特許第6373260号(P6373260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373260
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   G01N35/02 E
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-512445(P2015-512445)
(86)(22)【出願日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2014059889
(87)【国際公開番号】WO2014171346
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年3月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-87413(P2013-87413)
(32)【優先日】2013年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋行
(72)【発明者】
【氏名】中村 和弘
【審査官】 大森 伸一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−258246(JP,A)
【文献】 特開昭63−033662(JP,A)
【文献】 特開平07−103984(JP,A)
【文献】 特開2000−065744(JP,A)
【文献】 特開2012−008132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応容器を保持する保持機構と、
前記反応容器を洗浄する洗浄機構と、
前記洗浄機構によって洗浄された前記反応容器に洗剤を供給する洗剤供給機構と、
特定の試薬項目に対する反応容器毎の使用回数を記憶するための記憶部と、
前記特定の試薬項目に対する反応容器毎の使用回数を計数し、前記記憶部に記憶する計数部と、
計数された前記使用回数が所定の閾値N1を超えたか否かを判断する判断部と、
計数された前記使用回数が前記所定の閾値N1を超えた場合、サンプルを分注する周期を示す分注サイクル時間に全反応容器数と所定の整数を乗じた値以下の期間だけ洗剤で前記所定の閾値N1を超えた反応容器を漬け置きするように洗剤供給機構を制御する制御部と、を備える自動分析装置であって、
前記制御部は、
計数された前記使用回数が前記所定の閾値N1を超えた場合、前記所定の閾値N1を超えた反応容器について測定中には漬け置きしないようにし、前記所定の閾値N1を超えた反応容器の測定が終了した後に、新たな測定依頼が無ければ前記所定の閾値N1を超えた反応容器を漬け置きするように前記洗剤供給機構を制御し、
計数された前記使用回数が前記所定の閾値N1より大きい所定の閾値N2を超えた場合、新たな測定依頼が有っても前記所定の閾値N2を超えた反応容器に新たな測定を割り当てないで、前記所定の閾値N2を超えた反応容器を漬け置きするように前記洗剤供給機構を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記洗剤供給機構は、
試薬容器から反応容器へ試薬を分注する試薬サンプリング機構及びサンプル容器から前記反応容器へサンプルを分注する検体サンプリング機構とは別に設けられた洗剤専用のノズルを備えた、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記保持機構は、回転可能な円盤状の反応ディスクである
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記閾値N1は2以上である
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記制御部は、
前記洗剤で前記所定の閾値N1を超えた反応容器を、前記分注サイクル時間の10倍以上の期間、漬け置きするように前記洗剤供給機構を制御する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記洗剤で前記所定の閾値N1を超えた反応容器を漬け置きする間に前記洗剤を撹拌する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記洗浄機構は、洗剤により前記反応容器を洗浄する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記洗浄機構は、酸系の洗剤とアルカリ系の洗剤により前記反応容器を洗浄する
