特許第6374329号(P6374329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374329有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、および電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374329
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20180806BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180806BHJP
   C07D 491/048 20060101ALN20180806BHJP
   C07D 487/22 20060101ALN20180806BHJP
   C07D 405/14 20060101ALN20180806BHJP
   C07D 307/91 20060101ALN20180806BHJP
   C07D 401/14 20060101ALN20180806BHJP
   C07D 235/08 20060101ALN20180806BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   C09K11/06 655
   C09K11/06 640
   C09K11/06 620
   C09K11/06 635
   C09K11/06 660
   !C07D491/048
   !C07D487/22
   !C07D405/14
   !C07D307/91
   !C07D401/14
   !C07D235/08
【請求項の数】35
【全頁数】115
(21)【出願番号】特願2015-22735(P2015-22735)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2016-27606(P2016-27606A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2017年8月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-131948(P2014-131948)
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 俊成
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭
(72)【発明者】
【氏名】田崎 聡美
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/013947(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/057684(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/092083(WO,A1)
【文献】 特開2011−198900(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/099451(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0168734(US,A1)
【文献】 特許第5669163(JP,B2)
【文献】 国際公開第2015/098975(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/199943(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
発光層と、
陰極と、を含み、
前記発光層は、第一の化合物、第二の化合物および第三の化合物を含み、
前記第一の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物または下記一般式(10)で表される化合物であり、
前記第二の化合物の一重項エネルギーは、前記第一の化合物の一重項エネルギーよりも大きく、
前記第三の化合物は、蛍光発光性の化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(前記一般式(1)において、
Xaは、酸素原子、硫黄原子、NR、またはCRであり、
Xb,Xc,Xd,およびXeは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR、またはCRであり、
ただし、Xa,Xb,Xc,Xd,およびXeの少なくとも一つは、NRであり、XbおよびXcが同時に単結合となることはなく、XdおよびXeが同時に単結合となることはなく、
は、水素原子、または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、および
−L−Rで表される基からなる群から選択され、
は、単結合、または連結基であり、Lが連結基である場合の連結基は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環
形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、または置換基であり、R〜Rが置換基である場合の置換基は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
,Z,Z,およびZは、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環からなる群から選択される環構造であり、ただし、NRにおけるRの少なくとも一つが、−L−Rで表される基であり、当該Rが、下記一般式(11)で表される基である。)
【化2】
(前記一般式(11)において、
〜Yは、それぞれ独立に、窒素原子またはCR14であり、
14は、水素原子または置換基であり、R14が置換基である場合の置換基としては、
フッ素原子、
シアノ基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換シリル基、
置換ホスフィンオキシド基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
複数のR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR14のうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R14同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよく、ただし、Y〜Yのうち少なくとも一つが窒素原子であるか、またはY〜Yのうち少なくとも一つがCR14であり、当該R14の少なくとも一つがシアノ基である。)
【化3】
(前記一般式(10)において、
は、水素原子、または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、および
−L−Rで表される基からなる群から選択され、
は、単結合、または連結基であり、Lが連結基である場合の連結基は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環
形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
は、水素原子、または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
は、酸素原子、硫黄原子、NR10、またはCR1112であり、
11〜Y22は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR13であり、
10〜R13は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R10〜R13が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
複数のR13は、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR13のうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R13同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一の化合物は、前記一般式(1)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Z,前記Z,前記Z,および前記Zは、それぞれ独立に、置換もしくは無
置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Xa,前記Xb,前記Xc,前記Xd,および前記Xeのうち2つ以上が、それぞれ独立して、NRである有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Y〜Yのうち少なくとも一つが窒素原子である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Y〜Yのうち少なくとも一つがCR14であり、前記R14の少なくとも一つが、シアノ基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一の化合物は、前記一般式(10)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Rと前記−L−Rとが、互いに異なる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一の化合物は、下記一般式(10A)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化4】
(前記一般式(10A)において、X,Y11〜Y22,L,RおよびRは、それぞれ、前記一般式(10)におけるX,Y11〜Y22,L,RおよびRと同義であり、Rは、置換基であり、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される。)
【請求項10】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Rと前記Lとが同じであり、前記Rと前記Rとが同じである有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Xは、酸素原子または硫黄原子である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Y11〜Y22は、CR13であり、前記R13は、水素原子である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
請求項7から請求項12のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Rは、下記一般式(11A)で表される基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化5】
(前記一般式(11A)において、
〜Yは、それぞれ独立に、窒素原子またはCR14であり、
14は、水素原子または置換基であり、R14が置換基である場合の置換基としては、
フッ素原子、
シアノ基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換シリル基、
置換ホスフィンオキシド基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
複数のR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR14のうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R14同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。)
【請求項14】
請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Y〜Yは、それぞれ独立に、CR14である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Y〜Yのうち少なくとも一つが窒素原子である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Y〜Yのうち少なくとも一つがCR14であり、前記R14の少なくとも一つが、シアノ基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一の化合物は、遅延蛍光発光性の化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Rおよび前記Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Rは、無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であり、前記Lは、連結基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Rは、下記一般式(11a)で表される基、下記一般式(11b)で表される基、下記一般式(11c)で表される基、下記一般式(11d)で表される基、または下記一般式(11e)で表される基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化6】
【化7】
(前記一般式(11a)〜(11e)において、Y〜Yは、それぞれ前記一般式(11)におけるY〜Yと同義である。)
【請求項21】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Rは、下記一般式(11f)で表される基、下記一般式(11g)で表される基、または下記一般式(11h)で表される基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化8】
(前記一般式(11g)〜(11h)において、Yは、それぞれ前記一般式(11)におけるYと同義である。)
【請求項22】
請求項20または請求項21に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Y〜Yは、CR14であり、前記R14は、水素原子である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項23】
請求項1から請求項22までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第二の化合物は、一つの分子中に下記一般式(21)で表される部分構造および下記一般式(22)で表される部分構造のうち少なくともいずれかを含む化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化9】
(前記一般式(21)において、
21〜Y26は、それぞれ独立に、窒素原子、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
ただし、Y21〜Y26のうち少なくともいずれかは、前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
前記一般式(22)において、
31〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
ただし、Y31〜Y38のうち少なくともいずれかは、前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子である。)
【請求項24】
請求項23に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記一般式(21)で表される部分構造は、下記一般式(23)および下記一般式(24)からなる群から選択される少なくともいずれかの基として前記第二の化合物に含まれる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化10】
(前記一般式(23)および前記一般式(24)において、Y21,Y22,Y24,およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
21は、水素原子、または置換基であり、R21が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。)
【請求項25】
請求項23または請求項24に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記一般式(22)で表される部分構造は、下記一般式(25),下記一般式(26),下記一般式(27),下記一般式(28),下記一般式(29),および下記一般式(20a)からなる群から選択される少なくともいずれかの基として前記第二の化合物に含まれる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化11】
【化12】
(前記一般式(25)〜(29),(20a)において、
31〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR22であり、
22は、水素原子、または置換基であり、R22が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R22における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
前記一般式(25)〜(26)において、Xは、窒素原子であり、
前記一般式(27)〜(29),(20a)において、Xは、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
23は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。)
【請求項26】
請求項1から請求項25のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第三の化合物は、一つの分子中に下記一般式(3)で表される部分構造のうち少なくともいずれかを含む化合物であり、下記一般式(3)で表される部分構造が複数ある場合、複数の部分構造は互いに同一または異なる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化13】
(前記一般式(3)において、
は、環形成炭素数10〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基を示し、
Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される基を示し、
11〜L13は、それぞれ独立に、単結合または連結基を示し、L11〜L13が連結基である場合の連結基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基の二価の残基からなる群から選択され、
pは1〜4の整数を示す。)
【請求項27】
請求項26に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記Xは、ナフタレン、フェナントレン、フルオランテン、アントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、クリセン、ピセン、ジフェニルアントラセン、フルオレン、トリフェニレン、ルビセン、ベンゾアントラセン、フェニルアントラセン、ビスアントラセン、ジアントリルベンゼン、およびジベンゾアントラセンからなる群から選択される縮合芳香族炭化水素環の残基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項28】
請求項1から請求項27のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第三の化合物は、下記一般式(30)で表される化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化14】
[(前記一般式(30)において、
aは、0または1であり、
aが0の場合、LとArとが直接結合し、Ar,Ar,R121〜R128の少なくとも2つが下記一般式(31)で表される基であり、
aが1の場合、Ar,Ar,R121〜R128,R131〜R138の少なくとも2つが下記一般式(31)で表される基であり、
下記一般式(31)で表される基以外のAr,Ar,R121〜R128,R131〜R138は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基であり、Ar,Ar,R121〜R128,R131〜R138が置換基である場合の置換基は、
ハロゲン原子、
シアノ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2〜30のアルキニル基、
