特許第6373649号(P6373649)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373649
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】位置計測装置及び位置計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   G01B21/00 E
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-118807(P2014-118807)
(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-232458(P2015-232458A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信策
【審査官】 三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−228215(JP,A)
【文献】 特開2013−153867(JP,A)
【文献】 特開平07−241790(JP,A)
【文献】 特開2002−296025(JP,A)
【文献】 特表2010−511860(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0249634(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00−21/32
G01B 5/00− 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の座標系における位置の検出箇所を指定する測定ヘッドと、
前記測定ヘッドにより指定された前記検出箇所の前記座標系での座標を取得する座標取得部と、
前記測定ヘッドの方向を検出する方向検出部と、
前記座標取得部で取得した座標に基づき処理を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記座標取得部で取得した座標に基づき対象物の位置を測定する処理を実行する位置測定処理部と、
前記方向検出部で検出した前記測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行するコマンド処理部と、
を備えたことを特徴とする位置計測装置。
【請求項2】
前記座標系での第1領域を記憶する領域記憶部をさらに備え、
前記位置測定処理部は、前記座標取得部で取得した座標が前記第1領域内である場合、前記対象物の位置を測定する処理を実行し、
前記コマンド処理部は、前記座標取得部で取得した座標が前記第1領域内ではない場合、前記方向検出部で検出した前記測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行することを特徴とする請求項1記載の位置計測装置。
【請求項3】
前記測定ヘッドと使用者との距離を測定する距離センサをさらに備え、
前記コマンド処理部は、前記座標取得部で取得した座標が前記第1領域内でない場合であって、前記距離センサによって測定した距離が所定の範囲内である場合に、前記コマンドを受け付けて実行することを特徴とする請求項2に記載の位置計測装置。
【請求項4】
前記コマンド処理部は、使用者によって入力手段が選択された際の前記測定ヘッドの方向に対応付けされた前記コマンドを受け付けて実行することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の位置計測装置。
【請求項5】
前記入力手段は、前記位置測定処理部による位置の測定を実行するために用いられることを特徴とする請求項4記載の位置計測装置。
【請求項6】
所定の座標系における位置の検出箇所を測定ヘッドで指定する工程と、
前記測定ヘッドにより指定された前記検出箇所の前記座標系での座標を座標取得部で取得する工程と、
前記座標取得部で取得した座標が前記座標系での第1領域内である場合、対象物の位置を測定する処理を実行し、前記座標取得部で取得した座標が前記第1領域内ではない場合、前記測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行する工程と、
を備えたことを特徴とする位置計測方法。
【請求項7】
前記コマンドを受け付けて実行する工程では、前記座標取得部で取得した座標が前記第1領域内でない場合であって、前記測定ヘッドと使用者との距離が所定の範囲内である場合に、前記コマンドを受け付けて実行することを特徴とする請求項6記載の位置計測方法。
【請求項8】
前記コマンドを受け付けて実行する工程では、使用者によって入力手段が選択された際の前記測定ヘッドの方向に対応付けされた前記コマンドを受け付けて実行することを特徴とする請求項6または7に記載の位置計測方法。
【請求項9】
前記コマンドを受け付けて実行する工程では、前記測定ヘッドの位置が一定時間静止していた際に前記測定ヘッドの方向に対応付けされた前記コマンドを受け付けて実行することを特徴とする請求項6または7に記載の位置計測方法。
【請求項10】
前記コマンドを受け付けて実行する工程では、一定時間内に前記測定ヘッドの方向の選択を複数回受け付け、各回で選択された方向の組み合わせに対応付けされた前記コマンドを受け付けて実行することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つに記載の位置計測方法。
【請求項11】
所定の座標系における位置の検出箇所を測定ヘッドで指定し、前記検出箇所の前記座標系での座標を対象物の位置として計測する位置計測方法であって、
使用者によって入力手段が選択された場合、前記測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行する工程を備えたことを特徴とする位置計測方法。
【請求項12】
