特許第6373601号(P6373601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373601アカバネウイルスに対して中和活性を有する抗体を誘導するペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373601
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】アカバネウイルスに対して中和活性を有する抗体を誘導するペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/40 20060101AFI20180806BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20180806BHJP
   C07K 14/175 20060101ALI20180806BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20180806BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C12N15/40
   A61K39/00 H
   A61K39/12
   A61K48/00
   A61P31/14
   A61P37/04
   C07K14/175ZNA
   C07K19/00
   C12N15/62 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-32120(P2014-32120)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-156814(P2015-156814A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年11月2日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、農林水産省、「優れたワクチン開発のための技術開発委託事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】下地 善弘
(72)【発明者】
【氏名】江口 正浩
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 H.Akashi et al.,Virus Research,1997年,Vol.47,pp.187-196
【文献】 Kazuo Yoshida and Tomoyuki Tsuda,CLINICAL AND DIAGNOSTIC LABORATORY IMMUNOLOGY,1998年 3月,Vol.5, No.2,pp.192-198
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
A61K 39/00
A61K 39/12
A61K 48/00
A61P 31/14
A61P 37/04
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2で示されるアカバネウイルスGc糖蛋白質における下記(a)〜(c)のいずれかのペプチドと(d)〜(f)のいずれかのペプチドの融合ペプチド
(a)1〜97位を含む300アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(b)1〜97位を含む200アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(c)1〜97位を含む150アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(d)189〜397位を含む400アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(e)189〜397位を含む300アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(f)189〜397位を含む250アミノ酸以内の領域からなるペプチド
【請求項2】
請求項1に記載の融合ペプチドをコードするDNA。
【請求項3】
請求項1に記載の融合ペプチドまたは請求項2に記載のDNAを有効成分とする、アカバネウイルスワクチン。
【請求項4】
請求項3に記載のワクチンを非ヒト動物に投与することを含む、アカバネウイルス感染から非ヒト動物を防御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アカバネウイルスに対して中和活性を有する抗体を誘導するGc糖蛋白質の部分ペプチド、当該ペプチドを有効成分とするワクチン、および当該ワクチンを動物に投与することを含む、アカバネウイルス感染から動物を防御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アカバネ病はウシヌカカなどの吸血性節足動物が媒介するアカバネウイルスの感染により発症するウシ、ヒツジ、ヤギなどの反芻動物における異常産を主徴とする感染症である。近年、本病を発症する地域が拡大する傾向にあり、広い地域においてワクチン接種の必要性が生じている。
【0003】
現在、アカバネ病を防御するために、弱毒生ワクチンおよび不活化ワクチンが市販されている。また、異常産を引き起こす他の病原体に対するワクチンと混合した3種混合の不活性化ワクチンも市販されている。
