(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374313
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】乾燥餌およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23K 10/20 20160101AFI20180806BHJP
A23K 20/105 20160101ALI20180806BHJP
A23K 50/80 20160101ALI20180806BHJP
A01K 97/04 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
A23K10/20
A23K20/105
A23K50/80
A01K97/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-251698(P2014-251698)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-111948(P2016-111948A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】市川 督朗
(72)【発明者】
【氏名】藤原 幸弘
【審査官】
田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭48−031798(JP,B1)
【文献】
特開2008−255068(JP,A)
【文献】
特開平08−298940(JP,A)
【文献】
特開昭52−107998(JP,A)
【文献】
特開昭63−007750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00−50/90
A01K 97/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り用生き餌を乾燥させた乾燥餌であって、
釣り用生き餌に対して50質量%以上の塩類を散布ないし塗布して乾燥した本体と、
前記本体に包含および/または付着させた軟化・保護剤と、
前記本体の外面に付着させた余剰水分吸着剤と、を含み、
前記軟化・保護剤が、多価アルコール、および糖アルコールを含む、乾燥餌。
【請求項2】
前記塩類が塩化ナトリウムを主成分とする粉末又は顆粒である、請求項1に記載の乾燥餌。
【請求項3】
前記余剰水分吸着剤が、塩類、糖類、セルロースおよび吸水性樹脂から選択される1種以上である、請求項1または2に記載の乾燥餌。
【請求項4】
釣り用生き餌に対して50質量%以上の塩類を散布ないし塗布して水分を抜く工程、
さらに乾燥する工程、
釣り用生き餌に対して50質量%以上の塩類を散布ないし塗布して水分を抜き、さらに乾燥した本体に軟化・保護剤を包含および/または付着させる工程、および
さらに余剰水分吸着剤を前記本体の外面に付着させる工程、を含み、
前記軟化・保護剤が、多価アルコール、および糖アルコールを含む乾燥餌の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存が可能であり、使用時にも使いやすく、しかもその効果が生き餌と遜色がない釣り用餌と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
釣りでは、対象魚や釣り方により様々な餌(疑似餌・人工釣り餌も含む)が使用されている。そのなかでも海釣りでは、イソメ・ゴカイ類は多くの対象魚に向く餌として、その活き餌が多用されている。また、淡水での釣りでは、ミミズやブドウ虫やヤナギ虫等の昆虫の幼虫類も活き餌として広く利用されている。一方、近年のルアーフィッシングの人気やソフトルアーの手軽さから、また、女性を中心に活き餌が苦手という人のために、イソメ・ゴカイ類やミミズ、幼虫類を模した人工釣り餌が提案されている。活き餌を用いるのと、主に合成材料である可塑性樹脂から製造する疑似餌・人工釣り餌を用いるのとで、それぞれ長短がある。
活き餌は、単位重量あたりのコストが安く、しかも集魚性、魚の摂取性が高く、よく釣れる。しかし、生き物であるが故に保存には注意が必要であり、日持ちがしないため、釣りの当日ないし前日に買い求めなければならず、また釣り場で余った場合には廃棄せざるを得ないなど無駄が発生する、といった問題がある。