前記コマンドを受け付けて実行する工程では、使用者によって前記入力手段が選択された場合であって、前記測定ヘッドと前記使用者との距離が所定の範囲内である場合に、前記コマンドを受け付けて実行することを特徴とする請求項11記載の位置計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出箇所を測定ヘッドで指定して対象物の位置を測定する位置計測装置及び位置計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元測定システムなどで用いられる測定ヘッドにはプローブが設けられており、このプローブの先端を測定対象物に接触等させることで測定箇所を指定して位置の測定を行っている。このような三次元測定システムにはコンピュータが接続される。このコンピュータで実行されるアプリケーションソフトウェアによって測定箇所の登録や測定結果の集計などの各種の処理が行われる。
【0003】
通常、コンピュータに対する指示はマウスやキーボードといった入力デバイスを用いて行われる。特許文献1においては、測定ヘッドにトラックボールを設けておき、使用者がこのトラックボールを回すことでコンピュータの画面上のカーソルを動かすことができるようになっている。また、特許文献2においては、測定ヘッドが設けられた多関節アームの動作を加速度センサで検出し、閾値以上の加速度で多関節アームを動作させた場合に、測定ヘッドによってコンピュータに対する指示を行うよう切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−511860号公報
【特許文献2】特開2013−228215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、測定ヘッドにトラックボールを組み込む必要があり、測定ヘッドの部品点数の増加やコストアップを招く原因になる。さらに、使用者は操作する度に測定箇所から視線を外してコンピュータの画面を参照する必要があるため、作業効率の低下を招く。特に、コンピュータの画面が小さかったり、画面が測定対象物の陰になっていたりすると操作するのが困難になる。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術においては、多関節アームの加速度を検出する加速度センサを組み込む必要があり、特許文献1と同様に部品転送の増加やコストアップの原因になる。また、加速度が閾値以上である場合にコンピュータに対する指示を行うように切り替えるため、多関節アームの動作と使用者の感覚とが合致しない場合も生じる。例えば、使用者が測定中に多関節アームを動かした際に、閾値以上の加速度が自然に出てしまった場合、使用者の意思に反してモードの切り替えが行われてしまう。反対に、使用者がモードの切り替えを行おうとして多関節アームを移動させても、閾値以上の加速度に達していないとモードの切り替えが行われないことになる。
【0007】
本発明の目的は、測定ヘッドを用いて位置計測処理とコマンド処理とを的確に切り替えて所望の処理を実行することができる位置計測装置及び位置計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位置計測装置は、所定の座標系における位置の検出箇所を指定する測定ヘッドと、測定ヘッドにより指定された検出箇所の前記座標系での座標を取得する座標取得部と、測定ヘッドの方向を検出する方向検出部と、座標取得部で取得した座標に基づき処理を実行する制御部と、を備える。制御部は、座標取得部で取得した座標に基づき対象物の位置を測定する処理を実行する位置測定処理部と、方向検出部で検出した測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行するコマンド処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、測定ヘッドにより対象物の位置の測定と、コマンド処理とを実行することができる。このため、使用者は、測定ヘッドによって位置の測定とコマンドの送信処理とを的確に切り替えることができる。また、コマンド処理では、測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを処理するため、使用者は視線を外すことなく測定ヘッドの方向によって所望のコマンドを選択できる。
【0010】
本発明の位置計測装置において、座標系での第1領域を記憶する領域記憶部をさらに備えていてもよい。そして、位置測定処理部は、座標取得部で取得した座標が第1領域内である場合、対象物の位置を測定する処理を実行し、コマンド処理部は、座標取得部で取得した座標が第1領域内ではない場合、方向検出部で検出した測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行するようにしてもよい。
【0011】
このような構成によれば、測定ヘッドにより指定された検出箇所の位置が、予め設定された第1領域内である場合に測定を行い、第1領域内にない場合にコマンドの処理を実行する。このため、使用者は、測定ヘッドにより指定する位置に応じて測定とコマンド処理とを的確に切り替えることができる。
【0012】
本発明の位置計測装置において、測定ヘッドと使用者との距離を測定する距離センサをさらに備えていてもよい。この場合、コマンド処理部は、座標取得部で取得した座標が第1領域内でない場合であって、距離センサによって測定した距離が所定の範囲内である場合に、コマンドを受け付けて実行する。このような構成によれば、測定ヘッドにより指定した座標が第1領域内になく、さらに測定ヘッドが使用者と近い場合にコマンドを受け付けて実行することができる。これにより、例えば測定ヘッドを胸の前に持ってこなければコマンド送信モードにならず、誤ってコマンドの送信をしてしまうことを防止することができる。
【0013】