置換シリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のトリフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアラルキル基、および
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群から選択
され、
およびLは、それぞれ独立に、単結合または連結基であり、LおよびLが連結基である場合の連結基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される。)
【化15】
(前記一般式(31)において、
11,L12およびL13は、それぞれ独立に、単結合または連結基を示し、L11〜L13が連結基である場合の連結基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される基である。)]
【請求項29】
請求項28に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記aが0であり、
前記Arおよび前記Arが、前記一般式(31)で表される基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項30】
請求項28に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記aが0であり、
前記R122および前記R126が、前記一般式(31)で表される基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項31】
請求項28に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記aが1であり、
前記Arおよび前記Arが、前記一般式(31)で表される基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項32】
請求項1から請求項31のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記陽極と前記発光層との間に、正孔輸送層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項33】
請求項1から請求項32のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層と前記陰極との間に、電子輸送層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項34】
請求項1から請求項33のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器。
【請求項35】
下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(10)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の第一の化合物
前記第一の化合物の一重項エネルギーよりも大きい一重項エネルギーを有する第二の化合物と、
蛍光発光性の第三の化合物とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【化16】
(前記一般式(1)において、
Xaは、酸素原子、硫黄原子、NR、またはCRであり、
Xb,Xc,Xd,およびXeは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR、またはCRであり、
ただし、Xa,Xb,Xc,Xd,およびXeの少なくとも一つは、NRであり、XbおよびXcが同時に単結合となることはなく、XdおよびXeが同時に単結合となることはなく、
は、水素原子、または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、および
−L−Rで表される基からなる群から選択され、
は、単結合、または連結基であり、Lが連結基である場合の連結基は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環
形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、または置換基であり、R〜Rが置換基である場合の置換基は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
,Z,Z,およびZは、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環からなる群から選択される環構造であり、ただし、NRにおけるRの少なくとも一つが、−L−Rで表される基であり、当該Rが、下記一般式(11)で表される基である。
【化17】
(前記一般式(11)において、
〜Yは、それぞれ独立に、窒素原子またはCR14であり、
14は、水素原子または置換基であり、R14が置換基である場合の置換基としては、
フッ素原子、
シアノ基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換シリル基、
置換ホスフィンオキシド基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
複数のR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR14のうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R14同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよく、ただし、Y〜Yのうち少なくとも一つが窒素原子であるか、またはY〜Yのうち少なくとも一つがCR14であり、当該R14の少なくとも一つがシアノ基である。)
【化18】
(前記一般式(10)において、
は、水素原子、または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、および
−L−Rで表される基からなる群から選択され、
は、単結合、または連結基であり、Lが連結基である場合の連結基は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環
形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
は、水素原子、または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
は、酸素原子、硫黄原子、NR10、またはCR1112であり、
11〜Y22は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR13であり、
10〜R13は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R10〜R13が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
複数のR13は、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR13のうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R13同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という場合がある。)に電圧を印加すると、陽極から正孔が、また陰極から電子が、それぞれ発光層に注入される。そして、発光層において、注入された正孔と電子とが再結合し、励起子が形成される。このとき、電子スピンの統計則により、一重項励起子、及び三重項励起子が25%:75%の割合で生成する。
一重項励起子からの発光を用いる蛍光型の有機EL素子は、内部量子効率25%が限界といわれており、携帯電話やテレビ等のフルカラーディスプレイへ応用されつつある。一重項励起子に加えて三重項励起子を利用し、有機EL素子をさらに効率的に発光させることが期待されている。
【0003】
このような背景から、遅延蛍光を利用した高効率の蛍光型の有機EL素子が提案され、研究がなされている。
例えば、TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence、熱活性化遅延蛍光)機構が研究されている。このTADF機構は、一重項準位と三重項準位とのエネルギー差(ΔST)の小さな材料を用いた場合に、三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差が熱的に生じる現象を利用する機構である。熱活性化遅延蛍光については、例えば、『安達千波矢編、「有機半導体のデバイス物性」、講談社、2012年3月22日、261−262ページ』に記載されている。このTADF機構を利用した有機EL素子が、例えば、特許文献1や非特許文献1に開示されている。
しかしながら、有機EL素子としては、発光効率をさらに向上させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/013947号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】第61回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集 18a−E3−7
【非特許文献2】第61回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集 18a−E3−8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、発光効率を向上させることのできる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供すること、当該有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を提供すること、および当該有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、陽極と、発光層と、陰極と、を含み、前記発光層は、第一の化合物、第二の化合物および第三の化合物を含み、前記第一の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であり、前記第二の化合物の一重項エネルギーは、前記第一の化合物の一重項エネルギーよりも大きく、前記第三の化合物は、蛍光発光性の化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0008】
【化1】
【0009】
(前記一般式(1)において、Xaは、酸素原子、硫黄原子、NR、またはCRであり、Xb,Xc,Xd,およびXeは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR、またはCRであり、ただし、Xa,Xb,Xc,Xd,およびXeの少なくとも一つは、NRであり、XbおよびXcが同時に単結合となることはなく、XdおよびXeが同時に単結合となることはなく、Rは、水素原子、または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、および−L−Rで表される基からなる群から選択され、Lは、単結合、または連結基であり、Lが連結基である場合の連結基は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、または置換基であり、R〜Rが置換基である場合の置換基は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、Z,Z,Z,およびZは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環からなる群から選択される環構造である。)
【0010】
また、本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器が提供される。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、前記一般式(1)で表される第一の化合物と、前記第一の化合物の一重項エネルギーよりも大きい一重項エネルギーを有する第二の化合物と、蛍光発光性の第三の化合物とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、発光効率を向上させることのできる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供すること、当該有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を提供すること、および当該有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の概略構成を示す図である。
図2】過渡PLを測定する装置の概略図である。
図3】過渡PLの減衰曲線の一例を示す図である。
図4】発光層における第一の化合物、第二の化合物、および第三の化合物のエネルギー準位およびエネルギー移動の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第一実施形態〕
(有機EL素子の素子構成)
本実施形態に係る有機EL素子は、一対の電極間に有機層を備える。この有機層は、有機化合物で構成される層少なくとも一層からなる。あるいは、この有機層は、有機化合物で構成される複数の層が積層されてなる。有機層は、無機化合物をさらに含んでいてもよい。本実施形態の有機EL素子において、有機層のうち少なくとも一層は、発光層である。ゆえに、有機層は、例えば、一つの発光層で構成されていてもよいし、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、障壁層等の有機EL素子で採用され得る層を含んでいてもよい。
【0015】
有機EL素子の代表的な素子構成としては、例えば、次の(a)〜(e)などの構成を挙げることができる。
(a)陽極/発光層/陰極
(b)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/陰極
(c)陽極/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(d)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/障壁層/電子注入・輸送層/陰極
上記の中で(d)の構成が好ましく用いられる。ただし、本発明は、これらの構成に限定されない。なお、上記「発光層」とは、発光機能を有する有機層である。前記「正孔注入・輸送層」は「正孔注入層および正孔輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味する。前記「電子注入・輸送層」は「電子注入層および電子輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味する。有機EL素子が、正孔注入層および正孔輸送層を有する場合には、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層が設けられていることが好ましい。また、有機EL素子が電子注入層および電子輸送層を有する場合には、電子輸送層と陰極との間に電子注入層が設けられていることが好ましい。また、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層は、それぞれ、一層で構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよい。
【0016】
図1に、本実施形態における有機EL素子の一例の概略構成を示す。
有機EL素子1は、透光性の基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された有機層10と、を含む。有機層10は、陽極3側から順に、正孔注入層6、正孔輸送層7、発光層5、電子輸送層8、および電子注入層9が、この順番で積層されて構成される。
【0017】
(発光層)
有機EL素子1の発光層5は、第一の化合物、第二の化合物、および第三の化合物を含む。発光層5は、金属錯体を含んでもよいが、本実施形態では、燐光発光性の金属錯体を含まないことが好ましく、燐光発光性の金属錯体以外の金属錯体も含まないことが好ましい。
【0018】
<第一の化合物>
本実施形態の第一の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。第一の化合物は、遅延蛍光発光性の化合物であることが好ましい。本実施形態の第一の化合物は、金属錯体ではない。
【0019】
【化2】
【0020】
前記一般式(1)において、
Xaは、酸素原子、硫黄原子、NR、またはCRであり、
Xb,Xc,Xd,およびXeは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、NR、またはCRであり、
ただし、Xa,Xb,Xc,Xd,およびXeの少なくとも一つは、NRであり、XbおよびXcが同時に単結合となることはなく、XdおよびXeが同時に単結合となることはなく、
は、水素原子、または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、および
−L−Rで表される基からなる群から選択され、
は、単結合、または連結基であり、Lが連結基である場合の連結基は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、または置換基であり、R〜Rが置換基である場合の置換基は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
,Z,Z,およびZは、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環からなる群から選択される環構造である。
なお、本明細書において、Xeが表すのは、キセノンの元素記号ではない。
【0021】
ここで、前記一般式(1)において、Xaと、ZおよびZを結ぶ単結合とは、Zで表される環構造の隣り合う原子、並びにZで表される環構造の隣り合う原子に、それぞれ結合する。XbとXcとは、Zで表される環構造の隣り合う原子、およびZで表される環構造の隣り合う原子に、それぞれ結合する。XdとXeとは、Zで表される環構造の隣り合う原子、およびZで表される環構造の隣り合う原子に、それぞれ結合する。
前記一般式(1)において、例えばZがベンゼン環である場合、ZとXaと単結合とは、以下の結合様式を有する(波線部分は、Zとの結合箇所を表す)。
【0022】
【化3】
【0023】
また、前記一般式(1)において、例えば、ZおよびZがともにベンゼン環である場合、ZとXaと単結合とZとは、以下のいずれかの結合様式を有する(波線部分は、XbおよびXcとの結合箇所を表す)。
【0024】
【化4】
【0025】
本実施形態において、前記Z,Z,Z,およびZは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環であることが好ましく、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素環であることがより好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、およびトリフェニレニレン環からなる群から選択される芳香族炭化水素環であることがさらに好ましく、ベンゼン環であることが特に好ましい。
【0026】
本実施形態において、前記一般式(1)のXa,Xb,Xc,XdおよびXeのうち2つ以上が、それぞれ独立して、NRであることが好ましい。さらには、XaがNRであり、かつXb,Xc,XdおよびXeのうち少なくとも1つ以上がNRであることも好ましい。
熱活性遅延蛍光性を実現させる有機化合物の一例として、分子内でドナー部位(電子供与性を有する部位)とアクセプター部位(電子受容性を有する部位)とを結合させた化合物が挙げられる。前記一般式(1)で表される第一の化合物が含有する窒素原子が増えると、第一の化合物のドナー部位の電子供与性が高まり、第一の化合物のアクセプター部位の電子受容性とのバランスが好適になる。その結果、第一の化合物は、遅延蛍光発光性の材料として、好ましい性質を有する。
【0028】
本実施形態において、前記Rの少なくとも一つは、−L−Rで表される基であることが好ましい。
【0029】
本実施形態において、前記第一の化合物は、下記一般式(10)で表されることも好ましい。下記一般式(10)で表される第一の化合物は、高い三重項エネルギーを保持できる結合様式の環を有する。そのため、下記一般式(10)で表される第一の化合物は、特に、青から緑色の波長領域の高い発光エネルギーを発光層内に効率的に閉じ込めることができるので、好ましい。
【0030】
【化5】
【0031】
前記一般式(10)において、
,R,およびLは、前記一般式(1)におけるR,R,およびLとそれぞれ同義であり、