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液、尿等の生体成分の定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に、反応容器を反応ディスクの円周上に配列して反応容器を周方向に移動させながら分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、光度計などの手段によりサンプルと試薬の反応を測定し、サンプル中に含まれる成分を測定する装置である。なお、自動分析装置は、試験管或いは専用の容器から血液、尿、髄液等のサンプルを反応容器に分注し、試薬容器から試薬を反応容器に分注し、サンプルと試薬を混合する。
【0003】
円盤状の反応ディスクを備える自動分析装置では、反応容器が反応ディスクの周方向に配列される。ここで、反応容器を汚し易い特定の試薬項目が、特定の反応容器に繰り返し使用された場合には、その反応容器が著しく汚れる場合がある。この場合、分析動作中においてその反応容器が使用できなくなり分析のスループットが低下する。
【0004】
従来、このような著しい汚れによる分析のスループットの低下を防止するため、反応容器を汚し易い特定の試薬項目について測定を行なった場合、その測定後に毎回特別な洗剤を反応容器に充填し、一定時間保持することで洗浄が実施されている。
【0005】
これに関連し、使用回数又は使用時間の経過に伴って蓄積する汚れに起因したキャリーオーバー(サンプルや試薬が次の分析に持ち越されること)を、洗浄対象毎に回避することが可能な自動分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−112502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示すような自動分析装置は、使用回数又は使用時間が所定値を超えた場合に、反応容器を所定の洗剤で洗浄する。
【0008】
しかし、所定の洗剤で洗浄する度にすべての反応容器が使用できなくなり、分析のスループットが低下するという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、使用回数又は使用時間の経過に伴って蓄積する汚れに起因したキャリーオーバーを回避しつつ、分析のスループットの低下を抑制することができる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の反応容器を保持する保持機構と、前記反応容器を洗浄する洗浄機構と、前記洗浄機構によって洗浄された前記反応容器に洗剤を供給する洗剤供給機構と、特定の試薬項目に対する反応容器毎の使用回数を記憶するための記憶部と、前記特定の試薬項目に対する反応容器毎の使用回数を計数し、前記記憶部に記憶する計数部と、計数された前記使用回数が所定の閾値N1を超えたか否かを判断する判断部と、計数された前記使用回数が前記所定の閾値N1を超えた場合、サンプルを分注する周期を示す分注サイクル時間に全反応容器数と所定の整数を乗じた値以下の期間だけ洗剤で前記所定の閾値N1を超えた反応容器を漬け置きするように洗剤供給機構を制御する制御部と、を備える自動分析装置であって、前記制御部は、計数された前記使用回数が前記所定の閾値N1を超えた場合、前記所定の閾値N1を超えた反応容器について測定中には漬け置きしないようにし、前記所定の閾値N1を超えた反応容器の測定が終了した後に、新たな測定依頼が無ければ前記所定の閾値N1を超えた反応容器を漬け置きするように前記洗剤供給機構を制御し、計数された前記使用回数が前記所定の閾値N1より大きい所定の閾値N2を超えた場合、新たな測定依頼が有っても前記所定の閾値N2を超えた反応容器に新たな測定を割り当てないで、前記所定の閾値N2を超えた反応容器を漬け置きするように前記洗剤供給機構を制御するようにしたものである。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用回数又は使用時間の経過に伴って蓄積する汚れに起因したキャリーオーバーを回避しつつ、分析のスループットの低下を抑制することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態である自動分析装置の構成図である。
図2A】本発明の第1の実施形態である自動分析装置に用いられる洗浄機構の構成図(正面図)である。
