特許第6373913号(P6373913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373913スカンジウムの精製方法、スカンジウム抽出剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373913
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】スカンジウムの精製方法、スカンジウム抽出剤
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20180806BHJP
   C22B 3/38 20060101ALI20180806BHJP
   B01D 11/04 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C22B59/00
   C22B3/38
   B01D11/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-163604(P2016-163604)
(22)【出願日】2016年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-31051(P2018-31051A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年2月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】久保田 富生子
(72)【発明者】
【氏名】松岡 いつみ
(72)【発明者】
【氏名】浅野 聡
(72)【発明者】
【氏名】小林 宙
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/022843(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/009254(WO,A2)
【文献】 国際公開第2015/115269(WO,A1)
【文献】 芝田隼次,鉱物処理薬剤の現況と将来 −Part 2 溶媒抽出試薬と溶媒抽出技術−,資源処理技術,日本,1998年 6月,vol.45,No.2,p.105-108,ISSN:0912-4764、doi:10.4144/rpsj1986.45.105、 https://kuir.jm.kansai-u.ac.jp/dspace/bitstream/10112/5518/1/KU-1100-19980600-07.pdfにても入手可能
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカンジウムを含有するとともに、少なくとも鉄を含む元素成分を含有する酸性溶液を、リン酸系抽出剤である2−エチルヘキシルホスホン酸−1−エチルヘキシル又はジ(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸中性抽出剤であるトリ−n−オクチルホスフィンオキシドとを含有する混合抽出剤による溶媒抽出に付し、該酸性溶液からスカンジウムを抽出する
スカンジウムの精製方法。
【請求項2】
前記混合抽出剤においては、前記リン酸性抽出剤がモル比で5%以上50%以下の範囲の混合割合で含まれている
請求項1に記載のスカンジウムの精製方法。
【請求項3】
前記酸性溶液のpHを0.0以上2.0以下の範囲に調整し、pH調整後の該酸性溶液を前記溶媒抽出に付す
請求項1又は2に記載のスカンジウムの精製方法。
【請求項4】
前記酸性溶液は、
ニッケル酸化鉱石に酸を添加してスカンジウムを浸出した溶液、又は、スカンジウム酸化物若しくはスカンジウム水酸化物を酸で溶解して得られた溶液であり、
前記酸性溶液のpHを0.0以上2.0以下の範囲に調整し、pH調整後の該酸性溶液を前記溶媒抽出に付す
請求項1又は2に記載のスカンジウムの精製方法。
【請求項5】
前記酸性溶液は、さらに、ジルコニウム、トリウムのいずれか1種以上を含む
請求項1乃至のいずれか1項に記載のスカンジウムの精製方法。
【請求項6】
スカンジウムを含有するとともに、少なくとも鉄を含む元素成分を含有する酸性溶液から、該スカンジウムを抽出するための抽出剤であって、
リン酸系抽出剤である2−エチルヘキシルホスホン酸−1−エチルヘキシル又はジ(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸と、中性抽出剤であるトリ−n−オクチルホスフィンオキシドとを含有する
スカンジウム抽出剤。
【請求項7】
