(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のステップにおける目標供給流量は、複数の鋳型のうち第1番目に溶湯が供給される鋳型における第1のステップの供給流量を基本値とし、この基本値を、前記第1の目標重量に達したときの傾動式取鍋の傾動角度に応じ設定される第1の補正値で補正して設定する請求項1に記載の自動注湯方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、特に自動車用鋳物部品などの分野では、競争力の向上のため更なるコスト低減が望まれており、鋳造工程における注湯時間を従来並みに維持しつつ更なる注湯精度の高精度化への強い要請がある。
【0007】
本発明は、かかる要請に対し本願発明者らが鋭意検討してなされた発明であり、傾動式取鍋を用い、複数の鋳型のキャビティに個々に溶湯を供給する自動注湯方法において、上記従来技術に対し、鋳造時の溶湯の注湯時間を従来並みに維持しつつ注湯精度の高精度化を図ることができる自動注湯方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一つの形態は、傾動式取鍋を用い、
同様な複数の鋳型のキャビティに個々に溶湯を供給する自動注湯方法であって、
個々に溶湯を供給する際に繰り返される第1〜第3の段階を少なくとも有し、
第1の段階は、傾動式取鍋を一の方向に傾動させ、第1の目標重量に達するまで鋳型のキャビティに溶湯を供給する段階であり、
第2の段階は、
前記第1の目標重量に達したときに確認された傾動式取鍋の傾動角度に基づき設定された目標供給流量となるよう、傾動式取鍋を傾動させる第1のステップと、
前記第1のステップの後、前記目標供給流量よりも低い供給流量となるよう傾動式取鍋を傾動させ、前記第1の目標重量よりも大きな第2の目標重量に達するまで鋳型のキャビティに溶湯を供給する第2のステップとを含む段階であり、
第3の段階は、前記第2の目標重量に達した後に、傾動式取鍋を他の方向に傾動させ、溶湯の供給を停止させる段階であり、
前記第1のステップにおいて確認された傾動式取鍋の傾動角度が一定の値を超える場合には、前記第1のステップにおける目標供給流量を、前記第1の目標重量に達したときの供給流量を超えるように設定することを特徴とする自動注湯方法、である。
【0009】
上記形態の自動注湯方法において、前記第1のステップにおける目標供給流量は、複数の鋳型のうち第1番目に溶湯が供給される鋳型における第1のステップの供給流量を基本値とし、この基本値を、前記第1の目標重量に達したときの傾動式取鍋の傾動角度に応じ設定される第1の補正値で補正して設定することが望ましい。
【0010】
さらに、複数の鋳型のうち第N(Nは3以上の整数)番目の鋳型のキャビティに溶湯を供給するにあたり、
第(N−1)番目の鋳型において前記第2の目標重量に達したときの鋳型における供給流量をL1、第(N−2)番目の鋳型において前記第2の目標重量に達したときの鋳型における供給流量をL2としたとき、L1<L2の場合には、
第N番目の鋳型のキャビティに溶湯を供給するための前記第1のステップにおける目標供給流量を、前記L1とL2の差分に基づき設定される第2の補正値で補正して設定することが望ましい。
【0011】
加えて、前記第2のステップにおける供給流量が、所定の期間、ほぼ一定または漸減するように傾動式取鍋を傾動させることが望ましい。
【0012】
さらに加えて、複数の鋳型のうち第N番目(Nは3以上の整数)の鋳型のキャビティに溶湯を供給するにあたり、
第(N−1)番目の鋳型への溶湯の供給開始点から前記第2の目標重量に達したときまでの時間をT1、第(N−2)番目の鋳型への溶湯の供給開始点から前記第2の目標重量に達したときまでの時間をT2としたとき、