は、酸素原子、硫黄原子、NR10、またはCR1112であり、
11,Y12,Y13,Y14,Y15,Y16,Y17,Y18,Y19,Y20,Y21,およびY22は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR13であり、
10,R11,R12,およびR13は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R10,R11,R12,およびR13が置換基である場合の置換基は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
複数のR13は、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR13のうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R13同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。
【0032】
本実施形態において、前記Rおよび前記Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であることが好ましい。
【0033】
本実施形態において、前記Rと前記−L−Rで表される基とが、互いに異なることが好ましい。すなわち、前記一般式(10)で表される構造において、窒素原子に結合するRと、別の窒素原子に結合するL−Rとが異なることが好ましい。
【0034】
本実施形態において、前記Rは、無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であり、前記Lは、連結基であることが好ましい。この場合も、前記一般式(10)で表される構造において、窒素原子に結合するRと、別の窒素原子に結合するL−Rとが、異なることとなる。
【0035】
本実施形態において、前記Rは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基であることが好ましく、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、およびトリフェニレニル基からなる群から選択される芳香族炭化水素基であることがさらに好ましい。
【0036】
本実施形態において、前記第一の化合物は、下記一般式(10A)で表されることも好ましい。
【0037】
【化6】
【0038】
前記一般式(10A)において、X,Y11,Y12,Y13,Y14,Y15,Y16,Y17,Y18,Y19,Y20,Y21,Y22,L,R,およびRは、それぞれ、前記一般式(10)におけるX,Y11〜Y22,L,R,およびRと同義であり、Rは、置換基であり、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される。
【0039】
本実施形態において、前記Y11,Y12,Y13,Y14,Y15,Y16,Y17,Y18,Y19,Y20,Y21,Y22は、CR13であることが好ましく、前記R13は、水素原子であることがより好ましい。この場合、例えば、前記一般式(10)は、下記一般式(10B)で表される。
【0040】
【化7】
【0041】
前記一般式(10B)において、X,L,R,およびRは、それぞれ、前記一般式(1)におけるX,L,R,およびRと同義である。
【0042】
本実施形態において、前記Xは、酸素原子または硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
【0043】
本実施形態において、前記Rは、下記一般式(11)で表される基であることが好ましい。
【0044】
【化8】
【0045】
前記一般式(11)において、
〜Yは、それぞれ独立に、窒素原子またはCR14であり、
14は、水素原子または置換基であり、R14が置換基である場合の置換基としては、
フッ素原子、
シアノ基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換シリル基、
置換ホスフィンオキシド基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
複数のR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR14のうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R14同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。
前記一般式(11)において、波線部分は、前記Lとの結合箇所を表す。
【0046】
本実施形態において、前記Rが、前記一般式(11)で表される基である場合、前記一般式(10)は、下記一般式(10C)で表される。
【0047】
【化9】
【0048】
前記一般式(10C)において、X,Y11,Y12,Y13,Y14,Y15,Y16,Y17,Y18,Y19,Y20,Y21,Y22,L,およびRは、それぞれ、前記一般式(10)におけるX,Y11,Y12,Y13,Y14,Y15,Y16,Y17,Y18,Y19,Y20,Y21,Y22,L,およびRと同義であり、Y,Y,Y,Y,およびYは、それぞれ、前記一般式(11)におけるY,Y,Y,Y,およびYと同義である。
【0049】
本実施形態において、前記Y,Y,Y,Y,およびYは、それぞれ独立に、CR14であることが好ましい。この場合、複数のR14は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0050】
本実施形態において、前記Y,Y,Y,Y,およびYのうち少なくとも一つが窒素原子であることも好ましい。
【0051】
本実施形態において、前記Y,Y,Y,Y,およびYのうち少なくとも一つがCR14であることも好ましく、前記R14の少なくとも一つが、シアノ基であることが好ましい。
【0052】
本実施形態において、前記Rは、下記一般式(11a)で表される基、下記一般式(11b)で表される基、下記一般式(11c)で表される基、下記一般式(11d)で表される基、または下記一般式(11e)で表される基であることが好ましい。
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
前記一般式(11a)〜(11e)において、Y〜Yは、それぞれ前記一般式(11)におけるY〜Yと同義である。前記一般式(11a)〜(11e)において、波線部分は、前記Lとの結合箇所を表す。
【0056】
本実施形態において、前記Rは、下記一般式(11f)で表される基、下記一般式(11g)で表される基、または下記一般式(11h)で表される基であることも好ましい。
【0057】
【化12】
【0058】
前記一般式(11g)〜(11h)において、Yは、それぞれ前記一般式(11)におけるYと同義である。前記一般式(11f)〜(11h)において、波線部分は、前記Lとの結合箇所を表す。
【0059】
前記一般式(11a)〜(11h)において、前記Y,Y,Y,Y,およびYは、それぞれ独立に、CR14であることも好ましい。この場合、R14は、水素原子であることが好ましい。また、R14が置換基であってもよく、置換基R14は、シアノ基以外であることが好ましい。複数の置換基R14がある場合は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0060】
本実施形態において、前記Rに1つ以上の電子吸引性基が置換されていることも好ましい。電子吸引性基としては、例えば、シアノ基、フルオロ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキル置換アルキル基、ニトロ基、カルボニル基等が挙げられる。これらの電子吸引性基の中で、シアノ基、フルオロ基、ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化アルキル置換アルキル基が好ましく、シアノ基がより好ましい。前記Rに置換される電子吸引性基が複数ある場合、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記Rにシアノ基が置換される場合、1つまたは2つであることも好ましい。一方で、前記Rにシアノ基が置換される場合、3つ以上であることも好ましい。
【0061】
本実施形態において、前記Rは、置換もしくは無置換のピリジニル基、置換もしくは無置換のピリミジニル基、または置換もしくは無置換のトリアジニル基であることも好ましい。例えば、前記Rは、下記一般式(11i),(11j),(11k),(11m),(11n),(11p),(11q),(11r),および(11s)のいずれかで表される基であることも好ましい。
【0062】
【化13】
【0063】
【化14】
【0064】
【化15】
【0065】
前記一般式(11i),(11j),(11k),(11m),(11n),(11p),(11q),(11r),および(11s)において、Ra,Rb,Rc,およびRdは、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、Ra,Rb,Rc,およびRdが置換基である場合の置換基としては、前記Raが置換基である場合に列挙された置換基の群から選択される。Ra,Rb,Rc,Rdが置換基である場合の置換基としては、シアノ基以外であることが好ましい。
前記一般式(11i),(11j),(11k),(11m),(11n),(11p),(11q),(11r),および(11s)で表される基の中では、例えば、前記一般式(11q)で表される基が好ましく、RaおよびRbは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択されることが好ましく、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基からなる群から選択されることがより好ましい。前記一般式(11i),(11j),(11k),(11m),(11n),(11p),(11q),(11r),および(11s)において、波線部分は、前記Lとの結合箇所を表す。
【0066】
本実施形態において、前記Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択されることが好ましく、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基からなる群から選択されることがより好ましい。
また、前記Lは、フェニレン基、ビフェニルジイル基またはナフチレン基であることが好ましく、フェニレン基またはビフェニルジイル基であることがより好ましく、p−フェニレン基がさらに好ましい。前記Lの置換基としては、フェニル基、アルキル基、およびシアノ基の少なくともいずれかが好ましい。
【0067】
本実施形態において、置換シリル基は、−Si(R100で表されることが好ましい。R100は、それぞれ独立に、置換基である。置換基R100は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、および置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基からなる群から選択されることが好ましい。複数のR100は、互いに同一でも異なっていてもよい。
本実施形態において、置換シリル基は、置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、置換もしくは無置換のアリールアルキルシリル基、および置換もしくは無置換のトリアリールシリル基からなる群から選択される基であることがより好ましい。
【0068】
本実施形態において、置換ホスフィンオキシド基は、下記一般式(100)で表されることが好ましい。
【0069】
【化16】
【0070】
前記一般式(100)において、R102およびR103は、それぞれ独立に、置換基である。置換基R102および置換基R103は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、および置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基からなる群から選択されることが好ましい。
本実施形態において、置換ホスフィンオキシド基は、置換もしくは無置換のジアリールホスフィンオキシド基であることがより好ましい。
【0071】
・遅延蛍光発光性
遅延蛍光(熱活性化遅延蛍光)については、「有機半導体のデバイス物性」(安達千波矢編、講談社発行)の261〜268ページで解説されている。その文献の中で、蛍光発光材料の励起一重項状態と励起三重項状態のエネルギー差ΔE13を小さくすることができれば、通常は遷移確率が低い励起三重項状態から励起一重項状態への逆エネルギー移動が高効率で生じ、熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated delayed Fluorescence, TADF)が発現すると説明されている。さらに、当該文献中の図10.38で、遅延蛍光の発生メカニズムが説明されている。本実施形態における第一の化合物は、このようなメカニズムで発生する熱活性化遅延蛍光を示す化合物である。
遅延蛍光の発光は過渡PL(Photo Luminescence)測定により確認できる。
【0072】
過渡PL測定から得た減衰曲線に基づいて遅延蛍光の挙動を解析することもできる。過渡PL測定とは、試料にパルスレーザーを照射して励起させ、照射を止めた後のPL発光の減衰挙動(過渡特性)を測定する手法である。TADF材料におけるPL発光は、最初のPL励起で生成する一重項励起子からの発光成分と、三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光成分に分類される。最初のPL励起で生成する一重項励起子の寿命は、ナノ秒オーダーであり、非常に短い。そのため、当該一重項励起子からの発光は、パルスレーザーを照射後、速やかに減衰する。
一方、遅延蛍光は、寿命の長い三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光のため、ゆるやかに減衰する。このように最初のPL励起で生成する一重項励起子からの発光と、三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光とでは、時間的に大きな差がある。そのため、遅延蛍光由来の発光強度を求めることができる。
【0073】
図2には、過渡PLを測定するための例示的装置の概略図が示されている。
本実施形態の過渡PL測定装置100は、所定波長の光を照射可能なパルスレーザー部101と、測定試料を収容する試料室102と、測定試料から放射された光を分光する分光器103と、2次元像を結像するためのストリークカメラ104と、2次元像を取り込んで解析するパーソナルコンピュータ105とを備える。なお、過渡PLの測定は、本実施形態で説明する装置に限定されない。
試料室102に収容される試料は、マトリックス材料に対し、ドーピング材料が12質量%の濃度でドープされた薄膜を石英基板に成膜することで得られる。
試料室102に収容された薄膜試料に対し、パルスレーザー部101からパルスレーザーを照射して、ドーピング材料を励起させる。励起光の照射方向に対して90度の方向へ発光を取り出し、取り出した光を分光器103で分光し、ストリークカメラ104内で2次元像を結像する。その結果、縦軸が時間に対応し、横軸が波長に対応し、輝点が発光強度に対応する2次元画像を得ることができる。この2次元画像を所定の時間軸で切り出すと、縦軸が発光強度であり、横軸が波長である発光スペクトルを得ることができる。また、当該2次元画像を波長軸で切り出すと、縦軸が発光強度の対数であり、横軸が時間である減衰曲線(過渡PL)を得ることができる。
【0074】
例えば、マトリックス材料として、下記参考化合物H1を用い、ドーピング材料として下記参考化合物D1を用いて上述のようにして薄膜試料Aを作製し、過渡PL測定を行った。
【0075】
【化17】
【0076】
ここでは、前述の薄膜試料A、および薄膜試料Bを用いて減衰曲線を解析した。薄膜試料Bは、マトリックス材料として下記参考化合物H2を用い、ドーピング材料として前記参考化合物D1を用いて、上述のようにして薄膜試料を作製した。
図3には、薄膜試料Aおよび薄膜試料Bについて測定した過渡PLから得た減衰曲線が示されている。
【0077】
【化18】
【0078】
上記したように過渡PL測定によって、縦軸を発光強度とし、横軸を時間とする発光減衰曲線を得ることができる。この発光減衰曲線に基づいて、光励起により生成した一重項励起状態から発光する蛍光と、三重項励起状態を経由し、逆エネルギー移動により生成する一重項励起状態から発光する遅延蛍光との、蛍光強度比を見積もることができる。遅延蛍光発光性の材料では、素早く減衰する蛍光の強度に対し、緩やかに減衰する遅延蛍光の強度の割合が、ある程度大きい。
本実施形態における遅延蛍光発光量は、図2の装置を用いて求めることができる。前記第一の化合物は、当該第一の化合物が吸収する波長のパルス光(パルスレーザーから照射される光)で励起された後、当該励起状態から即座に観察されるPrompt発光(即時発光)と、当該励起後、即座には観察されず、その後観察されるDelay発光(遅延発光)とが存在する。本実施形態においては、Delay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上であることが好ましい。
Prompt発光とDelay発光の量は、“Nature 492, 234−238, 2012”に記載された方法と同様の方法により求めることができる。なお、Prompt発光とDelay発光の量の算出に使用される装置は、前記の文献に記載の装置に限定されない。
また、遅延蛍光発光性の測定に用いられる試料は、例えば、第一の化合物と下記化合物TH−2とを、第一の化合物の割合が12質量%となるように石英基板上に共蒸着し、膜厚100nmの薄膜を形成した試料を使用することができる。
【0079】
【化19】
【0080】
・第一の化合物の製造方法
前記第一の化合物は、例えば、下記実施例に記載した方法により製造することができる。
【0081】
本実施形態に係る第一の化合物の例を以下に示す。なお、本発明における第一の化合物は、これらの例に限定されない。
【0082】
【化20】
【0083】
【化21】
【0084】
【化22】
【0085】
【化23】
【0086】
【化24】
【0087】
【化25】
【0088】
【化26】
【0089】
【化27】
【0090】
【化28】
【0091】
【化29】
【0092】
【化30】
【0093】
【化31】
【0094】
【化32】
【0095】
【化33】
【0096】
【化34】
【0097】
【化35】
【0098】
【化36】
【0099】
【化37】
【0100】
【化38】
【0101】
【化39】
【0102】
<第二の化合物>
本実施形態に係る第二の化合物の一重項エネルギーは、前記第一の化合物の一重項エネルギーよりも大きい。
【0103】
本実施形態において、第二の化合物は、一つの分子中に下記一般式(21)で表される部分構造および下記一般式(22)で表される部分構造のうち少なくともいずれかを含む化合物であることが好ましい。
【0104】
【化40】
【0105】
前記一般式(21)において、
21〜Y26は、それぞれ独立に、窒素原子、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
ただし、Y21〜Y26のうち少なくともいずれかは、前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
前記一般式(22)において、
31〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
ただし、Y31〜Y38のうち少なくともいずれかは、前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子である。
【0106】
本実施形態において、前記一般式(21)で表される部分構造は、下記一般式(23)で表される基および下記一般式(24)で表される基からなる群から選択される少なくともいずれかの基として前記第二の化合物に含まれることが好ましい。
下記一般式(23)および下記一般式(24)で表されるように、結合箇所が互いにメタ位に位置することは、77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M3)を高く保つことができるため、前記第二の化合物として好ましい。
【0107】
【化41】
【0108】
前記一般式(23)および前記一般式(24)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
21は、水素原子または置換基であり、R21が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
前記一般式(23)および前記一般式(24)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0109】
