特許第6373074号(P6373074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373074
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】マスク検査装置及びマスク検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   G01N21/956 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-117454(P2014-117454)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-230273(P2015-230273A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100120569
【弁理士】
【氏名又は名称】大阿久 敦子
(72)【発明者】
【氏名】土屋 英雄
(72)【発明者】
【氏名】秋山 裕照
(72)【発明者】
【氏名】礒部 学
(72)【発明者】
【氏名】矢部 誠
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴文
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 利之
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−107670(JP,A)
【文献】 特開2009−300426(JP,A)
【文献】 特開2003−287875(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0284591(US,A1)
【文献】 特開昭58−162038(JP,A)
【文献】 特開2006−072147(JP,A)
【文献】 特開2000−321038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958、
G03F 1/00−1/92、
H01L 21/64−21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも光透過性の部分と遮光性の膜の部分とを含む繰り返しパターンが形成されたマスクを保持するステージを駆動する駆動手段と、
前記マスクに光を照射する光照射手段と、
前記光を前記マスクに透過させる透過光学系と、
前記光を前記マスクで反射させる反射光学系と、
前記透過した透過光の光量信号を検出する透過光画像センサと、
前記反射した反射光の光量信号を検出する反射光画像センサと、
前記透過光画像センサの各画素の出力を画素毎に増幅し、透過画像を生成する透過光センサアンプと、
前記反射光画像センサの各画素の出力を画素毎に増幅し、反射画像を生成する反射光センサアンプと、
前記マスクのパターンの複数の繰り返し領域の第1の領域から生成された前記透過画像と、第2の領域から生成された前記透過画像とを比較し、且つ、前記第1の領域から生成された前記反射画像と、前記第2の領域から生成された前記反射画像とを比較することにより、前記マスクのパターンの欠陥を判定するダイ−ダイ比較手段と、
前記反射画像をトーン反転して振幅調整した反転反射画像を生成し、前記透過画像と前記反転反射画像との差分に基づいた透過反射差分画像を生成し、前記透過反射差分画像に設定された光量監視ポイントの光量と、予め定められたしきい値とを比較することにより、異常を判定する監視手段とを備え、
前記光量監視ポイントは、前記複数の繰り返し領域の各々において、前記光透過性の部分に設定された第1の光量監視ポイントと、前記遮光性の膜の部分に設定された第2の光量監視ポイントとを有し
前記予め定められたしきい値は、前記光透過性の部分に設定された前記第1の光量監視ポイントと、前記遮光性の膜の部分とに設定された前記第2の光量監視ポイントとで、前記第1と第2の光量監視ポイントについてそれぞれの正常時の光量に基づく基準値に基づいて別々に設定される、
ことを特徴とするマスク検査装置。
【請求項2】
前記光量監視ポイントは、遮光性の膜の部分のパターンエッジの間前記パターンエッジと隣接する遮光性の膜の部分のパターンエッジとの間のベタパターンに設定されることを特徴とする請求項1に記載のマスク検査装置。
【請求項3】
前記複数の繰り返し領域の各々には、前記光透過性の部分において第1の光量監視領域前記遮光性の部分において第2の光量監視領域が設定され
記第1の光量監視ポイントは、前記第1の光量監視領域に設定され、前記第2の光量監視ポイントは、前記第2の光量監視領域に設定され、
前記第1の光量監視ポイントの光量は、前記基準値より低く設定された第1のしきい値と比較され、前記第2の光量監視ポイントの光量は、前記基準値より低く設定された第2のしきい値と比較され、且つ、前記基準値より高く設定された第3のしきい値と比較されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマスク検査装置。
【請求項4】
前記基準値は、前記第1の光量監視ポイントの光量及び前記第2の光量監視ポイントの光量が、正常時の光量の値であることを特徴とする請求項3に記載のマスク検査装置。
【請求項5】
前記監視手段は、前記透過画像と前記反射画像の位置のアライメントをするアライメント手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のマスク検査装置。
【請求項6】
光源の光を、少なくとも光透過性の部分と遮光性の膜の部分を含む繰り返しパターンが形成されたマスクに照射し、前記マスクを透過した透過光を透過画像センサに結像し、前記マスクで反射した反射光を反射画像センサに結像し、前記透過画像センサ及び前記反射画像センサを前記マスクに対して相対的に移動させ、