前記リン酸系抽出剤がモル比で5%以上50%以下の範囲の割合で含まれている
請求項に記載のスカンジウム抽出剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スカンジウムの回収方法に関するものであり、例えば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにて生成されるスカンジウムを含有する酸性溶液等から鉄を含む不純物を分離してスカンジウムを精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素は、高価なもので、その産出量も限られており、また、分離精製が困難な元素であることもあって、利用範囲は限られていた。
【0003】
希土類元素の一例として、スカンジウムがある。例えば、ラテライト鉱等のニッケル酸化鉱石には、微量のスカンジウムが含有されることが知られており、そのニッケル酸化鉱石に含まれるスカンジウムは、ニッケル酸化鉱石に硫酸を添加して加圧浸出することによって得られる浸出液から回収することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、(ア)酸化鉱石を高温高圧下で酸により浸出してニッケル及びスカンジウムを含む浸出液を得る浸出工程と、(イ)その浸出液に中和剤を加えてpHを2〜4の範囲に調整することにより、浸出液中の鉄及びアルミニウムを沈殿物として除去する第一中和工程と、(ウ)第一中和工程で沈殿物を除去した後の溶液に、中和剤を加えてpHを4超〜7.5の範囲に調整することにより溶液中のスカンジウムを沈殿物として回収する第二中和工程と、(エ)さらに中和剤を加えてpHを7.5超に調整することにより、溶液中のニッケルを沈殿物として回収する第三中和工程と、を行うことによって、酸化鉱石からニッケル及びスカンジウムを回収できることが示されている。
【0005】
しかしながら、この特許文献1に記載の方法で工業的に操業しようとすると、種々の問題が生じる。例えば、第一中和工程でのpH調整範囲と、第二中和工程でのpH調整範囲とが近接するため、第一中和工程では、鉄及びアルミニウムと共にスカンジウムも沈澱し、スカンジウムの抽出率低下を招く可能性がある。また、第二中和工程では、スカンジウムと共に鉄及びアルミニウムも沈殿し、スカンジウムの純度低下を招く可能性がある。したがって、いずれの状況も好ましくない。また、中和剤を加えることで大量の沈殿物が発生するが、一般に、酸にアルカリを添加して得られる沈殿物の性状は不安定で濾過性に劣り、設備規模の拡大等のコスト増加を伴う可能性がある。
【0006】
そのため、中和工程の回数をできるだけ少なくすることが好ましく、スカンジウムを含有する溶液から、溶媒抽出等の手段を用いてスカンジウムだけを選択的に分離する方法が提案されている。
【0007】
具体的に、溶媒抽出等の手段でスカンジウムだけを選択的に分離する手法として、例えば特許文献2の記載されている方法がある。この方法は、先ず、スカンジウムの他に少なくとも鉄、アルミ、カルシウム、イットリウム、マンガン、クロム、マグネシウムの1種以上を含有する水相の含スカンジウム溶液に有機溶媒を加えて、スカンジウム成分を有機溶媒中に抽出する。次いで、有機溶媒中にスカンジウムと共に抽出された微量成分を分離するために塩酸水溶液を加えてスクラビングを行い、微量成分を除去した後、有機溶媒中に水酸化ナトリウム水溶液を加えて、有機溶媒中に残存するスカンジウムをSc(OH)3を含むスラリーとする。そして、このスラリーを濾過して得られたSc(OH)3を塩酸で溶解することによって塩化スカンジウム水溶液を得て、これにシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウム沈殿とし、沈殿を濾過することで微量不純物を濾液中に分離した後に、仮焼することにより高純度な酸化スカンジウムを得る、という方法である。
【0008】
しかしながら、このような特許文献2に記載の方法を用いた場合、有機溶媒中には、スカンジウムだけでなく、不純物成分も無視できない程度に抽出されてしまう。特に、ニッケル酸化鉱石を酸浸出し中和して得られた浸出液には、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム等の不純物成分が多く存在する。このため、有機溶媒中に抽出された不純物成分を分離するためのスクラビングの手間やコストがかかるという問題が生じるほか、スクラビングに伴って発生した排液の処理が必要になるといった問題もある。
【0009】