第N番目の鋳型のキャビティに溶湯を供給するための前記第1の段階における供給流量を、前記T1とT2の差分に基づき、第(N−1)番目の鋳型のキャビティへの供給流量に対し増減することがより望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来技術に対し、鋳造時の溶湯の注湯時間を維持しつつ注湯精度の高精度化を図ることができる自動注湯方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記課題を解決する手段の項で説明したように、本発明に係る自動注湯方法は、その流れを示すフロー図である
図1に示すように、傾動式取鍋を用い、複数の鋳型のキャビティに個々に溶湯を供給する自動注湯方法であり、第1の段階S1、第2の段階S2および第3の段階S3を少なくとも基本的な構成としている。
【0016】
第1の段階(以下、理解のため、この段階を供給段階と言う場合がある。)S1は、傾動式取鍋を一の方向に傾動させ、第1の目標重量に達するまで鋳型のキャビティに溶湯を供給する段階である。また、第2の段階(以下、この段階を予備湯切段階と言う場合がある。)S2は、第1の目標重量に達したときに確認された傾動式取鍋の傾動角度に基づき設定された目標供給流量となるよう、傾動式取鍋を傾動させる第1のステップと、第1のステップの後、第1のステップの目標供給流量よりも低い供給流量となるよう傾動式取鍋を傾動させ、第1の目標重量よりも大きな第2の目標重量に達するまで鋳型のキャビティに溶湯を供給する第2のステップとを含む段階である。さらに、第3の段階(以下、この段階を本湯切段階と言う場合がある。)S3は、第2の目標重量に達した後に、傾動式取鍋を他の方向に傾動させ、溶湯の供給を停止させる段階である。
【0017】
そして、本発明に係る自動注湯方法では、上記第1のステップにおいて確認された傾動式取鍋の傾動角度が一定の値を超える場合には、当該第1のステップにおける目標供給流量を、第1の目標重量に達したときの供給流量を超えるように設定している。
【0018】
かかる自動注湯方法によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、供給(第1の)段階S1で供給された溶湯は、本湯切(第3の)段階S3で、その供給が停止される。この本湯切工程S3で、他の方向への傾動開始後、溶湯の供給が停止するまでの間に傾動式取鍋から流出して鋳型のキャビティに供給される溶湯の量のバラツキを低減するため、本湯切段階S3の前に、予備湯切(第2の)段階S2の第2のステップを実行する。つまり、第2のステップでは、その溶湯の供給流量を第1のステップにおける溶湯の目標供給流量よりも低くして溶湯の供給流量を絞ることで、第2のステップにおける傾動式取鍋から供給される溶湯の供給流量の変動を抑制させつつ本湯切段階S3の開始の起点である第2の目標重量まで注湯している。これにより、本湯切段階S3における溶湯の供給重量を一定に制御することができ、従来技術を超えた高い注湯精度を得ることができる。
【0019】
一方で、予備湯切段階S2の第2のステップでは、第1のステップの目標供給流量より供給流量を絞るために、特に傾動式取鍋の傾動角度が大きな場合には溶湯の供給流量が低くなり過ぎ、第2のステップの注湯時間が長くなり、その結果、注湯工程全体の注湯時間も長くなるおそれがある。そこで、本発明に係る自動注湯方法では、第1のステップにおいて確認された、第1の目標重量に達したときの傾動式取鍋の傾動角度が一定の値を超える場合、つまり傾動式取鍋から鋳型のキャビティに供給される溶湯の供給流量が減少することが予想される場合には、当該第1のステップにおける目標供給流量を第1の目標重量に達したときの供給流量を超えるように設定している。このように第1のステップでの溶湯の供給流量を増加せしめ第1のステップの注湯時間を短くすることにより、第2のステップにおける溶湯の供給流量の減少を補完し、注湯精度を高めつつ注湯工程全体の注湯時間を従来並みに以下に短縮することができる。
【0020】