前記透過画像センサの各画素の出力を画素毎に透過センサアンプで増幅し透過画像を生成し、前記反射画像センサの各画素の出力を画素毎に反射センサアンプで増幅し反射画像を生成し、前記マスクに形成されたパターンの欠陥検査を行うマスク検査方法であって、
前記マスクのパターンの複数の繰り返し領域の第1の領域から生成された前記透過画像と、第2の領域から生成された前記透過画像とを比較し、前記第1の領域から生成された前記反射画像と、前記第2の領域から生成された前記反射画像とを比較することにより、前記マスクのパターンの欠陥を判定するステップと、
前記反射画像をトーン反転して振幅調整した反転反射画像を生成し、前記透過画像と前記反転反射画像との差分に基づいた透過反射差分画像を生成し、前記透過反射差分画像に設定された光量監視ポイントの光量と、予め定められたしきい値を比較することにより、異常を判定するステップと、
含み、
前記光量監視ポイントは、前記複数の繰り返し領域の各々において、前記光透過性の部分に設定された第1の光量監視ポイントと、前記遮光性の膜の部分に設定された第2の光量監視ポイントとを有し、
前記予め定められたしきい値は、前記光透過性の部分に設定された前記第1の光量監視ポイントと、前記遮光性の膜の部分とに設定された前記第2の光量監視ポイントとで、前記第1と第2の光量監視ポイントについてそれぞれの正常時の光量に基づく基準値に基づいて別々に設定される、
むことを特徴とするマスク検査方法。
【請求項7】
前記光量監視ポイントは、遮光性の膜の部分のパターンエッジの間と、前記パターンエッジと隣接する遮光性の膜の部分のパターンエッジとの間のベタパターンに設定されることを特徴とする請求項6に記載のマスク検査方法。
【請求項8】
前記複数の繰り返し領域の各々には、前記光透過性の部分において第1の光量監視領域が、前記遮光性の膜の部分において第2の光量監視領域が設定され、
前記第1の光量監視ポイントは、前記第1の光量監視領域に設定され、前記第2の光量監視ポイントは、前記第2の光量監視領域に設定され、
前記第1の光量監視ポイントの光量は、前記基準値より低く設定された第1のしきい値と比較され、前記第2の光量監視ポイントの光量は、前記基準値より低く設定された第2のしきい値と比較され、且つ、前記基準値より高く設定された第3のしきい値と比較されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のマスク検査方法。
【請求項9】
前記基準値は、前記第1の光量監視ポイントの光量及び前記第2の光量監視ポイントの光量が、正常時の光量の値であることを特徴とする請求項8に記載のマスク検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク検査装置及びマスク検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(Large Scale Integration; LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路寸法は微細化の一途を辿っている。そして、半導体素子においては、回路パターンが形成された原画パターン(マスクまたはレチクルを指す。以下では、マスクと総称する。)を用い、いわゆるステッパまたはスキャナと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造されている。
【0003】
多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。一方、最先端のデバイスでは、十数nmの線幅のパターン形成が要求される状況となってきている。ここで、歩留まりを低下させる大きな要因として、マスクパターンの欠陥が挙げられる。半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴い、マスクパターンの欠陥も微細化している。
【0004】
また、マスクの寸法精度を高めることで、プロセス諸条件の変動を吸収しようとしてきたこともあり、マスク検査においては、極めて小さなパターンの欠陥を検出することが必要になっている。こうしたことから、マスクのパターンを検査する検査装置に対して高い検査精度が要求されている。
【0005】
マスク検査装置では、光源から出射された光が光学系を介してマスクに照射される。マスクはステージ上に保持され載置されており、ステージが移動することによって、照射された光がマスク上を走査する。マスクを透過あるいは反射した光は、レンズを介してセンサに結像する。そして、センサで撮像された光学画像を基に、マスクの欠陥検査が行われる。
【0006】
マスク検査装置におけるマスク検査方法としては、ダイ−ダイ比較(Die-to-Die)検査方法と、ダイ−データベース(Die-to-Database)比較検査方法とが知られている。ダイ−ダイ比較検査方法は、異なる位置にある同一パターンの光学画像同士を比較する方法である。一方、ダイ−データベース検査方法は、マスク作成時に使用した描画データから生成される参照画像と、実際のマスクパターンの光学画像とを比較する方法である。
【0007】
光学画像を生成するために、電荷蓄積型のTDI(Time Delay Integration)センサと、このTDIセンサの出力を増幅するセンサアンプとが用いられている。透過光で検査する場合においては、例えば、ハーフトーン型位相シフトマスクは遮光膜とガラス基板のコントラストがある程度得られるため、クロムマスクと同様に検出光学系で受光したセンサ画像の光強度信号でマスクパターンを認識して欠陥判定を行う手法を採用している。
【0008】
欠陥の形状によっては、マスク面の反射光を利用する方がコントラストを得やすい場合があり、異物検査機能などの用途で反射検査光学系を用いた検査方法もある。また、マスク厚のばらつきによる透過照明光の焦点ズレを容易に補正することにより、検出感度の高い欠陥検査を行う手法を採用している。
【0009】
