特許第6373146号(P6373146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373146複合導体線の接続方法、接続装置、及び導体挟持部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373146
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】複合導体線の接続方法、接続装置、及び導体挟持部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/02 20060101AFI20180806BHJP
   B23K 11/20 20060101ALI20180806BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20180806BHJP
   B23K 11/30 20060101ALI20180806BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20180806BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20180806BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01R43/02 B
   B23K11/20
   B23K11/00 561
   B23K11/30
   H01R4/02 C
   H02K3/04 J
   H02K15/04 E
【請求項の数】11
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-196770(P2014-196770)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-71944(P2016-71944A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】深井 寛之
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6117258(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/02
B23K 11/00
B23K 11/20
B23K 11/30
H01R 4/02
H02K 3/04
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点の異なる複数種の導体を、互いに絶縁した状態で積層して一体に構成した導体線本体部の長手方向端部を接続許容部とした複合導体線同士を接続する接続方法であって、
前記融点の異なる複数種の導体を積層した複合導体線と、該複合導体線と同一構成の複合導体線とにおける接続許容部同士を、
一対の導体挟持部材における導体挟持部にて同一種類の導体同士が隣り合うように突き合わせた状態に挟持し、
前記導体挟持部材における導体挟持部と、前記接続許容部における複数種の導体との接触面積を、前記導体の融点が高いほど接触面積が大きくなるように設定し、
前記接続許容部同士を挟持する前記導体挟持部間に通電することにより、前記接続許容部同士における同一種類の導体同士を抵抗溶接して電気的に接続する
複合導体線の接続方法。
【請求項2】
前記導体挟持部材における導体挟持部に、
前記接続許容部における複数種の導体のうち他の導体に比べて融点が低い導体との接触を回避する接触回避部を設け、
前記接触面積を、
前記接触回避部と、前記他の導体に比べて融点が低い導体とを対向させて設定した
請求項1記載の複合導体線の接続方法。
【請求項3】
前記導体挟持部に、
前記接続許容部同士を突き合わせる突き合わせ方向と交差する方向に向けて、該接続許容部の幅と略同一幅で、該接続許容部の厚み未満の深さを有する導体挿嵌溝を設け、
前記接触回避部を、
前記導体挿嵌溝内における前記接続許容部の他の導体に比べて融点が低い導体と対向する部分に設け、
前記接続許容部を前記導体挟持部の導体挿嵌溝に挿嵌して、該導体挟持部と前記他の導体に比べて融点が低い導体との接触を前記接触回避部にて回避させた
請求項2に記載の複合導体線の接続方法。
【請求項4】
前記導体挿嵌溝の一端側に設けられた当接許容部が、前記接続許容部の端部当接する
請求項3に記載の複合導体線の接続方法。
【請求項5】
前記接触回避部を、
前記他の導体に比べて融点が低い導体における突き合わせ方向と反対側に露出する面と対応する幅、及び長さに形成した接触回避溝、あるいは接触回避部材で構成した
請求項2〜4のいずれか一つに記載の複合導体線の接続方法。
【請求項6】
前記複数種の導体のうち融点が高い導体を銅または銅合金で構成し、
融点が低い導体をアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成する
請求項1〜5のいずれか一つに記載の複合導体線の接続方法。
【請求項7】
融点の異なる複数種の導体を、互いに絶縁した状態で積層して一体に構成した導体線本体部の長手方向端部を接続許容部とした複合導体線同士を電気的に接続する際に、該複合導体線同士における接続許容部同士を突き合わせた状態に挟持する一対の導体挟持部材であって、
前記一対の導体挟持部材における前記接続許容部同士を突き合わせた状態に挟持する部分に、同一種類の導体同士が隣り合うように突き合わせた状態に前記接続許容部同士を挟持する導体挟持部を設け、
前記導体挟持部における前記複数種の導体のうち他の導体に比べて融点が低い導体と対向する部分に、該他の導体に比べて融点が低い導体との接触を回避する接触回避部を設けた
導体挟持部材。
【請求項8】
前記導体挟持部に、
前記接続許容部同士を突き合わせる突き合わせ方向と交差する方向に向けて、該接続許容部の幅と略同一幅で、該接続許容部の厚み未満の深さを有する導体挿嵌溝を設け、
前記接触回避部を、前記導体挿嵌溝内における前記接続許容部の他の導体に比べて融点が低い導体と対向する部分に設けた
請求項7に記載の導体挟持部材。
【請求項9】
前記導体挿嵌溝の一端側に、
前記接続許容部の端部の当接を許容する当接許容部を設けた
請求項8に記載の導体挟持部材。
【請求項10】
前記接触回避部を、
前記他の導体に比べて融点が低い導体における突き合わせ方向と反対側に露出する面と対応する幅、及び長さに形成した接触回避溝、あるいは接触回避部材で構成した
請求項7〜9のいずれか一つに記載の導体挟持部材。
【請求項11】
請求項7〜10のうちいずれかに記載の導体挟持部材を備えた
複合導体線の接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載されるモータのコイル用巻線に用いられるような複合導体線の接続方法、接続装置、導体挟持部材、及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のコイル用巻線としては、銅線の周囲をアルミニウムで覆った丸線、あるいはアルミニウム線の周囲を銅で覆った丸線からなる巻線が用いられているが、例えば、交流電流、高周波電流(1kHz)の電流を丸線からなる巻線に通電した場合、巻線に鎖交する磁束によって渦電流が生じやすく、その渦電流の影響により、巻線内部に電流が流れやすい部分と、流れにくい部分が生じるため、通電性が悪くなる。
【0003】
そこで、上述の渦電流による影響を少なくするため、例えば、鉄や銅等の異種金属からなる複数の導体を複合した特許文献1の複合平角線や、断面積の異なる複数の導体を複合した特許文献2のコイル用巻線等の複合導体線が提案されている。この複合導体線同士を接続する場合、導電性を確保するために同一種類の導体同士を溶融接続する必要があるが、これら複合導体線を構成する複数の導体が同一種類の金属で構成されていれば、各導体の溶融温度が同じであるため、複合線の端部同士を同一の温度にて溶融接続することが可能である。例えば、同一種類の金属からなる複合導体線同士を接続する接続方法としては、複合導体線同士を一対の電極間に挟持して溶接する特許文献3のスポット溶接方法と、高導電性材同士の溶接と、低導電性材同士の溶接とを2回に分けて行う特許文献4の異種材の電気抵抗溶接方法が提案されている。
【0004】
しかし、複合導体線における複数の導体が融点の異なる異種金属で構成されている場合、例えば、複合導体線120における融点が高い導体からなる高融点導体200の端部201同士と、該高融点導体200よりも融点が低い導体からなる低融点導体300の端部301同士を互いに突き合わせたまま、抵抗溶接装置400における一対の電極401間に挟持して抵抗溶接する必要がある(図15(a)(b)参照)。
【0005】
ところが、高融点導体200が溶融する高い温度で加熱するため、高融点導体200の端部201同士が接合部160にて接続されるまえに、融点が低い低融点導体300の方が先に溶融し始めることになる。したがって、低融点導体300よりも融点が高い高融点導体200を十分に溶融するまで加熱し続けると、低融点導体300の端部301が必要以上に溶融して先に流れ落ちてしまうだけでなく、低融点導体300の端部301同士の突き合わせ部分が離れてしまうため、接続不良が発生する(図15(c)参照)。
【0006】
溶融接続する際の加熱時間を短くすれば、低融点導体300の端部301同士を溶融接続することができるが、高融点導体200の端部201同士は十分に溶融せず溶融接続が不完全となるため、接続不良が発生することになる。これは、溶融接続の代わりに、ヒュージング接合(熱カシメ)を実施しても同様に接続不良が発生する。
【0007】
また、導体同士を接続する接続手段としては、半田付けが一般的であるが、例えば、車載用モータに用いる複合導体線同士を半田付け接続した場合、200℃前後の過酷な環境下で使用するため、耐熱性に問題があり、複合導体線同士の接続には適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−210868号公報
【特許文献2】特開2007−288088号公報
【特許文献3】特開平11−342477号公報
【特許文献4】特開平6−55278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、渦電流損失を低減することができるうえ、確実な導電性が確保される良好な状態に溶融接続することができる複合導体線の接続方法、接続装置、導体挟持部材、及び接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、融点の異なる複数種の導体を、互いに絶縁した状態で積層して一体に構成した導体線本体部の長手方向端部を接続許容部とした複合導体線同士を接続する接続方法、接続装置、及び導体挟持部材であって、前記融点の異なる複数種の導体を積層した複合導体線と、該複合導体線と同一構成の複合導体線とにおける接続許容部同士を、一対の導体挟持部材における導体挟持部にて同一種類の導体同士が隣り合うように突き合わせた状態に挟持し、前記導体挟持部材における導体挟持部と、前記接続許容部における複数種の導体との接触面積を、前記導体の融点が高いほど接触面積が大きくなるように設定し、前記接続許容部同士を挟持する前記導体挟持部間に通電することにより、前記接続許容部同士における同一種類の導体同士を抵抗溶接して電気的に接続することを特徴とする。
【0011】
ここで、上記導体は、例えば、断面略矩形の四角線、断面略平角形の平角線等で構成することができる。絶縁は、例えば、絶縁皮膜、融着皮膜、絶縁性を備えた接着剤等で構成することができる。上記導体挟持部材は、例えば、抵抗溶接装置の電極等で構成することができる。
【0012】
