【実施例】
【0021】
次の実施例1〜10により、本発明の(実施例品1〜10)を得た。また、比較として比較例品1〜7を得た。これらの乳化安定性および浸透性を次の評価基準に従って調べ、評価した。
また、これらの平均粒子径を、レーザ回折式粒子径分布測定機器(SALD−3100、島津製作所)にて測定するとともに、この粒子径を調整するための均質機における均質圧(前均質圧、後均質圧)を記録した。
なお、本発明において「%」及び「部」は特に断らない限り、「重量%」及び「重量部」を表す。
【0022】
〔乳化安定性評価基準〕
本発明の土壌改良剤(水中油型乳化物)または比較例品にアジ化ナトリウム500ppmを加えて防腐処理した後、スタンディングパウチに約200ml分注した。これを各種温度帯(5℃、25℃、35℃、5℃⇔40℃)の保管条件にて2週間放置した場合の液状安定性を目視にて評価した。
評価において、いずれかの温度条件においても凝固が観察されたものを×、凝固が観察されなかったものを○とした。
【0023】
〔浸透性評価基準〕
本発明の土壌改良剤(水中油型乳化物)または比較例品を水に溶解し、0.3%溶液を得た。ガラス瓶に湿土(山砂+粘土(関東化成株式会社製:トチクレー))50gと上記の0.3%溶液100mlを添加し、初期のTOC(総有機炭素濃度)値を測定した。その後、30分間振とうした後に、1〜6時間静置し、上澄みをサンプリングし、上澄み中のTOC値を測定し、初期のTOC値の比較から土壌吸着量(乾燥土中の吸着量)[mg/kg]を次の式1によって算出した。なお、乾燥土重量は前記湿土50gを別途乾燥し、測定した。なお、関東化成株式会社製の粘土であるトチクレーは、二酸化ケイ素(SiO
2)が約70%、酸化アルミニウム(Al
2O
3)が約14%、及び酸化第二鉄が(Fe
2O
3)が約6%含まれている。
【0024】
[式1]
【0025】
次に上澄み中のTOC値と土壌吸着量から次の式2および式3によって遅延係数Rを算出した。遅延係数とは各溶質が土粒子へ吸着することによる移動の遅れを、水の移動を1とした場合の比で表したものである。この遅延係数Rを浸透性評価基準とし、数値が100以上のものを×、100未満のものを○とした。評価では、この数値が低いほど浸透性が良いことになる。
【0026】
[式2]
【0027】
[式3]
【0028】
〔実施例1〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:5)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(実施例品1)を得た。
【0029】
〔実施例2〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:30)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(実施例品2)を得た。
【0030】
〔実施例3〕
75℃に加温したパーム核油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:60)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(実施例品3)を得た。
【0031】
〔実施例4〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:8)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(実施例品4)を得た。
【0032】
〔実施例5〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:24)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(実施例品5)を得た。
【0033】
〔比較例品1〕
75℃に加温したナタネ油(20℃でのSFC:0)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(比較例品1)を得た。
【0034】
〔比較例品2〕
75℃に加温したパーム核油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:65)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(比較例品2)を得た。
【0035】
〔比較例品3〕
75℃に加温したパーム核油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:82)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(比較例品3)を得た。
【0036】
〔試験例1〕
これらの実施例品1〜5、比較例品1〜3について、評価基準に従い乳化安定性および浸透性を調べ、得られた結果を表1に示した。
なお、総合評価は乳化安定性、浸透性の少なくともどちらかの評価結果が×の場合は×とした。以下、実施例、比較例において同様に総合評価を示した。
【0037】
【表1】
【0038】
〔実施例6〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:10)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.5μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(実施例品6)を得た。
【0039】
〔実施例7〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:10)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(実施例品7)を得た。
【0040】
〔実施例8〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:10)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が1.0μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(実施例品8)を得た。