図2B】本発明の第1の実施形態である自動分析装置に用いられる洗浄機構の構成図(上面図)である。
図3】本発明の第1の実施形態である自動分析装置に用いられる制御装置の機能を説明するための図である。
図4】本発明の第1の実施形態である自動分析装置の動作を説明するための図である。
図5】本発明の第1の実施形態である自動分析装置の動作を説明するためのタイムチャートの一例である。
図6】本発明の第2の実施形態である自動分析装置の構成図である。
図7】本発明の第2の実施形態である自動分析装置の動作を説明するためのタイムチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、図1図5を用いて、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aの構成及び動作を説明する。
【0014】
最初に、図1を用いて、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aの全体構成を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aの構成図である。
【0015】
自動分析装置100Aは、主として、サンプルディスク2、反応ディスク4、検体サンプリング機構5、試薬ディスク7、R1試薬サンプリング機構8、R2/3試薬サンプリング機構9、測光部10、コード読み取り機構11、洗浄機構12を備える。
【0016】
サンプルディスク2は、分析対象となるサンプルを入れたサンプル容器1を複数保持する。反応ディスク4は、反応および測光を行うための反応容器3を複数保持する。なお、サンプルディスク2及び反応ディスク4は、回転可能であり、その形状は円盤状である。
【0017】
検体サンプリング機構5は、サンプルディスク2に保持されたサンプル容器1からサンプルを吸引し、吸引したサンプルを反応ディスク4に保持された反応容器3へ分注する。
【0018】
試薬ディスク7は、試薬容器6を複数保管し、保冷を行う。各試薬容器6には、サンプルと混合し、反応を行わせるための第1、第2又は第3の試薬が充填される。なお、試薬ディスク7は、回転可能であり、その形状は円盤状である。
【0019】
本実施形態では、反応容器6を洗浄するための特別な洗剤も試薬容器6に充填され、試薬ディスク7に設置される。ここで、特別な洗剤として、洗浄効果(酸、アルカリ性強度)の異なる複数のタイプの洗剤を設定することができる。本実施形態では、酸系の洗剤(pH=2〜3以下)、アルカリ系の洗剤(pH12〜14以上)を特別な洗剤として使用する。
【0020】
R1試薬サンプリング機構8は、第1試薬用の試薬容器6から反応ディスク4に保持された反応容器3へ試薬を分注する。また、R1試薬サンプリング機構8は、所定のタイミングで反応容器3へ特別な洗剤を吐出し、洗浄を実施する。特別な洗剤を用いた洗浄動作の詳細については、図4及び図5を用いて後述する。
【0021】
R2/3試薬サンプリング機構9は、第2試薬用又は第3試薬用の試薬容器6から反応ディスク4に保持された反応容器3へ試薬を分注する。測光部10は、反応容器3からの透過光を測光する。コード読み取り機構11は、試薬容器6に備えられた識別コードを読み取る。
【0022】
洗浄機構12は、洗浄水及び洗剤を吐出する吐出ノズル、反応液等を吸引する吸引ノズル等から構成される。洗浄機構12は、反応容器3を洗浄水及び洗剤で洗浄する。洗浄機構12の構成の詳細については、図2を用いて後述する。
【0023】
R1撹拌機構13は、反応ディスク4上の反応容器3内で反応しているサンプルおよび試薬の混合液を撹拌する。R2/3撹拌機構14も、同様の機能を有する。
【0024】
制御装置20は、コンピュータ等から構成され、各テーブル(サンプルディスク2、反応ディスク4、試薬ディスク7)及び各機構(検体サンプリング機構5、R1試薬サンプリング機構8等)の動作制御を行う。
【0025】
なお、反応ディスク4、洗浄機構12、R1試薬サンプリング機構8は、それぞれ、保持機構、洗浄機構、洗剤供給機構に対応する。
【0026】
次に、図2Aを用いて、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aに用いられる洗浄機構12の構成を説明する。図2Aは、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aに用いられる洗浄機構12の構成図(正面図)である。
【0027】
