(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レジスト中間層膜をエッチングマスクにして行う前記レジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ドライエッチング耐性を有するとともに、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成するための有機膜材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明では、下記一般式(1)で示される化合物を含む有機膜材料を提供する。
【化1】
(式中、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1を表し、Wは単結合又は下記式(2)で示される構造のいずれかである。R
1は下記一般式(3)で示される構造のいずれかであり、m1及びm2はそれぞれ独立に0〜7の整数を表す。ただし、m1+m2は1以上14以下である。)
【化2】
(式中、lは0〜3の整数を表し、R
a〜R
fはそれぞれ独立して水素原子又はフッ素置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、又はフェニルエチル基を表し、R
aとR
bが結合して環状化合物を形成してもよい。)
【化3】
(式中、*は芳香環への結合部位を表し、Q
1は炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数4〜20の脂環基、あるいは置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を表す。Q
1が炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基を表す場合、Q
1を構成するメチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置換されていてもよい。)
【0014】
このような有機膜材料であれば、高いドライエッチング耐性を有するとともに、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜材料となる。
【0015】
このとき、前記一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(4)で示される化合物であることが好ましい。
【化4】
(式中、m3及びm4は1又は2を表し、W及びR
1は前記と同様である。)
【0016】
このようなナフタレン環を有する化合物を含む有機膜材料であれば、ドライエッチング耐性、耐熱性に優れた有機膜材料を得ることができる。
【0017】
またこのとき、前記Wが単結合又は下記式(5)で示される構造のいずれかであることが好ましい。
【化5】
(式中、lは上記と同様である。)
【0018】
Wが上記のような構造であれば、埋め込み/平坦化特性を損なうことなく耐熱性、エッチング耐性を付与することができる。
【0019】
またこのとき、前記一般式(1)で示される化合物が分子内に2個以上のQ
1を有し、かつ、前記Q
1として下記一般式(6)で示される構造及び下記一般式(7)で示される構造をそれぞれ1種以上含むものであることが好ましい。
【化6】
(式中、**はカルボニル基への結合部位を表し、R
hは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、R
hを構成するメチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置換されていてもよい。)
【化7】
(式中、**はカルボニル基への結合部位を表し、R
iは水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状の炭化水素基を表し、R
jは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状の炭化水素基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、あるいは炭素数1〜10のアルカノイルオキシ基を表す。n3及びn4は芳香環上の置換基の数を表し、それぞれ0〜7の整数を表す。ただし、n3+n4は0以上7以下である。n5は0〜2を表す。)
【0020】
このような化合物を含む有機膜材料であれば、耐熱性及びエッチング耐性を損なうことなく熱流動性を高めることで埋め込み/平坦化特性を向上することができるとともに、光学定数の制御も可能な有機膜材料を得ることができる。
【0021】
また、前記有機膜材料が、さらに、(A)酸発生剤、(B)架橋剤、(C)界面活性剤、(D)有機溶媒のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0022】
このように、本発明の有機膜材料には、架橋硬化反応をさらに促進させるために、(A)酸発生剤、(B)架橋剤を加えることができ、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(C)界面活性剤を加えることもできる。また、(D)有機溶媒を加えることで有機膜材料は溶液となり、スピンコートが可能になる。
【0023】
また、本発明の有機膜材料は、レジスト下層膜材料又は半導体装置製造用平坦化材料として用いるものとすることが好ましい。
【0024】
このように、本発明の有機膜材料を半導体装置等の製造工程における微細加工に適用される多層レジスト膜形成に用いることで、高いドライエッチング耐性を有するとともに、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料を提供することが可能となる。また、多層レジストプロセス以外の半導体装置製造工程における平坦化に適用可能な、優れた埋め込み/平坦化特性を有する半導体装置製造用平坦化材料を提供することが可能となる。
【0025】
また、本発明では、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜又は半導体製造用平坦化膜として用いる有機膜の形成方法であって、被加工基板上に前記有機膜材料をコーティングし、該有機膜材料を100℃以上600℃以下の温度で、10秒〜600秒間の範囲で熱処理することによって硬化膜を形成する有機膜形成方法を提供する。
【0026】
このように、前記有機膜材料をコーティングし、該有機膜材料を100℃以上600℃以下の温度で、10秒〜600秒間の範囲で熱処理することにより、架橋反応を促進させ、上層膜とのミキシングを防止することができる。
【0027】
また、本発明では、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜又は半導体製造用平坦化膜として用いる有機膜の形成方法であって、被加工基板上に前記有機膜材料をコーティングし、該有機膜材料を、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成することによって硬化膜を形成する有機膜形成方法を提供する。
【0028】
本発明の有機膜材料をこのような酸素雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化した有機膜を得ることができる。
【0029】
またこのとき、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の有機膜材料は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0031】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工基板上に前記有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト中間層膜をエッチングしてレジスト中間層膜パターンを形成し、該得られたレジスト中間層膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0032】
このような多層レジストプロセスにおいて、本発明の有機膜材料を用いたパターン形成方法であれば、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0033】
またこのとき、前記得られたレジスト中間層膜パターンをエッチングマスクにして行う前記レジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0034】
ケイ素原子を含むレジスト中間層膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、レジスト中間層膜をエッチングマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことができる。
