特許第6372669号(P6372669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372669
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20180806BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180806BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180806BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180806BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20180806BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20180806BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C09J7/20
   B32B27/00 101
   B32B27/30 A
   C09J11/06
   C09J133/04
   C09J183/04
   H01B5/14 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-525311(P2016-525311)
(86)(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公表番号】特表2016-531167(P2016-531167A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】KR2014011256
(87)【国際公開番号】WO2015076612
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2016年1月8日
【審判番号】不服2017-13346(P2017-13346/J1)
【審判請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0142080
(32)【優先日】2013年11月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】フイ・ジェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・チョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ス・パク
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 日比野 隆治
【審判官】 木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−146977(JP,A)
【文献】 特開2013−107977(JP,A)
【文献】 特開2013−(226676JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
ポリオルガノシロキサンを重合単位で有する粘着性ベース樹脂を含む粘着剤層と、を含み、
粘着性ベース樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合単位でさらに含み、
粘着性ベース樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体80〜99.8重量部及びポリオルガノシロキサン0.1〜重量部から由来された重合単位を含み、
ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が、400〜30,000であり、
粘着性ベース樹脂は、架橋性官能基を有する共重合性単量体から由来された重合単位をさらに含み、
架橋性官能基を有する共重合性単量体は、粘着性ベース樹脂100重量部に対して、3重量部〜9重量部で含まれ、
粘着性ベース樹脂は、前記樹脂が架橋剤と混合された直後から前記混合直後の粘度対比2倍以上の粘度に上昇するまでかかる時間が20時間以上になる樹脂であり、
前記粘着剤層は、前記粘着性ベース樹脂を架橋させている多官能性架橋剤をさらに含み、
前記粘着剤層は、前記基材層の一面に形成されており、
前記多官能性架橋剤は、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物及び金属キレート系化合物からなる群より選択された一つ以上であり、
多官能性架橋剤は、粘着性ベース樹脂100重量部に対して、2.5重量部〜10重量部で粘着剤層に含まれることを特徴とする保護フィルム。
【請求項2】
ポリオルガノシロキサンの重合単位は、下記化学式1の化合物から由来されたことを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム。
【化1】
前記化学式1で、nは、0〜1500の範囲内のいずれの一つの数であり、Rは、互いに同一であるか相異なっていることで、各々独立的に水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基またはアルキニル基であり、Pは、重合性官能基である。
