特許第6373542号(P6373542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373542電線管用リング部材、雄型嵌合部のリング部材取り付け部への電線管用リング部材の取付け構造、リング部材の使用方法および電線管への電線管用リング部材の取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6373542
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】電線管用リング部材、雄型嵌合部のリング部材取り付け部への電線管用リング部材の取付け構造、リング部材の使用方法および電線管への電線管用リング部材の取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/06 20060101AFI20180806BHJP
   H02G 3/06 20060101ALI20180806BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H02G9/06 050
   H02G3/06
   F16L21/08 B
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-523529(P2018-523529)
(86)(22)【出願日】2017年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2017044676
【審査請求日】2018年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2017-157543(P2017-157543)
(32)【優先日】2017年8月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】小澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕造
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−159742(JP,A)
【文献】 特開2011−234520(JP,A)
【文献】 特開2009−275790(JP,A)
【文献】 実開昭59−173418(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第102010029725(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/06
F16L 21/035
F16L 21/08
F16L 33/00
H02G 3/04
H02G 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪部と縮径部を備える電線管用抜け止めリングであって、
管軸方向断面において、前記爪部の先端から前記縮径部に向かって縮径するテーパ部または斜面部を有するもので、
前記縮径部の円周方向の両端部には、一端側接続部と他端側接続部が形成されていて、それぞれの接続部の嵌合部が相互に嵌合されることを特徴とする電線管用リング部材。
【請求項2】
前記一端側接続部と前記他端側接続部の対向面に形成された前記嵌合部の周方向の嵌合位置を、相互にずらして嵌合することでリング部材の周方向の長さ調整が可能なことを特徴とする請求項1に記載の電線管用リング部材。
【請求項3】
前記一端側接続部と前記他端側接続部は相互に対向し、それぞれの接続部の対向面には、中心方向の内方または外方のいずれか一方に向けて、相互に対向する前記嵌合部が形成されており、前記嵌合部を相互に嵌合させることを特徴とする請求項1記載の電線管用リング部材。
【請求項4】
前記一端側接続部の前記嵌合部は、中心方向の外方に向けて、複数個所に分離されて形成されており、前記他端側接続部の前記嵌合部は、中心方向の内方に向けて、複数個所に分離されて形成されており、それぞれの前記嵌合部を、相互に対向させて嵌合させることを特徴とする請求項1記載の電線管用リング部材。
【請求項5】
前記一端側接続部の前記嵌合部は、中心方向の外方に向けた嵌合部と中心方向の内方に向けた嵌合部とに、複数個所に分離されて形成され、前記他端側接続部の前記嵌合部は、中心方向の内方に向けた嵌合部と中心方向の外方に向けた嵌合部とに、複数個所に分離されて形成されており、中心方向の外方に向けた前記嵌合部と中心方向の内方に向けた前記嵌合部を、相互に対向させて嵌合させることを特徴とする請求項1記載の電線管用リング部材。
【請求項6】
前記一端側接続部と前記他端側接続部のそれぞれの、中心方向の外方に向けた前記嵌合部と中心方向の内方に向けた前記嵌合部は、円周方向に形成された鋸刃状溝群、多数の微少突起群、剥離紙を有する粘着剤層、または係止突起と係止スリットのいずれかの構造を有することを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の電線管用リング部材。
【請求項7】
前記一端側接続部と前記他端側接続部のそれぞれの、中心方向の外方に向けた前記嵌合部と中心方向の内方に向けた前記嵌合部は、円周方向に形成された鋸刃状溝群であり、
鋸刃状溝を構成するそれぞれの刃の先端の角度が、直角又は鋭角であることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の電線管用リング部材。
【請求項8】
前記縮径部の円周上の前記爪部を設けない部分には、前記縮径部から管軸方向に平行に突出するスライドガイドが形成されることを特徴とする請求項1記載の電線管用リング部材。
【請求項9】
前記スライドガイドは、管軸方向に添って略平行に所定形状に形成されたもので、前記スライドガイドは、リング部材の円周方向に前記爪部に対して所定個数、所定間隔で形成されることを特徴とする請求項8に記載の電線管用リング部材。
【請求項10】
前記スライドガイドの形状が矩形状、台形状の面状に形成されたものであることを特徴とする請求項8記載の電線管用リング部材。
【請求項11】
前記スライドガイドの形状が略コの字型、U字型、またはV字型の枠状に形成されたものであることを特徴とする請求項8記載の電線管用リング部材。
【請求項12】
前記爪部の爪面の外縁部の厚さに対して、前記外縁部の内部の厚さを薄く形成することを特徴とする請求項1記載の電線管用リング部材。
【請求項13】
前記爪部は、前記縮径部に向かって縮径するテーパ形状を有し、前記爪部の外面側のテーパ角度と内面側のテーパ角度とが異なり、前記爪部の先端の肉厚が、前記縮径部の肉厚よりも厚いことを特徴とする請求項1記載の電線管用リング部材。
【請求項14】
前記爪部は、前記縮径部に向かって縮径するテーパ形状を有し、前記爪部の外面側のテーパ角度と内面側のテーパ角度とが同一であり、前記爪部の肉厚が、前記縮径部の肉厚よりも厚いことを特徴とする請求項1記載の電線管用リング部材。
【請求項15】
前記縮径部の縁部には、円周方向に所定間隔で、所定個数の切れ込みが前記爪部同士の間の所定位置に設けられることを特徴とする請求項1記載の電線管用リング部材。
【請求項16】
リング部材は、ABS樹脂、高密度PE、PP樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイあるいはPC樹脂とABS樹脂のポリマーアロイの少なくともいずれかからなることを特徴とする請求項1記載の電線管用リング部材。
【請求項17】
請求項1記載の電線管用リング部材が雄型嵌合部へ取り付けられた取付け構造であって、
前記雄型嵌合部は、
管軸方向に離間して配置される一対の壁部と、
前記壁部で挟まれた略円筒状の周面を形成するリング部材移動部と、を具備し、