さらに、スカンジウムはpHの影響を大きく受けるため、スカンジウムを抽出するに際しては、pHを一定以上に維持しなければ実用的な抽出率が得られない。しかも、スカンジウムの抽出に適したpH領域では、スカンジウムだけでなく、上述したような不純物成分の抽出率も高まるため、スカンジウムだけを選択的に分離することは困難となる。
【0010】
このように、スカンジウムのほかに、上述したような不純物成分を含有する系から、スカンジウムのみを選択的にかつ効果的に抽出することは難しい。
【0011】
ところで、2種類以上の抽出剤を混合して用いる場合、1種類の抽出剤を単独で用いる場合とでは、その抽出挙動が変わることがある。このことを、協同効果(「共同効果」ともいう)と呼んでいる。
【0012】
例えば、特許文献3では、協同効果を利用して、2種類以上の抽出剤を混合して用いることで、1種類の抽出剤を単独で用いる場合に比べて高収率で無電解ニッケル廃液からニッケルを回収する方法が提案されている。この特許文献3によれば、1種類の抽出剤を単独で用いる場合ではニッケルをほとんど抽出できないにもかかわらず、2種類以上の抽出剤を混合して用いることで、pH調整を行うことなく、1回のバッチ抽出で98%〜99%のニッケルを回収できるとしている。
【0013】
また、特許文献4では、カルボン酸系の抽出剤とオキシム系の抽出剤とを混合し、コバルト、マンガン、カルシウム、及びマグネシウムの混合溶液から、コバルト及びマンガンを抽出する方法が提案されている。
【0014】
しかしながら、特許文献3、特許文献4のいずれにおいても、スカンジウムの抽出挙動に関する報告はなく、ニッケル酸化鉱石を酸浸出して得られた溶液(浸出液)から、スカンジウムのみを選択的に抽出して分離できる溶媒は見出されていない。
【0015】
さらに、上述したような従来の溶媒抽出法では、スカンジウムを、マンガン、カルシウム、アルミニウム、及びマグネシウムを含む混合溶液からスカンジウムを抽出するにあたり、pHを4〜5程度の比較的高い領域の維持しなければ、実用上十分にスカンジウムを抽出することができない。そのため、浸出処理直後のように酸濃度が高い、つまりpHが低い溶液から、直接スカンジウムを選択的に抽出することは困難となる。
【0016】
また、ニッケル酸化鉱石を酸浸出して得られた溶液等のように、不純物として鉄イオンを含有する溶液から、スカンジウムを選択的に抽出しようとする場合、スカンジウムの抽出のために溶液のpHを4〜5程度のまで上げると、中和剤量がかさむだけでなく、鉄水酸化物の生成が促進されてスカンジウムや他の有価な元素が共沈し、ロスが生じる。また、このような鉄イオンを含有する溶液を、イオン交換や溶媒抽出に付してスカンジウムを分離しようとしても、その抽出処理中にクラッドと呼ばれる介在物が生成し易くなり、操業を困難にするという問題から、実操業への適用が難しくなる原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2000−234130号公報
【特許文献2】特開平9−291320号公報
【特許文献3】特開2011−52250号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0038168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、スカンジウムを含有するとともに鉄を含む不純物を含有する酸性溶液から、スカンジウムと不純物とを分離してスカンジウムを効率的に精製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、リン酸系抽出剤と中性抽出剤とを含有する混合抽出剤を用いて溶媒抽出を行うことにより、スカンジウムを選択的に抽出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
(1)本発明の第1の発明は、スカンジウムを含有するとともに、少なくとも鉄を含む元素成分を含有する酸性溶液を、リン酸系抽出剤と中性抽出剤とを含有する混合抽出剤による溶媒抽出に付し、該酸性溶液からスカンジウムを抽出する、スカンジウムの精製方法である。
【0021】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記リン酸系抽出剤が、2−エチルヘキシルホスホン酸−1−エチルヘキシルである、スカンジウムの精製方法である。
【0022】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記中性抽出剤が、トリ−n−オクチルホスフィンオキシドである、スカンジウムの精製方法である。