【0035】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工基板上に前記有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングして無機ハードマスク中間膜パターンを形成し、該得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0036】
さらに、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工基板上に前記有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜をエッチングして無機ハードマスク中間膜パターンを形成し、該得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0037】
このように、レジスト下層膜の上にレジスト中間層膜を形成してもよいが、レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれるいずれかの無機ハードマスク中間膜を形成することもできる。さらに、無機ハードマスク中間膜の上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成してもよいが、無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成することもできる。無機ハードマスク中間膜としてケイ素酸化窒化膜(SiON膜)を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0038】
また、本発明のパターン形成方法においては、前記無機ハードマスク中間膜を、CVD法又はALD法によって形成することができる。
【0039】
本発明のパターン形成方法においては、CVD法又はALD法によって形成された無機ハードマスク中間膜と、スピンコート法で形成されたレジスト下層膜との組み合わせが可能である。
【0040】
また、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0041】
本発明の有機膜材料は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板上に、多層レジスト法リソグラフィーによりパターンを形成する場合に特に有用である。
【0042】
さらに、本発明では、下記一般式(1)で示される化合物を提供する。
【化8】
(式中、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1を表し、Wは単結合又は下記式(2)で示される構造のいずれかである。R
1は下記一般式(3)で示される構造のいずれかであり、m1及びm2はそれぞれ独立に0〜7の整数を表す。ただし、m1+m2は1以上14以下である。)
【化9】
(式中、lは0〜3の整数を表し、R
a〜R
fはそれぞれ独立して水素原子又はフッ素置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、又はフェニルエチル基を表し、R
aとR
bが結合して環状化合物を形成してもよい。)
【化10】
(式中、*は芳香環への結合部位を表し、Q
1は炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数4〜20の脂環基、あるいは置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を表す。Q
1が炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基を表す場合、Q
1を構成するメチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置換されていてもよい。)
【0043】
本発明の化合物であれば、有機膜材料の成分として用いた際に、得られる有機膜材料が、高いドライエッチング耐性を有するとともに、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜材料となる。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように、本発明であれば、ドライエッチング耐性を有するとともに、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成するための有機膜材料の成分として有用な化合物、及びこの化合物を含む有機膜材料を提供できる。また、この有機膜材料は、優れた埋め込み/平坦化特性を有するとともに、耐熱性、エッチング耐性等の他の特性を損なうことがない有機膜材料となるため、例えば、2層レジストプロセス、ケイ素含有中間層膜を用いた3層レジストプロセス、又はケイ素含有中間層膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス、といった多層レジストプロセスにおけるレジスト下層膜材料、あるいは、半導体装置製造用平坦化材料として極めて有用である。
また、本発明の有機膜形成方法であれば、被加工基板上に十分に硬化し、かつ、平坦な有機膜を形成することができる。
また、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
上述のように、ドライエッチング耐性を有するとともに、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成するための有機膜材料が求められていた。
【0047】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で示される化合物を含む有機膜材料であれば、高いドライエッチング耐性を有するとともに、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜材料となることを見出し、本発明を完成させた。
【0048】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で示される化合物を含む有機膜材料である。
【化11】
(式中、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1を表し、Wは単結合又は下記式(2)で示される構造のいずれかである。R
1は下記一般式(3)で示される構造のいずれかであり、m1及びm2はそれぞれ独立に0〜7の整数を表す。ただし、m1+m2は1以上14以下である。)
【化12】
(式中、lは0〜3の整数を表し、R
a〜R
fはそれぞれ独立して水素原子又はフッ素置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、又はフェニルエチル基を表し、R
aとR
bが結合して環状化合物を形成してもよい。)
【化13】
(式中、*は芳香環への結合部位を表し、Q
1は炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数4〜20の脂環基、あるいは置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を表す。Q
1が炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基を表す場合、Q
1を構成するメチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置換されていてもよい。)
【0049】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
[化合物]
本発明の化合物は、下記一般式(1)で示されるものである。
【化14】
(式中、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1を表し、Wは単結合又は下記式(2)で示される構造のいずれかである。R
1は下記一般式(3)で示される構造のいずれかであり、m1及びm2はそれぞれ独立に0〜7の整数を表す。ただし、m1+m2は1以上14以下である。)
【化15】
(式中、lは0〜3の整数を表し、R
a〜R
fはそれぞれ独立して水素原子又はフッ素置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、又はフェニルエチル基を表し、R
aとR
bが結合して環状化合物を形成してもよい。)
【化16】
(式中、*は芳香環への結合部位を表し、Q
1は炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数4〜20の脂環基、あるいは置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を表す。Q
