(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373012
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】エンジン診断装置
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20180806BHJP
G01N 29/14 20060101ALI20180806BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20180806BHJP
F16C 9/02 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
F02D45/00 360J
G01N29/14
F02F7/00 301Z
F16C9/02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-27500(P2014-27500)
(22)【出願日】2014年2月17日
(65)【公開番号】特開2015-151957(P2015-151957A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北井 大介
(72)【発明者】
【氏名】宮原 照美
(72)【発明者】
【氏名】前田 守彦
(72)【発明者】
【氏名】日置 輝夫
【審査官】
比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−280651(JP,A)
【文献】
特開2006−217943(JP,A)
【文献】
特開2004−360546(JP,A)
【文献】
特開2001−324417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D41/00−45/00
G01M15/00−15/14
G01N29/00−29/52
F02F 1/00− 1/42
F02F 7/00
F16C 3/00− 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン稼働中にエンジン構成部材から発せられるアコースティックエミッション波を感知して音波信号を出力する受信素子と、
測定周期毎に前記音波信号の所定時間領域に含まれている最大振幅値を算定する最大振幅値算定部と、
複数の測定周期にわたって得られた複数の前記最大振幅値に基づいて評価値を算定する評価値算定部と、
前記評価値と予め設定されたしきい値とを比較して前記エンジン構成部材の異常判定を行う評価部と、からなり、
前記エンジン構成部材はクランクシャフトの軸受メタルであり、前記軸受メタルからの固体伝播音が到達するエンジンハウジングの外面に前記受信素子が気筒に対応して装着されており、気筒単位の評価結果が出力されるエンジン診断装置。
【請求項2】
前記受信素子から出力された前記音波信号に対して、前記エンジン構成部材の音波減衰に基づいて、診断対象となる前記エンジン構成部材と前記受信素子との距離に応じた減衰補正を含む処理を行うプレアンプと、
前記プレアンプで処理された後の前記音波信号に対してハイパスフィルタ処理を行う信号前処理部とが備えられている請求項1に記載のエンジン診断装置。
【請求項3】
前記ハイパスフィルタ処理において、エンジン回転数に起因する振動周波数及びエンジン燃焼に起因する燃焼音周波数を上回る周波数のハイパスフィルタが用いられる請求項2に記載のエンジン診断装置。
【請求項4】
前記評価値算定部は複数の前記最大振幅値のなかでの最大のものを前記評価値として算定する請求項1から3のいずれか一項に記載のエンジン診断装置。
【請求項5】
前記評価部は、前もって行われた実験結果の統計値から求められたしきい値を評価条件として前記評価値から前記エンジン構成部材の異常判定を行う請求項1から4のいずれか一項に記載のエンジン診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを構成するエンジン構成部材の劣化を、アコースティクエミッションを用いて診断するエンジン診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路を還流する排気ガスを冷却するためのEGRクーラの破損を診断するEGRクーラの破損診断装置が記載されている。この破損診断装置には、EGRクーラに配設されるとともに検知したアコースティックエミッション信号を出力するアコースティックエミッションセンサと、このアコースティックエミッションセンサからの信号に基づいてEGRクーラの破損を診断する制御手段とが備えられている。制御手段は、EGRクーラにクラックが発生した状態で発生するクラック状態で発生するアコースティックエミッション信号パターンを予め記憶しておくメモリを有し、アコースティックエミッションセンサから出力されたアコースティックエミッション信号の波形パターンがクラック状態のアコースティックエミッション信号波形パターンと一致したときにEGRクーラにクラックが発生したと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−360546公報(
図1、