【0023】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記混合抽出剤においては、前記リン酸性抽出剤がモル比で5%〜50%の範囲の混合割合で含まれている、スカンジウムの精製方法である。
【0024】
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記酸性溶液のpHを0.0以上2.0以下の範囲に調整し、pH調整後の該酸性溶液を前記溶媒抽出に付す、スカンジウムの精製方法である。
【0025】
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記酸性溶液は、ニッケル酸化鉱石に酸を添加してスカンジウムを浸出した溶液、又は、スカンジウム酸化物若しくはスカンジウム水酸化物を酸で溶解して得られた溶液であり、前記酸性溶液のpHを0.0以上2.0以下の範囲に調整し、pH調整後の該酸性溶液を前記溶媒抽出に付す、スカンジウムの精製方法である。
【0026】
(7)本発明の第7の発明は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記酸性溶液は、さらに、ジルコニウム、トリウムのいずれか1種以上を含む、スカンジウムの精製方法である。
【0027】
(8)本発明の第8の発明は、スカンジウムを含有するとともに、少なくとも鉄を含む元素成分を含有する酸性溶液から、該スカンジウムを抽出するための抽出剤であって、リン酸系抽出剤と、中性抽出剤とを含有する、スカンジウム抽出剤である。
【0028】
(9)本発明の第9の発明は、第8の発明において、前記リン酸性抽出剤がモル比で5%〜50%の範囲の割合で含まれている、スカンジウム抽出剤である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、スカンジウムを含有するとともに鉄を含む不純物を含有する酸性溶液から、スカンジウムを効率的に精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1において混合抽出剤(PC88A+TOPO)を用いたときのpHと抽出率との関係を示す図である。
図2】比較例1において中性抽出剤(TOPO)のみからなる抽出剤を用いたときのpHと抽出率との関係を示す図である。
図3】比較例2においてリン酸系抽出剤(PC88A)のみからなる抽出剤を用いたときのpHと抽出率との関係を示す図である。
図4】実施例1において混合抽出剤係るスカンジウム抽出剤を用いたときのpHと分離係数との関係を示す図である。
図5】比較例1において中性抽出剤(TOPO)のみからなる抽出剤を用いたときのpHと分離係数との関係を示す図である。
図6】実施例2において混合抽出剤(PC88A+TOPO)を用いたときのpHとニッケル酸化鉱石に含まれる各種元素の抽出率との関係を示す図である。
図7】実施例3において混合抽出剤(PC88A+TOPO)を用いたときのpHとニッケル酸化鉱石に含まれる各種元素の抽出率との関係を示す図である。
図8】参考例1において混合抽出剤(PC88A+TOPO)を用いたときのpHと抽出率との関係を示す図である。
図9】参考例1において混合抽出剤(PC88A+TOPO)を用いたときのpHと分離係数との関係を示す図である。
図10】実施例4において混合抽出剤(Cyanex272+TOPO)を用いたときのpHと抽出率との関係を示す図である。
図11】実施例4において混合抽出剤(Cyanex272+TOPO)を用いたときのpHと分離係数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0032】
≪1.スカンジウム抽出剤≫
本実施の形態に係るスカンジウムの精製方法は、スカンジウム(Sc)を含有する酸性溶液から溶媒抽出によりスカンジウムを抽出して精製(回収)する方法である。特に、このスカンジウムの精製方法では、スカンジウムを含有するとともに、少なくとも鉄(Fe)を含む不純物元素を含有する酸性溶液から、それら不純物と分離してスカンジウムを抽出する。
【0033】
具体的に、このスカンジウムの精製方法は、スカンジウムを含有するとともに、少なくとも鉄を含む不純物元素を含有する酸性溶液を、リン酸系抽出剤と中性抽出剤とを含有する混合抽出剤を用いた溶媒抽出に付すことによって、その酸性溶液からスカンジウムを抽出することを特徴としている。
【0034】
