(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の電線接続構造体10を示す斜視図である。
電線接続構造体10は、管状端子11と、この管状端子11に圧着結合された電線13とを備える。管状端子11は、雌型端子のボックス部20と管状かしめ部30とを有し、これらの橋渡しとしてトランジション部40を有する。
管状端子11は、導電性と強度を確保するために基本的に金属材料(本実施形態では、銅または銅合金)の基材で製造されている。なお、管状端子11の基材は、銅または銅合金に限るものではなく、アルミニウムや鋼、またはこれらを主成分とする合金等を用いることもできる。
また、管状端子11は、端子としての種々の特性を担保するために、例えば管状端子11の一部あるいは全部にスズ、ニッケル、銀めっきまたは金等のめっき処理が施されていても良い。また、めっきのみならず、スズ等のリフロー処理を施しても良い。
【0022】
管状端子11のボックス部20は、例えば雄型端子等の挿入タブの挿入を許容する雌型端子のボックス部である。本発明において、このボックス部20の細部の形状は特に限定されない。すなわち、管状端子11は、少なくともトランジション部40を介して管状かしめ部30を備えていれば良く、例えばボックス部を有さなくても良いし、例えばボックス部が雄型端子の挿入タブであっても良い。また、管状かしめ部30に他の形態に係る端子端部が接続された形状であっても良い。本明細書では、本発明の管状端子を説明するために便宜的に雌型ボックスを備えた例を示している。
【0023】
図2は、電線接続構造体10の長手方向の要部断面図である。
電線13は、例えば、金属または合金製の素線14aを束ねた芯線14を、絶縁樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)で構成する絶縁部15で被覆して構成される。芯線14は、所定の断面積となるように、素線14aを撚って構成しているが、この形態に限定されるものではなく単線で構成しても良い。
なお、芯線を構成する金属材料は、高い導電性を有する金属であればよく、アルミニウムまたはアルミニウム合金の他、銅または銅合金を用いても良い。
【0024】
芯線14は、その外周面及び両端面に撥水層17が設けられている。撥水層17は、電線接続構造体10の芯線14の全体の外周面及び両端面に設けられ、撥水層17を形成する撥水剤としては、素線14aの伸線工程で使用される潤滑用の油脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂が好適であり、例えば、芯線14の表面全体を覆うように塗布される。上記の芯線14と撥水層17とは導体部18を構成し、導体部18と絶縁部15とは、電線13を構成する。
【0025】
このように、芯線14の表面に撥水層17を設けることで、芯線14に水が接触することを防止することができ、芯線14の腐食を防止することができる。例えば、芯線14内の素線14a間の空間に存在する空気が結露して水が素線14aに接触する可能性がある。この場合でも、水が素線14aだけに接触することになり、例えば、素線14aとは異なる材質の金属、即ち管状端子11と素線14aとが水を介して接続することはなく、異種金属間の腐食は避けられるため、素線14aの腐食を抑制することができる。
【0026】
管状かしめ部30は、管状端子11と電線13とを圧着結合する部位であり、導体圧着縮径部35(導体圧着部)および被覆圧着縮径部(被覆圧着部)36を備える。
通常、圧着結合すると、導体圧着縮径部35および被覆圧着縮径部36がそれぞれ塑性変形を起こして、元の径よりも縮径されることで、電線13の芯線先端部14bおよび被覆先端部15aと圧着結合される。
管状かしめ部30の一端は、電線13を挿入することができる電線挿入口31を有し、他端はトランジション部40に接続されている。管状かしめ部30のトランジション部40側は、溶接等の手段によって閉口(閉塞)しており、トランジション部40側から水分等が浸入しないように形成されている。
管状端子11の金属基材(銅または銅合金)と芯線14(アルミニウム又はアルミニウム合金)との接合部に水分が付着すると、両金属の起電力(イオン化傾向)の差から芯線14が腐食する。また、管状端子11と芯線14とがアルミニウム同士であっても微妙な合金組成の違いによって、それらの接合部は腐食しやすい。
【0027】
本構成では、管状かしめ部30は、有底の管状に形成されることにより、外部より水分等の浸入が抑制され、管状端子11と電線13との接合部の腐食を抑えることができる。なお、管状かしめ部30は、管状であれば腐食に対して一定の効果を得られるため、必ずしも長手方向に対して円筒である必要はなく、場合によっては楕円や矩形の管であっても良い。また、径が一定である必要はなく、長手方向で半径が変化していても良い。
【0028】