1が炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基を表す場合、Q
1を構成するメチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置換されていてもよい。)
【0051】
Wとして単結合又は上記式(2)で示される構造で連結された前記一般式(1)で示される化合物としては、下記に示す構造等が好ましく例示できる。
【化17】
【0053】
【化19】
(式中、R
1、m1、及びm2は上記と同様である。)
【0054】
上記一般式(1)のうち、ドライエッチング耐性及び耐熱性付与の観点から下記一般式(4)で示されるナフタレン構造を有するものが好ましい。
【化20】
(式中、m3及びm4は1又は2を表し、W及びR
1は前記と同様である。)
【0055】
さらに、連結基Wは、単結合又は下記式(5)で示される構造のいずれかであることが好ましい。
【化21】
(式中、lは上記と同様である。)
【0056】
上記一般式(3)中のQ
1は、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数4〜20の脂環基、あるいは置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を表す。Q
1が炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基を表す場合、Q
1を構成するメチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置換されていてもよい。
【0057】
上記の炭化水素基又は脂環基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−イコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等を例示できる。
【0058】
さらに、Q
1は置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基でもよい。置換基としてはハロゲン原子、炭化水素基、水酸基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0059】
これらのうち、エッチング耐性及び耐熱性の観点から置換又は非置換のナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基が好ましい。
【0060】
さらに、前記一般式(1)で示される化合物が分子内に2個以上のQ
1を有し、かつ、前記Q
1として下記一般式(6)で示される構造及び下記一般式(7)で示される構造をそれぞれ1種以上含むものであることが好ましい。
【化22】
(式中、**はカルボニル基への結合部位を表し、R
hは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、R
hを構成するメチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置換されていてもよい。)
【化23】
(式中、**はカルボニル基への結合部位を表し、R
iは水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状の炭化水素基を表し、R
jは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状の炭化水素基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、あるいは炭素数1〜10のアルカノイルオキシ基を表す。n3及びn4は芳香環上の置換基の数を表し、それぞれ0〜7の整数を表す。ただし、n3+n4は0以上7以下である。n5は0〜2を表す。)
【0061】
このような化合物であれば、これを含む有機膜材料が、耐熱性及びエッチング耐性を損なうことなく熱流動性を高めることで埋め込み/平坦化特性を向上することができるとともに、光学定数の制御も可能なものとなる。特に多層ArFリソグラフィーにおける露光時において、適度な光学定数を付与することにより、反射光を抑制でき、解像性に優れたものとなる。なお、反射光を抑制するために、有機膜材料の光学定数としては、屈折率nが1.3〜1.9、消衰係数kが0.1〜0.7の範囲にあることが好ましい。
【0062】
上記一般式(1)で示される化合物は芳香環を単結合又は一般式(2)で連結した構造を有しているため炭素密度が高いことから、これらの化合物を含む有機膜材料は、高いドライエッチング耐性を発揮するとともに耐熱性に優れる。また、連結基Wは上記式(2)で示すように、種々の連結基から所望の性能に合わせ適宜構造を選択することができる。特に、Wとして上記式(5)で示される構造を導入することで埋め込み/平坦化特性を損なうことなく耐熱性/エッチング耐性を付与できる。また、末端部R
1は埋め込み/平坦化特性を付与する炭素数3の柔軟構造と末端基Q
1を含んでおり、末端基Q
1としては、埋め込み/平坦化特性の向上に寄与する柔軟な炭化水素構造、エッチング耐性及び耐熱性に寄与する剛直な芳香環構造を任意の割合で要求性能に合わせ導入可能である。上記のように、これらの化合物を用いた有機膜材料は埋め込み/平坦化特性と耐熱性/エッチング耐性を高い次元で両立することが可能となる。
【0063】
また、このような化合物を含む有機膜材料を半導体装置等の製造工程における微細加工に適用される多層レジスト膜形成に用いられるレジスト下層膜材料に用いることで、高いドライエッチング耐性を有するとともに、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料、レジスト下層膜形成方法、及びパターン形成方法を提供することが可能となる。また、本発明では、多層レジストプロセス以外の半導体装置製造工程における平坦化に適用可能な、優れた埋め込み/平坦化特性を有する半導体装置製造用平坦化材料を提供することが可能となる。
【0064】
[化合物の製造方法]
本発明の有機膜材料に用いられる化合物を得る手段としては、下記一般式(8)で示されるようなエポキシ化合物と(Q
1−COOH)で示されるカルボン酸化合物(モノカルボン酸)との付加反応により得る方法が挙げられる。なお、Q
1は上記と同様である。
【化24】
(式中、n5及びn6はそれぞれ独立して0又は1を表す。R
3は下記式(9)で示される構造のいずれかであり、m5及びm6はそれぞれ独立に0〜7の整数を表す。ただし、m5+m6は1以上14以下である。Wは上記と同様である。)
【化25】
(式中、*は芳香環への結合部位を表す。)
【0065】
上記エポキシ化合物とカルボン酸化合物との反応においては、エポキシ化合物中のエポキシ量のモル量を1モルとした場合、カルボン酸の仕込量は0.3〜2.0モルが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モルであり、さらに好ましくは0.75〜1.25モルである。このようにエポキシ単位に対してカルボン酸の仕込み量が適度なものであれば、未反応のエポキシ基が残存して有機膜材料の保存安定性が損なわれる恐れがなくなり、未反応のカルボン酸が残存してアウトガスの原因となることを防止できる。
【0066】
加えて、エポキシ化合物とカルボン酸化合物との反応においては、要求される性能、例えば光学定数(n/k)、熱流動性、エッチング耐性、耐熱性、溶剤溶解性を改善するため、上記カルボン酸の仕込み量の範囲で(Q
1−COOH)で示される複数のカルボン酸化合物を同時に用いることもできる。このようなカルボン酸化合物の組み合わせとしては、特には下記一般式(10)で示されるカルボン酸化合物(カルボン酸化合物(10))と下記一般式(11)で示されるカルボン酸化合物(カルボン酸化合物(11))を同時に組み合わせることが好ましく、カルボン酸化合物(10)とカルボン酸化合物(11)を複数同時に組み合わせることも可能である。カルボン酸化合物(10)とカルボン酸化合物(11)を同時に用いた場合の仕込み量としては、全体のカルボン酸仕込み量を100モル%とした場合、それぞれ1〜99モル%の範囲で調整することができ、エッチング耐性、耐熱性の観点からカルボン酸化合物(11)を20モル%以上用いることが好ましく、30モル%以上用いることがより好ましい。
【化26】
(式中、R
hは上記と同様である。)
【化27】
(式中、R
i、R
j、n3、n4、及びn5は上記と同様である。)
【0067】
上記のような化合物は、通常、無溶媒又は溶媒中で反応触媒存在下、室温又は必要に応じて冷却又は加熱下でエポキシ化合物とカルボン酸化合物とを反応させることで得ることができる。
【0068】
