(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多孔性高分子フィルムに対する多孔性コーティング層の剥離力が5,000gf/cm以上であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の電気化学素子用分離膜。
前記バインダー高分子が、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニリデンフルオライド−トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体及びポリイミドからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の電気化学素子用分離膜。
前記無機物粒子が、比誘電率が5以上の無機物粒子であり、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の電気化学素子用分離膜。
前記有機物粒子が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、セルロース、セルロース変性体、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ブチルアクリレートとエチルメタクリレートとの共重合体またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の電気化学素子用分離膜。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、多孔性コーティング層の形成された複合分離膜が構造的により安定化し、通気度及びイオン伝導度が増加した電気化学素子用分離膜及びこれを備える電気化学素子を提供することを目的とする。
【0012】
但し、本発明が解決しようとする課題は上述の課題に限定されず、上記で言及していない更に他の技術的課題は、以下に記載する発明の詳細な説明から当業者により明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を達成するため、本発明の一面によれば、多孔性高分子フィルムと、無機物粒子及び有機物粒子のうち一種以上の粒子及びバインダー高分子を含み、前記多孔性高分子フィルムの片面または両面に形成されている多孔性コーティング層と、を備え、前記多孔性高分子フィルムと多孔性コーティング層との接触面で多孔性高分子フィルムの表面のフィブリルと前記多孔性コーティング層に含まれた粒子とが絡み合っており(entangled)、100〜800sec/100ccの通気時間、0.5〜1.5Ωの範囲の電気抵抗、及び縦方向及び横方向それぞれで8%未満の熱収縮率を有する電気化学素子用分離膜が提供される。
【0014】
前記電気化学素子様分離膜は、1,500〜2,500Kg/cm
2の範囲の引張強度及び480〜1,000Kgfの突刺し強度(puncture strength)を有し得る。
前記多孔性高分子フィルムの表面から厚さ方向に10〜200nmまでフィブリルと粒子とが絡み合っていてもよい。
前記多孔性高分子フィルムに対する多孔性コーティング層の剥離力が5,000gf/cm以上であり得る。
前記多孔性高分子フィルムは、多孔性ポリオレフィンフィルムであってもよい。
【0015】
前記多孔性ポリオレフィンフィルムは、ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリブチレン;ポリペンテン;ポリヘキセン;ポリオクテン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテン、ヘキセン、オクテンのうち一種以上の共重合体;またはこれらの混合物を含み得る。
前記多孔性高分子フィルムの厚さは5〜50μmであり、気孔の大きさ(気孔径)及び気孔度はそれぞれ0.01〜50μm及び10〜95%であり得る。
【0016】
前記バインダー高分子は、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride−co−hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオライド−トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride−co−trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene−co−vinyl acetate)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(acrylonitrile−styrene−butadiene copolymer)及びポリイミド(polyimide)からなる群より選択される一種以上またはこれらの混合物であり得る。
前記無機物粒子は、誘電率(定数)〔比誘電率〕が5以上の無機物粒子であり、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子またはこれらの混合物であり得る。
【0017】
前記誘電率定数が5以上の無機物粒子が、BaTiO
3、Pb(Zr,Ti)O
3(PZT)、Pb
1-xLa
xZr
1-yTi
yO
3(PLZT)、Pb(Mg
1/3Nb
2/3)O
3−PbTiO
3(PMN−PT)、ハフニア(HfO
2)、SrTiO
3、 SnO
2、CeO
2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、TiO
2、SiCまたはこれらの混合物であり得る。
【0018】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子が、リチウムホスフェート(Li
3PO
4)、リチウムチタンホスフェート(Li
xTi
y(PO
4)
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(Li
xAl
yTi
z(PO
4)
3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)
xO
y系列ガラス(0<x<4,0<y<13)、リチウムランタンチタネート(Li
xLa
yTiO
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(Li
xGe
yP
zS
w、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Li
xN
y、0<x<4、0<y<2)、SiS
2系列ガラス(Li
xSi
yS
z、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P
2S
5系列ガラス(Li
xP
yS
z、0<x<3、0<y<3、0<z<7)またはこれらの混合物であり得る。
【0019】
前記有機物粒子が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、セルロース、セルロース変性体、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ブチルアクリレートとエチルメタクリレートとの共重合体またはこれらの混合物であり得る。
前記無機物粒子及び有機物粒子の平均粒径が、それぞれ独立的に0.001〜10μmであり得る。
【0020】
前記多孔性高分子フィルムは、フィルムの表面と平行に配列された複数のフィブリルが層状に積層された構造を有し、前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径が、前記フィルムの厚さ方向の中央部に位置したフィブリルの直径よりも小さくてもよい。
【0021】