管状かしめ部30は、例えば、銅または銅合金からなる条材を平面展開した形状に打ち抜き、曲げ加工によって形成される。この場合、ボックス部を一体に設けても良い。
平面状態からの曲げ加工した際に、かしめ部に相当する部位はC字型断面となっているので、開放された両端部を突き合わせて溶接等によって接合することで、管状かしめ部30が形成される。管状かしめ部30の接合は、レーザ溶接が好ましいが、電子ビーム溶接、超音波溶接、抵抗溶接等の溶接法でもかまわない。また、はんだ、ろう等、接続媒体を使っての接合でも良い。また、管状かしめ部30は、上記したC字型断面の両端部を接合する方法に限らず、深絞り工法で形成されても良い。さらに、連続管を切断するとともに一端側を閉塞して、管状かしめ部30を形成しても良い。
【0029】
管状かしめ部30では、管状かしめ部30を構成する金属基材と電線13とが機械的な圧着結合されることにより、同時に電気的な接合を確保する。かしめ接合は、基材や電線(芯線)の塑性変形によって接合が行われる。従って、管状かしめ部30は、かしめ接合をすることができるように肉厚を設計される必要があるが、人力加工や機械加工等で接合を自由に行うことができるので、特に限定されるものではない。
管状かしめ部30では、芯線14を強圧縮して導通を維持する機能と、絶縁部15を圧縮してシール性を維持する機能とが要求される。被覆圧着縮径部36では、その断面を略正円にかしめ、絶縁部15の全周に渡ってほぼ同等の圧力を与えることにより、全周に渡って均一な弾性反発力を発生させて、シール性を得ることが好ましい。
このように、被覆圧着縮径部36と絶縁部15との間がシールされ、圧着結合部内に閉空間37が出来る。但し、より密閉された閉じた空間を形成するには、より高いシール機能を有する手段が必要である。
【0030】
芯線にアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いる場合は、銅及び銅合金を用いる場合と比較すると接触抵抗が高いため、接続に不安がある。このため、管状かしめ部30の内壁面には、電線挿入口31から挿入された芯線14と接触する位置に、電線13の周方向に延びる電線係止溝(不図示)を設け、電線13との接触圧を保つ構成としても良い。
【0031】
図3は、圧着結合する前の管状端子11Aと電線13とを示す斜視図である。
圧着結合する前の管状端子11Aは、雌型端子のボックス部20と管状部25とを有し、これらの橋渡しとしてトランジション部40を有する。管状部25は、トランジション部40から次第に大径となる拡径部26と、この拡径部26の縁部から筒状に延びる筒部27とからなる。
拡径部26には、導体圧着縮径部35(
図1参照)が形成され、筒部27には、被覆圧着縮径部36(
図1参照)が形成される。管状端子11Aは、一部または全部にスズめっき等の処理が施されている。
【0032】
電線13の絶縁部15を構成する樹脂材としては、ポリ塩化ビニルであり、このポリ塩化ビニル以外にも、例えば、架橋ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム等を主成分とするハロゲン系樹脂や、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、エチレンプロビレンゴム、珪素ゴム、ポリエステル等を主成分とするハロゲンフリー樹脂が用いられ、これらに可塑剤や難燃剤等の添加剤を含んでいても良い。
【0033】
以上に述べた撥水層17の形成要領を次に述べる。
図4は、撥水層17の第1の形成要領を示す作用図である。
撥水剤塗布装置60を準備する。撥水剤塗布装置60は、中空部60aと、この中空部60aに連通して中空部60aに撥水剤を供給する撥水剤供給通路60bと、撥水剤を排出する撥水剤排出通路60cとを備える。
撥水剤塗布装置60の中空部60a内に、導体が伸線処理されて形成された芯線14を通し、撥水剤供給通路60b側から矢印Aで示すように、中空部60aに撥水剤を供給しながら芯線14を白抜き矢印で示すように長手方向に移動させる。この結果、芯線14の表面に次々に撥水剤が塗布され、撥水層17が形成される。なお、塗布時に余った撥水剤は矢印Bで示すように撥水剤排出通路60cから排出され、再度塗布に使用される。
【0034】
図5は、撥水層17の第2の形成要領を示す作用図である。
図5(A)は電線13の絶縁部15の端部を剥ぎ落す要領を示す作用図、
図5(B)は撥水層17を形成する要領を説明する作用図である。
図5(A)において、芯線14に撥水層17(
図3参照)を形成する準備として、電線13の絶縁部15の端部を芯線14から剥がす処理が成される。詳細には、電線13の端部近傍の両側に配置された一対のカッター刃62,62を、それぞれ矢印Dで示すように互いに近づけて絶縁部15に食い込ませ、更に、食い込ませた状態で、それぞれ矢印Eに示すように、電線13の長手方向に移動させる。この結果、
図5(B)に示すように、芯線14から絶縁部15の端部が剥ぎ落された状態になり、外部に露出した芯線14の端面及び外周面に撥水剤が塗布されて撥水層17が形成される。