上記のダイ−ダイ比較検査方法において、一方の被検査領域を撮像する際にパルス光の光量変動があった場合に、センサ画素の出力変動により撮像されたパターンは、形状に変形が生じた如く撮像されてしまう。これに対し、他方の被検査領域を撮像する際にパルス光の光量変動がない場合に、撮像されたパターンは、対応するパターンの形状に変形が生じない。この場合、一方のセンサ画素と他方のセンサ画素との比較において欠陥と誤判定されてしまうことになる。このような場合に、センサ画素の出力変動を総光量で補正する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0010】
また、マスクパターンを認識して欠陥判定を行う手法において、検出光学系の透過光と反射光とを分離するために、偏光ビームスプリッタ等ではなく全反射ミラー等からなる空間分離機構を設け試料からの透過光と反射光とをパターンの観察視野内で、空間的に分離された視野から得られるように分離することが開示されている。このように透過光と反射光を分離することで検出光学系において光量損失が生じるのを防止し、透過光と反射光の両方を利用して試料上のパターン欠陥を検査し、短波長光を用いた場合にあっても検出光学系における光量損失を抑制している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許5350121号公報
【特許文献2】特開2004−301751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ダイ−データベース比較検査では、検査中にレーザ光量低下、透過率異常などでセンサ画像が暗くなると、参照画像とのレベルを比較することでエラーを検知することができる。また、上記のとおりダイ−ダイ比較検査においては、一方のダイの検査時における光量と、他方のダイの検査時における光量が変化した場合に、センサ画素の出力変動を総光量で補正している。
【0013】
しかし、ダイ−ダイ比較検査では、同一ストライプの各ダイで同様に光量低下、透過率異常などが生じている場合、ダイ比較において差分が生じず、欠陥を検出できないという問題がある。特に、マスク面内で徐々に変化すると透過率異常はダイ−ダイ比較検査において検知は困難である。また、透過光と反射光の両方を利用して試料上のパターン欠陥を検査するダイ−ダイ比較検査においても、透過光と反射光のそれぞれでダイ比較が行われることにより、光量低下、透過率異常などが生じている場合、欠陥を検出することは困難である。
【0014】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、透過光で採取した画像と反射光で採取した画像を併用するダイ−ダイ比較検査において、光源光量低下、マスクの透過率異常、遮光膜の異物欠陥などを監視することができるマスク検査装置及びマスク検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1の態様は、パターンが形成されたマスクを保持するステージを駆動する駆動手段と、前記マスクに光を照射する光照射手段と、前記光を前記マスクに透過させる透過光学系と、前記光を前記マスクで反射させる反射光学系と、前記透過した透過光の光量信号を検出する透過光画像センサと、前記反射した反射光の光量信号を検出する反射光画像センサと、前記透過光画像センサの各画素の出力を画素毎に増幅し、透過画像を生成する透過光センサアンプと、前記反射光画像センサの各画素の出力を画素毎に増幅し、反射画像を生成する反射光センサアンプと、前記マスクの繰り返し領域の第1の領域から生成された前記透過画像と、前記第1の領域とは異なる第2の領域から生成された前記透過画像とを比較し、且つ、前記第1の領域から生成された前記反射画像と、前記第2の領域から生成された前記反射画像とを比較することにより、前記マスクのパターンの欠陥を判定するダイ−ダイ比較手段と、前記反射画像をトーン反転して振幅調整した反転反射画像を生成し、前記透過画像と前記反転反射画像との差分に基づいた透過反射差分画像を生成し、前記透過反射差分画像に設定された光量監視ポイントの光量と、予め定められたしきい値とを比較することにより、異常を判定する監視手段とを備え、前記光量監視ポイントは、前記繰り返し領域に設定された光量監視領域に基づいて設定されることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第1の態様において、前記光量監視領域は、パターンエッジと前記パターンエッジと隣接するパターンエッジとの間のベタパターンに設定されることが好ましい。
【0017】
本発明の第1の態様において、前記光量監視領域は、透過部分に設定された第1の光量監視領域と、遮光膜で形成された部分に設定された第2の光量監視領域を有し、前記光量監視ポイントは、第1の光量監視ポイントと第2の光量監視ポイントを有し、前記第1の光量監視ポイントは、前記第1の光量監視領域に基づいて設定され、前記第2の光量監視ポイントは、前記第2の光量監視領域に基づいて設定され、前記第1の光量監視ポイントの光量は、基準値より低く設定された第1のしきい値と比較され、前記第2の光量監視ポイントの光量は、基準値より低く設定された第2のしきい値と比較され、且つ、基準値より高く設定された第3のしきい値と比較されることが好ましい。
【0018】
本発明の第1の態様において、前記基準値は、前記第1の光量監視ポイントの光量及び前記第2の光量監視ポイントの光量が、正常時の光量の値であることが好ましい。
【0019】
本発明の第1の態様において、前記監視手段は、前記透過画像と前記反射画像の位置のアライメントをするアライメント手段を有することが好ましい。
【0020】
