特許第6372859号(P6372859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6372859研磨パッドのコンディショニング方法及び研磨装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372859
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】研磨パッドのコンディショニング方法及び研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/017 20120101AFI20180806BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B24B53/017 Z
   H01L21/304 622M
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-196125(P2015-196125)
(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公開番号】特開2017-64874(P2017-64874A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年9月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591037498
【氏名又は名称】長野電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】安田 太一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正直
(72)【発明者】
【氏名】榎本 辰男
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一将
【審査官】 上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−186088(JP,A)
【文献】 特開2004−047876(JP,A)
【文献】 特開2002−355748(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0166785(US,A1)
【文献】 特開平09−272053(JP,A)
【文献】 特開2015−030058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/017
B24B 37/00 −37/34
B24B 49/00 −49/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な円盤状の定盤に貼り付けられたウェーハを研磨するための研磨パッドを、コンディショニングヘッドを用いてコンディショニングする方法であって、
前記定盤を回転させることで該定盤に貼り付けられた前記研磨パッドを回転させながら、前記コンディショニングヘッドを前記定盤の半径方向に移動させつつ前記コンディショニングを実施し、
前記定盤の回転数及び前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度を、前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離に応じて制御する時、
前記定盤の回転数が下記式(1)を満たし、かつ、前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動動作が下記式(2)及び(3)を満たすように、前記定盤の回転数及び前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度を制御することを特徴とする研磨パッドのコンディショニング方法。
T(r)=Tr×(r/r) ・・・(1)
V(r)=(r/r)V ・・・(2)
D÷Q=n ・・・(3)
(ここで、T(r):前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離がrの時の定盤回転数(rpm)、Tr:コンディショニング開始時の定盤回転数(rpm)、r:コンディショニング開始時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離(m)、r:前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離(m)、V(r):前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離がrの時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度(m/sec)、V:コンディショニング開始時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度(m/sec)、D:前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向のサイズ(m)、Q:前記定盤が1回転する時の前記コンディショニングヘッドが前記定盤の半径上を移動する距離(m)、n:正の整数である。)