前記リング部材移動部の両端に形成された前記壁部間を移動することが可能なように、前記電線管用リング部材が前記リング部材移動部に取付けられることを特徴とする雄型嵌合部のリング部材取り付け部への電線管用リング部材の取付け構造。
【請求項18】
請求項1記載の電線管用リング部材が雄型嵌合部へ取り付けられた取付け構造であって、
前記雄型嵌合部は、
管軸方向に離間して配置される一対の壁部と、
前記壁部で挟まれたリング部材移動部と、を具備し、
前記リング部材移動部は、前記雄型嵌合部の先端側に形成される大径部と、前記雄型嵌合部の基部側に形成される小径部と、前記大径部と前記小径部との間に形成される斜面部とを有し、
前記リング部材移動部の両端に形成された前記壁部間を移動することが可能なように、前記電線管用リング部材が前記リング部材移動部の前記大径部に取付けられることを特徴とする雄型嵌合部のリング部材取り付け部への電線管用リング部材の取付け構造。
【請求項19】
請求項8記載の電線管用リング部材を雄型嵌合部へ取り付けて使用する使用方法であって、
前記雄型嵌合部は、
管軸方向に離間して配置される一対の壁部と、
前記壁部で挟まれた直管状のリング部材移動部と、を具備し、
前記電線管用リング部材を、前記リング部材移動部の両端に形成された前記壁部間を移動することが可能なように、前記リング部材移動部に取付けて、
前記電線管用リング部材の移動が、前記スライドガイドと前記壁部により規制されるように前記電線管用リング部材を使用することを特徴とするリング部材の使用方法。
【請求項20】
請求項2記載の電線管用リング部材を用いて、前記一端側接続部と前記他端側接続部の対向面に形成された前記嵌合部の周方向の嵌合位置を、相互にずらして嵌合することでリング部材の周方向の長さ調整を行うことを特徴とする電線管への電線管用リング部材の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が挿通される電線管同士を接続するための、雄型嵌合部に用いられる電線管用リング部材、雄型嵌合部のリング部材取り付け部への電線管用リング部材の取付け構造、リング部材の使用方法、および電線管への電線管用リング部材の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中埋設用の電線保護管として、樹脂製の波付管が用いられる。このような電線保護管を敷設するためには、複数の電線保護管を接続する必要がある。したがって、電線保護管同士を互いに接続可能な管継手などの接続手段が必要である。
【0003】
このような電線保護管同士を接続するための手段としては、例えば、半割の半円弧状部材を用いて、電線管に対してボルト締めを行なう方法がある(特許文献1)。
【0004】
特許文献1の管継手は、合成樹脂製の継手本体と、半円弧状部の両端部分から外周方向に突出するフランジ縁を備えた弾性素材製の水密用パッキングとからなる。継手本体は、幅方向の両側縁部を残してその間の部分が水密用パッキングを受け入れる溝となる。また、継手本体の周方向の両端部には、締め付け用ボルト穴を備える。水密用パッキングは、半円弧状部の幅方向中央部分が内面側に突出する突出部とされ、両側縁部が外周面側に凹む凹部とされる。
【0005】
また、一方端に受口が形成され、他方端に差口が形成された波付合成樹脂管がある(特許文献2)。
【0006】
特許文献2においては、差口の近傍にリングが装着され、受口の近傍には溝が設けられる。他の波付合成樹脂管の差口が受口に挿入されると、溝がリングを受容する。溝とリングとが協働することで、波付合成樹脂管の抜けが防止される。その際に使用されるリングの形状は、周方向の一部が切断され、さらに2つのリング部材を軸方向に重ね合わせて形成される。
【0007】
また、管径方向の断面が略方形状の凸部を有する波形管端部を、管継手における管径方向の断面が略方形状の嵌合筒部に差し込んで、これらを接続する管継手がある(特許文献3)。
【0008】
特許文献3の管継手は、嵌合筒部の内壁面に、薄肉金属板からなる掛止片が設けられる。波形管の凸部によって掛止片をその弾性力に抗して外方向へ押し広げることで、波形管の嵌合筒部への差し込みが許容される。この際、嵌合筒部に差し込んだ波形管の隣接する凸部間の隙間に、掛止片が、その弾性復帰力によって嵌り込み、凸部に係合される。このようにすることで、波形管の嵌合筒部からの抜けを阻止することができる。このため、波形管の抜けを確実に防止するとともに、接続作業を簡単にし、波形管の凸部よりも外方向への張り出しを極力抑えることができる。
【0009】
また、狭い場所でも接合作業性に優れ、コンパクトかつ容易に波付き可撓管同士を接合でき、衝撃等においても簡単に管継手から脱落することがない抜け止めリングがある(特許文献4)。
【0010】
特許文献4は、本体の外周部に、ストッパおよび傾斜ストッパが設けられる。傾斜ストッパは、本体の互いに対向する位置に設けられる。傾斜ストッパにそれぞれ設けられる傾斜部は、それぞれ反対方向に向けられる。抜け止めリングは、雌管継手内で、傾斜部の傾斜に沿って変形しながら回転させることができ、傾斜ストッパが抜け止めリング設置部へ嵌められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−337573号公報
【特許文献2】特開2002−098268号公報
【特許文献3】特開2005−172233号公報
【特許文献4】特開2009−275790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1のようにボルトを用いる方法では、接続作業が面倒である。このため、ボルトやナットを使用せずに、ワンタッチで電線管に固定でき、容易に外れることがない管継手が望まれている。
【0013】
また、特許文献2のリングは、単なる割りリングであって、波付合成樹脂管同士を接続する際の挿入性や、抜け防止の効果は大きくない。
【0014】
また、特許文献3の管継手は、抜け止め機構が複雑であり、簡単にワンタッチで電線管に固定できるものではなく、管継手を作製する時に、管継手への掛止片の固定が面倒である。また、管継手に大きな引き抜き力が加わった時には、管継手と掛止片の接続部が座屈する可能性がある。
【0015】
また、特許文献4の抜け止めリングは、必ずしも装着性が良好ではない。また、管継手の寸法誤差によって装着性の影響を受けやすく、使用する管継手のサイズごとに異なるサイズの抜け止めリングが必要となる。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、ボルトやナットを使用せずに簡易な構造で、ワンタッチで、電線管を接続することが可能な、電線管用リング部材、雄型嵌合部のリング部材取り付け部への電線管用リング部材の取付け構造、リング部材の使用方法、および電線管への電線管用リング部材の取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した目的を達するために第1の発明は、爪部と縮径部を備える電線管用抜け止めリングであって、管軸方向断面において、前記爪部の先端から前記縮径部に向かって縮径するテーパ部または斜面部を有するもので、前記縮径部の円周方向の両端部には、一端側接続部と他端側接続部が形成されていて、それぞれの接続部の嵌合部が相互に嵌合されることを特徴とする電線管用リング部材である。
【0018】
前記一端側接続部と前記他端側接続部の対向面に形成された前記嵌合部の周方向の嵌合位置を、相互にずらして嵌合することでリング部材の周方向の長さ調整が可能であることが望ましい。
【0019】
前記一端側接続部と前記他端側接続部は相互に対向し、それぞれの接続部の対向面には、中心方向の内方または外方のいずれか一方に向けて、相互に対向する前記嵌合部が形成されており、前記嵌合部を相互に嵌合させてもよい。
【0020】