【請求項3】
重合性官能基は、アルケニル基、エポキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アクリロイル器、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を含むことを特徴とする請求項2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
架橋性官能基を有する共重合性単量体は、ヒドロキシ基含有共単量体、カルボキシル基含有共単量体及び窒素含有共単量体からなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項5】
多官能性架橋剤は、脂肪族線型多価NCO及び脂肪族環型多価NCOの混合物であることを特徴とする請求項に記載の保護フィルム。
【請求項6】
粘着剤層は、硬化遅延剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項7】
硬化遅延剤は、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトンからなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする請求項に記載の保護フィルム。
【請求項8】
基材層は、ポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子、ノルボルネン系高分子、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレートなどの単一成分の高分子、共重合高分子またはエポキシ系高分子を含むことを特徴とする請求項に記載の保護フィルム。
【請求項9】
少なくとも一層の導電性層を有する導電性フィルム及び前記導電性フィルムの一面に付着されている請求項1に記載の保護フィルムを含むことを特徴とする導電性積層体。
【請求項10】
少なくとも一つの偏光子及び前記偏光子の一面に付着されている請求項1に記載の保護フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルム、これを含む導電性積層体及びこれを含む偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、保護フィルムに関する。前記保護フィルムは、導電性積層体または偏光板に適用されることができる。
【0003】
透明電極は、各種ディスプレイの電極、太陽電池などの光電変換素子及びタッチパネルなどに多様に使用されており、ガラス、透明フィルムなどの透明基板上に透明導電性薄膜を形成して製造される。導電性薄膜の場合、工程進行中の薄膜の汚染、スクラッチなどの損傷を防止するために保護フィルムを必要とする。
【0004】
また、偏光板の場合、偏光板製造工程からLCDモジュールを作る工程まで外部的な衝撃や摩擦及び汚染から偏光板を保護する保護フィルムが要求される。
【0005】
このような保護フィルムは、初期に被着剤に固定されるほどの粘着性と共に工程終了後には被着剤を損傷させないで剥離することができる低剥離力が要求される。また、保護フィルムに含まれる粘着剤の重合反応安全性及び十分な可使時間が要求される。低剥離力を具現するために架橋を多い実行する方法があるが、これは重合反応安全性が落ちるか可使時間が短くなるなどの問題を引き起こすことができる。また、添加剤を導入する場合、剥離は容易であるが添加剤が転写されて被着剤の光学物性が悪くなるなどの問題点が発生できる。
【0006】
先行特許である特許文献1は、導電性薄膜の汚染及びスクラッチなどの損傷を防止するための保護フィルムに対して提示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4342775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、保護フィルム、これを含む導電性積層体及びこれを含む偏光板に関するもので、剥離力を低く制御して保護フィルム除去時に除去が容易であると共に、重合反応安全性及び可使時間が優秀で、添加剤による被着剤への添加剤転写問題を防止することができる保護フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、保護フィルムに関する。前記保護フィルムは、導電性積層体に適用され、導電性積層体の製造工程進行中の導電性層の汚染、スクラッチなどの損傷を防止するために使用することができる。また、本発明の保護フィルムは、偏光板に適用されることができ、偏光板の製造工程からLCDモジュールを作る工程まで外部的な衝撃や摩擦及び汚染から偏光板を保護することができる。
【0010】
例示的な保護フィルムは、粘着性ベース樹脂を含む粘着剤層を含む。前記粘着性ベース樹脂は、ポリオルガノシロキサンを重合単位で含むことができる。すなわち、前記ポリオルガノシロキサンは、重合単位として前記樹脂に導入されることができる。
【0011】
一つの例示で、ポリオルガノシロキサンの重合単位は、下記化学式1の化合物から由来されたものであることができる。本明細書で「由来される」とは、例えば、ポリオルガノシロキサン重合単位が重合体を形成する前に、重合体の一つの単位になることができる特定化合物から形成されることを意味することができる。