以下、本発明に係る自動注湯方法について、その具体的な実施形態に基づき図面を参照しつつ説明する。なお、下記説明する実施形態は、上記説明した自動注湯方法に更に好ましい構成要素を付加した例であり、本発明は下記する実施形態に限定されない。
【0021】
まず、本実施形態の自動注湯方法に使用される自動注湯装置の一例について、その概略構成図である
図7を参照しつつ説明する。鋳型60に形成されたキャビティ60cに溶湯Mを注湯する自動注湯装置10は、溶湯Mを収納する傾動式取鍋(以下、単に取鍋と言う場合がある。)10aを有し、取鍋10aの上部には出湯口10bが形成されている。そして、取鍋10aは、サーボモータ10dで回動する傾動架台10cの上に設置されており、さらに当該傾動架台10cは、不図示の横行機構により、紙面水平方向(図示XおよびY方向)に移動する横行架台10eに設置されている。ここで、傾動架台10cの傾動角度はサーボモータ10dに内蔵されたエンコーダ(角度計)10iで、不図示の横行機構による横行する横行架台10eのXおよびY方向の位置はリニアスケールなどで検出される。そして検出された値は制御部10gに入力され、制御部10gで適宜処理され、サーボモータ10dなどの動作を制御する。これにより、傾動架台10cおよび横行架台10eは適切に動作し、取鍋10aは、回転中心Oを中心として傾動して所望の角度まで傾動することにより内部に収納された溶湯Mを出湯口10bから出湯させることができる。なお、以下の説明では、回転中心Oを中心とした、取鍋10aの図示+方向の時計周り方向(一の方向)の傾動を「正傾動」、図示−方向の反時計周り方向(他の方向)の傾動を「逆傾動」という場合がある。また、取鍋10aの傾動角度とは、
図7に示すように、取鍋10aが立った状態を基準(0°)としたときの回転中心O周りの角度のことを指す。また、傾動架台10cを傾動させる手段はサーボモータ10dに限定されず、例えば油圧または空気圧などで作動する流体圧シリンダーであってもよい。
【0022】
上記横行架台10eの底面には重量計10fが設置されており、取鍋10aに収納された溶湯Mの重量をオンラインで検出し、制御部10gに入力する。これにより、注湯時における溶湯Mの重量を得ることができるとともに、当該重量の時間的変化から溶湯の供給流量を演算して得ることができる。符号10hは、出湯口10bから出湯する溶湯Mの流れを臨むように配置された出湯検出器であり、例えば反射式や透過式のレーザー検出器などを使用することができる。出湯検出器10hは制御部10gに接続されており、出湯口10bからの溶湯Mの出湯が開始すると、出湯開始信号を制御部10gに入力するよう構成されている。
【0023】
自動注湯装置10の各構成要素を制御する制御部10gは、上記した角度計10i等から入力される各種信号のインターフェース、当該信号をデジタル化するAD変換器、デジタル化された情報、各種設定値および演算処理用のプログラムなどを記憶する記憶装置(メモリー)、プログラムに基づき各種情報を演算処理する演算装置(CPU)などで構成されたコンピューターであり、プログラムに基づき供給段階S1〜本湯切段階S3を実行する。ここで、本形態の自動注湯方法は、プログラム中にコーディングされた供給段階S1〜本湯切段階S3各々を実行する手段によりソフトウエア的に実現されるが、供給段階S1〜本湯切段階S3各々を実行する手段を回路上に形成してハードウエア的に実現しても構わない。
【0024】
本実施形態で溶湯Mが注湯される鋳型60は、生砂型である上型60aおよび下型60bを組み合わせた鋳型60であり、その内部のキャビティ60cは、その要素として、湯口部60d、湯道部60eおよび製品部60fなどのキャビティで構成されている例であるが、鋳型は例えばシェル鋳型や自硬性鋳型であってもよく、金属型などの永久鋳型であってもよい。また、キャビティの要素としては、上記以外に例えば押湯部その他のキャビティ要素を含んでいてもよい。
【0025】
