は、10Ω・cmである。この基板に対して、フッ素を含むエッチングガスとしてCF
4を用いてプラズマエッチングを行った。エッチング条件は、ガス種及び流量が、CF
4:O
2=80sccm:20sccm、高周波出力Rfが600W、チャンバー内圧力を0.05Paとして、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で2分間エッチングを行った後、そのプラズマエッチング装置をアノードカップリング方式に切り替え、同じ条件で2分間、プラズマ処理を行った。その後、SC1洗浄を行った。
【0053】
そして、SC1洗浄後のシリコン単結晶基板に対して、900℃の乾燥雰囲気中で25nmの厚さのゲート酸化を行い、その後、リンをドープしたPoly−Si層を、CVD法により厚さ300nmで堆積した。その際、この層のシート抵抗が30Ω/sq.になるようにした。このシリコン単結晶基板に、フォトリソグラフィーとエッチングを行い、面積が1mm
2の電極を基板上に形成した。
【0054】
次に、CV法で界面準位密度を求めたところ、表1に示すように、熱処理を行わないと実施例1ほどは界面準位密度が改善されていないことが分かった。
【0055】
このように、カソードカップリング方式のプラズマエッチング装置で、フッ素を含むエッチングガスを用いてシリコン基板をエッチングした後、アノードカップリング方式のプラズマエッチング方式に切り替え、フッ素を含むガスでプラズマ処理を行い、フッ素を堆積させ、その後、熱処理を行うことで、界面準位密度を効果的に低減することができた。これに対して、カソードカップリング方式のエッチング、アノードカップリング方式のプラズマ処理、及び、熱処理のいずれかを実施しないと、界面準位密度の改善は限定的であった。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。