前記一端側接続部の前記嵌合部は、中心方向の外方に向けて、複数個所に分離されて形成されており、前記他端側接続部の前記嵌合部は、中心方向の内方に向けて、複数個所に分離されて形成されており、それぞれの前記嵌合部を、相互に対向させて嵌合させてもよい。
【0021】
前記一端側接続部の前記嵌合部は、中心方向の外方に向けた嵌合部と中心方向の内方に向けた嵌合部とに、複数個所に分離されて形成されており、前記他端側接続部の前記嵌合部は、中心方向の内方に向けた嵌合部と中心方向の外方に向けた嵌合部とに、複数個所に分離されて形成されており、中心方向の外方に向けた前記嵌合部と中心方向の内方に向けた前記嵌合部を、相互に対向させて嵌合させてもよい。
【0022】
前記一端側接続部と前記他端側接続部のそれぞれの、中心方向の外方に向けた前記嵌合部と中心方向の内方に向けた前記嵌合部は、円周方向に形成された鋸刃状溝群あるいは多数の微少突起群、剥離紙を有する粘着剤層、または係止突起と係止スリットのいずれかの構造を有してもよい。
【0023】
前記一端側接続部と前記他端側接続部のそれぞれの、中心方向の外方に向けた前記嵌合部と中心方向の内方に向けた前記嵌合部は、円周方向に形成された鋸刃状溝群であり、鋸刃状溝を構成するそれぞれの刃の先端角度が、直角又は鋭角であってもよい。
【0024】
前記縮径部の円周上の前記爪部を設けない部分には、前記縮径部から管軸方向に平行に突出するスライドガイドが形成されることが望ましい。
【0025】
前記スライドガイドは、管軸方向に添って略平行に所定形状に形成されたもので、前記スライドガイドは、リング部材の円周方向に前記爪部に対して所定個数、所定間隔で形成されてもよい。
【0026】
前記スライドガイドの形状が矩形状、台形状の面状に形成されたものであってもよい。
【0027】
前記スライドガイドの形状が略コの字型、U字型、またはV字型の枠状に形成されてもよい。
【0028】
前記爪部の爪面の外縁部の厚さに対して、前記外縁部の内部の厚さを薄く形成してもよい。
【0029】
前記爪部は、前記縮径部に向かって縮径するテーパ形状を有し、前記爪部の外面側のテーパ角度と内面側のテーパ角度とが異なり、前記爪部の先端の肉厚が、前記縮径部の肉厚よりも厚くてもよい。
【0030】
前記爪部は、前記縮径部に向かって縮径するテーパ形状を有し、前記爪部の外面側のテーパ角度と内面側のテーパ角度とが同一であり、前記爪部の肉厚が、前記縮径部の肉厚よりも厚くてもよい。
【0031】
前記縮径部の縁部には、円周方向に所定間隔で、所定個数の切れ込みが前記爪部同士の間の所定位置に設けられてもよい。
【0032】
リング部材は、ABS樹脂、高密度PE、PP樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイあるいはPC樹脂とABS樹脂のポリマーアロイの少なくともいずれかからなることが望ましい。
【0033】
第1の発明によれば、リング部材が略C字状であるため、リング部材を容易に電線管の雄型嵌合部に取り付けることができる。また、リング部材の周方向の両端部に接続部が形成されるため、電線管に取り付けた際に、周方向端部が開いて脱落することがない。また、リング部材が取り付けられた雄型嵌合部は、他の雌型嵌合部と容易に接続することができる。このため、ボルトやナットを使用せずに、ワンタッチで電線管同士を接続することができる。
【0034】
また、周方向両端のそれぞれの接続部の周方向の嵌合位置を、相互にずらして嵌合することでリング部材の周方向の長さを調整することができる。このため、製造時におけるブロー成形等による寸法誤差あるいは、大きな径の電線管(雄型嵌合部)の寸法バラつきに対しても、確実に適用することができる。さらに、同一のリング部材を、近接する寸法の製品サイズであれば、複数のサイズの電線管に適用することができる。
【0035】
また、周方向両端のそれぞれの接続部同士が相互に対向し、それぞれの接続部の対向面に嵌合部を形成することで、対向面同士を嵌合することができる。
【0036】
また、周方向両端のそれぞれの接続部の嵌合部を複数に分離しても、同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、周方向両端のそれぞれの接続部同士が、一方の嵌合部は、中心方向の外方に向けた嵌合部と中心方向の内方に向けた嵌合部とに複数に分離され、他方の嵌合部は、中心方向の内方に向けた嵌合部と中心方向の外方に向けた嵌合部とに複数に分離され、それぞれの中心方向の外方に向けた嵌合部と中心方向の内方に向けた嵌合部を相互に対向させて嵌合することで、嵌合部が外れにくく、確実に両者を接続することができる。
【0038】
また、周方向両端のそれぞれの接続部の嵌合部が、円周方向に形成された鋸刃状溝群あるいは多数の微少突起群のいずれかの構造とすることで、確実に両者を接続することができる。
【0039】
特に、鋸刃状溝を構成する刃の先端部の角度が、直角又は鋭角であれば、刃同士が噛みあって外れにくい。
【0040】
また、縮径部の爪部を設けない部分に、縮径部から管軸方向に平行に突出するスライドガイドを形成することで、雄型嵌合部に装着した際、リング部材が傾くことを抑制し、雄型嵌合部において、管軸方向にまっすぐにスライドさせることができる。スライドガイドは、リング部材が一対の壁部間をスライド移動する時に、係止壁に当接して係止されるため、リング部材が電線管から外れることがない。
【0041】
また、スライドガイドを、爪部に対してリング部材の円周方向に所定個数、所定間隔で形成することで、前述した効果を確実に得ることができる。
【0042】
また、スライドガイドの形状は矩形状、台形状の面状に形成することもできるし、略コの字型、U字型、V字型の枠状とすることもできる。これらのいずれの形状であっても、前述した効果を確実に得ることができる。特に、スライドガイドの形状が略コの字型、U字型、V字型の枠状であれば、スライドガイドの剛性が低く、スライドガイドによる円周方向の拘束力が低下することから、隣り合う爪部の変形が容易となる。このため、雌型嵌合部に雄型嵌合部を挿入する時の挿入抵抗を少なくすることができ、雌型嵌合部との接続が容易となる。
【0043】
また、爪面の外縁部の厚さに対して、外縁部の内部の厚さを薄く形成することで、雌型嵌合部に雄型嵌合部を挿入する時の挿入抵抗を少なくすることができる。また、爪部を外縁部の厚さを厚く、外縁部の内部の厚さを薄く形成することで、接続部に引き抜き力がかかった場合にも、爪面の外縁部の厚さが、外縁部の内部の厚さより厚く形成されているので、爪部が座屈することがない。
【0044】
また、爪部が縮径部に向かって縮径するテーパ形状を有し、爪部の外面側のテーパ角度と内面側のテーパ角度とを異なるようにすることで、爪部の先端の肉厚を、縮径部の肉厚よりも厚くすることができる。このため、爪部の剛性を高くすることができる。
【0045】
また、爪部が縮径部に向かって縮径するテーパ形状を有し、爪部の外面側のテーパ角度と内面側のテーパ角度とが同一であっても、爪部の肉厚を縮径部の肉厚よりも厚くすることで、同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、縮径部の縁部に、円周方向に所定間隔で切れ込みを設けることで、爪部を変形しやすくすることができる。このため、雌型嵌合部に雄型嵌合部を挿入する時の挿入抵抗を少なくすることができる。
【0047】
また、リング部材の材質を、ABS樹脂、高密度PE、PP樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイあるいはPC樹脂とABS樹脂のポリマーアロイの少なくともいずれかからなるように選択することで、十分な剛性と変形能を確保することができる。
【0048】
第2の発明は、第1の発明にかかる電線管用リング部材が雄型嵌合部へ取り付けられた取付け構造であって、前記雄型嵌合部は、管軸方向に離間して配置される一対の壁部と、前記壁部で挟まれた略円筒状の周面を形成するリング部材移動部と、を具備し、前記リング部材移動部の両端に形成された前記壁部間を移動することが可能なように、前記電線管用リング部材が前記リング部材移動部に取付けられることを特徴とする雄型嵌合部のリング部材取り付け部への取付け構造である。