【0012】
【化1】
【0013】
前記化学式1で、nは、0〜1500範囲内のいずれの一つの数である。一つの例示で、nは、5〜1300、10〜1000、15〜800、20〜500、25〜400、30〜300、35〜200または40〜180であることができる。前記ポリオルガノシロキサンの鎖長さを制御することで、粘着性ベース樹脂に重合単位で適切に含まれて、保護フィルムとしての低い剥離力及び重合反応安全性を得ることができる。また、前記Rは、互いに同一であるか相異なっていることで、各々独立的に水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基またはアルキニル基であることができる。前記Rは、例えば、炭素数1〜30のアルキル基であることができ、具体的に、メチル基、エチル基またはプロピル基であることができる。
【0014】
本明細書で用語「アルキル基」は、特定しない限り、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖状、分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜20、炭素数3〜16または炭素数4〜12のシクロアルキル基を意味することができる。前記アルキル基は、任意的に一つ以上の置換基により置換されることができる。
【0015】
本明細書で用語「アルコキシ基」は、特定しない限り、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルコキシ基を意味することができる。前記アルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であることができる。また、前記アルコキシ基は、任意的に一つ以上の置換基により置換されることができる。
【0016】
また、本明細書で用語「アルケニル基」は、特定しない限り、炭素数2〜20、炭素数2〜16、炭素数2〜12、炭素数2〜8または炭素数2〜4のアルケニル基を意味することができる。前記アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であることができる。また、前記アルケニル基は、任意的に一つ以上の置換基により置換されることができる。
【0017】
また、本明細書で用語「アルキニル基」は、特定しない限り、炭素数2〜20、炭素数2〜16、炭素数2〜12、炭素数2〜8または炭素数2〜4のアルキニル基を意味することができる。
【0018】
また、Pは、重合性官能基であることができる。すなわち、前記ポリオルガノシロキサンは、重合性官能基を通じて前記樹脂に導入されることができる。また、前記重合性官能基は、重合反応が可能な官能基であれば、特別に限定されず、例えば、アルケニル基、エポキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であることができる。
【0019】
一方、本発明の一つの具現例で、前記重合性官能基は、ポリオルガノシロキサン鎖の一側末端にのみ結合されていることができる。すなわち、両側末端に重合性官能基が形成されているポリオルガノシロキサンは、前記化学式1の化合物から除外されることができる。前記重合可能な二重結合が両末端に存在する場合、重合反応時に架橋が進行されて溶媒にとけない沈殿物が発生するか反応器から樹脂を回収しにくい。すなわち、粘着剤層の製造時に架橋は、樹脂製造段階ではないコーティング後の熟成条件で行われることができる。
【0020】
前記ポリオルガノシロキサンを合成する方法は、特別に限定されず、例えば、前記粘着性ベース樹脂と架橋可能な官能基を有するビニル化合物を、SiH基を有するシリコーン樹脂とヒドロシリル化反応により反応させることで、重合性官能基をシリコーン樹脂に導入する方法や、シロキサン化合物と重合性官能基を有するシロキサン化合物を縮合反応させる方法などを挙げることができる。
【0021】
一つの例示で、前記ポリオルガノシロキサンは、上述のように、片末端として官能基の当量が、例えば、3,000g/mol〜20,000g/mol、3,500g/mol〜18,000g/mol、4,000g/mol〜16,000g/molまたは4,500g/mol〜14,000g/molであることができる。前記官能基の当量が3,000g/mol未満であれば、得られる粘着性ベース樹脂の重合時にポリオルガノシロキサンが充分に粘着性ベース樹脂に導入されなくて、被着体を汚染させるか、剥離性を充分に発揮できない場合がある。また、20,000g/molを超過すれば、十分な粘着力が得られない場合があり、重合反応時に架橋が進行されて溶媒にとけない沈殿物が発生するか反応器から樹脂を回収しにくい。
【0022】