用いられる溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0〜2,000質量部の範囲で使用できる。
【0069】
反応触媒としては、具体的には、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、トリブチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、N−ラウリルピリジニウムクロリド、N−ラウリル4−ピコリニウムクロリド、N−ラウリルピコリニウムクロリド、トリメチルフェニルアンモニウムブロミド、N−ベンジルピコリニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド等の4級ホスホニウム塩、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン
、トリス(3,6−ジオキサヘプチル)アミン、トリス(3,6−ジオキサオクチル)アミン等の第3級アミン類等が挙げられる。触媒の使用量は原料に対して0.001〜100重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜50重量%の範囲である。反応温度は−50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、室温から150℃がさらに好ましい。反応時間は0.1〜100時間から適宜選択される。
【0070】
反応方法としては、エポキシ化合物、カルボン酸化合物、及び触媒を一括で仕込む方法、エポキシ化合物とカルボン酸化合物を分散または溶解後、触媒を一括添加又は溶媒で希釈し滴下する方法、又は触媒を分散又は溶解後、エポキシ化合物とカルボン酸化合物を一括添加又は溶媒で希釈し滴下する方法が挙げられる。反応終了後、有機膜材料としてそのまま用いてもよいが、系内に存在する未反応の原料、触媒等を除去するために有機溶剤へ希釈後、分液洗浄を行って回収することもできる。
【0071】
このとき使用する有機溶剤としては、化合物を溶解でき、水と混合すると2層分離するものであれば特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチルシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、及びこれらの混合物等を挙げることができる。この際に使用する洗浄水としては、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1〜5回程度である。
【0072】
分液洗浄の際に系内の未反応のカルボン酸又は酸性成分を除去するため、塩基性水溶液で洗浄を行ってもよい。塩基としては、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、及び有機アンモニウム等が挙げられる。
【0073】
さらに、分液洗浄の際に系内の金属不純物又は塩基成分を除去するため、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。酸としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0074】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄はいずれか一方のみでもよいが、組み合わせて行うこともできる。分液洗浄は、塩基性水溶液、酸性水溶液の順に行うのが金属不純物除去の観点から好ましい。
【0075】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄後、続けて中性の水で洗浄してもよい。洗浄回数は1回以上行えばよいが、好ましくは1〜5回程度である。中性水としては、上記で述べた脱イオン水や超純水等を使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、回数が少なくては塩基成分、酸性成分を除去できないことがある。10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1〜5回程度である。
【0076】
さらに、分液操作後の反応生成物は減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできるが、有機膜材料を調製する際の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。このときの濃度としては、0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30重量%である。このような濃度であれば、粘度が高くなりにくいことから操作性を損なうことを防止することができ、また、溶剤の量が過大となることがないことから経済的になる。
【0077】
このときの溶剤としては、化合物を溶解できるものであれば特に制限はないが、具体例を挙げると、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0078】
これらの化合物の調製には、カルボン酸化合物を要求性能に合わせて組み合わせることが可能である。埋め込み/平坦化特性の向上に寄与する柔軟な炭化水素構造、エッチング耐性、耐熱性に寄与する剛直な芳香環構造を任意の割合で組み合わせることができ、これらの化合物を用いた有機膜材料は埋め込み/平坦化特性と耐熱性/エッチング耐性を高い次元で両立することが可能である。
【0079】
また、本発明の化合物には、縮合芳香族、あるいは脂環族の置換基を導入することができる。ここで導入可能な置換基としては、具体的には下記に挙げることができる。
【0081】
これらの中で、波長248nm露光用には、多環芳香族基、例えばアントラセンメチル基、ピレンメチル基が最も好ましく用いられる。193nmでの透明性向上のためには、脂環構造を持つものや、ナフタレン構造を持つものが好ましく用いられる。一方、波長157nmにおいてベンゼン環は透明性が向上するウィンドウがあるため、吸収波長をずらして吸収を上げることが好ましい。フラン環はベンゼン環よりも吸収が短波長化して157nmの吸収が若干向上するが、効果は小さい。ナフタレン環やアントラセン環、ピレン環は吸収波長が長波長化することによって吸収が増大し、これらの芳香族環はエッチング耐性も向上する効果もあり、好ましく用いられる。
【0082】
置換基の導入方法としては、上記置換基の結合位置がヒドロキシ基になっているアルコールを酸触媒存在下、芳香族親電子置換反応機構で水酸基、アルキルオキシ基、アルキル基のオルソ位又はパラ位に導入する方法が挙げられる。酸触媒は、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を用いることができる。これらの酸性触媒の使用量は、反応前の化合物100質量部に対して0.001〜20質量部であることが好ましい。置換基の導入量は、化合物1モルに対して0〜0.8モルの範囲である。
【0083】
<有機膜材料>
本発明の有機膜材料は、下記一般式(1)で示される化合物を含むものである。
【化29】
(式中、n1及びn2はそれぞれ独立して0又は1を表し、Wは単結合又は下記式(2)で示される構造のいずれかである。R
1は下記一般式(3)で示される構造のいずれかであり、m1及びm2はそれぞれ独立に0〜7の整数を表す。ただし、m1+m2は1以上14以下である。)
【化30】
(式中、lは0〜3の整数を表し、R
a〜R
fはそれぞれ独立して水素原子又はフッ素置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、又はフェニルエチル基を表し、R
aとR
bが結合して環状化合物を形成してもよい。)
【化31】
(式中、*は芳香環への結合部位を表し、Q
1は炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数4〜20の脂環基、あるいは置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を表す。Q
1が炭素数1〜30の直鎖状、分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素基を表す場合、Q
1を構成するメチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置換されていてもよい。)
【0084】