前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径が、前記フィルムの厚さ方向の中央部に位置したフィブリルの直径よりも2〜4倍小さくてもよい。
【0022】
前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径が0.01〜0.04μmであり、前記フィルムの厚さ方向の中央部に位置したフィブリルの直径が0.04〜0.08μmであり得る。
【0023】
前記多孔性高分子フィルムの片面にのみ形成されている多孔性コーティング層を備え、前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径が、前記多孔性コーティング層が形成されていないフィルムの他面側に位置したフィブリルの直径よりも小さくてもよい。
【0024】
前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径が、前記多孔性コーティング層が形成されていないフィルムの他面側に位置したフィブリルの直径よりも2〜7倍小さくてもよい。
【0025】
前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径が0.01〜0.07μmであり、前記多孔性コーティング層が形成されていないフィルムの他面側に位置したフィブリルの直径が0.07〜0.14μmであり得る。
【0026】
前記バインダー高分子は、相互隣接する粒子の表面に位置し、これら粒子同士を連結しながら多孔性構造を形成し、前記バインダー高分子の大きさ(径)は10〜100nmであり得る。
【0027】
また、本発明の一面によれば、カソード、アノード、及びカソードとアノードとの間に介された分離膜を含み、前記分離膜は、前記の電気化学素子用分離膜である電気化学素子が提供される。
前記電気化学素子はリチウム二次電池であり得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一実施例によれば、多孔性ポリオレフィンフィルムにスラリーコーティングを行うため、従来の熱固定温度よりも更に高い温度で熱固定を行い、機械的及び熱的性能が向上し、通気性に優れた複合分離膜を提供することができる。
【0029】
また、スラリーコーティングに続き熱固定を行い、多孔性コーティング層が形成された複合分離膜を製造することで、熱固定工程で加えられた熱が多孔性コーティング層を経てポリオレフィンフィルムに伝達されるため、比較的高い温度での熱固定が可能となり、ポリオレフィンフィルムのフィブリル構造に対するコーティングスラリーの濡れ性が向上する。
【0030】
また、熱固定工程で加えられた熱が多孔性コーティング層を経てポリオレフィンフィルムに伝達されるため、ポリオレフィンフィルムがより小さい直径のフィブリルを有するようになり、単位面積当たりフィブリルの個数密度(fibrilar number density)が増加するようになり、多孔性コーティング層を形成するコーティングスラリーとの界面接触面積が増加し、これによって、ポリオレフィンフィルムの物理的形態の維持がより容易になり、複合分離膜の熱収縮率が改善し、コーティング層の剥離強度が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0033】
本発明の一面による電気化学素子用分離膜は、多孔性高分子フィルムと、無機物粒子及び有機物粒子のうち一種以上の粒子及びバインダー高分子を含み、前記多孔性高分子フィルムの片面または両面に形成されている多孔性コーティング層と、を備え、前記多孔性高分子フィルムと多孔性コーティング層との接触面で多孔性高分子フィルムの表面のフィブリルと前記多孔性コーティング層に含まれた粒子とが絡み合っており、100〜800sec/100ccの通気時間、0.5〜1.5Ωの範囲の電気抵抗、及び縦方向及び横方向それぞれで8%未満の熱収縮率を有する。
【0034】
ここで、フィブリルとは、多孔性高分子フィルムを構成する高分子の鎖がフィルム製造過程で長手方向へ延伸及び配向されることにより、隣接する分子鎖同士の結合力が増加して長手方向へ集まって形成されたものをいう。
【0035】
なお、従来の湿式法によって多孔性コーティング層が形成された分離膜を製造するためには、
図1に示したように、樹脂組成物を圧出/キャスティング、延伸、抽出した後に熱固定して多孔性高分子フィルムを製造し、続いて前記多孔性高分子フィルムにコーティングスラリーを適用して乾燥させる工程を経た。 このようにして製造された多孔性コーティング層が形成された分離膜は、固相/液相または液相/液相の相分離後の延伸過程でフィブリル構造を有するようになり、熱固定を経ながら最終構造が決定される。即ち、従来の方法ではスラリーがコーティングされない状態、つまり多孔性コーティング層が形成される前に多孔性高分子フィルムが熱固定されるので、熱固定時、多孔性高分子フィルムが受ける熱は全体的に一定となるため、得られる分離膜においてはフィブリルの直径が多孔性高分子フィルムの厚さ方向に対し一定である。
【0036】
一方、本発明の一実施例による電気化学素子用分離膜の製造方法は、
図2を参照すれば、可塑剤を抽出して得られた多孔性高分子フィルムに多孔性コーティング層形成用スラリーをコーティングし、その後で熱固定段階を経るが、スラリーコーティング段階の前には熱固定段階を一切含まない。
【0037】
その結果、本発明の一実施例による電気化学素子用分離膜は、熱固定段階で既に多孔性高分子フィルムの少なくとも一面上に多孔性コーティング層が形成されているため、熱固定時に多孔性高分子フィルムが受ける熱は、フィルムの厚さ方向へ不均一となり、得られる分離膜におけるフィブリルの直径も多孔性高分子フィルムの厚さ方向で互いに差が発生するようになる。
【0038】
前記多孔性高分子フィルムが熱固定時に受ける熱伝達は、多孔性コーティング層が片面または両面に形成されるかによって相違し、それによって、最終フィブリルの直径分布も影響を受け得る。
【0039】
先ず、本発明の一態様である多孔性コーティング層が多孔性高分子フィルムの片面にのみ形成された分離膜の場合は、前記熱固定の直接適用と間接適用の効果がよく現れる。多孔性コーティング層が多孔性高分子フィルムの片面にのみ形成された分離膜において、多孔性コーティング層が形成された後に熱固定を適用すれば、多孔性高分子フィルムは多孔性コーティングのためのスラリーがある状態で間接的に熱を受けるようになるため、相対的に熱伝逹が遅く適用される。これに対し、多孔性コーティング層が形成されていない多孔性高分子フィルムに熱固定を直接適用すれば、前記多孔性高分子フィルムは直接的に熱を受けるようになるため、部分的な溶融及び再結晶化(partial melting−recrystalization)によって結晶が大きくなり、フィブリルの直径が大きくなるようになる。その結果、多孔性コーティング層が形成されたフィルムの表面から多孔性コーティング層が形成されていない他面に至るフィルムの厚さ方向へフィブリルの直径が次第に大きくなるような勾配(gradient)が発生する傾向を有するようになる。これとは違って、従来の方法のように、多孔性高分子フィルムの熱固定の後に、スラリーコーティングする場合は、フィブリルの直径がフィルムの厚さ方向において全て一定値を有するようになる(
図3参照)。
【0040】
また、本発明の一態様である多孔性コーティング層が多孔性高分子フィルムの両面に形成された分離膜の場合は、熱固定時、多孔性高分子フィルムの上面及び下面ともスラリーがコーティングされている状態で、コーティング層が形成された表面は間接的に熱を受けるようになるが、フィルムの厚さ方向の中央部は、コーティング層のないフィルムの左側及び右側面から直接に熱伝達を受けるようになる。その結果、多孔性コーティング層が形成されたフィルムの表面に位置したフィブリルの直径が、フィルムの厚さ方向の中央部に位置したフィブリルの直径よりも小さくなる。
【0041】