【0049】
また、第2の発明は、第1の発明にかかる電線管用リング部材が雄型嵌合部へ取り付けられた取付け構造であって、前記雄型嵌合部は、管軸方向に離間して配置される一対の壁部と、前記壁部で挟まれたリング部材移動部と、を具備し、前記リング部材移動部は、前記雄型嵌合部の先端側に形成される大径部と、前記雄型嵌合部の基部側に形成される小径部と、前記大径部と前記小径部との間に形成される斜面部とを有し、前記リング部材移動部の両端に形成された前記壁部間を移動することが可能なように、前記電線管用リング部材が前記リング部材移動部の前記大径部に取付けられることを特徴とする雄型嵌合部のリング部材取り付け部への取付け構造である。
【0050】
第2の発明によれば、リング部材が、雄型嵌合部の一対の壁部で挟まれたリング部材移動部に配置され、リング部材が、壁部間を移動することが可能であるため、雄型嵌合部と雌型嵌合部に挿入する際、リング部材がスライド移動して、容易に両者を接続することができる。
【0051】
また、雌型嵌合部に雄型嵌合部を嵌合させる際に、リング部材は、雄型嵌合部の2段構造の大径部上を移動することができる。さらに、雌型嵌合部に雄型嵌合部を押し込むと、リング部材の爪部が小径部に位置し、爪部を容易に変形させることができる。
【0052】
第3の発明は、第1の発明にかかる電線管用リング部材を雄型嵌合部へ取り付けて使用する使用方法であって、前記雄型嵌合部は、管軸方向に離間して配置される一対の壁部と、前記壁部で挟まれた直管状のリング部材移動部と、を具備し、前記電線管用リング部材を、前記リング部材移動部の両端に形成された前記壁部間を移動することが可能なように、前記リング部材移動部に取付けて、前記電線管用リング部材の移動が、前記スライドガイドと前記壁部により規制されるように前記電線管用リング部材を使用することを特徴とするリング部材の使用方法である。
【0053】
第3の発明によれば、リング部材が、雄型嵌合部の一対の壁部で挟まれたリング部材移動部に配置され、リング部材が、壁部間を移動することが可能であるため、雄型嵌合部と雌型嵌合部に挿入する際、リング部材がスライド移動して、容易に両者を接続することができる。
【0054】
また、第2の発明において、電線管用リング部材を雄型嵌合部へ取り付ける際に、リング部材の両端に形成された接続部のそれぞれの嵌合部を接着剤で接着して固定する構造とすることもできる。電線管用リング部材を雄型嵌合部へ取り付けて、第3の発明のリング部材の使用方法に用いる場合は、リング部材の両端に形成された接続部のそれぞれの嵌合部を接着剤で接着して使用しても良い。もちろん、本発明においては、接着剤での固定は、前述のように必ずしも必要ではないが、リング部材の両端に形成された接続部を接着固定して使用することもできる。
【0055】
第4の発明は、第1の発明にかかる電線管用リング部材を用いて、前記一端側接続部と前記他端側接続部の対向面に形成された前記嵌合部の周方向の嵌合位置を、相互にずらして嵌合することでリング部材の周方向の長さ調整を行うことを特徴とする電線管への電線管用リング部材の取り付け方法である。
【0056】
第4の発明によれば、リング部材の接続位置を変えることで、リング部材を長さ調整可能に形成することができる。このようにリング部材の接続部が長さ調整可能に形成されていれば、電線管の嵌合部の製造時の寸法バラツキを吸収したり、リング部材とリング部材取付部とのクリアランスを最適化することができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、ボルトやナットを使用せずに簡易な構造で、ワンタッチで、電線管を接続することが可能な、電線管用リング部材、雄型嵌合部のリング部材取り付け部への電線管用リング部材の取付け構造、リング部材の使用方法、および電線管への電線管用リング部材の取り付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】リング部材取り付け構造10を示す斜視図。
図2】リング部材取り付け構造10を示す断面図。
図3】電線管用リング部材1を示す斜視図。
図4】(a)は、電線管用リング部材1の周方向端部15が開いた状態を示す図、(b)は接続部17a、17bを接続した状態を示す図。
図5】(a)は、接続部17a、17bの拡大図、(b)は接続部17aの拡大図。
図6】(a)、(b)は、電線管用リング部材1の接続部17a、17bの接続位置を変えた状態を示す図。
図7】(a)は、他の実施形態の電線管用リング部材1の周方向端部15が開いた状態を示す図、(b)は接続部17a、17bを接続した状態を示す図。
図8】(a)は、電線管用リング部材1の部分断面図、(b)は他の実施形態の電線管用リング部材1の部分断面図。
図9】接続構造20を示す断面図。
図10】電線管用リング部材1fを示す斜視図。
図11】電線管用リング部材1aを示す斜視図。
図12】電線管用リング部材1bを示す斜視図。
図13】電線管用リング部材1cを示す斜視図。
図14】リング部材取り付け構造10aを示す側面図。
図15】リング部材取り付け構造10aを示す断面図。
図16】電線管用リング部材1dを示す斜視図。
図17】電線管用リング部材1eを示す斜視図。
図18】リング部材取り付け構造10bを示す側面図。
図19】リング部材取り付け構造10bを示す断面図。
図20】リング部材取り付け構造10cを示す断面図。
図21】電線管用リング部材1gを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0059】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態にかかるリング部材取り付け構造10について説明する。図1は、リング部材取り付け構造10を示す斜視図であり、図2は、リング部材取り付け構造10の軸方向の断面図である。リング部材取り付け構造10は、主に、電線管5、止水部材3、電線管用リング部材1等から構成される。リング部材取り付け構造10は、電線管用リング部材1が電線管5の雄型嵌合部7のリング部材取付部へ取り付けられた取付け構造である。
【0060】
電線管5は、例えば高密度ポリエチレン製などの可撓性を有する波付管である。なお、電線管5は、管状の部材であれば長尺でなくてもよく、例えば管状の継手など、電線が挿通される管状部材も含む。電線管5の端部近傍の外周部には、雄型嵌合部7が形成される。雄型嵌合部7は、管軸方向に離間して配置される一対の壁部13と、壁部13で挟まれた略円筒状の周面を形成する直管状のリング部材移動部21とを有する。壁部13は、周囲と比較して外径が大きな部位である。
【0061】
リング部材移動部21には、電線管用リング部材1が配置される。電線管用リング部材1は、リング部材移動部21の両端に形成された壁部13間を移動することが可能なように、リング部材移動部21に取付けられる。一対の壁部13は、管軸方向に離間して配置され、電線管用リング部材1の動作範囲を規制するものである。すなわち、リング部材移動部21が雄型嵌合部7のリング部材取付部となる。
【0062】
図2に示すように、電線管用リング部材1は、縮径部11側が、電線管5の先端側(図中左側)に向くように配置される。すなわち、電線管用リング部材1の爪部9先端は、電線管5の基部側(図中右側)に向くように配置される。なお、電線管用リング部材1の内径は、壁部13の外径よりも小さいため、電線管用リング部材1は、壁部13の間のリング部材移動部21に保持される。ここで、基部とは、電線管の雄部の先端側とは反対側の方向を示す。
【0063】