【0003】
一方の人工釣り餌は、活き餌の主な問題である保存性をカバーできることが長所である。すなわち、死んで腐ることがないので買い置きができ、釣り場で余った場合でもそのままパッケージに密封して保存し、次の釣行に使用することができる。しかも臭いは人工的なものなので扱いやすい(制御可能である)。しかし、人工釣り餌は、集魚性や魚の摂取性の点、特にアタリは出るが針掛かりしないというような魚の摂取性の点で活き餌には及ばず、活き餌と比較して「釣れない」という問題がある。特に、対象魚の活性が低い場合には、釣果の差は顕著である。さらに、人工釣り餌は多くが樹脂性で難分解性あるため、根掛かり等の場合には長期間、水中に残留する点も問題とされている。
そのような状況においても、人工釣り餌の利便性から活き餌と人工釣り餌を併用する釣り人も少しずつではあるが増えつつある。すなわち、人工釣り餌を買い置きしつつ、活き餌も釣りの当日や前日に買い求め、活き餌が無くなったら人工釣り餌に切り替えたり、釣り場で併用したりするといった使い方をしている。
【0004】
そこで、疑似餌・人工釣り餌の集魚性、魚の摂取性を改善し、原材料を工夫することで疑似餌に生分解性を持たせるということが提案されている。例えば、特許文献1には、水溶性グルコマンナンと、ゲル化剤として天然ガム類を使用した人工釣り餌が記載されており、従来のマンナンの代わりに水溶性グルコマンナンを使用することで、マンナンに起因する刺激臭が無くても集魚性も改善する製造技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、こんにゃく芋からこんにゃく精粉を製造する際の副産物であり、グルコマンナンを含むこんにゃくトビ粉の刺激臭を押さえることで、活き餌の集魚性能に近づけようという技術が開示されている。この技術は、産業上の利用価値の低いこんにゃくトビ粉を採用し、そのこんにゃくトビ粉を有機溶剤にて洗浄処理してから混練するというものである。
【0006】
また、特許文献3には、疑似餌用樹脂材、特に生分解性の樹脂剤の可塑化剤に未加熱の魚の好む摂餌性物を浸漬することにより摂餌性物の脂溶性成分を溶出させ、当該可塑剤を使用して疑似餌を製造することが記載されている。この技術では、摂餌性物の脂溶性成分が長時間持続して水中に分散させることで、集魚効果を改善することが開示されている。しかし、これらの技術から得られる疑似餌・人工釣り餌の集魚性、魚の摂取性は十分なものとはいえず、釣果の点では活き餌には到底及ばないという問題は解決されていない。
【0007】
一方、ゴカイ・イソメ類を塩漬けして水分を除き、乾燥状態で保存したり、ミミズを乾燥したりして保存することが一部の釣り人の間で行われている。この塩漬け・乾燥餌は、ある程度の期間は保存することができるだけでなく、集魚性や魚の摂取性の点では活き餌に近いが、作製に熟練を要するだけでなく、そのままでは固くて針付けができず、すぐには使用できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−84884号公報
【特許文献2】特開2004−8029号公報
【特許文献3】特開2006−333734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
人工餌は、上記したように長期間の保存が可能であり、疑似餌(ソフトルアー)のように気軽に使用できるが、釣果の点で活き餌には遠く及ばず、多くの釣果を期待できないという問題があった。
一方、活き餌は、日持ちせず、通常は釣りの当日または前日に買い求めなければならず、余った活き餌は廃棄せざるを得なかった。また、活き餌を扱うのに抵抗のある釣り人も少なくない。近年は女性の釣り人も増えており、特にその傾向が顕著化している。