本発明の位置計測装置において、コマンド処理部は、使用者によって入力手段が選択された際の測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行するようにしてもよい。このような構成によれば、使用者が入力手段を選択した場合にコマンドを受け付けて実行することができる。
【0014】
本発明の位置計測装置において、前記入力手段は、位置測定処理部による位置の測定を実行するために用いられてもよい。このような構成によれば、位置の測定と、コマンドの受け付けとを同じ入力手段で行うことができる。
【0015】
本発明の位置計測方法は、所定の座標系における位置の検出箇所を測定ヘッドで指定する工程と、測定ヘッドにより指定された検出箇所の前記座標系での座標を座標取得部で取得する工程と、座標取得部で取得した座標が前記座標系での第1領域内である場合、対象物の位置を測定する処理を実行し、座標取得部で取得した座標が第1領域内ではない場合、測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行する工程と、を備えたことを特徴とする位置計測方法である。
【0016】
このような構成によれば、測定ヘッドにより指定された検出箇所の位置が、予め設定された第1領域内である場合に測定を行い、第1領域内ではない場合にコマンドの処理を実行する。このため、測定ヘッドにより指定する位置に応じて測定とコマンド処理との的確な切り替えが行われる。また、測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを処理するため、使用者は視線を外すことなく測定ヘッドの方向によって所望のコマンドを選択できる。
【0017】
本発明の位置計測方法において、コマンドを受け付けて実行する工程では、座標取得部で取得した座標が第1領域内でない場合であって、距離センサによって測定した距離が所定の範囲内である場合に、コマンドを受け付けて実行してもよい。このような構成によれば、測定ヘッドにより指定した座標が第1領域内になく、さらに測定ヘッドが使用者と近い場合にコマンドを受け付けて実行することができる。
【0018】
本発明の位置計測方法において、コマンドを受け付けて実行する工程では、使用者によって入力手段が選択された際の測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行してもよい。このような構成によれば、測定ヘッドにより指定した座標が第1領域内になく、さらに使用者が入力手段を選択した場合にコマンドを受け付けて実行することができる。
【0019】
本発明の位置計測方法において、コマンドを受け付けて実行する工程では、測定ヘッドの位置が一定時間静止していた際に測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行してもよい。このような構成によれば、測定ヘッドにより指定した座標が第1領域内になく、さらに測定ヘッドが一定時間静止していた場合にコマンドを受け付けて実行することができる。
【0020】
本発明の位置計測方法において、コマンドを受け付けて実行する工程では、一定時間内に測定ヘッドの方向の選択を複数回受け付け、各回で選択された方向の組み合わせに対応付けされたコマンドを受け付けて実行してもよい。このような構成によれば、複数回選択した測定ヘッドの方向の組み合わせに対応付けされたコマンドを処理することができる。
【0021】
本発明の位置測定方法は、所定の座標系における位置の検出箇所を測定ヘッドで指定し、検出箇所の前記座標系での座標を対象物の位置として計測する位置計測方法であって、使用者によって入力手段が選択された場合、測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行する工程を備えたことを特徴とする位置計測方法である。
【0022】
このような構成によれば、使用者によって入力手段が選択された場合、測定ヘッドによる対象物の位置を計測する処理から、コマンドを送信する処理に切り替わる。このため、入力手段の選択に応じて測定とコマンド処理との切り替えが行われる。また、測定ヘッドの方向に対応付けされたコマンドを処理するため、使用者は視線を外すことなく測定ヘッドの方向によって所望のコマンドを選択できる。
【0023】
本発明の位置計測方法において、コマンドを受け付けて実行する工程では、使用者によって前記入力手段が選択された場合であって、距離センサによって測定した距離が所定の範囲内である場合に、コマンドを受け付けて実行してもよい。このような構成によれば、使用者によって入力手段が選択された場合であって、さらに測定ヘッドが使用者と近い場合にコマンドを受け付けて実行することができる。これにより、例えば測定ヘッドを胸の前に持ってこなければコマンド送信モードにならず、誤ってコマンドの送信をしてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る位置計測装置の構成を例示する模式図である。
図2】第1実施形態に係る位置計測装置のブロック構成図である。
図3】第1の位置計測方法を例示するフローチャートである。
図4】第2の位置計測方法を例示するフローチャートである。
図5】(a)及び(b)は、位置計測方法の具体例を示す模式図である。
図6】使用者の正面からみた測定ヘッドの方向を例示する模式図である。
図7】使用者の横からみた測定ヘッドの方向を例示する模式図である。
図8】使用者の上からみた測定ヘッドの方向を例示する模式図である。
図9】第2実施形態に係る位置測定装置のブロック構成図である。
図10】位置計測方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る位置計測装置の構成を例示する模式図である。
本実施形態に係る位置計測装置1は、アーム型の三次元測定装置である。位置計測装置1は、多関節アーム15の先端に取り付けられた測定ヘッド10と、所定の座標系での座標を取得する座標取得部20と、測定ヘッド10の方向を検出する方向検出部25と、第1領域R1を記憶する領域記憶部30と、各種の処理を実行する制御部40と、を備える。