【0004】
弱毒生ワクチンは、病原体ウイルスを薬剤などを添加して長期継代したり、異種動物または培養細胞で継代したりして病原性を弱毒化させて製造する。このため一般的に開発期間が長く、弱毒株の病原性復帰という問題がある。不活化ワクチンは、ホルマリンなどの薬剤を使用して病原体ウイルスを不活化させて製造する。不活化ワクチンは短期間で開発できるという利点があるが、大量の抗原および複数回の接種が必要であり、副反応の問題もある。また、これらウイルスを使用したワクチン製造においては、ほ乳類培養細胞やウシ胎仔血清などを利用しており、迷入ウイルスや内在性ウイルスがワクチン製品に混入する懸念もある。
【0005】
一方、サブユニットワクチンは、感染防御に有効な成分(感染防御抗原)が判明している場合において、その感染防御抗原のみを有効成分とするワクチンである。このワクチンは、ウイルス成分から感染防御抗原だけを抽出、精製することにより、また、大腸菌や昆虫細胞などに感染防御抗原を組換え蛋白質として発現させることにより製造される。サブユニットワクチンは、ウイルスそのものをワクチンとするものではないため安全性が高く、感染防御抗原を組換え蛋白質として製造する場合には安価で大量に製造することが可能であるという利点がある。
【0006】
ところで、アカバネウイルスのGc糖蛋白質は、M RNA分節のコードするポリプロテインの一部で、アカバネウイルスのエンベロープの構成成分である。Gc糖蛋白質に対するモノクローナル抗体が複数製造され、アカバネウイルスに対して中和活性を示すものも見出されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Akashi H. et al. 1997 Virus Res. 47;187-196
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の知見に基づき、Gc糖蛋白質をアカバネウイルスに対する感染防御抗原として利用することが考えられる。しかしながら、本発明者らによる実験の結果、Gc糖蛋白質の全長蛋白質を大腸菌で発現させることはできなかった。そこで、本発明は、Gc糖蛋白質のうち、アカバネウイルスの中和に有効な領域を同定し、当該領域の部分ペプチドをワクチンとして利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アカバネウイルスのGc糖蛋白質において、他のペプチド領域と比較して、当該ウイルスに対して顕著に高い中和活性を有する抗体を誘導できるペプチド領域を同定した。そして、それら領域の中でも、特に、Gc糖蛋白質における1〜97位と189〜397位の2つの領域が、この中和活性の誘導において中心的な役割を果たしていることが判明した。さらに、同定した2つの領域を融合したペプチドも高い中和活性を有する抗体を誘導できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、アカバネウイルスのGc糖蛋白質において優れた中和抗体を誘導し得る領域からなるペプチド、およびそのワクチンとしての用途に関し、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
【0011】
[1] アカバネウイルスGc糖蛋白質における下記(a)から(g)のいずれかに記載のペプチド。
(a)1〜97位を含む300アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(b)1〜97位を含む200アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(c)1〜97位を含む150アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(d)189〜397位を含む400アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(e)189〜397位を含む300アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(f)189〜397位を含む250アミノ酸以内の領域からなるペプチド
(g)(a)〜(c)のいずれかのペプチドと(d)〜(f)のいずれかのペプチドの融合ペプチド
[2] [1]に記載のペプチドをコードするDNA。
【0012】
[3] [1]に記載のペプチドまたは[2]に記載のDNAを有効成分とする、アカバネウイルスワクチン。
【0013】
[4] [3]に記載のワクチンを動物に投与することを含む、アカバネウイルス感染から動物を防御する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アカバネウイルスに対し優れた中和活性を有する抗体を誘導でき、かつ、安全性の高いワクチンを安価で提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】各組換えペプチドの作製に利用したアカバネウイルスGc糖蛋白質の領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、アカバネウイルスに対して優れた中和抗体を誘導し得る、アカバネウイルスGc糖蛋白質の部分ペプチドを提供する。アカバネウイルスにおける、典型的な、Gc糖蛋白質遺伝子の塩基配列(GenBankアクセッション番号:AB100604)を配列番号:1に、Gc糖蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。アカバネウイルスの株によっては、多少の塩基配列やアミノ酸配列の相違が生じうることを理解されたい。