【請求項2】
回転可能な円盤状の定盤に貼り付けられたウェーハを研磨するための研磨パッドを、コンディショニングするためのコンディショニングヘッドを具備する研磨装置であって、
前記定盤を回転させることで該定盤に貼り付けられた前記研磨パッドを回転させながら、前記コンディショニングヘッドを前記定盤の半径方向に移動させつつ前記コンディショニングを実施するものであり、
前記定盤の回転数及び前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度を、前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離に応じて制御する制御機構を具備するものであり、
前記制御機構が、前記定盤の回転数が下記式(1)を満たし、かつ、前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動動作が下記式(2)及び(3)を満たすように、前記定盤の回転数及び前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度を制御するものであることを特徴とする研磨装置。
T(r)=Tr×(r/r) ・・・(1)
V(r)=(r/r)V ・・・(2)
D÷Q=n ・・・(3)
(ここで、T(r):前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離がrの時の定盤回転数(rpm)、Tr:コンディショニング開始時の定盤回転数(rpm)、r:コンディショニング開始時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離(m)、r:前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離(m)、V(r):前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離がrの時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度(m/sec)、V:コンディショニング開始時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度(m/sec)、D:前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向のサイズ(m)、Q:前記定盤が1回転する時の前記コンディショニングヘッドが前記定盤の半径上を移動する距離(m)、n:正の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドのコンディショニング方法及び研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、シリコンウェーハ等の薄板状のワークを平面加工する場合、片面研磨装置や両面研磨装置などの研磨装置が使用されている。
【0003】
例えば、片面研磨装置は、回転駆動する円盤状の定盤に、発砲ウレタンや不織布からなる研磨パッドを貼り付け、研磨効率を上げるための研磨スラリーを流す。そして、その研磨パッドに、研磨ヘッドに保持されたウェーハを押しつけることで研磨を行う。ウェーハは、ワックス、真空や液体の表面張力で研磨ヘッドに貼り付けることができる。
【0004】
また、例えば、両面研磨装置では、発砲ウレタンや不織布からなる研磨パッドを貼り付けた円盤状の上下定盤の間に、キャリアと呼ばれる円盤状の遊星ギアを配置する。ワークはこの遊星ギアの保持穴に貫通保持され、遊星ギアにかみ合うサンギアとインターナルギアとを相互に回転させることにより、遊星ギアの自転及び公転を発生させる。両面研磨装置は、この自転、公転、及び上下定盤の回転とウェーハとの摺動によってウェーハの上下面を同時に研磨する。両面研磨中には、研磨を効率的に行うため、上定盤に設けられた複数の穴から、研磨スラリーを供給する。
【0005】
ところが、これらのような研磨装置で使用される研磨パッドでは、所謂目詰まりが発生する。目詰まりとは、研磨されたウェーハの残渣や研磨スラリーに含まれている固形物、又はそれらの混合物が、研磨パッドの表層に堆積したり、研磨パッドの内部に蓄積されたりすることをいう。目詰まりは、研磨効率を悪化させたり、研磨したワークの平坦度や表面品質を悪化させたりする。
【0006】
上記のような研磨パッドの変質に対し、目的に応じた様々なコンディショニングを研磨パッドに実施することが一般的である。コンディショニングとして、例えば、洗浄ノズルヘッドから研磨パッド表面に高圧の水を噴射することにより目詰まりを除去する方法が挙げられる。また、コンディショニングとして、例えば、ダイヤモンドから成る砥粒を散りばめたドレッサーヘッドを、研磨パッドの表面に押しつけ、定盤を回転させることで得られた砥粒と研磨パッドの摩擦により、目詰まりを含む研磨パッドの表層を削り取る方法が挙げられる。
【0007】