ここで、電線管用リング部材1の管軸方向の長さは、リング部材移動部21の長さよりも短い。したがって、電線管用リング部材1は、リング部材移動部21に配置された状態で、少なくとも一方の壁部13の間にクリアランスを有する。このため、電線管用リング部材1は、リング部材移動部21において、管軸方向にスライド可能である。
【0064】
リング部材移動部21よりも基部側には、止水部材収容部が設けられる。止水部材収容部は、断面略矩形の溝であり、止水部材収容部には、止水部材3が収容される。すなわち、雄型嵌合部7の基部側の壁部13よりもさらに基部側に、止水部材3が設けられる。止水部材3は環状の部材であって、止水部材3の内径は、止水部材収容部の外径よりも小さく、止水部材3の内面は、止水部材収容部の外面に密着する。
【0065】
なお、止水部材3は、例えば、ゴム製または水膨張部材からなる。また、止水部材3は、断面形状の内周部は直線状(管軸方向に略同一径)で、外周部には、管軸方向の一方の端部から他方に向かう斜面部を有する形状を有する。なお、図2に示すように、止水部材3の最大外径部は、電線管5の基部側に向けて配置され、当該部位の外径は、雄型嵌合部7における電線管5の最大外径よりも大きく、止水部材3は、径方向の外方に突出する。
【0066】
次に、電線管用リング部材1について詳細に説明する。図3は、電線管用リング部材1の斜視図である。前述したように、電線管用リング部材1は、爪部9と縮径部11を備える電線管用抜け止めリングである。なお、電線管用リング部材1の爪部9の形状や数量は図示した例には限られない。
【0067】
電線管用リング部材1は、樹脂製であり、例えば、ABS樹脂、高密度PE、PP樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイあるいはPC樹脂とABS樹脂のポリマーアロイの少なくともいずれかからなることが望ましい。
【0068】
電線管用リング部材1は、管軸方向断面において、爪部9の先端から縮径部11に向かって縮径するテーパ部または斜面部を有する。すなわち、電線管用リング部材1の一方の端部側は、外径が他の部位よりも小さい縮径部11となる。電線管用リング部材1の他方の端部側に向けて、複数の爪部9が設けられる。爪部9は、縮径部11に対して、円周方向にスリット8を介して互いに離間して併設される。また、爪部9は、縮径部11から先端に行くにつれて、徐々に外径が大きくなるように拡径される。
【0069】
電線管用リング部材1は、略C字状であり、縮径部11の両側の周方向端部15のそれぞれには、一端側の接続部17aと他端側の接続部17bが形成される。
【0070】
図4(a)は、それぞれの接続部17a、17bを接続する前の状態(すなわち、電線管用リング部材1が、略C字状の状態)を示す図である。接続部17aと接続部17bは相互に対向し、それぞれの接続部17a、17bの対向面には、中心方向の内方または外方のいずれか一方に向けて、相互に対向する嵌合部19が形成される。
【0071】
図5(a)は、嵌合部19同士の拡大図である。図示した例では、接続部17aの中心方向の外方に向けた嵌合部19と接続部17bの中心方向の内方に向けた嵌合部19は、円周方向に形成された複数の鋸刃状溝22で構成される。すなわち、嵌合部19は、円周方向に形成された鋸刃状溝群で構成される。本実施形態では、対向する鋸刃状溝群同士が互いに噛みあうことで接続部17aの嵌合部19と接続部17bの嵌合部19とが嵌合する。
【0072】
図5(b)は、接続部17aのさらなる拡大図である。鋸刃状溝22を構成するそれぞれの刃24は、互いの刃24が噛みあう嵌合面24aと、嵌合面24a同士を繋ぐ斜面24bとからなる。すなわち、刃24は略三角形である。刃24の先端近傍の、嵌合面24aと斜面24bとの角度(図中E)は、直角または鋭角であることが望ましい。嵌合面24aと斜面24bとの角度が鈍角であると、刃24の噛みあいが外れやすい。
【0073】
さらに、嵌合面24aの基部における円弧状の嵌合部19の法線をFとする。嵌合面24aと斜面24bとの角度が鋭角である場合において、法線Fと斜面24bとの角度(図中G)よりも、嵌合面24aと斜面24bとの角度(図中E)が小さいことが望ましい。接続部17bも同様の形状とすることで、刃24に返しが形成され、両者の鋸刃状溝群同士を互いに噛みあわせた際に、刃24が外れにくい。
【0074】
図4(b)は、相互に対向する嵌合部19を嵌合させた状態を示す図である。接続部17aの外面側の嵌合部19と、接続部17bの内面側の嵌合部19のそれぞれを相互に嵌合することで、電線管用リング部材1を環状にすることができる。
【0075】
ここで、電線管用リング部材1を用いて、一端側の接続部17aと他端側の接続部17bの対向面に形成された嵌合部19同士を嵌合させる際には、図6(a)に示すように、完全に全ての鋸刃状溝22及び刃24同士を嵌合させることができる。また、図6(b)に示すように、一部の鋸刃状溝22及び刃24同士を嵌合させることもできる。このように、周方向の嵌合位置を、相互にずらして嵌合することでリング部材の周方向の長さ調整を行い、電線管5に取り付けることができる。
【0076】
このような、電線管5への電線管用リング部材1の取り付け方法によれば、電線管用リング部材1の長さ調整を行って、電線管5に取り付けるため、電線管5の嵌合部の製造時の寸法バラツキを吸収することができる。また、電線管用リング部材1とリング部材取付部とのクリアランスを最適化することができる。
【0077】
なお、接続部17a、17bの嵌合構造は、鋸刃状溝群には限られない。図7(a)は、嵌合部19aが設けられた、接続部17a、17bを接続する前の状態を示す図である。嵌合部19aは、多数の微少突起群で構成される。例えば、嵌合部19aは、面状ファスナである。微小突起群は、線状であっても良い。
【0078】
図7(b)に示すように、相互に対向する嵌合部19aを嵌合させ、嵌合部19aの微少突起群同士を噛みあわせることで、両者を嵌合することができる。以上のように、嵌合部の構造は、互いに噛みあって嵌合可能であれば、その形態は限定されない。例えば、剥離紙を有する粘着剤層であってもよい。
【0079】
このように、電線管用リング部材1の周方向の両端部のそれぞれの接続部17a、17bに嵌合部19を形成し、互いに嵌合させることで、電線管用リング部材1の周方向両端部を接続することができる。この際、接続部17a、17bの対向面の嵌合部の嵌合位置を調整することで、電線管用リング部材1の縮径部11の開口径を調整することができる。すなわち、接続部17aと接続部17bの対向面に形成された嵌合部19の周方向の嵌合位置を、相互にずらして嵌合することで電線管用リング部材1の周方向の長さ調整(すなわち内径の調整)が可能である。
【0080】
このようにすることで、使用対象の雄型嵌合部7のサイズに応じて、電線管用リング部材1の長さを調整することができる。例えば、同一のサイズの雄型嵌合部7であっても、製造時の寸法誤差等による外径のばらつきが生じる場合がある。電線管用リング部材1の長さを調整することで、外径のばらつきに対しても、適切に対応することができる。また、同一の電線管用リング部材1を、複数のサイズの雄型嵌合部7に適用することもできる。
【0081】
図8(a)は、電線管用リング部材1の断面形状の詳細を示す図である。前述したように、電線管用リング部材1の外面は、縮径部11から爪部9の端部に向かって徐々に径が大きくなる。すなわち、爪部9の外面側は、管軸方向断面において、爪部9の先端から縮径部11に向かって縮径する外面テーパ部23aを有する。同様に、爪部9の内面側には、管軸方向断面において、爪部9の先端から縮径部11に向かって縮径する内面テーパ部23bを有する。
【0082】
ここで、爪部9の外面テーパ部23aのテーパ角度と内面テーパ部23bのテーパ角度とは略同一である。したがって、爪部9の肉厚は、略一定である。一方、爪部9と縮径部11との境界部近傍の内面には段差が形成され、爪部9の肉厚(図中A)は、縮径部11の肉厚(図中B)よりも厚い。このようにするとで、爪部9の剛性を確保しつつ、爪部9の基部側の縮径部11の変形が容易となる。