本発明の第2の態様は、光源の光をマスクに照射し、前記マスクを透過した透過光を透過画像センサに結像し、前記マスクで反射した反射光を反射画像センサに結像し、前記透過画像センサ及び前記反射画像センサを前記マスクに対して相対的に移動させ、前記画像センサの各画素の出力を画素毎に透過センサアンプで増幅し透過画像を生成し、前記反射画像センサの各画素の出力を画素毎に反射センサアンプで増幅し反射画像を生成し、前記マスクに形成されたパターンの欠陥検査を行うマスク検査方法であって、前記マスクの繰り返し領域の第1の領域から生成された前記透過画像と、前記第1の領域とは異なる第2の領域から生成された前記透過画像とを比較し、前記第1の領域から生成された前記反射画像と、前記第2の領域から生成された前記反射画像とを比較することにより、前記マスクのパターンの欠陥を判定するステップと、前記反射画像をトーン反転して振幅調整した反転反射画像を生成し、前記透過画像と前記反転反射画像との差分に基づいた透過反射差分画像を生成し、前記透過反射差分画像に設定された光量監視ポイントの光量と、予め定められたしきい値を比較することにより、異常を判定するステップと、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のマスク検査装置及びマスク検査方法によれば、透過光で採取した画像と反射光で採取した画像を併用するダイ−ダイ比較検査において、光源光量低下あるいは被検査マスクの透過率異常、さらには遮光腰部の異物欠陥を指摘するよう監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態のマスク検査装置の構成を示す概略図である。
図2】ダイ−ダイ比較を示す模式図である。
図3】ダイ−ダイ比較回路の構成を示す概略図である。
図4】監視回路の構成を示す概略図である。
図5】光量監視領域及び光量分布を示す光量分布図である。
図6】異常時の光量分布を示す光量分布図である。
図7】光学画像の取得手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明のマスク検査装置の一例としてのマスク検査装置100の構成を示す概略図である。
【0024】
図1に示すマスク検査装置100では、本実施の形態で必要な構成部を記載しているが、検査に必要な他の公知の構成部が含まれていてもよい。また、本明細書において、「〜手段」及び「〜回路」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができるが、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せやファームウェアとの組合せによって実施されるものであってもよい。プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置などの記録装置に記録される。
【0025】
図1に示すマスク検査装置100は、検査対象であるマスク1を保持するステージ2を有している。マスク1は、オートローダ3Aからステージ2上に搬送される。オートローダ3Aは、オートローダ制御回路3により制御される。
【0026】
ステージ2は、駆動手段の一例として、X方向モータ4Aと、Y方向モータ4Bと、θ方向(水平回転方向)モータ4Cとによって、X方向、Y方向及びθ方向に駆動される。これらのモータ4A,4B,4Cの駆動制御は、ステージ制御回路4によって実行される。
【0027】
ステージ2のX方向及びY方向の位置は、例えば、レーザ干渉計等のレーザ測長手段5と、このレーザ測長手段5に接続された位置回路5Aとによって検出される。マスク1は、例えば、X方向に一定速度で連続移動しながらセンサの撮像が行われ、終端でY方向に移動した後、X方向に逆向きに一定速度で連続移動しながらセンサの撮像を行うといったことを、繰り返して被検査マスクの検査領域全面を撮像する。
【0028】
また、マスク検査装置100は、光照射手段の一例としてレーザ光を発する光源6を備えている。マスク検査装置100は、光源6から発せられたレーザ光を、ビームスプリッタ7を介してマスク1に照射し透過させる透過光学系8と、光源6から発せられたレーザ光を、ビームスプリッタ7を介してマスク1に照射し反射させる反射光学系9を有している。
【0029】
透過光学系8は、ミラー8a、対物レンズ8b及び透過光画像センサの一例である透過光TDIセンサ11Aに透過光を結像させる対物レンズ8cを有している。また、反射光学系9は、ミラー9a、ビームスプリッタ9b及び反射光画像センサの一例である反射光TDIセンサ11Bに反射光を結像させる対物レンズ9cを有している。
【0030】
透過光TDIセンサ11A及び反射光TDIセンサ11Bの各TDIセンサは、例えば、2048画素×512画素(1画素が70nm×70nmの場合、144μm×36μm)の撮像領域を有する2次元のCCDセンサで構成されている。すなわち、各TDIセンサは、TDI方向に複数段(例えば、512段)のラインによって構成され、各ラインLは複数の画素(例えば、2048画素)によって構成されている。
【0031】
上記の各TDIセンサは、TDI方向(512段方向)とステージ2のX方向が一致するように設置され、ステージ2が移動することにより、各TDIセンサがマスク1に対して相対的に移動することになり、各TDIセンサにマスク1のパターンが撮像されることになる。また、ステージ2の移動方向が反転されると、各TDIセンサの移動方向も反転され、各TDIセンサがマスク1に対して相対的に移動することになる。
【0032】
なお、本実施形態のマスク検査装置100では、画像センサとしてTDIセンサを用いているが、TDIセンサに代えてラインセンサやエリアセンサのような他の画像センサを用いてもよい。
【0033】
透過光TDIセンサ11Aは、透過光センサアンプ12Aと接続され、反射光TDIセンサ11Bは、反射光センサアンプ12Bと接続されている。各センサアンプは、各TDIセンサから入力された各画素を画素毎に増幅し、光学画像を生成すると共に、例えば画素毎に信号振幅のゲイン及びオフセットを設定しノーマライズする。
【0034】
すなわち、透過光センサアンプ12Aは、透過光TDIセンサ11Aから入力された各画素を画素毎に増幅し、透過画像を生成し、反射光センサアンプ12Bは、反射光TDIセンサ11Bから入力された各画素を画素毎に増幅し、反射画像を生成する。
【0035】