研磨パッドのコンディショニングを実施する際、洗浄ノズルヘッドやドレッサーヘッドは、研磨パッドの研磨に用いられる面(研磨面)より、明らかに小さい面積を有することが多い。そこで、研磨パッドの研磨面全体を洗浄したりドレスしたりするために、これらのコンディショニングヘッドはアームに取り付けられ、アームが直線運動又は旋回運動させることにより、定盤の最外周から最内周までヘッドを移動させることができる(例えば、特許文献1参照)。さらに、特許文献1に記載されているように、ヘッドの移動と同時に定盤を回転させることにより、ヘッドは研磨パッドの研磨面全体を洗浄したりドレスしたりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−202503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、シリコンウェーハの平坦度や表面品質に対する要求は、ますます厳しくなっている。この様な品質要求に応えるためには、両面研磨装置や片面研磨装置の研磨パッドの研磨面を常に適切な状態に維持することが重要である。
【0010】
しかしながら、実際の両面研磨や片面研磨のプロセスにおいては、研磨パッド表面で目詰まりが発生したり、研磨パッド表面の樹脂そのものが、変質、変形したりする。このような研磨パッドの状態の変化は、ウェーハの品質の低下及びばらつきを誘引する。ウェーハ品質の低下及びばらつきの発生を防止するためには、研磨パッドの研磨面を常に均一で良好な状態に維持することが重要である。
【0011】
一方で、近年のウェーハの大直径化により、研磨装置も大型化され、研磨パッドの面積も大きくなる傾向にある。このような面積の大きい研磨パッドを回転させながらコンディショニングした場合、研磨パッドが均一で良好な状態にならないという問題が発生した。その結果、研磨後のウェーハの平坦度が悪化してしまうという問題があった。
【0012】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、研磨パッドの研磨面の全面を適切にコンディショニングすることが可能である研磨パッドのコンディショニング方法及び研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、回転可能な円盤状の定盤に貼り付けられたウェーハを研磨するための研磨パッドを、コンディショニングヘッドを用いてコンディショニングする方法であって、前記定盤を回転させることで該定盤に貼り付けられた前記研磨パッドを回転させながら、前記コンディショニングヘッドを前記定盤の半径方向に移動させつつ前記コンディショニングを実施し、前記定盤の回転数及び前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度を、前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離に応じて制御することを特徴とする研磨パッドのコンディショニング方法を提供する。
【0014】
このように、コンディショニングヘッドの定盤の中心からの距離に応じて、定盤の回転数及びコンディショニングヘッドの定盤の半径方向への移動速度を制御すれば、研磨パッドの研磨面全体を適切にコンディショニングすることができる。
【0015】
このとき、前記定盤の回転数が下記式(1)を満たし、かつ、前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動動作が下記式(2)及び(3)を満たすように、前記定盤の回転数及び前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度を制御することが好ましい。
T(r)=Tr×(r/r) ・・・(1)
V(r)=(r/r)V ・・・(2)
D÷Q=n ・・・(3)
(ここで、T(r):前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離がrの時の定盤回転数(rpm)、Tr:コンディショニング開始時の定盤回転数(rpm)、r:コンディショニング開始時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離(m)、r:前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離(m)、V(r):前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離がrの時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度(m/sec)、V:コンディショニング開始時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度(m/sec)、D:前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向のサイズ(m)、Q:前記定盤が1回転する時の前記コンディショニングヘッドが前記定盤の半径上を移動する距離(m)、n:正の整数である。)
【0016】
式(1)及び式(2)を同時に満たすような条件、すなわち、コンディショニングヘッドの定盤の中心からの距離と定盤の回転数が反比例し、かつ、コンディショニングヘッドの定盤の中心からの距離とコンディショニングヘッドの定盤の半径方向への移動速度も反比例する条件に加え、さらに式(3)を同時に満たす条件、すなわち、定盤が回転しコンディショニングヘッドが定盤の半径上を移動するなかで、必ずコンディショニングヘッドが定盤に貼られた研磨パッド全面を接触等によりコンディショニングし、さらにパッド上のどの場所をとっても同じ回数だけコンディショニングヘッドとの接触等によるコンディショニングができる条件の下でコンディショニングを実施すれば、研磨パッドの研磨面全体を均一にコンディショニングすることができる。