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1による破損診断装置では、アコースティックエミッションセンサから出力されたアコースティックエミッション信号の波形パターンが参照パターンとして記憶されているクラック発生時の信号パターンと一致したとき、EGRクーラの構成部材にクラックが発生したと判定するので、クラックが発生した時点でこれを検知することができる利点がある。しかしながら、アコースティックエミッション信号には様々な振動源(音源)からの振動が含まれていることからその波形形状は複雑であり、さらにはクラックの状態によっても変化するので、診断精度を上げるには、精度の高い波形パターンマッチングが要求される。しかしながら、波形パターンマッチングの高精度化は、制御手段のコストを押し上げる。このため、より簡単でかつ精度の良いエンジン診断装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるエンジン診断装置は、
エンジン稼働中にエンジン構成部材から発せられるアコースティックエミッション波を感知して音波信号を出力する受信素子と、測定周期毎に前記音波信号の所定時間領域に含まれている最大振幅値を算定する最大振幅値算定部と、複数の測定周期にわたって得られた複数の前記最大振幅値に基づいて評価値を算定する評価値算定部と、前記評価値と予め設定されたしきい値とを比較して前記エンジン構成部材の異常判定を行う評価部と、からなり、前記エンジン構成部材はクランクシャフトの軸受メタルであり、前記軸受メタルからの固体伝播音が到達するエンジンハウジングの外面に前記受信素子が気筒に対応して装着されており、気筒単位の評価結果が出力される。
【0006】
この構成によれば、受信素子から送られてくる音波信号の所定時間領域における最大振幅値を測定周期毎に算定することによって得られた複数の最大振幅値がエンジン構成部材の異常判定を行うための基礎値となる。さらに、この複数の最大振幅値に基づいて算定される評価値を、予め設定されたしきい値と比較して、その評価値がしきい値を上回った(または下回った)場合、エンジン構成部材が異常であると判定される。ここでは、異常判定の基礎値として、信号処理的には簡単に得られる音波信号の最大振幅値を採用し、そのような測定を繰り返すことで得られる複数の最大振幅値に基づいて算定される評価値が判定基準としてのしきい値と比較評価されるだけで、エンジン構成部材の異常判定が行えることが、本発明の優れた着眼点である。しかも簡単に算定することができる音波信号の最大振幅値を基礎値としていることは、測定構成の簡素化かつ低コスト化を導く。
【0007】
判定基準となるしきい値は、実験結果の統計的な処理等によって求めることができ、実際の診断作業を通じて得られる経験値によって修正することで、さらに異常評価の精度を高めることができる。このため、本発明の好適な実施形態では、前記評価部は、前もって行われた実験結果の統計値から求められたしきい値を評価条件として前記評価値から前記エンジン構成部材の異常判定を行う。さらに好適な実施形態の1つでは、そのしきい値は、測定時期、測定箇所などの測定条件によって変更可能に構成されている。
また、複数の最大振幅値のなかでの最大のものを評価値とする評価方法が、特にエンジンのクランクシャフトの軸受メタル及びその周辺領域で発生した損傷に対して有効であることが発明者による実験結果から確かめられている。このことから、本発明によるエンジン診断装置では、診断対象となる前記エンジン構成部材をクランクシャフトの軸受メタルとしている。そのような、アコースティックエミッションを用いた本発明によるエンジン診断装置によって、自家発電装置などに用いられるエンジンにおける重要な保守点検項目の1つであるクランクシャフトの軸受領域の良否判定が、高い信頼性をもって行えるようになる。その際、多気筒エンジンに対する迅速な診断のためには、各気筒に対応して配置されている軸受メタルからの固体伝播音が到達するエンジンハウジングの外面に、受信素子が気筒に対応して装着され、マルチチャンネルで診断される。
【0008】
なお、診断対象となるエンジン構成部材と受信素子との距離、つまりアコースティックエミッション波の伝播距離に応じて、アコースティックエミッション波は減衰する。この減衰は直接振幅値に影響を与えるので、伝播距離の異なるアコースティックエミッション波の振幅値を同じようにそのまま採用すると、正確な異常評価ができなくなる。また、エンジンには種々の振動源(音源)を有するため、受信素子から出力される音波信号にはそのような振動源から伝播される、いわゆるノイズ振動成分が含まれるので、その音波信号をそのまま採用すると、正確な異常評価ができなくなる。このため、本発明の好適な実施形態では、
前記受信素子から出力された前記音波信号に対して、前記エンジン構成部材の音波減衰に基づいて、診断対象となる前記エンジン構成部材と前記受信素子との距離に応じた減衰補正を含む処理を行うプレアンプと、前記プレアンプで処理された後の前記音波信号に対してハイパスフィルタ処理を行う信号前処理部とが備えられている。ここでハイパスフィルタ処理を行っているのは、ノイズ振動成分が、本発明が対象とするエンジン構成部材の異常に基づいて発生するアコースティックエミッション波の周波数成分より低い周波数を有しているという発明者の知見に基づく。
【0009】
特に、ノイズ振動として除去すべきものが、エンジン回転数に起因する振動周波数及びエンジン燃焼に起因する燃焼音周波数であるということも判明したので、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記ハイパスフィルタ処理において、エンジン回転数に起因する振動周波数及びエンジン燃焼に起因する燃焼音周波数を上回る周波数のハイパスフィルタが用いられる。
【0010】