この発明によれば、複数の複合導体線における接続許容部同士を、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができる。
詳しくは、複数の複合導体線における接続許容部同士を、例えば、抵抗溶接装置等により抵抗溶接する場合、融点の異なる複数種の導体を積層した複合導体線と、該複合導体線と同一構成の複合導体線とにおける接続許容部同士を、同一種類の導体同士を互いに突き合わせたまま、一対の導体挟持部材(具体的には電極)における導体挟持部間に挟持し、導体挟持部材における導体挟持部と、接続許容部における複数種の導体との接触面積を、各導体の融点が高いほど接触面積が大きくなるように設定する。
この後、抵抗溶接するのに必要な電流を導体挟持部間に通電して、接続許容部における融点の異なる複数種の導体を略同時に溶融させ、接続許容部同士における同一種類の導体同士を互いに突き合わせたまま溶融接続する。
【0013】
すなわち、融点の異なる複数種の導体を溶融する場合、融点の高い導体が溶融する温度に加熱すると、融点が低い導体が先に溶解して流れ落ちてしまうが、導体挟持部材における導体挟持部と、接続許容部における複数種の導体との接触面積を、各導体の融点が高いほど接触面積が大きくなるように設定することにより、複数種の導体を略同時に溶融することができる。
【0014】
例えば、複数種の導体が導体狭持部と接触する面積を、導体の融点が高いほうから低いほうに向けて順に減らすことにより、複数種の導体に対して通電される溶接電流の流入量を、各導体の融点に応じて順に減らすことができる。
【0015】
これにより、融点の異なる複数種の導体を、各導体の融点に応じた熱量にて溶融することができるため、融点の高い導体から熱伝導される熱を利用して、接続許容部における融点の異なる複数種の導体を略同時に溶融することができる。
この結果、接続許容部における融点の異なる複数種の導体を、各導体の融点に応じた温度で略同時に溶融させて、接続許容部同士における同一種類の導体同士を互いに突き合わせたまま抵抗溶接して電気的に接続することができる。
【0016】
融点の異なる複数種の導体間を、渦電流を防ぐための絶縁層にて絶縁しているため、融点の異なる導体間には電流が流れることがなく、発熱が生じることもない。
つまり、融点が低い導体は、融点が高い導体からの熱伝導によって熱を得ることとなり、融点が高い導体から熱伝導される熱影響(例えば、融点が高い導体からの熱伝導、雰囲気からの熱伝達、電極や融点が高い導体からの輻射熱等)によってのみ温度が上昇するため、融点が低い導体を、融点が高い導体が溶融する温度よりも低い温度にて加熱することができる。
【0017】
絶縁層は一般に熱伝導率も小さいため、融点の異なる導体間に温度差が生じやすく、融点が低い導体の温度上昇を、融点が高い導体よりも低く抑えることができる。
そのうえ、融点の高い導体が溶融する熱量よりも、融点の低い導体が溶融する熱量の方が少ないため、融点が高い導体が十分に溶融するまで通電しても、融点が低い導体が先に流れ落ちることを防止することができるとともに、融点が低い導体同士の突き合わせ部分が離れてしまうことも防止できる。
【0018】
上述のように、複数種の導体が溶融する熱量を、各導体の融点に応じて設定するため、融点が低い導体同士を、融点が高い導体から熱伝導される熱により確実な導電性が確保される溶融接続状態に溶融しつつ、融点が高い導体同士を確実な導電性が確保される溶融接続状態にまで十分に溶融することができる。
【0019】
この結果、複数の複合導体線における接続許容部同士を、該接続許容部同士における同一種類の導体同士を互いに突き合わせたまま略同時に溶融して、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができる。
しかも、同一種類の導体同士の溶融接続が略同時(例えば、1回の溶着作業)に行えるため、作業性を向上できる。
【0020】
さらに、同一種類の導体同士を溶融接続するため、例えば、半田付けに比べて接続した部分の耐熱温度および強度が高く、車載用モータのように200℃前後で振動のある過酷な環境下で使用しても、確実な導電性が確保される接続状態を保つことができるうえ、電気的に接続した状態を長期に亘り維持することができる。
ここでは、接続許容部同士を互いに突き合わせて接続する例を説明したが、例えば、接続許容部同士を互いに重ね合わせて接続してもよい。
【0021】
この発明の態様として、前記導体挟持部材における導体挟持部に、前記接続許容部における複数種の導体のうち他の導体に比べて融点が低い導体との接触を回避する接触回避部を設け、前記接触面積を、前記接触回避部と、前記他の導体に比べて融点が低い導体とを対向させて設定することができる。
この発明によれば、接続許容部における融点の異なる複数種の導体を略同時に溶融させて、同一種類の導体同士をより確実に接続することができる。
【0022】
詳しくは、一対の導体挟持部材により接続許容部同士を互いに突き合わせた状態に挟持する際に、導体挟持部に設けた接触回避部を、接続許容部における複数種の導体のうち他の導体に比べて融点が低い導体に対向させる。
【0023】
例えば、導体に対する接触を回避させるか、あるいは、導体に対する接触面積を減らす等することにより、導体挟持部材における導体挟持部と、接続許容部における複数種の導体との接触面積を、各導体の融点に応じて、該導体の融点が高いほうから低いほうに向けて順に減少するように、より確実に設定することができる。
【0024】
これにより、複数種の導体が溶融する熱量を、各導体の融点に応じてより確実に減少させることができる。
この結果、接続許容部における融点の異なる複数種の導体を、各導体の融点に応じた温度で略同時に溶融させて、接続許容部同士における同一種類の導体同士をより確実に接続することができる。
【0025】
上述の接触回避部を、例えば、凹状の溝部にて構成すれば、導体挟持部と融点が低い導体との接触を回避することができるが、導体挟持部における融点が高い導体に対して接触される部分を凸状に形成すれば、融点が低い導体と対向する部分が凹状となるため、導体挟持部との接触を回避させることができる。これにより、接触回避部は凹状、及び凸状を含むものとすることができる。
【0026】
導体挟持部と融点が低い導体との接触を接触回避部にて回避させれば、融点が低い導体に対して溶接電流等の外的要因が直接作用することがなく、融点が低い導体同士を、融点が高い導体から熱伝導される熱で溶融させて溶融接続することができる。
【0027】
また、この発明の態様として、前記導体挟持部に、前記接続許容部同士を突き合わせる突き合わせ方向と交差する方向に向けて、該接続許容部の幅と略同一幅で、該接続許容部の厚み未満の深さを有する導体挿嵌溝を設け、前記接触回避部を、前記導体挿嵌溝内における前記接続許容部の他の導体に比べて融点が低い導体と対向する部分に設け、前記接続許容部を前記導体挟持部の導体挿嵌溝に挿嵌して、該導体挟持部と前記融点が低い導体との接触を前記接触回避部にて回避させることができる。
【0028】
この発明によれば、導体挟持部と接続許容部の接触面積を、複数種の導体の融点に応じて順に減少するようにより確実に設定することができる。
詳しくは、複数の複合導体線における接続許容部同士を、同一種類の導体同士が隣り合うようにして、一対の導体挟持部材における導体挟持部の導体挿嵌溝に挿嵌することにより、接続許容部同士を、同一種類の導体同士が突き合わされた状態に位置規制することができる。
【0029】
これにより、接続許容部同士の突き合わせ部分が幅方向へ変位することを防止できるとともに、同一種類の導体同士が突き合わされた状態に正確に突き合わせることができる。
接続許容部を導体挿嵌溝に挿嵌した際、接続許容部における融点が高い導体には、導体挿嵌溝内の挟持側端面が通電可能に面接触される。融点が低い導体には、導体挿嵌溝内における接触回避部を対向させるため、導体挟持部と融点が低い導体との接触を回避させた状態に挟持することができる。
【0030】
この結果、複数の複合導体線における接続許容部同士を正確に突き合せたまま、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができる。
しかも、接続許容部における幅方向外側の端面には、導体挿嵌溝における幅方向の内側壁部を対向させるので、接続許容部における幅方向への融点が低い導体の流出を防止することができるとともに、融点が低い導体の流出も低く抑えることができる。
【0031】
さらに、接続許容部における幅方向への変形も規制することができるため、接続許容部同士の接合部を正規の接続状態に接続することができる。
そのうえ、接続許容部同士を導体挿嵌溝に挿嵌したまま互いに突き合せるため、接続許容部同士を突き合せる作業が容易に行えるとともに、作業性が向上する。
【0032】
また、この発明の態様として、前記導体挿嵌溝の一端側に、前記接続許容部の端部の当接を許容する当接許容部を設けることができる。
この発明によれば、複数の複合導体線における接続許容部同士をより正確に接続することができる。
【0033】
詳しくは、複数の複合導体線における接続許容部同士を、同一種類の導体同士が隣り合うようにして、一対の導体挟持部材における導体挟持部の導体挿嵌溝に挿嵌するとともに、接続許容部の端部を、導体挿嵌溝の当接許容部にそれぞれ当接することにより、接続許容部同士を、同一種類の導体同士が突き合わされた状態に位置規制することができる。
【0034】
これにより、接続許容部同士の突き合わせ部分が幅方向、及び長手方向へ変位することを防止できるとともに、同一種類の導体同士が突き合わされた状態により正確に突き合わせることができる。
この結果、複数の複合導体線における接続許容部同士をより正確に突き合わせたまま、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができる。
【0035】
しかも、接続許容部における幅方向外側の端面には、導体挿嵌溝における幅方向の内側壁部を対向させ、接続許容部の端部には、導体挿嵌溝における当接許容部を対向させるので、接続許容部における幅方向、及び長手方向への融点が低い導体の流出を防止することができるとともに、融点が低い導体の流出もより低く抑えることができるため、正規の接続状態により高い精度で接続することができる。
【0036】
また、この発明の態様として、前記接触回避部を、前記融点が低い導体における突き合わせ方向と反対側に露出する面と対応する幅、及び長さに形成した接触回避溝、あるいは接触回避部材で構成することができる。
【0037】
ここで、上記接触回避溝、及び接触回避部材における突き合わせ方向と平行する垂直な面で分断した断面形状は、例えば、突き合わせ方向に向けて一側面を開放した略矩形の溝形状、略三角形の溝形状、略半円形の溝形状等の溝形状に形成することができる。なお、融点が低い導体との接触が回避可能な形状であれば、上記形状以外の所望する溝形状に形成してもよい。
また、接触回避部材は、例えば、セラミックス、合成樹脂、合成ゴム等の絶縁性、及び耐熱性を備えた部材にて構成することができる。
【0038】
この発明によれば、融点が低い導体に対して、該導体を溶融するような外的要因が導体挟持部材から直接作用することを防止できる。
詳しくは、接続許容部同士を突き合わせたまま、一対の導体挟持部材における導体挟持部間に挟持した際、導体挟持部材の導体挟持部は接続許容部における融点が高い導体のみに接触するが、導体挟持部と融点が低い導体との接触は、接触回避溝、あるいは接触回避部材にて回避させる。
【0039】
このため、例えば、導体挟持部材を介して通電される電流、導体挟持部材を介して熱伝導される熱等の外的要因が、導体挟持部材から融点が低い導体に対して直接作用することを確実に防止できる。
【0040】