【0017】
また、上記目的を達成するために、本発明は、回転可能な円盤状の定盤に貼り付けられたウェーハを研磨するための研磨パッドを、コンディショニングするためのコンディショニングヘッドを具備する研磨装置であって、前記定盤を回転させることで該定盤に貼り付けられた前記研磨パッドを回転させながら、前記コンディショニングヘッドを前記定盤の半径方向に移動させつつ前記コンディショニングを実施するものであり、前記定盤の回転数及び前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度を、前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離に応じて制御する制御機構を具備するものであることを特徴とする研磨装置を提供する。
【0018】
このように、コンディショニングヘッドの定盤の中心からの距離に応じて、定盤の回転数及びコンディショニングヘッドの定盤の半径方向への移動速度を制御可能な研磨装置であれば、研磨パッドの研磨面全体を適切にコンディショニング可能な条件を設定できるものとなる。
【0019】
このとき、前記制御機構が、前記定盤の回転数が下記式(1)を満たし、かつ、前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動動作が下記式(2)及び(3)を満たすように、前記定盤の回転数及び前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度を制御するものであることが好ましい。
T(r)=Tr×(r/r) ・・・(1)
V(r)=(r/r)V ・・・(2)
D÷Q=n ・・・(3)
(ここで、T(r):前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離がrの時の定盤回転数(rpm)、Tr:コンディショニング開始時の定盤回転数(rpm)、r:コンディショニング開始時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離(m)、r:前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離(m)、V(r):前記コンディショニングヘッドの前記定盤の中心からの距離がrの時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度(m/sec)、V:コンディショニング開始時の前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向への移動速度(m/sec)、D:前記コンディショニングヘッドの前記定盤の半径方向のサイズ(m)、Q:前記定盤が1回転する時の前記コンディショニングヘッドが前記定盤の半径上を移動する距離(m)、n:正の整数である。)
【0020】
式(1)、(2)、(3)を同時に満たすような条件のもとでコンディショニングを実施できるものとすれば、研磨パッドの研磨面の全体を均一にコンディショニングすることができるものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の研磨パッドのコンディショニング方法及び研磨装置であれば、研磨パッドの研磨面の全面を適切にコンディショニングすることが可能な条件を設定でき、研磨後のウェーハの平坦度の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の研磨装置を片面研磨装置とした例を示した概略図である。
図2】ドレスヘッドの定盤中心からの距離と研磨パッドとドレスヘッドがドレスする距離との関係の説明図である。
図3】ドレスヘッドの定盤中心からの距離と定盤回転数との関係を示すグラフである。
図4】ドレスヘッドの定盤中心からの距離とドレスヘッドがドレスする必要が有る距離との関係の説明図である。
図5】ドレスヘッドの定盤中心からの距離とドレスヘッド移動速度との関係を示すグラフである。
図6】定盤が1回転する間に、定盤半径上を移動するコンディショニングヘッドがどのように研磨パッドと接触するかを説明する図である。
図7】コンディショニングの疎密とコンディショニングヘッドの速度比(1/n)の関係を示すグラフである。
図8】本発明の研磨装置を両面研磨装置とした例を示した概略図である。
図9】実施例におけるドレスヘッドの定盤中心からの距離とドレスヘッド移動速度との関係を示すグラフである。
図10】実施例及び比較例で両面研磨したウェーハの平坦度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
上記のように、特に、研磨パッドの面積が大きくなるにつれて、研磨面の全体を適切にコンディショニングし、研磨面全体を均一な状態にすることが困難になるという問題があった。
【0025】