【0027】
測定ヘッド10の先端には棒状の測定プローブ11が設けられる。測定プローブ11の先端には球状の測定子11aが設けられる。この測定子11aを対象物OBの検出箇所に接触させることで、接触点の座標を求めることができる。
【0028】
また、測定ヘッド10にはハンドル12が設けられる。ハンドル12は使用者USが測定ヘッド10を持つ際の握り部分である。ハンドル12にはボタン12aが設けられる。使用者USは、ボタン12aを押下することで、そのときの測定子11aの座標を得たり、各種処理の開始を指示することができる。
【0029】
ここで、測定ヘッド10には、接触式と非接触式とがある。そのうち、接触式の測定ヘッド10としては、測定プローブ11の測定子11aが物体に接触した際に位置信号を取得するタッチトリガープローブと、測定子11aを物体に接触させた状態でボタン12aを押下することにより位置信号を取得するハードプローブとが挙げられる。また、非接触式の測定ヘッド10としては、レーザプローブが挙げられる。レーザプローブでは、棒状の測定プローブ11の代わりに、レーザ光源及び受光素子が設けられる。レーザプローブの場合、例えばボタン12aを押下することでレーザ光源から対象物OBにレーザ光が照射され、その反射光を受光素子で光電変換して位置信号を得る。本実施形態で適用される測定ヘッド10は、ボタン12aを押下することで位置信号を取得するハードプローブまたはレーザプローブである。
【0030】
多関節アーム15は、例えば定盤100の上に設置される。多関節アーム15は、測定ヘッド10を支持するとともに、ハンドル12を持った使用者USの動きに応じて測定ヘッド10を様々の位置、方向に移動できるよう構成される。多関節アーム15は、例えば6軸を中心に回転動作可能になっている。多関節アーム15には各軸に対する角度センサ151が設けられている。ハンドル12を持った使用者USが測定ヘッド10を移動させることで、各軸に対する角度センサ151から各軸に対する角度が出力される。
【0031】
座標取得部20は、角度センサ151から出力される角度の値などに基づき、測定ヘッド10により指定された検出箇所の座標を演算して出力する。本実施形態では、X,Y,Zの三次元座標系による座標を演算する。具体的には、測定ヘッド10の測定子11aが対象物OBの検出箇所に接触した際に角度センサ151から出力される角度やアームの長さ等を用いて測定子11aの接触点のX,Y,Zの座標を演算する。
【0032】
方向検出部25は、測定ヘッド10の方向を検出する部分である。測定ヘッド10の方向とは、測定ヘッド10の先端が向く方向であり、例えば、測定プローブ11の根元から先端に向かう方向のことを言う。方向検出部25は、角度センサ151から出力される角度の値などに基づき、測定ヘッド10の先端が向く方向を演算して出力する。
【0033】
領域記憶部30は、X,Y,Z座標系での第1領域R1を記憶する部分である。領域記憶部30は、例えばコンピュータPCの記憶領域に設けられる。第1領域R1は、対象物OBの位置を測定するための領域である。
【0034】
第1領域R1は、測定ヘッド10を用いて設定することができる。例えば、第1領域R1を構成する複数のポイントW1〜W4の位置を測定ヘッド10で指定する。これにより、複数のポイントW1〜W4によって構成される領域を第1領域R1として登録する。
【0035】
例えば、第1領域R1が直方体領域である場合、定盤100上の3つのポイントW1〜W3と、高さ方向(Z軸方向)を決めるポイントW4とを指定することで、直方体領域の第1領域R1が設定される。なお、領域は直方体に限らず、円柱などの他の形状であってもよい。それぞれの形状を規定するためのポイントを指定することで、第1領域R1が設定される。
【0036】
制御部40は、座標取得部20で取得した座標及び方向検出部25で検出した方向に基づき各種の処理を実行する。座標取得部20、方向検出部25及び制御部40は、例えばコンピュータで実行されるプログラム処理によって実現される。測定によって得られた座標はディスプレイ45に表示される。使用者USは、測定ヘッド10を用いて対象物OBの位置を検出する検出箇所の指定を行うとともに、ディスプレイ45に表示される内容に沿って測定を進めていく。
【0037】
本実施形態において、制御部40は、後述する位置測定処理部と、コマンド処理部とを備える。制御部40は、測定ヘッド10によって指定された座標が第1領域R1内であるか否かに応じて処理の切り替えを行う。
【0038】
図2は、第1実施形態に係る位置計測装置のブロック構成図である。
測定ヘッド10から座標取得部20には測定子11aが対象物OBなどに接触した際に座標取得信号が出力される。この座標取得信号は、ボタン12aを押下したタイミングでも出力される。測定ヘッド10には、測定ヘッド10と使用者USとの距離を測定する距離センサ18が設けられていてもよい。距離センサ18としては、例えば指向性を持ち、使用者USの特定部位(例えば、胸部)までの距離を測定可能なセンサが用いられる。
【0039】
座標取得部20は、角度センサ151から出力される角度の情報を受ける。座標取得部20は、測定ヘッド10から出力された座標取得信号を受けたタイミングで角度センサ151から出力される角度の情報を受ける。そして、角度の情報などを用いて測定子11aのX,Y,Z座標系における座標を演算し、制御部40へ出力する。
【0040】
方向検出部25は、角度センサ151から出力される角度の情報を受けて、測定ヘッド10の方向を演算して制御部40へ出力する。方向検出部25は、測定ヘッド10の方向を常に演算して制御部40へ出力してもよいし、測定ヘッド10により指定された座標が第1領域R1内にない場合に測定ヘッド10の方向を演算して制御部40へ出力するようにしてもよい。また、ボタン12aが押下されたタイミングや、測定ヘッド10の位置が一定時間静止している場合に方向を演算して制御部40へ出力するようにしてもよい。