この方法によれば、少なくとも鉄を含む不純物とスカンジウムと不純物元素とを効率的に分離して、スカンジウムのみを選択的に抽出することができる。また、リン酸系抽出剤と中性抽出剤とを含有する混合抽出剤を用いることで、酸性溶液のなかでも低いpH領域のものであっても、優れた選択性でもってスカンジウムを抽出することができる。さらに、効率的に不純物と分離して選択的にスカンジウムを抽出できることから、酸性溶液に対する中和処理に使用する中和剤の量を有効に低減することができ、抽出処理中にクラッドと呼ばれる介在物が生成することを防止することができる。
【0035】
[スカンジウムを含有する酸性溶液]
スカンジウムを含有する酸性溶液(以下、単に「酸性溶液」という)は、溶媒抽出処理の対象となる溶液であり、スカンジウムを含有するとともに、少なくとも鉄を含む不純物元素を含有するものである。
【0036】
具体的に、この酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、ニッケル酸化鉱石に硫酸等の酸を添加して、スカンジウムを含む有価金属を浸出した溶液を挙げることができる。また、酸性溶液として、スカンジウム酸化物若しくはスカンジウム水酸化物を硫酸等の酸で溶解して得られる溶液を挙げることができる。
【0037】
ニッケル酸化鉱石を酸浸出して得られる酸性溶液としては、例えば、ニッケル酸化鉱石を酸浸出して得られた浸出液、あるいはその浸出液に硫化剤を添加して硫化反応によりニッケルやコバルト等を分離除去した後の硫化後液が挙げられる。具体的に、硫化後液は、ニッケル酸化鉱石に硫酸等の酸を添加して浸出処理を施し、得られた浸出液に対して中和剤を用いて中和処理を行った後、硫化水素ガス等の硫化剤を添加して硫化反応を生じさせ、ニッケルやコバルトの硫化物を分離除去した後の溶液である。
【0038】
なお、このようなニッケル酸化鉱石を酸浸出して得られる酸性溶液は、鉄のほかに、ジルコニウム(Zr)、トリウム(Th)のいずれか1種以上の元素を含有する。
【0039】
[混合抽出剤]
混合抽出剤は、リン酸系抽出剤と中性抽出剤とを含有するものである。本実施の形態に係るスカンジウムの精製方法では、このような混合抽出剤を用いて、上述した酸性溶液に対する溶媒抽出処理を行う。
【0040】
混合抽出剤において、リン酸系抽出剤としては、特に限定されないが、例えば2−エチルヘキシルホスホン酸−1−エチルヘキシルが挙げられる。なお、このリン酸系抽出剤は、大八化学工業社製の商品名PC88A等が市販されている。
【0041】
また、中性抽出剤としては、特に限定されないが、例えばトリ−n−オクチルホスフィンオキシドが挙げられる。なお、この中性抽出剤は、同仁化学工業社製の商品名TOPO等が市販されている。
【0042】
リン酸系抽出剤と中性抽出剤との混合割合に関しては、混合抽出剤中におけるリン酸性抽出剤が占める割合として、モル比で5%以上50%以下の範囲であることが好ましく、工業的な取り扱いの容易さの観点も考慮すると、モル比で15%以上30%以下の範囲であることがより好ましい。リン酸性抽出剤の混合割合がモル比で5%以上50%以下の範囲であることにより、スカンジウムと、鉄を含む不純物元素との分離をより効率的に行うことができ、溶媒抽出によるスカンジウムの選択性を高めることができる。
【0043】
なお、混合抽出剤においては、その効果を阻害しない範囲において、上述したリン酸系抽出剤と中性抽出剤以外の抽出剤が含まれていてもよい。
【0044】
ここで、通常、溶媒抽出に用いる抽出剤は、粘度が高く、そのまま抽出処理に使用すると、水相との相分離性が悪くなる等の操業面への悪影響がある。そのことから、抽出剤の粘度を低下させるために、抽出剤を希釈剤で希釈することが一般的に行われる。
【0045】
具体的に、希釈剤としては、使用する混合抽出剤と希土類元素であるスカンジウムの錯体とを溶解できるものであれば、特に限定されない。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。このような希釈剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。また、1−オクタノールのようなアルコール類を混合して用いてもよい。
【0046】
[混合抽出剤による溶媒抽出]
本実施の形態に係るスカンジウムの精製方法においては、上述したように、鉄を含む不純物元素とスカンジウムとを含有する酸性溶液を、リン系抽出剤と中性抽出剤とを含有する混合抽出剤による溶媒抽出に付し、スカンジウムを抽出する。
【0047】
溶媒抽出処理においては、処理対象の酸性溶液と混合抽出剤とを混合して撹拌する。そしてその後、酸性溶液と混合抽出剤との混合溶液を分液漏斗により水相と有機相とに分離することによって、有機相にスカンジウムイオンを選択的に抽出する。このとき、上述したように、リン酸系抽出剤の混合割合を5%以上50%以下の範囲として混合抽出剤を用いることによって、スカンジウムの選択性を向上させることができ、より効率的に抽出することができる。