洗浄機構12は、アーム12a、吸引ノズルS1〜S6及びS9、吐出ノズルD1〜D5及びD7、支持部12b、シリンジポンプSP等を備える。
【0028】
吸引ノズルS1と吐出ノズルD1は、それぞれが隣接するようにアーム12aに設置される。吸引ノズルS2〜S5及び吐出ノズルD2〜D5も同様にアーム12aに設置される。
【0029】
吸引ノズルS(S1〜S9)は、シリンジポンプにより反応容器3から反応液、洗浄水などの液体を吸引する。また、吐出ノズルD(D1〜D7)は、シリンジポンプにより反応容器3へ洗浄水、洗剤等の液体を吐出する。
【0030】
なお、吸引ノズルS1〜S8及び吐出ノズルD1〜D7の径は、略同一であるが、吸引ノズルS9の径はそれらに比べて大きい。その理由は、反応容器3に残った洗浄水を完全に吸引するためである。ただし、吸引ノズルS9の径を大きくする代わりに、径の大きなアタッチメントを取り付けてもよい。洗浄機構12の動作の詳細は、図4を用いて後述する。
【0031】
次に、図2Bを用いて、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aに用いられる洗浄機構12の構成を説明する。図2Bは、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aに用いられる洗浄機構12の構成図(上面図)である。
【0032】
アーム12aは、略1/4リング形状である。吸引ノズルS(S1〜S9)及び吐出ノズルD(D1〜D7)は、アーム12aの下面に円弧状に配置される。
【0033】
具体的には、吸引ノズルS1及び吐出ノズルD1の組と、吸引ノズルS2及び吐出ノズルD2の組と、吸引ノズルS3及び吐出ノズルD3の組と、吸引ノズルS4及び吐出ノズルD4の組と、吸引ノズルS5及び吐出ノズルD5の組と、吸引ノズルS6と、吐出ノズルD7と、吸引ノズルS8と、吸引ノズルS9は、一定の間隔で周方向に配置される。
【0034】
なお、吸引ノズルS及び吐出ノズルDの下(z方向(−))に、測定が完了した反応容器3が位置するように反応ディスク4の回転が制御される。また、アーム12aの周方向の中央部に支持部12bが固定される。
【0035】
次に、図3を用いて、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aに用いられる制御装置20の機能を説明する。図3は、本発明の実施形態である自動分析装置100Aに用いられる制御装置20の機能を説明するための図である。
【0036】
制御装置20は、プロセッサ201、記憶部202(ハードディスク、メモリ等)を備える。プロセッサ201は、計数部201a、判断部201b、制御部201cとして機能する。
【0037】
具体的には、計数部201aは、コード読み取り機構11で読み取られた試薬容器6の識別コードに基づいて、特定の試薬項目に対する反応容器3毎の使用回数を計数し、記憶部202に記憶する。判断部201bは、特定の試薬項目に対する反応容器3毎の使用回数が所定の閾値を超えたか否かを判断する。
【0038】
制御部201cは、計数された使用回数が所定の閾値を超えた場合、サンプルを分注する周期を示す分注サイクル時間に全反応容器数と所定の整数を乗じた期間だけ特別な洗剤で漬け置きするようにR1試薬サンプリング機構8を制御する。なお、所定の閾値は、制御装置20に接続された入力装置(キーボード、マウス等)から入力可能である。また、所定の閾値は2以上である。
【0039】
次に、図4を用いて、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aの動作を説明する。図4は、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aの動作を説明するための図である。
【0040】
最初に、液体(洗浄水、洗剤等)を反応容器に分注する周期を示す分注サイクルごとに洗浄機構12の動作を説明する。
【0041】
(1)第1番目のサイクルにおいて、洗浄機構12は、吸引ノズルS1により反応容器3から反応液を吸引する。続いて、洗浄機構12は、吐出ノズルD1により反応容器3へ洗浄水を吐出する。なお、洗浄水は、純水(イオン交換水)である。
【0042】
(2)第2番目のサイクルにおいて、洗浄機構12は、吸引ノズルS1により反応容器3から洗浄水を吸引する。続いて、洗浄機構12は、吐出ノズルD2により反応容器3へ洗剤1を吐出する。なお、洗剤1は、アルカリ系の洗剤である。
【0043】