【0041】
領域記憶部30には、予め第1領域R1を特定するための座標データが記憶される。第1領域R1は、位置計測装置1の設定によって変更可能である。
【0042】
制御部40は、位置測定処理部41及びコマンド処理部42を備える。位置測定処理部41及びコマンド処理部42は、コンピュータPCで実行されるプログラム処理によって実現してもよい。
【0043】
制御部40は、座標取得部20から出力された座標が第1領域R1内である場合に位置測定処理部41による処理を選択する。また、制御部40は、座標取得部20から出力された座標が第1領域R1内ではない場合にコマンド処理部42による処理を選択する。
【0044】
位置測定処理部41は、対象物OBの位置を測定する処理を実行する。すなわち、位置測定処理部41は、座標取得部20から出力された座標を、対象物OBの検出箇所での測定結果として登録する処理を行う。コンピュータPCでは、対象物OBの三次元位置を測定するためのプログラムが実行される。位置測定処理部41は、このプログラムにおける測定結果の入力として、座標取得部20から出力された座標の値を入力する処理を行う。
【0045】
一方、コマンド処理部42は、方向検出部25で検出した測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドを受け付けて実行する処理を行う。測定ヘッド10の方向とコマンドとの対応付けは、予めコンピュータPCなどに登録されている。コマンド処理部42は、測定ヘッド10の方向に応じて所定のコマンドを実行する処理を行う。例えば、方向「下」に「取り消し」コマンドが対応付けされている場合、測定ヘッド10が「下」を向いていると、コマンド処理部42はコンピュータPCに対して「取り消し」コマンドを送る。また、方向「上」に「開始/終了」コマンドが対応付けされている場合、測定ヘッド10が「上」を向いていると、コマンド処理部42はコンピュータPCにプログラムの「開始/終了」コマンドを送る。
【0046】
このように、本実施形態に係る位置計測装置1では、測定ヘッド10によって指定された検出箇所が第1領域R1内にある場合には対象物OBの位置を測定する処理が行われ、検出箇所が第1領域R1内ではない場合にはコンピュータPCに対するコマンドを実行する処理が行われる。すなわち、本実施形態に係る位置計測装置1によれば、測定ヘッド10の位置に応じて、対象物OBの位置測定と、コンピュータPCに対するコマンド実行とを容易に切り替えることができる。しかも、コマンドを実行する処理では、測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドを送ることができる。これにより、使用者USはコンピュータPCを参照しなくても測定ヘッド10の先端の向きを変えるだけで、コンピュータPCに対して所望のコマンドを送ることができるようになる。
【0047】
次に、本実施形態に係る位置計測装置1による位置計測方法について、2つの例を挙げて説明する。
図3は、第1の位置計測方法を例示するフローチャートである。
先ず、ステップS101に表したように、測定ヘッド10による測定が指示されたか否かを判断する。具体的には、ハンドル12のボタン12aが押下された場合、位置測定の指示があったと判断する。位置測定の指示がない場合には測定ヘッド10の移動中であるとして処理を終了する。
【0048】
位置測定の指示がされた場合には、ステップS102に表したように、座標の演算を行う。座標は、検出箇所が指定されたタイミングで角度センサ151から得られる角度の情報などに基づき座標取得部20によって演算される。
【0049】
次に、ステップS103に表したように、第1領域R1内であるか否かの領域判定を行う。すなわち、制御部40は、座標取得部20で演算して得た座標がX,Y,Z座標系で予め設定された第1領域R1内に属するか、属しないかを判断する。座標が第1領域R1内に属する場合には、ステップS104に表した位置測定処理を行う。位置測定処理では、座標取得部20で演算して得た座標を対象物OBの検出箇所での座標として処理する。
【0050】
一方、座標が第1領域R1内に属していない場合には、ステップS105に表したように、距離が一定範囲内か否かの判断を行う。すなわち、距離センサ18によって測定ヘッド10と使用者USとの距離を測定し、この距離が予め設定された一定の範囲内であるか否かを判断する。距離が一定範囲内でない場合には処理を終了する。
【0051】
一方、距離が一定範囲内である場合、ステップS106に表したように、方向検出部25によって測定ヘッド10の方向を演算する。そして、ステップS107に表したコマンド送信処理を行う。コマンド送信処理では、測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドをコンピュータPCに送信する処理を行う。
【0052】
このような処理によって、使用者USは、測定ヘッド10により指定する位置に応じて対象物OBの位置の測定と、測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドのコンピュータPCへの送信処理とを的確に切り替えることができるようになる。
【0053】
図4は、第2の位置計測方法を例示するフローチャートである。
先ず、ステップS201に表したように、測定ヘッド10の座標を計算する。座標は、角度センサ151から得られる角度の情報などに基づき座標取得部20によって演算される。
【0054】
次に、ステップS202に表したように、計算した座標が第1領域R1内である否かを判断する。制御部40は、座標取得部20で演算して得た座標がX,Y,Z座標系で予め設定された第1領域R1内に属するか否かを判断する。
【0055】