勿論、前述の、多孔性コーティング層が多孔性高分子フィルムの片面にのみ形成される場合も、多孔性コーティング層が形成されたフィルムの表面に位置したフィブリルの直径が、フィルムの厚さ方向の中央部に位置したフィブリルの直径よりも小さくなる。
【0042】
本発明の一実施例による分離膜の多孔性高分子フィルムが、優れた熱的安全性及び機械的安全性を有するという点は、前述した特有のフィブリル構造を有した結果であることを以下に説明する。
【0043】
図5c及び
図5dに示したように、本発明の一実施例による分離膜は、前記多孔性高分子フィルムと多孔性コーティング層との接触面で多孔性高分子フィルムの表面のフィブリル1、1’と、多孔性コーティング層に含まれた無機物粒子及び有機物粒子のうち一種以上の粒子2とが絡み合っている。また、多孔性コーティング層にはバインダー高分子3が更に含まれる。
【0044】
なお、多孔性高分子フィルムの少なくとも一面に多孔性コーティング層を備えた複合分離膜の熱的安全性は、多孔性高分子フィルムの熱収縮率、多孔性コーティング層のローディング量、多孔性高分子フィルムと多孔性コーティング層との接着強度(または剥離強度)から影響を受け得る。この中で、多孔性高分子フィルムと多孔性コーティング層との接着強度が弱い場合は、多孔性高分子フィルムの熱収縮率及び多孔性コーティング層のローディング量を改善させても熱特性が大きく劣ることと確認された。
【0045】
また、従来の粒子及びバインダー高分子を含む多孔性コーティング層による分離膜の機械的強度の向上は微々たる程度であり、この原因は、従来の多孔性コーティング層に含まれたバインダー高分子によっては、多孔性高分子フィルムと多孔性コーティング層との接着力が所望するほど強く形成されないためである。
【0046】
従来の複合分離膜は、熱固定によって多孔性高分子フィルムを構成するフィブリルが、熱固定前の状態(
図4a,1参照)から熱固定後の結着された状態(
図4b,1’参照)へ変化した後に多孔性コーティング層の形成のためのスラリーが適用されるため、無機物粒子及び有機物粒子のうち一種以上の粒子2と多孔性コーティング層表面のフィブリルとの絡みが発生しない(
図4c及び
図4d参照)。
【0047】
また、従来の複合分離膜に物理的衝撃が加えられれば、
図6a〜
図6cに示したように、熱固定によって結着した状態となったフィブリル1’を含む多孔性高分子フィルムと、前記多孔性高分子フィルム上の粒子2を含む多孔性コーティング層との間には強い接着が形成されていないため、多孔性コーティング層に含まれていた粒子2が多孔性高分子フィルムの表面から離脱しやすいので、分離膜の突刺し強度は実質的に多孔性高分子フィルムの機械的強度に応じて決められる。この際、多孔性高分子フィルムの機械的強度は、多孔性高分子フィルムの延伸及び熱固定の過程のみならず、多孔性高分子フィルムと多孔性コーティングとの接着強度にも依存することが明らかになった。ここで、図上のNは分離膜に衝撃を加えるための物体を示す。
【0048】
このような点で、本発明者らは、多孔性高分子フィルムと多孔性コーティング層との接着強度(または剥離強度)を増加させれば、分離膜の熱的安全性と機械的安全性とを同時に向上させることができることを見出した。
【0049】
前述のように、本発明の電気化学素子用分離膜は、高分子樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物を押出し/キャスティングして高分子フィルムを得る工程、得られたフィルムを延伸する工程、延伸されたフィルムから可塑剤を抽出する工程、可塑剤が抽出された多孔性高分子フィルムの少なくとも一面に、多孔性コーティング層の形成のためのスラリーをコーティングする工程、及び前記スラリーがコーティングされている多孔性高分子フィルムを熱固定する工程を含む方法によって製造可能である。
【0050】
即ち、本発明において、多孔性高分子フィルムにはその表面のフィブリルが熱固定される前、多孔性コーティング層の形成のためのスラリーがコーティングされる(
図5a〜
図5c参照)。したがって、多孔性高分子フィルムの表面に形成されている結着前のフィブリルの間に、多孔性コーティング層スラリーに含まれた粒子2が絡み合って存在するようになることで、多孔性高分子フィルムと多孔性コーティング層との結着力をより強化させることができる(
図5c及び5d参照)。
【0051】
その結果、前記多孔性高分子フィルムに対する多孔性コーティング層の剥離力が5,000gf/cm以上、望ましくは7,000〜20,000gf/cmである。ここで、本明細書に記載の「多孔性コーティング層の剥離力(Peeling Force)」との用語は、下記のテストによって測定された剥離力を示す。
【0052】
即ち、透明な両面テープ(3M社製)を用いて本発明の分離膜をそれぞれガラス板の上に堅固に付着した(試料の幅1.5cm、長さ6〜8cm)。続いて、
図13に示した引張強度測定装備(UTM,LLOYD LF PLUS)を用いて多孔性コーティング層及びベースフィルムが剥がれるのに必要な力を測定して多孔性コーティング層の剥離力を評価した。
【0053】
この際、前記多孔性高分子フィルムの表面から厚さ方向へ10〜200nm、望ましくは20〜100nmまで、多孔性高分子フィルムのフィブリルと多孔性コーティング層の粒子とが絡み合ってもよく、これは、前記深さ範囲にまでは多孔性高分子フィルムと多孔性コーティング層とが互いに重なっている構造を成すことを示す。
その結果、本発明の分離膜は、縦方向(MD)及び横方向(TD)それぞれにて8%未満の熱収縮率を有する。
【0054】
また、本発明の一実施例によって、多孔性コーティング層が多孔性高分子フィルム上に形成された後に熱固定が行われる場合、多孔性高分子フィルムは多孔性コーティング層を介して間接的に熱を受けるようになるため、相対的に熱伝逹が遅く適用されるので、多孔性高分子フィルムの気孔が閉塞せず通気度が大きく向上し、100〜800sec/100cc、望ましくは200〜700sec/100ccの通気時間を有する。
【0055】
前述のように、前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの表面に位置したフィブリルの直径が、フィルムの厚さ方向における中央部に位置したフィブリルの直径よりも小さくなり、特に、多孔性コーティング層が多孔性高分子フィルムの片面にのみコーティングされる場合は、多孔性コーティング層が形成されたフィルムの表面から多孔性コーティング層が形成されていない他面へ向うフィルムの厚さ方向にフィブリルの直径が次第に増加する勾配(gradient)が生じるため、分離膜の電気抵抗も0.5〜1.5Ω、望ましくは0.6〜1.0Ωの低い値を有するようになる。
【0056】
また、本発明の一実施例では、多孔性コーティング層の存在によって従来よりも高い温度、即ち、多孔性高分子フィルムの融点よりも−1℃まで(例えば、ポリエチレンフィルムの場合、131〜134℃)における熱固定が可能となり、これによってフィブリルの結着密度がさらに改善して多孔性高分子フィルム自体の機械的強度も増加するようになる。その結果、本発明の一実施例による分離膜は1,500〜2,500Kg/cm
2、望ましくは2,000〜2,500Kg/cm
2の範囲の引張強度を有することができる。
【0057】
さらに、
図7a及び7bに示したように、複合分離膜が衝撃を受けるとき、無機物粒子/有機物粒子2は多孔性高分子フィルムの表面のフィブリル1に絡み合っているため、フィブリル1に絡み合っている粒子2によってさらに増加した突刺し強度を有することができる。より具体的に、本発明の一実施例による分離膜は、480〜1,000Kgf、望ましくは500〜1,000Kgfの突刺し強度を有することができる。
【0058】
本発明の一実施例によれば、前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径が、前記フィルムの厚さ方向の中央部に位置したフィブリルの直径よりも2〜4倍小さく、望ましくは2〜3倍小さい。