(3)第3番目のサイクルにおいて、洗浄機構12は、吸引ノズルS3により反応容器3から洗剤1を吸引する。続いて、洗浄機構12は、吐出ノズルD3により反応容器3へ洗剤2を吐出する。なお、洗剤2は、酸性の洗剤である。
【0044】
(4)第4番目のサイクルにおいて、洗浄機構12は、吸引ノズルS4により反応容器3から洗剤2を吸引する。続いて、洗浄機構12は、吐出ノズルD4により反応容器3へ洗浄水を吐出する。
【0045】
(5)第5番目のサイクルにおいて、洗浄機構12は、吸引ノズルS5により反応容器3から洗浄水を吸引する。続いて、洗浄機構12は、吐出ノズルD5により洗浄水を吐出する。
【0046】
(6)第6番目のサイクルにおいて、洗浄機構12は、吸引ノズルS6により反応容器3から洗浄水を吸引する。
【0047】
(7)第7番目のサイクルにおいて、洗浄機構12は、吐出ノズルD7によりブランク水を吐出する。なお、ブランク水は、純水(イオン交換水)である。ブランク水は、洗剤1及び洗剤2により洗浄された状態を保つために用いられる。そのため、第7番目のサイクルにおいて反応容器3に吐出されるブランク水は、他のサイクルにおいて反応容器3に吐出される洗浄水よりも量が少ない。
【0048】
(8)第8番目のサイクルにおいて、洗浄機構12は、吸引ノズルS8により反応容器3からブランク水を吸引する。
【0049】
(9)第9番目のサイクルにおいて、洗浄機構12は、吸引ノズルS9により反応容器3からブランク水を吸引する。第8番目のサイクルと第9番目のサイクルにおいて、連続して反応容器3からブランク水が吸引されることにより、反応容器3内のブランク水がほぼ完全に吸引される。
【0050】
上記(1)〜(9)で説明したように、通常の洗浄動作が完了する。続いて、R1試薬サンプリング機構8等による特別な洗浄動作を説明する。
【0051】
(J)通常の洗浄動作が完了すると、制御装置20は、洗浄機構12による洗浄が終了した反応容器3について、特定の試薬項目(汚れが落ちにくいHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)等)に対する測定回数が所定の閾値を超えたか否かを判断する。
【0052】
制御装置20は、測定回数が所定の閾値を超えていない場合、反応容器3の洗浄を終了する。その後、洗浄が終了した反応容器3は、次の測定に使用される。
【0053】
一方、制御装置20は、測定回数が所定の閾値を超えた場合、以下で説明するように、特別な洗浄を実施する。
【0054】
(K)R1試薬サンプリング機構8は、測定回数が所定の閾値を超えた場合、試薬ディスク7に保持された特別な洗剤を吸引し、反応容器3へ特別な洗剤を吐出する。なお、本実施形態では、R1試薬サンプリング機構8が特別な洗剤を吸引・吐出しているが、R2/3試薬サンプリング機構9が特別な洗剤を吸引・吐出してもよい。
【0055】
(L)R1撹拌機構13は、反応容器内の特別な洗剤を撹拌する。これにより、洗浄効果が高まる。
【0056】
(M)その後、一定時間、反応容器3を特別な洗剤で漬け置きする。特別な洗剤で漬け置きする時間は、(1)〜(9)において、洗浄機構12が反応容器3を洗浄する時間よりも長い。なお、必ずしも必須ではないが、前述のように、反応容器を特別な洗剤で漬け置きする間に特別な洗剤を撹拌することが望ましい。
【0057】
次に、図5を用いて、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aの動作を説明する。図5は、本発明の第1の実施形態である自動分析装置100Aの動作を説明するためのタイムチャートの一例である。なお、説明を簡単にするため、反応ディスク4の周方向(例えば、時計周り)に配置された複数の反応容器3に連続番号(No.1, No.2, ...)を割り当てる。
【0058】
以下では、No.2の反応容器3で特定の試薬項目(例えば、HbA1c)に対する測定回数が所定の閾値を超え、その他の反応容器では所定の閾値を超えていない場合における洗浄動作を一例として説明する。
【0059】
(No.1の反応容器)
まず、図5を用いて、No.1の反応容器3における洗浄動作を説明する。図4を用いて説明したように、第1番目のサイクルから第9番目のサイクルにおいて通常の洗浄が実施される。
【0060】
ここで、No.1の反応容器3では特定の試薬項目に対する測定回数が所定の閾値を超えていない。そのため、第10番目のサイクルにおいて、検体サンプリング機構5は、サンプルディスク2に保持されたサンプル容器1からサンプルを吸引し、吸引したサンプルをNo.1の反応容器3へ分注する。