また、ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、特別に限定されないが、好ましくは、300〜100,000であることができる。前記分子量が300未満であれば、得られる粘着性ベース樹脂の耐熱性が不十分になる場合があり、100,000を超過すれば、前記粘着性ベース樹脂との混合が困難になる場合がある。一つの例示で、前記分子量は、例えば、400〜50,000、400〜30,000または500〜20,000であることができる。また、前記ポリオルガノシロキサンは、25℃の粘度が30mm/s〜500mm/s(Square millimeter/second)、40mm/s〜400mm/s、50mm/s〜300mm/sまたは50mm/s〜200mm/sであることができる。前記分子量または粘度は、ポリオルガノシロキサンの鎖長さによって変わることができ、前記範囲を満足するようにポリオルガノシロキサンの鎖長さを制御することで、上述の粘着性ベース樹脂に重合単位で適切に含まれて、保護フィルムとしての低い剥離力及び重合反応安全性を得ることができる。
【0023】
上述のように、導電性フィルムの場合、製造工程進行中に薄膜の汚染、スクラッチなどの損傷を防止するために保護フィルムが追加で含まれて、このような保護フィルムは、工程終了後には導電性薄膜を損傷させないで剥離することができる低剥離力が要求される。従来には、このような低剥離力を具現するためにシリコーンやフッ素型添加剤を使用して離型が行われる。但し、シリコーンやフッ素型添加剤の場合、剥離時に基材への添加剤転写が発生するので、きれいな剥離が不可能な場合が多くて、導電性フィルムの光学的物性が顕著に落ちるようになる。本発明による保護フィルムは、上述のようにポリオルガノシロキサン鎖が導入されている粘着性ベース樹脂を含む粘着剤層を使用することで、容易にフィルムを離型させることができる。また、シリコーン化合物が一つの重合単位として前記粘着性ベース樹脂に含まれており、シリコーン化合物が添加剤で使われたものではないので、添加剤転写による被着剤の光学物性の低下問題も防止することができる。
【0024】
前記ポリオルガノシロキサンは、粘着性ベース樹脂に導入することができるものであれば、特別に限定されない。上述のように、前記ポリオルガノシロキサンは、前記化学式1から由来されたことを満足することができる。前記ポリオルガノシロキサンのうち市販されているものは、例えば、信越化学工業社製のX−24−8201、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−2404、X−22−164A、X−22−164C、東レ・ダウコーニング社製のBY16−152D、BY16−152、BY16−152C及びCHISSO社製のFM−0711、FM−0721及びFM−0725 などを挙げることができる。
【0025】
一つの例示で、粘着性ベース樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合単位で含むことができる。本発明の粘着性ベース樹脂は、80〜99.8重量部、82〜99.5重量部、84〜99重量部、86〜97重量部または87〜95重量部の(メタ)アクリル酸エステル単量体及び0.1〜10重量部、0.1〜8重量部、0.1〜7重量部、0.1〜6重量部、0.1〜5重量部、0.1〜3重量部または0.1〜1.5重量部のポリオルガノシロキサンを重合単位で含むことができる。本発明で単位「重量部」は、重量の割合を意味する。単量体の間の重量割合を前記のように調節することで、粘着剤層の初期接着力、耐久性及び剥離力などの物性を効果的に維持することができる。
【0026】
一つの例示で、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、アルキル(メタ)アクリレートであることができる。例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートからなる群より選択された一つ以上であることができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
また、本発明の粘着性ベース樹脂は、架橋性官能基を有する共重合性単量体から由来された重合単位をさらに含むことができる。一つの例示で、前記架橋官能基を有する共重合性単量体は、ヒドロキシ基含有共単量体、カルボキシル基含有共単量体及び窒素含有共単量体からなる群より選択された一つ以上であることができる。前記架橋性官能基を有する共重合性単量体は、粘着性ベース樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜14重量部、0.5重量部〜14重量部、1重量部〜13重量部、2重量部〜12重量部、3重量部〜11重量部、3重量部〜9重量部または3重量部〜8重量部を含むことができる。前記範囲で架橋性官能基を有する共重合性単量体を調節することで、ベース樹脂の保存安全性を確保することができる。具体的に、保護フィルムとして低剥離力を具現するために架橋を多い実行する方法があり、このために架橋性官能基含有単量体を多量使用することができる。但し、低剥離力を具現するために、架橋性官能基を有する共重合性単量体を14重量部を超過して含む場合、ベース樹脂の保存安全性及び重合反応安全性が悪くなることができる。
【0028】