そこで、本発明者らはこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、コンディショニングヘッドの定盤の中心からの距離に応じて、コンディショニングの効果が変化することを知見した。そして、この距離に応じて定盤の回転数及びコンディショニングヘッドの定盤の半径方向への移動速度を制御して、研磨パッドの各部におけるコンディショニングの効果を調節し、研磨面の全体を均一な状態にコンディショニング可能な条件を設定でき、研磨後のウェーハの平坦度の悪化を抑制できることを想到し、本発明を完成させた。
【0026】
まず、本発明の研磨装置について説明する。本発明の研磨装置は、ウェーハの片面を研磨する片面研磨装置であっても良いし、ウェーハの両面を同時に研磨する両面研磨装置であっても良い。
【0027】
まず、本発明の研磨装置が図1に示すような片面研磨装置1である場合を説明する。図1に示すように、片面研磨装置1は、回転可能な円盤状の定盤2と、定盤2に貼り付けられた研磨パッド3と、ウェーハWを保持するための研磨ヘッド4と、研磨パッド3に研磨剤を供給する研磨剤供給機構5と、研磨パッド3をコンディショニングするコンディショニングヘッド6を具備している。
【0028】
このような片面研磨装置1では、研磨ヘッド4によって保持したウェーハWを、定盤2によって回転している研磨パッド3に押し当てることでウェーハWの表面を研磨する。この際に、研磨剤供給機構5から、研磨パッド3の表面に研磨剤を供給する。
【0029】
また、研磨パッド3のコンディショニングは、研磨に未使用の研磨パッドを研磨に使用できる状態にする立ち上げ時、及び研磨終了から次の研磨の開始までの研磨バッチ間などに実施される。なお、コンディショニングヘッド6としては、研磨パッド3表面に高圧の水を噴射することにより目詰まりを除去する洗浄ノズルヘッドを使用できる。また、コンディショニングヘッド6として、ダイヤモンドから成る砥粒を散りばめたドレッサーヘッドを用いることもできる。ドレッサーヘッドは、定盤2を回転させながら研磨パッド3の表面に砥粒を押しつけ、砥粒と研磨パッド3の間に摩擦を発生させることで、目詰まりを含む研磨パッドの表層を削り取るドレッシングを行う。
【0030】
本発明の研磨装置は、このコンディショニングの際に、定盤2を回転させることで定盤2に貼り付けられた研磨パッド3を回転させながら、コンディショニングヘッド6を定盤2の半径方向に移動させつつコンディショニングを実施する。図1に示す片面研磨装置1の場合、コンディショニングヘッド6はアーム7により定盤2の半径方向に移動させる。
【0031】
そして、片面研磨装置1は、定盤2の回転数及びコンディショニングヘッド6の定盤2の半径方向への移動速度を、コンディショニングヘッド6の定盤2の中心からの距離に応じて制御する制御機構8を具備する。
【0032】
研磨パッドの各部におけるコンディショニングの効果は、コンディショニングヘッド6の定盤2の中心からの距離に応じて変化する。よって、本発明のように、コンディショニングヘッド6の定盤2の中心からの距離に応じて定盤2の回転数及びコンディショニングヘッド6の定盤2の半径方向への移動速度を制御して、研磨パッド3の各部におけるコンディショニングの効果を調節すれば、研磨パッド3の研磨面の全面を適切にコンディショニングできる条件を設定できる。すなわち、本発明の研磨装置は、制御機構8で、コンディショニングの最中に、定盤2の回転数及びコンディショニングヘッド6の定盤2の半径方向への移動速度を制御して、最適な条件で研磨パッド3の研磨面をコンディショニングすることが可能となり、研磨後のウェーハの平坦度の悪化を抑制できる。
【0033】
また、本発明では制御機構8が、定盤2の回転数が下記式(1)を満たし、かつ、コンディショニングヘッド6の定盤2の半径方向への移動動作が下記式(2)及び(3)を満たすように、定盤2の回転数及びコンディショニングヘッド6の定盤2の半径方向への移動速度を制御するものであることが好ましい。
T(r)=Tr×(r/r) ・・・(1)
V(r)=(r/r)V ・・・(2)
D÷Q=n ・・・(3)
(ここで、T(r):コンディショニングヘッド6の定盤2の中心からの距離がrの時の定盤回転数(rpm)、Tr:コンディショニング開始時の定盤回転数(rpm)、r:コンディショニング開始時のコンディショニングヘッド6の定盤2の中心からの距離(m)、r:コンディショニングヘッド6の定盤2の中心からの距離(m)、V(r):コンディショニングヘッド6の定盤2の中心からの距離がrの時のコンディショニングヘッド6の定盤2の半径方向への移動速度(m/sec)、V:コンディショニング開始時のコンディショニングヘッド6の定盤2の半径方向への移動速度(m/sec)、D:コンディショニングヘッド6の定盤の半径方向のサイズ(m)、Q:定盤が1回転する時のコンディショニングヘッド6が定盤の半径上を移動する距離(m)、n:正の整数である。)
【0034】
式(1)、式(2)、及び式(3)を同時に満たす制御条件であれば、確実に研磨パッド3を均一な条件でコンディショニングできる。その理由を以下に説明する。上記のように、コンディショニングにより均一な研磨面を得るための方法として、本発明者らは研磨パッドの研磨面のどの位置においても同じ条件でコンディショニングできる条件を見いだすことが重要であると考えた。研磨面の変質は研磨パッドの全面で一様に生じるわけではないが、全面を均一にコンディショニングできる条件をベースに、変質が大きい領域のコンディショニングの強度を増やせばよいからである。
【0035】
