特許第6374208号(P6374208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374208
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   G02B6/44 371
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-96709(P2014-96709)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2015-215403(P2015-215403A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】大野 昌史
(72)【発明者】
【氏名】松澤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】福手 貴朗
(72)【発明者】
【氏名】工藤 由人
(72)【発明者】
【氏名】塩原 悟
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中根 久彰
(72)【発明者】
【氏名】浜口 真弥
【審査官】 里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−220858(JP,A)
【文献】 特開2012−118450(JP,A)
【文献】 特開2004−069828(JP,A)
【文献】 特開2008−070601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線と、
第1の融点を有する材料により形成され、前記光ファイバ心線を被覆する外被と、
前記第1の融点よりも高い第2の融点を有する材料により形成され、前記外被と熱融着していない状態で前記外被内に前記光ファイバ心線を第1の方向から挟むように配置された一対のセパレータと、
前記外被内に前記光ファイバ心線を前記第1の方向と交差する第2の方向から挟むように配置され、抗張力体を被覆物で被覆した一対の抗張力体被覆体と、
を備え、
前記抗張力体被覆体は、前記抗張力体被覆体を長手方向に直交する断面で見たとき、前記一対のセパレータと対向する辺が前記一対のセパレータと接触した状態で、前記一対のセパレータに挟まれており、
前記一対のセパレータと前記一対の抗張力体被覆体とが協働することにより、前記第1の方向の前記一対のセパレータの間と前記第2の方向の前記一対の抗張力体被覆体の間とで、前記光ファイバ心線に前記外被が接触しないよう前記光ファイバ心線を収納する収納空間を形成し、
前記収納空間の前記第1の方向の距離は、前記一対のセパレータによって挟まれた前記抗張力体被覆体の前記第1の方向の厚さと同じであり、
前記収納空間内に収納されている前記光ファイバ心線の前記第1の方向の厚さは、前記抗張力体被覆体の前記第1の方向の厚さと同じである
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
複数枚のテープ心線が前記第1の方向に積層されることによって、前記抗張力体被覆体の前記第1の方向の厚さと同じ厚さを有する前記光ファイバ心線が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバ心線は、複数の光ファイバ心線ユニットに分割されており、
前記第1の方向に積層された複数枚のテープ心線をラッピングチューブによって包むか、前記第1の方向に積層された複数枚のテープ心線をバンチング糸またはラッピングテープによって巻回することによって、前記抗張力体被覆体の前記第1の方向の厚さと同じ厚さを有する前記光ファイバ心線ユニットを形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記抗張力体被覆体は、前記外被と熱融着していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記外被には、前記セパレータの幅内で前記光ファイバ心線の外側に位置する箇所にノッチが形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記ノッチは、前記抗張力体被覆体の幅の範囲内に形成されていることを特徴とする請求項5記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記光ファイバケーブルは、前記外被内に支持線が配置されている自己支持構造の光ファイバケーブルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線を外被で被覆した光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