【0017】
本発明において、アカバネウイルスGc糖蛋白質における1〜299位の領域からなるペプチド(特に、その1〜97位の領域)と189〜555位の領域(特に、その189〜397位の領域)からなるペプチドが、他の領域からなるペプチドと比較して、アカバネウイルスに対して顕著に高い中和活性を有する抗体を誘導することが見出された。1〜299位の領域からなるペプチドおよび189〜555位の領域からなるペプチドから得られた抗血清の中和抗体価はともに27(128)倍であり、519〜899位の領域からなるペプチドから得られた抗血清の中和抗体価の23(8)倍と比較して飛躍的に高かった。これら1〜299位および189〜555位の領域の中では、1〜97位の領域のペプチドおよび189〜397位の領域のペプチドに対応する中和抗体価が26(64)倍であり、他の領域のペプチドに対応する中和抗体価(22(4)倍〜24(16)倍)と比較して顕著に高かったことから、1〜97位の領域および189〜397位の領域が、この中和活性の誘導において中心的な役割を果たしていると考えられる。
【0018】
従って、本発明の部分ペプチドの一つの態様は、1〜97位を含む300アミノ酸以内の領域からなるペプチドであり、より好ましくは1〜97位を含む250アミノ酸以内の領域からなるペプチドであり、より好ましくは1〜97位を含む200アミノ酸以内の領域からなるペプチドであり、より好ましくは1〜97位を含む150アミノ酸以内の領域(例えば、140アミノ酸以内の領域、130アミノ酸以内の領域、120アミノ酸以内の領域、110アミノ酸以内の領域、または100アミノ酸以内の領域)からなるペプチドである。
【0019】
本発明の部分ペプチドの他の一つの態様は、189〜397位を含む400アミノ酸以内の領域からなるペプチドであり、より好ましくは189〜397位を含む350アミノ酸以内の領域からなるペプチドであり、より好ましくは189〜397位を含む300アミノ酸以内の領域からなるペプチドであり、より好ましくは189〜397位を含む250アミノ酸以内の領域(例えば、240アミノ酸以内の領域、230アミノ酸以内の領域、220アミノ酸以内の領域、210アミノ酸以内の領域)からなるペプチドである。
【0020】
また、本発明において、アカバネウイルスGc糖蛋白質において高い中和抗体価を示す抗体を誘導した上記2つの領域を融合させたペプチドも高い中和活性を示す抗体を誘導できることが見出された。従って、本発明は、上記2つの領域の融合ペプチドをも提供するものである。
【0021】
ペプチドの調製手順は当業者に周知である。本発明の部分ペプチドは、例えば、後述の本発明の部分ペプチドをコードするDNAを適当なベクターに挿入し、当該ベクターを大腸菌や昆虫細胞などの宿主細胞に導入し、当該宿主細胞を培養することにより、当該宿主細胞において産生することができる。そして、当技術分野の標準的な技術を用いて発現させたペプチドを精製することができる。本発明の部分ペプチドは、固相合成法を用いて合成することもできる。
【0022】
本発明は、また、上記本発明の部分ペプチドをコードするDNAを提供する。本発明のDNAとしては、その形態に特に制限はなく、cDNAの他、ゲノムDNA、および化学合成DNAが含まれる。これらDNAの調製手順は当業者に周知である。本発明のDNAは、例えば、本実施例に記載のように、Gc糖蛋白質遺伝子における本発明の部分ペプチドのコード領域を特異的に増幅しうるプライマー(例えば、表1に記載のプライマー)を作成し、当該プライマーを利用したPCRを行うことによって調製することが可能である。本発明のDNAは、後述のDNAワクチンとして使用する場合には、動物体内での発現を保証するべクター(例えば、プラスミドベクターなど)に挿入された形態であってもよい。
【0023】
本発明は、また、上記本発明の部分ペプチドまたは上記本発明のDNAを有効成分とするワクチン、並びに当該ワクチンを動物に投与することを含む、アカバネウイルス感染から動物を防御する方法を提供する。
【0024】
本発明のワクチンは、本発明の部分ペプチドまたは本発明のDNAを唯一の構成要素としてもよく、また他の成分を含んでもよい。例えば、有効成分を、生体への投与に適する生理的食塩水などの溶液中に調製し、免疫応答を増幅するために当分野において公知の分子(例えば、アジュバント、サイトカインなど)を添加して、本発明のワクチンを調製してもよい。また、本発明のワクチンは、他の病気(例えば、チュウザン病、アイノウイルス感染症など)の防御を目的とするワクチンとの混合ワクチンであってもよい。
【0025】
本発明のワクチンは、投与された宿主動物中で所望の免疫応答を引き起こすことができる限り、その投与方法や剤型に特に制限はない。投与方法は、一般的には、筋肉内注射、皮内注射などによる非経口的投与であり、剤型は、一般的には、注射可能な形態、例えば、溶液または懸濁液である。
【0026】
本発明のワクチンの投与量および投与態様は、対象動物の種類、ワクチンの剤型、アジュバントなどの成分の有無や種類などに応じて変動し得るが、当業者であれば適宜決定することができよう。
【0027】
本発明のワクチンの投与対象となる動物は、アカバネウイルスに感染する動物であれば特に制限はないが、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギなどの反芻動物が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