【0048】
溶媒抽出処理における撹拌操作は、混合抽出剤と酸性溶液とを混合したときに有機相と水相とが分離しない程度に充分な回転数で行えばよい。また、その撹拌時間としては、特に限定されないが、酸性溶液からスカンジウムをより高い収率で抽出できるようにする観点から、20分以上とすることが好ましい。なお、この溶媒抽出の操作においては、混合抽出剤と混合させる酸性溶液のpHが低下していく傾向にあるため、適宜、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を添加してpHの低下を抑制することが好ましい。
【0049】
また、溶媒抽出を行うにあたっては、その抽出処理に先立ち、処理対象である酸性溶液のpHを0.0以上2.0以下の範囲に調整することが好ましく、1.3以上2.0以下に調整することがより好ましく、1.7以上2.0以下に調整することが特に好ましい。
【0050】
ここで、一般に、鉄イオンを多く含有する酸性溶液(例えば、ニッケル酸化鉱石を酸浸出して得られた溶液等)では、pHが2.5〜3.0を超えると鉄の水酸化物の生成が促進されやすくなり、スカンジウム等の希土類元素が共沈し、また抽出処理中にクラッドと呼ばれる介在物が生成して操業を困難する。特に、鉄を含む酸性溶液においては、例えばそのpHが2.5以上になると、鉄の水酸化物が生成して相分離が著しく悪化する。このため、上述したように、スカンジウムを含有するとともに、少なくとも鉄を含む不純物元素を含有する酸性溶液の場合には、そのpHを0.0以上2.0以下の範囲に調整し、pH調整後の酸性溶液に対して溶媒抽出を行うことが好ましい。
【0051】
そして、このようなpHが低い酸性領域の溶液であっても、リン酸系抽出剤と中性抽出剤との混合抽出剤を用いて溶媒抽出を行うことにより、スカンジウムを十分に高い抽出率で抽出することができ、安定した操業を行うことができる。このように、所定の範囲にpH調整を行った後、そのpH調整後の酸性溶液に対して溶媒抽出処理を施すことで、鉄を含む不純物元素を含有する酸性溶液から、スカンジウムのみを高純度でかつ高収率で抽出することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0053】
≪1.スカンジウム抽出用の混合抽出剤の調製≫
下記の実施例、比較例にて用いたスカンジウム抽出用の溶媒抽出剤を、下記表1に示すように調製した。なお、リン酸系抽出剤として、2−エチルヘキシルホスホン酸−1−エチルヘキシル(商品名:PC88A)を用い、中性抽出剤として、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド(商品名:TOPO)を用いた。
【0054】
【表1】
【0055】
具体的には、実施例1で用いた混合抽出剤は、リン酸系抽出剤(PC88A)のモル濃度が0.1mol/L、中性抽出剤(TOPO)のモル濃度が0.5mol/Lとなるように、各々の抽出剤をスワゾール(丸善石油化学株式会社製)に溶解させることで得た。
【0056】
また、比較例1で用いた抽出剤は、中性抽出剤(TOPO)のモル濃度が0.5mol/Lとなるようにスワゾールに溶解させることで得た。また、比較例2で用いた抽出剤は、リン酸系抽出剤(PC88A)のモル濃度が0.6mol/Lとなるようにスワゾールに溶解させることで得た。なお、このように、比較例1、2で使用した抽出剤は、リン酸系抽出剤又は中性抽出剤による単独抽出剤である。
【0057】
≪2.各抽出剤による抽出効果、酸性溶液のpH条件の検討≫
実施例1、比較例1及び2において、スカンジウム(Sc)、鉄(Fe)、及び、ジルコニウム(Zr)又はトリウム(Th)をそれぞれ下記表2に示す濃度で含有する硫酸溶液(酸性溶液)を用意した。
【0058】
【表2】
【0059】
[実施例1]
実施例1では、硫酸溶液を2.5mlずつ5つに分取し、その硫酸溶液のpHを0.0〜2.0の範囲内で一定の値に調整した。そして、各々の硫酸溶液についてスカンジウム抽出用の混合抽出剤(PC88A+TOPO)2.5mlと混合し、その混合溶液を回転数650rpmで20分間撹拌した。このとき、硫酸溶液中のpHを、混合抽出剤との混合前と同じ値に維持するため、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を適宜添加した。
【0060】