【0059】
また、前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径が0.01〜0.04μmであり、前記フィルムの厚さ方向の中央部に位置したフィブリルの直径が0.04〜0.08μmであり得る。
【0060】
前述のように、前記多孔性高分子フィルムの片面にのみ多孔性コーティング層が形成されている場合、前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径が、前記多孔性コーティング層が形成されていないフィルムの他面側に位置したフィブリルの直径よりも更に小さい。
【0061】
このような場合、前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径は、前記多孔性コーティング層が形成されていないフィルムの他面側に位置したフィブリルの直径よりも2〜7倍小さく、望ましくは4〜7倍小さい。
【0062】
具体的に、前記多孔性高分子フィルムの片面にのみ多孔性コーティング層が形成されている場合、前記多孔性コーティング層が形成されたフィルムの一面側に位置したフィブリルの直径は0.01〜0.07μmであり、前記多孔性コーティング層が形成されていないフィルムの他面側に位置したフィブリルの直径は0.07〜0.14μmであり得る。
【0063】
また、多孔性コーティング層が形成された多孔性高分子フィルムの一面側での単位面積当たりフィブリルの個数密度が増加するため、コーティングスラリーとの界面接触面積が増加し、ポリオレフィン多孔性繊維状構造に対する前記スラリーの濡れ性が向上可能である。また、分離膜の機械的強度を熱固定によって最大化することができるとともに、通気度及びイオン伝導度も向上させることができる。
【0064】
前記多孔性高分子フィルムは、当業界で通常使用されるものであれば、素材面で特に制限されず、このような多孔性高分子フィルムの例には、ポリオレフィン高分子フィルムがある。
【0065】
前記ポリオレフィンは、当業界で通常使用されるものであれば、特に制限されない。このようなポリオレフィンの具体的な例には、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などのようなポリエチレン;ポリプロピレン;ポリブチレン;ポリペンテン;ポリヘキセン;ポリオクテン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテン、ヘキセン、オクテンのうち一種以上の共重合体;またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに制限されない。
【0066】
前記多孔性高分子フィルムの厚さは特に制限されないが、5〜50μmが望ましく、多孔性高分子フィルムに存在する気孔の大きさ(気孔径)及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.001〜50μm及び10〜99%であることが望ましい。
前記多孔性コーティング層は、無機物粒子単独、有機物粒子単独、または無機物粒子と有機物粒子とを同時に含み得る。
【0067】
前記無機物粒子は、電気化学的に安定すれば特に制限されない。即ち、本発明において使用できる無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li
+基準で0〜5V)で酸化及び/または還元反応が起きないものであれば、特に制限されない。特に、イオン伝達能力のある無機物粒子を使う場合、電気化学素子内のイオン伝導度を高めるため、性能の向上を図ることができる。また、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を使う場合、液体電解質内の電解質塩、例えば、リチウム塩の解離度の増加に寄与することから、電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0068】
無機物粒子の非制限的な例には、誘電率定数が5以上、望ましくは10以上の高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子またはこれらの混合物が挙げられる。
【0069】
誘電率定数が5以上の無機物粒子の非制限的な例には、BaTiO
3、Pb(Zr,Ti)O
3(PZT)、Pb
1-xLa
xZr
1-yTi
yO
3(PLZT)、Pb(Mg
1/3Nb
2/3)O
3−PbTiO
3(PMN−PT)、ハフニア(HfO
2)、SrTiO
3、SnO
2、CeO
2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO
2、 Y
2O
3、Al
2O
3、TiO
2、SiCまたはこれらの混合物などがある。
【0070】
本明細書において、「リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子」とは、リチウム元素を含むがリチウムを保存することなくリチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子をいい、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の非制限的な例には、リチウムホスフェート(Li
3PO
4)、リチウムチタンホスフェート(Li
xTi
y(PO
4)
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(Li
xAl
yTi
z(PO
4)
3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14Li
2O−9Al
2O
3−38TiO
2−39P
2O
5などのような(LiAlTiP)
xO
y系列ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(Li
xLa
yTiO
3、0<x<2、0<y<3)、Li
3.25Ge
0.25P
0.75S
4などのようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(Li
xGe
yP
zS
w、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li
3Nなどのようなリチウムナイトライド(Li
xN
y、0<x<4、0<y<2)、Li
3PO
4−Li
2S−SiS
2などのようなSiS
2系列 ガラス(Li
xSi
yS
z、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI−Li
2S−P
2S
5などのようなP
2S
5系列ガラス(Li
xP
yS
z、0<x<3、0<y<3、0<z<7)またはこれらの混合物などがある。
また、前記有機物粒子は、通気性、熱収縮性、剥離強度面で有利であり、バインダー高分子との結着性に優れる。
【0071】
前記有機物粒子の非制限的な例には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、セルロース、セルロース変性体(カルボキシメチルセルロースなど)、ポリプロピレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリフェニレンスルファイド、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ブチルアクリレートとエチルメタクリレートとの共重合体(例えば、ポリイミド、ブチルアクリレートとエチルメタクリレートとの架橋高分子など)などのような各種高分子からなる粒子などが挙げられる。有機物粒子は二種以上の高分子からもなり得る。
【0072】