座標が第1領域R1内に属する場合には、ステップS203に表したように、測定ヘッド10による測定が指示されたか否かを判断する。具体的には、ハンドル12のボタン12aが押下された場合、位置測定の指示があったと判断する。位置測定の指示がない場合には測定ヘッド10の移動中であるとして処理を終了する。
【0056】
測定ヘッド10によって位置測定の指示がされた場合には、ステップS204に表した位置測定処理を行う。位置測定処理では、座標取得部20で演算して得た座標を対象物OBの検出箇所での座標として処理する。
【0057】
一方、ステップS202において、座標が第1領域R1内に属していないと判断した場合、ステップS205に表したように、測定ヘッド10のボタン12aが押下されたか否かを判断する。ボタン12aが押下されていない場合には測定ヘッド10の移動中であるとして処理を終了する。
【0058】
測定ヘッド10のボタン12aが押下された場合には、ステップS206に表したように、距離が一定範囲内か否かの判断を行う。すなわち、距離センサ18によって測定ヘッド10と使用者USとの距離を測定し、この距離が予め設定された一定の範囲内であるか否かを判断する。距離が一定範囲内でない場合には処理を終了する。
【0059】
一方、距離が一定範囲内である場合、ステップS207で表したように、方向検出部25によって測定ヘッド10の方向を演算する。そして、ステップS208に表したコマンド送信処理を行う。コマンド送信処理では、測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドをコンピュータPCに送信する。
【0060】
このような処理によって、使用者USは、測定ヘッド10により指定する位置に応じて対象物OBの位置の測定と、測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドのコンピュータPCへの送信処理とを的確に切り替えることができるようになる。
【0061】
次に、位置計測方法の具体例について説明する。
図5(a)及び(b)は、位置計測方法の具体例を示す模式図である。
先ず、予め、第1領域R1を領域記憶部30に記憶しておく。第1領域R1は、例えばX,Y,Z座標系における領域として登録される。ここで、第1領域R1については、測定の対象物OBよりも大きな領域に設定しておく。
【0062】
位置計測を行うには、先ず、定盤100の第1領域R1内に対象物OBを載置する。そして、図5(a)に表したように、測定ヘッド10の測定子11aを対象物OBの位置を検出する箇所(検出箇所)に接触させる。測定子11aが対象物OBに接触すると、座標取得信号が座標取得部20に送られる。座標取得部20では、座標取得信号を受けたタイミングで多関節アーム15に取り付けられた角度センサ151の角度を受けて、検出箇所の座標を演算する。
【0063】
座標取得部20で演算して得た座標は第1領域R1内に属しているため、制御部40は、位置測定処理部41を選択する。位置測定処理部41は、この座標を対象物OBの位置計測結果としてコンピュータPCに登録する処理を行う。
【0064】
測定ヘッド10の測定子11aが対象物OBの別の検出箇所と接触した場合、先と同様に、座標取得部20で演算して得た座標が第1領域R1内であるとして、制御部40は、位置測定処理部41を選択する。位置測定処理部41は、その座標を対象物OBの位置計測結果としてコンピュータPCに登録する処理を行う。座標取得部20で演算して得た座標が第1領域R1内である限り、その座標は対象物OBの位置計測結果として取り扱われる。
【0065】
図5(b)に表したように、使用者USが測定ヘッド10を第1領域R1の外側に移動させてボタン12aを押下したとする。これにより、測定ヘッド10から座標取得部20に信号が送られ、座標取得部20では検出箇所の座標を演算する。
【0066】
制御部40は、座標取得部20で演算して得た座標を受けて、この座標が第1領域R1内にはないことを判断する。そして、制御部40は、距離センサ18によって測定ヘッド10と使用者USとの距離Lを測定する。この距離Lが一定範囲内であった場合、制御部40は、コマンド処理部42を選択する。このように、距離Lを測定することで、例えば測定ヘッド10を胸の前に持ってこなければコマンドを送信するモードにならず、誤ってコマンドの送信をしてしまうことを防止することができる。
【0067】
コマンド処理部42は、方向検出部25によって測定ヘッド10の方向を検出する。そして、この検出された測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドをコンピュータPCに送る処理を行う。コンピュータPCは、コマンド処理部42から送られたコマンドを受けて、このコマンドに基づく処理を実行する。
【0068】
このように、使用者USは測定ヘッド10で指定する検出箇所の位置によって、対象物OBを測定するモードと、コンピュータPCを制御するモードとの切り替えを行うことができる。しかも、コンピュータPCを制御するモードでは、測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドを選択することができる。したがって、コンピュータPCのディスプレイ45の表示を参照しなくても、コンピュータPCに対する制御を行うことが可能になる。
【0069】
次に、測定ヘッド10の方向とコマンドとの対応付けの具体例について説明する。
図6図8は、測定ヘッドの方向とコマンドとの対応付けを例示する模式図である。
図6には、使用者USの正面からみた場合の測定ヘッド10の方向が模式的に表される。図6に表される方向D1〜D8のそれぞれは、使用者USの正面からみた平面に沿った方向である。方向D1〜D8のうち隣り合う2つの方向は、互いに45°ずれている。
【0070】
図7には、使用者USの横からみた場合の測定ヘッド10の方向が模式的に表される。図7に表される方向D11〜D15のそれぞれは、使用者USの横からみた平面に沿った方向である。方向D11〜D15のうち隣り合う2つの方向は、互いに45°ずれている。なお、方向D11は、図6に表した方向D1と同じであり、方向D15は図6に表した方向D5と同じである。