そこで、活き餌と同じように魚が釣れ、かつ長期間の保存が可能であり、疑似餌(ソフトルアー)のように気軽に使用できる釣り餌が求められていた。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、イソメ・ゴカイ類やミミズ、幼虫類等の釣り用活き餌と同等の集魚性および魚の摂取性があり、かつ常温で保存可能であり、乾燥餌でありながら柔軟性がありすぐに使用可能な釣り餌を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、イソメ・ゴカイ類やミミズ、幼虫類等の釣り用生き餌に塩類を散布ないし塗布して水分を抜いて乾燥し、乾燥した本体に軟化・保護剤を包含および/または付着させ、そして本体にさらに余剰水分吸着剤を外面に付着させることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)釣り用生き餌を乾燥させた乾燥餌であって、釣り用生き餌に対して50質量%以上の塩類を散布ないし塗布して乾燥した本体と、前記本体に包含および/または付着させた軟化・保護剤と、前記本体の外面に付着させた余剰水分吸着剤と、を含む、乾燥餌。
(2)前記塩類が塩化ナトリウムを主成分とする粉末又は顆粒である、前記(1)に記載の乾燥餌。
(3)前記余剰水分吸着剤が、塩類、糖類、セルロースおよび吸水性樹脂から選択される1種以上である、前記(1)または(2)に記載の乾燥餌。
(4)前記軟化・保護剤が、多価アルコール、糖類および糖アルコールから選択される1種以上である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の乾燥餌。
(5)前記釣り用生き餌が、イソメ・ゴカイ類、ミミズ、幼虫類から選択される1種以上である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の乾燥餌。
【0012】
(6)釣り用生き餌に対して50質量%以上の塩類を散布ないし塗布して水分を抜く工程、さらに乾燥する工程、釣り用生き餌に対して50質量%以上の塩類を散布ないし塗布して水分を抜き、さらに乾燥した本体に軟化・保護剤を包含および/または付着させる工程、およびさらに余剰水分吸着剤を前記本体の外面に付着させる工程、を含む、乾燥餌の製造方法。
(7)前記塩類が塩化ナトリウムを主成分とする粉末又は顆粒である、前記(6)に記載の製造方法。
(8)前記余剰水分吸着剤が、塩類、糖類、セルロースおよび吸水性樹脂から選択される1種以上である、前記(6)または(7)に記載の製造方法。
(9)前記軟化・保護剤が、多価アルコール、糖類および糖アルコールから選択される1種以上である、前記(6)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の乾燥餌の所定量を樹脂製容器または袋にパッキングしたパッキング乾燥餌。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、イソメ・ゴカイ類やミミズ、幼虫類等の釣り用活き餌と同等の集魚性および魚の摂取性があり、かつ常温で保存可能であり、乾燥餌でありながら柔軟性がありすぐに使用可能な釣り餌が提供される。本発明の乾燥餌は、活き餌と同等の集魚性および魚の摂取性があるため、活き餌と同等の釣果が期待できる。さらに、常温で保存可能なため、活き餌のように釣りの当日や前日に買い求める必要もなく、買い置きすることができる。また、乾燥餌でありながら柔軟性があるため、水戻しせずに釣り針に掛けることができ、すぐに使用することができ、使い勝手が非常によい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る乾燥餌を製造する手順の一例を示す工程図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る乾燥餌の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(乾燥餌)
本発明は、イソメ・ゴカイ類やミミズ、幼虫類等の釣り用活き餌を乾燥させた乾燥餌に関する。詳細には、釣り用生き餌を乾燥させた乾燥餌であって、釣り用生き餌に対して50質量%以上の塩類を散布ないし塗布して乾燥した本体(
図2の符号10)と、前記本体に包含および/または付着させた軟化・保護剤(
図2の符号20)と、前記本体の外面に付着させた余剰水分吸着剤(
図2の符号30)と、を含む、乾燥餌に関する。
【0016】
<釣り用生き餌>