通信事業者と加入者宅とを直接光ファイバで結んで高速通信サービスを提供するFTTH(Fiber To The Home)サービスが普及している。光ファイバケーブルは、概略的には、光ファイバ心線及び抗張力体を熱可塑性樹脂よりなる外被で被覆した構造を有する。
【0003】
通信事業者と接続されて加入者宅近傍まで配線された光ファイバケーブルを加入者宅まで引き込む際には、光ファイバケーブルの中間部で外被を切断して外被を部分的に除去し、光ファイバ心線を取り出す中間後分岐の作業が必要となる。なお、光ファイバケーブルより取り出された光ファイバ心線はドロップケーブルと接続されて、ドロップケーブルが加入者宅へと引き込まれる。この種の光ファイバケーブルや中間後分岐は、例えば特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−70601号公報
【特許文献2】特開2012−220858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバケーブルより光ファイバ心線を取り出す際に、光ファイバ心線を大きく曲げてしまうと、光の伝送損失を増加させてしまう。そこで、中間後分岐の際には、光ファイバ心線を極力曲げないようにして取り出すことが必要となる。
【0006】
特許文献1に記載の光ファイバケーブルにおいては、外被内に、光ファイバ心線を挟むように光ファイバ心線に接触させた合成樹脂製の一対の剥離テープを配置している。これによって、光ファイバケーブルからの光ファイバ心線の取り出しを容易にして、光ファイバ心線に加わる曲げによる伝送損失の増加を低減させている。
【0007】
ところが、特許文献1に記載の光ファイバケーブルにおいては、光ファイバ心線が直接外被と接触している部分を有するため、光ファイバ心線が外被に食い込んだ状態で光ファイバケーブルが製造される場合がある。光ファイバ心線が外被に食い込んでいると、中間後分岐の際に外被に食い込んだ光ファイバ心線を外被から取り外すために光ファイバ心線を曲げてしまうことがある。それゆえ、伝送損失を増加させてしまうことになる。
【0008】
特許文献2に記載の光ファイバケーブルにおいては、光ファイバ心線を一対の抗張力体で挟み、光ファイバ心線及び抗張力体の全体を特許文献1の剥離テープと同様の一対の介在テープで挟み、これらの全体を外被によって被覆している。光ファイバ心線は、一対の抗張力体と一対の介在テープとで囲まれた空間内に収納されている。これによって、光ファイバ心線に外被が直接接触することをなくし、光ファイバケーブルからの光ファイバ心線の取り出しを容易にしている。
【0009】
ところが、特許文献2に記載の光ファイバケーブルにおいては、断面円形の抗張力体が一対の介在テープで挟まれている構成である。従って、抗張力体と介在テープとは長手方向に延びる線接触の状態となっている。光ファイバ心線と抗張力体と介在テープに対する外被の材料による押出被覆の際には、抗張力体と介在テープにはかなりの圧力がかかる。その結果、抗張力体と介在テープとの間から光ファイバ心線を収納する空間内に外被の材料が入り込む可能性が高い。
【0010】
空間内に外被の材料が入り込んで光ファイバ心線に接触してしまうと、光ファイバケーブルからの光ファイバ心線の取り出しが困難となり、伝送損失を増加させてしまう。
【0011】
そこで、光ファイバ心線に外被の材料が接触する可能性を低減させることができ、特許文献1,2に記載の光ファイバケーブルよりもさらに、中間後分岐の際に光ファイバケーブルより光ファイバ心線を容易に取り出すことができ、光ファイバ心線に加わる曲げを少なくすることができる光ファイバケーブルが望まれている。
【0012】
本発明はこのような要望に対応するため、光ファイバ心線に外被の材料が接触する可能性を従来よりも低減させることができ、中間後分岐の際に光ファイバケーブルより光ファイバ心線を容易に取り出すことができ、光ファイバ心線に加わる曲げを少なくすることができる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、光ファイバ心線と、第1の融点を有する材料により形成され、前記光ファイバ心線を被覆する外被と、前記第1の融点よりも高い第2の融点を有する材料により形成され、前記外被と熱融着していない状態で前記外被内に前記光ファイバ心線を第1の方向から挟むように配置された一対のセパレータと、前記外被内に前記光ファイバ心線を前記第1の方向と交差する第2の方向から挟むように配置され、抗張力体を被覆物で被覆