【0071】
ここで、図7の方向D12と図6の方向D2とを合成した方向は、図6の方向D31として表され、図7の方向D14と図6の方向D4とを合成した方向は、図6の方向D32として表され、図7の方向D14と図6の方向D6とを合成した方向は、図6の方向D33として表され、図7の方向D12と図6の方向D8とを合成した方向は、図6の方向D34として表される。
【0072】
図8には、使用者USの上からみた場合の測定ヘッド10の方向が模式的に表される。図8に表される方向D21〜D25のそれぞれは、使用者USの上からみた平面に沿った方向である。方向D21〜D25のうち隣り合う2つの方向は、互いに45°ずれている。なお、方向D21は、図6に表した方向D7と同じであり、方向D25は図6に表した方向D3と同じであり、方向D23は図7に表した方向D13と同じである。
【0073】
本実施形態では、測定ヘッド10のこれら複数の方向のそれぞれにコマンドを対応付けしている。図6図8に表した例では、方向D1〜D8、方向D12〜D14、方向D22、方向D24、及び方向D31〜D34の17通りのそれぞれに対してコマンドが対応付けされる。したがって、使用者USは、測定ヘッド10を17通りのいずれかの方向に向けることで、その方向に対応付けされたコマンドを選択することができる。
【0074】
測定ヘッド10の方向の決定については、1つの方向に対して所定の余裕度を持たせておくと良い。この場合、1つの方向の余裕度を含めた範囲が隣りの方向の余裕度を含めた範囲と重ならないようにする。また、1つの方向の余裕度を含めた範囲と、隣りの方向の余裕度を含めた範囲とが連続するように設定してもよい。
【0075】
使用者USは、コンピュータPCにコマンドを送信したい場合、測定ヘッド10を第1領域R1から外し、自らの体に近づけ、所望のコマンドに対応した方向を向けて例えばボタン12aを押下する。これにより、測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドがコンピュータPCに送信される。
【0076】
コンピュータPCにコマンドを送信するタイミングとしては、ボタン12aの押下のほか、測定ヘッド10を所望のコマンドに対応した方向に向けた状態で、一定時間静止したことをトリガーとしてコマンドを送信するようにしてもよい。
【0077】
また、コンピュータPCや測定ヘッド10にスピーカ、ブザー、ランプ等の報知手段を設けておき、コマンドの送信や、コンピュータPCから応答があった際にスピーカやブザー等から音(例えば、ビープ音)を出したり、ランプを点灯させるようにしてもよい。また、測定ヘッド10に液晶ディスプレイ等の表示部を設けておき、送信したコマンド名や、コンピュータPCから送られる応答メッセージなどを表示するようにしてもよい。これにより、コンピュータPCに対してコマンドが送信されたことや、コンピュータPCからの応答の情報を使用者USに的確に知らせることができる。
【0078】
上記では、17通りの方向を設定し、これらの方向にコマンドを対応付けする例を説明したが、コマンドを対応付けする測定ヘッド10の方向は17通りに限定されない。使用者USの慣れや、コマンド数などによって適宜設定可能である。
【0079】
また、コマンドは、複数の方向の組み合わせに対応付けて登録されていてもよい。この場合、測定ヘッド10の方向の選択を一定時間内に複数回受け付け、各回で選択された方向の組み合わせに対応付けされたコマンドを送信する。例えば、測定ヘッド10を方向D1に向けてボタン12aを押下した後、一定時間内に測定ヘッド10を方向D2に向けてボタン12aを押下したとする。これにより、コマンド処理部42は、選択された2つの方向D1及びD2の組み合わせに対応付けされたコマンドをコンピュータPCへ送信する。
【0080】
また、コマンドは、同じ方向の複数回の選択に対応付けして登録されていてもよい。例えば、直前に指定したコマンドを取り消すなど、測定ヘッド10を1つの方向に向けた状態で2度ボタン12aを押下することで(いわゆる、ダブルクリック)、その方向に対応付けられたコマンドの取り消しをコンピュータPCに指示するようにしてもよい。
【0081】
さらに、測定ヘッド10をある方向に向けた状態でボタン12aを押下し、そのままボタン12aを押下しつつ測定ヘッド10の方向を変え、はじめにボタン12aを押下したときとは別の方向に測定ヘッド10を向けた状態でボタン12aを離す、といった動作に対応付けしてコマンドを登録してもよい。
【0082】
このように、測定ヘッド10の方向や、複数回選択した際の各回の方向の組み合わせ、方向の選択とボタン12aの動作との関係に基づいてコマンドを登録しておくことで、使用者USにとって直観的でわかりやすいコマンド操作を実現することができる。
【0083】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る位置計測装置のブロック構成図である。
図9に表した第2実施形態に係る位置計測装置2は、図2に表した第1実施形態に係る位置計測装置1の領域記憶部30を備えていない。また、位置計測装置2の制御部40Bの動作及びボタン12bの作用が、位置計測装置1の制御部40の動作及びボタン12aの作用と相違する。他の構成は、第1実施形態に係る位置計測装置1と同様である。本実施形態で適用される測定ヘッド10は、位置信号の取得に用いられるボタン12aを備えてないタッチトリガープローブである。
【0084】
本実施形態に係る位置計測装置2において、制御部40Bは、ボタン12bが選択された場合にコマンド処理部42による処理を選択し、ボタン12bが選択されなかった場合に位置測定処理部41による処理を選択する。すなわち、位置計測装置2では、座標取得部20から出力された座標が第1領域R1内であるか否かにかかわらず、ボタン12bの操作に応じて対象物OBの三次元位置を測定する処理を行うか、コンピュータPCへコマンドを送信する処理を行うかの切り替えが行われる。