【0061】
第11番目のサイクルにおいて、R1試薬サンプリング機構8は、第1試薬用の試薬容器6から試薬R1を吸引し、吸引した試薬R1をNo.1の反応容器3へ分注(添加)する。
【0062】
第12番目のサイクルにおいて、R1撹拌機構13は、No.1の反応容器内の反応液を撹拌する。
【0063】
その後、第51番目のサイクルにおいて、R2/3試薬サンプリング機構9は、第2試薬用の試薬容器6から試薬R2を吸引し、吸引した試薬R2をNo.1の反応容器3へ分注する。
【0064】
第52番目のサイクルにおいて、R2/3撹拌機構14は、No.1の反応容器内の反応液を撹拌する。
【0065】
その後、第168番目のサイクルにおいて、測光部10は、No.1の反応容器3の透過光の測光を完了する。
【0066】
第170番目のサイクルから第178番目のサイクルにおいて、(1)〜(9)の処理が実行される。これにより、通常の洗浄が完了する。
【0067】
(No.2の反応容器)
次に、図5を用いて、No.2の反応容器3における洗浄動作を説明する。第2番目のサイクルから第10番目のサイクルにおいて通常の洗浄が実施される。なお、No.2の反応容器3の洗浄を開始するタイミングは、No.1の反応容器3と比較して、1サイクル分遅れている。
【0068】
ここで、No.2の反応容器3では特定の試薬項目に対する測定回数が所定の閾値を超えている。そのため、第12番目のサイクルにおいて、R1試薬サンプリング機構8は、試薬ディスク7に保持された特別な洗剤を吸引し、No.2の反応容器3へ特別な洗剤を吐出する。
【0069】
第13番目のサイクルにおいて、R1撹拌機構13は、No.2の反応容器内の特別な洗剤を撹拌する。
【0070】
その後、第14番目のサイクルから第170番目のサイクルまで、No.2の反応容器は、特別な洗剤で漬け置きされる。
【0071】
第171番目のサイクルから第178番目のサイクルにおいて、前述した(1)〜(9)の処理が実行される。
【0072】
本実施形態では、No.1の反応容器3のように、通常の洗浄のみ実施されている場合、サンプルを分注する間隔は、169サイクルである。図5の例では、第10番目のサイクルにおいてサンプルが分注された後、第179番目のサイクルにおいて次のサンプルを分注することが可能である。
【0073】
一方、No.2の反応容器3のように、特別な洗浄が1回実施されると、サンプルを分注する間隔は、169+169=169×2サイクルとなる。ここで、特別な洗剤を漬け置きする時間は、洗剤を吐出するサイクルから漬け置きが完了するサイクルまでの時間とする。図5に示されるNo.2の反応容器3では、特別な洗剤を漬け置きする時間は、12番目のサイクルから170番目のサイクルまでの時間である。つまり、特別な洗剤を漬け置きする時間は、159サイクルであり、自動分析装置100Aの分注サイクル×全反応容器数−(洗浄サイクル+空きサイクル)である。本実施例では、反応容器が169個、分注サイクルが3.6秒、洗浄サイクルが9サイクル、空きサイクルが1サイクルなので、漬け置き時間は、3.6×169−(9+1)=572.4秒となる。
【0074】
なお、特別な洗剤を漬け置きする時間は、自動分析装置100Aの分注サイクル×全反応容器数×整数−(洗浄サイクル+空きサイクル)であってもよい。ここで、洗浄サイクル及び空きサイクルは、自動分析装置毎に異なる。したがって、特別な洗剤を漬け置きする時間は、分注サイクル×全反応容器数×整数INT1−整数INT2と表される。換言すれば、特別な洗剤を漬け置きする時間は、分注サイクル×全反応容器数×整数の値以下に設定される。なお、この式に用いられる整数を入力装置から入力することにより、特別な洗剤を漬け置きする時間を指定してもよい。また、ここで整数とは1以上の整数を意味する。一方、下限については、分注サイクルの10倍以上が望ましい。したがって、制御部201cは、特別な洗剤で所定の閾値を超えた反応容器を、分注サイクル時間の10倍以上の期間、漬け置きするように洗剤供給機構を制御することが望ましい。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、特別な洗浄が実施された後、通常の洗浄が実施され、次のサンプルが分注されるまでの時間を最短にすることができる。そのため、特別な洗浄を実施した場合であっても、分析のスループットの低下を抑制することができる。また、特別な洗浄により使用回数又は使用時間の経過に伴って蓄積する汚れに起因したキャリーオーバーを回避することができる。