本発明における釣り用生き餌としては、イソメ・ゴカイ類やミミズ、幼虫類等が挙げられる。イソメ・ゴカイ類としては、通常、釣り餌として使用されるものであれば特に限定はされないが、例えばイワムシ(マムシ、岩イソメ)、アオゴカイ(青イソメ)、イシゴカイ(ジャリメ、赤イソメ)、コガネムシ(ウチワゴカイ)、ギボシイソメ(チロリ)が例示される。ミミズとしては、釣り餌として使用できるものであれば特に限定されないが、「キジ」と称されるミミズ、「ドバミミズ」と称されるフトミミズが例示される。また、幼虫類としては、「ブドウ虫」と称されるハチミツガ、ブドウシカシバの幼虫や、「ヤナギ虫」と称されるホクトウガの幼虫、カイコの幼虫、ハチの幼虫等が挙げられる。
【0017】
<釣り用生き餌に散布ないし塗布する塩類>
釣り用生き餌に散布ないし塗布する塩類としては、本体から水分(ドリップ)を抜くことができるものであれば特に限定されないが、塩化ナトリウムを主成分とする粉末又は顆粒、例えば海水を濃縮/乾燥し、必要に応じて精製した、いわゆる塩の粉末または顆粒が入手の容易性、価格、使用者や環境への影響等の点から好ましい。釣り用生き餌に散布ないし塗布する塩類の量としては、その生体重量に対して50%質量以上であるとしているが、60〜100質量%が好ましく、65〜80質量%であるのがより好ましい。
また、乾燥時及びその後の釣り用生き餌の色落ちや変色等の品質低下を防止するために、塩類に加えて、有機酸、例えば、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、メタリン酸、ポリリン酸、乳酸、酢酸、コハク酸、フィチン酸またはその塩の1種以上、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸またはその塩を添加してもよい。使用する有機酸またはその塩の添加量は、その種類により異なるが、通常は0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%程度である。
【0018】
<軟化・保護剤>
本発明において、乾燥した本体に包含および/または付着させる軟化・保護剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、多価アルコール、糖類および糖アルコールから選択される1種以上を含むものが好ましい。多価アルコールとしては、食品添加物して使用が認められているグリセリン、プロピレングリコールなどが好ましい。また、糖類としては、ショ糖、果糖、ブドウ糖、トレハロース、デキストリンが好ましく、ショ糖、デキストリン、トレハロースがより好ましい。また、糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、エリトリトール、キシリトールが挙げられるが、ソルビトールが好ましい。
【0019】
軟化・保護剤は、多価アルコール、糖類および糖アルコールから選択される2種以上を含むものがより好ましい。各成分の組成は、例えば多価アルコール50〜80質量%(好ましくは60〜80質量%)、糖類0〜20質量%(好ましくは0〜10質量%)および糖アルコール0〜30質量%(好ましくは5〜25質量%)の範囲である。
これら以外の成分として、必要に応じて水、集魚性・摂取性を高める成分(例えば、養魚用飼料、釣り餌、撒き餌に使用される各種エキス、アミノ酸)、保存剤(例えば、ソルビン酸およびその塩、グリシン)、酸化防止剤、増粘多糖類、着香料、色素を適宜配合してもよい。
なお、軟化・保護剤は、乾燥餌を釣り針に刺しやすいよう、柔軟な状態にするだけでなく、乾燥餌の製造工程中から、製造後の保管・流通から使用前まで、乾燥餌の破損を防止し、さらに最終製品として、乾燥餌の干からびた感じを軽減し、その外観をも改善することができる。
【0020】
<余剰水分吸着剤>
余剰水分吸着剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塩類、糖類、セルロースおよび吸水性樹脂から選択される1種以上を含むものが好ましい。余剰水分吸着剤に配合する塩類としては、塩類としては、本体から水分(ドリップ)を抜くことができるものであれば特に限定されないが、塩化ナトリウムを主成分とするものが好ましい。糖類としては、ショ糖、果糖、ブドウ糖、デキストリン、澱粉、セルロース等が挙げられる。吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸ナトリウム、生分解性のセルロース誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいが、複数組み合わせて用いてもよい。