例えば、コンディショニングヘッド6としてドレスヘッドが、定盤2の半径方向に移動しながら研磨パッド3のドレッシングを行う場合を考える。ドレスヘッドが研磨パッドの表層を削りとる量、所謂、取り代は一般に
(取り代)∝(圧力)×(接触速度)×(時間) ・・・(4)
と表現することができる。圧力に関しては、一般的な装置でも一定の荷重を得ることは容易であるので、これにドレスヘッドの研磨パッド3との定盤の接触速度が一定であること、研磨パッド上のいかなる場所においてもドレスヘッドとの接触時間が一定であること、の2つの要件を付加した場合に、研磨パッド3のいかなる場所でも、より均一な条件でドレッシングでき、より確実に研磨パッド3の均一なコンディショニングを行うことができる。
【0036】
ドレスヘッドと研磨パッドとの接触速度を一定とするには、上記式(1)を満たすように、定盤の回転数を制御すればよい。以下、その理由を説明する。
【0037】
まず、定盤の回転数が一定で、定盤の半径方向のうち、定盤の中心側から外側へドレスヘッドが等速直線運動する場合を考える。定盤回転数が一定なので、ドレスヘッドの半径上の位置に関係なく角速度は一定である。しかしながら、研磨パッドとドレスヘッドが接触する距離及び速度は、ドレスヘッドと定盤の中心との距離に比例して大きくなる。これを図2に図示し説明する。図2に示すように、時間がtからtまで経過した時、研磨パッド3は定盤の回転により回転する。定盤の中心からの距離r、r、及びrの位置では、破線の矢印で示すように、同一時間内(t〜t)での研磨パッド3とドレスヘッド9との接触距離は定盤の中心からのドレスヘッド9の距離に比例して長くなる。言い換えると、接触速度が速くなるということである。即ち、ドレスヘッド9の位置に応じて、異なる条件のドレッシングが実施されることになる。
【0038】
これを防ぐには、定盤の回転数をドレスヘッドの定盤の中心からの距離に反比例させればよい。すなわち、定盤の回転数を上記式(1)を満たすように制御すればよい。図3に式(1)を満たすように定盤の回転数を制御した場合の、定盤回転数とドレスヘッドの定盤中心からの距離の関係を表すグラフを示す。なお、図3に示すグラフの縦軸の「定盤回転数(相対値)」とは、ドレス開始時の定盤回転数に対する、ドレスヘッドの移動開始後の各位置での定盤回転数の相対値である。図3のように定盤回転数を制御すれば、同一時間内での研磨パッドとドレスヘッドとの接触速度が、ドレスヘッドの位置に応じて変化してしまうことが無い。
【0039】
また、研磨パッド上のいかなる場所においてもドレスヘッドとの接触時間を一定とするには、上記式(2)、および(3)を満たすように、ドレスヘッドの定盤の半径方向への移動速度を制御すれば良い。以下、その理由を説明する。
【0040】
定盤の回転数が上記の式(1)を満たすだけでは、研磨パッド上のいかなる場所においてもドレスヘッドとの接触時間を一定とするには不十分である。例えば、ドレスヘッドが定盤の半径上を定盤の内側から外側に等速直線運動する場合を考える。式(1)を満たす場合、ドレスヘッドの位置に応じて定盤の回転数は変化する。また、図4に示すように、ドレスヘッド9が定盤の中心から距離rの位置にあるとき、ドレスヘッド9は半径rの同心円の全周で研磨パッド3に対し働きかける必要が有る、即ち、半径rの円周上の全てにドレッシングを行う必要が有る。図4に示すように、ドレスヘッド9がrに到達したとき、ドレッシングする必要が有る円の円周の長さは2πrである。一方、ドレスヘッド9の位置が2rに到達したときには、4πrの長さに対し、ドレッシングする必要がある。すなわち、ドレスヘッド9の定盤中心からの距離に比例し、ドレッシングする必要のある長さは長くなる。よって、もしドレスヘッド9が等速直線運動すると、中心からの距離に反比例してドレスヘッド9が研磨パッド3に接触する時間が短くなってしまう。即ち、接触時間一定の条件が得られないということになる。
【0041】
研磨パッド上のいかなる場所においてもドレスヘッドとの接触時間を一定とするために、まず上記式(2)の条件を満たす必要がある。この式(2)は、ドレスヘッドの定盤の半径方向への移動速度を、ドレスヘッドの定盤の中心からの距離に反比例させることを示しており、すなわち、ドレスヘッドの定盤の半径方向の移動速度を上記式(2)を満たすように制御することを意味している。図5に上記式(2)を満たす場合の、ドレスヘッドの定盤の半径方向への移動速度とドレスヘッドの定盤中心からの距離の関係を表すグラフを示す。なお、図5に示すグラフの縦軸の「ヘッド移動速度(相対値)」とは、ドレス開始時のドレスヘッドの定盤の半径方向への移動速度に対する、各位置でのドレスヘッドの定盤の半径方向への移動速度の相対値である。
【0042】
さらに、式(3)について図6を用いて説明する。ここでは、直径Dを有する円柱形状のドレスヘッドが、定盤の半径上を右から左へ動く場合が示されている。また、ここに示されている2つのドレスヘッドは、定盤がN周目を開始した時のドレスヘッドの位置と、N+1周目を開始した時のドレスヘッドの位置を示している。即ち、この2つのドレスヘッドの距離は、定盤が1周する間にドレスヘッドが定盤の半径方向に移動する距離Qを示す。この図6では、N周目と、N+1周目でドレスヘッドが重なっている(オーバーラップしている)態様が示されている。
【0043】