図7では、1個の鋳型60のみが表示されているが、本実施形態では、不図示の鋳型搬送部が、紙面において垂直方向(Y方向)に延びるように配置されており、この鋳型搬送部には、鋳型60と同様な鋳型が複数個配置されている。これにより、例えば第N番目の鋳型への注湯が完了すると取鍋10aから離れるように紙面奥方向へ搬送され、紙面手前方向に配置された次の鋳型である第(N+1)番目の鋳型が取鍋10aの側方に位置する注湯点まで搬送され、そのキャビティに溶湯が注湯される。つまり、本実施形態の自動注湯方法では、このように複数の鋳型のキャビティに対し、溶湯は、連続して個々に供給されることとなる。なお、本実施形態では、上記のように取鍋10の位置が固定され、注湯点まで鋳型60が移動する定点注湯方式であるが、鋳型を移動させず、取鍋が注湯点まで移動して注湯する追い注ぎ方式であってもよい。
【0026】
上記取鍋10を使用した、好ましい例である本実施形態に係る自動注湯方法について、
図1〜
図8を参照して説明する。ここで、
図8(a)は、本実施態様における自動注湯方法で注湯した場合の、取鍋の傾動速度の時間的変化を示す線
図70および注湯重量の時間的変化を示す線
図80であり、
図8(b)は、単位時間当たりの溶湯の供給流量の時間的変化を示す線
図90である。
【0027】
本実施形態における全体の制御の流れを示すフロー図である
図1に示すように、本実施形態の自動注湯方法は、注湯開始(START)後、供給(第1の)段階S1、予備湯切(第2の)段階S2および本湯切(第3の)段階S3をこの順に実行する。そして、本湯切段階S3を実行して1個の鋳型への注湯が完了すると、注湯が完了した鋳型の個数N(Nは、1以上の整数である。)と目標注湯個数(Nf)とを比較し、一致しないとき(つまりN<Nfのとき)は供給段階S1へ戻り、再び供給段階〜本湯切段階を実行し、次の鋳型へ注湯する。そして、注湯した鋳型の個数(N)と目標注湯個数(Nf)が一致するとき(つまりN=Nfのとき)には注湯を終了(END)する。
【0028】
[第1の段階:供給段階]
図1の供給(第1の)段階S1について、その段階の詳細な制御の流れを示すフロー図である
図2に基づき説明する。まず、ステップS11で、今回溶湯を供給する鋳型が第2番目までの鋳型であるか(N≦2)を確認する。このステップS11でN=1および2の場合には、ステップS13に進み、N≧3の場合にはステップS12に進む。
【0029】
第1番目の鋳型(N=1)および第2番目の鋳型(N=2)に注湯する場合、ステップ13では、予め制御部のメモリーに入力されている初期設定値を呼び出し、この初期設定値を供給段階S1における取鍋の目標傾動速度R1とし、ステップS14へ進む。
【0030】
一方で、N≧3の場合には、ステップS12で、T1とT2とを比較し、取鍋の目標傾動速度を決定し、ステップS14へ進む。ここで、T1とは、
図8(a)に示す、第(N−1)番目の鋳型、つまり今から注湯しようとしている鋳型の1個前の鋳型(前回の鋳型)において、溶湯の供給が開始された時点(以下、供給開始点と言う場合がある。)P1から第2の目標重量にW2に達した時点(以下、第2の目標重量到達点と言う場合がある。)P3までの注湯時間T1のことを指す。また、T2とは、第(N−2)番目の鋳型、つまり今から注湯しようとしている鋳型の2個前の鋳型(前々回の鋳型)において、供給開始点P1から第2の目標重量到達点P3までの注湯時間T2のことを指す。
【0031】
そして、ステップS12では、制御部は、第N番目(今回)の鋳型における注湯の供給段階S1の供給流量F2を適正な値に調整するため、出湯検知器および重量計から制御部に入力された出湯検知信号および取鍋内の溶湯重量に基づき上記注湯時間T1およびT2を求め、両者の差分に基づき、取鍋の傾動速度R1を設定して、前回の鋳型の供給流量F2に対し今回の鋳型への供給流量F2を増減する。具体的には、制御部は、T1−T2が設定した時間以上となり、前回の鋳型における注湯時間T1が前々回の鋳型における注湯時間T2に比べ長くなった場合には、取鍋の傾動速度R1を増速せしめ、前回の鋳型に対し今回の鋳型における供給段階S1の供給流量F2を増加させるのである。