本実施形態では、前記一般式(23)において、前記Y21,前記Y22,前記Y24および前記Y26は、それぞれ独立に、CR21であることが好ましく、複数のR21は、同一でも異なっていてもよい。
また、本実施形態では、前記一般式(24)において、前記Y22,前記Y24および前記Y26は、それぞれ独立に、CR21であることが好ましく、複数のR21は、同一でも異なっていてもよい。
【0110】
本実施形態において、置換ゲルマニウム基は、−Ge(R101で表されることが好ましい。R101は、それぞれ独立に、置換基である。置換基R101は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基であることが好ましい。複数のR101は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0111】
本実施形態において、前記一般式(22)で表される部分構造は、下記一般式(25)で表される基,下記一般式(26)で表される基,下記一般式(27)で表される基,下記一般式(28)で表される基,下記一般式(29)で表される基,および下記一般式(20a)で表される基からなる群から選択される少なくともいずれかの基として前記第二の化合物に含まれることが好ましい。
【0112】
【化42】
【0113】
【化43】
【0114】
前記一般式(25)〜(29),(20a)において、
31,Y32,Y33,Y34,Y35,Y36,Y37,およびY38は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR22であり、
22は、水素原子または置換基であり、R22が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R22における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
前記一般式(25),(26)において、Xは、窒素原子であり、
前記一般式(27)〜(29),(20a)において、Xは、NR23、酸素原子または硫黄原子であり、
23は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
前記一般式(25)〜(29),(20a)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0115】
本実施形態では、前記一般式(25)において、Y31〜Y38は、それぞれ独立に、CR22であることが好ましく、前記一般式(26)および前記一般式(27)において、Y31〜Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、CR22であることが好ましく、前記一般式(28)において、Y31,Y32,Y34,Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、CR22であることが好ましく、前記一般式(29)において、Y32〜Y38は、それぞれ独立に、CR22であることが好ましく、前記一般式(20a)において、Y32〜Y37は、それぞれ独立に、CR22であることが好ましく、複数のR22は、同一でも異なっていてもよい。
【0116】
本実施形態において、第二の化合物は、下記一般式(20A)で表される基を含むことも好ましい。
下記一般式(20A)で表されるように結合箇所が位置することは、77[K]におけるエネルギーギャップT77Kを高く保つことができるため、前記第二の化合物として好ましい。
【0117】
【化44】
【0118】
前記一般式(20A)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
31,Y32およびY34〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子、CR22、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21およびR22が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21および前記R22における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
23は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY34とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152を介して架橋されていてもよく、
24とY32とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5354を介して架橋されていてもよく、
51〜R54は、それぞれ独立に、前記R23が置換基である場合の置換基と同義である。
前記一般式(20A)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0119】
例えば、前記一般式(20A)において、Y22とY34とが、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152を介して架橋される場合は、下記一般式(20A−1)で表される。
【0120】
【化45】
【0121】
ただし、前記一般式(20A−1)において、Z21は、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152である。前記一般式(20A−1)において、X,Y21,Y24,Y26,Y31,Y32,Y35〜Y38は、それぞれ、前記一般式(20A)におけるX,Y21,Y24,Y26,Y31,Y32,Y35〜Y38と同義である。
【0122】
本実施形態において、前記第二の化合物は、下記一般式(20B)で表される基を含むことも好ましい。
下記一般式(20B)で表されるように結合箇所が位置することは、77[K]におけるエネルギーギャップT77Kを高く保つことができるため、前記第二の化合物として好ましい。
【0123】
【化46】
【0124】
前記一般式(20B)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
31,Y32,Y34,Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR22であり、
41〜Y45,Y47およびY48は、それぞれ独立に、窒素原子、CR24、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
21,R22,R24は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21,R22およびR24が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21,前記R22,前記R24における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
は、NR25、酸素原子、または硫黄原子であり、
23およびR25は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23および前記R25における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY34とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152を介して架橋されていてもよく、
24とY32とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5354を介して架橋されていてもよく、
51〜R54は、それぞれ独立に、前記R23および前記R25が置換基である場合の置換基と同義である。
前記一般式(20B)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0125】
例えば、前記一般式(20B)において、Y22とY34とが、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152を介して架橋される場合は、下記一般式(20B−1)で表される。
【0126】
【化47】
【0127】
ただし、前記一般式(20B−1)において、Z22は、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152である。前記一般式(20B−1)において、X,X,Y21,Y24,Y26,Y31,Y32,Y35,Y37,Y38,Y41〜Y45,Y47およびY48は、それぞれ、前記一般式(20B)におけるX,X,Y21,Y24,Y26,Y31,Y32,Y35,Y37,Y38,Y41〜Y45,Y47およびY48と同義である。
【0128】
本実施形態において、前記第二の化合物は、下記一般式(20C)で表される基を含むことも好ましい。
下記一般式(20C)で表されるように結合箇所が位置することは、77[K]におけるエネルギーギャップT77Kを高く保つことができるため、前記第二の化合物として好ましい。
【0129】
【化48】
【0130】
前記一般式(20C)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
51,Y53,Y54およびY55は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR26であり、
21およびR26は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21およびR26が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21および前記R26における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY51とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556を介して架橋されていてもよく、
24とY55とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5758を介して架橋されていてもよく、
55〜R58は、それぞれ独立に、置換基であり、R55〜R58における置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R55〜R58における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
前記一般式(20C)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0131】
例えば、前記一般式(20C)において、Y22とY51とが、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556を介して架橋される場合は、下記一般式(20C−1)で表される。
【0132】
【化49】
【0133】
ただし、前記一般式(20C−1)において、Z23は、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556である。前記一般式(20C−1)において、Y21,Y24,Y26およびY53〜Y55は、それぞれ、前記一般式(20C)におけるY21,Y24,Y26およびY53〜Y55と同義である。
【0134】
本実施形態において、前記第二の化合物は、下記一般式(20D)で表される基を含むことも好ましい。
下記一般式(20D)で表されるように結合箇所が位置することは、77[K]におけるエネルギーギャップT77Kを高く保つことができるため、前記第二の化合物として好ましい。
【0135】
【化50】
【0136】
前記一般式(20D)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
51,Y53,Y54およびY55は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR26であり、
31〜Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、窒素原子、CR22、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
21,R22およびR26は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21,R22およびR26が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21,前記R22および前記R26における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
23は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY51とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556を介して架橋されていてもよく、
24とY55とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5758を介して架橋されていてもよく、
51とY37とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5960を介して架橋されていてもよく、
53とY35とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR6162を介して架橋されていてもよく、
55〜R62は、それぞれ独立に、前記R23が置換基である場合の置換基と同義である。 前記一般式(20D)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0137】
例えば、前記一般式(20D)において、Y22とY51とが、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556を介して架橋される場合は、下記一般式(20D−1)で表される。
【0138】
【化51】
【0139】
ただし、前記一般式(20D−1)において、Z24は、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556である。前記一般式(20D−1)において、X,Y21,Y24,Y26,Y31〜Y35,Y37,Y38およびY53〜Y55は、それぞれ、前記一般式(20D)におけるX,Y21,Y24,Y26,Y31〜Y35,Y37,Y38およびY53〜Y55と同義である。
【0140】
例えば、前記一般式(20D)において、Y51とY37とが、酸素原子、硫黄原子、またはCR5960を介して架橋される場合は、下記一般式(20D−2)で表される。
【0141】
【化52】
【0142】
ただし、前記一般式(20D−2)において、Z25は、酸素原子、硫黄原子、またはCR5960である。前記一般式(20D−2)において、X,Y21,Y22,Y24,Y26,Y31〜Y35,Y38およびY53〜Y55は、それぞれ、前記一般式(20D)におけるX,Y21,Y22,Y24,Y26,Y31〜Y35,Y38およびY53〜Y55と同義である。
【0143】
本実施形態において、前記第二の化合物は、下記一般式(20E)で表される基を含むことも好ましい。
下記一般式(20E)で表されるように結合箇所が位置することは、77[K]におけるエネルギーギャップT77Kを高く保つことができるため、前記第二の化合物として好ましい。
【0144】
【化53】
【0145】
前記一般式(20E)において、
31,Y32,Y34,Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR22であり、
41〜Y45,Y47およびY48は、それぞれ独立に、窒素原子、CR24、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
22およびR24は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R22およびR24が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R22および前記R24における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
は、NR25、酸素原子、または硫黄原子であり、
23およびR25は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23および前記R25における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
前記一般式(20E)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0146】
本実施形態において、前記第二の化合物は、下記一般式(20F)で表される基、下記一般式(20G)で表される基、および下記一般式(20H)で表される基のうち少なくともいずれかの基を含んでいてもよい。
【0147】
【化54】
【0148】
【化55】
【0149】
【化56】
【0150】
前記一般式(20F),前記一般式(20G)および前記一般式(20H)において、Y21,Y22,Y24,Y26,Y31〜Y38,Y41〜Y48,Y61〜Y65,Y67およびY68は、それぞれ独立に、窒素原子、CR27、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
27は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R27が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R27における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
およびXは、それぞれ独立に、NR28、酸素原子、または硫黄原子であり、R28は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R28における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
前記一般式(20F),前記一般式(20G)および前記一般式(20H)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0151】
本実施形態において、前記Xは、酸素原子もしくは硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
前記Xは、酸素原子もしくは硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
前記Xは、酸素原子もしくは硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
また、前記Xおよび前記Xが酸素原子であることが好ましい。
また、前記Xおよび前記Xが酸素原子であることが好ましい。
【0152】
本実施形態において、前記R21,前記R22,前記R24,前記R26および前記R27は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であって、前記R21,前記R22,前記R24,前記R26および前記R27における置換基は、フッ素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であることが好ましい。前記R21,前記R22,前記R24,前記R26および前記R27は、水素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であることがより好ましい。ただし、前記R21,前記R22,前記R24,前記R26および前記R27における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
【0153】
本実施形態において、前記R23,前記R25および前記R28は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であることが好ましく、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基からなる群から選択される置換基であることがより好ましい。ただし、前記R23,前記R25および前記R28における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
【0154】
本実施形態において、前記R51〜R62は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であることが好ましく、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基からなる群から選択される置換基であることがより好ましい。ただし、前記R51〜R62における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