本発明の有機膜材料には別のポリマーをブレンドすることもできる。ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーは、本発明の有機膜材料と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差を有する基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つ。また、炭素原子密度が高くエッチング耐性の高い材料が選ばれる。このような材料としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−tert−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5’−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール及び1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等のノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート及びこれらの共重合体が挙げられる。また、特開2004−205685号公報記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005−128509号公報記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特開2005−250434号公報記載のアセナフチレン共重合体、特開2006−227391号公報記載のフェノール基を有するフラーレン、特開2006−293298号公報記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006−285095号公報記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特開2010−122656号公報記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2008−158002号公報記載のフラーレン樹脂化合物等をブレンドすることもできる。上記ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーの配合量は、本発明の有機膜材料100質量部に対して0〜1,000質量部が好ましく、より好ましくは0〜500質量部である。
【0085】
また、本発明の有機膜材料には、熱による架橋反応をさらに促進させるための(A)酸発生剤や(B)架橋剤を添加することができる。(A)酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0061)〜(0085)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0086】
本発明の有機膜材料に使用可能な(B)架橋剤としては、特開2007−199653号公報中の(0055)〜(0060)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0087】
また、本発明の有機膜材料において、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(C)界面活性剤を添加することもできる。(C)界面活性剤としては、特開2009−269953号公報中の(0142)〜(0147)段落に記載のものを用いることができる。
【0088】
本発明の有機膜材料において使用可能な(D)有機溶剤としては、(A)酸発生剤、(B)架橋剤、(C)界面活性剤等を溶解できるものが好ましい。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0091)〜(0092)段落に記載されている溶剤を添加することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0089】
さらに、本発明の有機膜材料には、保存安定性を向上させるための塩基性化合物を配合することができる。塩基性化合物は、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、具体的には特開2007−199653号公報中の(0086)〜(0090)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0090】
また、本発明の有機膜材料には、上記の他に、埋め込み/平坦化特性をさらに向上させるための添加剤を加えてもよい。
【0091】
上記添加剤としては、埋め込み/平坦化特性を付与するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は、30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上、かつ、重量平均分子量300〜200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【0092】
【化32】
(式中、R
6は、水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜30の飽和もしくは不飽和の一価の有機基である。Yは、炭素数2〜30の飽和又は不飽和の二価の有機基である。)
【0093】
【化33】
(式中、R
6aは、炭素数1〜4のアルキル基である。Y
aは、炭素数4〜10の飽和又は不飽和の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。nは平均繰り返し単位数を表し、3〜500である。)
【0094】
なお、本発明の有機膜材料は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。該有機膜材料はレジスト下層膜材料又は半導体装置製造用平坦化材料の用途に用いることができる。
【0095】
また、本発明の有機膜材料は、2層レジストプロセス、ケイ素含有中間層膜を用いた3層レジストプロセス、ケイ素含有無機ハードマスク中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス等といった多層レジストプロセス用レジスト下層膜材料として、極めて有用である。
【0096】
(有機膜形成方法)
本発明では、上述の有機膜材料を用い、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜又は半導体製造用平坦化膜として機能する有機膜を形成する方法を提供する。
【0097】
本発明の有機膜形成方法では、上記の有機膜材料を、スピンコート法等で被加工基板上にコーティングする。スピンコート法等を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。スピンコート後、溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト中間層膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。ベークは100℃以上600℃以下、10〜600秒の範囲内で行うことが好ましく、より好ましくは200℃以上500℃以下、10〜300秒の範囲内で行う。デバイスダメージやウエハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウエハープロセスでの加熱温度の上限は、600℃以下とすることが好ましく、より好ましくは500℃以下である。
【0098】
また、本発明の有機膜形成方法では、被加工基板上に本発明の有機膜材料を、上記同様スピンコート法等でコーティングし、該有機膜材料を、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることにより有機膜を形成することもできる。
【0099】
本発明の有機膜材料をこのような酸素雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化した膜を得ることができる。
ベーク中の雰囲気としては空気中でもよいし、N
2、Ar、He等の不活性ガスを封入してもよい。また、ベーク温度等は、上記と同様とすることができる。
【0100】
このような本発明の有機膜形成方法は、その優れた埋め込み/平坦化特性により、被加工基板の凹凸に係らず平坦な硬化膜を得ることができるため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板上に平坦な硬化膜を形成する場合に、極めて有用である。
【0101】
なお、このレジスト下層膜又は半導体装置製造用平坦化膜等の有機膜の厚さは適宜選定されるが、30〜20,000nmとすることが好ましく、特に50〜15,000nmとすることが好ましい。
【0102】
(パターン形成方法)