複数の最大振幅値から算定される評価値として、実験による知見から、複数の最大振幅値のうちの最大値、及び複数の最大振幅値の平均値ないしは中間値が、本発明が対象とするエンジン構成部材の異常判断時に評価されるべき値としての評価値として適正であることが判明した。特に、複数の最大振幅値のうちの最大値が異常発生との相関関係が良好である。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、評価値算定部は複数の最大振幅値のなかでの最大のものを前記評価値として算定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明によるエンジン診断装置の実施形態の1つを示す機能ブロック図である。
【
図3】エンジンハウジングに対する受信素子の配置例を示す模式図である。
【
図4】前処理後の音波信号の一例を示す波形図である。
【
図5】種々の状態の軸受メタルに対して行われた診断時における、音波波形の処理結果を一覧的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるエンジン診断装置の具体的な実施形態を説明する前に、
図1を用いて本発明の基本原理を説明する。このエンジン診断装置はアコースティックエミッション(acoustic emission:以後単にAEと略称する)を用いた検査装置であり、材料組織の亀裂の発生や進展などの破壊に伴って発生する弾性波(振動、音波)を検出し、その検出信号を処理することにより、正常または異常を判定する。
エンジン1における診断対象となるエンジン構成部材から発せられるAE波を受け取ることができる箇所にAEセンサである受信素子2を取り付ける。受信素子2は弾性波を音波信号に変換する超音波トランスジューサであり、一般に圧電素子が用いられている。
【0014】
受信素子2から出力された音波信号は、必要に応じた減衰補正や増幅を施され、信号処理される。特定のエンジン構成部材に対する診断は、順次(測定周期毎に)取得された複数の音波信号に対する信号処理によって行われる。
図1では、異なる時間領域S1・・・Sn(サンプリング繰り返し周波数に依存する)で取得されたn個の音波信号が取り扱われている。この信号処理では、まず、各時間領域における音波信号における最大振幅値が算定される。各時間領域における最大振幅値は、ここでは、MA1・・・MAnで示されている。
【0015】
次に、算定されたn個の最大振幅値から、診断に適切な評価値を導出する。この評価値を導出する演算方法は、予め実験などを通じて決定されるが、ここでは、この評価値を導出する関数をGで表している。つまり、評価値をVとすれば、この評価値:Vは、
V=G(MA1,・・・,MAn)
で算定される。
好適な評価値導出関数の1つは、指定された数値群(引数)の最大値を求める関数であり、その関数をGmaxと記述すれば、
V=Gmax(MA1,・・・,MAn)
と表される。つまり、n個の最大振幅値の最大を評価値とするのである。
評価値導出関数の別の1つは、算術平均であり、その関数をGaveと記述すれば、
V=Gave(MA1,・・・,MAn)=(MA1+・・・+MAn)/n
と表される。つまり、n個の最大振幅値の平均値を評価値とするのである。もちろんそれ以外の、統計演算などで用いられている複数数値群から代表値を導出する関数を用いることも本発明に含まれている。
【0016】
採用された評価値導出関数を用いて導出された評価値は、前もって実施された正常サンプルと異常サンプルとの実験において当該評価値導出関数を用いて算定された評価値群に基づいて作り出された、正常/異常判断のしきい値と比較される。評価値がこのしきい値を上回ると(採用されている評価値導出関数のタイプによっては下回ると)、診断対象箇所に異常が発生していると判定される。
【0017】
次に、本発明によるエンジン診断装置の具体的な実施形態の1つを説明する。
図2は、このエンジン診断装置の機能ブロック図である。このエンジン診断装置の診断対象となるエンジン1の構成部材は、クランクシャフト11の軸受メタル12である。軸受メタル12の摩耗や割れなどの異常に基づいて発生するAE波を検出するべく、エンジンハウジング13の外周面で軸受メタル12との距離が近くかつアクセスのし易い箇所に受信素子2が装着されている。
図3で模式的に示されているように、このエンジン1は6気筒のガスエンジンであり、各気筒を外した位置に7つの受信素子2が装着されており、このエンジン診断装置は7チャンネルの信号入力で稼働する。
【0018】
各受信素子2にはプレアンプ3が設けられており、受信素子2から出力されたAE信号である音波信号が適切なレベルの増幅を受ける。プレアンプ3を経て、処理ユニット5に送られた音波信号は、信号前処理部51でフィルタ処理を含む前処理を施される。また、信号前処理部51は、入力した音波信号を後段の信号処理に適した信号形態に処理する。フィルタ処理では、100kHzのハイパスフィルタが用いられており、このフィルタ処理後の音波信号の一例が
図4に示されている。
【0019】
処理ユニット5には、信号前処理部51以外に、本発明に特に関係する機能部として、最大振幅値算定部52、評価値算定部53、評価部54、しきい値設定部55、及びこれらの機能部の動作を管理する処理管理部50が構築されている。さらには、この処理管理部50による評価結果や評価に用いられた処理データ、入力された音波信号などを外部に出力するためのデータ出力部56も備えられている。
【0020】
