(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート(A1)を5〜40質量%の範囲で含む活性エネルギー線硬化性化合物(A)、下記式(1)で表される官能基及びポリオキシエチレン鎖を有するフッ素系界面活性剤(B)、及び、リチウム塩(C)を含有するものである。
【0015】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)としては、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート(A1)を5〜40質量%の範囲で含むものである。
【0016】
前記アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート(A1)としては、1分子中のアルキレンオキサイドの付加モル数が3〜50モルのものが好ましい。このようなアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート(A1)の具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られたジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られたジオールのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート(A1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0017】
また、前記アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート(A1)の中でも、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートは、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の帯電防止性をより向上させ、塗膜硬度を維持できることから好ましい。
【0018】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0019】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化性化合物(A)としては、上記のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート(A1)以外のものとして、例えば、多官能(メタ)アクリレート(A2)、ウレタン(メタ)アクリレート(A3)等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0020】
前記多官能(メタ)アクリレート(A2)は、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。この多官能(メタ)アクリレート(A2)の具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート(A2)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの多官能(メタ)アクリレート(A2)の中でも、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の表面硬度がより向上することから、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A3)は、ポリイソシアネート(a3−1)と水酸基を有する(メタ)アクリレート(a3−2)とを反応させて得られたものである。
【0022】
前記ポリイソシアネート(a3−1)としては、脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートとが挙げられるが、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の着色を低減できることから、脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
【0023】
前記脂肪族ポリイソシアネートは、イソシアネート基を除く部位が脂肪族炭化水素から構成される化合物である。この脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナトシクロヘキサン等の脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、前記脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートを3量化した3量化物も前記脂肪族ポリイソシアネートとして用いることができる。また、これらの脂肪族ポリイソシアネートは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0024】
前記脂肪族ポリイソシアネートの中でも塗膜の耐擦傷性を向上させるには、脂肪族ポリイソシアネートの中でも、直鎖脂肪族炭化水素のジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートであるノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0025】
前記(メタ)アクリレート(a3−2)は、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。この(メタ)アクリレート(a3−2)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε−カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε−カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(a3−2)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0026】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A3)の中でも、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の耐擦傷性を向上できるため、1分子中に4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。前記ウレタン(メタ)アクリレート(A3)を1分子中に4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものとするため、前記(メタ)アクリレート(a3−2)としては、(メタ)アクリロイル基は2つ以上有するものが好ましい。このような(メタ)アクリレート(a3−2)としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(a3−2)は、前記脂肪族ポリイソシアネートの1種に対して、1種を用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの(メタ)アクリレート(a3−2)の中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートは、耐擦傷性を向上できるため好ましい。
【0027】
前記ポリイソシアネート(a3−1)と前記(メタ)アクリレート(a3−2)との反応は、常法のウレタン化反応により行うことができる。また、ウレタン化反応の進行を促進するために、ウレタン化触媒の存在下でウレタン化反応を行うことが好ましい。前記ウレタン化触媒としては、例えば、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等のアミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン等のリン化合物;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫等の有機錫化合物、オクチル酸亜鉛等の有機亜鉛化合物などが挙げられる。
【0028】