【0155】
・第二の化合物の製造方法
前記第二の化合物は、例えば、国際公開第2012/153780号(WO2012/153780A1)および国際公開第2013/038650号(WO2013−038650A1)等に記載の方法により製造することができる。
【0156】
本実施形態に係る第二の化合物における置換基の例は、例えば、以下のとおりであるが、本発明は、これらの例に限定されない。
【0157】
芳香族炭化水素基(アリ−ル基)の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾアントリル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、フルオランテニル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基等を挙げることができる。
置換基を有する芳香族炭化水素基としては、トリル基、キシリル基、9,9−ジメチルフルオレニル基等を挙げることができる。
具体例が示すように、アリール基は、縮合アリール基及び非縮合アリール基の両方を含む。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基が好ましい。
【0158】
芳香族複素環基(ヘテロアリール基、ヘテロ芳香族環基、複素環基)の具体例としては、ピロリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピリジル基、トリアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、アザジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、ベンズオキサゾリル基、チエニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンズチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等が挙げられ、好ましくは、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基等を挙げることができる。
芳香族複素環基としては、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基が好ましく、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基がさらに好ましい。
【0159】
本実施形態の第二の化合物において、置換シリル基は、置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、置換もしくは無置換のアリールアルキルシリル基、または置換もしくは無置換のトリアリールシリル基であることも好ましい。
置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基を挙げることができる。
置換若しくは無置換のアリールアルキルシリル基の具体例としては、ジフェニルメチルシリル基、ジトリルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等を挙げることができる。
置換若しくは無置換のトリアリールシリル基の具体例としては、トリフェニルシリル基、トリトリルシリル基等を挙げることができる。
【0160】
本実施形態の第二の化合物において、置換ホスフィンオキシド基は、置換もしくは無置換のジアリールホスフィンオキシド基であることも好ましい。
置換もしくは無置換のジアリールホスフィンオキシド基の具体例としては、ジフェニルホスフィンオキシド基、ジトリルホスフィンオキシド基等を挙げることができる。
【0161】
本実施形態に係る第二の化合物の例を以下に示す。なお、本発明における第二の化合物は、これらの例に限定されない。
【0162】
【化57】
【0163】
【化58】
【0164】
【化59】
【0165】
【化60】
【0166】
<第三の化合物>
本実施形態の第三の化合物は、蛍光発光性の化合物であり、その発光色や発光波長は特に限定されない。
例えば、第三の化合物は、赤色、黄色、緑色、または青色の蛍光発光を示すことが好ましく、赤色、黄色、または緑色の蛍光発光を示すことがより好ましく、黄色または緑色の蛍光発光を示すことがさらに好ましく、緑色の蛍光発光を示すことが特に好ましい。
また、例えば、第三の化合物は、主ピーク波長が500nm以上600nm以下の蛍光発光を示すことが好ましく、主ピーク波長が510nm以上550nm以下の蛍光発光を示すことがより好ましい。一方で、第三の化合物は、主ピーク波長が600nmを超える発光を示すことも好ましい。
主ピーク波長とは、測定対象化合物が10−5モル/リットル以上10−6モル/リットル以下の濃度で溶解しているトルエン溶液について、測定した発光スペクトラムにおける発光強度が最大となる発光スペクトルのピーク波長をいう。
第三の化合物は、蛍光量子収率の高い材料であることが好ましい。
【0167】
本実施形態の第三の化合物としては、蛍光発光性材料を用いることができる。具体的には、例えば、ビスアリールアミノナフタレン誘導体、アリール置換ナフタレン誘導体、ビスアリールアミノアントラセン誘導体、アリール基置換アントラセン誘導体、ビスアリールアミノピレン誘導体、アリール基置換ピレン誘導体、ビスアリールアミノクリセン誘導体、アリール置換クリセン誘導体、ビスアリールアミノフルオランテン誘導体、アリール置換フルオランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ピロメテンホウ素錯体化合物、ピロメテン骨格を有する化合物、ピロメテン骨格を有する化合物の金属錯体、ジケトピロロピロール誘導体、ペリレン誘導体、アリールアミノフルオレン誘導体、アリール置換フルオレン誘導体、アリールアミノベンズフルオレン誘導体、アリール置換ベンズフルオレン誘導体、アリールアミノインデノフルオレン誘導体、アリール置換インデノフルオレン誘導体等が挙げられる。
【0168】
本実施形態に係る第三の化合物としては、一つの分子中に下記一般式(3)で表される部分構造のうち少なくともいずれかを含む化合物を用いることが好ましい。第三の化合物が、下記一般式(3)で表される部分構造を複数含む場合、複数の部分構造は互いに同一でも異なってもよい。
【0169】
【化61】
【0170】
前記一般式(3)において、
は、環形成炭素数10〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基を示し、
Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される基を示し、
11,L12,およびL13は、それぞれ独立に、単結合または連結基を示し、L11,L12,およびL13が連結基である場合の連結基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
pは1〜4の整数を示す。
なお、L11およびL13が単結合のとき、Ar11とXとが互いに結合して環を形成してもよく、L12およびL13が単結合のとき、Ar12とXとが互いに結合して環を形成してもよい。
【0171】
前記一般式(3)において、前記Xは、ナフタレン、フェナントレン、フルオランテン、アントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、クリセン、ピセン、ジフェニルアントラセン、フルオレン、トリフェニレン、ルビセン、ベンゾアントラセン、フェニルアントラセン、ビスアントラセン、ジアントリルベンゼン、ジベンゾアントラセン、ベンゾフルオレン、インデノフルオレン、およびベンズインデノフルオレンからなる群から選択される縮合芳香族炭化水素環の残基であることが好ましい。
特に、前記Xがアントラセンの残基である場合、第二の化合物は、9,10−置換アントラセンまたは2,6−置換アントラセンが好ましい。前記Xがピレンの残基である場合、第二の化合物は、1,6−置換ピレンまたは3,8−置換ピレンが好ましい。前記Xがクリセンの残基である場合、第二の化合物は、6,12−置換クリセンが好ましい。
【0172】
本実施形態において、前記一般式(3)で表される部分構造は、下記一般式(3A)で表される基であることが好ましい。
【0173】
【化62】
【0174】
前記一般式(3A)において、X,Ar11,Ar12,L11,L12,L13,およびpは、それぞれ独立に、前記一般式(3)におけるX,Ar11,Ar12,L11,L12,L13,およびpと同義である。前記一般式(3A)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0175】
本実施形態において、前記第三の化合物は、下記一般式(30)で表される化合物であることも好ましい。
【0176】
【化63】
【0177】
前記一般式(30)において、
aは、0または1の整数であり、
aが0の場合、LとArとが直接結合し、Ar,Ar,R121,R122,R123,R124,R125,R126,R127,およびR128の少なくとも2つが下記一般式(31)で表される基であり、
aが1の場合、Ar,Ar,R121,R122,R123,R124,R125,R126,R127,R128,R131,R132,R133,R134,R135,R136,R137,およびR138の少なくとも2つが下記一般式(31)で表される基であり、
下記一般式(31)で表される基以外のAr,Ar,R121,R122,R123,R124,R125,R126,R127,R128,R131,R132,R133,R134,R135,R136,R137,およびR138は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、Ar,Ar,R121,R122,R123,R124,R125,R126,R127,R128,R131,R132,R133,R134,R135,R136,R137,およびR138が置換基である場合の置換基は、
ハロゲン原子、
シアノ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2〜30のアルキニル基、
置換シリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のトリフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアラルキル基、および
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基からなる群から選択され、
およびLは、それぞれ独立に、単結合または連結基であり、LおよびLが連結基である場合の連結基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される。
121〜R128,R131〜R138のうち、2つ以上が置換基である場合、置換基どうしは互いに結合して環を形成してもよい。
【0178】
【化64】
【0179】
前記一般式(31)において、L11,L12,およびL13は、それぞれ独立に、単結合または連結基を示し、L11〜L13が連結基である場合の連結基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される基である。
【0180】
前記一般式(30)において、前記aが0であり、前記ArおよびArが、前記一般式(31)で表される基であることが好ましい。
また、前記一般式(30)において、前記aが0であり、前記R122およびR126が、前記一般式(31)で表される基であることも好ましい。
また、前記一般式(30)において、前記aが1であり、前記ArおよびArが、前記一般式(31)で表される基であることも好ましい。
【0181】
前記一般式(30)において、置換基Ar,Ar,R121〜R128,R131〜R138は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換シリル基、シアノ基および置換もしくは無置換の炭素数1〜20のトリフルオロアルキル基からなる群から選択されることが好ましい。
【0182】
・第三の化合物の製造方法
第三の化合物は、例えば、国際公開第2004/092111号(WO2004/092111A1)および国際公開第2011/096506号(WO2011/096506A1)等に記載された方法に従い、製造することができる。
【0183】
本実施形態に係る第三の化合物の具体例を以下に示す。なお、本発明における第三の化合物は、これらの具体例に限定されない。
【0184】
【化65】
【0185】
【化66】
【0186】
【化67】
【0187】
【化68】
【0188】
【化69】
【0189】
【化70】
【0190】
【化71】
【0191】
【化72】
【0192】
【化73】
【0193】
【化74】
【0194】
【化75】
【0195】
【化76】
【0196】
【化77】
【0197】
【化78】
【0198】
【化79】
【0199】
【化80】
【0200】
【化81】
【0201】
【化82】
【0202】
【化83】
【0203】
【化84】
【0204】
【化85】
【0205】
【化86】
【0206】
【化87】
【0207】
【化88】
【0208】
【化89】
【0209】
【化90】
【0210】
【化91】
【0211】
【化92】
【0212】
【化93】
【0213】
【化94】
【0214】
【化95】
【0215】
【化96】
【0216】
【化97】
【0217】
【化98】
【0218】
【化99】
【0219】
【化100】
【0220】
【化101】
【0221】
【化102】
【0222】
(発光層における第一の化合物、第二の化合物および第三の化合物の関係性)
本実施形態では、第二の化合物は、発光層において、上述の本実施形態に係る第一の化合物同士が分子会合することを抑制する分散材としての機能を有すると考えられる。
本実施形態に係る第一の化合物は、熱活性遅延蛍光性の材料であるため、分子会合を起こし易い。分子会合体の励起エネルギー(一重項エネルギーや三重項エネルギー)は、単量体と比較して、小さい。そのため、薄膜中において、第一の化合物の濃度が高くなると、分子会合が起きて、蛍光発光性材料、特に緑〜青色蛍光発光性材料を用いた際に、熱活性遅延蛍光性の材料からの励起エネルギーを効率良く移動させることが難しくなる。
第二の化合物の一重項エネルギーは、第一の化合物の一重項エネルギーよりも高いため、励起状態の第二の化合物は、第一の化合物や第三の化合物と比べて不安定である。そのため、第二の化合物としては、発光層において、励起子生成やキャリア輸送に関与しない方が好ましい。このような第二の化合物は、従来の有機EL素子において発光層に含有させる材料の選択基準からすると、特異的である。従来の蛍光発光型の有機EL素子では、電気的および光化学的に高い機能を有する材料を選択して発光層に含有させていたが、本実施形態では、励起子生成やキャリア輸送に関与しないような第二の化合物を発光層に敢えて含有させているからである。
【0223】
本実施形態において、第一の化合物の一重項エネルギーS(M1)は、前記第三の化合物の一重項エネルギーS(M3)よりも大きいことが好ましい。
すなわち、S(M3)<S(M1)<S(M2)の関係を満たすことが好ましい。
【0224】
本実施形態において、前記第一の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M1)は、前記第三の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M3)よりも大きく、前記第二の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M2)は、前記第一の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M1)よりも大きいことが好ましい。
すなわち、T77K(M3)<T77K(M1)<T77K(M2)の関係を満たすことが好ましい。
【0225】
本実施形態において、前記第二の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M2)は、2.9eV以上であることが好ましい。第二の化合物が、このようなエネルギーギャップT77K(M2)を有することで、発光層において第二の化合物が励起子生成やキャリア輸送に関与し難くさせることができる。
【0226】
<TADF機構>
本実施形態の有機EL素子では、第一の化合物としてΔST(M1)が小さい化合物を用いることが好ましく、外部から与えられる熱エネルギーによって、第一の化合物の三重項準位から第一の化合物の一重項準位への逆項間交差が起こり易くなる。有機EL素子内部の電気励起された励起子の励起三重項状態が、逆項間交差によって、励起一重項状態へスピン交換がされるエネルギー状態変換機構をTADF機構と呼ぶ。
図4は、発光層における第一の化合物、第二の化合物、および第三の化合物のエネルギー準位の関係の一例を示す図である。図4において、S0は、基底状態を表し、S1(M1)は、第一の化合物の最低励起一重項状態を表し、T1(M1)は、第一の化合物の最低励起三重項状態を表し、S1(M2)は、第二の化合物の最低励起一重項状態を表し、T1(M2)は、第二の化合物の最低励起三重項状態を表し、S1(M3)は、第三の化合物の最低励起一重項状態を表し、T1(M3)は、第三の化合物の最低励起三重項状態を表す。図4中のS1(M1)からS1(M3)へ向かう破線の矢印は、第一の化合物の最低励起一重項状態から第三の化合物の最低励起一重項状態へのフェルスター型エネルギー移動を表す。なお、本実施形態では、最低励起一重項状態S1と最低励起三重項状態T1との差を、ΔSTとして定義する。
図4に示すように、第一の化合物としてΔST(M1)の小さな化合物を用いると、最低励起三重項状態T1(M1)は、熱エネルギーにより、最低励起一重項状態S1(M1)に逆項間交差が可能である。そして、第一の化合物の最低励起一重項状態S1(M1)から第三の化合物の最低励起一重項状態S1(M3)へのフェルスター型エネルギー移動が生じる。この結果、第三の化合物の最低励起一重項状態S1(M3)からの蛍光発光を観測することができる。このTADF機構による遅延蛍光を利用することによっても、理論的に内部効率を100%まで高めることができると考えられている。
【0227】
本実施形態の有機EL素子1を発光させたときに、発光層5において、主に第三の化合物が発光していることが好ましい。
【0228】
・発光層の膜厚
本実施形態の有機EL素子1における発光層5の膜厚は、好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは7nm以上50nm以下、さらに好ましくは10nm以上50nm以下である。5nm未満では発光層5の形成が困難となり、色度の調整が困難となるおそれがあり、50nmを超えると駆動電圧が上昇するおそれがある。
【0229】
・発光層における化合物の含有率
本実施形態の有機EL素子1では、発光層5において、第一の化合物の含有率は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、第二の化合物の含有率は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、第三の化合物の含有率は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。発光層5における第一の化合物、第二の化合物、および第三の化合物の合計含有率の上限は、100質量%である。なお、本実施形態は、発光層5に、第一の化合物、第二の化合物、および第三の化合物以外の材料が含まれることを除外しない。
【0230】
(基板)
基板2は、有機EL素子1の支持体として用いられる。基板2としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックなどを用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0231】
(陽極)
基板2上に形成される陽極3には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
これらの材料は、通常、スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1質量%以上10質量%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。また、例えば、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5質量%以上5質量%以下、酸化亜鉛を0.1質量%以上1質量%以下含有したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