した一対の抗張力体被覆体とを備え、前記抗張力体被覆体は、前記抗張力体被覆体を長手方向に直交する断面で見たとき、前記一対のセパレータと対向する辺が前記一対のセパレータと接触した状態で、前記一対のセパレータに挟まれており、前記一対のセパレータと前記一対の抗張力体被覆体とが協働することにより、前記第1の方向の前記一対のセパレータの間と前記第2の方向の前記一対の抗張力体被覆体の間とで、前記光ファイバ心線に前記外被が接触しないよう前記光ファイバ心線を収納する収納空間を形成し、前記収納空間の前記第1の方向の距離は、前記一対のセパレータによって挟まれた前記抗張力体被覆体の前記第1の方向の厚さと同じであり、前記収納空間内に収納されている前記光ファイバ心線の前記第1の方向の厚さは、前記抗張力体被覆体の前記第1の方向の厚さと同じであることを特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0014】
上記の構成において、第1の例として、複数枚のテープ心線が前記第1の方向に積層されることによって、前記抗張力体被覆体の前記第1の方向の厚さと同じ厚さを有する前記光ファイバ心線が構成されている。
【0015】
上記の構成において、第2の例として、前記光ファイバ心線は、複数の光ファイバ心線ユニットに分割されており、前記第1の方向に積層された複数枚のテープ心線をラッピングチューブによって包むか、前記第1の方向に積層された複数枚のテープ心線をバンチング糸またはラッピングテープによって巻回することによって、前記抗張力体被覆体の前記第1の方向の厚さと同じ厚さを有する前記光ファイバ心線ユニットを形成している。
【0016】
上記の構成において、前記抗張力体被覆体は、前記外被と熱融着していることが好ましい。
【0017】
上記の構成において、前記外被には、前記セパレータの幅内で前記光ファイバ心線の外側に位置する箇所にノッチが形成されていることが好ましい。このとき、前記ノッチは、前記抗張力体被覆体の幅の範囲内に形成されていることがより好ましい。
【0018】
上記の構成において、前記光ファイバケーブルは、前記外被内に支持線が配置されている自己支持構造の光ファイバケーブルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光ファイバケーブルによれば、光ファイバ心線に外被の材料が接触する可能性を従来よりも低減させることができ、中間後分岐の際に光ファイバケーブルより光ファイバ心線を容易に取り出すことができ、光ファイバ心線に加わる曲げを少なくすることができる。よって、本発明の光ファイバケーブルによれば、伝送損失の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
図2図1の部分拡大断面図である。
図3】光ファイバケーブルの外被を切断して分割するケーブル分割工具を説明するための断面図である。
図4】第1実施形態の光ファイバケーブルの外被を分割した状態を示す断面図である。
図5】第2実施形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
図6】第3実施形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
図7】第4実施形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
図8】比較例の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、各実施形態の光ファイバケーブルについて、添付図面を参照して説明する。各実施形態において、実質的に同一部分には同一符号を付している。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の光ファイバケーブル101を長手方向と直交する方向に切断した断面図である。図1に示すように、光ファイバケーブル101は、光ファイバ心線10と、抗張力体20を被覆物80で被覆した一対の抗張力体被覆体28と、一対のセパレータ30と、支持線50とを図示のような位置関係で配置して、熱可塑性樹脂よりなる外被60で被覆した構造を有する。
【0023】
光ファイバ心線10と、抗張力体被覆体28と、支持線50とは、互いに平行に配置されている。第1実施形態の光ファイバケーブル101は、自己支持構造の光ファイバケーブルである。
【0024】
抗張力体20は、例えば鋼線やアラミド繊維等により形成される。被覆物80は熱可塑性樹脂よりなり、図示のように、断面が長方形または正方形で、抗張力体20を被覆している。支持線50は、例えば鋼線により形成される。抗張力体20は、光ファイバ心線10の長手方向にかかる張力に抗して、光ファイバ心線10が必要以上に伸ばされないようにする役割を果たす。支持線50は、架空のための吊り線である。