所定時間の撹拌後、混合溶液の水相と有機相とを分液漏斗で分離し、抽出残液(水相)に対して誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)を用いた元素分析を行い、各種金属の水相から有機相への抽出率を求めた。下記表3及び図1に、pHと各種金属の抽出率との関係を示す。
【0061】
【表3】
【0062】
[比較例1]
比較例1では、硫酸溶液を2.5mlずつ5つに分取し、その硫酸溶液のpHを0.0〜2.5の範囲内で一定の値に調整したこと、及び、スカンジウム抽出用の抽出剤として中性抽出剤(TOPO)を用いたこと以外は、実施例1と同じ手法にて各種金属の水相から有機相への抽出率を求めた。下記表4及び図1に、pHと各種金属の抽出率との関係を示す。
【0063】
【表4】
【0064】
[比較例2]
比較例2では、硫酸溶液を2.5mlずつ3つに分取し、その硫酸溶液のpHを0.0〜1.0の範囲内で一定の値に調整したこと、及び、スカンジウム抽出用の抽出剤としてリン酸系抽出剤(PC88A)を用いたこと以外は、実施例1と同じ手法にて各種金属の水相から有機相への抽出率を求めた。下記表5及び図1に、pHと各種金属の抽出率との関係を示す。
【0065】
【表5】
【0066】
実施例1の結果から分かるように、スカンジウム抽出用の抽出剤としてリン酸系抽出剤と中性抽出剤との混合抽出剤を用いる場合、処理対象の酸性溶液のpHを0.0以上2.0以下、好ましくは1.7以上2.0以下の範囲に調整し維持した状態で溶媒抽出に付すことで、スカンジウムのみを高い収率で抽出することができる。
【0067】
そして、特徴的であるのは、実施例1のように混合抽出剤を用いると、酸性溶液のpHによらず一律して60%以上の抽出率でスカンジウムが抽出される。一方、酸性溶液中に含まれる鉄は、いずれのpHにおいても抽出されず、ジルコニウムも例えばpH1.7以上ではほとんど抽出されなくなる。ここで、図4に、実施例1において混合抽出剤を用いたときの、スカンジウムと不純物元素であるFe3+及びZr4+との分離係数を示す。
【0068】
上述したように、鉄イオンを多く含有する酸性溶液では、pHが2.5〜3.0を超えると鉄の水酸化物の生成が促進されやすくなる。実施例1の結果に示されるように、溶媒抽出処理に先立ち、酸性溶液のpHを0.0以上2.0以下に調整することで、鉄の水酸化物の生成を抑制することができ、しかもこのような鉄の水酸化物が生成しない低いpH領域の酸性溶液であっても、リン酸系抽出剤と中性抽出剤との混合抽出剤によれば、スカンジウムを十分に高い抽出率で抽出できる。
【0069】
一方、比較例1のように、中性抽出剤のみからなる抽出剤を用いると、酸性溶液のpHがいずれの値であっても、スカンジウムの抽出率が50%を超えることがなく、不純物元素との分離係数が小さい。なお、図5に、比較例1において中性抽出剤のみからなる抽出剤を用いたときの、スカンジウムと不純物元素であるFe3+及びZr4+との分離係数を示す。
【0070】
また、図3に示す比較例2の結果から分かるように、リン酸系抽出剤のみからなる抽出剤を用いた場合では、酸性溶液のpHがいずれの値であっても、スカンジウムと不純物元素とを効果的に分離することができない。
【0071】
以上の結果から、スカンジウム抽出用の抽出剤としてリン酸系抽出剤と中性抽出剤との混合抽出剤を用いることで、鉄を含む不純物元素とスカンジウムとを効率的に分離して、スカンジウムのみを選択的に抽出することができることが分かった。また、その溶媒抽出に先立ち、酸性溶液のpHを0.0以上2.0以下、より好ましくは1.7以上2.0以下の範囲に調整し、そのpH調整後に溶媒抽出に付すことで、スカンジウムのみをより高純度で抽出することができることが分かった。
【0072】
≪3.ニッケル酸化鉱石を酸浸出して得られた酸性溶液からのスカンジウムの抽出≫
[実施例2、実施例3]
実施例2及び3として、下記表6に示すように調製した混合抽出剤(リン酸系抽出剤と中性抽出剤との混合抽出剤)を用いて、ニッケル酸化鉱石に対して酸浸出処理を施してスカンジウムを浸出させた硫酸溶液(下記表7)を溶媒抽出に付した。
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
具体的に、溶媒抽出処理の対象とした硫酸溶液は、実際のニッケル酸化鉱石を公知の方法で加圧硫酸浸出し、得られた浸出液に硫化剤を添加して硫化反応によってニッケルやコバルトを分離した後の硫酸溶液(硫化後液)を用意した。なお、表7に示すように、この硫酸溶液は、スカンジウム(Sc)を含有するとともに、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、トリウム(Th)、3価の鉄(Fe)等の不純物と、微量残留したニッケル(Ni)を含有する。