[実施例1] アカバネウイルスのGc糖蛋白質の様々な領域の組換えペプチドの作製
大腸菌を用いてアカバネウイルスのGc糖蛋白質の様々な領域の組換えペプチドを作製した。アカバネウイルスOBE-1株のGc糖蛋白質遺伝子の各領域をプライマー(表1)を用いて、ウイルスのゲノムRNAから逆転写したcDNAを鋳型として増幅した。
【0030】
【表1】
【0031】
なお、表中のプライマー配列における下線部は制限酵素認識配列を示し、大文字は、Gc糖蛋白質遺伝子の配列を示す。
【0032】
増幅産物をプライマーに含まれる制限酵素認識配列で消化し、pCold-TFベクター(タカラバイオ株式会社)にライゲーション後、大腸菌JM109株に形質転換した。Gc1-299、Gc298-397、Gc298-555およびGc519-889は、増幅した配列内に存在するHindIII認識配列を利用してクローニングを行った。ライゲーションとクローニングは公知の手法に基づいて行った。アミノ末端側に6個のヒスチジン配列のタグを含むTF(トリガーファクター)融合蛋白質として発現させ、ニッケルレジン(Ni-NTA、キアゲン社)を用いて使用方法に従いアフィニティー精製した。
【0033】
各断片のGc糖蛋白質をコードする遺伝子上の位置や塩基数、Gc糖蛋白質上の位置、アミノ酸残基数および推定分子量は表2に示す。図1にこれらの組換え蛋白質の位置関係を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
[実施例2] 各組換えペプチドに対する抗体のアカバネウイルスOBE-1株に対する中和活性
精製した組換えペプチド(100μg)をフロイントコンプリートアジュバントと等量混合し、5週齢メスのBALB/cマウスの皮下に免疫した。2および4週間後フロイントインコンプリートアジュバントと等量混合した抗原を用いて追加免疫を行った。融合蛋白質であるTFを抗原としたELISAで組換え蛋白質に対する抗体が産生されていることを確認後、アカバネウイルスOBE-1株に対する中和試験を行った。
【0036】
具体的には、96穴マイクロプレートを用いてダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で2倍階段希釈したマウス血清と、100 TCID50(50%組織培養感染量)に調整したアカバネウイルスOBE-1株を等量混合し、37度で1時間感作後、2%牛胎児血清添加DMEMに再浮遊させたハムスター肺由来株化細胞(HmLu-1)を添加し、37度5%CO2存在下で7日間培養した。細胞変性効果を抑制した最高希釈倍率を中和抗体価とした。
【0037】
はじめに、Gc糖蛋白質から膜貫通領域を除いた領域を3分割したGc1-299、Gc189-555、Gc519-889および陰性対象としてTFをマウスに免疫した。得られた抗血清のそれぞれの中和抗体価は、Gc1-299およびGc189-555で27(128)倍、Gc519-889は23(8)倍であり、TFのみでは、23(8)倍であった。この結果から中和活性を有する抗体を誘導する領域は前半の3分の2の領域(1から555アミノ酸残基目)に含まれることが示唆された。
【0038】
次に、中和活性を有する抗体を誘導する領域を絞り込むため、この領域を5つの断片に分割したGc1-97、Gc92-194、Gc189-318、Gc298-397およびGc392-555をマウスに免疫した。得られた抗血清のそれぞれの中和抗体価は、Gc1-97では、26(64)倍、Gc92-194では、23(8)倍、Gc189-318、では、23(8)倍、Gc298-397、では、24(16)倍、Gc392-555をでは22(4)倍であった。これにより、1-299番目の領域では、1-97番目の領域に活性領域が含まれることが示唆されたが、189-555番目の領域ではどの領域が活性領域であるか同定することはできなかった。
【0039】
そこで、189-555番目の領域を2断片に分割したGc189-397およびGc298-555についてさらに解析した。得られた抗血清のそれぞれの中和抗体価は、Gc189-397では26(64)倍、Gc298-555では24(16)倍であった。このことから、189-555の領域では189-397番目の領域に中和活性を有する抗体を誘導する領域が含まれることが示唆された。
【0040】
また、中和活性を有する抗体を誘導した2つの領域(1〜97位および189〜397位の領域)を結合させた組換えペプチドを作製した。表1のGc-1F_SacIおよびFusion-R、Fusion-FおよびGc-1191R_PstIのプライマーセットで増幅した断片をオーバーラップ伸長反応により融合遺伝子を作製し、同様にpCold-TFベクターにクローニングし、組換えペプチドを発現・精製した。この融合ペプチドを同様にマウスに免疫した。得られた抗血清の中和抗体価は、26(64)倍であった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明のペプチドは、アカバネウイルスに対して優れた中和活性を有する抗体を誘導することができる。当該ペプチドをワクチンとして利用すれば、アカバネウイルス感染からウシ、ヒツジなどの動物を効果的に防御することが可能である。このため本発明は、動物医薬品として、特に畜産分野において大きく貢献しうるものである。
【配列表フリーテキスト】
【0042】
配列番号3〜15
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]