また、必要に応じて、上記の多官能(メタ)アクリレート(A2)、ウレタン(メタ)アクリレート(A3)以外の活性エネルギー線硬化性化合物(A)として、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等を用いることができる。前記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリシジルメタクリレート等に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られるものが挙げられる。また、前記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールを重縮合して得られた両末端が水酸基であるポリエステルに、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたもの、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加したものに(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたものが挙げられる。さらに、前記ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエーテルポリオールに(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたものが挙げられる。
【0029】
前記フッ素系界面活性剤(B)は、下記式(1)で表される官能基及びポリオキシエチレン鎖を有するものである。
【0031】
また、より具体的なものとして、下記式(2)又は(3)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化4】
(式中、n、p、q及びrは、オキシエチレンの繰り返し単位数を表し、nは平均で20以上であり、p、q及びrの合計は平均で20以上である。)
【0033】
式(2)中のn、式(3)中のp、q及びrは、それぞれオキシエチレンの繰り返し単位数を表し、nは平均で15以上であり、p、q及びrの合計は平均で15以上であるが、それぞれ15〜70の範囲が好ましく、20〜60の範囲をより好ましく、30〜50の範囲がさらに好ましい。
【0034】
前記フッ素系界面活性剤(B)の配合量は、優れた帯電防止性を維持しつつ、高温高湿環境下でのフィルムの曇りをより抑制できることから、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲が好ましく、0.3〜2質量部の範囲がより好ましく、0.5〜1.5質量部の範囲がさらに好ましい。
【0035】
前記リチウム塩(C)としては、リチウム塩であれば特に限定なしに用いることができるが、例えば、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiPF
6、LiClO
4、LiBF
4等が挙げられる。これらの中でも、LiClO
4が優れた帯電防止性を本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜に付与できることから好ましい。
【0036】
前記リチウム塩(C)の配合量は、優れた帯電防止性を維持しつつ、高温高湿環境下でのフィルムの曇りをより抑制できることから、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、0.04〜0.25質量部の範囲が好ましく、0.06〜0.20質量部の範囲がより好ましく、0.08〜0.16質量部の範囲がさらに好ましい。
【0037】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、基材に塗布後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線をいう。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中に光重合開始剤(D)を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤(E)を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤(D)や光増感剤(E)を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤(D)や光増感剤(E)を添加する必要はない。
【0038】
前記光重合開始剤(D)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル(ジベンゾイル)、メチルフェニルグリオキシエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステル等のベンジル系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルサルフォニル)プロパン−1−オン等が挙げられる。これらの光重合開始剤(D)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0039】
また、前記光増感剤(E)としては、例えば、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の3級アミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0040】
上記の光重合開始剤(D)及び光増感剤(E)の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)及び前記化合物(B)の合計100質量部に対し、各々0.05〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0041】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、上記の活性エネルギー線硬化性化合物(A)及びシリカ粒子(B)等以外に、用途、要求特性に応じて、有機溶剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機充填剤などを配合することができる。これらその他の配合物は単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0042】
前記有機溶剤は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の溶液粘度を適宜調整する上で有用であり、特に薄膜コーティングを行うためには、膜厚を調整することが容易となる。ここで使用できる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0043】
本発明のフィルムで用いる前記基材フィルムは、フィルム状でもシート状でもよく、その厚さは、20〜500μmの範囲が好ましい。また、前記基材フィルムの材質としては、透明性の高い樹脂が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン−1等のポリオレフィン系樹脂;セルロースアセテート(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリビニルアルコール;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリスチレン;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂;ノルボルネン系樹脂(例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」)、変性ノルボルネン系樹脂(例えば、(JSR株式会社製「アートン」)、環状オレフィン共重合体(例えば、三井化学株式会社製「アペル」)などが挙げられる。さらに、これらの樹脂からなる基材を2種以上貼り合わせたものを用いても構わない。
【0044】
また、前記樹脂フィルムの厚さは、20〜200μmの範囲が好ましく、30〜150μmの範囲がより好ましく、40〜130μmの範囲がさらに好ましい。フィルム基材の厚さを当該範囲とすることで、環状オレフィン樹脂フィルムの片面に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物によりハードコート層を設けた場合にもカールを抑制しやすくなる。
【0045】