【0032】
上記ステップS12およびS13の後に、ステップS12およびS13で決定された傾動速度R1で取鍋を正傾動1させるステップS14を実行する。具体的には、決定した傾動速度R1となるよう制御部はサーボモータ等を動作させ、傾動架台および横行架台の位置および移動速度を制御する。これにより、取鍋は、
図8(a)において線
図71で示すように、回転中心の周りに所定の傾動加速度で正傾動1し、線
図72で示すように、所望の傾動速度R1となった時点で当該傾動速度R1を維持する。そして、出湯口からの溶湯の出湯を出湯検知器が検知するまで、傾動速度R1を維持しつつ取鍋は正傾動を継続する(ステップS15)。このように傾動速度R1を維持するように取鍋を傾動させると傾動開始時に発生する溶湯の上面の揺れが収まりやすくなり、出湯口から出湯開始する際の溶湯の流出状態が安定し、出湯検知の確度を高めることができる。
【0033】
上記ステップS15で所定の傾動角度まで取鍋が正傾動1すると、出湯口から溶湯が出湯し、
図8(b)において線
図91で示すように、供給開始点P1から溶湯の供給が開始される。そして、出湯検知器が溶湯の出湯を検知すると、その出湯検出信号が制御部に入力され、注湯開始点P1以降、注湯が完了するまで
図2に示すステップS16が継続して実行される。ステップS16では、制御部は、重量計で計測され、入力された注湯重量を確認して記憶するとともに記憶された注湯重量の時間的変化から溶湯の実際の供給流量(以下、実供給流量と言う場合がある。)を演算する。
【0034】
上記ステップS16を実行しつつ、上記取鍋正傾動1とは異なったパターンで取鍋を正傾動させる取鍋正傾動2をステップS17で実行する。ここで、ステップS17は、上記のようにステップS16で演算された実供給流量に基づき所定の目標供給流量となるよう取鍋の傾動速度をフィードバック制御するステップである。具体的には、
図8(b)に示すように、線
図94で示される実供給流量が、所定の供給流量F2となるよう取鍋の傾動速度R2は制御される。この場合、取鍋の傾動速度のパターンはフィードバック制御により種々変化するが、通例、
図8(a)に示されるように、取鍋の傾動速度は減速され(線
図73)、その後、線
図74で示されるように一定の傾動速度R2となるよう振幅しつつ正傾動2するパターンとなる。
【0035】
上記のようにフィードバック制御によりステップS17で取鍋正傾動2を実行すると、
図8(a)において線
図80で示すように、溶湯の注湯重量は増加する。そして、重量計で計測された注湯重量が、第1の目標重量W1に到達したとステップS18で判断されると、供給(第1の)段階S1が終了し、第1の目標重量W1に到達した時点(以下、第1目標重量到達点と言う場合がある。)P2から予備湯切段階S2が実行される。
【0036】
[第2の段階:予備湯切段階]
予備湯切(第2の)段階S2について説明する。
図3に示すように、予備湯切段階S2は、第1のステップS21と、第2のステップ22とを有し、この順序で各ステップ21および22が実行される。以下、第1のステップS21、第2のステップの順に詳細を説明する。なお、予備湯切段階も、供給段階と同様に計測された溶湯の実注湯重量に基づきフィードバック制御を行ってもよいが、下記するように溶湯の供給流量の変化が大きく取鍋の傾動動作中に振動を発生させるおそれがあるためフィードバックをかけずにオープンな制御をすることが望ましい。
【0037】
第1のステップ21は、第1目標重量到達点P2において確認された取鍋の傾動角度αに基づき設定された目標供給流量F3aまたはF3b(