この結果、融点が低い導体同士を、融点が高い導体から熱伝導される熱で溶融させて、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができる。
しかも、融点が低い導体に熱伝導される熱の一部は、接触回避溝内に放熱されるか、あるいは接触回避部材に熱伝導されるため、融点が低い導体に熱伝導された余分な熱を逃がすことができ、加熱し過ぎることを防止できる。
【0041】
さらに、接触回避部材を、融点が低い導体における突き合わせ方向と反対側の面に対向させるので、接続許容部における突き合わせ方向外側に向けて融点が低い導体が流出することを確実に防止することができるとともに、突き合わせ方向外側への変形も規制することができるため、接続許容部同士を正規の接続状態に接続することができる。
【0042】
また、この発明の態様として、前記複数種の導体のうち融点が高い導体を銅または銅合金で構成し、融点が低い導体をアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成することができる。
上記融点が高い導体は、例えば、融点1085℃の銅または銅合金で構成することができる。また、融点が低い導体は、例えば、融点660℃のアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成することができる。
この発明によれば、渦電流損失をより低減することができるうえ、軽量化が図れる。
【0043】
詳述すると、融点が高い導体を、高い導電率を有する銅または銅合金で構成することによって、直流抵抗を低減することができるとともに、融点が低い導体を、相対的に低い導電率を有するアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成することによって、渦電流損失を低減することができる。
【0044】
この結果、融点が高い導体である銅は導電率が大きく直流抵抗を小さくでき、融点が低い導体であるアルミニウムは導電率が相対的に小さく渦電流が発生しにくいため、直流に対する損失も小さく、かつ高周波における渦電流損失も小さい複合導体線とすることができる。
しかも、融点が低い導体をアルミニウムにて構成することにより、複合導体線全体を銅のみで構成するよりも重量が軽くなり、複合導体線を軽量化できる。
【0045】
さらに、アルミニウムの特性として融点と軟化点が近いため、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の融点が低い導体を直接加熱すると、融点が低い導体同士が溶融接続されるまでに溶解してしまうおそれがある。
そこで本発明は、融点が低い導体同士を、融点が高い導体から熱伝導される熱により間接的に加熱するため、融点が低い導体を溶解させることなく、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができる。
【0046】
また、この発明は、融点の異なる複数種の導体を、互いに絶縁した状態で積層して一体に構成した導体線本体部の長手方向端部を接続許容部とした複合導体線において、前記融点の異なる複数種の導体を積層した複合導体線と、該複合導体線と同一構成の複合導体線とにおける接続許容部同士を、同一種類の導体同士が隣り合うように突き合わせるとともに、前記接続許容部における複数種の導体を、該各導体の融点に応じた温度で略同時に溶融させて、前記接続許容部同士における同一種類の導体同士を電気的に接続した接続構造体である。
【0047】
詳述すると、同一種類の導体同士を溶融接続するため、渦電流損失を低減することができるとともに、確実な導電性が確保される良好な接続状態の接続構造体を構成することができる。
【発明の効果】
【0048】
この発明によれば、渦電流損失を低減することができるうえ、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができる複合導体線の接続方法、接続装置、導体挟持部材、及び接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】実施例1の複合導体線同士を接続した接続構造線の説明図。
図2】接続構造線における複合導体線の接続方法の説明図。
図3】接続許容部を電極間に挟持した部分の断面図。
図4】実施例2の接続構造線における複合導体線の接続方法の説明図。
図5】接続許容部を電極間に挟持した状態の説明図。
図6】実施例3の接続構造線における複合導体線の接続方法の説明図。
図7】接触回避溝の他の溝形状を示す説明図。
図8】実施例4の複合導体線同士を接続する接続方法の説明図。
図9】実施例5の複合導体線同士を接続する接続方法の説明図。
図10】実施例6の複合導体線同士を接続する接続方法の説明図。
図11】実施例7の複合導体線同士を接続する接続方法の説明図。
図12】実施例8の複合導体線同士を接続する接続方法の説明図。
図13】実施例9の複合導体線同士を接続する接続方法の説明図。
図14】実施例10の複合導体線同士を接続する接続方法の説明図。
図15】複合導体線の従来の接続方法を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
(実施例1)
【0051】
図1は実施例1の複合導体線12A同士を接続した接続構造線11の説明図であり、詳しくは、図1(a)は複合導体線12Aの接続許容部40同士を突き合わせた状態の斜視図、図1(b)は複合導体線12Aの接続許容部40同士を接続した接続構造線11の斜視図である。
【0052】
図2は接続構造線11における複合導体線12Aの接続方法の説明図であり、詳しくは、図2(a)は接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71A間に挟持する直前の斜視図、図2(b)は接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71A間に挟持した直後の斜視図である。
図3図2(b)に示す接続許容部40を電極71A間に挟持した部分を突き合わせ方向Hに分断した断面図である。
【0053】
なお、図1図2に示す長手方向Lとは、複合導体線12Aにおける長手方向Lと一致する方向であり、前後方向FBとは、長手方向Lに対して平面方向において交差する方向である。
また、接続許容部40に対する導体線本体部13の側を後方側Bbとし、逆に、導体線本体部13に対する接続許容部40の側を前方側Ffとしている。また、幅方向Vは、高融点導体20と低融点導体30を積層した方向(図1に示す上下方向)である。
【0054】
実施例1の接続構造線11は、高融点導体20と低融点導体30を互いに絶縁した状態で積層して一体に構成した複合導体線12Aと、該複合導体線12Aと同一構成の複合導体線12Aとにおける接続許容部40同士を溶融接続して構成している(図1(b)参照)。
【0055】
複合導体線12Aは、長手方向Lに連続する導体線本体部13と、導体線本体部13の長手方向L端部に設けた接続許容部40とで構成している。
少なくとも2本の複合導体線12Aの接続許容部40同士を抵抗溶接にて接続して接合部60を形成することにより、例えば、モータ用巻線として用いることのできる接続構造線11を構成する。
【0056】
また、複合導体線12Aは、後述する低融点導体30よりも融点が高い銅製または銅合金製の導体(融点1085℃の導体)からなる高融点導体20と、高融点導体20よりも融点が低いアルミニウム製またはアルミニウム合金製の導体(融点660℃の導体)からなる低融点導体30とを、該導体20,30の間に絶縁層50を介在させて幅方向Vに積層している。
すなわち、低融点導体30を幅方向Vの中央部に配置するとともに、幅方向Vの外側に配置した2本の高融点導体20の間に挟み込んだ状態に積層して、3層構造に構成している(図1(a)参照)。
【0057】
高融点導体20と低融点導体30は、略同一の厚みに形成した断面略矩形の平角導体で構成しており、複合導体線12Aの長手方向Lに沿って並列に配置するとともに、該高融点導体20、及び低融点導体30における幅方向V内側の対向面を一体に接合している。高融点導体20、及び低融点導体30の対向面間は、絶縁層50を介在させて互いに絶縁している。
【0058】
接続許容部40は、高融点導体20、及び低融点導体30で構成する複合導体線12Aの端部における所定長さ分を、長手方向Lと直交する前後方向FBに向けて湾曲させ、該長手方向Lと直交する前方側Ffに向けて突出するように形成している(図1(a)参照)。
【0059】
上述の複合導体線12A同士を接続するために用いられる抵抗溶接装置70について説明する。抵抗溶接装置70は、複合導体線12Aの接続許容部40同士を互いに突き合せた状態に挟持する一対の電極71Aを備えている。
電極71Aは、断面略丸形を有する導電性の金属棒で構成され、接続許容部40における突き合わせ方向Hの外側の端面と対向して配置している(図2図3参照)。
【0060】
一対の電極71Aは、図示しない電極移動手段により接続許容部40同士を突き合せた状態に挟持する突き合わせ方向Hと、接続許容部40の挟持が解除される突き合わせ方向Hと反対側の方向とに相対移動される。
なお、電極71Aには、接続許容部40同士を抵抗溶接するのに必要な電流を通電するための図示しない通電装置を接続している。
【0061】
電極71Aにおける接続許容部40を挟持する挟持側端部には、該接続許容部40同士を突き合わせ方向Hに挟持するための導体挟持部72Aを形成している。
導体挟持部72Aにおける挟持側端面の幅方向Vの中央部には、接続許容部40における低融点導体30の端部30a、すなわち、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面と対向して、該端部30aとの接触が回避される凹状の接触回避溝73Aを形成している(図2図3参照)。
【0062】
接触回避溝73Aは、導体挟持部72Aの挟持側端面に沿って突き合わせ方向Hと直交して前後方向FBに形成するとともに、該挟持側端面の径方向中心部を通って後方側Bb外縁部から前方側Ff外縁部に亘る全長に形成している。
【0063】
接触回避溝73Aにおける突き合わせ方向Hと平行する垂直な面で分断した断面形状は、突き合わせ方向Hに向けて一側面を開放した略矩形の溝形状に形成しており、該接触回避溝73Aにおける前後方向FBの端部は、前後方向FBの前方側Ff、及び後方側Bbに向けて開放している。
【0064】
接触回避溝73Aの幅、及び長さは、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面と対応して、該端部30aの端面に対して導体挟持部72Aの接触が回避される幅、及び長さに形成している(図2(a)(b)参照)。
【0065】
上述の抵抗溶接装置70により同一構成の複合導体線12A同士を溶接する場合、接続許容部40における高融点導体20及び低融点導体30は、溶解する際の融点が異なるため、高融点導体20の端部20a同士、低融点導体30の端部30a同士を略同時に溶解させて接続する際には、高融点導体20、低融点導体30を溶融するのに必要な熱エネルギー(熱容量×融点)の比率に対応して、高融点導体20、低融点導体30が溶融する熱量(導体を溶融する熱量)を減らす必要がある。
【0066】
熱量を減らす場合、実施例1では導体挟持部72Aの接触回避溝73Aを、接続許容部40における低融点導体30の突き合わせ方向Hの外側に露出する端部30aの端面に対向させて、該端部30aに対する導体挟持部72Aの接触を回避させる。
具体的には、導体挟持部72Aと高融点導体20の接触面積を「1」とすると、導体挟持部72Aにおける高融点導体20、低融点導体30に対する接触面積の比率は、高融点導体20:低融点導体30=1:0となるように設定している。