本発明の具体例で、前記粘着剤層は、粘着性ベース樹脂を架橋させている多官能性架橋剤をさらに含むことができる。前記多官能性架橋剤は、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物及び金属キレート系化合物などを使用することができ、樹脂に含まれている架橋性官能基の種類を考慮して、1種または2種以上の架橋剤を適切に選択することができる。イソシアネート化合物では、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate)、テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはナフタレンジイソシアネートなどや、上記のうち一つ以上のイソシアネート化合物とポリオールの付加反応物などを使用することができ、ポリオールでは、トリメチロールプロパンなどを使用することができる。また、前記エポキシ化合物では、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジルエチレンジアミンまたはグリセリンジグリシジルエーテルなどの1種または2種以上を使用することができ、前記アジリジン化合物では、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)またはトリ−1−アジリジニルホスフィンオキシドなどの1種または2種以上を使用することができる。また、金属キレート化合物では、多価金属がアセチルアセトンやアセト酢酸エチルなどに配位した状態で存在する化合物を使用することができ、前記多価金属の種類では、アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、チタン、アンチモン、マグネシウムまたはバナジウムなどがある。
【0029】
一つの例示で、前記多官能性架橋剤は、脂肪族線型多価NCO及び脂肪族環型多価NCOの混合物であることができる。例えば、前記脂肪族線型NCOでは、ヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができ、脂肪族環型多価NCOでは、イソボロンジイソシアネートを挙げることができる。前記脂肪族線型多価NCO及び脂肪族環型多価NCOは、6:4〜9:1の重量割合で混合されて混合物を形成することができ、前記混合物でNCOは、8〜20重量%で含まれていることができる。一方、本明細書で、前記NCOは、イソシアネート基を意味することができる。
【0030】
前記多官能性架橋剤は、粘着性ベース樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜20重量部、0.1〜18重量部、0.5〜15重量部、1.5重量部〜10重量部、2重量部〜8重量部、2.5重量部〜5重量部または2.5重量部〜4重量部の量で粘着剤層に含まれることができる。保護フィルムの低剥離力を具現するために、上述ようにん架橋を多い実行する方法があり、これのために架橋剤を過量で使用しなければならない。但し、架橋剤を過量で使用する場合、粘着剤層コーティング液の可使時間が増加する問題が発生することができる。本発明による粘着剤層は、多官能性架橋剤の含量を20重量部以下、14重量部以下または10重量部以下に限定することで、粘着剤層の可使時間を改善することができる。
【0031】
また、本発明の粘着剤層は、硬化遅延剤をさらに含むことができる。前記硬化遅延剤は、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリルなどのβ−ケトエステルや、またはアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトンなどのβ−ジケトンの中で一つ以上含まれることができる。
【0032】
本発明の粘着剤層には、上述の成分に追加でシランカップリング剤;粘着付与剤;エポキシ樹脂;紫外線安定剤;酸化防止剤;展色剤;補強剤;充填剤;消泡剤;界面活性剤または可塑剤などのような添加剤を1種または2種以上さらに含むことができる。
【0033】
一つの例示で、前記保護フィルムは、基材層をさらに含み、粘着剤層は、前記基材層の一面に形成されることができる。前記基材層は、ポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子、ノルボルネン系高分子、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレートなどの単一成分の高分子、共重合高分子またはエポキシ系高分子を含むことができる。基材層の厚さは、特に限定されるものではないが、一般的には、約20〜300μm、好ましくは、30〜200μmである。
【0034】
一つの例示で、本発明の粘着剤層を構成する粘着性ベース樹脂は、上述の多官能性架橋剤と混合することで硬化されることができる。一方、粘着性ベース樹脂は、前記樹脂が架橋剤と混合された直後から前記混合直後の粘度対比2倍以上の粘度に上昇するまでかかる時間が5時間以上であることができる。具体的に、前記時間は、5時間〜100時間、10時間〜100時間、15時間〜100時間または20時間〜100時間であることができる。前記粘着剤層の粘度が初期より2倍以上増加するようになれば、その以上コーティング作業が不可能になるので、本明細書では前記所要時間を可使時間で定義することができる。本発明の保護フィルムは、前記のように可使時間を充分に確保して製造工程を効率的に進行することができる。
【0035】