【0035】
図6は、電線接続構造体10を雌形防水コネクタ70に組付けた状態を示す断面図である。
雌形防水コネクタ70は、複数の端子係合穴71を備え、各端子係合穴71に電線接続構造体10の管状端子11をそれぞれ挿入して係合させる。端子係合穴71は、管状端子11の挿入時の入口となる挿入口71aと、この挿入口71aに隣接して電線接続構造体10の電線13の外周面に嵌合するシール部材73の外周面が内接するシール穴71bと、管状端子11のボックス部20が配置されるボックス部配置部71cと、ボックス部20の抜けを防止する段部71dとを備える。
【0036】
雌形防水コネクタ70は、管状端子11の先端に挿入・導通される複数の端子を備える雄形防水コネクタ(不図示)に接続され、これらの雌形防水コネクタ70と雄形防水コネクタとで防水コネクタが構成される。雄形防水コネクタにおいても、雌形防水コネクタ70と同様に、端子係合穴に電線13がシール部材を介して挿入されるため、防水コネクタ内は閉空間となる。
このような閉空間において、芯線14に撥水層17が形成されることで、芯線14への水の付着をより一層抑制することができ、芯線14の腐食を抑制することができる。
【0037】
図7は、管状端子11の代わりにオープンバレル端子51を用いた電線接続構造体50の長手方向の要部断面図である。
電線接続構造体50は、オープンバレル端子51と、このオープンバレル端子51に圧着結合された電線53とを備える。オープンバレル端子51は、一方端にかしめ部51Aを備え、かしめ部51Aより電線53の先端部側の他方端にかしめ部51Bを備える。電線接続構造体50は、被覆圧着部39において、挿入された電線53の端末領域の絶縁部55がオープンバレル端子51のかしめ部51Aによって絶縁部55の外周に沿ってかしめられており、加えて、導体圧着部38において、挿入された電線53の末端領域の芯線54がオープンバレル端子51のかしめ部51Bによって芯線54の外周に沿ってかしめられている。なお、
図7において、芯線54の表面に施された撥水層は省略する。
【0038】
また、かしめ部51Aの端末領域(図中右端の破断面51r及び根元エッジ部51eを含む領域)及びその近傍領域は、全外周をモールド樹脂56が完全に覆うように形成されている。モールド樹脂56は、更に、オープンバレル端子51の上方領域において、かしめ部51Aから導体圧着部38、かしめ部51B及び露出している芯線54にかけても形成されている。
なお、オープンバレル端子51を用いる場合、モールド樹脂56は形成しなくてもよいが、芯線54の外部への露出を無くし、一時的にモールド内部で芯線54が露出した領域内に水分が浸入することを防止する、という点でモールド樹脂56を設けることが好ましい。
【0039】
次に、実験例について説明する。
(実験例)
実験例に用いる電線接続構造体は、
図2に示す電線接続構造体10の形態と
図7に示す電線接続構造体50を用い、端子の基材として、古河電気工業製の銅合金FAS−680(厚さ0.25mm、H材)を用いた。FAS−680の合金組成は、ニッケル(Ni)を2.0〜2.8質量%、シリコン(Si)を0.45〜0.6質量%、亜鉛(Zn)を0.4〜0.55質量%、スズ(Sn)を0.1〜0.25質量%、およびマグネシウム(Mg)を0.05〜0.2質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物である。
図2に示す電線接続構造体10の管状部25は、曲げ加工されたC字型断面の両端部を突き合わせ、内径3.2mmとなるようにレーザー溶接した。
【0040】
電線13,53の芯線14,54は、合金組成が鉄(Fe)を約0.2質量%、銅(Cu)を約0.2質量%、マグネシウム(Mg)を約0.1質量%、シリコン(Si)を約0.04質量%、残部がアルミニウム(Al)および不可避不純物であるアルミ合金線(線径0.42mm)を素線として用いた。この素線を19本用いて2.5sq、19本撚りの芯線14,54にした。
また、電線13,53の絶縁部15,55は、ハロゲンフリー樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体を用いた。絶縁部15,55は、芯線14,54の周囲を外径が2.8mmとなるように押出し法により形成した。
【0041】
圧着端子の種類、撥水剤塗布方法及び撥水剤を異ならせた電線続構造体の試料として実施例1〜実施例15及び比較例1、比較例2を作成し、撥水層を有する電線接続構造体の耐久試験を行った。
端子としては、(1)管状端子、又は(2)オープンバレル端子がある。
撥水剤塗布方法としては、(1)
図4に示したように、芯線の製造工程の一つである素線の伸線工程で撥水剤を塗布、あるいは伸線工程の直後に塗布する、又は(2)
図5に示したように、端子と芯線とを圧着接合する前で絶縁部を剥ぎ落した後に塗布する。