【0041】
〔比較例品4〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:10)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.3μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(比較例品4)を得た。
【0042】
〔比較例品5〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:10)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が1.5μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(比較例品5)を得た。
【0043】
〔試験例2〕
実施例品6〜8、比較例品4、5について、評価基準に従い乳化安定性および浸透性を調べ、得られた結果を表2に示した。
【0044】
【表2】
【0045】
〔実施例9〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:10)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド1.0部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水65.06部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(実施例品9)を得た。
【0046】
〔実施例10〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:10)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド2.0部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水64.06部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(実施例品10)を得た。
【0047】
〔比較例品6〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:10)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.4部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水65.66部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(比較例品6)を得た。
【0048】
〔比較例品7〕
75℃に加温したパーム油とヤシ油を原料とする加工油脂(20℃でのSFC:10)30.5部に、ジアセチル酒石酸モノグリセリド2.8部、大豆レシチン0.32部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.24部を添加して油相を調製した。
70℃に加温した水63.26部にポリグリセリン脂肪酸エステル0.4部、カゼインナトリウム1.68部、クエン酸ナトリウム0.8部を添加して水相を調製した。
これら油相と水相の混合物をTKホモミクサーにて1400rpmで予備乳化を行った後、均質機にて平均粒子径が0.7μmとなるように均質し、144℃で8秒間加熱した後、10℃まで冷却することで水中油型乳化物(比較例品7)を得た。
【0049】
〔試験例3〕
実施例品6、9、10、比較例品6、7について、評価基準に従い乳化安定性および浸透性を調べ、得られた結果を表3に示した。
【0050】
【表3】
【0051】
〔試験例4〕
実施例品4、実施例品5、比較例品1、比較例品3を用いて、揮発性有機化合物(VOC)の分解能の評価を実施した。
評価は、140mL容のメジューム瓶に、土(山砂:粘土(関東化成株式会社製/トチクレー)=10:1)を140g(湿土)添加し、水道水を75mL、易分解性の栄養剤として、10%グルコン酸ソーダ溶液を2.3mL、5%重曹溶液を1.4mL、VOC分解菌培養液5mL、トリクロロエチレン(TCE)溶液(TCE濃度:約900mg/L)を5mL添加し、約2ヶ月23〜25℃で培養し、VOC分解微生物を増殖させ、TCE及びTCEの分解生成物である1,2−ジクロロエチレンが分解されたことを確認した。
次に、実施例品4、実施例品5、比較例品1、比較例品3の乳化油脂組成物溶液(約30%溶液)を7.7mL添加し、同時に、TCE溶液(TCE濃度:約900mg/L)2mL添加した時の、VOC濃度を測定した。なお、分解能の持続性を確認するため、VOCが分解されたことを確認した時点で、TCE溶液(TCE濃度:約900mg/L)2mLを追加で添加し、同様にVOC濃度を測定した。結果を
図1〜
図4に示す。
また、合せて各試験区におけるpHの変化について、
図5に示す。対照区としては、乳化油脂組成物溶液を添加しない区の数値を図示した。
【0052】
図1から
図4の結果から、比較例品1は液体油脂であるが、TCEを追加で添加した日以降について分解能が持続しないことが明らかとなった。一方、実施例品4、実施例品5については、良好なVOC分解能が持続し、添加後、60日経過時点においても良好なVOC分解能を示した。また比較例品3については、分解速度が実施例品4、実施例品5と比較して遅く、分解効率が悪いことが明らかとなった。
また、
図5の結果から、比較例品1では、他の乳化油脂組成物よりもpHが顕著に低下していることが明らかとなった。すなわち、比較例品1において、VOC分解が進まない要因の1つとして、比較例品1が微生物分解されやすく有機酸が過剰に生成されたために、pHが低下したと考えられる。
【0053】
試験例1から試験例4の結果から、汚染土壌浄化用栄養剤として、乳化安定性と浸透性を両立させ、かつ効率的なVOC分解能を長期的に持続的させることを期待するためには、20℃におけるSFCの値を1〜60の範囲内とすることが適当であることが明らかとなった。