これら以外の成分として、必要に応じて、着香料(フレーバー等)、色素、保存剤(例えば、ソルビン酸およびその塩、グリシン等)、集魚性・摂取性を高める成分(例えば、養魚用飼料、釣り餌、撒き餌に使用される各種エキス、アミノ酸)を適宜配合してもよい。
【0021】
(乾燥餌の製造方法)
本発明の乾燥餌は、(1)釣り用生き餌に対して50質量%以上の塩類を散布ないし塗布して水分を抜く工程、(2)さらに乾燥する工程、(3)釣り用生き餌に対して50質量%以上の塩類を散布ないし塗布して水分を抜き、さらに乾燥した本体に軟化・保護剤を包含および/または付着させる工程、および(4)さらに余剰水分吸着剤を前記本体の外面に付着させる工程、を含む製造方法により好適に製造される。
【0022】
釣り用生き餌としてイソメ・ゴカイ類を使用する場合、イソメ・ゴカイ類は、工程(1)の前に、水切り等によりある程度水分を除去するのが好ましい。また、工程(1)で塩類を散布ないし塗布した際に、イソメ・ゴカイ類やミミズが活きている場合には、イソメ・ゴカイ類やミミズがちぎれたり、暴れてイソメ・ゴカイ類やミミズどうしが絡まるのを防止するために、冷却して動きを抑えるか、または仮死状態にしておくのが好ましい。あるいは、イソメ・ゴカイ類やミミズ、各種幼虫類の冷凍品を使用してもよい。また、最終製品である乾燥餌の品質のばらつきを低減するため、工程(1)の前に、使用する釣り用生き餌の太さやサイズによって分別するのが好ましい。
【0023】
工程(1)において、釣り用生き餌に塩類を散布ないし塗布すると、釣り用生き餌から水分(ドリップ)が出てくる。この状態で、通常は5時間以上、好ましくは10時間以上、例えば半日から2日間程度おく。工程(1)の時間が短いと、釣り用生き餌からのドリップの抜けが十分ではなく、工程(2)に要する時間が長くなってしまう。一方、工程(1)において、釣り用生き餌に塩類を散布ないし塗布した状態で、冷凍または冷蔵保存してもよい。この場合、上述したように、塩類に加えて有機酸またはその塩を添加するのが好ましい。
【0024】
工程(2)において、塩類を散布ないし塗布した釣り用生き餌をメッシュや布の上に置くか、吊すなどしてドリップを除去し、その表面がべとつかなくなるまで乾燥する。乾燥は、そのまま静置してもよいが、送風ないし温風で乾燥してもよく、天日干しでもよい。ここでの乾燥が不十分であると、乾燥餌の保存性が低下し、腐敗や品質低下を招くおそれがあるため、好ましくない。
【0025】
工程(3)において、前工程で乾燥した釣り用生き餌(本体)に対して、軟化・保護剤を塗布ないし噴霧するか、本体を軟化・保護剤に浸漬するなどして軟化・保護剤を本体に包含および/または付着させる。軟化・保護剤を包含および/または付着させた本体は、すぐに工程(4)に供してもよいが、最終製品の外観がよくなるため、1本ずつ伸ばすなど整形するのが好ましい。また、整形後、さらに乾燥工程に供して、表面がべとつかなくなるまで乾燥するのが好ましい。
【0026】
工程(4)において、本体の外面に余剰水分吸着剤を付着させる。その手段としては余剰水分吸着剤を付着させことができる手段であれば特に限定されないが、例えば散布ないし塗布が挙げられる。乾燥餌製品を樹脂製容器または袋にパッキングする場合には、通常は余剰水分吸着剤を付着させた後にパッキングするが、付着前の本体を容器または袋に収納した後、これに余剰水分吸着剤を添加してパッキングすることで本体に付着させてもよい。
【0027】
本発明の乾燥餌、およびその乾燥餌をパッキングしたパッキング乾燥餌は、常温での長期保管が可能であり、活き餌のような保管の難しさがほとんどなく、樹脂製の疑似餌よりも環境に優しいものである。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0029】
〔実施例1〕
下記の工程にしたがって、乾燥餌を製造した。