【0025】
セパレータ30及び抗張力体被覆体28は、光ファイバ心線10と外被60とを分離する役割を果たす。セパレータ30及び抗張力体被覆体28の具体的な構成については後述する。
【0026】
外被60は、断面が略長方形であり、光ファイバ心線10と抗張力体被覆体28とセパレータ30とを被覆する光ファイバ被覆部60aと、断面が円形であり、支持線50を被覆する支持線被覆部60bと、光ファイバ被覆部60aと支持線被覆部60bとを連結する首部60cとを有する。
【0027】
光ファイバケーブル101は、光ファイバ被覆部60aと支持線被覆部60bとの全体が首部60cによって連結されていてもよい。また、光ファイバケーブル101は、光ファイバ被覆部60aと支持線被覆部60bとが間欠的に首部60cで連結されていてもよい。この場合、光ファイバケーブル101は、支持線被覆部60b(支持線50)に対して光ファイバ被覆部60a(光ファイバ心線10)が弛んでいる弛み付き自己支持構造の光ファイバケーブルであってもよい。
【0028】
第1実施形態においては、図1の左右方向に2列、上下方向に3行の6枚の4心テープ心線11によって光ファイバ心線10を構成している。光ファイバ心線10は、1枚の4心テープ心線11であってもよく、任意の複数枚の4心テープ心線11であってもよい。光ファイバ心線10を構成するテープ心線の心数は4心に限定されず、任意の複数の心数のテープ心線でよい。
【0029】
光ファイバ心線10を構成するテープ心線は、間欠固定テープ心線であってもよい。間欠固定テープ心線とすると、中間後分岐の際に1または複数本の光ファイバ心線を取り出しやすくなる。さらには、光ファイバ心線10は光ファイバ1本のみの光ファイバ素線であってもよく、複数の光ファイバ素線で構成してもよい。光ファイバ心線10の構成は任意である。
【0030】
光ファイバ心線10の図1における上下方向には、一対のセパレータ30が配置されており、一対のセパレータ30は光ファイバ心線10を挟んでいる。即ち、一対のセパレータ30は、光ファイバケーブル101を断面で見たとき、光ファイバ心線10を第1の方向(図1では上下方向)から挟むように配置されている。セパレータ30の横幅は光ファイバ心線10の横幅よりも広い。
【0031】
光ファイバ心線10の図1における左右方向には、一対の抗張力体被覆体28が配置されており、一対の抗張力体被覆体28は光ファイバ心線10を挟んでいる。即ち、一対の抗張力体被覆体28は、光ファイバケーブル101を断面で見たとき、光ファイバ心線10を第1の方向と交差する第2の方向(図1では左右方向)から挟むように配置されている。
【0032】
図1に示すように、抗張力体被覆体28も、一対のセパレータ30によって挟まれている。
【0033】
セパレータ30と抗張力体被覆体28とは協働して、光ファイバ心線10に外被60が接触しないよう光ファイバ心線10を収納する収納空間38を形成している。光ファイバ心線10がセパレータ30と抗張力体被覆体28とによって囲まれることによって、光ファイバケーブル101の製造工程で、外被60の材料が光ファイバ心線10に付着するのを防止する。
【0034】
外被60及び被覆物80は、例えばポリエチレンによって形成される。外被60及び被覆物80を、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)で形成することが好ましい。外被60と被覆物80とを同じ材料で形成してもよいし、異なる材料で形成してもよい。例えば、外被60をLLDPEで形成し、被覆物80をHDPEで形成することができる。外被60を形成する材料の融点を第1の融点とする。
【0035】
セパレータ30は、外被60の材料が有する第1の融点よりも高い第2の融点を有する材料によって形成される。セパレータ30を例えばナイロン扁平糸によって構成することができる。
【0036】
外被60は、外被60の材料を押し出して光ファイバ心線10,抗張力体被覆体28,セパレータ30を被覆させる押出被覆によって形成される。セパレータ30は第2の融点を有するので、押出被覆の際に外被60の材料(ポリエチレン)と熱融着しない。
【0037】
抗張力体被覆体28は、押出被覆の際に外被60と熱融着する材料であることが好ましい。本実施形態では、抗張力体被覆体28と外被60とは熱融着している。抗張力体被覆体28は、セパレータ30と熱融着していない。
【0038】