つまり、抵抗溶接装置70により抵抗溶接する際に通電される溶接電流の流入量は、高融点導体20に対する流入量を「1」とすると、低融点導体30に対する流入量は「0」となるため、高融点導体20に対する流入量よりも、低融点導体30に対する流入量を減らすことができる。
【0067】
これにより、低融点導体30には導体挟持部72Aから溶融電流が通電されることも、導体挟持部72Aから熱伝導されることもなく、高融点導体20から熱伝導される熱で加熱されるため、接続許容部40における高融点導体20と、低融点導体30を略同時に溶解することが可能となる。
なお、実施例1では接触回避溝73Aの幅を、低融点導体30における端部30aの露出側端面と略同一幅に形成しているが、該低融点導体30との接触が回避可能であれば、該低融点導体30の幅よりも幅広に形成してもよい。
【0068】
上述した同一構成の複合導体線12A同士を、接続許容部40で互いに接続して接続構造線11を構成する接続方法について説明する。
先ず、高融点導体20と低融点導体30を積層した複合導体線12Aと、該複合導体線12Aと同一構成の複合導体線12Aとにおける接続許容部40同士を、接続許容部40における同一種類の高融点導体20同士と低融点導体30同士とが隣り合うようにして突き合わせ方向Hに突き合わせる(図1(a)参照)。
【0069】
接続許容部40同士を突き合わせたまま、抵抗溶接装置70における一対の電極71Aの間に挿入するとともに、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面と、電極71Aにおける導体挟持部72Aの接触回避溝73Aを突き合わせ方向Hに対向させた状態にセットする(図2(a)参照)。
【0070】
一対の電極71Aを突き合わせ方向Hに相対移動させて、接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71Aの導体挟持部72A間に挟持するとともに、高融点導体20における端部20aの突き合わせ方向Hの外側の端面に、導体挟持部72Aの挟持側端面を通電可能に接触させる(図2(b)、図3参照)。
【0071】
上述の挟持状態では、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面に、導体挟持部72Aの接触回避溝73Aを対向させて、該導体挟持部72Aと低融点導体30との接触が回避させた状態となる(図3参照)。
【0072】
接続許容部40の低融点導体30と、電極71Aの導体挟持部72Aとの接触を回避させた状態で、高融点導体20同士を介して、一対の電極71Aの間に図示しない通電装置により電流を通電し、高融点導体20の端部20a同士を溶融する温度(融点1085℃)に発熱させるとともに、該高融点導体20の端部20a同士を互いに溶融させて通電可能に抵抗溶接する。
【0073】
高融点導体20の端部20a同士を溶融する際に放熱される熱を、高融点導体20から低融点導体30に向けて熱伝導し、低融点導体30の端部30a同士を溶融する温度(融点660℃)に発熱させるとともに、該低融点導体30の端部30a同士を、上述の高融点導体20の端部20a同士と略同時に溶融させて通電可能に抵抗接続する。
【0074】
高融点導体20と低融点導体30の間は絶縁層50にて絶縁しているため、低融点導体30には電流が流れることがなく、発熱しない。
低融点導体30は、導体挟持部72Aとの接触を接触回避溝73Aにて回避しているため、導体挟持部72Aから熱伝導されることがなく、高融点導体20から熱伝導される熱を得るだけであるため、該高融点導体20が溶融する温度よりも低い温度、すなわち、低融点導体30が溶融する温度にて加熱されることとなる。
これにより、低融点導体30の端部30a同士を、高融点導体20から熱伝導される熱で加熱して溶融するとともに、接続許容部40における高融点導体20の端部20a同士と、低融点導体30の端部30a同士とを、導体20,30の融点に応じた温度にてより確実に溶融させて通電可能に溶融接続することができる。
【0075】
なお、絶縁層50は一般に熱伝導率も小さいため、高融点導体20と低融点導体30との間に温度差が生じやすく、高融点導体20に対して低融点導体30の温度上昇を低く抑えることができる。
そのうえ、低融点導体30は、高融点導体20よりも熱量が少ないため、高融点導体20が十分に溶融するまで通電しても、低融点導体30が先に流れ落ちることを防止することができるとともに、低融点導体30における端部30a同士の突き合わせ部分が離れてしまうことも防止できる。
【0076】
上述の抵抗溶接装置70により抵抗溶接する際に通電される溶接電流の流入量を、高融点導体20に対する流入量を「1」として、低融点導体30に対する流入量を「0」としているため、低融点導体30の端部30a同士を、高融点導体20から熱伝導される熱で加熱して確実な導電性が確保される溶融接続状態に溶融しつつ、高融点導体20の端部20a同士を確実な導電性が確保される溶融接続状態にまで十分に溶融することができる。
これにより、複合導体線12Aの接続許容部40同士を、接続許容部40における高融点導体20同士、及び低融点導体30同士を互いに突き合せたまま溶融して接合部60を形成することにより、接続構造線11を構成することができる(図1(b)参照)。
【0077】
上述のように、高融点導体20、低融点導体30が溶融する熱量を、該導体20,30の融点に応じて設定するため、高融点導体20、低融点導体30を、それぞれ適切に溶融することができる。
すなわち、複合導体線12Aの接続許容部40同士を接続する際に、低融点導体30の端部30aが先に流れ落ちることを防止できるとともに、低融点導体30同士、及び高融点導体20同士の突き合わせ部分が、確実な導電性が確保される溶融接続状態以上に溶融し過ぎることも防止できる。
この結果、複合導体線12Aの接続許容部40同士を、接続許容部40における高融点導体20同士と低融点導体30同士を互いに突き合わせたまま略同時に溶融して、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができる。
【0078】
しかも、融点の異なる高融点導体20同士、及び低融点導体30同士の溶融接続が略同時(例えば、1回の溶着作業)に行えるため、作業性を向上できる。
さらに、同一種類の高融点導体20同士、及び低融点導体30同士を互いに溶融接続するため、例えば、半田付けに比べて接続した部分の耐熱温度および強度が高く、車載用モータのように200℃前後で振動のある過酷な環境下で接続構造線11を使用しても、確実な導電性が確保される接続状態を保つことができるとともに、電気的に接続した状態を長期に亘り維持することができる。
【0079】
さらにまた、複合導体線12Aを、異種金属からなる高融点導体20と低融点導体30とを積層して構成しているため、渦電流損失を低減することができるとともに、確実な導電性が確保される良好な接続状態の接続構造線11を構成することができる(図1(b)参照)。
上述の複合導体線12Aを、例えば、モータを構成するコイルコアに巻回したのち、上述の接続構造線11にてステーターを形成し、モータ用巻線として使用することにより、モータの駆動効率が向上するうえ、所定の出力が安定して得られる。
【0080】
以下、上述の複合導体線12A、及び接続構造線11のその他の例について説明する。この説明において、前記構成と同一または同等の部位については同一の符号を記してその詳しい説明を省略する。
【0081】
(実施例2)
上述の複合導体線12Aにおける接続許容部40同士を、同一種類の高融点導体20同士、及び低融点導体30同士を突き合わせた状態に位置決めしたまま抵抗溶接装置70にて接続する実施例2の接続方法について説明する。
【0082】
図4は実施例2の複合導体線12A同士を接続する接続方法の説明図であり、詳しくは、図4(a)は接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71B間に挟持する直前の斜視図、図4(b)は接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71B間に挟持した直後の斜視図である。
【0083】
図5は接続許容部40を電極71B間に挟持した状態の説明図であり、詳しくは、図5(a)は図4(b)に示す接続許容部40を電極71Bの導体挿嵌溝74Bに挿嵌した部分のA−A線矢視断面図、図5(b)は接続許容部40を電極71B間に挟持した部分を突き合わせ方向Hに分断した断面図である。
【0084】
詳述すると、接続許容部40の挿嵌が許容される幅、及び形状に形成した凹状の導体挿嵌溝74Bを、導体挟持部72Bにおける挟持側端面の幅方向Vの中央部に形成している。
導体挿嵌溝74Bは、接続許容部40同士の突き合わせ方向Hと直交して前後方向FBに形成するとともに、突き合わせ方向Hに向けて一側面を開放した略矩形の溝形状に形成している。導体挿嵌溝74Bにおける前後方向FBの端部は、前後方向FBの前方側Ff、及び後方側Bbに向けて開放している。
【0085】
導体挿嵌溝74B内における幅方向Vの中央部には、上述の接触回避溝73Aと略同一の接触回避溝73Bを、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面と対向して前後方向FBに形成している(図4図5参照)。
【0086】
導体挿嵌溝74Bの溝形状は、接続許容部40を突き合わせ方向Hと平行する垂直な面で分断した断面形状と略同一の溝形状に形成するとともに、導体挿嵌溝74Bの溝幅w1は、接続許容部40の幅w2と略同一幅に形成している。
より詳しくは、導体挿嵌溝74Bの溝幅w1を、接続許容部40の幅w2よりも所定寸法分だけ幅広に形成している(図5(a)参照)。
【0087】
導体挿嵌溝74Bの溝深さt2は、接続許容部40の厚みt1未満の深さに形成している。より詳しくは、接続許容部40を導体挿嵌溝74Bに挿嵌した状態において、接続許容部40の突き合わせ側端部が、導体挟持部72Bの挟持側端面(導体挿嵌溝74B)よりも突き合わせ方向Hに向けて所定寸法分だけ突出される深さに形成している(図5(b)参照)。
【0088】
導体挟持部72Bにおける突き合わせ方向Hに対向する挟持側端面間は、導体挿嵌溝74Bに挿嵌した接続許容部40同士を突き合わせた際に、接続許容部40同士における突き合わせ方向Hへの溶融変形を許容する変形許容代として、該接続許容部40同士の溶融変形が許容される間隔に隔てられる。なお、変形許容代は、t1に対して2割〜3割の寸法に設定される。
【0089】
さらに、接続許容部40と導体挿嵌溝74Bとにおける幅方向Vに対向する対向面間には、接続許容部40を導体挿嵌溝74Bに挿嵌した状態において、接続許容部40における幅方向Vへの溶融変形を許容する隙間cをそれぞれ形成している。
【0090】
上述の電極71Bを用いて、複合導体線12Aの接続許容部40同士を抵抗溶接する場合、接続許容部40同士を突き合わせたまま、電極71Bにおける導体挟持部72Bの導体挿嵌溝74Bに挿嵌して、接続許容部40同士を突き合わせ方向Hに挟持する(図4(a)(b)参照)。
【0091】
接続許容部40における幅方向Vの外側の端面を、導体挿嵌溝74Bにおける幅方向Vの内側壁部に対向させるため、接続許容部40同士を、高融点導体20の端部20a同士と低融点導体30の端部30a同士とが突き合わされた状態に位置規制することができる。
【0092】
接続許容部40同士における、高融点導体20同士と低融点導体30同士との突き合わせ部分が幅方向Vへ変位することも防止できるため、接続許容部40同士を、高融点導体20同士と低融点導体30同士とが突き合わされた状態により正確に突き合わせることができる(図4(b)、図5(b)参照)。