撥水層が形成された芯線を上記の端子に圧着し、試料とした。なお、オープンバレル端子に対しては樹脂被覆(モールド樹脂の形成)を行っていない。
【0042】
撥水剤としては、(1)中鎖型塩素化パラフィンを主成分とする不水溶性切削油「サーチングカット AL−100」(販売は協和石油ルブリカンツ株式会社)、(2)合成エステルを主成分とする不水溶性油「クビトラック AL50」(販売は東邦インターナショナル株式会社)、(3)鉱油を主成分とする「メタルシンAS35」(販売は共栄社化学株式会社)、(4)フッ素樹脂(スプレーにより塗布)、(5)合成脂肪酸エステルを主成分とする水溶性油「ウノポール U570」白鉱物油(石油)10〜25%、キャスターオイル・エトキシ化された5〜10パーセント、スルホン酸ナトリウム塩2.5〜5%、エトキシエタノール1〜2.5%、イソトリデカノール・エトキシ化された<1.0%(販売は東邦インターナショナル株式会社)である。
【0043】
耐久試験は、温度サイクル試験及び塩水噴霧試験であり、それぞれの試験条件は以下の通りである。
・温度サイクル試験
−40℃から120℃の間で温度を上昇させ、次に下降させる。これを1サイクル(2時間)として1000サイクル実施した。
・塩水噴霧試験
塩水噴霧溶液(NaCl)の濃度5%、試験槽内の温度35℃、試験時間100時間で実施した。
【0044】
温度サイクル試験の評価方法は、各試験後の圧着結合部における端子と芯線との間の電気抵抗を測定した。試験前の抵抗値に対する試験後の抵抗上昇が、1mΩ未満を「◎」、1mΩ以上、3mΩ未満を「○」、3mΩ以上、10mΩ未満を「△」、10mΩ以上を「×」とした。
また、塩水噴霧試験の評価方法は、芯線14の腐食状況を目視により4段階の評価をした。腐食なしを「◎」、芯線の一部に表面の変色が見られるものを「○」、芯線の一部に腐食が見られるものを「△」、芯線の大部分が腐食しているものを「×」とした。
なお、この評価において、露出した芯線表面の80%以上が変色(腐食)したものを大部分、10%を下回ったものを一部とする。
なお、(1)管状端子については、耐久試験のために導体圧着縮径部35付近をペンチによって部分的に潰すことで開口部を形成した。
耐久試験内容及び耐久試験結果を表1に示す。
【0046】
実施例1は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはAL−100を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例2は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはAL50を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例3は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはAS35を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
【0047】
実施例4は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはU570を用いた。温度サイクル試験の結果は「〇」、塩水噴霧試験の結果は「△」であり、判定は「△(合格:可)」である。
実施例5は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAL−100を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「◎」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例6は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAL50を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「◎」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例7は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAS35を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「◎」であり、判定は「〇(合格)」である。
実施例8は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはフッ素樹脂を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「◎」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
【0048】