ところで、抗張力体20を被覆物80で被覆した抗張力体被覆体28は、光ファイバケーブル101の製造工程とは別工程で予め製造しておく。また、抗張力体被覆体28の製造工程と光ファイバケーブル101の製造工程とを一連の工程とし、上流側の工程で抗張力体被覆体28を製造し、連続的に、下流側の工程で硬化した状態の抗張力体被覆体28を用いて光ファイバケーブル101を製造することもできる。
【0039】
図1に示すように、外被60における光ファイバ被覆部60aの断面形状は略長方形となっている。図1の上下方向に位置する長手方向の辺には、断面V字状のノッチ60nが形成されている。それぞれの辺に2箇所ずつノッチ60nが形成されている。ノッチ60nは、セパレータ30の幅の範囲内で、光ファイバ心線10よりも外側に形成されている。
【0040】
図2に示すように、ノッチ60nを被覆物80の幅W80の範囲内に形成することが好ましい。ノッチ60nを抗張力体20の直径D20の範囲内に形成することはさらに好ましい。ノッチ60nの先端部60n1を断面円形の抗張力体20の中心20cと略一致させた位置に形成することが最も好ましい。
【0041】
図2では、4箇所のノッチ60nのうちの1つのノッチ60nのみを示しているが、他の3つのノッチ60nも同様である。
【0042】
首部60cを切断することによって、光ファイバ被覆部60aと支持線被覆部60bとを分離することができる。ノッチ60nは、光ファイバ被覆部60aを部分的に切断して分割し、光ファイバ心線10の取り出しを容易にするために設けられている。光ファイバ被覆部60aにノッチ60nを設けることは必須ではないが、設けることが好ましい。
【0043】
本実施形態においては、図2に示すように、抗張力体被覆体28の図2における上側の辺81とセパレータ30とが接触しており、図2における下側の辺82とセパレータ30とが接触している。即ち、抗張力体被覆体28は、抗張力体被覆体28を長手方向に直交する断面で見たとき、一対のセパレータ30と対向する辺81,82がセパレータ30と接触した状態で、一対のセパレータ30に挟まれている。
【0044】
従って、抗張力体被覆体28とセパレータ30とは、幅W80で抗張力体20の長手方向に延びる面で接触している。
【0045】
従って、光ファイバ心線10,抗張力体被覆体28,セパレータ30に対する外被60の材料による押出被覆の際に、抗張力体被覆体28とセパレータ30とに圧力がかかっても、抗張力体被覆体28とセパレータ30との間から収納空間38内に外被60の材料が入り込む可能性はほとんどない。
【0046】
図3は、光ファイバ被覆部60aを切断して分割するためのケーブル分割工具70を概略的に示している。図3では図示していないが、ケーブル分割工具70は、首部60cを切断して光ファイバ被覆部60aと支持線被覆部60bとを分離する機能も有している。図3は、光ファイバ被覆部60aと支持線被覆部60bとを分離して、光ファイバ被覆部60aをケーブル分割工具70に装着した状態を示している。
【0047】
ケーブル分割工具70は、4箇所のノッチ60nに対応した切り込み刃71を有する。切り込み刃71の長さはノッチ60nの深さよりも長い。よって、光ファイバ被覆部60aをケーブル分割工具70で挟むと、図3に示すように、切り込み刃71は、先端がセパレータ30に達する程度まで光ファイバ被覆部60aに食い込む。
【0048】
図3に示す状態で、光ファイバ被覆部60aを紙面と直交方向に引っ張ることによって、光ファイバ被覆部60aの所定長さの範囲を切断して光ファイバ被覆部60aを分割することができる。中間後分岐の際には、光ファイバ被覆部60aを任意の長さで切断して光ファイバ被覆部60aを除去する。
【0049】
図4は、光ファイバ被覆部60aを切断して、分割片60p1〜60p4に分割した状態を示している。上記のように、光ファイバ心線10はセパレータ30によって挟まれており、しかも、ノッチ60nは、光ファイバ心線10よりも外側に形成されているので、切り込み刃71が光ファイバ心線10を傷付けることはない。
【0050】
本実施形態では、ノッチ60nを被覆物80の幅W80の範囲内に形成しているので、切り込み刃71による力を辺81,82の全体で受けることになる。よって、ケーブル分割工具70で光ファイバ被覆部60aを切断する際に、抗張力体20が図3の左右方向にずれてしまうことがない。
【0051】
セパレータ30は外被60と熱融着していないため、セパレータ30は分割片60p1,60p2と分離されている。抗張力体被覆体28は外被60と熱融着しているため、分割片60p3,60p4とは分離せず一体化している。
【0052】
光ファイバ心線10は、一対のセパレータ30と一対の抗張力体被覆体28とによって囲まれた収納空間38内に位置しており、光ファイバ心線10における図1の上下及び左右の面のいずれも外被60には接触していない。従って、光ファイバ心線10が外被60に食い込むことはない。