陽極3上に形成される有機層のうち、陽極3に接して形成される正孔注入層6は、陽極3の仕事関数に関係なく正孔(ホール)注入が容易である複合材料を用いて形成されるため、電極材料として可能な材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物、その他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素も含む)を用いることもできる。
仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて陽極3を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0232】
(正孔注入層)
正孔注入層6は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。
また、正孔注入性の高い物質としては、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等やジピラジノ[2,3−f:20,30−h]キノキサリン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN)も挙げられる。
また、正孔注入性の高い物質としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0233】
(正孔輸送層)
正孔輸送層7は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層7には、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体等を使用する事ができる。具体的には、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BAFLP)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。
正孔輸送層7には、CBP、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(PCzPA)のようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いてもよい。ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層した層としてもよい。
正孔輸送層を二層以上配置する場合、エネルギーギャップのより大きい材料を含む層を、発光層5に近い側に配置することが好ましい。
【0234】
本実施形態において、正孔輸送層7は、発光層5で生成する三重項励起子が正孔輸送層へ拡散することを防止し、三重項励起子を発光層5内に閉じ込める機能を有することが好ましい。
【0235】
(電子輸送層)
電子輸送層8は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層8には、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、3)高分子化合物を使用することができる。具体的には低分子の有機化合物として、Alq、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、BAlq、Znq、ZnPBO、ZnBTZなどの金属錯体等を用いることができる。また、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(ptert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。本実施態様においては、ベンゾイミダゾール化合物を好適に用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔輸送性よりも電子輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層8として用いてもよい。また、電子輸送層8は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層した層としてもよい。
また、電子輸送層8には、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを用いることができる。
【0236】
本実施形態において、電子輸送層8は、発光層5で生成する三重項励起子が電子輸送層8や電子注入層9へ拡散することを防止し、三重項励起子を発光層5内に閉じ込める機能を有することが好ましい。
【0237】
(電子注入層)
電子注入層9は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層9には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させた物質、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させた物質等を用いてもよい。なお、この場合には、陰極4からの電子注入をより効率よく行うことができる。
あるいは、電子注入層9に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層8を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0238】
(陰極)
陰極4には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて陰極4を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
なお、電子注入層9を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、グラフェン、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いて陰極4を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0239】
(層形成方法)
本実施形態の有機EL素子1の各層の形成方法としては、上記で特に言及した以外には制限されず、乾式成膜法や湿式成膜法等の公知の方法を採用できる。乾式成膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ法、イオンプレーティング法などが挙げられる。湿式成膜法としては、スピンコーティング法、ディッピング法、フローコーティング法、インクジェット法などが挙げられる。
【0240】
(膜厚)
本実施形態の有機EL素子1の各有機層の膜厚は、上記で特に言及した以外には制限されない。一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常、膜厚は、数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0241】
本実施形態において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジニル基は環形成炭素数5であり、フラニル基は環形成炭素数4である。また、ベンゼン環やナフタレン環に置換基として例えばアルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、環形成炭素数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の炭素数は環形成炭素数の数に含めない。
本実施形態において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば単環、縮合環、環集合)の化合物(例えば単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ピリジン環は、環形成原子数が6であり、キナゾリン環は、環形成原子数が10であり、フラン環は、環形成原子数が5である。ピリジン環やキナゾリン環の炭素原子にそれぞれ結合している水素原子や置換基を構成する原子については、環形成原子数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の原子数は環形成原子数の数に含めない。
次に前記一般式に記載の各置換基について説明する。
【0242】
本実施形態における環形成炭素数6〜30または環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基(アリール基と称する場合がある。)としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、クリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾ[a]アントリル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、トリフェニレニル基、ベンゾ[k]フルオランテニル基、ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾ[b]トリフェニレニル基、ピセニル基、ペリレニル基などが挙げられる。
本実施形態におけるアリール基としては、環形成炭素数が6〜20であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜12であることが更に好ましい。上記アリール基の中でもフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ターフェニル基、フルオレニル基が特に好ましい。1−フルオレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基および4−フルオレニル基については、9位の炭素原子に、後述する本実施形態における置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基や置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリール基が置換されていることが好ましい。
【0243】
本実施形態における環形成原子数5〜30の複素環基(ヘテロアリール基、ヘテロ芳香族環基、または芳香族複素環基と称する場合がある。)は、ヘテロ原子として、窒素、硫黄、酸素、ケイ素、セレン原子、およびゲルマニウム原子からなる群から選択される少なくともいずれかの原子を含むことが好ましく、窒素、硫黄、および酸素からなる群から選択される少なくともいずれかの原子を含むことがより好ましい。
本実施形態における環形成原子数5〜30の複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリニル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、イミダゾピリジニル基、ベンズトリアゾリル基、カルバゾリル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、ピペラジニル基、モルホリル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基などが挙げられる。
本実施形態における複素環基の環形成原子数は、5〜20であることが好ましく、5〜14であることがさらに好ましい。上記複素環基の中でも1−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、1−ジベンゾチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、3−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基が特に好ましい。1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基および4−カルバゾリル基については、9位の窒素原子に、本実施形態における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基が置換されていることが好ましい。
【0244】
また、本実施形態において、複素環基は、例えば、下記一般式(XY−1)〜(XY−18)で表される部分構造から誘導される基であってもよい。
【0245】
【化103】
【0246】
【化104】
【0247】
【化105】
【0248】
前記一般式(XY−1)〜(XY−18)において、XおよびYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子であり、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、またはゲルマニウム原子であることが好ましい。前記一般式(XY−1)〜(XY−18)で表される部分構造は、任意の位置で結合手を有して複素環基となり、この複素環基は、置換基を有していてもよい。
【0249】
また、本実施形態において、置換もしくは無置換のカルバゾリル基としては、例えば、下記式で表されるようなカルバゾール環に対してさらに環が縮合した基も含み得る。このような基も置換基を有していてもよい。また、結合手の位置も適宜変更され得る。
【0250】
【化106】
【0251】
本実施形態における炭素数1〜30のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよい。直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、アミル基、イソアミル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、3−メチルペンチル基、が挙げられる。
本実施形態における直鎖または分岐鎖のアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。上記直鎖または分岐鎖のアルキル基の中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、アミル基、イソアミル基、ネオペンチル基が特に好ましい。
本実施形態における炭素数3〜30のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。シクロアルキル基の環形成炭素数は、3〜10であることが好ましく、5〜8であることがさらに好ましい。上記シクロアルキル基の中でも、シクロペンチル基やシクロヘキシル基が特に好ましい。
アルキル基がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基としては、例えば、上記炭素数1〜30のアルキル基が1以上のハロゲン原子で置換された基が挙げられる。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、トリフルオロメチルメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0252】
本実施形態における置換シリル基としては、炭素数3〜30のアルキルシリル基、環形成炭素数6〜30のアリールシリル基が挙げられる。
本実施形態における炭素数3〜30のアルキルシリル基としては、上記炭素数1〜30のアルキル基で例示したアルキル基を有するトリアルキルシリル基が挙げられ、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−n−オクチルシリル基、トリイソブチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジメチル−n−プロピルシリル基、ジメチル−n−ブチルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等が挙げられる。トリアルキルシリル基における3つのアルキル基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0253】
本実施形態における環形成炭素数6〜30のアリールシリル基としては、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基が挙げられる。
ジアルキルアリールシリル基は、例えば、上記炭素数1〜30のアルキル基で例示したアルキル基を2つ有し、上記環形成炭素数6〜30のアリール基を1つ有するジアルキルアリールシリル基が挙げられる。ジアルキルアリールシリル基の炭素数は、8〜30であることが好ましい。
アルキルジアリールシリル基は、例えば、上記炭素数1〜30のアルキル基で例示したアルキル基を1つ有し、上記環形成炭素数6〜30のアリール基を2つ有するアルキルジアリールシリル基が挙げられる。アルキルジアリールシリル基の炭素数は、13〜30であることが好ましい。
トリアリールシリル基は、例えば、上記環形成炭素数6〜30のアリール基を3つ有するトリアリールシリル基が挙げられる。トリアリールシリル基の炭素数は、18〜30であることが好ましい。
【0254】
本実施形態における炭素数1〜30のアルコキシ基は、−OZと表される。このZの例として、上記炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。アルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基があげられる。アルコキシ基の炭素数は、1〜20であることが好ましい。
アルコキシ基がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、上記炭素数1〜30のアルコキシ基が1以上のフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0255】
本実施形態における環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基は、−OZと表される。このZの例として、上記環形成炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。アリールオキシ基の環形成炭素数は、6〜20であることが好ましい。このアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基が挙げられる。
【0256】
炭素数2〜30のアルキルアミノ基は、−NHR、または−N(Rと表される。このRの例として、上記炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。
【0257】
環形成炭素数6〜60のアリールアミノ基は、−NHR、または−N(Rと表される。このRの例として、上記環形成炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。
【0258】
炭素数1〜30のアルキルチオ基は、−SRと表される。このRの例として、上記炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。アルキルチオ基の炭素数は、1〜20であることが好ましい。
環形成炭素数6〜30のアリールチオ基は、−SRと表される。このRの例として、上記環形成炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。アリールチオ基の環形成炭素数は、6〜20であることが好ましい。
【0259】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0260】
本実施形態において、「環形成炭素」とは飽和環、不飽和環、または芳香環を構成する炭素原子を意味する。「環形成原子」とはヘテロ環(飽和環、不飽和環、および芳香環を含む)を構成する炭素原子およびヘテロ原子を意味する。
また、本実施形態において、水素原子とは、中性子数の異なる同位体、すなわち、軽水素(Protium)、重水素(Deuterium)、三重水素(Tritium)を包含する。
【0261】
また、「置換もしくは無置換の」という場合における置換基としては、上述のようなアリール基、複素環基、アルキル基(直鎖または分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基)、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基の他に、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、およびカルボキシ基が挙げられる。
ここで挙げた置換基の中では、アリール基、複素環基、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルシリル基、アリールシリル基、シアノ基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとした具体的な置換基が好ましい。
これらの置換基は、上記のアリール基、複素環基、アルキル基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基の他に、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、およびカルボキシ基によって更に置換されてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成してもよい。