透過光センサアンプ12Aで生成された透過画像及び反射光センサアンプ12Bで生成された反射画像は、ダイ−ダイ比較手段の一例であるダイ−ダイ比較回路13、及び監視手段の一例である監視回路14に入力される。
【0036】
ダイ−ダイ比較回路13は、バッファメモリ13a、バッファメモリ13b、透過光比較回路13c、反射光比較回路13d及び比較判定回路13eを有している。また、監視回路14は、透過画像入力回路14a、反射画像入力回路14b、アライメント手段であるアライメント調整回路14cとアライメント回路14d、トーン反転振幅調整回路14e、差分回路14f及び判定回路14gを有している。ダイ−ダイ比較回路13及び監視回路14については後述する。
【0037】
マスク検査装置100は、通常のパターン欠陥検査のほか、透過光センサアンプ12A及び反射光センサアンプ12Bのオフセット及びゲインの調整、ステージ2のアライメントなどの全体的な制御を実行する制御計算機20を備えている。
【0038】
この制御計算機20には、上記の位置回路5A、オートローダ制御回路3、ステージ制御回路4、ダイ−ダイ比較回路13、監視回路14、記憶装置21、表示装置22などが接続されている。
【0039】
図2に示すようにダイ−ダイ比較は、マスク1に設けられた繰り返し領域としての複数のチップ(ダイ)の隣り合う2つのチップを比較し欠陥を判定するものである。例えば、図2に示すチップ1a内の第1の領域31と、チップ1aと隣接するチップ1b内の第2の領域32に対して光源6からの光の照射により生成された2つの光学画像を用いてダイ−ダイ比較をすることで、欠陥の有無を判定する。なお、実施形態ではチップ1aとチップ1bは隣接しているがこれに限定されず、例えば、両チップは離れていてもよく、つまり第1の領域と第2の領域は異なる領域であればよい。
【0040】
図2に示す第1の領域31と第2の領域32は、チップ1aとチップ1bのそれぞれの部分を模式的に拡大したものである。これらの領域において、ハッチングが施された部分は、透明領域(ガラス露出部)で形成されている部分であり、ハッチングが施されていない部分は、遮光膜または遮光性のある半透明膜で形成されている部分である。なお、透明領域は膜のないガラス露出部であり、透明領域を透過部分という。また、遮光膜または遮光性のある半透明膜で形成されている部分を遮光膜という。
【0041】
なお、この実施形態では、チップ内に形成されているパターン同士を比較しているがこれに限定されず、例えば、セル内に形成されている異なる領域のパターン同士を比較してもよい。
【0042】
図3を用いてダイ−ダイ比較回路13について説明する。図3に示すバッファメモリ13aでは、第1の領域31を基に生成された透過画像T1と、第2の領域32を基に生成された透過画像T2が一時的に記憶される。
【0043】
また、バッファメモリ13bでは、第1の領域31を基に生成された反射画像H1と、第2の領域32を基に生成された反射画像H2が一時的に記憶される。
【0044】
バッファメモリ13aに記憶されている透過画像T1と透過画像T2は、透過光比較回路13cに入力されて比較される。また、バッファメモリ13bに記憶されている反射画像H1と反射画像H2は、反射光比較回路13dに入力されて比較される。
【0045】
透過光比較回路13c及び反射光比較回路13dでの比較結果は、比較判定回路13eに入力される。比較判定回路13eは、透過光比較回路13c及び反射光比較回路13dでの比較結果を算出し、予め定められた値を用いてマスク1の欠陥を判定する
【0046】
比較判定回路13eでは、例えば、透過と反射を組み合わせた比較判定アルゴリズムを用いて比較し、両者の差異がしきい値を超えた場合に、その箇所が欠陥と判定されるが、透過画像同士での比較、反射画像同士での比較であってもよい。
【0047】
比較判定回路13eでの検査結果は、記憶装置21に保存される。その後、オペレータは、保存された検査結果を磁気ディスク装置などの記憶装置21から読み出してディスプレイなどの表示装置22に表示させ確認する。
【0048】
また、保存されたマスク検査結果は、レビュー装置に送られ、オペレータによってレビューされる。このレビュー装置は検査装置の構成要素の1つであってもよく、また、検査装置の外部装置であってもよい。
【0049】
上記のレビューは、オペレータによって検出された欠陥が実用上問題となるものであるかどうかを判断する動作であり、このオペレータは、例えば、欠陥判定の根拠となった基準画像と、欠陥が含まれる光学画像とを見比べて修正の必要な欠陥であるか否かを判断する。
【0050】
レビュー装置で判別された欠陥情報は、例えば、図1に示す記憶装置21に保存される。レビュー装置で、例えば、1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスク1は、欠陥情報リストとともに、マスク検査装置100の外部装置である修正装置に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リストには、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0051】
ダイ−ダイ比較回路13を用いたダイ−ダイ比較検査について説明したが、ダイ−ダイ比較検査は上記の構成に限定されず、例えば、比較される2つのチップに対して別々の光学系を用いて光学画像を取得する構成であってもよい。
【0052】
図4を用いて監視回路14について説明する。図4に示す透過画像入力回路14aには、透過光センサアンプ12Aからの透過画像T1が入力され、同時に、反射画像入力回路14bには、反射光センサアンプ12Bからの反射画像H1が入力される。
【0053】
なお、監視回路14に入力される透過画像及び反射画像は、透過画像T1及び反射画像H1に限定されず、例えば、図2に示す繰り返し領域の一の領域で同時に生成される透過画像及び反射画像であればよい。
【0054】
透過画像入力回路14aから出力された透過画像T1と反射画像入力回路14bから出力された反射画像H1は、アライメント調整回路14cに入力される。アライメント調整回路14cでは、透過画像T1と反射画像H1の位置ずれが検知され、この位置ずれの結果は、アライメント回路14dに入力される。