【0053】
光ファイバ心線10は抗張力体被覆体28に潜り込んでいないため、光ファイバ被覆部60aの分割時に、光ファイバ心線10と抗張力体被覆体28とを良好に分離することができる。
【0054】
よって、ケーブル分割工具70によって光ファイバケーブル101における外被60(光ファイバ被覆部60a)を切断すると、図4に示すように、光ファイバ心線10を、セパレータ30と、分割片60p1,60p2と、抗張力体被覆体28が熱融着した分割片60p3,60p4とから分離することができる。
【0055】
従って、光ファイバ心線10における1または複数本の光ファイバ心線を取り出す際に、光ファイバ心線を大きく曲げてしまうようなことはなく、伝送損失の増加を最小限に抑えることが可能となる。
【0056】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の光ファイバケーブル102を長手方向と直交する方向に切断した断面図である。図5において、図1に示す第1実施形態の光ファイバケーブル101と実質的に同一部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略することとする。
【0057】
第2実施形態の光ファイバケーブル102においては、光ファイバ心線10を、2ユニットの光ファイバ心線ユニット12で形成している。3枚の4心テープ心線11の束をラッピングチューブ121によって包むことによって光ファイバ心線ユニット12を形成している。
【0058】
光ファイバ心線ユニット12は、3ユニット以上であってもよい。1ユニット内の4心テープ心線11の枚数も限定されない。4心テープ心線11を間欠固定テープ心線としてもよい。
【0059】
第2実施形態の光ファイバケーブル102の構成によれば、光ファイバ心線10が複数の光ファイバ心線ユニット12に分割されているから、光ファイバ心線10を区別しやすくすることができる。よって、誤配線の可能性を低減させることが可能となる。
【0060】
光ファイバケーブル102におけるその他の構成は、光ファイバケーブル101と同様である。
【0061】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の光ファイバケーブル103を長手方向と直交する方向に切断した断面図である。図6において、図1に示す第1実施形態の光ファイバケーブル101と実質的に同一部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略することとする。
【0062】
第3実施形態の光ファイバケーブル102においては、光ファイバ心線10を、2ユニットの光ファイバ心線ユニット12で形成している。3枚の4心テープ心線11の束をバンチング糸122によって巻回することによって、それぞれの光ファイバ心線ユニット12を形成している。バンチング糸122の代わりにラッピングテープによって4心テープ心線11の束を巻回してもよい。
【0063】
第3実施形態においても、光ファイバ心線ユニット12は3ユニット以上であってもよく、1ユニット内の4心テープ心線11の枚数も限定されない。4心テープ心線11を間欠固定テープ心線としてもよい。
【0064】
第3実施形態の光ファイバケーブル103の構成においても、第2実施形態の光ファイバケーブル102と同様の効果を奏する。
【0065】
光ファイバケーブル103におけるその他の構成は、光ファイバケーブル101と同様である。
【0066】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の光ファイバケーブル104を長手方向と直交する方向に切断した断面図である。図7において、図1に示す第1実施形態の光ファイバケーブル101と実質的に同一部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略することとする。
【0067】
第4実施形態の光ファイバケーブル104は、第1実施形態の光ファイバケーブル101における支持線50を有さず、実質的に光ファイバ被覆部60aと等価な部分のみで構成したものである。
【0068】
図7に示すように、光ファイバケーブル104は、光ファイバ心線10と、一対の抗張力体被覆体28と、一対のセパレータ30とを光ファイバケーブル101と同様の位置関係で配置して、熱可塑性樹脂よりなる外被64で被覆した構造を有する。外被64は外被60と外形形状が異なるのみであり、外被64を形成する材料は外被60を形成する材料と同じである。