【0083】
なお、爪部9の断面形状は図8(a)に示す例には限られない。例えば、図8(b)に示すように、爪部9の外面テーパ部23aのテーパ角度と内面テーパ部23bのテーパ角度とが異なってもよい。すなわち、電線管用リング部材1の中心軸方向に対して、外面テーパ部23aの角度が、内面テーパ部23bのテーパ角度よりも大きい。この場合にも、爪部9の先端部の肉厚(図中A)を、縮径部11の肉厚(図中B)よりも厚くすることができる。
【0084】
次に、電線管用リング部材1を雄型嵌合部7のリング部材取り付け部へ取り付けて使用する使用方法について説明する。図9は、雄型嵌合部7と雌型嵌合部25との接続構造20を示す図である。雄型嵌合部7と雌型嵌合部25とを接続する方法は以下の通りである。まず、雄型嵌合部7と雌型嵌合部25とを対向させて配置し、雌型嵌合部25へ雄型嵌合部7の先端を挿入する。
【0085】
雌型嵌合部25は、管体の内周部に形成され、開口側から徐々に縮径するようなテーパ形状で内面に突出するリング部材嵌合部27を有する。雌型嵌合部25へ雄型嵌合部7を押し込むと、雌型嵌合部25のリング部材嵌合部27(テーパ面)に、リング部材移動部21に配置された電線管用リング部材1の外面テーパ部23aが接触する。さらに、雌型嵌合部25へ雄型嵌合部7を押し込むと、電線管用リング部材1がリング部材移動部21内でスライド移動しつつ、雌型嵌合部25のリング部材嵌合部27によって爪部9が押圧される。これにより、電線管用リング部材1の爪部9が縮径するように変形する。
【0086】
さらに雌型嵌合部25へ雄型嵌合部7を押し込むと、爪部9の端部がリング部材嵌合部27を通り抜ける。この際、弾性変形していた電線管用リング部材1は、リング部材嵌合部27からの押圧が解放され、元の径に復元して拡径する。この際、爪部9の先端部の外径が、リング部材嵌合部27の内径よりも大きくなる。これにより、爪部9が、雌型嵌合部25のリング部材嵌合部27に嵌合する。以上によって、接続構造20を得ることができる。
【0087】
接続構造20において、爪部9の先端が、雌型嵌合部25のリング部材嵌合部27と嵌合するため、雌型嵌合部25から雄型嵌合部7を引き抜こうとしても、電線管用リング部材1は、壁部13によって移動が規制され、雌型嵌合部25から雄型嵌合部7が引き抜かれることがない。
【0088】
なお、この状態において、止水部材3の外周面は、雌型嵌合部25の内面と密着する。すなわち、止水部材3で、雄型嵌合部7と雌型嵌合部25の隙間を埋めることができる。このため、接続構造20に、外部から水分が浸入することを防止することができる。
【0089】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、電線管用リング部材1を雄型嵌合部7の外周に配置するため、取り付けが容易であり、容易に取り付け状態を視認することができる。また、電線管用リング部材1には、その両端部に接続部17a、17bが形成されるため、接続部17a、17bの嵌合部19同士を嵌合することで、電線管用リング部材1を環状にすることができる。このため、電線管用リング部材1が雄型嵌合部7から外れることがない。
【0090】
また、接続部17a、17bの嵌合部19の嵌合長さを変えることで、電線管用リング部材1の周長を調整することができる。このため、雄型嵌合部7の寸法誤差や、複数のサイズの雄型嵌合部7にも適切に適用することができる。特に、製造時の寸法ばらつきが大きい大口径の雄型嵌合部7に適用する場合でも、電線管用リング部材1を安定して機能させることが可能となる。
【0091】
特に図示しないが、接続部17a、17bは、管軸方向の略中央に、周方向に沿ってスリットが形成され、接続部17a、17bの嵌合部19は、管軸方向に複数に分離される構造であっても良い。このように、接続部17a、17bのそれぞれの嵌合部19は一か所でなくてもよく複数箇所であってもよい。
【0092】
また、電線管用リング部材1がリング部材移動部21内でスライド移動可能であるため、雄型嵌合部7を雌型嵌合部25へ押し込む際には、電線管用リング部材1をリング部材移動部21でスライドさせつつ爪部9を変形させることができる。また、縮径部11の肉厚が爪部9に対して相対的に薄いため、爪部9を基部側から容易に変形させて、電線管用リング部材1を縮径することができる。このため、雄型嵌合部7と雌型嵌合部25の接続が容易である。
【0093】
また、爪部9の先端部の肉厚が縮径部11に対して相対的に厚いため、爪部9の剛性を高くすることができる。このため、爪部9の座屈を抑制することができ、雄型嵌合部7と雌型嵌合部25との接続状態から、雄型嵌合部7の抜けを確実に防止することができる。
【0094】
また、止水部材3が、電線管用リング部材1よりも基部側に配置されるため、雄型嵌合部7を雌型嵌合部25に挿入する際、止水部材3による挿入抵抗を受けにくくすることができる。また、仮に止水部材3に滑剤を塗布したとしても、滑剤が電線管用リング部材1に付着することがない。
【0095】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図10は、第2の実施形態にかかる電線管用リング部材1fを示す斜視図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一の機能を奏する構成については、図1図9と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0096】
電線管用リング部材1fは、電線管用リング部材1とほぼ同様に、爪部9が円周方向にスリット8を介して互いに離間して併設されているが、縮径部11に切れ込み39が形成される点で異なる。
【0097】
縮径部11の縁部(爪部9とは逆側の端部)には、円周方向に所定間隔で、所定個数の切れ込み39が形成される。切れ込み39は、爪部9同士の間の所定位置に設けられる。
【0098】
なお、図示した例では、爪部9同士の間に、一つおきに切れ込み39が形成されるがこれに限られない。切れ込み39の配置は、全ての爪部9同士の間に設けてもよく、または、爪部9同士の間に、二つおき以上の間隔で配置してもよい。
【0099】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、縮径部11の端部であって、爪部9同士の間の周方向位置に切れ込み39を形成することで、爪部9の変形が容易となる。このため、雌型嵌合部25に雄型嵌合部7を挿入する際の挿入抵抗を少なくすることができる。
【0100】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図11は、第3の実施形態にかかる電線管用リング部材1aを示す斜視図である。図11は、剥離紙を剥離して、粘着層が露出した状態を示す。
【0101】
電線管用リング部材1aは、電線管用リング部材1とほぼ同様の構成であるが、接続部17a、17bの態様が異なる。接続部17a、17bには、剥離紙を有する粘着層が形成される。
【0102】
このように、電線管用リング部材1aでは、接続部17aの嵌合部19は、
中心方向の外方に向けて、剥離紙を有する粘着層18が形成されており、接続部17bの嵌合部19は、中心方向の内方に向けて、剥離紙を有する粘着層18が形成される。それぞれの嵌合部19の剥離紙を剥がすことで、接続部17aと接続部17bを相互に対向させて嵌合させることが可能になり、電線管用リング部材1aを環状に形成することができる。
【0103】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、接続部17a、17bのそれぞれの嵌合部19は一か所でなくてもよく複数箇所であってもよい。