前記無機物粒子または有機物粒子の大きさ(径)は制限されないが、均一な厚さのコーティング層を形成して適切な孔隙率を有するようにする面でそれぞれ独立的に0.001〜10μmの範囲であり得る。
【0073】
前記バインダー高分子は、無機物粒子及び有機物粒子のうち一種以上の間を連結して安定的に固定する機能を果たすことができれば、特に制限されなく、非制限的な例には、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride−co−hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオライド−トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride−co−trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene−co−vinyl acetate)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース (cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(acrylonitrile−styrene−butadiene copolymer)、ポリイミド(polyimide)などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、またはこれらの二種以上を混合して使うことができる。
【0074】
前記多孔性コーティング層中の粒子とバインダー高分子との組成比は、例えば重量基準で50:50〜99:1の範囲または70:30〜95:5であり得る。バインダー高分子に対して粒子の含量が少なすぎれば、分離膜の熱的安全性の改善が低下することがあり、粒子間に形成される空き空間が充分形成されず、気孔の大きさ(気孔径)及び気孔度が減少して最終電池性能の低下をもたらし得る。これに対し、バインダー高分子に対して粒子の含量が多すぎれば、多孔性コーティング層の耐剥離性が弱化することがある。
本発明の一実施例による分離膜の製造方法は、下記のようである。
【0075】
まず、高分子樹脂と可塑剤とを含む樹脂組成物を押し出す。
前記可塑剤は、当業界において通常使用されるものであれば、特に制限されない。このような可塑剤の非制限的な例には、ジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジヘキシルフタレート(dihexyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)などのフタル酸エステル(phthalic acid ester)類と、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ベンジルエーテル(benzyl ether)などの芳香族エーテル類と、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数10〜20の脂肪酸類と、パルミチン酸アルコール、ステアリン酸アルコール、オレイン酸アルコールなどの炭素数10〜20の脂肪酸アルコール類と、パルミチン酸モノ−、ジ−、またはトリエステール、ステアリン酸モノ−、ジ−、またはトリエステール、オレイン酸モノ−、ジ−、またはトリエステール、リノール酸モノ−、ジ−、またはトリエステールなどの脂肪酸グループの炭素元素数が4〜26である飽和及び不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の二重結合がエポキシに置き換えられた一つまたは二つ以上の脂肪酸が、ヒドロキシ基が1〜8個であり、炭素数が1〜10であるアルコールとエステル結合した脂肪酸エステル類がある。
また、前記可塑剤としては、前述の成分を二種以上含む混合物としても使用可能である。
【0076】
前記高分子樹脂と可塑剤の重量比は80:20〜10:90、望ましくは70:30〜20:80、より望ましくは50:50〜30:70であり得る。前記重量比が80:20よりも大きく、高分子樹脂の含量が多くなれば、気孔度が減少して気孔の大きさ(気孔径)が小さくなり、気孔間の相互連結が減少して透過度が大幅低下し、高分子樹脂溶液の粘度が上昇することによる押出負荷の上昇から加工が困難となり得、前記重量比が10:90よりも少なく高分子樹脂の含量が減少すれば、高分子樹脂と可塑剤との混練性が低下して高分子樹脂が可塑剤に熱力学的に混練されずゲル状で押し出され、延伸時、破断及び厚さのばらつきなどの問題をもたらす恐れがあり、製造された分離膜の強度が低下し得る。
【0077】
本発明において、複合分離膜を製造するためには、まず、材料の一部または全部をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどを用いて混合する。続いて、一軸押出機、二軸押出機などのスクリュー押出機、混練機、ミキサーなどで溶融混練し、T型ダイ、環状ダイなどから押し出される。混練/押し出された溶融物は、圧縮冷却によって固化させることができ、冷却方法としては、冷風や冷却水などの冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールやプレス機に接触させる方法などが挙げられる。
【0078】
その後、押し出された樹脂組成物を延伸して高分子樹脂フィルムを得る。この際、延伸方法は、当業界に知られた通常の方法で行われ得、非制限的な例には、ロール延伸機によるMD(縦方向)一軸延伸、テンターによるTD(横方向)一軸延伸、ロール延伸機とテンター、またはテンターとテンターとの組合せによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターやインフレーション成形による同時二軸延伸などが挙げられる。具体的に、前記押し出された前記樹脂組成物の延伸は、MD方向またはTD方向へ1回以上の一軸延伸するか、MD方向及びTD方向へ1回以上二軸延伸し得る。
延伸比は、縦方向及び横方向へそれぞれ3倍以上、望ましくは5〜10倍であり、総延伸比(合計面倍率)では20倍以上、望ましくは20〜80にし得る。
【0079】
もし、一方向の延伸比が3倍未満の場合は、一方向の配向が十分ではないと共に、縦方向及び横方向間の物性均衡が崩れ、引張強度及び穿孔強度などが低下し得る。また、総延伸比が20倍未満であれば未延伸が発生し、気孔が形成されないことがあり、80倍を超過すれば延伸中に破断が発生し、最終フィルムの収縮率が増加するという不具合がある。
【0080】
この際、延伸温度は、使用された高分子樹脂の融点、可塑剤の濃度及び種類によって変わり得、望ましくは、前記延伸温度は前記フィルム内の高分子樹脂の結晶部分の30〜80重量%が溶ける温度範囲から選択することが望ましい。
【0081】
前記延伸温度が前記シーツ成形物内の高分子樹脂の結晶部分の30重量%が溶ける温度よりも低い温度範囲から選択されれば、フィルムの軟質性(softness)がないことから延伸性が低下し、延伸時に破断が発生する可能性が高くなるとともに未延伸も発生する。これに対し、前記延伸温度が結晶部分の80重量%が溶ける温度よりも高い温度範囲から選択されば、延伸が容易であり、未延伸の発生は少ないが、部分的な過延伸によって厚さのばらつきが発生し、樹脂の配向効果が少なくなり、物性が大幅劣化するようになる。なお、温度による結晶部分の溶ける程度は、フィルム成形物のDSC(differential scanning calorimeter)分析から得ることができる。
【0082】
続いて、延伸されたフィルムから可塑剤を抽出して多孔性高分子フィルムを得る。具体的に、有機溶媒を用いて延伸されたフィルムから可塑剤を抽出し、乾燥する。
【0083】