【0085】
タッチトリガープローブを用いた測定ヘッド10では、測定子11aが物体に接触したタイミングで位置測定処理部41による位置の測定が行われる。一方、測定子11aが何らかに接触していない状態でボタン12bが押下されると、対象物OBを測定するモードからコンピュータPCにコマンドを送信するモードへと切り替わる。そして、ボタン12bを押下した際の測定ヘッド10の方向に対応したコマンドがコンピュータPCへ送信される。したがって、使用者USは、測定子11aが第1領域R1内にあるか否かにかかわらず、好みの位置でボタン12bを押下することにより、ボタン12bを押下した際の測定ヘッド10の方向に対応したコマンドをコンピュータPCへ送ることが可能になる。
【0086】
制御部40は、距離センサ18によって測定ヘッド10と使用者USとの距離を測定し、この距離が一定範囲内であった場合にコマンドをコンピュータPCへ送信するよう制御してもよい。これにより、例えば測定ヘッド10を胸の前に持ってこなければコマンドを送信するモードにならず、誤ってコマンドの送信をしてしまうことを防止することができる。
【0087】
次に、本実施形態に係る位置計測装置2による位置計測方法について説明する。
図10は、位置計測装置2による位置計測方法を例示するフローチャートである。
先ず、ステップS301に表したように、方向検出指示の有無を判断する。方向検出指示の有無の判断は、使用者によってボタン12bが選択されたか否かいによって行われる。ボタン12bが選択されなかった場合には処理を終了する。
【0088】
一方、ボタン12bが選択された場合には、ステップS302に表したように、距離が一定範囲内か否かの判断を行う。すなわち、距離センサ18によって測定ヘッド10と使用者USとの距離を測定し、この距離が予め設定された一定の範囲内であるか否かを判断する。距離が一定範囲内でない場合には処理を終了する。
【0089】
一方、距離が一定範囲内である場合、ステップS303に表したように、方向検出部25によって測定ヘッド10の方向を演算する。そして、ステップS304に表したコマンド送信処理を行う。コマンド送信処理では、測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドをコンピュータPCに送信する処理を行う。
【0090】
このような処理によって、使用者USは、ボタン12bを選択した場合にコマンドを送信するモードに切り替えて、測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドをコンピュータPCへ送ることができる。一方、ボタン12bを選択しない場合には、測定ヘッド10により対象物OBの位置の測定する処理を行うことができる。つまり、使用者は、対象物OBの位置を測定する作業を行っているあいだであっても、ボタン12bを選択することで、コンピュータPCへコマンドを送信するモードに切り替えることができる。そして、測定ヘッド10の方向に対応して送りたいコマンドを選択することが可能になる。
【0091】
(変形例)
上記第2実施形態において適用されるボタン12bは、第1実施形態において適用されるハードプローブやレーザプローブを用いた測定ヘッド10に設けられていてもよい。すなわち、ハードプローブやレーザプローブを用いた測定ヘッド10に、位置信号を得るためのボタン12aとともにコマンドを送信するためのボタン12bを設けてもよい。これにより、ハードプローブやレーザプローブを用いた測定ヘッド10であっても、使用者は任意のタイミングでボタン12bを押下することで、コンピュータPCへコマンドを送信することができる。
【0092】
以上説明したように、本実施形態に係る位置計測装置1及び位置計測方法によれば、次のような効果がある。例えば、使用者USは、コンピュータPCのディスプレイ45を参照しなくても、コンピュータPCに対してコマンドを送信することが可能となる。また、測定ヘッド10の方向に対応したコマンドを送信することができ、コマンドを効率良く選択することができる。このため、離れた位置にコンピュータPCが配置されていても、そこまで出向いてコマンドを入力する必要がなく、作業効率が向上する。さらに、測定ヘッド10の向きによってコマンドを送信できるため、コンピュータPCの操作や測定手順に不慣れな人でも感覚的な動作でコマンドを選択して、コンピュータPCを制御できる。特に、測定ヘッド10の方向とコマンドとが対応付けされていることから、一連のコマンド動作を身体で覚えることができ、操作に慣れやすいというメリットがある。
【0093】
このように、本実施形態に係る位置計測装置1及び位置計測方法によれば、測定ヘッド10を用いて位置計測処理とコマンド処理とを的確に切り替えて所望の処理を実行することが可能になる。
【0094】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、測定ヘッド10に距離センサ18を備える例を説明したが、距離センサ18を備えていない構成でもよい。この場合、測定ヘッド10と使用者USとの距離に関係なく、測定ヘッド10の方向に対応付けされたコマンドを送信することになる。また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、多関節アーム15を用いた三次元測定機以外でも、多関節アーム15を用いない無線式の測定ヘッド10を用いた三次元測定機であっても好適に利用できる。
【符号の説明】
【0096】
1,2…位置計測装置
10…測定ヘッド
11…測定プローブ
11a…測定子
12…ハンドル
12a,12b…ボタン
18…距離センサ
20…座標取得部
25…方向検出部
30…領域記憶部
40,40B…制御部
41…位置測定処理部
42…コマンド処理部
OB…対象物
R1…第1領域
US…使用者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10