【0104】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図12は、第4の実施形態にかかる電線管用リング部材1bを示す斜視図である。電線管用リング部材1bは、電線管用リング部材1aとほぼ同様の構成であるが、接続部17a、17bの態様が異なる。
【0105】
前述と同様に、接続部17a、17bには、管軸方向の長さの略中央に、周方向に沿ってスリット81が形成され、接続部17a、17bの嵌合部19は、管軸方向に複数に分離される。図示した例では、接続部17a、17bの嵌合部19は、管軸方向に2つに分離され、スリットを介して、それぞれ相互に対向するように中心方向に対して反対方向を向いて形成される。ここで、スリット81を介して分離された相互に対向する嵌合部19を有する接続部17a、17bを相互に嵌合させるためには、接続部17a、17bのいずれかにスリット81を設ければ両者を嵌合させることが可能になるが、17a、17bの両者にスリット81を設けても良い。
【0106】
接続部17aの分離された一方の嵌合部19は、中心方向の外方に向けて形成され、他方の嵌合部は、中心方向の内方に向けて形成される。同様に、接続部17bの分離された一方の嵌合部19は、中心方向の内方に向けて形成され、他方の嵌合部は、中心方向の外方に向けて形成される。ここで、接続部17aと接続部17bのそれぞれの嵌合部19は、互いに対向する面に形成される。
【0107】
電線管用リング部材1bは、接続部17aの中心方向の内方に向けた嵌合部19と、接続部17bの中心方向の外方に向けた嵌合部19とが対向して嵌合し、接続部17aの中心方向の外方に向けた嵌合部19と、接続部17bの中心方向の内方に向けた嵌合部19とが対向して嵌合する。それぞれの嵌合部19を相互に対向させて嵌合させることで、電線管用リング部材1bを環状とすることができる。
【0108】
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、接続部17a、17bのそれぞれに互いに逆向きの嵌合部を設けて両者を嵌合させることで、電線管用リング部材1bの環状の状態を確実に維持し、嵌合部19の意図しない外れを抑制することができる。
【0109】
(第5の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図13は、第5の実施形態にかかる電線管用リング部材1cを示す斜視図である。電線管用リング部材1cは、電線管用リング部材1bとほぼ同様の構成であるが、スライドガイド29が設けられる点で異なる。
【0110】
スライドガイド29は、電線管用リング部材1cの爪部9が設けられない部分に形成される。すなわち、スライドガイド29は、電線管用リング部材1cの円周方向に所定の間隔で形成される。なお、図示した例では、爪部9とスライドガイド29が交互に配置される例を示すが、スライドガイド29は、爪部9に対して所定個数、所定間隔で形成されればよい。
【0111】
スライドガイド29は、縮径部11から他方の端部に向けて、管軸方向に平行に突出する。すなわち、スライドガイド29は、爪部9のように、縮径部11から他方の端部に行くにつれて拡径するように形成されるのではなく、電線管用リング部材1cの管軸方向に添って略平行に形成される。
【0112】
スライドガイド29は、所定形状に形成される。例えば、図示した例では、スライドガイド29が矩形状である。なお、スライドガイド29は、先端に行くにつれて幅が狭くなる台形であってもよい。すなわち、スライドガイド29の形状は矩形状、台形状の面状に形成されたものであってもよい。
【0113】
図14は、リング部材取り付け構造10aの側面図であり、図15は、図14のC−C線断面図である。リング部材取り付け構造10aは、電線管用リング部材1cが電線管5の雄型嵌合部7へ取り付けられた取付け構造である。
【0114】
前述したように、スライドガイド29は、縮径部11から他方の端部に向けて、管軸方向に平行に突出する。したがって、電線管用リング部材1cを雄型嵌合部7に装着すると、リング部材移動部21において、スライドガイド29が、縮径部11から管軸方向に平行に突出する。
【0115】
電線管用リング部材1cをリング部材移動部21に取付けると、電線管用リング部材1cはリング部材移動部21の両端に形成された壁部13間を移動することが可能となる。また、電線管用リング部材1cの移動が、スライドガイド29と壁部13により規制される。この際、スライドガイド29は、管軸方向に略平行に形成されるため、スライドガイド29の先端が、壁部13を乗り越えることがなく、確実に壁部13に突き当てることができる。
【0116】
第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、スライドガイド29が形成されているため、スライド時に電線管用リング部材1cが傾いたりせずに、電線管用リング部材1cを安定してスライド移動させることができる。また、爪部9の先端部が壁部13の高さ以上に拡径されていても、壁部13の高さを高くすることなく、スライドガイド29によって、確実に電線管用リング部材1cの移動範囲を規制することができるので、電線管用リング部材1cが壁部13を乗り越えることがないため、電線管用リング部材1cが電線管5から外れることがない。
【0117】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。図16は、第6の実施形態にかかる電線管用リング部材1dを示す斜視図である。電線管用リング部材1dは、電線管用リング部材1cとほぼ同様の構成であるが、スライドガイド29と爪部9の配置間隔や個数の設計的な相違の他には接続部17a、17bの形態が異なる。
【0118】
電線管用リング部材1dでは、接続部17aの嵌合部として、凸形状の係止突起16aが所定距離離間して円周方向に複数個形成される。凸形状の係止突起16aを、係止突起16aと対応する位置に、相互に所定距離離間して形成された接続部17bの係止スリット16bに係合させることで両者を嵌合させることができる。
【0119】
ここで、係止突起16aは、軸部材の凸部の先端が拡径する形状をしていて、この拡径部が、係止突起16aと係止スリット16bを嵌合させた時に、係止突起16aの軸部材が、係止スリット16bの周囲により支持される。両者を嵌合させる時には、係止突起16aと係止スリット16bを管軸方向に少し間隔を開けて対向させて位置合わせを行った後に、係止スリット16bに係止突起16a嵌め込むことで、電線管用リング部材1dの接続部を相互に接続することができる。
【0120】
係止スリット16bの、スリットの周囲はテーパ状に形成されていても良い。ここで、複数形成された係止突起16aと係止スリット16bの嵌合位置を相互にずらして嵌合することでリング部材の周方向の長さを調整することができる。
【0121】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。図17は、第7の実施形態にかかる電線管用リング部材1eを示す斜視図である。電線管用リング部材1eは、電線管用リング部材1cとほぼ同様の構成であるが、スライドガイド29の形態が異なる。
【0122】
電線管用リング部材1eのスライドガイド29は、形状が略コの字型に形成される。すなわち、スライドガイド29は、縮径部11側から先端部側に向けてスリット82が形成される。このため、スライドガイド29は、縮径部11側に開口し、先端側で周方向に連結する枠状の形状である。なお、略コの字型のように、縮径部11側からのスリット82が略矩形でなくてもよく、例えば、スライドガイド29は、U字型、V字型の枠状に形成されてもよい。
【0123】
図18は、リング部材取り付け構造10bの側面図であり、図19は、図18のD−D線断面図である。リング部材取り付け構造10bは、電線管用リング部材1eが電線管5の雄型嵌合部7へ取り付けられた取付け構造である。