前記可塑剤の抽出に用いられる抽出溶媒としては、高分子樹脂に対して貧溶媒であり、可塑剤に対しては良溶媒でありながら、沸点が高分子樹脂の融点よりも低くて乾燥が速いものが望ましい。このような抽出溶媒の非制限的な例には、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの炭化水素類、塩化メチレンや1,1,1−トリクロロエタン、フルオロカーボン系などのハロゲン化炭化水素類、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール類、アセトンや2−ブタノンなどのケトン類が挙げられる。
【0084】
前記抽出方法としては、浸漬(immersion)法、溶剤スプレー(solvent spray)法、超音波(ultrasonic)法など、通常の全ての溶媒抽出方法をそれぞれまたは複合的に用い得る。抽出に際し、残留可塑剤の含量は1重量%以下が望ましい。残留可塑剤が1重量%を超過すれば、物性が低下して多孔性膜の透過度が減少する。残留可塑剤の量は、抽出温度と抽出時間に影響を受け得、抽出温度は可塑剤及び有機溶媒の溶解度増加のために高いことが良いが、有機溶媒が沸くことによる安全性の問題を考慮すれば、40℃以下が望ましい。前記抽出温度が可塑剤の凝固点以下であれば、抽出効率が大幅低下するため、可塑剤の凝固点よりは必ず高くなければならない。
また、抽出時間は、製造される多孔性高分子フィルムの厚さによって相違するが、10〜30μm厚さの場合は2〜4分が適当である。
【0085】
前記で得られた多孔性高分子フィルムの厚さは特に制限されないが、5〜50μmが望ましく、多孔性基材に存在する気孔の大きさ(気孔径)及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.001〜50μm及び10〜99%であることが望ましい。
【0086】
続いて、多孔性高分子フィルムの少なくとも一面に、多孔性コーティング層形成用スラリーをコーティングする。このために、多孔性コーティング層形成用スラリーを先に準備し、この際、前記スラリーは、無機物粒子及び有機物粒子のうち一種以上の粒子と共にバインダー高分子を溶媒に分散させて準備する。即ち、前記スラリーは、無機物粒子単独、有機物粒子単独、または無機物粒子と有機物粒子とを同時に含み得る。
【0087】
前記スラリーに含まれる溶媒としては、粒子とバインダー高分子とが均一に分散可能であり、かつ後で容易に除去可能なものが望ましい。使用可能な溶媒の非制限的な例には、アセトン(acetone)、テトラハイドロフラン(tetrahydrofuran)、メチレンクロライド(methylene chloride)、クロロホルム(chloroform)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone,NMP)、シクロヘキサン(cyclohexane)、水またはこれらの混合物などが挙げられる。
前記多孔性コーティング層形成用スラリーは、多孔性ポリオレフィンフィルムの少なくとも一面にコーティングされる。コーティングの具体的な方法としては、当業界に知られた通常のコーティング方法を用いることができ、例えば、ディップ(Dip)コーティング、ダイ(Die)コーティング、ロール(roll)コーティング、コンマ(comma)コーティングまたはこれらの混合方式など、多様な方式を用いることができる。また、多孔性コーティング層は、多孔性ポリオレフィンフィルムの両面とも、または片面にのみ選択的に形成することができる。
続いて、前記スラリーがコーティングされた多孔性ポリオレフィンフィルムを熱固定し、多孔性コーティング層の形成された複合分離膜を得る。
【0088】
前記熱固定は、フィルムを固定して熱を加え、収縮しようとするフィルムを強制で捕まえ残留応力を除去する工程である。熱固定温度が高いほど収縮率が減少するため望ましいが、熱固定温度が高すぎる場合、ポリオレフィンフィルムが部分的に溶け、形成された微細気孔を塞いで透過度が低下し得る。
【0089】
本発明においては、ポリオレフィンフィルムを延伸した後、可塑剤を抽出してから多孔性コーティング層形成用スラリーをコーティングした後で熱固定を行いため、従来の、ポリオレフィンフィルムを延伸した後、可塑剤を抽出して熱固定を行っていた工程とは相違に、ポリオレフィンフィルムではなくコーティングされたスラリーに熱固定を行うため、ポリオレフィンフィルムに直接熱が加えられなくなる。
【0090】
したがって、従来の方法に比べ、高い温度で熱固定を行ってもポリオレフィンフィルムの溶融を抑制できる。また、ポリオレフィンフィルムに直接加えられる熱量が小なくなるため、従来の熱固定処理済みのポリオレフィンフィルムのフィブリルに比べて、多孔性コーティング層に隣接したポリエチレン基材のフィブリルの厚さがより薄く形成される。これによって、多孔性コーティング層に隣接した多孔性高分子フィルムの表面の単位面積当たりフィブリルの個数密度が増加するため、コーティングスラリーとの界面接触面積が増加し、コーティングスラリーのガラス転移温度T
gまたは融点T
mよりも高い温度領域における熱固定処理に際し、多孔性ポリオレフィンフィルムの繊維状構造に対する前記スラリーの濡れ性が向上できる。
前記熱固定の温度は、望ましくは、T
m−1℃以下に調節され、この際、T
mは前記ポリオレフィンの融点である。
【0091】
本発明の一実施例によれば、高分子樹脂としてポリオレフィンのうち、ポリエチレンが使われる場合、熱固定の温度は131〜134℃、望ましくは131〜133℃の温度で行い得、熱固定温度がこのような範囲を満たす場合、多孔性コーティング層と多孔性高分子フィルムとの結着力(剥離強度)が改善し、構造的安定性を確保することもでき、かつ熱的・機械的物性が向上し、通気度、比抵抗を低下させることができる。
【0092】
また、前記熱固定は、前記多孔性高分子フィルムにコーティングされたスラリーの表面に対して垂直方向に向ける熱源を用いて行われ得る。このような熱源としては、熱風乾燥機の熱風などを用いることができるが、熱固定の効果を得ることができるものであれば、その他の多様な例を用いてもよい。
【0093】
既存の、コーティングの後相対的に低い温度で乾燥する方式では、コーティングされたスラリー内のバインダー高分子、特に溶解性の低い結晶性高分子は、溶媒の揮発後、コーティング層内で分散がよく行われない形態でコーティング層内に分布するようになる。
【0094】
これに対し、本発明の実施例では、熱固定段階で高温の熱源が多孔性高分子フィルムにコーティングされたスラリーの表面に対して垂直方向へ加えられるため、粒子間の結晶性バインダー高分子や、粒子と完全に結合されていない結晶性バインダー高分子まで高温熱源による再結晶作用によって再配列され、コーティング層内における分散のばらつきによる抵抗を大幅減少させることができる。
【0095】
このように形成された多孔性コーティング層の厚さは特に制限されないが、0.01〜20μmの範囲であり得、気孔の大きさ(気孔径)及び気孔度も特に制限されないが、気孔の大きさは0.001〜10μmの範囲であり得、気孔度は10〜99%の範囲であり得る。気孔の大きさ及び気孔度は、主に使われる粒子の大きさに依存し、例えば、粒径が1μm以下の粒子を使う場合、形成される気孔も約1μm以下を有するようになる。
【0096】
前記多孔性コーティング層においては、粒子が充填されて互いに接触した状態で、前記バインダー高分子によって相互結着されることで、粒子の間にインタースティシャル・ボリウム(interstitial volume)が形成され、前記無機物粒子間のインタースティシャル・ボリウムは空き空間となり気孔を形成するようになる。
【0097】
即ち、バインダー高分子は、粒子が相互結着された状態を維持するようにこれらを互いに付着、例えば、バインダー高分子が粒子同士を連結及び固定している。また、前記多孔性コーティング層の気孔は、粒子間のインタースティシャル・ボリウムが空き空間となることで形成された気孔であり、これは粒子による充填構造(closed packed or densely packed)にて実質的に面接触する粒子によって限定される空間である。このような気孔構造は、後で注液される電解液で満たされ、このように満たされた電解液は多孔性コーティング層の気孔を通じて電池を作動させるために必須であるリチウムイオンが移動する経路を提供できる。