【0093】
接続許容部40を導体挿嵌溝74Bに挿嵌した際、高融点導体20における端部20aの突き合わせ方向Hの外側の端面には、導体挿嵌溝74B内の挟持側端面を通電可能に面接触させる。
低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面には、導体挿嵌溝74Bにおける接触回避溝73Bを対向させるため、該導体挟持部72Bと低融点導体30との接触を回避させた状態に挟持することができる(図5(b)参照)。
【0094】
上述のように、接続許容部40の低融点導体30と、電極71Bの導体挟持部72Bとの接触を接触回避溝73Bにて回避させた状態で、高融点導体20同士を介して、一対の電極71B間に図示しない通電装置により電流を通電し、高融点導体20の端部20a同士を溶融する温度に発熱させるとともに、該高融点導体20の端部20a同士を互いに溶融させて通電可能に抵抗溶接する。
【0095】
低融点導体30の端部30a同士は、高融点導体20から熱伝導される熱によって該高融点導体20が溶融する温度よりも低い温度にて加熱するとともに、低融点導体30の端部30a同士を互いに溶融させて通電可能に溶融接続する。
この結果、複合導体線12A同士を、接続許容部40における高融点導体20同士と低融点導体30同士をより正確に突き合わせたまま、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができる。
【0096】
しかも、接続許容部40における幅方向Vの外側の端面に、導体挿嵌溝74Bにおける幅方向Vの内側壁部を対向させるので、幅方向Vの外側に向けて低融点導体30が流出することを防止できるとともに、該低融点導体30の流出も低く抑えることができるため、正規の接続状態により高い精度で接続することができる。
【0097】
さらに、接続許容部40における幅方向Vへの変形も規制することができるため、接続許容部40同士の接合部60を正規の接続状態に接続することができる。
そのうえ、複合導体線12Aの接続許容部40同士を、電極71Bにおける導体挟持部72Bの導体挿嵌溝74Bに挿嵌したまま互いに突き合せるため、接続許容部40同士を突き合せる作業が容易に行えるとともに、作業性が向上する。
【0098】
(実施例3)
上述の複合導体線12Aにおける接続許容部40同士を、高融点導体20同士、及び低融点導体30同士を突き合わせた状態に位置決めしたまま抵抗溶接装置70にて接続する実施例3の接続方法について説明する。
【0099】
図6は実施例3の複合導体線12A同士を接続する接続方法の説明図であり、詳しくは、図6(a)は接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71C間に挟持する直前の斜視図、図6(b)は接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71C間に挟持した直後の斜視図、図6(c)は図6(b)に示す接続許容部40を電極71Cの導体挿嵌溝74Cに挿嵌した部分のB−B線矢視断面図である。
【0100】
詳述すると、電極71Cにおける導体挟持部72Cの挟持側端面には、上述の接触回避溝73B、及び導体挿嵌溝74Bと略同一溝形状の接触回避溝73C、及び導体挿嵌溝74Cを形成している(図6(a)(b)参照)。
接触回避溝73C、及び導体挿嵌溝74Cは、導体挟持部72Cにおける挟持側端面の後方側Bb外縁部から前方側Ff外縁部よりも手前部分(前後方向FBの途中部分)に至る長さに形成している。
【0101】
導体挿嵌溝74Cにおける前後方向FBの前方側Ffと対応する前端側には、接続許容部40を導体挿嵌溝74Cに挿嵌した状態において、前方側Ffに向けて接続許容部40の先端部の当接を許容する当接許容部75を形成している。
当接許容部75は、導体挟持部72Cにおける挟持側端面の前方側Ff外縁部よりも内側で、該挟持側端面の径方向中心部よりも前方側Ff寄りの位置に形成している。
【0102】
接触回避溝73C、及び導体挿嵌溝74Cは、導体挟持部72Cにおける挟持側端面に設定した範囲r1内に形成しており、残りの範囲r2を溝がない部分として設定している(図6(c)参照)。
なお、導体挿嵌溝74Cにおける前後方向FBの後方側Bbと対応する後端側は該後方側Bbに向けて開放している。
【0103】
上述の電極71Cを用いて、複合導体線12Aの接続許容部40同士を抵抗溶接する場合、接続許容部40同士を突き合わせたまま、電極71Cにおける導体挟持部72Cの導体挿嵌溝74Cに挿嵌して、接続許容部40同士を突き合わせ方向Hに挟持する(図6(a)(b)参照)。
【0104】
接続許容部40における幅方向Vの外側の端面を、導体挿嵌溝74Cにおける幅方向Vの内側壁部に対向させ、接続許容部40の先端部を導体挿嵌溝74Cの当接許容部75に当接するため、接続許容部40同士を、高融点導体20の端部20a同士と低融点導体30の端部30a同士とが突き合わされた状態に位置規制することができる。
【0105】
そのうえ、接続許容部40同士における、高融点導体20同士と低融点導体30同士の突き合わせ部分が長手方向L、及び幅方向Vへ変位することも防止できるため、接続許容部40同士を、高融点導体20の端部20a同士と低融点導体30の端部30a同士とが突き合わされた状態により正確に突き合わせることができる(図6(a)(b)参照)。
【0106】
接続許容部40を導体挿嵌溝74Cに挿嵌した際、高融点導体20における端部20aの突き合わせ方向Hの外側の端面には、導体挿嵌溝74C内の挟持側端面が通電可能に面接触される。
低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面には、導体挿嵌溝74Cにおける接触回避溝73Cを対向させるため、該導体挟持部72Cと低融点導体30との接触を回避させた状態に挟持することができる(図5(b)、図6(b)参照)。
【0107】
上述のように、接続許容部40の低融点導体30と、電極71Cの導体挟持部72Cとの接触を接触回避溝73Cにて回避させた状態で、高融点導体20の端部20a同士のみを発熱させて互いに抵抗溶接するため、低融点導体30の端部30a同士は、高融点導体20から熱伝導される熱により溶融させて互いに溶融接続することができる。
【0108】
この結果、複合導体線12A同士を、接続許容部40における高融点導体20同士と低融点導体30同士をより正確に突き合わせたまま、確実な導電性が確保される良好な状態により確実に接続することができる。
【0109】
しかも、接続許容部40における幅方向Vの外側の端面を、導体挿嵌溝74Cにおける幅方向Vの内側壁部に対向させ、接続許容部40の先端部を導体挿嵌溝74Cの当接許容部75に対向させる。
これにより、接続許容部40における長手方向L、及び幅方向Vの外側に向けて低融点導体30が流出することを防止できるとともに、低融点導体30の流出もより低く抑えることができる。
さらに、接続許容部40における長手方向L、及び幅方向Vへの変形も規制することができるため、接続許容部40同士の接合部60を正規の接続状態により高い精度で接続することができる。
【0110】
上述の実施例2,3では、接触回避溝73B,73Cを略矩形の溝形状に形成した例について説明したが、接続許容部40における低融点導体30との接触が回避可能な形状であれば、図7(a)(b)に示すような溝形状に形成してもよい。
【0111】
図7は接触回避溝73D(73D1,73D2)の他の溝形状を示す説明図であり、詳しくは、図7(a)(b)は略三角形の接触回避溝73D1、略半円形の接触回避溝73D2を電極71Bにおける導体挟持部72Bの導体挿嵌溝74B内に設けた部分の断面図である。
【0112】
詳述すると、接触回避溝73Dを、略三角形の接触回避溝73D1と、略半円形の接触回避溝73D2とで構成するとともに、接触回避溝73D1,73D2を、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面と対向して、電極71Bにおける導体挟持部72Bの導体挿嵌溝74B内にそれぞれ設けている(図7(a)(b)参照)。
【0113】
上述の接触回避溝73D1,73D2を有する電極71Bを用いて、複合導体線12A同士を接続する場合、接続許容部40同士を突き合わせたまま、電極71Bにおける導体挟持部72Bの導体挿嵌溝74Bに挿嵌して、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面を、導体挿嵌溝74B内の接触回避溝73D1,73D2にそれぞれ対向させる(図7(a)(b)参照)。
【0114】
接続許容部40における低融点導体30と、電極71Bにおける導体挟持部72Bとの接触が、接触回避溝73D(73D1,73D2)によって回避されるため、低融点導体30同士を、高融点導体20から熱伝導される熱によって確実に溶融接続することができる。
【0115】
この結果、複合導体線12A同士を確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができ、実施例2,3と略同等の作用、及び効果を奏することができる。
しかも、実施例2,3の略矩形を有する接触回避溝73A内には2つの角部が存在するが、略三角形を有する接触回避溝73D1内には1つの角部しか存在しないため、接触回避溝73Aよりも接触回避溝73D1の方がより容易に溝加工することができ、接触回避溝73Aよりも加工コストを低く抑えることができる。
【0116】
さらに、略半円形を有する接触回避溝73D2には角部が存在しないため、接触回避溝73D1よりも接触回避溝73D2の方がより容易に溝加工することができるだけでなく、接触回避溝73D1よりも加工コストをより低く抑えることができる。
【0117】
なお、実施例1,3の接触回避溝73A,73Cを、上述のような略三角形、略半円形に形成してもよい。また、接続許容部40における低融点導体30との接触が回避可能な形状であれば、接触回避溝73A〜73Dを、例えば、略波形、略半楕円形等の所望する溝形状に形成してもよく、実施例1〜3の溝形状のみに限定されるものではない。
【0118】
(実施例4)
上述の実施例1〜3では、略同一体積に形成した高融点導体20の端部20a同士と、低融点導体30の端部30a同士を接続する接続方法について説明したが、本発明の接続方法は、図8に示すように、体積が異なる高融点導体20の端部20a同士と、低融点導体30の端部30a同士を接続する実施例4の接続方法にも用いることができる。
【0119】
図8は実施例4の複合導体線12A同士を接続する接続方法の説明図であり、詳しくは、図8(a)(b)は接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71A,71B間に挟持した部分の断面図である。
詳述すると、複合導体線12Aは、高融点導体20の端部20aを幅方向Vに切削して、接続許容部40における低融点導体30の端部30aの体積を、高融点導体20の端部20aの体積に比べて大きく設定している。
【0120】
上述の電極71A,71Bを用いて、複合導体線12A同士を接続する場合、複合導体線12Aの接続許容部40同士を突き合わせたまま、電極71Aにおける導体挟持部72A間に挟持するか、電極71Bにおける導体挟持部72Bの導体挿嵌溝74Bに挿嵌して、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面を、導体挟持部72A,72Bの接触回避溝73A,73Bにそれぞれ対向させる(図8(a)(b)参照)。
【0121】