【0124】
この場合でも、スライドガイド29は、縮径部11から他方の端部に向けて、管軸方向に平行に突出する。したがって、電線管用リング部材1dを雄型嵌合部7に装着すると直管状のリング部材移動部21において、スライドガイド29が、縮径部11から管軸方向に平行に突出する。したがって、電線管用リング部材1dの移動が、スライドガイド29と壁部13により規制される。
【0125】
第7の実施形態によれば、第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、スライドガイド29に、縮径部11側からスリット82が形成されることで、爪部9に押圧力が働いた時に、枠状のスライドガイド29が僅かに拡径する。その結果、爪部9とスライドガイド29の両者の基底部を含む縮径部11の周長が僅かに大きくなり、スライドガイド29の両側の爪部9の変形が容易となる。このため、爪部9を容易に変形させて、電線管用リング部材1dを縮径することができるため、雄型嵌合部7と雌型嵌合部25の接続が容易である。
【0126】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。図20は、第8の実施形態にかかるリング部材取り付け構造10cの断面図である。なお、リング部材取り付け構造10aでは、電線管用リング部材1eを取り付けた例を示すが、他の電線管用リング部材を取り付けてもよい。
【0127】
リング部材取り付け構造10cは、リング部材取り付け構造10bとほぼ同様の構造であるが、雄型嵌合部7のリング部材移動部21の形状が異なる。一対の壁部13で挟まれたリング部材移動部21は、電線管5の先端側から順に、大径部31、斜面部33、小径部35から構成される。すなわち、リング部材移動部21の電線管5(雄型嵌合部7)の先端側には大径部31が形成され、リング部材移動部21の電線管5(雄型嵌合部7)の基部側には小径部35が形成され、大径部31と小径部35との間に斜面部33が形成される。なお、大径部31の外径は、壁部13よりも小さく、小径部35よりも大きい。
【0128】
前述したように、電線管用リング部材1eは、リング部材移動部21の両端に形成された壁部13間を移動することが可能である。電線管用リング部材1eは、リング部材移動部21の大径部31に取付けられる。したがって、電線管用リング部材1eを雄型嵌合部7に装着すると、大径部31の外周において、スライドガイド29が、縮径部11から管軸方向に平行に突出する。このように、電線管用リング部材1eの側端部である縮径部11は、大径部31上に位置するように取付けられ、大径部31上をスライド移動することになる。
【0129】
リング部材取り付け構造10cを用いて、雌型嵌合部25と接続すると、前述したように、雌型嵌合部25へ雄型嵌合部7を押し込む際に、電線管用リング部材1eはリング部材移動部21内でスライド移動する。すなわち、電線管用リング部材1eが小径部35方向へ移動する。この際、電線管用リング部材1eの長さが、小径部35よりも長いため、縮径部11の少なくとも一部は、大径部31に位置する。
【0130】
さらに雌型嵌合部25へ雄型嵌合部7を押し込むと、雌型嵌合部25のリング部材嵌合部27によって爪部9が押圧される。これにより、電線管用リング部材1eの爪部9が縮径するように変形する。この際、電線管用リング部材1eの爪部9が小径部35に位置するようになるため、変形が容易となる。
【0131】
第8の実施形態によれば、第7の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、雄型嵌合部7に大径部31、斜面部33、小径部35を形成し、電線管用リング部材1eを大径部31に配置することで、電線管用リング部材1eのがたつきを防止することができる。また、電線管用リング部材1eを小径部35へ移動させて変形させることで、爪部9を容易に変形させて、電線管用リング部材1eを縮径することができるため、雄型嵌合部7と雌型嵌合部25の接続が容易である。
【0132】
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態について説明する。図21は、第9の実施形態にかかる電線管用リング部材1gを示す斜視図である。電線管用リング部材1gは、電線管用リング部材1eとほぼ同様の構成であるが、爪部9の形態が異なる。
【0133】
爪部9の外面側において、爪部9の外縁部の内側に、外縁部よりも厚みの薄い薄肉部37が形成される。すなわち、爪部9の爪面の外縁部の厚さに対して、外縁部の内部の厚さが薄く形成される。このように、爪部9の爪面の外縁部に対して外縁部の内部の厚さを、薄く形成することで、爪部9を容易に変形させることができる。なお、電線管用リング部材1gは、電線管用リング部材1eの爪部9に対して薄肉部37を形成したが、他の電線管用リング部材に適用することもできる。薄肉部37は、爪部9の外面側に形成しても、内面側に形成してもいずれでも良い。
【0134】
第9の実施形態によれば、第7の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、爪部9の外面側において、外縁部よりも厚みの薄い薄肉部37を形成することで、雌型嵌合部25に雄型嵌合部7を挿入する際の挿入抵抗を少なくすることができる。また、雌型嵌合部25と雄型嵌合部7とに引き抜き力がかかった場合にも、爪面の外縁部の厚さが内部より厚く形成されているので、爪部9が座屈することがない。
【0135】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0136】
例えば、各実施形態における各構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。したがって、技術的に組合せ可能な各実施形態の組合わせた内容を含むものする。例えば、本発明で開示したスライドガイドの各種構造や爪部の各種構造などを適宜組み合わせたり、これにさらに爪部の各種構造を組合わせることができる。
【符号の説明】
【0137】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g………電線管用リング部材
3………止水部材
5………電線管
7………雄型嵌合部
8、81、82………スリット
9………爪部
10、10a、10b、10c………リング部材取り付け構造
11………縮径部
13………壁部
15………周方向端部
16a………係止突起
16b………係止スリット
17a、17b………接続部
18………粘着層
19、19a………嵌合部
20………接続構造
21………リング部材移動部
22………鋸刃状溝
23a………外面テーパ部
23b………内面テーパ部
24………刃
24a………嵌合面
24b………斜面
25………雌型嵌合部
27………リング部材嵌合部
29………スライドガイド
31………大径部
33………斜面部
35………小径部
37………薄肉部
39………切れ込み
【要約】
電線管用リング部材1は、管軸方向断面において、爪部9の先端から縮径部11に向かって縮径するテーパ部または斜面部を有する。電線管用リング部材1の他方の端部側に向けて、複数の爪部9が設けられる。電線管用リング部材1は、略C字状であり、両側の周方向端部15に、一端側の接続部17aと他端側の接続部17bが形成される。一端側の接続部17aと他端側の接続部17bは相互に対向し、それぞれの接続部17a、17bの対向面には、相互に長さ調整可能な対向する嵌合部19が形成される。また、縮径部の円周上には、複数の爪部9の間に、所定間隔で縮径部11から管軸方向に平行に突出するスライドガイド29を形成することができるので、電線管の雄側嵌合部上をスライド移動させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21