ここで式(3)について考える。D÷Q=nでnは正の整数なので、nは1以上の整数である。即ち、自動的にD≧Qと言う条件が要求される。n=1であれば、オーバーラップはしていないが、N周目とN+1周目で隙間が全く無い条件であり、n>1であればN周目と、N+1周目でオーバーラップさせていることを示している。ところが、もしn<1であるならば、N周目とN+1周目で隙間が生じ、この時点で、パッド上でドレスされている場所とされていない場所が発生するので、研磨パッド上のいかなる場所においてもドレスヘッドとの接触時間が一定という条件を満たすことができなくなる。
【0044】
さらに式(3)について説明を続ける。オーバーラップは、定盤が周回を重ねる中で、研磨パッドが複数回ドレスヘッドと接触することを意味する。オーバーラップする場合で研磨パッド上のいかなる場所においてもドレスヘッドとの接触時間が一定という条件を得るには、どの場所においてもドレッサーと接触する回数が同じで無ければならない。そのためには、式(3)を満たす必要がある。
【0045】
また、上記式(1)、(2)、(3)のr、V、Tr、Q、及びDについて、rは定盤の内周部半径であり、Dはドレスヘッドの大きさであるので、例えば、制御機構8が有するプログラムの中に定数として入力しておき、VとTr0及びQは、そのプログラム上で任意の値を入力できるようにし、最適化された値を用いるようにすればよい。このように、制御機構8が有するソフトウェアで定盤の回転数、及びコンディショニングヘッドの定盤の半径方向の移動速度を制御しても良い。
【0046】
また、上記3つの式(1)、(2)、(3)の条件に加えて、ドレスヘッドの研磨パッド3に対する圧力が一定であれば、より均一なコンディショニングを実施できる。ドレスヘッドの研磨パッド3に対する圧力は、ドレスヘッドがパッドへの押しつけ圧力を一定に制御できるものであれば容易に一定にできる。また、コンディショニングヘッドとして洗浄ノズルヘッドを具備する場合は、水の噴出圧力が一定のものであれば良い。
【0047】
また、本発明では、研磨パッドの任意の部分にコンディショニングヘッドが位置した際に、その位置におけるコンディショニングの量を任意に設定できるようにしても良い。研磨パッドの変質は、研磨パッドの全面で均一に生じるわけではなく、研磨定盤上におけるウェーハの軌跡により、分布やピークを有する。従って、全面においてコンディショニングの効果が一定になる条件に加え、任意の位置でのコンディショニングの量を調整できるようにすれば、研磨パッドを一層均一な状態に保つことができる。
【0048】
例えば、研磨パッドの任意の位置で重点的にコンディショニングを行うには、(a)その位置での定盤回転数を上げコンディショニングの効率を高める方法、(b)その位置でコンディショニングヘッドの移動速度を下げコンディショニング時間を高める方法、及び(c)その位置でドレス圧力や水圧を高めコンディショニングの効率を高める方法が挙げられる。このようにすれば、例えば、研磨パッドの変質が特に顕著な位置で、重点的にコンディショニングを行うことができる。
【0049】
例えば、上記条件(b)のように、コンディショニングヘッドの移動速度を下げる場合、図7のように、コンディショニングヘッドの定盤の中心からの距離に応じてコンディショニングヘッドの定盤の半径方向への移動速度を制御すればよい。ここで、図7に示すPは、研磨パッドの任意の位置でのコンディショニングヘッドの定盤中心からの距離を示し、1/nは研磨パッドの全面を均一にコンディショニングできる条件で得られるコンディショニングヘッドの定盤の半径方向への移動速度に対する速度比、即ち、上記式(1)(2)を同時に満たす条件で得られるコンディショニングヘッドの定盤の半径方向への移動速度に対する速度比を示す。よって、1/n=1は研磨パッドの全面を均一にコンディショニングできる条件である。1/n<1はPでより密なコンディショニングを実施、1/n>1はより疎なコンディショニングを実施できる条件である。また、図7中のrはコンディショニング開始時のコンディショニングヘッドの定盤中心からの距離、rはコンディショニング終了時のコンディショニングヘッドの定盤中心からの距離を表す。このように、コンディショニングヘッドがPに到達した時のnを設定できるようにすれば、コンディショニングヘッドの定盤の中心からの距離に応じ、任意の点でコンディショニングの疎密を設定できる。
【0050】
ここまで、本発明の研磨装置が片面研磨装置である場合を説明したが、上述のように本発明の研磨装置は両面研磨装置であっても良い。図8に示すような両面研磨装置80では、研磨パッド81を貼り付けた円盤状の上下定盤82、83の間に、キャリア84と呼ばれる円盤状の遊星ギアが配置される。ウェーハWはこのキャリア84の保持穴に貫通保持され、キャリア84に噛み合うサンギア(不図示)とインターナルギア(不図示)とを相互に回転させることにより、遊星ギアの自転及び公転を発生させる。両面研磨装置80は、この自転、公転、及び上下定盤の回転により生ずるウェーハWと研磨パッド81の摺動によって、ウェーハの上下面を同時に研磨する。
【0051】
そして、両面研磨装置80は、コンディショニングヘッド85によって、上定盤82に貼り付けられた研磨パッド81及び下定盤83に貼り付けられた研磨パッド81をコンディショニングすることができるものである。また、コンディショニングヘッド85はアーム86により定盤の半径方向に移動できる。なお、具体的なコンディショニング方法は、上記説明した片面研磨装置1と同様である。すなわち、制御機構87によって上下定盤82、83の回転数及びコンディショニングヘッド85の定盤82、83の半径方向への移動速度を、コンディショニングヘッド85の定盤82、83の中心からの距離に応じて制御することができるものである。