実施例9は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはAL−100を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例10は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはAL50を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例11は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはAS35を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
【0049】
実施例12は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAL−100を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例13は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAL50を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例14は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAS35を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例15は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはフッ素樹脂を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
【0050】
実施例16は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはU570を用いた。温度サイクル試験の結果は「〇」、塩水噴霧試験の結果は「△」であり、判定は「△(合格:可)」である。
実施例17は、管状端子を用い、撥水剤を管状端子に圧着前に塗布し、撥水剤にはAL−100を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「◎」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
【0051】
比較例1は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に塗布しなかった。温度サイクル試験の結果は「△」、塩水噴霧試験の結果は「×」であり、判定は「×(不合格)」である。
比較例2は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に塗布しなかった。温度サイクル試験の結果は「△」、塩水噴霧試験の結果は「×」であり、判定は「×(不合格)」である。
【0052】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の電線接続構造体80の長手方向の要部断面図である。
図2に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
電線接続構造体80は、電線接続構造体10(
図2参照)に対して絶縁部15の外周面に被覆された樹脂被覆81のみが異なっている。
即ち、電線接続構造体80は、芯線14及び撥水層17からなる導体部18と、この導体部18を覆う絶縁被覆部82とからなり、絶縁被覆部82は、絶縁部15と樹脂被覆81とからなる。
【0053】
樹脂被覆81は、管状端子11と電線13との圧着結合部を密封するシール部材であり、詳しくは、絶縁部15と被覆圧着縮径部36との間を密封する。樹脂被覆81としては、熱可塑性樹脂、吸水性樹脂が好適である。
上記した樹脂被覆81を設けることで、圧着結合部内には密閉された閉空間83が出来、水の浸入が阻止されて芯線14の腐食を防止することができる。更に、例えば、圧着結合部内の閉空間83で結露が発生し、水が管状かしめ部30と導体部18との間に生じても、芯線14は撥水層17で覆われているため、水が芯線14に接触することは無い。また、芯線14内の閉空間19で結露が発生し、水が芯線14の各素線14aに付着しても、水は素線14aだけに接触することになり、例えば、素線14aとは異なる材質の金属、即ち管状端子11と素線14aとが水を介して接続することはなく、異種金属間の腐食は避けられるため、素線14aの腐食を抑制することができる。
【0054】
以上の
図1及び
図2に示したように、端子としての管状端子11と、芯線14と導体絶縁層としての絶縁部15を有する電線13とを圧着結合した電線接続構造体10であって、電線13は、芯線14の外周に形成された撥水層17を有し、撥水層17が電線13の端部において露出している。
この構成によれば、露出した電線13の導体である芯線14の腐食を抑制することができ、長期に渡って低い電気抵抗を維持することができる。