接続許容部40における低融点導体30と、電極71A,71Bにおける導体挟持部72A,72Bとの接触が、接触回避溝73A,73Bによって回避されるため、低融点導体30同士を、高融点導体20から熱伝導される熱によって確実に溶融接続することができる。
この結果、複合導体線12Aの接続許容部40同士を確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができ、実施例1〜3と略同等の作用、及び効果を奏することができる。
【0122】
しかも、接続許容部40における低融点導体30の端部30aの体積が、高融点導体20の端部20aの体積よりも大きいため、高融点導体20の端部20a同士を確実な導電性が確保される溶融接続状態にまで十分に溶解することができ、低融点導体30の端部30aが先に流れ落ちることをより積極的に防止することができる。
【0123】
(実施例5)
上述の実施例1〜4では、複合導体線12Aにおける接続許容部40同士を突き合わせて接続する接続方法について説明したが、本発明の接続方法は、図9に示すように、接続許容部40同士を重ね合わせて接続する実施例5の接続方法にも用いることができる。
【0124】
図9は実施例5の接続許容部40同士を重ね合わせて接続する複合導体線12Aの接続方法の説明図であり、詳しくは、図9(a)(b)は接続許容部40同士を重ね合わせた状態に電極71A,71B間に挟持する直前の斜視図である。
【0125】
詳述すると、複合導体線12Aの接続許容部40を前後方向FBに対して逆方向に向けて配置するとともに、複合導体線12Aの接続許容部40同士を、接続許容部40における高融点導体20の端部20a同士と低融点導体30の端部30a同士とが隣り合うように重ね合わせる。
【0126】
複合導体線12Aの接続許容部40同士を重ね合わせたまま、電極71Aにおける導体挟持部72A間に挟持するか、電極71Bにおける導体挟持部72Bの導体挿嵌溝73Bに挿嵌して、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面を、導体挟持部72A,72Bの接触回避溝73A,73Bにそれぞれ対向させる(図9(a)(b)参照)。
【0127】
接続許容部40における低融点導体30と、電極71A,71Bにおける導体挟持部72A,72Bとの接触が、接触回避溝73A,73Bによって確実に回避されるため、低融点導体30同士を、高融点導体20から熱伝導される熱によって溶融接続することができる。
この結果、複合導体線12Aの接続許容部40同士を確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができ、実施例1〜4と略同等の作用、及び効果を奏することができる。
【0128】
(実施例6)
上述した接触回避溝73A〜73Dの代わりに、図10に示すように、絶縁性、及び耐熱性を有するセラミックス製の接触回避部材76Cを用いて、複合導体線12A同士を接続する実施例6の接続方法について説明する。
【0129】
図10は実施例6の複合導体線12A同士を接続する接続方法の説明図であり、詳しくは、図10(a)は接触回避部材76Cを電極71Aにおける導体挟持部72Aの挟持側端面に設けた部分の断面図、図10(b)は接触回避部材76Cを電極71Bにおける導体挟持部72Bの導体挿嵌溝74B内に設けた部分の断面図である。
【0130】
詳述すると、接触回避部材76Cは、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面と対向して、電極71Aにおける導体挟持部72Aの挟持側端面と、電極71Bにおける導体挟持部72Bの導体挿嵌溝74B内にそれぞれ固定している。
具体的には、接触回避部材76Cを、電極71A,71Bの接触回避溝73A,73Bにそれぞれ固定している(図10(a)(b)参照)。
【0131】
接触回避部材76Cは、突き合わせ方向Hと平行する垂直な面で分断した断面形状を断面略矩形に形成するとともに、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面との接触が回避される幅、及び長さに形成している。
【0132】
上述の接触回避部材76Cを有する電極71A,71Bを用いて、複合導体線12A同士を接続する場合、複合導体線12Aの接続許容部40同士を突き合わせたまま、電極71Aにおける導体挟持部72A間に挟持するか、電極71Bにおける導体挟持部72Bの導体挿嵌溝74Bに挿嵌して、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面を、導体挟持部72A,72Bの接触回避部材76Cにそれぞれ対向させる(図10(a)(b)参照)。
【0133】
接続許容部40における低融点導体30と、電極71A,71Bにおける導体挟持部72A,72Bとの接触が、接触回避部材76Cの介在によって回避されるため、低融点導体30同士を、高融点導体20から熱伝導される熱によって確実に溶融接続することができる。
この結果、複合導体線12A同士を、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができ、実施例1〜5と略同等の作用、及び効果を奏することができる。
【0134】
しかも、低融点導体30に熱伝導される熱の一部は、接触回避部材76Cにも熱伝導されるため、低融点導体30に熱伝導される余分な熱を逃がすことができ、加熱し過ぎることを防止できる。
【0135】
さらに、接触回避部材76Cを、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面に対向させるため、接続許容部40における突き合わせ方向Hの外側に向けて低融点導体30が流出することを確実に防止することができるとともに、突き合わせ方向Hの外側への変形も規制することができ、接続許容部40同士を正規の接続状態に接続することができる。
なお、実施例6の接触回避部材76Cを用いて、実施例1〜5における複合導体線12A同士を接続してもよい。
【0136】
(実施例7)
上述の接触回避部材76Cを用いた接続方法は、図11に示すように、2層構造を有する複合導体線12D同士を接続する実施例7の接続方法にも用いることができる。
図11は実施例7の複合導体線12D同士を接続する接続方法の説明図であり、詳しくは、複合導体線12Dの接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71D間に挟持した部分の断面図である。
【0137】
詳述すると、複合導体線12Dは、高融点導体20と低融点導体30とを幅方向Vに積層して、2層構造に構成している。
電極71Dにおける導体挟持部72Dの導体挿嵌溝74D内には、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側、及び幅方向Vの外側の外面と対向して、該端部30a外面と対応する大きさ、及び形状に形成した接触回避部材76Dを固定している。
【0138】
上述の電極71Dを用いて、複合導体線12D同士を接続する場合、複合導体線12Dの接続許容部40同士を突き合わせたまま、電極71Dにおける導体挟持部72Dの導体挿嵌溝74Dにそれぞれ挿嵌して、接続許容部40同士を突き合わせ方向Hに挟持する(図11参照)。
【0139】
接続許容部40における幅方向Vの外側の端面を、導体挿嵌溝74C、及び接触回避部材76Dにおける幅方向Vの内側壁部に対向させるため、接続許容部40同士を、高融点導体20の端部20a同士と低融点導体30の端部30a同士とを突き合わせた状態に位置規制することができるとともに、高融点導体20同士と低融点導体30同士との突き合わせ部分が幅方向Vへ変位することを防止できる。
【0140】
高融点導体20の端部20aには、電極71Dにおける導体挟持部72Dを面接触させるが、低融点導体30の端部30a外面には接触回避部材76Dを対向させるため、低融点導体30と導体挟持部72Dとの接触が確実に回避される。
【0141】
接続許容部40における低融点導体30と、電極71Dにおける導体挟持部72Dとの接触が、接触回避部材76Dの介在によって回避されるため、低融点導体30同士を、高融点導体20から熱伝導される熱によって確実に溶融接続することができる。
この結果、複合導体線12D同士を、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができるため、実施例6と略同等の作用、及び効果を奏することができる。
【0142】
(実施例8)
上述の接触回避部材76Dを用いた接続方法は、図12に示すように、5層構造を有する複合導体線12E同士を接続する実施例8の接続方法にも用いることができる。
図12は実施例8の複合導体線12E同士を接続する接続方法の説明図であり、詳しくは、複合導体線12Eの接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71E間に挟持した部分の断面図である。
【0143】
詳述すると、複合導体線12Eは、高融点導体20を幅方向Vの中央部に配置した低融点導体30の両側部に積層し、低融点導体30を幅方向V両側部に配置した高融点導体20の幅方向Vの外側に積層して、5層構造に構成している。
すなわち、実施例1〜6の複合導体線12A,12Bは、高融点導体20を幅方向Vの外側に積層した積層構造であるが、実施例8の複合導体線12Eは、低融点導体30を幅方向Vの外側に積層した積層構造である。
【0144】
電極71Eにおける導体挟持部72Eの導体挿嵌溝74E内には、低融点導体30の積層数と対応する数の接触回避溝73Eを、積層した3層の低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面と対向して形成している。
【0145】
導体挿嵌溝74E内における幅方向Vの外側に積層した低融点導体30の端部30a外面、すなわち、端部30aにおける幅方向Vの外側の外面と対向する部分には、該端部30a外面と対応する大きさ、及び形状に形成した接触回避部材76Eを固定している(図12参照)。
【0146】
上述の電極71Eを用いて、複合導体線12E同士を接続する場合、複合導体線12Eの接続許容部40同士を突き合わせたまま、電極71Eにおける導体挟持部72Eの導体挿嵌溝74Eにそれぞれ挿嵌して、接続許容部40同士を突き合わせ方向Hに挟持する。
【0147】
各層の低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側の端面を、接触回避溝73Eにそれぞれ対向させるとともに、幅方向Vの外側に積層した低融点導体30における端部30aの幅方向Vの外側の外面を、接触回避部材76Eをそれぞれ対向させる。
【0148】
接続許容部40における低融点導体30と、電極71Eにおける導体挟持部72Eとの接触が、接触回避溝73E、及び接触回避部材76Eによって回避されるため、低融点導体30同士を、高融点導体20から熱伝導される熱によって確実に溶融接続することができる。
この結果、複合導体線12Eの接続許容部40同士を確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができるため、上述の実施例2〜7と略同等の作用、及び効果を奏することができる。
【0149】
(実施例9)
上述の実施例1〜8では、導体挟持部72A〜72Eの接触回避溝73A〜72Eを、複合導体線12A,12B,12D,12Eにおける接続許容部40の低融点導体30に対向させて接続する接続方法について説明したが、図13に示すように、電極71Fにおける導体挟持部72Fの接触回避溝73Fa,73Fbを、複合導体線12Fにおける接続許容部40の中融点導体25及び低融点導体30に対向させて接続する実施例9の接続方法について説明する。
【0150】