また、本発明は、導電性積層体に関する。例示的な導電性積層体は、上述の保護フィルムを含むことができる。一つの例示で、導電性積層体は、少なくとも一層の導電性層を有する導電性フィルム及び前記導電性フィルムの一面に付着されている前記保護フィルムを含むことができる。
【0036】
本発明の導電性フィルムは、少なくとも一層の導電性層を含むことであれば、特別に限定されない。導電性層を構成する素材では、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、錫または前記のうち2種以上の合金などのような金属、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウムまたは前記のうち2種以上の混合物で構成される金属酸化物、ヨウ化銅などからなる他の金属酸化物が使用され、前記導電性層は、結晶層または非結晶層であることができる。本発明では、好ましくは、インジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)を使用して導電性層を形成することができるが、これに限定されるものではない。また、前記のような導電性層の厚さは、連続被膜の形成可能性、導電性及び透明性などを考慮して、約10nm〜300nm、好ましくは、約10nm〜200nmで調節することができる。
【0037】
本発明で前記導電性層は、アンカー層または誘電体層を媒介でプラスチック基材フィルム上に形成されていることができる。アンカー層または誘電体層は、導電性層と基材フィルムの密着性を向上させて、耐擦傷性または耐屈曲性を改善することができる。前記のようなアンカー層または誘電体層は、例えば、SiO、MgFまたはAlなどのような無機物;アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂またはシロキサン系ポリマーなどの有機物または前記のうち2種以上の混合物を使用して真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法または塗工法を使用して形成することができる。アンカー層または誘電体層は、通常的に100nm以下、具体的には、15nm〜100nm、より具体的には、20nm〜60nmの厚さで形成することができる。
【0038】
本発明で導電性層が形成される基材または基板には、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理またはスパッタリングエッチング処理などの適切な接着処理を実行されていることができる。
【0039】
前記導電性フィルムは、前記導電性層を製膜する透明基材をさらに含むことができる。透明基材では、特に、透明性や耐熱性が優秀であるものを使用することが好ましい。このような有機高分子では、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子、ノルボルネン系高分子、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレートなどの単一成分の高分子、共重合高分子、エポキシ系高分子などを挙げることができる。透明基材は、これら有機高分子のフィルム状物、シート状物、その外の成形物を使用すること好ましい。
【0040】
一つの例示で、前記導電性フィルムの構造は、特別に限定されず、ハードコート層、透明基材及び導電性層を含むことができる。また、前記保護フィルム上の粘着剤層は、前記導電性フィルムのハードコート層上に位置することができる。
【0041】
また、本発明は、偏光板に関する。例示的な、偏光板は、保護フィルムを含むことができる。一つの例示で、前記偏光板は、少なくとも一つの偏光子及び前記偏光子の一面に付着されている前記保護フィルムを含むことができる。前記保護フィルムを有する偏光板は、通常の液晶表示素子にいずれも適用可能であり、その液晶パネルの種類は、特別に限定されない。例えば、前記保護フィルムを液晶セルの一面または両面に接合した液晶パネルを含む液晶表示素子を構成することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明による保護フィルムは、剥離力を低く制御して除去が容易であると共に、重合反応安全性及び可使時間が優秀であり、添加剤による被着剤への添加剤転写の問題を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲は、下記提示された実施例に限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
<粘着剤層の製造>
エチルアセテートの中で2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)、反応性ポリオルガノシロキサンとしてX−22−2426(信越化学)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)を89:1:10(2−EHA:X−22−2426:2−HEA)の重量割合で共重合してアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0045】
そして、アクリル系共重合体100重量部(固形分)に対して、イソシアネート系架橋剤であるHMDI/IPDI(=8/2重量割合(NCO%:16wt%))7.5重量部、硬化遅延剤としてアセチルアセトン7重量部及び触媒としてジブチルチンジラウレートを0.01重量部で混合して、粘着剤組成物を得た。