【0055】
反射画像入力回路14bから出力された反射画像H1は、アライメント回路14dに入力され、上記の位置ずれの結果に基づいて位置の調整が行われる。すなわち、このアライメント手段により、透過画像T1と反射画像H1の位置、つまりタイミングが一致するように制御される。
【0056】
アライメント回路14dにおいて透過画像T1との位置ずれが調整された反射画像H1は、トーン反転振幅調整回路14eに入力され、そして反転反射画像HH1として出力される。
【0057】
この反転反射画像HH1は、例えば、反射画像H1を構成する光量の平均値を中心として、反射画像H1の各画素を反転させ、この反転された画像の振幅が調整されたものである。
【0058】
透過画像入力回路14aから出力された透過画像T1及びトーン反転振幅調整回路14eから出力された反転反射画像HH1は、差分回路14fに入力される。差分回路14fでは、(透過画像T1−反転反射画像HH1)のレベル差を求め、このレベル差に基づいて透過反射差分画像S1が生成される。
【0059】
透過反射差分画像S1は、判定回路14gに入力され、透過反射差分画像S1に設定された光量監視ポイントの光量と予め定められたしきい値が比較される。判定回路14gでは、この比較に基づいてマスク検査装置100及びマスク1の異常、例えば、光源6から照射される光量の低下、マスク1の透過率異常、遮光膜の異物欠陥などの異常が判定される。
【0060】
上記の光量監視ポイントは、繰り返し領域、例えば、第1の領域31に設定された光量監視領域に基づいて設定される。光量監視領域は、上記の繰り返し領域内のパターンエッジと、このパターンエッジと隣接するパターンエッジとの間のベタパターンに設定されている。
【0061】
図5は、光量監視領域及び光量分布を示す光量分布図である。図5(a)〜図5(e)を用いて光量監視領域及び光量分布について説明する。なお、実施形態では第1の領域31の光量監視領域及び光量分布を示しているが、これに限定されず他の領域であってもよい。
【0062】
図5(a)に示すように、光量監視領域は、第1の領域31において、透過部分に設定された第1の光量監視領域31aと、遮光膜に設定された第2の光量監視領域31bを有している。第1の光量監視領域31aは、透過部分と遮光膜の変化箇所であるパターンエッジから所定寸法(画素)離れた透過部分に設定されている。また、第2の光量監視領域31bは、透過部分と遮光膜の変化箇所であるパターンエッジから所定寸法(画素)離れた遮光膜に設定されている。なお、図5(a)に示すA−A’断面は、図5(b)〜図5(e)及び図6(a)〜図6(d)において断面の光量分布を示す横断補助線である。
【0063】
図5(b)は、第1の領域31に光源6からの光が照射され、透過光学系8及び透過光TDIセンサ11Aを介して透過光センサアンプ12Aで生成された透過画像T1の光量分布を示す光量分布図である。この光量分布図の縦軸は透過光の光量(明るさ)であり、横軸は第1の領域31の位置を示しており、以下に示す光量分布図においても同様である。
【0064】
図5(c)は、第1の領域31に光源6からの光が照射され、反射光学系9及び反射光TDIセンサ11Bを介して反射光センサアンプ12Bで生成された反射画像H1の光量分布を示している。
【0065】
図5(d)は、図5(c)で示す反射画像H1が監視回路14に入力され、トーン反転振幅調整回路14eで反転され振幅調整された反転反射画像HH1の光量分布を示している。この反転反射画像HH1は、監視回路14に設けられている上記のアライメント手段により、透過画像T1との位置ずれが調整されたものとなっている。
【0066】
図5(e)は、差分回路14fに、図5(b)に示す透過画像T1と図5(d)に示す反転反射画像HH1が入力され、差分処理された透過反射差分画像S1の光量分布を示している。
【0067】
図5(e)に示すように透過反射差分画像S1の光量分布に設定された光量監視ポイントは、第1の光量監視ポイントK1と第2の光量監視ポイントK2を有する。第1の光量監視ポイントK1は、第1の光量監視領域31aに基づいており、第2の光量監視ポイントK2は、第2の光量監視領域31bに基づいている。
【0068】
判定回路14gでは、透過反射差分画像S1の光量分布に設定された上記の光量監視ポイントの光量と、予め定められたしきい値とを比較することで異常を判定する。
【0069】
すなわち、第1の光量監視ポイントK1の光量は、正常時の光量を基準とした基準値STより低く設定された第1のしきい値TH1と比較され、第2の光量監視ポイントK2の光量は、基準値STより低く設定された第2のしきい値TH2と比較され、且つ、基準値STより高く設定された第3のしきい値TH3と比較される。
【0070】
図6は、異常時の光量分布を示す光量分布図である。図6(a)〜図6(d)を用いて監視回路14により異常が判定される一例について説明する。
【0071】
図6(a)〜図6(d)は、第1の領域31において、光源からの光量の低下、透過部分の透過率異常、遮光膜の欠陥などにより透過光及び反射光が低下している場合、これら透過光及び反射光に基づいた光量分布を示す光量分布図である。
【0072】
図6(a)は、第1の領域31に照射された光が透過され、透過光TDIセンサ11Aを介して透過光センサアンプ12Aで生成された透過画像T1aの光量分布を示している。
【0073】
図6(a)に示すように、第1の光量監視領域31aを透過した透過光に基づいた光量は、点線で示す基準値よりも低いものとなっている。一方、第2の光量監視領域31bを透過した透過光に基づいた光量は、基準値と同等なものとなっている。
【0074】
図6(b)は、第1の領域31に照射された光が反射され、反射光TDIセンサ11Bを介して反射光センサアンプ12Bで生成された反射画像H1aの光量分布を示している。
【0075】