図13は実施例9の複合導体線12F同士を接続する接続方法の説明図であり、詳しくは、図13(a)は導体挟持部72Fの接触回避溝73Faを、中融点導体25における端部25aの端面の一部と、低融点導体30における端部30aの端面の全体とに対向した部分を突き合わせ方向Hに分断した断面図である。
【0151】
複合導体線12Fは、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30で構成され、中融点導体25及び低融点導体30よりも融点が高い高融点導体20における幅方向Vの下面側に、高融点導体20よりも融点が低く、低融点導体30よりも融点が高い銀製の導体(融点962℃の導体)からなる中融点導体25を配置している。
中融点導体25における幅方向Vの下面側には、高融点導体20及び中融点導体25よりも融点が低い低融点導体30を配置している(図13(a)参照)。
【0152】
高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30は、溶解する際の融点が異なるため、高融点導体20同士、中融点導体25同士、低融点導体30同士の突き合わせ部分を略同時に溶解させて接続するには、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30を溶融するのに必要な熱エネルギー(熱容量×融点)の比率に対応して、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30が溶融する熱量を順に減らす必要がある。
【0153】
熱量を減らす場合、導体挟持部72Fの挟持側端面に形成した接触回避溝73Faを、接続許容部40における中融点導体25及び低融点導体30の突き合わせ方向Hの外側に露出する端部25a,30aの端面に対向させて、電極71Fにおける導体挟持部72Fと、接続許容部40における高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30との接触面積を、融点が高いほうから低いほうに向けて順に減るように設定すればよい。
【0154】
つまり、電極71Fにおける導体挟持部72Fと、接続許容部40における高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30との接触面積を順に減らすことにより、抵抗溶接時に通電される溶接電流の流入量を、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30の順に減らすことができる。
【0155】
これにより、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30が溶融する熱量を、融点が高いほうから低いほうに向けて順に減らすことができる。
この結果、接続許容部40における高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30を略同時に溶解することが可能となる。
なお、電極71Fにおける導体挟持部74Fと、複合導体線12Fにおける高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30との接触面積の序列は、導体20,25,30における融点の序列と一致するように設定している。
【0156】
上述の複合導体線12F同士を接続する抵抗溶接装置70は、導体挟持部72Fの挟持側端面を、中融点導体25における端部25aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面を幅方向Vに2分割した上側半面(略1/2)と、高融点導体20における端部20aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の全面とに対して接触が許容される大きさ及び形状に形成している。
【0157】
導体挟持部72Fの接触回避溝73Faは、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の全面と、中融点導体25における端部25aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面を幅方向Vに2分割した下側半面とに対して接触が回避される大きさ及び形状に形成している(図13(a)参照)。
【0158】
詳述すると、複合導体線12Fの接続許容部40同士を突き合わせたまま、抵抗溶接装置70における電極71Fの導体挟持部72F間に挟持して、導体挟持部72Fの挟持側端面を、高融点導体20における端部20aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の全面と、中融点導体25における端部25aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の上側半面に対して通電可能に接触させる。
【0159】
導体挟持部72Fの接触回避溝73Faを、中融点導体25における端部25aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の上側半面と、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の全面とに対向させて、端部25aにおける端面の上側半面と、端部30aにおける端面の全面に対する接触を回避させる(図13(a)参照)。
具体的には、導体挟持部72Fにおける高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30に対する接触面積の比率を、高融点導体20:中融点導体25:低融点導体30=1:0.5:0となるように設定する。
【0160】
電極71Fにおける導体挟持部72Fと、接続許容部40における高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30との接触面積を、該導体20,25,30の融点に応じて、融点が高いほうから低いほうに向けて順に減らしているため、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30が溶融する熱量を、該導体20,25,30の融点に応じて設定することができる。
【0161】
つまり、高融点導体20の端部20a同士を互いに突き合せたまま溶融して通電可能に抵抗溶接する際に、該端部20a同士を溶融する際に放熱される熱は、高融点導体20から中融点導体25、低融点導体30の順に熱伝導される。
ところが、高融点導体20と隣り合う中融点導体25は、導体挟持部72Fとの接触を接触回避溝73Faにて部分的に回避しているため、高融点導体20から熱伝導される熱と、導体挟持部72Fと接する部分から熱伝導される熱を得るだけである。
【0162】
高融点導体20よりも中融点導体25が溶融する熱量の方が少ないため、高融点導体20が溶融する温度よりも低い温度で、かつ低融点導体30が溶融する温度よりも高い温度にて加熱されることとなる。
これにより、中融点導体25の端部25a同士を、高融点導体20から熱伝導される熱と、導体挟持部72Fと接する部分から熱伝導される熱とで互いに溶融させて通電可能に溶融接続することができる。
【0163】
同時に、中融点導体25と隣り合う低融点導体30は、導体挟持部72Fとの接触を接触回避溝73Faにて回避しているため、導体挟持部72Fから熱伝導されることがなく、中融点導体25から熱伝導される熱を得るだけである。
高融点導体20及び中融点導体25よりも低融点導体30が溶融する熱量の方が少ないため、高融点導体20及び中融点導体25が溶融する温度よりも低い温度にて加熱されることとなる。
これにより、低融点導体30の端部30a同士を、高融点導体20から中融点導体25の順に熱伝導される熱で互いに溶融させて通電可能に溶融接続することができる。
【0164】
上述のように、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30が溶融する熱量を、該導体20,25,30の融点に応じて設定するため、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30を、それぞれ適切に溶融することができる。
【0165】
よって、複合導体線12Fの接続許容部40同士を抵抗接続する際に、高融点導体20よりも中融点導体25及び低融点導体30が先に流れ落ちることを防止できるとともに、高融点導体20同士、中融点導体25同士、低融点導体30同士の突き合わせ部分が、確実な導電性が確保される溶融接続状態以上に溶融し過ぎることも防止できる。
この結果、2本の複合導体線12Fにおける接続許容部40同士を、高融点導体20同士、中融点導体25同士、低融点導体30同士を互いに突き合わせたまま略同時に溶融して、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができる。
【0166】
上述の実施例9では、接触回避溝73Faを、中融点導体25における端部25aの端面に対して上側半面(略1/2)の接触が回避されるように対向した例を説明したが、図13(b)に示すように、接触回避溝73Fbを、中融点導体25及び低融点導体30における端部25a,30aの端面全体に対して接触が回避されるように対向させてもよい。
図13(b)は導体挟持部72Fの接触回避溝73Fbを、中融点導体25及び低融点導体30における端部25a,30aの端面全体に対向した部分を突き合わせ方向Hに分断した断面図である。
【0167】
導体挟持部72Fの挟持側端面は、高融点導体20における端部20aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の全面に対して接触が許容される大きさ及び形状に形成している。
導体挟持部72Fの接触回避溝73Fbは、中融点導体25及び低融点導体30における端部25a,30aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の全面に対して接触が回避される大きさ及び形状に形成している(図13(b)参照)。
【0168】
詳述すると、複合導体線12Fの接続許容部40同士を突き合わせたまま、抵抗溶接装置70における電極71Fの導体挟持部72F間に挟持して、導体挟持部72Fの挟持側端面を、高融点導体20における端部20aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面に対して通電可能に接触させる。
【0169】
導体挟持部72Fの接触回避溝73Fbを、中融点導体25及び低融点導体30における端部25a,30aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の全面に対向させて、端部25a,30aに対する接触を回避させる(図13(b)参照)。
具体的には、導体挟持部72Fにおける高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30に対する接触面積の比率を、高融点導体20:中融点導体25:低融点導体30=1:0:0となるように設定する。
これにより、導体挟持部72Fにおける中融点導体25及び低融点導体30に対する接触面積が「0」でも、温度勾配を、高融点導体20>中融点導体25>低融点導体30とすることができる。
【0170】
電極71Fにおける導体挟持部72Fと、接続許容部40における高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30との接触面積を、該導体20,25,30の融点に応じて、融点が高いほうから低いほうに向けて順に減らしているため、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30が溶融する熱量を、該導体20,25,30の融点に応じて設定することができる。