【0046】
<保護フィルムの製造>
前記粘着剤組成物をA4300 PET(Toyobo社製)(厚さ:100μm)の一面にコーティングして乾燥した後、塗膜の厚さが20μmである透明な粘着剤層を形成した。乾燥直後、離型フィルムを覆って40℃で4日間熟成させる。
【0047】
<導電性積層体の製造>
ITOフィルムとしてL2CC5((株)LG化学)の一面に前記製造した保護フィルムを付着した。前記保護フィルムの粘着剤層がITOフィルムのハードコート層と接するようにラミネートした。
【0048】
[実施例2]
ポリオルガノシロキサンとしてX−22−2426(信越化学)の代わりに、X−22−174DX(信越化学)を使用したこと以外は、実施例1と同一な方式で保護フィルム及び導電性積層体を製造した。
【0049】
[実施例3]
2−エチルヘキシルアクリレート、ポリオルガノシロキサンとしてX−22−2426(信越化学)及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを94:1:5(2−EHA:X−22−2426:2−HEA)の重量割合で使用して共重合体を製造し、イソシアネート系架橋剤であるHMDI/IPDI(=8/2重量割合(NCO%:16wt%))を共重合体100重量部に対して、3.8重量部で使用したこと以外は、実施例1と同一な方式で保護フィルム及び導電性積層体を製造した。
【0050】
[実施例4]
2−エチルヘキシルアクリレート、ポリオルガノシロキサンとしてX−22−2426(信越化学)及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを94.5:0.5:5(2−EHA:X−22−2426:2−HEA)の重量割合で使用して共重合体を製造し、イソシアネート系架橋剤であるHMDI/IPDI(=8/2重量割合(NCO%:16wt%))を共重合体100重量部に対して、3.8重量部で使用したこと以外は、実施例1と同一な方式で保護フィルム及び導電性積層体を製造した。
【0051】
[比較例1]
ポリオルガノシロキサンの添加なしに、2−エチルヘキシルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを85:15(2−EHA:2−HEA)の重量割合で使用して共重合体を製造し、イソシアネート系架橋剤であるHMDI/IPDI(=8/2重量割合(NCO%:16wt%))を共重合体100重量部に対して、11.7重量部で使用したこと以外は、実施例1と同一な方式で保護フィルム及び導電性積層体を製造した。
【0052】
[比較例2]
ポリオルガノシロキサンの添加なしに、2−エチルヘキシルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを95:5(2−EHA:2−HEA)の重量割合で使用して共重合体を製造し、イソシアネート系架橋剤であるHMDI/IPDI(=8/2重量割合(NCO%:16wt%))を共重合体100重量部に対して、3.8重量部で使用したこと以外は、実施例1と同一な方式で保護フィルム及び導電性積層体を製造した。
【0053】
[比較例3]
樹脂では、2−エチルヘキシルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを90:10(2−EHA:2−HEA)の重量割合で使用して共重合体を製造し、ポリオルガノシロキサンとして重合性官能基がないBYK−377を共重合体100重量部に対して0.1重量部で添加し、イソシアネート系架橋剤であるHMDI/IPDI(=8/2重量割合(NCO%:16wt%))を共重合体100重量部に対して、7.5重量部で使用したこと以外は、実施例1と同一な方式で保護フィルム及び導電性積層体を製造した。
【0054】
[実験例1:剥離力]
実施例及び比較例で熟成(硬化)が完了された保護フィルムの粘着剤層をITOフィルムのハードコート面に付着した後、150℃で1時間の間熱処理を実行し、高速剥離機(CBT−4720、忠北テック)を使用して、常温で20m/minの剥離速度、180゜剥離角度で剥離力(幅:1inch)を測定する。
【0055】
[実験例2:可使時間]
実施例及び比較例で製造された粘着剤組成物に対して、回転型粘度計(LVDV−II pro、ブルックフィールド社製)を使用して、スピンドル#63及び温度25℃の条件で、50rpmの速度で粘度を測定した。前記組成物で共重合体と架橋剤が混合された直後の粘度を初期粘度で仮定し、初期粘度に比べて2倍以上の粘度に増加するまでかかる時間変化を測定して可使時間で定義した。
【0056】
[実験例3:Haze]
実施例及び比較例により製造された導電性積層体から保護フィルムを剥離した後、前記導電性積層体に対してヘイズメートル(HM−150)でヘイズを測定した。
【0057】
【表1】
【0058】
比較例1及び比較例2の場合、粘着剤層にポリオルガノシロキサン鎖が導入されなかった。その結果、十分な可使時間を得ることができないか剥離力が高く測定された。比較例3の場合、ポリオルガノシロキサンを添加剤で含んだ結果、保護フィルムの剥離後、ITOに添加剤が転写されて光学物性が落ちる結果を示した。