【0076】
そして、実施例2及び3では、硫酸溶液を30mlずつ6つに分取し、その硫酸溶液のpHを1.0〜2.0の範囲内で一定の値に調整した。そして、各々の硫酸溶液についてスカンジウム抽出用の混合抽出剤(PC88A+TOPO)30mlと混合し、その混合溶液を回転数650rpmで20分間撹拌した。このとき、硫酸溶液中のpHを、混合抽出剤との混合前と同じ値に維持するため、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を適宜添加した。
【0077】
所定時間の撹拌後、混合溶液の水相と有機相とを分液漏斗で分離し、抽出残液(水相)に対して誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)を用いた元素分析を行い、各種金属の水相から有機相への抽出率を求めた。実施例2については下記表8及び図6に、実施例3について下記表9及び図7に、pHとニッケル酸化鉱石に含まれる各種金属の抽出率との関係を示す。
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
実施例2及び3の結果に示されるように、ニッケル酸化鉱石に含まれるアルミニウム、鉄、トリウム等の不純物とニッケルを含む酸性溶液から、それら不純物元素と分離して、スカンジウムを高純度で抽出することができた。
【0081】
≪4.混合抽出剤における混合割合≫
[参考例1]
参考例1として、リン酸系抽出剤(PC88A)と中性抽出剤(TOPO)とを含有する混合抽出剤において、下記表10のように、PC88A:5mMに対してTOPO:500mMを混合することによって、リン酸系抽出剤の混合割合をモル比で1%とした混合抽出剤を用いて溶媒抽出を行った。
【0082】
【表10】
【0083】
溶媒抽出の操作は、実施例2と同じ硫酸溶液(表7)を処理対象とし、その硫酸溶液のpHを1.0、1.6、1.8の3パターンにそれぞれ調整して、実施例2と同様にして行った。そして、混合溶液の水相と有機相とを分液漏斗で分離し、抽出残液(水相)に対して誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)を用いた元素分析を行い、各種金属の水相から有機相への抽出率を求めた。下記表11及び図8、9に、pHと各種金属の抽出率との関係を示す。
【0084】
【表11】
【0085】
参考例1の結果から、混合抽出剤中におけるリン酸系抽出剤の混合割合が1%であると、不純物元素であるトリウムとの関係においてスカンジウムを十分に分離することができなくなり、スカンジウムの抽出の選択性がやや低下してしまうことが分かった。
【0086】
≪5.他のリン酸系抽出剤を用いた混合抽出剤による溶媒抽出≫
[実施例4]
実施例4として、以下に示す混合抽出剤を調製し、溶媒抽出を行った。すなわち、下記表12に示すように、リン酸系抽出剤として、ジ(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸(商品名:Cyanex272)を用い、そのリン酸系抽出剤のモル濃度が0.1mol/L、中性抽出剤(TOPO)のモル濃度が0.5mol/Lとなるように、各々の抽出剤をスワゾールに溶解させることによって、混合抽出剤を調製した。
【0087】
【表12】
【0088】
溶媒抽出に対象として、下記表13に示す濃度で、スカンジウム(Sc)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)を含有する硫酸溶液を用意し、その硫酸溶液を30mlずつ6つに分取して、pHを1.0〜2.0の範囲内で一定の値に調整した。
【0089】
【表13】
【0090】
溶媒抽出の操作は、実施例1と同様にして行った。そして、混合溶液の水相と有機相とを分液漏斗で分離し、抽出残液(水相)に対して誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)を用いた元素分析を行い、各種金属の水相から有機相への抽出率を求めた。下記表14及び図10に、pHと各種金属の抽出率との関係を示す。
【0091】
【表14】
【0092】
実施例4の結果から、実施例1で使用したものとは異なるリン酸系抽出剤を用いた混合抽出剤でも、スカンジウムと不純物元素とを効率的に分離することができ、スカンジウムを高純度で精製することができた。なお、図11に、スカンジウムと不純物元素であるFe3+及びZr4+との分離係数を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11