【0069】
外被64には、外被60におけるノッチ60nと同様のノッチ64nが形成されている。
【0070】
図5または図6の構成で、図7と同様に、支持線50を有さない光ファイバケーブルとしてもよい。以上説明した第1〜第4実施形態は適宜組み合わせ可能である。
【0071】
<具体的な実施例と比較例との比較結果>
ここで、以上説明した各実施形態の具体的な実施例と後述する比較例との比較結果について説明する。実施例1〜3及び比較例1それぞれで、中間後分岐の試験を行い、光ファイバ心線10の外被60への食い込みの有無を確認し、中間後分岐の作業中の伝送損失の変動を評価した。
【0072】
(実施例1)
図1に示す第1実施形態の光ファイバケーブル101を次のような条件で試作して実施例1とした。光ファイバ心線10を図1に示すように6枚の4心テープ心線11による24心とし、抗張力体20には直径0.5mmの鋼線を用いた。抗張力体20を被覆物80としてHDPEで断面の一辺が約0.85mmの略正方形となるように被覆して、抗張力体被覆体28を形成した。
【0073】
一対の抗張力体被覆体28を、両者の内側の幅が2.6mmとなるように、図1のように配置した。
【0074】
セパレータ30として、幅4.3mm、厚さ0.2mmのナイロン扁平糸を用いた。
【0075】
外被60をLLDPEで形成し、光ファイバ被覆部60aの長手方向の長さを5.5mm、短手方向の長さを3.3mmとした。光ファイバ被覆部60aにおける長手方向の辺の2つのノッチ60nの間隔を2.8mmとした。
【0076】
(実施例2)
図5に示す第2実施形態の光ファイバケーブル102を実施例1と同じ条件で試作して実施例2とした。4心テープ心線11として間欠固定テープ心線を用いた。光ファイバ心線10の構成以外は、実施例1と同じ条件とした。
【0077】
(実施例3)
図6に示す第3実施形態の光ファイバケーブル103を実施例3とした。4心テープ心線11として間欠固定テープ心線を用い、PPよりなるバンチング糸122を用いて2ユニットの光ファイバ心線ユニット12を構成した。光ファイバ心線10の構成以外は、実施例1と同じ条件とした。
【0078】
(比較例1)
図8に示すように、図1に示す第1実施形態の光ファイバケーブル101における抗張力体被覆体28の代わりに、抗張力体20のみを用いて構成した光ファイバケーブル201を比較例1とした。光ファイバ心線10の図8における左右端部は外被60と接触している。4心テープ心線11として間欠固定テープ心線を用いた。抗張力体被覆体28を用いていない以外は、実施例1と同じ条件とした。
【0079】
以上の実施例1〜3及び比較例1それぞれの光ファイバケーブルを用意し、中間後分岐の試験において、光ファイバ心線10の外被60への食い込みの有無を確認し、伝送損失の変動を評価した。外被60に光ファイバ心線10が食い込んでいない光ファイバケーブルを“○”、食い込んでいる場合がある光ファイバケーブルを“×”とした。
【0080】
伝送損失の変動が1dB以下であった光ファイバケーブルを“○”、1dBを超えた光ファイバケーブルを“×”とした。
【0081】
光ファイバ心線10の外被60への食い込みの有無と、伝送損失の変動の試験結果を表1にまとめて示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示すように、実施例1〜3では、光ファイバ心線10の外被60への食い込みがなく、伝送損失の変動も1dB以下で、良好な結果が得られた。比較例1では、抗張力体被覆体28を用いていないため、間欠固定テープ心線の間欠部に外被60が入り込み、間欠固定テープ心線を外被60から引き剥がす必要があった。間欠固定テープ心線を外被60から引き剥がす際に大きな曲げが加わり、伝送損失が増加した。
【0084】
本発明は以上説明した各実施形態や各実施形態の具体的な実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。抗張力体被覆体28とセパレータ30とは、長手方向に直交する断面で見たときに、セパレータ30と対向する抗張力体被覆体28の辺で接触すればよい。従って、抗張力体被覆体28の断面形状は長方形または正方形に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0085】
10 光ファイバ心線
11 4心テープ心線
20 抗張力体
28 抗張力体被覆体
30 セパレータ
38 収納空間
50 支持線
60,64 外被
80 被覆物
101〜104 光ファイバケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8