本発明では、このような有機膜材料を用いた3層レジストプロセスによるパターン形成方法として、被加工基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工基板上に本発明の有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜(ケイ素含有レジスト中間層膜)を形成し、該レジスト中間層膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト中間層膜をエッチングしてレジスト中間層膜パターンを形成し、該得られたレジスト中間層膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0103】
上記3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間層膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、上記3層レジストプロセスにおいて、レジスト中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0104】
上記3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間層膜としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層膜も好ましく用いられる。レジスト中間層膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、レジスト中間層膜で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるレジスト中間層膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素−ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0105】
この場合、CVD法よりもスピンコート法によるケイ素含有レジスト中間層膜の形成の方が、簡便でコスト的なメリットがある。
【0106】
また、中間層膜として無機ハードマスク中間膜を形成してもよく、この場合には、少なくとも、被加工基板上に本発明の有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングして無機ハードマスク中間膜パターンを形成し、該得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成することができる。
【0107】
上記のように、レジスト下層膜の上に無機ハードマスク中間膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)を形成できる。例えばケイ素窒化膜の形成方法としては、特開2002−334869号公報、国際公開第2004/066377号に記載されている。無機ハードマスク中間膜の膜厚は5〜200nmが好ましく、より好ましくは10〜100nmである。また、無機ハードマスク中間膜としては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300〜500℃となるために、下層膜としては300〜500℃の温度に耐える必要がある。本発明で用いる有機膜材料は、高い耐熱性を有しており300℃〜500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスク中間膜と、スピンコート法で形成されたレジスト下層膜の組み合わせが可能である。
【0108】
また、有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスとしても好適で、この場合、少なくとも、被加工基板上に本発明の有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜をエッチングして無機ハードマスク中間膜パターンを形成し、該得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成することができる。
【0109】
上記のように、無機ハードマスク中間膜の上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成してもよいが、無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。特に、無機ハードマスク中間膜としてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0110】
前記3層レジストプロセスにおけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60〜180℃で10〜300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、さらに、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30〜500nmが好ましく、特に50〜400nmが好ましい。
また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3〜20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0111】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。3層レジストプロセスにおけるレジスト中間層膜や無機ハードマスク中間膜のエッチングは、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行う。これにより、レジスト中間層膜パターンや無機ハードマスク中間膜パターンを形成する。
【0112】
次いで、得られたレジスト中間層膜パターンや無機ハードマスク中間膜パターンをマスクにして、レジスト下層膜のエッチング加工を行う。
【0113】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば被加工基板がSiO
2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層レジストプロセスにおけるケイ素含有中間層膜パターンは基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、ケイ素含有中間層膜パターンの剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0114】
本発明の有機膜材料によって得られるレジスト下層膜は、これら被加工基板エッチング時のエッチング耐性に優れる特徴がある。
なお、被加工基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α−Si、p−Si、SiO
2、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層が成膜されたもの等が用いられる。被加工層としては、Si、SiO
2、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0115】
また、被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0116】
3層レジストプロセスの一例について、
図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。
3層レジストプロセスの場合、
図1(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工層2上に本発明の有機膜材料を用いてレジスト下層膜3を形成した後、レジスト中間層膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。
【0117】
次いで、
図1(B)に示したように、レジスト上層膜の所用部分6を露光し、PEB及び現像を行ってレジストパターン5aを形成する(
図1(C))。この得られたレジストパターン5aをマスクとし、CF系ガスを用いてレジスト中間層膜4をエッチング加工してレジスト中間層膜パターン4aを形成する(
図1(D))。レジストパターン5aを除去後、この得られたレジスト中間層膜パターン4aをマスクとしてレジスト下層膜3を酸素プラズマエッチングし、レジスト下層膜パターン3aを形成する(
図1(E))。さらにレジスト中間層膜パターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する(
図1(F))。
【0118】
無機ハードマスク中間膜を用いる場合、レジスト中間層膜4が無機ハードマスク中間膜であり、BARCを敷く場合はレジスト中間層膜4とレジスト上層膜5との間にBARC層を設ける。BARCのエッチングはレジスト中間層膜4のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してレジスト中間層膜4のエッチングを行うことができる。
【0119】