図8(b)参照)となるよう、取鍋を傾動させるステップである。なお、この第1のステップにおける目標供給流量F3aまたはF3bは、複数の鋳型60のうち第1番目(N=1)に溶湯が供給される鋳型60における第1のステップの供給流量を基本値とし、この基本値を、第1目標重量到達点P2における取鍋の傾動角度αに応じ設定される第1の補正値で補正して設定することが望ましい。
【0038】
第1のステップS21では、
図4に示すように、まず、上記した第1目標重量到達点P2に達したときの取鍋の傾動角度αをステップS211で確認する。具体的には、第1目標重量到達点P2に達したとき、角度計は取鍋の傾動角度αを計測し、計測された信号が制御部に入力される。そして、制御部は、ステップS212において、入力された傾動角度αと予め設定されている角度βとを比較し、α>βである場合には、ステップS214に進み、α≦βである場合には、ステップS213へ進む。ここで、角度βの値は、取鍋から出湯する溶湯の流量を、その傾動角度ごとに予め実験などで求め、決定される値である。
【0039】
ここで、ステップS212から分岐するステップS213およびS214は、いずれも、第1目標重量到達点P2において確認された取鍋の傾動角度αに基づき設定された目標供給流量F3aまたはF3bとなるよう、取鍋を傾動させるパターンを決定するステップである。しかしながら、以下説明するように、第1目標重量到達点Pのときの取鍋の傾動速度R2に対し、ステップS213は、取鍋の傾動速度を減速する通常のパターン(以下、通常パターンと言う場合がある。)を実行するのに対し、ステップS214は、取鍋を過傾動させ傾動速度を増速するパターン(以下、過傾動パターンと言う場合がある。)点で相違している。
【0040】
すなわち、第1目標重量到達点P2における取鍋の傾動角度αが所定の角度β以下の場合、つまり取鍋から出湯する溶湯の供給流量が多い場合に選択されるステップS213では、
図8(a)において線
図75bおよび76bで示すように、第1目標重量到達点P2における取鍋の傾動速度R2に対し取鍋の傾動速度がR3bと減速する通常パターンが選択される。この通常パターンは、
図8(b)において線
図95bで示すように、第1のステップS21における溶湯の目標供給流量F3bが、第1目標重量到達点P2のときの供給流量F4a以下となるように設定されている。このステップ213で通常パターンが選択されると、選択された通常パターンで取鍋が傾動するよう制御部はサーボモータ等に指令し、ステップS217において通常パターンで取鍋は正傾動3を行う。
【0041】
一方で、第1目標重量到達点P2における取鍋の傾動角度αが所定の角度βを超える場合、つまり取鍋から出湯する溶湯の供給流量が少ない場合に選択されるステップS214では、
図8(a)において線
図75aおよび76aで示すように、第1目標重量到達点P2における取鍋の傾動速度R2に対して取鍋の傾動速度がR3aと増速する過傾動パターンが選択される。この過傾動パターンは、
図8(b)において線
図95aで示すように、第1のステップS21における溶湯の目標供給流量F3aが、第1目標重量到達点P2のときの供給流量F4aを超えるように設定されている。
【0042】
このように第1目標重量到達点P2のときの供給流量F4aに対し、第1のステップS21における溶湯の目標供給流量F4aが超えるように取鍋を過傾動パターンで傾動させることにより、取鍋の傾動角度αが大きく溶湯の供給流量が少なくなる場合でも、上記したように第1のステップS21の注湯時間が短くなり、注湯工程全体の注湯時間を従来並みに維持することができる。
【0043】
上記ステップS214の後に実行されるステップS215およびS216は、本実施形態の自動注湯方法が、好ましい段階として含むステップである。ステップS215は、複数の鋳型のうち第N(Nは3以上の整数)番目の鋳型のキャビティに溶湯を供給するにあたり、