【0052】
続いて、本発明の研磨パッドのコンディショニング方法について説明する。本発明は、回転可能な円盤状の定盤に貼り付けられたウェーハを研磨するための研磨パッドを、コンディショニングヘッドを用いてコンディショニングする方法である。より具体的には、上述した片面研磨装置の定盤や、両面研磨装置の上下定盤に貼り付けられた研磨パッドをコンディショニングする方法である。
【0053】
さらに、本発明では、定盤を回転させることで該定盤に貼り付けられた研磨パッドを回転させながら、コンディショニングヘッドを定盤の半径方向に移動させつつ前記コンディショニングを実施する。その際に、定盤の回転数及びコンディショニングヘッドの定盤の半径方向への移動速度を、コンディショニングヘッドの定盤の中心からの距離に応じて制御する。このようにすれば、最適な条件で研磨パッドの研磨面をコンディショニングすることが可能となる。
【0054】
なお、コンディショニングは、上記のように、研磨に未使用の研磨パッドを研磨に使用できる状態にする立ち上げ時、及び研磨終了から次の研磨の開始までの研磨バッチ間などに実施できる。なお、コンディショニングヘッドとしては、上記のように、洗浄ノズルヘッドやドレッサーヘッドを用いることができる。
【0055】
また、本発明の研磨パッドのコンディショニング方法では、定盤の回転数が上記式(1)を満たし、かつ、コンディショニングヘッドの定盤の半径方向への移動動作が上記式(2)、(3)を満たすように、定盤の回転数及びコンディショニングヘッドの定盤の半径方向への移動速度を制御することが好ましい。上記式(1)、(2)、及び(3)を同時に満たす制御条件であれば、より確実に研磨パッドの均一なコンディショニングを行うことができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例)
本発明のコンディショニング方法に従って、シリコンウェーハの両面研磨工程において、研磨バッチ間に両面研磨装置の上下定盤の研磨パッドのコンディショニングを行いながら、シリコンウェーハを両面研磨した。このとき、両面研磨装置として、図8に示したような本発明の両面研磨装置を使用した。また、直径300mmのシリコンウェーハを研磨した。コンディショニングヘッドとして、ドレスヘッドを用いた。すなわち、コンディショニングとしてドレッシングを行った。このようにして、両面研磨工程を連続操業した後、両面研磨されたシリコンウェーハのGBIR(Global Backsurface−referenced Ideal plane/Range)を測定し、平坦度を評価した。
【0058】
ドレッシングにおいては、定盤の中心側から外側に向かってドレスヘッドを移動させながら研磨パッドのドレッシングを行った。また、ドレッシング中は、以下のように、定盤の回転数とドレスヘッドの定盤の半径方向の移動速度とを制御した。まず、定盤の回転数は、上記式(1)を満たすように、コンディショニングヘッドの定盤の中心からの距離と反比例させた。このときの、定盤の回転数の推移は図3の曲線が示す通りである。
【0059】
ドレスヘッドの定盤の半径方向の移動速度に関しては、定盤の最内周と最外周では、式(2)及び(3)を満たす条件とした。そしてドレスヘッドが位置Prに近づくに従い、直線的に速度を落とし、研磨による研磨パッドの変質が最大となる位置Pr近傍においては、上記1/nが1/2となる条件、即ち、位置Prでドレッシングが2倍密となるように制御した。このように、ドレスヘッドの定盤中心からの距離に応じて制御したドレスヘッドの定盤の半径方向の移動速度を図9に示す。
【0060】
(比較例)
ドレッシング中の定盤回転数とドレスヘッドの定盤半径方向への移動速度を制御せず、両者を常に一定としたこと以外、実施例と同様な条件で、研磨バッチ間にドレッシングを行いながら、シリコンウェーハの両面研磨を実施した。その後、実施例と同様に、両面研磨されたシリコンウェーハのGBIRを測定し、平坦度を評価した。図3、9に、それぞれドレッシング中の定盤回転数とドレスヘッドの定盤半径方向への移動速度を示す(図3、9の破線)。
【0061】
その結果、図10に示すように、実施例のGBIRは比較例に対して8%改善した。これにより、本発明によれば、最適な条件で研磨パッドのコンディショニングを実施できるため、研磨後のウェーハの平坦度の悪化を抑制できることが確認された。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0063】
1…片面研磨装置、 2…定盤、 3…研磨パッド、
4…研磨ヘッド、 5…研磨剤供給機構、 6…コンディショニングヘッド、
7…アーム、 8…制御機構、 9…ドレスヘッド、
80…両面研磨装置、 81…研磨パッド、 82…上定盤、
83…下定盤、 84…キャリア、 85…コンディショニングヘッド、
86…アーム、 87…制御機構、W…ウェーハ。
図1
図2
図3
図4
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