このように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例】
【0120】
以下、合成例、比較合成例、実施例、及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、分子量の測定法は具体的に下記の方法により行った。テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0121】
有機膜材料用の化合物の合成には、下記に示すエポキシ化合物(E−1)〜(E−9)を用いた。
【化34】
(式中、sは0〜3の整数)
(E−1)EXA−830LVP(DIC(株)製)エポキシ当量:160
(E−2)4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン):エポキシ当量:106
(E−3)EXA−1514(DIC(株)製)エポキシ当量:300
(E−4)PG−100(大阪ガスケミカル(株)製)エポキシ当量:260
(E−5)2,2’−ジグリシジルオキシ−1,1’−ビナフタレン:エポキシ当量:232
(E−6)HP−4770(DIC(株)製)エポキシ当量:204
(E−7)HP−4700(DIC(株)製)エポキシ当量:162
(E−8)CG−500(大阪ガスケミカル(株)製)エポキシ当量:310
(E−9)HP−6000(DIC(株)製)エポキシ当量:245
【0122】
また、有機膜材料用の化合物の合成には、下記に示すカルボン酸化合物(C−1)〜(C−8)を用いた。
【化35】
(C−1)ステアリン酸
(C−2)イソステアリン酸
(C−3)4−ヒドロキシ安息香酸
(C−4)9−アントラセンカルボン酸
(C−5)3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
(C−6)6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
(C−7)6−メトキシ−2−ナフトエ酸
(C−8)6−プロパルギル
オキシ−2−ナフトエ酸
【0123】
[合成例1]化合物(A−1)の合成
【化36】
エポキシ化合物(E−1)80.0g、カルボン酸化合物(C−5)94.1g、及び2−メトキシ−1−プロパノール600gを窒素雰囲気下、内温100℃で均一溶液とした後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド5.7gを加え内温120℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン1,500gを加え、有機層を純水300gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固し、化合物(A−1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A−1): Mw=750、Mw/Mn=1.05
【0124】
[合成例2〜19]化合物(A−2)〜(A−19)の合成
表1に示されるエポキシ化合物、カルボン酸化合物を使用した以外は、合成例1と同じ反応条件で、表2〜表4に示されるような化合物(A−2)〜(A−19)を生成物として得た。これらの化合物の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を求め、表2〜表4に示した。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
(表2〜表4中、構造式(A−2、A−4、A−6、A−9、A−10、A−12〜A−15、A−19)中の比率は化合物中の末端基Q
1の比率を表す。**はカルボニル基との結合部位を示す。sは上記と同様である。)
【0129】
[比較合成例1]化合物(R−1)の合成
【化37】
m−クレゾール54.1g、37%ホルマリン溶液32.5g、及び2−メトキシ−1−プロパノール250gを窒素雰囲気下、内温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸2−メトキシ−1−プロパノール溶液18gをゆっくり加え、内温110℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300mlを加え、ヘキサン2,000mlでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して化合物(R−1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R−1): Mw=6900、Mw/Mn=5.53
【0130】
[比較合成例2]化合物(R−2)の合成
【化38】
1−ナフトール72.0g、37%ホルマリン溶液24.3g、及び2−メトキシ−1−プロパノール250gを窒素雰囲気下、内温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸2−メトキシ−1−プロパノール溶液18gをゆっくり加え、内温110℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300mlを加え、ヘキサン2,000mlでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して化合物(R−2)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R−2): Mw=1800、Mw/Mn=3.33
【0131】
[比較合成例3]化合物(R−3)の合成
【化39】
1,5−ジヒドロキシナフタレン80.1g、37%ホルマリン溶液26.4g、2−メトキシ−1−プロパノール250gを窒素雰囲気下、内温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸2−メトキシ−1−プロパノール溶液18gをゆっくり加え、内温110℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300mlを加え、ヘキサン2000mlでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して化合物(R−3)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R−3): Mw=3000、Mw/Mn=2.65
【0132】
有機膜材料(UDL−1〜24、比較UDL−1〜3)の調製
上記化合物(A−1)〜(A−19)、(R−1)〜(R−3)、架橋剤(CR−1)、酸発生剤(AG−1)、溶剤を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表5に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって有機膜材料(UDL−1〜24、比較UDL−1〜3)をそれぞれ調製した。
【0133】
【表5】
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0134】
以下に、架橋剤(CR−1)、酸発生剤(AG−1)を示す。
【化40】
【0135】
溶媒耐性測定(実施例1−1〜1−24、比較例1−1〜1−3)
上記で調製した有機膜材料(UDL−1〜24、比較UDL−1〜3)をシリコン基板上に塗布し、表6に記載の条件で焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚を測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めた。また、形成した有機膜(レジスト下層膜)について、J.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)で波長193nmにおける屈折率(n,k)を求め、その結果を表6に示した。
【0136】
【表6】
【0137】
表6の実施例1−1〜1−24で示されるように、本発明の有機膜材料を用いた場合、いずれの焼成温度においても成膜性良好(鏡面状)であり、かつ、溶媒処理による減膜はほとんどなく、溶媒耐性良好な膜が得られたことが分かった。特に実施例1−21〜1−24のようなナフタレン環構造を有する化合物を含む有機膜材料を用いた場合、350℃でも成膜性に問題なく、溶剤耐性良好な膜が得られた。
【0138】
また、表6に示されるように、実施例1−1〜1−24では、有機膜の屈折率のn値が1.3〜1.6、k値が0.2〜0.7の範囲であり、十分な反射防止効果を発揮できるだけの最適な屈折率(n)と消光係数(k)を有することがわかる。
【0139】
CF4/CHF3系ガスでのエッチング試験(実施例2−1〜2−24、比較例2−1〜2−3)
上記と同様に有機膜を形成し、下記条件でCF
4/CHF