【0076】
(第2の実施形態)
次に、図6図7を用いて、本発明の第2の実施形態である自動分析装置100Bの構成及び動作を説明する。
【0077】
最初に、図6を用いて、本発明の第2の実施形態である自動分析装置100Bの全体構成を説明する。図6は、本発明の第2の実施形態である自動分析装置100Bの構成図である。なお、図6において、図1と同一部分には同一符号を付す。
【0078】
図6では、図1と比較して、自動分析装置100Bが特別な洗剤専用のノズル15を備える点が異なる。本実施形態では、特別な洗剤は、試薬ディスク7以外の場所に設置される。具体的には、例えば、特別な洗剤専用のノズル15の近傍に特別な洗剤を蓄えるタンクを設けてもよい。
【0079】
次に、図7を用いて、本発明の第2の実施形態である自動分析装置100Bの動作を説明する。図7は、本発明の第2の実施形態である自動分析装置100Bの動作を説明するためのタイムチャートの一例である。
【0080】
図7では、図5と比較して、No.2の反応容器3を特別な洗剤で洗浄するタイミングが異なる。具体的には、本実施形態では、第13番目のサイクルにおいて、特別な洗剤専用のノズル15からNo.2の反応容器3へ特別な洗剤が吐出される。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、特別な洗剤専用のノズル15により特別な洗剤を吐出するタイミングを適宜変更することができる。
【0082】
(変形例1)
検体サンプリング機構5が、特別な洗剤を反応容器3へ吐出するようにしてもよい。この場合、特別な洗剤はサンプル容器1と同様の容器に充填され、サンプルディスク2に設置される。
【0083】
本変形例によれば、検体サンプリング機構5により特別な洗剤を吐出するタイミングを適宜変更することができる。
【0084】
なお、本変形例では、検体容器1がサンプルディスク2に設置される自動分析装置を想定しているが、検体容器1がラックに設置される自動分析装置の場合、特別な洗剤は、ラックに設置される。
【0085】
(変形例2)
第1及び第2の実施形態では、計数部201aが特定の試薬項目に対し反応容器3毎の使用回数をカウントして記憶部202に記憶する。ここで、特別な洗剤を用いて反応容器3の洗浄が実施された場合、反応容器3が交換された場合等、所定の動作が実施された場合に、記憶部202に記憶された使用回数をリセットしてもよい。
【0086】
これら所定の動作が実施された後は、特定の試薬項目に対する反応容器毎の使用回数が閾値以下でもカウントはリセットされる。
【0087】
(変形例3)
また、特別な洗剤による洗浄を実施するか否かの基準となる、特定の試薬項目についての使用回数の閾値を複数設けてもよい。例えば2個の閾値をN1、N2(N1<N2)とした場合、使用回数がN1を超えた場合には、使用回数がN1を超えた反応容器について測定中には特別な洗浄が実施されず、測定終了後に新たな測定依頼が無ければ、特別な洗浄が実施される。測定終了後に新たな測定依頼が有れば、特別な洗浄は実施せず、使用回数がN1を超えた反応容器を用いてそのまま新たな測定依頼に対する測定を実施する。一方、使用回数がN2を超えた場合には、使用回数がN2を超えた反応容器について測定終了後に新たな測定依頼が有っても新たな測定を割り当てないで、特別な洗剤による洗浄が実施される。
【0088】
(その他の変形例)
反応容器3毎に特別な洗剤による洗浄の実施回数を記憶し、表示装置に表示してもよい。また、反応容器の交換タイミングや、その交換タイミングの閾値を表示装置に表示された画面を介して入力装置で変更可能にしてもよい。
【0089】
また特別な洗剤による洗浄の実施回数を記憶する代わりに、特定の試薬項目の総使用回数を記憶し閾値としてもよい。
【0090】
本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…サンプル容器
2…サンプルディスク
3…反応容器
4…反応ディスク
5…検体サンプリング機構
6…試薬容器
7…試薬ディスク
8…R1試薬サンプリング機構
9…R2/3試薬サンプリング機構
10…測光部
11…コード読み取り機構
12…洗浄機構
13…R1撹拌機構
14…R2/3撹拌機構
15…特別な洗剤専用のノズル
20…制御装置
201…プロセッサ
201a…計数部
201b…判断部
201c…制御部
202…記憶部
100A、100B…自動分析装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7