【0262】
アルケニル基としては、炭素数2〜30のアルケニル基が好ましく、直鎖、分岐鎖、または環状のいずれであってもよく、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、スチリル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、シクロペンタジエニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基等が挙げられる。
【0263】
アルキニル基としては、炭素数2〜30のアルキニル基が好ましく、直鎖、分岐鎖、または環状のいずれであってもよく、例えば、エチニル、プロピニル、2−フェニルエチニル等が挙げられる。
【0264】
アラルキル基としては、環形成炭素数6〜30のアラルキル基が好ましく、−Z−Zと表される。このZの例として、上記炭素数1〜30のアルキル基に対応するアルキレン基が挙げられる。このZの例として、上記環形成炭素数6〜30のアリール基の例が挙げられる。このアラルキル基は、炭素数7〜30のアラルキル基(アリール部分は炭素数6〜30、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜12)、アルキル部分は炭素数1〜30(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)であることが好ましい。このアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基が挙げられる。
【0265】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは前記置換基で置換されておらず、水素原子が結合していることを意味する。
なお、本実施形態において、「置換もしくは無置換の炭素数XX〜YYのZZ基」という表現における「炭素数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表し、置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
本実施形態において、「置換もしくは無置換の原子数XX〜YYのZZ基」という表現における「原子数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表し、置換されている場合の置換基の原子数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、前記と同様である。
【0266】
本実施形態において、置換基同士が互いに結合して環構造が構築される場合、環構造は、飽和環、不飽和環、芳香族炭化水素環、または複素環である。
【0267】
本実施形態において、連結基におけるアリール基およびヘテロアリール基としては、上述した一価の基から、1つ以上の原子を除いて得られる二価以上の基が挙げられる。
また、本実施形態において、芳香族炭化水素環および複素環としては、上述した一価の基の由来となる環構造が挙げられる。
【0268】
(有機EL素子用材料)
本発明の一実施形態に係る有機EL素子用材料は、前記一般式(1)で表される第一の化合物と、前記第一の化合物の一重項エネルギーよりも大きい一重項エネルギーを有する第二の化合物と、蛍光発光性の第三の化合物とを含む。
第一の化合物は、遅延蛍光発光性の化合物であることが好ましい。
第二の化合物および第三の化合物としては、前述の、有機EL素子に係る第二の化合物および第三の化合物と同様の化合物を用いることができる。
有機EL素子用材料は、本実施形態に係る第一の化合物、第二の化合物、および第三の化合物のみから構成されていてもよいし、他の化合物を含んで構成されていてもよい。
【0269】
本発明の一実施形態に係る有機EL素子の発光層は、本実施形態の有機EL素子用材料を用いて形成されていてもよい。本実施形態の有機EL素子用材料を用いて、有機EL素子の発光層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)あるいは、有機EL素子用材料を溶媒に解かした溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法等の公知の方法を採用することができる。
【0270】
(電子機器)
本発明の一実施形態に係る有機EL素子1は、表示装置や発光装置等の電子機器に使用できる。表示装置としては、例えば、有機ELパネルモジュール等の表示部品、テレビ、携帯電話、タブレットもしくはパーソナルコンピュータ等が挙げられる。発光装置としては、例えば、照明、もしくは車両用灯具等が挙げられる。
【0271】
〔第二実施形態〕
第二実施形態に係る有機EL素子の構成について説明する。第二実施形態の説明において第一実施形態と同一の構成要素は、同一符号や名称を付す等して説明を省略もしくは簡略にする。また、第二実施形態では、特に言及されない材料や化合物については、第一実施形態で説明した材料や化合物と同様の材料や化合物を用いることができる。
第二実施形態の有機EL素子としては、前記一般式(10)で表される第一の化合物において、前記Lが単結合であり、前記Rと前記Rとが同じである場合や、前記一般式(10A)で表される第一の化合物において、前記Rと前記Lとが同じであり、前記Rと前記Rとが同じである場合が挙げられる。第二実施形態における第一の化合物は、例えば下記一般式(40)で表すことができる。
第二実施形態の有機EL素子は、発光層に含まれる第一の化合物が、下記一般式(40)で表される点で第一実施形態の有機EL素子1と相違し、その他の点については第一実施形態と同様である。第二実施形態の有機EL素子が備える発光層は、下記一般式(40)で表される第一の化合物と、第一実施形態で説明した第二の化合物および第三の化合物とを含む。本実施形態の第一の化合物は、遅延蛍光発光性の化合物であることが好ましい。また、本実施形態の第一の化合物は、金属錯体ではない。本実施形態では、発光層は、燐光発光性の金属錯体を含まないことが好ましく、燐光発光性の金属錯体以外の金属錯体も含まないことが好ましい。
【0272】
【化107】
【0273】
前記一般式(40)において、
21およびR22は、それぞれ、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される基であり、R21およびR22は同じであり、
21およびL22は、それぞれ、単結合または連結基であり、L21およびL22が連結基である場合の連結基としては、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される基であり、L21およびL22は同じであり、
11,Y12,Y13,Y14,Y15,Y16,Y17,Y18,Y19,Y20,Y21,およびY22は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR13であり、
は、酸素原子、硫黄原子、NR10、またはCR1112であり、
10,R11,R12,およびR13は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R10,R11,R12,およびR13が置換基である場合の置換基は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択され、
複数のR13は、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR13のうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R13同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。
【0274】
本実施形態においても、前記L21および前記L22は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であることが好ましい。
【0275】
また、本実施形態において、前記L21およびL22は単結合であり、前記R21および前記R22は、同じであることも好ましい。前記L21およびL22が、単結合である場合、前記一般式(40)は、下記一般式(40A)で表される。
【0276】
【化108】
【0277】
前記一般式(40A)において、Y11,Y12,Y13,Y14,Y15,Y16,Y17,Y18,Y19,Y20,Y21,Y22,およびXは、それぞれ前記一般式(40)におけるY11,Y12,Y13,Y14,Y15,Y16,Y17,Y18,Y19,Y20,Y21,Y22,およびXと同義である。前記一般式(40A)において、R21およびR22は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される基であり、同じであることが好ましい。さらに、前記一般式(40A)において、Y11とY22とが同じであり、Y12とY21とが同じであり、Y13とY20とが同じであり、Y14とY19とが同じであり、Y15とY18とが同じであり、Y16とY17とが同じであることが好ましい。
【0278】
本実施形態において、例えば、前記一般式(40)および前記一般式(40A)において、Y11とY22とが同じであり、Y12とY21とが同じであり、Y13とY20とが同じであり、Y14とY19とが同じであり、Y15とY18とが同じであり、Y16とY17とが同じであることが好ましい。
【0279】
本実施形態において、前記Y11,Y12,Y13,Y14,Y15,Y16,Y17,Y18,Y19,Y20,Y21,およびY22は、CR13であることが好ましく、前記R13は、水素原子であることがより好ましい。
【0280】
本実施形態においても、前記R21およびR22は、前記一般式(11)で表される基であることが好ましい。
【0281】
また、本実施形態においても、前記R21およびR22は、前記一般式(11a)で表される基、前記一般式(11b)で表される基、前記一般式(11c)で表される基、前記一般式(11d)で表される基、または前記一般式(11e)で表される基であることが好ましい。
【0282】
また、本実施形態においても、前記R21およびR22は、前記一般式(11f)で表される基、前記一般式(11g)で表される基、または前記一般式(11h)で表される基であることが好ましい。
【0283】
また、本実施形態において、前記R21およびR22に1つ以上の電子吸引性基が置換されていることも好ましい。電子吸引性基としては、前述と同様の基が好ましい。
【0284】
本実施形態においても、前記R21およびR22は、置換もしくは無置換のピリジニル基、置換もしくは無置換のピリミジニル基、または置換もしくは無置換のトリアジニル基であることも好ましい。また、本実施形態においても、前記R,前記R,前記R21,および前記R22は、前記一般式(11i),(11j),(11k),(11m),(11n),(11p),(11q),(11r),および(11s)のいずれかで表される基であることも好ましい。
【0285】
また、本実施形態において、前記R21およびR22は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基であることも好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、およびトリフェニレニル基からなる群から選択される芳香族炭化水素基であることがより好ましい。この場合、当該芳香族炭化水素基に、1つ以上の電子吸引性基が置換されていることが更に好ましい。
【0286】
本実施形態においても、前記Xは、酸素原子または硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
【0287】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良などは、本発明に含まれる。
【0288】
例えば、発光層は、1層に限られず、複数の発光層が積層されていてもよい。有機EL素子が複数の発光層を有する場合、少なくとも1つの発光層が前記第一の化合物および前記第二の化合物を含んでいればよい。例えば、その他の発光層が、蛍光発光型の発光層であっても、三重項励起状態から直接基底状態への電子遷移による発光を利用した燐光発光型の発光層であってもよい。
また、有機EL素子が複数の発光層を有する場合、これらの発光層が互いに隣接して設けられていてもよいし、中間層を介して複数の発光ユニットが積層された、いわゆるタンデム型の有機EL素子であってもよい。
【0289】
また、例えば、発光層の陽極側や陰極側に障壁層を隣接させて設けてもよい。障壁層は、発光層に接して配置され、正孔、電子および励起子の少なくともいずれかを阻止することが好ましい。
例えば、発光層の陰極側で接して障壁層が配置された場合、当該障壁層は、電子を輸送し、正孔が当該障壁層よりも陰極側の層(例えば、電子輸送層)に到達することを阻止する。有機EL素子が、電子輸送層を含む場合は、発光層と電子輸送層との間に当該障壁層を含むことが好ましい。
また、発光層の陽極側で接して障壁層が配置された場合、当該障壁層は、正孔を輸送し、電子が当該障壁層よりも陽極側の層(例えば、正孔輸送層)に到達することを阻止する。有機EL素子が、正孔輸送層を含む場合は、発光層と正孔輸送層との間に当該障壁層を含むことが好ましい。
また、励起エネルギーが発光層からその周辺層に漏れ出さないように、障壁層を発光層に隣接させて設けてもよい。発光層で生成した励起子が、当該障壁層よりも電極側の層(例えば、電子輸送層や正孔輸送層)に移動することを阻止する。
発光層と障壁層とは接合していることが好ましい。
【0290】
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【実施例】
【0291】
以下、本発明に係る実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0292】
<合成実施例1> 化合物GH−1の合成
(1)化合物(1−1)の合成
化合物(1−1)の合成スキームを次に示す。
【0293】
【化109】
【0294】
ジベンゾフラン 20.0g(80.9mmol)、および脱水テトラヒドロフラン 200mlを反応器としての三口フラスコに入れ、反応器を窒素雰囲気下にて−70℃に冷却した。反応器に1.68M s−ブチルリチウムへキサン溶液 97ml(163mmol)を滴下し、−70℃にて1時間撹拌した。その後、反応器にさらにホウ酸トリイソプロピル 37.3ml(162mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。反応終了後、1N HCl水溶液 100mlを加え、30分撹拌した後、試料溶液を分液ロートに移し、ジクロロメタンにて数回抽出した。抽出後の溶液を、無水硫酸マグネシウムを用いて、乾燥、ろ過、および濃縮した。濃縮して得られた固体をヘキサンにて分散洗浄し、白色の固体を得た。
化合物(1−1)の収量は15.9gであり、収率は93%であった。
【0295】
(2)化合物(1−2)の合成
化合物(1−2)の合成スキームを次に示す。
【0296】
【化110】
【0297】
三口フラスコに化合物(1−1)25.0g(97.7mmol)、2−ヨードニトロベンゼン74.7g(300mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液250mL、1,2−ジメトキシエタン500mL、およびPd(PPh 2.30g(1.95mmol)を入れ、窒素雰囲気下にて12時間還流させた。反応終了後、試料溶液をろ過した。得られた固体をメタノール、およびヘキサンを用いて洗浄した。
化合物(1−2)の収量は26.5gであり、収率は66%であった。
【0298】
(3)化合物(1−3)の合成
化合物(1−3)の合成スキームを次に示す。
【0299】
【化111】
【0300】
三口フラスコに化合物(1−3)26.5g(64.6mmol)、および亜リン酸トリエチル430mlを加え、170℃で16時間加熱撹拌した。
反応終了後、蒸留を行い、残った亜リン酸トリエチル、および亜リン酸トリエチル残渣を除去した。得られた有機層をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、淡黄色の固体を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでの精製において、展開溶媒としてヘキサンおよびジクロロメタンの混合溶媒を用いた。混合溶媒における混合比率としては、ヘキサン:ジクロロメタン=10:1、5:1、1:1の順番に徐々に変化させて、目的物を流出させた。
化合物(1−3)の収量は12.1gであり、収率は54%であった。
【0301】
(4)化合物(1−4)の合成
化合物(1−4)の合成スキームを次に示す。
【0302】
【化112】
【0303】
三口フラスコに化合物(1−3)3.46g(10mmol)、ヨードベンゼン2.04g(10mmоl)、ヨウ化銅1.90g(10mmol)、リン酸三カリウム4.24g(20mmol)、シクロヘキサンジアミン2.28g(20mmol)、および1,4−ジオキサン30mLを入れ、窒素雰囲気下にて12時間還流させた。
反応終了後、不溶物をセライト(登録商標)で濾別し、濾液を分液ロートに移し、ジクロロメタンにて数回抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、および濃縮した。濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、白色の固体を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでの精製において、展開溶媒としてヘキサンおよびジクロロメタンの混合溶媒を用いた。混合溶媒における混合比率としては、ヘキサン:ジクロロメタン=10:1、5:1の順番に徐々に変化させて、目的物を流出させた。
化合物(1−4)の収量は3.38gであり、収率は40%であった。
【0304】
(5)化合物GH−1の合成
化合物(GH−1)の合成スキームを次に示す。
【0305】
【化113】
【0306】
三口フラスコに化合物(1−4)2.11g(5mmol)、中間体A 1.94g(5mmol)、Pd(dba) 90mg(0.1mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.12g(0.4mmol)、ナトリウムt−ブトキシド0.67g(7mmol)、および脱水トルエン100mLを入れ、アルゴン雰囲気下にて48時間還流させた。
反応終了後、試料溶液をトルエン5000mLに加えて、110℃に加熱し、不溶物をセライトおよびシリカゲルに通して濾別した。濾液を濃縮して得られた固体を、トルエンで繰り返し洗浄することにより、目的物(化合物GH−1)を固体とし得た。
化合物GH−1の収量は2.77gであり、収率は76%であった。
FD−MS(Field Desorption Mass Spectrometry)分析の結果、分子量729に対してm/e=729であった。
【0307】
<化合物の評価>
次に、化合物GH−1の遅延蛍光発光性を測定した。測定方法および算出方法を以下に示す。
【0308】
・遅延蛍光発光性
遅延蛍光発光性は図2に示す装置を利用して過渡PLを測定することにより確認した。前記化合物GH−1と前記化合物TH−2とを、化合物GH−1の割合が12質量%となるように石英基板上に共蒸着し、膜厚100nmの薄膜を形成して試料を作製した。前記化合物GH−1が吸収する波長のパルス光(パルスレーザーから照射される光)で励起された後、当該励起状態から即座に観察されるPrompt発光(即時発光)と、当該励起後、即座には観察されず、その後観察されるDelay発光(遅延発光)とが存在する。本実施例における遅延蛍光発光とは、Delay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上を意味する。化合物GH−1はDelay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上あることを確認している。Prompt発光とDelay発光の量は、“Nature 492, 234−238, 2012”に記載された方法と同様の方法により求めることができる。なお、Prompt発光とDelay発光の量の算出に使用される装置は、図2の装置や文献に記載された装置に限定されるものではない。
【0309】
また、化合物GH−1、下記化合物GH−2、および下記化合物DAついては、一重項エネルギーも測定した。測定方法および算出方法を以下に示す。
【0310】
・一重項エネルギーS
一重項エネルギーSは、次のようにして測定した。測定対象となる化合物の10μmol/Lトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトル(縦軸:発光強度、横軸:波長とする。)を測定した。この吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を次に示す換算式1に代入して一重項エネルギーを算出した。