本発明のフィルムは、当該フィルムの少なくとも1面に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、その後活性エネルギー線を照射して硬化塗膜とすることで得られたものである。フィルムに本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工する方法としては、例えば、ダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中に有機溶媒を含む場合は、活性エネルギー線硬化性組成物を基材フィルムへの塗工した後、活性エネルギー線を照射する前に、有機溶媒を揮発させ、また、前記シリカ粒子(B)を塗膜表面に偏析させるために、加熱又は室温乾燥することが好ましい。加熱乾燥の条件としては、有機溶剤が揮発する条件であれば、特に限定しないが、通常は、温度50〜100℃の範囲で、時間は0.5〜10分の範囲で加熱乾燥することが好ましい。
【0047】
また、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化するために、紫外線を照射する装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有するフィルムは、高いアンチブロッキング性に加え、その表面の耐擦傷性に優れることから、各種用途に適用できるが、特に、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)等の画像表示装置の画像表示部に用いる光学フィルムとして有用である。特に、薄型であっても優れた耐擦傷性を有することから、例えば、電子手帳、携帯電話、スマートフォン、携帯オーディオプレイヤー、モバイルパソコン、タブレット端末等の小型化や薄型化の要請の高い携帯電子端末の画像表示装置の画像表示部の光学フィルムとして好適に用いることができる。また、光学フィルムとして用いる場合、画像表示装置の画像表示部の最表面に用いる保護フィルム、タッチパネルの基材として用いることができる。さらに、保護フィルムとして用いた場合には、例えば、LCDモジュールやOLEDモジュール等の画像表示モジュールの上部に当該画像表示モジュールを保護する透明パネルが設けられた構成の画像表示装置においては、当該透明パネルの表面又は裏面に貼り付けて使用することで、傷つき防止や透明パネルが破損した際の飛散防止に有効である。
【実施例】
【0049】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0050】
(実施例1)
6官能ウレタンアクリレート(DIC株式会社製、商品名「ユニディックV−4025」、不揮発分80質量%)37.5質量部、3官能ウレタンアクリレート(DIC株式会社製、商品名「ユニディックV−4260」)50質量部、トリメチロールプロパントリアクリレートのエチレンオキサイド付加物(MIWON社製、商品名「MIRAMER M−3150」;エチレンオキサイド(EO)付加モル数15)20質量部、過塩素酸リチウム(LiClO
4)0.12質量部、フッ素系界面活性剤(1)(株式会社ネオス製、商品名「フタージェント245F」;式(2)におけるnの平均が45のもの)0.5質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア2959」;40質量%メタノール溶液で配合)4質量部を均一に混合した後、メチルエチルケトンで不揮発分40質量%となるように調整して、活性エネルギー線硬化性組成物(1)を得た。
【0051】
[評価用フィルムの作製]
上記で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(1)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、商品名「コスモシャインA4100」;厚さ100μm)上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で90秒間加熱後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製「UV照射装置」、ランプ:120W/cm、高圧水銀ランプ、照射光量:1.5kJ/m
2)を用いて紫外線を照射し、膜厚が7μmの硬化塗膜を有する評価要フィルムを得た。
【0052】
[表面抵抗値の測定(帯電防止性の評価)]
上記で得られた評価用フィルムの硬化塗膜の表面について、デジタル超高抵抗/微少電流計(株式会社アドバンテスト製「R8340A」)を用いて、印加電圧500Vで表面抵抗値を測定した。
【0053】
[耐湿熱性の評価]
上記で得られた評価用フィルムを、温度80±2℃、相対湿度95±2%に調節した小型環境試験機内に17時間放置した後、温度23±2℃、相対湿度50±2%の恒温恒湿内で1時間放置した。次いで、暗室に置いた卓上蛍光灯を光源として、評価用フィルムの裏面から透過光でフィルム表面の曇りを目視で観察し、下記の基準にしたがい耐湿熱性を評価した。
○:曇りなし
×:曇りあり
【0054】
(実施例2〜4及び比較例1〜6)
表1に示した配合組成に変更した以外は実施例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(2)〜(4)及び(R1)〜(R6)を得た。得られた活性エネルギー線硬化性組成物(2)〜(4)及び(R1)〜(R6)を用いて、実施例1と同様に評価用フィルムを作製し、表面抵抗値の測定(帯電防止性の評価)及び耐湿熱性の評価を行った。
【0055】
実施例1〜4及び比較例1〜6の活性エネルギー線硬化性組成物(1)〜(4)及び(R1)〜(R6)の配合組成、評価結果を表1に示す。なお、配合組成は不揮発分での配合量を記載している。
【0056】
【表1】
【0057】
表1における各配合成分は、以下のものである。
フッ素系界面活性剤(2):株式会社ネオス製、商品名「フタージェント240G」;式(3)におけるp、q及びrの合計の平均が40のもの)
フッ素系界面活性剤(3):AGCセイミケミカル株式会社製、商品名「サーフロンS−242」;パーフルオロアルキルのエチレンオキサイド付加物
シリコーン系界面活性剤(1):ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−320」;ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、不揮発分52質量%(表面張力低下能低)
シリコーン系界面活性剤(2):ビックケミー・ジャパン株式会社、商品名「BYK−333」;ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(表面張力低下能高)
【0058】
表1に示した評価結果から、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜は、10の10〜11乗台の低い表面抵抗値を有しており、またことが確認できた。したがって、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、透明性が要求され、優れた帯電防止性を要求される光学フィルム等のハードコート剤として好適に用いることができる。
【0059】
一方、比較例1の活性エネルギー線硬化性組成物は、本発明の必須成分であるフッ素系界面活性剤(B)を用いなかった例であるが、高温高湿環境下で保管されても曇りを生じないものの、表面抵抗値が10の13乗台と高く、十分な帯電防止性を有しないことが確認できた。
【0060】
比較例2の活性エネルギー線硬化性組成物は、本発明の必須成分であるフッ素系界面活性剤(B)を用いず、リチウム塩の配合量を増加させた例であるが、比較例1のものと比較して表面抵抗値が10の12乗台とわずかに低下したものの、高温高湿環境下での保管で曇りを生じる問題があることが確認できた。
【0061】
比較例3の活性エネルギー線硬化性組成物は、本発明の必須成分であるフッ素系界面活性剤(B)に代えて、それ以外のフッ素系界面活性剤を用いた例であるが、高温高湿環境下で保管されても曇りを生じないものの、表面抵抗値が10の12乗台と高く、十分な帯電防止性を有しないことが確認できた。
【0062】
比較例4及び5の活性エネルギー線硬化性組成物は、本発明の必須成分であるフッ素系界面活性剤(B)に代えて、シリコーン系界面活性剤を用いた例であるが、高温高湿環境下で保管されても曇りを生じないものの、表面抵抗値が10の12乗台と高く、十分な帯電防止性を有しないことが確認できた。
【0063】
比較例6の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物中のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートの比率が40質量%を超える例であるが、表面抵抗値が10の10乗台と低いが、高温高湿環境下での保管で曇りを生じる問題があることが確認できた。