図6(b)に示すように、第2の光量監視領域31bで反射した反射光に基づいた光量は、点線で示す基準値よりも低いものとなっている。一方、第1の光量監視領域31aで反射した反射光に基づいた光量は、基準値と同等なものとなっている。
【0076】
図6(c)は、図6(b)で示す反射画像H1aが監視回路14に入力され、トーン反転振幅調整回路14eで反転され振幅調整された反転反射画像HH1aの光量分布を示している。この反転反射画像HH1aは、監視回路14に設けられている上記のアライメント手段により、透過画像T1aとの位置ずれが調整されたものとなっている。
【0077】
図6(c)に示す実線は、反射画像H1aが反転された反転反射画像HH1aの光量分布である。また、図6(c)に示す破線は、基準値に基づく反射画像が反転された反転反射画像の光量分布である。
【0078】
図6(c)に示すように、反転反射画像HH1aでは、第2の光量監視領域31bでの反射光に基づいて生成される部分の光量は、反射画像H1aと比べ反転し、点線で示す基準値よりも高いものとなっている。一方、透過部分で形成されている第1の光量監視領域31aに基づいて生成されている部分の光量は、反射画像H1aと同様に、基準値と同等なものとなっている。
【0079】
図6(d)は、差分回路14fに、図6(a)に示す透過画像T1aと図6(c)に示す反転反射画像HH1aが入力され、差分処理された透過反射差分画像S1aの光量分布を示している。すなわち、透過反射差分画像S1aは、(透過画像T1a−反転反射画像HH1a)のレベル差に基づいて生成されている。
【0080】
図6(d)に示すように、透過反射差分画像S1aの光量分布には、第1の光量監視ポイントK1と第2の光量監視ポイントK2が設定されている。上記のとおり第1の光量監視ポイントK1は、第1の光量監視領域31aに基づいており、また、第2の光量監視ポイントK2は第2の光量監視領域31bに基づいている。
【0081】
判定回路14gは、第1の光量監視ポイントK1での(透過画像T1a−反転反射画像HH1a)のレベル差と、第1のしきい値TH1を比較し、異常か否かを判定する。また、判定回路14gは、第2の光量監視ポイントK2での(透過画像T1a−反転反射画像HH1a)のレベル差と、第2のしきい値TH2及び第3のしきい値TH3を比較し、異常か否かを判定する。
【0082】
上記のとおりダイ−ダイ比較回路13では、第1のダイ(領域)と第2のダイ(領域)において、両ダイに共通して発生する輝度変化などに対応することができない。すなわち、ダイ−ダイ比較回路13を用いてダイ−ダイ比較検査を行っているときに、光源6からの光量の低下、透過光異常などで透過画像が暗くなると、ダイ−ダイ比較では、この異常を判定できない。
【0083】
しかし、監視回路14では、透過画像とトーン反転して振幅調整した反射画像との差分をとった評価用画像(透過反射差分画像)を生成することができ、光源光量低下あるいはマスクの透過率異常,さらには遮光膜の異物欠陥などを指摘することができる。
【0084】
監視回路14では、上記の評価用画像を用いてマスク検査装置100やマスク1の異常を判定するために、3つのしきい値を設定している。つまり遮光膜に欠陥がある場合、反射率が高くなる場合と低くなる場合が想定される。したがって、このような欠陥を判定するために第2のしきい値TH2と第3のしきい値TH3が設定されている。
【0085】
すなわち、第1のしきい値TH1を用いて透過部分の異常が判定され、第2のしきい値TH2と第3のしきい値TH3を用いて遮光膜の異常が判定される。なお、監視回路14では、上記のとおり3つのしきい値が設定されているが、これに限定されず必要に応じて、しきい値を追加してもよい。
【0086】
次に、マスク検査装置100を用いてマスク1を検査する方法について説明する。図7は、マスク1に形成されたパターンの光学画像の取得手順を示す模式図である。
【0087】
図7に示すマスク1は、図1のステージ2の上に載置されているものとする。また、マスク1上の検査領域は、図7に示すように、短冊状の複数の検査領域、すなわち、ストライプ20,20,20,20,・・・に仮想的に分割されている。各ストライプは、例えば、幅が数百μmであって、長さがマスク1のX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の領域とすることができる。
【0088】
光学画像は、ストライプ毎に取得される。すなわち、図7で示す光学画像を取得する際には、各ストライプ20,20,20,20,・・・が連続的に走査されるようにステージ2の動作が制御される。具体的には、ステージ2が図7に示す−X方向に移動しながら、マスク1の光学画像が取得される。そして、透過光TDIセンサ11A及び反射光TDIセンサ11Bに、図7に示すような走査幅Wの画像が連続的に入力される。
【0089】
すなわち、第1のストライプ20における画像を取得した後、第2のストライプ20における画像が取得される。この場合、ステージ2が−Y方向にステップ移動した後、第1のストライプ20における画像の取得時の方向(−X方向)とは逆方向(X方向)に移動しながら光学画像が取得され、走査幅Wの画像が、透過光TDIセンサ11A及び反射光TDIセンサ11Bに連続的に入力される。
【0090】
また、第3のストライプ20における画像を取得する場合には、ステージ2が−Y方向にステップ移動した後、第2のストライプ20における画像を取得する方向(X方向)とは逆方向、すなわち、第1のストライプ20における画像を取得した方向(−X方向)にステージ2が移動する。なお、図7の矢印は、光学画像が取得される方向と順序を示しており、ハッチングされた部分は、光学画像の取得が済んだ領域を示している。
【0091】
図1に示す透過光TDIセンサ11A及び反射光TDIセンサ11Bに結像したパターンの像は、光電変換され、さらに透過光センサアンプ12A及び反射光センサアンプ12BによってA/D(アナログデジタル)変換される。その後、A/D変換されたセンサデータ(透過画像及び反射画像)は、透過光センサアンプ12A及び反射光センサアンプ12Bからダイ−ダイ比較回路13及び監視回路14のそれぞれに送られる。