3系ガスでのエッチング試験を行った。
エッチング条件
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 1,300W
CHF
3ガス流量 30ml/min
CF
4ガス流量 30ml/min
Arガス流量 100ml/min
時間 60sec
【0140】
東京エレクトロン製エッチング装置TE−8500を用いて、エッチング前後の残膜を求めた。結果を表7に示す。
【表7】
【0141】
表7に示されるように、本発明の有機膜材料(UDL−1〜24)は、比較有機膜材料(比較UDL−1〜3)と同等もしくはそれ以上のエッチング耐性を有していることが確認された。
【0142】
埋め込み特性評価(実施例3−1〜3−24、比較例3−1〜3−3)
図2のように、上記の有機膜材料をそれぞれ、密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ0.50μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するSiO
2ウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて150℃で60秒間加熱し、有機膜8を形成した。使用した基板は
図2(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiO
2ウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、有機膜で充填されているかどうかを確認した。結果を表8に示す。埋め込み特性に劣る有機膜材料を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。埋め込み特性が良好な有機膜材料を用いた場合は、本評価において、
図2(I)に示されるようにホール内部にボイドなく有機膜が充填される。
【0143】
【表8】
【0144】
表8に示されるように、本発明の有機膜材料(UDL−1〜24)はボイドなくホールパターンを充填することが可能であり、比較有機膜材料(比較UDL−1〜3)に比べて、埋め込み特性に優れることが確認された。特に実施例3−6〜3−24(UDL−6〜24)と比較例3−2、3−3(比較UDL−2、比較UDL−3)を比較すると、ナフタレン環構造を有するノボラック樹脂を用いた比較例3−2、3−3ではボイドが発生していたのに対し、本発明の有機膜材料はナフタレン環構造を持っているにも関わらず埋め込みが可能であった。このことからも埋め込み特性に優れていることがわかる。
【0145】
平坦化特性評価(実施例4−1〜4−24、比較例4−1〜4−3)
上記の有機膜材料をそれぞれ、巨大孤立トレンチパターン(
図3(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.50μm)を有する下地基板9(SiO
2ウエハー基板)上に塗布し、表9に記載の条件で焼成した後、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜10の膜厚の差(
図3(K)中のdelta 10)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。結果を表9に示す。本評価において、膜厚の差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ0.50μmのトレンチパターンを、通常膜厚約0.3μmの有機膜材料を用いて平坦化しており、平坦化特性の優劣を評価するために、特殊な厳しい評価条件となっている。
【0146】
【表9】
【0147】
表9に示されるように、本発明の有機膜材料(UDL−1〜24)は、比較有機膜材料(比較UDL−1〜3)に比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の膜厚の差が小さく、平坦化特性に優れることが確認された。特に、脂肪族カルボン酸化合物及び芳香族カルボン酸化合物を組み合わせて合成した化合物を用いた実施例4−9、4−10、4−12〜4−14、4−19は、それぞれ、対応するエポキシ化合物と、芳香族カルボン酸化合物のみを用いて合成した化合物を用いた実施例4−7、4−11、4−17、4−18に比べ、平坦性が向上していることがわかる。
【0148】
パターン形成試験(実施例5−1〜5−24)
有機膜材料(UDL−1〜24)を、それぞれ、トレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有するSiO
2ウエハー基板上に塗布し、表12に記載の条件で焼成することにより、有機膜(レジスト下層膜)を形成した。その上にレジスト中間層膜材料SOG1を塗布して200℃で60秒間ベークして膜厚35nmのレジスト中間層膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用単層レジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。フォトレジスト膜上に液浸保護膜材料(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0149】
レジスト中間層膜材料(SOG−1)としては、以下のポリマーのプロピレングリコールエチルエーテル2%溶液を調製した。
【化41】
【0150】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC−430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表10の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0151】
【表10】
【0152】
用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)を以下に示す。
【化42】
【0153】
液浸保護膜材料(TC−1)としては、ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表11の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0154】
【表11】
【0155】
用いたポリマー(PP1)を以下に示す。
【化43】
【0156】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、55nm 1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0157】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによりレジストパターンをマスクにしてレジスト中間層膜をエッチング加工してレジスト中間層膜パターンを形成し、得られたレジスト中間層膜パターンをマスクにしてレジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、得られたレジスト下層膜パターンをマスクにしてSiO
2膜のエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0158】
レジストパターンのレジスト中間層膜への転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CF
4ガス流量 75sccm
O
2ガス流量 15sccm
時間 15sec
【0159】
レジスト中間層膜パターンのレジスト下層膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
O
2ガス流量 45sccm
時間 120sec
【0160】
レジスト下層膜パターンのSiO
2膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
C
5F
12ガス流量 20sccm
C
2F
6ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
O
2 60sccm
時間 90sec
【0161】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4700)にて観察した結果を表12に示す。
【0162】
【表12】
【0163】
表12に示されるように、本試験の結果、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜材料が、段差を有する基板上においても、多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。
【0164】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。