【0171】
つまり、高融点導体20の端部20a同士を互いに突き合せたまま溶融して通電可能に抵抗溶接する際に、該端部20a同士を溶融する際に放熱される熱は、高融点導体20から中融点導体25、低融点導体30の順に熱伝導される。
【0172】
ところが、高融点導体20と隣り合う中融点導体25は、導体挟持部72Fとの接触を接触回避溝73Fbにて回避しているため、高融点導体20から熱伝導される熱を得るだけである。
【0173】
高融点導体20よりも中融点導体25が溶融する熱量の方が少ないため、高融点導体20が溶融する温度よりも低い温度で、かつ低融点導体30が溶融する温度よりも高い温度にて加熱されることとなる。
これにより、中融点導体25の端部25a同士を互いに突き合わせたまま、高融点導体20から熱伝導される熱で溶融させて通電可能に溶融接続することができる。
【0174】
同時に、中融点導体25と隣り合う低融点導体30は、導体挟持部72Fとの接触を接触回避溝73Fbにて回避しているため、中融点導体25から熱伝導される熱を得るだけである。
高融点導体20及び中融点導体25よりも低融点導体30が溶融する熱量の方が少ないため、高融点導体20及び中融点導体25が溶融する温度よりも低い温度にて加熱されることとなる。
これにより、低融点導体30の端部30a同士を、高融点導体20から中融点導体25に熱伝導される熱で互いに溶融させて通電可能に溶融接続することができる。
【0175】
この結果、複合導体線12Fの接続許容部40同士を、高融点導体20同士、中融点導体25同士、低融点導体30同士を互いに突き合わせたまま略同時に溶融して、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができるため、実施例9と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0176】
(実施例10)
上述の実施例9では、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30の順に積層した接続許容部40同士を接続する接続方法について説明したが、図14に示すように、高融点導体20、低融点導体30、中融点導体25の順に積層した接続許容部40同士を接続する実施例10の接続方法について説明する。
【0177】
図14は実施例10の複合導体線12G同士を接続する接続方法の説明図であり、詳しくは、複合導体線12Gの接続許容部40同士を突き合わせたまま電極71G間に挟持した部分の断面図である。
【0178】
複合導体線12Gは、高融点導体20における幅方向Vの下面側に、高融点導体20及び中融点導体25よりも融点が低い低融点導体30を配置している。低融点導体30における幅方向Vの下面側には、高融点導体20よりも融点が低く、低融点導体30よりも融点が高い中融点導体25を配置して、3層構造に構成している(図14参照)。
【0179】
導体挟持部72Gの挟持側端面は、高融点導体20における端部20aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の全面と、中融点導体25における端部25aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面を幅方向Vに2分割した下側半面とに対して接触が許容される大きさ及び形状に形成している。
【0180】
導体挟持部72Gの接触回避溝73Gは、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の全面と、中融点導体25における端部25aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の上側半面との接触が回避される大きさ及び形状に形成している(図14参照)。
【0181】
詳述すると、複合導体線12Gの接続許容部40同士を突き合わせたままま、抵抗溶接装置70における電極71Gの導体挟持部72G間に挟持して、導体挟持部72Gの挟持側端面を、高融点導体20における端部20aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面のみに通電可能に接触させる。
【0182】
導体挟持部72Gの接触回避溝73Gを、中融点導体25における端部25aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の上側半面と、低融点導体30における端部30aの突き合わせ方向Hの外側に露出する端面の全面とに対向させて、端部25aにおける端面の上側半面と、端部30aにおける端面の全面に対する接触を回避させる(図14参照)。
具体的には、導体挟持部72Gにおける高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30に対する接触面積の比率を、高融点導体20:中融点導体25:低融点導体30=1:0.5:0となるように設定する。
【0183】
電極71Gにおける導体挟持部72Gと、接続許容部40における高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30との接触面積を、該導体20,25,30の融点に応じて、融点が高いほうから低いほうに向けて順に減らしているため、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30が溶融する熱量を、該導体20,25,30の融点に応じて設定することができる。
【0184】
つまり、高融点導体20の端部20a同士を互いに突き合せたまま溶融して通電可能に抵抗溶接する際に、該端部20a同士を溶融する際に放熱される熱は、導体挟持部72Gを介して高融点導体20から中融点導体25に熱伝導されるとともに、低融点導体30には、高融点導体20及び中融点導体25から熱伝導される。
低融点導体30と隣り合う中融点導体25は、導体挟持部72Gとの接触を接触回避溝73Gにて部分的に回避しているため、低融点導体30から熱伝導される熱と、導体挟持部72Gと接する部分から熱伝導される熱を得るだけである。
【0185】
高融点導体20及び低融点導体30よりも中融点導体25が溶融する熱量の方が少ないため、高融点導体20が溶融する温度よりも低い温度で、かつ低融点導体30が溶融する温度よりも高い温度にて加熱されることとなる。
これにより、中融点導体25の端部25a同士を、低融点導体30から熱伝導される熱と、導体挟持部72Gと接する部分から熱伝導される熱とで互いに溶融させて通電可能に溶融接続することができる。
【0186】
同時に、高融点導体20と中融点導体25の間に挟み込まれた低融点導体30は、導体挟持部72Gとの接触を接触回避溝73Gにて回避しているため、導体挟持部72Gから熱伝導されることがなく、高融点導体20及び中融点導体25から熱伝導される熱を得るだけである。
高融点導体20及び中融点導体25よりも低融点導体30が溶融する熱量の方が少ないため、高融点導体20及び中融点導体25が溶融する温度よりも低い温度にて加熱されることとなる。
これにより、低融点導体30の端部30a同士を、高融点導体20及び中融点導体25から熱伝導される熱で互いに溶融させて通電可能に溶融接続することができる。
【0187】
上述のように、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30が溶融する熱量を、該導体20,25,30の融点に応じて順に減らしているため、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30を、それぞれ適切に溶融することができる。
【0188】
この結果、複合導体線12Gの接続許容部40同士を、高融点導体20同士、中融点導体25同士、低融点導体30同士を互いに突き合わせたまま略同時に溶融して、確実な導電性が確保される良好な状態に接続することができるため、実施例9と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0189】
上述の実施例9,10で説明した接触回避溝73Fa,73Fb,73Gを、実施例2の電極71Bにおける導体挟持部72の導体挿嵌溝74Bに設けてもよく、導体挿嵌溝74Bに挿嵌した複合導体線12Gの接続許容部40同士を互いに突き合せることにより、高融点導体20同士、中融点導体25同士、低融点導体30同士を互いに突き合わせたまま略同時に溶融して良好な状態に接続することができる。
【0190】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の接続構造体は、実施形態の接続構造線11に対応し、
以下同様に、
複数種の導体は、高融点導体20、中融点導体25、低融点導体30に対応し、
絶縁は、絶縁層50に対応し、
導体挟持部材は、電極71A〜71Gに対応し、
接触回避部は、接触回避溝73A〜73G、接触回避部材76C〜76Eに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0191】
上述の実施例1〜8では、高融点導体20、及び低融点導体30を断面略矩形の導体で構成しているが、例えば、断面略丸形の丸線や断面略平角形の平角線等の導体にて構成してもよい。
【0192】
また、絶縁層50を、高融点導体20と低融点導体30の間に介在した例について説明したが、高融点導体20、及び低融点導体30の少なくとも一方の外周を覆うように被覆してもよい。
アルミニウム製の低融点導体30は、該低融点導体30における導体自体の表面にアルマイト層が形成されるため、そのアルマイト層を絶縁層50として機能させることができる。
さらに、絶縁層50は、低融点導体30の表面に形成されたエナメルや、高融点導体20、及び低融点導体30を接着する絶縁性を備えた接着剤、あるいは高融点導体20、及び低融点導体30の表面に形成された酸化被膜であってもよい。
【0193】
なお、上述の説明では、銅製または銅合金製の高融点導体20と、銀製の中融点導体25と、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の低融点導体30とを用いたが、所望の導通性を有すれば、融点が異なる適宜の複数種類の金属で構成する導体を用いることができる。
また、例えば、黄銅製(真鍮製)の導体等で構成される中融点導体25を用いてもよい。
【0194】
さらには、本発明の接続方法、及び接続装置は、例えば、4層構造、6層構造等の積層構造を有する複合導体線同士の接続にも用いることができる。
また、導体挟持部との接触が回避可能な形状であれば、融点が低い導体における端部を突き合わせ方向外側の端面を凹状に窪ませて、導体挟持部との接触が回避される溝部や凹部を形成してもよい。
また、上述の抵抗溶接に代わる他の溶接手段として、例えば、ヒュージング接合(熱カシメ)、超音波溶接等の方法にて接続することもできる。
【符号の説明】
【0195】
11…接続構造線
12A,12B,12D,12E,12F,12G…複合導体線
13…導体線本体部
20…高融点導体
25…中融点導体
30…低融点導体
20a,25a,30a…端部
40…接続許容部
50…絶縁層
60…接合部
70…抵抗溶接装置
71A〜71G…電極
72A〜72G…導体挟持部
73A〜73G…接触回避溝
74B,74C,74D,74E…導体挿嵌溝
75…当接許容部
76C,76D,76E…接触回避部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15