【0098】
なお、前述のように、本発明の一実施例による分離膜の製造方法は、
図1に示した従来の製造方法とは違い、可塑剤の抽出工程後の熱固定工程、ワインディング及びスリッティング工程、アンワインディング工程が不要である。
【0099】
ここで、ワインディング工程とは、押出/延伸/抽出段階を経て得られた多孔性高分子フィルムに、スラリーコーティング及び熱固定を経った後で得られた複合分離膜を、ローラー上に巻き取る段階をいい、スリッティング工程とは、複合分離膜の巻取り時、両端の不要な部分を切断する段階をいう。
【0100】
従来の方法では、多孔性高分子フィルムの熱固定後、ワインディング及びスリッティング工程を経て、スラリーコーティングのために、巻取したフィルムを解くアンワインディング工程が必ず必要であり、スラリーコーティング及び乾燥工程の後で、再度ワインディング及びスリッティング工程を経て最終的に包装段階に至った。
【0101】
これに対し、本発明の一実施例によれば、ワインディング及びスリッティング工程を、従来の二回から一回に減らすことで、ワインディング及びスリッティング工程において多孔性高分子フィルムが一部損失する問題を防止し、歩留まりが増加できる。
【0102】
また、従来のスラリーコーティング段階の前、ワインディング及びスリッティング工程後のアンワインディング工程が省略されるため、空間活用及び工程費用を節減することができる。更に、このようなスラリーコーティング段階前のスリッティング工程や、ワインディング/アンワインディング工程を経ないため、超広幅の大面的コーティングが可能であり、最終分離膜間のしわ、ピンホール、スクラッチなどの傷の発生が大幅減少し、未コーティング領域も減少する。
【0103】
また、従来の可塑剤抽出後の熱固定工程と、スラリーコーティング後の乾燥工程との二回の個別熱処理工程の代わりに、スラリーコーティング後の熱固定工程の単一熱処理工程に改善することで、乾燥オーブンと熱固定オーブンとを別途に使わず、一つの熱固定オーブンのみを使うことで、空間活用及び費用節減を図ることができる。
【0104】
本発明の一面によれば、カソード、アノード、及びカソードとアノードとの間に介された分離膜を含む電気化学素子として、前記分離膜が前述の電気化学素子用分離膜である電気化学素子が提供される。
【0105】
このような電気化学素子は、当技術分野に知られた通常の方法によって製造され得、その一実施例としては、カソードとアノードとの間に前述の分離膜を介して組み立てた後、電解液を注入することで製造され得る。
【0106】
前記分離膜とともに適用される電極は特に制限されず、当業界に知られた通常の方法によって電極活物質が電極電流集電体に結着された形態に製造することができる。
【0107】
前記電極活物質のうちカソード活物質の非制限的な例には、従来の電気化学素子のカソードに使われる通常のカソード活物質が使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を使うことが望ましい。アノード活物質の非制限的な例には、従来の電気化学素子のアノードに使われる通常のアノード活物質が使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コーク(petroleum coke)、活性化炭素(activated carbon)、グラファイト(graphite) またはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが望ましい。
【0108】
カソード電流集電体の非制限的な例には、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、アノード電流集電体の非制限的な例には、銅、金、ニッケルまたは銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0109】
本発明の一実施例で使用可能な電解液は、A
+B
-のような構造の塩であって、 A
+は、Li
+、Na
+、K
+のようなアルカリ金属の陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、B
-は、PF
6-、BF
4-、Cl
-、Br
-、I
-、 ClO
4-、AsF
6-、CH
3CO
2-、CF
3SO
3-、N(CF
3SO
2)
2-、C(CF
2SO
2)
3-のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラハイドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマ−ブチロラクトンまたはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離されたものがあるが、これらに限定されることではない。
【0110】
電解液の注入は最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電池の製造工程中の適切な段階で行われ得る。即ち、電池の組立ての前または電池の組立ての最終段階などで適用され得る。
【0111】
本発明の一実施例による分離膜を電池に適用する工程としては、一般的な工程である巻取(winding)の他、分離膜と電極との積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が適用可能である。
【0112】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0113】
実施例1−1:分離膜の製造
ポリオレフィンとして重量平均分子量が500,000である高密度ポリエチレンと、可塑剤として動粘度が68.00cStである液体パラフィンを35:65の重量比で用いて、210℃の温度で押し出した。延伸温度は115℃にし、延伸比は縦方向と横方向にそれぞれ7倍延伸した。続いて、抽出溶媒としてメチレンクロライドを用いて2M/minの条件で可塑剤である液体パラフィンを抽出した後、0.04μmの平均気孔サイズを有する多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。
【0114】
その後、多孔性コーティング層形成用スラリーとして0.5μmの平均粒径を有するAl
2O
3粒子/シアノエチルポリビニルアルコール(Cyano resin CR−V,Shin−Etsu Chemical,Ltd.製)/PVDF−HFP5(LBG2,Arkema,Inc.製)/アセトンを18.0/0.3/1.7/80の重量比を有するように混合して準備した。
【0115】
前記可塑剤抽出工程までを完了した多孔性ポリオレフィンフィルムに、前記スラリーを片面当たり4μmの厚さで両面コーティングし、続いて132.5℃、5m/minの条件で熱固定を行い、多孔性コーティング層が形成された厚さ20μmの分離膜を製造した。得られた分離膜の多孔性コーティング層は0.5μmの平均気孔サイズ及び56%の平均気孔度を有した。
【0116】
実施例1−2:コインセルの製造
エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1:2の体積比で含む有機溶媒に、LiPF
6 1.0Mとなるように添加して電解液を準備した。前記電解液に分離膜を充分濡らした後、前記分離膜のみを用いてコインセルを製造した。
【0117】
実施例2−1:分離膜の製造