最大振幅値算定部52は、信号前処理部51によって前処理された、所定時間領域(この実施形態では約200m秒)の音波信号における最大振幅値を算定する。このような音波信号は、1つの測定箇所の診断において数十個取り込まれるので、数十個の最大振幅値が算定される。なお音波信号の生成に音波信号の処理時間が間に合わない場合には、音波信号は一時的にバッファメモリに記録される。
【0021】
評価値算定部53は、この実施形態では、最大振幅値算定部52で算定されたn個の最大振幅値の最大を評価値として算定するように構成されている。したがって、しきい値設定部55には、最大振幅値の最大を評価値として採用した実験を通じて、エンジン1の軸受メタル12の正常/異常判定条件として求められがしきい値が設定されている。評価部4は、このしきい値と評価値算定部53で算定された評価値(複数回取り込んだ音波信号毎の最大振幅値の最大)とを比較する。評価値がしきい値を上回った場合、対応する測定チャンネルの受信素子2の装着位置から特定される軸受メタル12に異常があると判定される。
【0022】
データ出力部56は、評価部54での評価結果や、この処理ユニット5に入力された生の音波信号(波形データ)、この処理ユニット5で処理された音波信号(波形信号)などを、接続されている外部機器のデータフォーマットに適応する形態で出力する。外部機器として、メディアレコーダ61、モニタ62、プリンタ63、警報機器64、通信機器65などが、処理ユニット5に接続されているか、または接続可能である。メディアレコーダ61は、波形データや診断結果などを診断対象となったエンジン構成部材の識別コードや履歴管理のための日時データとともに記録する。モニタ62やプリンタ63は各種データを視覚的に出力するものである。警報機器64は、異常が発生していると見なされた時に作業者に注意を促すものであり、ブザーやランプなどが用いられる。経時的な解析を行うために診断に関する各種データは、管理センタのデータベースに蓄積されるが、そのようなデータ伝送のために通信機器65が用いられる。また、この通信機器65を利用することで、外部からオンラインでこの診断を監視することも可能である。
【0023】
図5に、種々の状態での軸受メタルに対して行われた診断時における処理結果がグラフで示されている。このグラフの横軸は、6気筒エンジン1の各気筒に対応する軸受メタル12の領域からのAE波を受けるエンジンハウジング13の外周面に装着されている受信素子の信号チャンネル(
図3参照)を表している。縦軸は、音波波形の振幅(V)を表している。各信号チャンネル(つまり各受信素子2によって検出された音波波形)における最大値の最大の値が繋がれて折れ線グラフで示されている。診断対象となったガスエンジン1の異なる状態が、3本の折れ線グラフで示されている。一点鎖線で示されている折れ線グラフは、新品状態のガスエンジン1における診断結果を表している。点線で示されている折れ線グラフは、模擬的にわずかに損傷させた状態のガスエンジン1における診断結果を表している。実線で示されている折れ線グラフは、過酷に使用されたガスエンジン1における診断結果を表している。このことから、わずかな摩耗や損傷では、有意な区別が可能となるような診断結果は得られないが、過酷な使用を行い、オーバーホールを考慮しなければならないような摩耗や損傷が考えられるような状況下では、正常/異常の判定、つまりオーバーホールを実施する必要があるかどうかの判定が十分に可能であることが理解できる。特に、エンジンのクランクシャフトの軸受メタル及びその周辺領域で発生した損傷に起因して放出されるAE波である音波信号が良好なSN比をもつ評価値は、複数の音波信号から得られる複数の最大振幅値のなかでの最大のものを評価値とすることが最適であるとわかっている。つまり、オーバーホールが必要となるクランクシャフト11の軸受メタル12は、その箇所から複数回検出された音波信号の各最大振幅値のなかの最大値を評価することで、推定することができる。
【0024】
なお、
図5には、正常/異常の判定のしきい値として、コンマ数Vの値が示されている。このしきい値の値は現場でのサンプル実験から求められたものであるが、実地での診断作業を重ねることで得られていく診断データを考慮して修正を行うことで、かなり正確にオーバーホールの実施時期を決定することが可能になる。
【0025】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、診断対象はガスエンジン1の軸受メタル12であったが、その他のエンジン構成部材、例えば排気管、吸気管、シリンダハウジング、シリンダヘッドなどを診断対象とすることができる。
(2)上述した実施形態では、評価値として複数の最大振幅値の最大が採用されたが、
図1を用いた基本原理の説明において述べたように複数の最大振幅値の平均や中間値などの統計学で用いられている代表値を算定する種々の手法を採用することができる。
(3)上述した実施形態では、マルチチャンネル方式で多点検査が同時に行われる構成を採用したが、より簡単な装置においては、単一チャンネル方式で、一箇所毎診断を行う構成を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、エンジン構成部材のAEによる診断、特に修理時期の判定などに適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1:エンジン
12:軸受メタル(診断対象領域)
2:受信素子
50:処理管理部
51:信号前処理部
52:最大振幅値算定部
53:評価値算定部
54:評価部
55:しきい値設定部