【0055】
また、管状端子11が銅製又は銅合金製であって、芯線14がアルミニウム製又はアルミニウム合金製であるので、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の芯線14とは異種金属の端子であっても芯線14の撥水処理により芯線14の腐食を抑制しながら、電気抵抗をより小さくすることができる。
【0056】
また、端子が管状端子11であり、管状端子11の一端が閉塞しているので、圧着により露出した芯線14の表面が閉じた空間に存在することになる。従って、圧着部に水が浸入しにくい構造となり、より一層芯線14の腐食を抑制することができる。
【0057】
また、
図8に示したように、管状端子11の他端において管状端子11と導体絶縁層としての絶縁部15の間に樹脂被覆81が形成されているので、圧着部への水の浸入をより効果的に抑制することができ、更に芯線14の腐食を抑制することができる。
【0058】
また、管状端子11の他端において管状端子11と絶縁部15が圧着しているので、管状端子11の内周面と絶縁部15が直接圧着することで水の浸入をより効果的に抑制することができ、芯線14の腐食を抑制することができる。
【0059】
また、
図7に示したように、端子がオープンバレル端子51であるので、オープンバレル端子51は、従来から広く採用されており、製造しやすく、強度及び接触抵抗が安定する、という点が好ましく、露出する芯線54も多いが、この芯線54の表面が撥水層を有することで効果的に芯線54の腐食を抑制することができる。
【0060】
また、
図7に示したように、電線53の端部がオープンバレル端子51とともにモールド樹脂56で樹脂被覆されているので、芯線54が外界から遮断されるため、芯線54の腐食を抑制することができる。
【0061】
また、
図2、
図7及び
図8に示したように、当該電線接続構造体10,50,80は、導体圧着縮径部35・導体圧着部38と被覆圧着縮径部36・被覆圧着部39を有し、被覆圧着縮径部36・被覆圧着部39において芯線14,54と絶縁部15,55の間に撥水層17を有するので、被覆圧着縮径部36・被覆圧着部39において、絶縁部15,55に破損が生じた場合でも、絶縁部15,55と芯線14,54の間に撥水層17が設けられていることにより、水の浸入を抑制することができ、芯線14,54の腐食を抑制することができる。
【0062】
また、
図2、
図7及び
図8に示したように、導体圧着縮径部35・導体圧着部38において芯線14,54と管状端子11・オープンバレル端子51は撥水層17を介して圧着されており、被覆圧着縮径部36・被覆圧着部39と導体圧着縮径部35・導体圧着部38の撥水層17は同一層として形成されているので、導体圧着縮径部35・導体圧着部38と被覆圧着縮径部36・被覆圧着部39の境界においても撥水層17が連続して形成されているため、被覆圧着縮径部36・被覆圧着部39の端部において芯線14,54と絶縁部15,55の界面からの水の浸入を抑制することができ、芯線14,54の腐食を抑制することができる。
【0063】
また、撥水層17は、油脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂のいずれかで構成されているので、特に、不水溶性であることが好ましい。この撥水剤を用いることで、結露等により生成された水分や、その水分に塩素イオン等の電解質成分が溶解した水溶液が生成されたとしても、撥水作用により、生成された水分は直接芯線14,54と接することがないため、より一層芯線14,54の腐食を効果的に抑制することができる。
【0064】
また、
図2及び
図7に示されるように、管状端子11、オープンバレル端子51と電線13,53とが圧着結合される電線接続構造体10,50の製造方法であって、管状端子11、オープンバレル端子51と電線13,53とが導体圧着縮径部35・導体圧着部38を形成する部位の電線13,53の絶縁部15,55を除去した後に、電線13,53の芯線14,54の表面に撥水処理を施し、次いで管状端子11、オープンバレル端子51と芯線14,54とを圧着するので、絶縁部15,55が除去されて外部に露出した芯線14,54に撥水処理を施すことで、芯線14,54への水の接触を抑制することができ、芯線14,54の腐食を抑制することができる。また、絶縁部15,55が除去された芯線14,54の部分だけに撥水処理を施すので、撥水剤の量が少なくなり、また、撥水処理時間を短くすることができる。
【0065】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態において、
図2及び
図3に示したように、芯線14の表面に撥水層17を設けたが、これに限らず、芯線14の各素線14aの表面に撥水処理を施しても良い。
本発明は、自動車のワイヤハーネスに適用可能であるが、これに限らず、他の車両の配線や、車両以外の装置等の配線に適用しても良い。