図8に示すように、第(N−1)番目の鋳型(前回の鋳型)において第2の目標重量W2に達したときの溶湯の供給流量L1と、第(N−2)番目の鋳型(前々回の鋳型)において第2の目標重量W2に達したときの溶湯の供給流量L2とを比較し、L1<L2であるか否かを判断するステップである。そして、ステップS215でL1≧L2、つまり、前回の鋳型の第2目標重量到達点P3における供給流量L1が、前々回の鋳型の第2目標重量到達点P3における供給流量L2以上であると判断した場合には、ステップS217に進み、上記のようにステップS214で選択された過傾動パターンのままで取鍋の正傾動3を行う。
【0044】
一方で、ステップS215でL1<L2、つまり、前回の鋳型の第2目標重量到達点P3における供給流量L1が、前々回の鋳型の第2目標重量到達点P3における供給流量L2未満と判断した場合には、ステップ216で、今回の鋳型のキャビティに溶湯を供給するための第1のステップS21における目標供給流量F3aに、前記L1とL2の差分に基づき設定される第2の補正値を加算する。つまり、L1<L2の場合には、上記ステップS214で設定された過傾動パターンの取鍋の傾動速度R3aに対し、さらに上記第2の補正値を反映して増速したパターン(以下、増速パターンという場合がある。)が選択され、その結果、第1のステップS21における溶湯の供給流量を過傾動パターンよりも更に増加せしめるのである。このような増速パターンは、取鍋の中に残る溶湯の量が少なく、取鍋の傾動角度が大きくなっており、取鍋からの溶湯の供給流量が減少する場合に、第1のステップ21の注湯時間を短縮できる点で有利である。ステップS216で増速パターンが選択されると、ステップS217に進み、増速パターンで取鍋の正傾動3が行われ、第1のステップ21が完了し、第2のステップ22に進む。
【0045】
第2のステップ22では、
図5および8に示すように、第1のステップS21の目標供給流量F3aまたはF3bよりも低い供給流量F4aまたはF4bとなるよう取鍋を傾動させ(ステップS221)、第1の目標重量W1よりも大きな第2の目標重量W2に達するまで鋳型のキャビティに溶湯を供給する(ステップS222)。なお、第2のステップ22における溶湯の供給流量は第1のステップよりも低ければ、そのパターンは特に問われない。しかしながら、第2のステップ22の供給流量は、
図8(b)において線
図98aおよび98bで示すように、所定の期間、ほぼ一定または漸減するように取鍋を傾動させることが、次に説明する本湯切段階において取鍋から流出する溶湯の重量のバラツキを低減できるので好ましい。このためには、
図8(a)において線
図78aまたは78bで示すように、所定の期間、ほぼ一定または漸減する傾動速度R4となるよう取鍋を正傾動4させればよい。
【0046】
上記のように取鍋を正傾動4させると、
図8(a)において線
図80で示すように、第1目標重量到達点P2から更に溶湯の注湯重量は増加する。そして、重量計で計測された注湯重量が、第2の目標重量W2に到達したとステップS222で判断されると、予備湯切段階S2が終了し、第2目標重量到達点P3から本湯切段階S3が実行される。なお、第2の目標重量W2は、次に説明する本湯切段階において逆傾動時に取鍋から流出する溶湯の重量を、傾動角度ごとに予め実験などで求め、当該求められた重量を注湯すべき溶湯重量Woから減ずることにより決定される値である。
【0047】
[第3の段階:本湯切段階]
図6および8に示すように、本湯切段階S3は、上記のように第2の目標重量W2に達した後に、取鍋を逆傾動(他の方向へ傾動)させ、溶湯の供給を停止させる段階である。具体的には、第2目標重量到達点P3において制御部はサーボモータ等に指令して傾動架台および横行架台を移動せしめ、
図8(a)において線
図79で示すように、所定の傾動加速度で所定の角度まで、取鍋を逆傾動させる。そして、
図8(b)に示すように、取鍋を逆傾動させる本湯切段階S3でも所定の量の溶湯が供給され、その完了時には、
図8(a)に示すように鋳型のキャビティには注湯すべき重量Woの溶湯が注湯されることとなる。