生きている青イソメ(以下、単に「イソメ」と称することがある。)を、太さのサイズによって、「太め」と「細め」の二種類に分けた。生きた状態のイソメを水洗いし、細かいメッシュの上へ置くことで「水切り」を行った。水切り後、イソメを冷凍庫へ入れ、仮死状態にした。イソメ10キログラムに対して7キログラムの塩化ナトリウム粉末を塗布し、全てのイソメの表面が塩化ナトリウム粉末で覆われるようにした。塩化ナトリウム粉末を塗布したイソメを細かいメッシュ上に置き、そのまま一晩静置し、ドリップを抜き、イソメを乾燥した。乾燥後、イソメ本体をまっすぐに整形し、下記の表1−1に示す軟化・保護剤に5分間浸漬してイソメ本体に軟化・保護剤を包含・付着させた。これを一晩、室温に置いて乾燥させた後、表1−2に示す余剰水分吸着剤をまぶして、密封可能な樹脂製の袋に入れて封をしてパッキング乾燥餌を製造した。製造30日後、袋から乾燥餌を取り出して釣り針を刺してみると、難なく針が刺さり、餌付けをすることができた。
【0030】
【表1-1】
【0031】
【表1-2】
【0032】
〔比較例1〕
次の工程にしたがって、乾燥餌を製造した。
実施例1と同様に、イソメを「太め」と「細め」の二種類に分けた。生きた状態のイソメを水洗いし、細かいメッシュの上へ置くことで「水切り」を行った。水切り後、イソメを冷凍庫へ入れ、仮死状態にした。イソメ10キログラムに対して7キログラムの塩化ナトリウム粉末を塗布し、全てのイソメの表面が塩化ナトリウム粉末で覆われるようにした。塩化ナトリウム粉末を塗布したイソメを細かいメッシュ上に置き、そのまま一晩静置し、ドリップを抜き、イソメを乾燥した。乾燥後、前記表1−2に示す余剰水分吸着剤をまぶした乾燥イソメを密封可能な樹脂製の袋に入れて封をしてパッキング乾燥餌を製造した。製造30日後、袋から乾燥餌を取り出して釣り針を刺そうとしたが、乾燥餌が固くて針が刺さらず、そのままでは餌付けができなかった。
【0033】
〔比較例2〕
乾燥餌を樹脂製の袋に入れる前に、余剰水分吸着剤をまぶさなかった以外は、実施例1と同様にして、パッキング乾燥餌を製造した。製造30日後、袋から乾燥餌を取り出して釣り針を刺してみると、難なく針が刺さり、餌付けをすることができた。しかし、保管中に乾燥イソメ本体からドリップが浸みだしてしまい、製品として外観に劣っていた。
【0034】
〔試験例1〕
実施例1で製造したパッキング乾燥餌、比較例3として市販の人工餌(M社製;イソメタイプ(中)茶)、比較例4として市販の人工餌(B社製;イソメタイプ細身)、および対照として活き餌(青イソメ)を使用し、東京湾での船からのちょい投げによるキス釣りにて、5人の釣り人によりその効果を試験した。なお、使用する釣り餌以外は、同じ道具及び仕掛けを使用した。また、試験者(釣り人)や釣り餌による差がでないよう、各試験者は30分間間隔で使用する釣り餌を変更し、試験者全員が全ての釣り餌を2時間ずつ使用した。その結果、実施例1のパッキング乾燥餌は、対照の生き餌には及ばないものの高い釣果が得られた。一方、市販の人工餌での釣果は、実施例1のパッキング乾燥餌には及ばず、十分な釣果が得られなかった。これらの結果を下記の表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
〔実施例2〕
イソメに対して70質量%の塩化ナトリウム粉末と1質量%のクエン酸を塗布し、全てのイソメの表面が塩化ナトリウム粉末(クエン酸を含む)で覆われるようにし、その状態で2ヶ月冷凍保存した。解凍後、実施例1と同様に処理して、パッキング乾燥餌を製造した。このパッキング乾燥餌は、冷凍保存によるイソメの色落ち等の品質劣化は認められなかった。また、製造30日後、袋から乾燥餌を取り出して釣り針を刺してみると、難なく針が刺さり、餌付けをすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、イソメ・ゴカイ類やミミズ、幼虫類等の釣り用活き餌と同等の集魚性および魚の摂取性があり、かつ常温で保存可能であり、乾燥餌でありながら柔軟性がありすぐに使用可能な釣り餌が提供される。このため、本発明は、釣り餌の製造・販売だけでなく、釣りを含むアウトドアスポーツのインストラクター事業などにおいて、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0038】
10 本体(釣り用生き餌に対して50質量%以上の塩類を散布ないし塗布して乾燥した本体)
20 軟化・保護剤
30 余剰水分吸着剤
40 芳香剤