【0092】
以上述べた本実施形態のマスク検査装置及びマスク検査方法によれば、透過光学系で採取された透過光による透過画像と、反射光学系で採取された反射光による反射画像を併用するダイ−ダイ比較検査において、光源からの光量の低下あるいはマスクの透過率異常、さらにはマスクの異物欠陥などを、監視回路14で検知し監視することができる。
【0093】
すなわち、第1のしきい値を用いて光源からの光量の低下又はマスクの透過率異常が判定され、第2のしきい値と第3のしきい値を用いて遮光膜の異常が判定される。このように本実施形態では、ダイ−ダイ比較検査において両ダイに共通して起き得る輝度変化などの検知を行うことがきる。
【0094】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0095】
また、上記実施の形態では、装置構成や制御手法など、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いてもよい。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての検査装置または検査方法は、本発明の範囲に包含される。
以下に、本願出願時の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
パターンが形成されたマスクを保持するステージを駆動する駆動手段と、
前記マスクに光を照射する光照射手段と、
前記光を前記マスクに透過させる透過光学系と、
前記光を前記マスクで反射させる反射光学系と、
前記透過した透過光の光量信号を検出する透過光画像センサと、
前記反射した反射光の光量信号を検出する反射光画像センサと、
前記透過光画像センサの各画素の出力を画素毎に増幅し、透過画像を生成する透過光センサアンプと、
前記反射光画像センサの各画素の出力を画素毎に増幅し、反射画像を生成する反射光センサアンプと、
前記マスクの繰り返し領域の第1の領域から生成された前記透過画像と、前記第1の領域とは異なる第2の領域から生成された前記透過画像とを比較し、且つ、前記第1の領域から生成された前記反射画像と、前記第2の領域から生成された前記反射画像とを比較することにより、前記マスクのパターンの欠陥を判定するダイ−ダイ比較手段と、
前記反射画像をトーン反転して振幅調整した反転反射画像を生成し、前記透過画像と前記反転反射画像との差分に基づいた透過反射差分画像を生成し、前記透過反射差分画像に設定された光量監視ポイントの光量と、予め定められたしきい値とを比較することにより、異常を判定する監視手段とを備え、
前記光量監視ポイントは、前記繰り返し領域に設定された光量監視領域に基づいて設定されることを特徴とするマスク検査装置。
[C2]
前記光量監視領域は、パターンエッジと前記パターンエッジと隣接するパターンエッジとの間のベタパターンに設定されることを特徴とする[C1]に記載のマスク検査装置。
[C3]
前記光量監視領域は、透過部分に設定された第1の光量監視領域と、遮光膜で形成された部分に設定された第2の光量監視領域を有し、
前記光量監視ポイントは、第1の光量監視ポイントと第2の光量監視ポイントを有し、前記第1の光量監視ポイントは、前記第1の光量監視領域に基づいて設定され、前記第2の光量監視ポイントは、前記第2の光量監視領域に基づいて設定され、
前記第1の光量監視ポイントの光量は、基準値より低く設定された第1のしきい値と比較され、前記第2の光量監視ポイントの光量は、基準値より低く設定された第2のしきい値と比較され、且つ、基準値より高く設定された第3のしきい値と比較されることを特徴とする[C1]又は[C2]に記載のマスク検査装置。
[C4]
前記基準値は、前記第1の光量監視ポイントの光量及び前記第2の光量監視ポイントの光量が、正常時の光量の値であることを特徴とする[C3]に記載のマスク検査装置。
[C5]
前記監視手段は、前記透過画像と前記反射画像の位置のアライメントをするアライメント手段を有することを特徴とする[C1]乃至[C4]のいずれか1項に記載のマスク検査装置。
[C6]
光源の光をマスクに照射し、前記マスクを透過した透過光を透過画像センサに結像し、前記マスクで反射した反射光を反射画像センサに結像し、前記透過画像センサ及び前記反射画像センサを前記マスクに対して相対的に移動させ、
前記画像センサの各画素の出力を画素毎に透過センサアンプで増幅し透過画像を生成し、前記反射画像センサの各画素の出力を画素毎に反射センサアンプで増幅し反射画像を生成し、前記マスクに形成されたパターンの欠陥検査を行うマスク検査方法であって、
前記マスクの繰り返し領域の第1の領域から生成された前記透過画像と、前記第1の領域とは異なる第2の領域から生成された前記透過画像とを比較し、前記第1の領域から生成された前記反射画像と、前記第2の領域から生成された前記反射画像とを比較することにより、前記マスクのパターンの欠陥を判定するステップと、
前記反射画像をトーン反転して振幅調整した反転反射画像を生成し、前記透過画像と前記反転反射画像との差分に基づいた透過反射差分画像を生成し、前記透過反射差分画像に設定された光量監視ポイントの光量と、予め定められたしきい値を比較することにより、異常を判定するステップと、
を含むことを特徴とするマスク検査方法。
【符号の説明】
【0096】
100 マスク検査装置
1 マスク
2 ステージ
3 オートローダ制御回路
3A オートローダ
4 ステージ制御回路
4A,4B,4C モータ
5 レーザ測長手段
5A 位置回路
6 光源
7 ビームスプリッタ
8 透過光学系
9 反射光学系
11A 透過光TDIセンサ
11B 反射光TDIセンサ
12A 透過光センサアンプ
12B 反射光センサアンプ
13 ダイ−ダイ比較回路
14 監視回路
20 制御計算機
21 記憶装置
22 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7