多孔性コーティング層形成用スラリーとして0.5μmの平均粒径を有するブチルアクリレートとエチルメタクリレートの架橋高分子化合物からなる有機物粒子(FX9022、ゼオン社製)、バインダー高分子であるポリブチルアクリレート、分散剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)、及び溶媒として水を18/1.5/0.5/80の重量比で準備し、前記可塑剤の抽出工程までを完了した多孔性ポリオレフィンフィルムに、前記スラリーを3.5μmの厚さで片面コーティングし、続いて132.5℃、5m/minの条件で熱固定を行い、多孔性コーティング層が形成された厚さ14.5μmの分離膜を製造した。得られた分離膜の多孔性コーティング層は0.5μmの平均気孔サイズ及び60%の平均気孔度を有した。
【0118】
実施例2−2:コインセルの製造
分離膜として実施例2−1の分離膜を使ったことを除いては、実施例1−2と同様の方式で電気化学素子を製造した。
【0119】
比較例1−1:分離膜の製造
ポリオレフィンとして重量平均分子量が500,000である高密度ポリエチレンと、動粘度が68.00cStである液体パラフィンとを35:65の重量比で使い、210℃の温度で押し出した。続いて、延伸温度を115℃にし、延伸比を縦方向、横方向へそれぞれ7倍延伸した。その後、可塑剤を抽出した後、130℃、5m/minの条件で熱固定することで、多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。
【0120】
Al
2O
3粒子/シアノエチルポリビニルアルコール/PVDF−HFP/アセトン18.0/0.3/1.7/80の重量組成比を有する、多孔性コーティング層形成用スラリーを準備した。
【0121】
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを、前記得られた多孔性ポリオレフィンフィルムに、片面当たり4μmの厚さで両面コーティングした後、60℃、5m/minの条件で乾燥し、分離膜を製造した。
【0122】
比較例1−2:コインセルの製造
分離膜として比較例1−1の分離膜を使ったことを除いては、実施例1−2と同様の方式で電気化学素子を製造した。
【0123】
比較例2−1:分離膜の製造
132.5℃、5m/minの条件で熱固定を行い多孔性ポリオレフィンフィルムを得たことを除いては、比較例1−1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0124】
比較例2−2:コインセルの製造
分離膜として比較例2−1の分離膜を使ったことを除いては、実施例1−2と同様の方式で電気化学素子を製造した。
【0126】
多孔性コーティング層形成用スラリーとして0.5μmの平均粒径を有するブチルアクリレートとエチルメタクリレートとの架橋高分子化合物からなる有機物粒子(FX9022、ゼオン社製)、バインダー高分子であるポリブチルアクリレート、分散剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)、及び溶媒として水を18/1.5/0.5/80の重量比で使ったことを除いては、比較例2−1と同様の方法で電気化学素子用分離膜を製造した。
【0127】
比較例3−2:コインセルの製造
分離膜として比較例3−1の分離膜を使ったことを除いては、実施例1−2と同様の方式で電気化学素子を製造した。
【0128】
比較例4−1:分離膜の製造
132.5℃、5m/minの条件で熱固定を行い多孔性ポリオレフィンフィルムを得たことを除いては、比較例3−1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0129】
比較例4−2:コインセルの製造
分離膜として比較例4−1の分離膜を使ったことを除いては、実施例1−2と同様の方式で電気化学素子を製造した。
【0130】
分離膜の評価
前述の実施例1−1、1−2及び比較例1−1〜1−4で製造した分離膜それぞれの厚さ、引張強度、突刺し強度及び熱収縮率を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0131】
また、釘刺し試験は、円筒状(18650)電池を満充電させ、このように満充電された円筒状(18650)電池を直径2.5mmの釘で5m/minの速度で貫通することで安全性評価を行い、衝撃試験は、満充電の円筒状(18650)電池に直径15.8mmのバー(bar)を乗せ、630mmの高さから9.1Kgの錘を落とすことで安全性評価を行った。この際、それぞれの安全性評価のパス基準は、発火または爆発のない場合と決めた。
この際、円筒状(18650)電池の製造方法は、以下のようである。
【0132】
先ず、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネート化合物を、体積比で20/10/70の組成比で使い、続いて、リチウム塩としてLiPF
6を1.0Mの濃度となるように添加することで非水電解液を得た。
【0133】
正極活物質として三成分系正極材(LiN
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2)62.4重量部、導電材としてSuper−P(登録商標)1.3重量部、及びバインダー高分子としてPVDF(KF1100 バインダー)1.3重量部組成の正極合剤を、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)35重量部に添加して正極スラリー(固形分65重量%)を製造した後、アルミニウム集電体上にコーティングすることで正極を準備した。
【0134】
負極活物質としては、グラファイト48重量部、導電材としてSuper−P(登録商標)0.5重量部、バインダー高分子としてSBR(スチレンブタジエンゴム)1重量部、及び分散剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース)0.5重量部を、水50重量部に添加して負極スラリー(固形分50重量%)を製造した後、銅集電体上にコーティングすることで負極を準備した。
【0135】
前記準備した正極と負極との間に、前述の実施例1〜2、2−2及び比較例 1−2〜4−2で製造された分離膜を介し、非水電解液に含浸することで3,000mAhの容量を有する円筒状(18650)二次電池を製造した。
【0136】
また、電気抵抗は、実施例1〜2、2−2及び比較例1−2〜4−2で製造されたコインセルを常温で1日放置した後、分離膜の抵抗をインピーダンス測定法で測定し、その結果を下記の表1にあわせて示した。
【0138】
前記表1を見れば、実施例1−1及び1−2で製造された分離膜は、比較例 1−1及び3−1に比べて顕著に向上した引張強度を示すことが分かる。
通気度に関しては、実施例1−1及び2−1で製造された分離膜の通気時間は、比較例1−1、3−1の通気時間に類似であるか、多少改善した。
【0139】
また、実施例1−1及び2−1で製造された分離膜は、比較例2−1及び4−1で製造された分離膜に類似の引張強度を示したが、比較例2−1及び4−1で製造された分離膜は、それぞれ
1,380sec/100cc及び
1,250sec/100ccの通気度を示し、分離膜として使うには望ましくないことと確認された。
【0140】
これは
図8〜10から確認できるが、本発明による多孔性高分子フィルムを示す
図10のフィブリルは、
図8及び
図9に比べて気孔の閉塞なくより高い結着密度で形成されていることが分かる。
また、実施例1−1及び2−1で製造された分離膜は、比較例1−1及び4−1で製造された分離膜に比べ、約2倍以上の高い剥離力を示した。
【0141】
これは、剥離後、多孔性高分子フィルムに当接した多孔性コーティング層の表面を示した
図11及び
図12から分かるように、本発明の一実施例による分離膜においては多孔性高分子フィルムのフィブリルと多孔性コーティング層の粒子とが、相互作用によって強化した構造となっていることが分かる。
【0142】
以上のように、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。