換算式1:S[eV]=1239.85/λedge
本実施例では、吸収スペクトルを日立社製の分光光度計(装置名:U3310)で測定した。なお、吸収スペクトル測定装置は、ここで用いた装置に限定されない。
【0311】
算出した一重項エネルギーSを以下に示す。
GH−1:2.89eV
GH−2:3.05eV
DA :3.55eV
【0312】
化合物GH−1の他、有機EL素子の製造に用いた化合物を以下に示す。
【0313】
【化114】
【0314】
【化115】
【0315】
【化116】
【0316】
【化117】
【0317】
【化118】
【0318】
<有機EL素子の作製および評価>
有機EL素子を以下のように作製し、評価した。
【0319】
(実施例1)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマティック社製)を、イソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄を行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。ITOの膜厚は、130nmとした。
洗浄後の透明電極ライン付き前記ガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に透明電極を覆うようにして化合物HIを蒸着し、膜厚5nmの正孔注入層を形成した。
次に、正孔注入層上に、化合物HT−1を蒸着し、HI膜上に膜厚80nmの第一正孔輸送層を形成した。
次に、この第一正孔輸送層上に、化合物HT−2を蒸着し、膜厚10nmの第二正孔輸送層を形成した。
さらに、この第二正孔輸送層上に、第一の化合物としての化合物GH−1と、第二の化合物としての化合物DAと、第三の化合物としてのGD−1と、を共蒸着し、膜厚25nmの発光層を形成した。発光層における化合物GH−1の濃度を50質量%とし、化合物DAの濃度を49質量%とし、化合物GD−1の濃度を1質量%とした。
次に、この発光層上に、化合物HBを蒸着し、膜厚5nmの障壁層を形成した。
次に、この障壁層上に、化合物ETを蒸着し、膜厚20nmの電子輸送層を形成した。
次に、この電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を蒸着し、膜厚1nmの電子注入性電極(陰極)を形成した。
そして、この電子注入性電極上に、金属アルミニウム(Al)を蒸着し、膜厚80nmの金属Al陰極を形成した。
実施例1の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(10) / DA : GH-1 : GD-1(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。また、同じく括弧内において、パーセント表示された数字は、発光層における各化合物の割合(質量%)を示す。
【0320】
(実施例2)
実施例2の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物GD−1に代えて化合物GD−2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例2の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(10) / DA : GH-1 : GD-2(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0321】
(実施例3)
実施例3の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物GD−1に代えて化合物GD−3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例3の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(10) / DA : GH-1 : GD-3(25, 49% : 50% : 1%)/ HB(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0322】
(実施例4)
実施例4の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物GD−1に代えて化合物GD−4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例4の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(10) / DA : GH-1 : GD-4(25, 49% : 50% : 1%)/ HB(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0323】
(実施例5)
実施例5の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物GD−1に代えて化合物GD−5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例5の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(10) / DA : GH-1 : GD-5(25, 49% : 50% : 1%)/ HB(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0324】
(比較例1)
比較例1の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物GH−1に代えて化合物GH−2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
比較例1の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(10) / DA : GH-2 : GD-1(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0325】
(比較例2)
比較例2の有機EL素子は、実施例2の発光層における化合物GH−1に代えて化合物GH−2を用いたこと以外は、実施例2と同様にして作製した。
比較例2の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(10) / DA : GH-2 : GD-2(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0326】
(比較例3)
比較例3の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物DAを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
比較例3の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(10) / GH-1 : GD-1 (25, 99% : 1%) / HB(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0327】
〔有機EL素子の評価〕
実施例1〜5および比較例1〜3において作製した有機EL素子について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0328】
・駆動電圧
電流密度が0.1mA/cm、1mA/cm、または10mA/cmとなるようにITO透明電極と金属Al陰極との間に通電したときの電圧(単位:V)を計測した。
【0329】
・輝度およびCIE1931色度
電流密度が0.1mA/cm、1mA/cm、または10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の輝度およびCIE1931色度座標(x、y)を、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)で計測した。
【0330】
・電流効率L/Jおよび電力効率η
電流密度が0.1mA/cm、1mA/cm、または10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを、上記分光放射輝度計で計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、電流効率(単位:cd/A)および電力効率η(単位:lm/W)を算出した。
【0331】
・主ピーク波長λ
得られた上記分光放射輝度スペクトルから主ピーク波長λを求めた。
【0332】
・外部量子効率EQE
電流密度が0.1mA/cm、1mA/cm、または10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを上記分光放射輝度計で計測した。得られた上記分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行なったと仮定し外部量子効率EQE(単位:%)を算出した。
【0333】
【表1】
【0334】
表1が示すように、実施例1〜実施例5に係る有機EL素子は、いずれの電流密度で駆動させた場合でも、比較例1および比較例2に係る有機EL素子と比べて、電流効率L/J、電力効率η、及び外部量子効率EQEが高くなった。実施例1〜実施例5に係る有機EL素子は、発光層における第一の化合物、第二の化合物、および第三の化合物との組み合わせにより、比較例1および比較例2に比べて発光効率が向上したと考えられる。特に、第一の化合物としてGH−1を用いた実施例1〜実施例5は、第一の化合物としてGH−2を用いた比較例1および比較例2と比べ、電流効率L/J、電力効率η、及び外部量子効率EQEが格段に高くなった。実施例1〜実施例5で用いた化合物GH−1の主骨格(下記式(L−1)で表される骨格)のように、環が7つ縮合した縮合七環のラダー骨格は、比較例1および比較例2で用いた化合物GH−2の主骨格(下記式(L−2)で表される骨格)のように、環が5つ縮合した縮合五環のラダー骨格と比較して、ドナー性が強い。これにより、実施例1〜実施例5の化合物GH−1において、HOMO準位およびLUMO準位の電子状態が、熱活性遅延蛍光性を有するのに適した状態になると考えられる。その結果、実施例1〜実施例5で用いた第一の化合物から、第三の化合物である蛍光発光性化合物に効率よくエネルギーを移動させることができ、高効率な有機EL素子を得ることができたと考えられる。本実施例では、第一の化合物と、第三の化合物としての蛍光発光性化合物であるジアミノアントラセン誘導体と、第二の化合物としてのジベンゾフラン誘導体との組み合わせが好適であった。
【0335】
【化119】
【0336】
さらに、実施例1に係る有機EL素子は、発光層に第一の化合物および第三の化合物だけでなく、さらに第二の化合物も含有する。一方、比較例3に係る有機EL素子は、発光層に第一の化合物および第三の化合物を含有するが、第二の化合物を含有しない。そのため、比較例3に係る有機EL素子に比べて、実施例1の有機EL素子は発光効率が向上したと考えられる。実施例1のように、第一の化合物および第三の化合物と比較して一重項エネルギーが高い第二の化合物を用いたことにより、有機EL素子全体としてのキャリアバランスが向上し、第三の化合物を用いたことによる濃度消光も防止することができたため、比較例3と比較しても高効率な有機EL素子を得ることができたと考えられる。
【0337】
(実施例6〜14)
実施例6〜14に係る有機EL素子の作製には、前記実施例で用いた化合物の他に、下記化合物も用いた。
【0338】
【化120】
【0339】
【化121】
【0340】
【化122】
【0341】
【化123】
【0342】
<化合物の評価>
化合物GH−3および化合物GH−4の遅延蛍光発光性を確認した。測定方法および算出方法は前述と同様である。化合物GH−3および化合物GH−4については、Delay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上あることを確認している。
【0343】
また、化合物GH−3、化合物GH−4、および化合物DA−2ついては、一重項エネルギーも測定した。測定方法および算出方法は前述と同様である。
算出した一重項エネルギーSを以下に示す。
GH−3:2.74eV
GH−4:2.94eV
DA−2:3.75eV
【0344】
<有機EL素子の作製および評価>
有機EL素子を以下のように作製し、評価した。
【0345】
(実施例6)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマティック社製)を、イソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄を行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。ITOの膜厚は、130nmとした。
洗浄後の透明電極ライン付き前記ガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に透明電極を覆うようにして化合物HIを蒸着し、膜厚5nmの正孔注入層を形成した。
次に、正孔注入層上に、化合物HT−1を蒸着し、HI膜上に膜厚110nmの第一正孔輸送層を形成した。
次に、この第一正孔輸送層上に、化合物HT−2を蒸着し、膜厚15nmの第二正孔輸送層を形成した。
さらに、この第二正孔輸送層上に、第一の化合物としての化合物GH−1と、第二の化合物としての化合物DAと、第三の化合物としてのGD−6と、を共蒸着し、膜厚25nmの発光層を形成した。発光層における化合物GH−1の濃度を50質量%とし、化合物DAの濃度を49質量%とし、化合物GD−6の濃度を1質量%とした。
次に、この発光層上に、化合物HBを蒸着し、膜厚5nmの障壁層を形成した。
次に、この障壁層上に、化合物ETを蒸着し、膜厚35nmの電子輸送層を形成した。
次に、この電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を蒸着し、膜厚1nmの電子注入性電極(陰極)を形成した。
そして、この電子注入性電極上に、金属アルミニウム(Al)を蒸着し、膜厚80nmの金属Al陰極を形成した。
実施例6の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(110) / HT-2(15) / DA : GH-1 : GD-6(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(35) / LiF(1) / Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。また、同じく括弧内において、パーセント表示された数字は、発光層における各化合物の割合(質量%)を示す。
【0346】
(実施例7)
実施例7の有機EL素子は、実施例6の発光層における化合物GH−1に代えて化合物GH−3を用い、化合物GD−6に代えて化合物GD−7を用いたこと以外は、実施例6と同様にして作製した。
実施例7の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(110) / HT-2(15) / DA : GH-3 : GD-7(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(35) / LiF(1) / Al(80)
【0347】
(実施例8)
実施例8の有機EL素子は、実施例6の発光層におけるGH−1に代えて化合物GH−4を用いたこと以外は、実施例6と同様にして作製した。
実施例5の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(110) / HT-2(15) / DA : GH-4 : GD-6(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(35) / LiF(1) / Al(80)
【0348】
(実施例9)
実施例9の有機EL素子は、実施例6の発光層における化合物GD−6に代えて化合物GD−8を用いたこと以外は、実施例6と同様にして作製した。
実施例9の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(110) / HT-2(15) / DA : GH-1 : GD-8(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(35) / LiF(1) / Al(80)
【0349】
(実施例10)
実施例10の有機EL素子は、実施例6の発光層における化合物GH−1に代えて化合物GH−4を用い、化合物GD−6に代えて化合物GD−8を用いたこと以外は、実施例6と同様にして作製した。
実施例10の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(110) / HT-2(15) / DA : GH-4 : GD-8(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(35) / LiF(1) / Al(80)
【0350】
(実施例11)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマティック社製)を、イソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄を行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。ITOの膜厚は、130nmとした。
洗浄後の透明電極ライン付き前記ガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に透明電極を覆うようにして化合物HIを蒸着し、膜厚5nmの正孔注入層を形成した。
次に、正孔注入層上に、化合物HT−1を蒸着し、HI膜上に膜厚125nmの第一正孔輸送層を形成した。
次に、この第一正孔輸送層上に、化合物HT−3を蒸着し、膜厚15nmの第二正孔輸送層を形成した。
さらに、この第二正孔輸送層上に、第一の化合物としての化合物GH−3と、第二の化合物としての化合物DAと、第三の化合物としてのGD−6と、を共蒸着し、膜厚25nmの発光層を形成した。発光層における化合物GH−3の濃度を50質量%とし、化合物DAの濃度を49質量%とし、化合物GD−6の濃度を1質量%とした。
次に、この発光層上に、化合物HBを蒸着し、膜厚5nmの障壁層を形成した。
次に、この障壁層上に、化合物ETを蒸着し、膜厚35nmの電子輸送層を形成した。
次に、この電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を蒸着し、膜厚1nmの電子注入性電極(陰極)を形成した。
そして、この電子注入性電極上に、金属アルミニウム(Al)を蒸着し、膜厚80nmの金属Al陰極を形成した。
実施例11の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(125) / HT-3(15) / DA : GH-3 : GD-6(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(35) / LiF(1) / Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。また、同じく括弧内において、パーセント表示された数字は、発光層における各化合物の割合(質量%)を示す。
【0351】
(実施例12)
実施例12の有機EL素子は、実施例11の発光層における化合物GH−3に代えて化合物GH−4を用い、障壁層における化合物HBに代えて化合物HB−2を用いたこと以外は、実施例11と同様にして作製した。
実施例12の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(125) / HT-3(15) / DA : GH-4 : GD-6(25, 49% : 50% : 1%) / HB-2(5) / ET(35) / LiF(1) / Al(80)
【0352】
(実施例13)
実施例13の有機EL素子は、実施例11の発光層における化合物DAに代えて化合物DA−2を用いたこと以外は、実施例11と同様にして作製した。
実施例13の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(125) / HT-3(15) / DA-2 : GH-3 : GD-6(25, 49% : 50% : 1%) / HB(5) / ET(35) / LiF(1) / Al(80)
【0353】
(実施例14)
実施例14の有機EL素子は、実施例11の第一正孔輸送層における化合物HT−1に代えて化合物HT−4を用い、発光層における化合物GH−3に代えて化合物GH−4を用い、障壁層における化合物HBに代えて化合物HB−2を用いたこと以外は、実施例11と同様にして作製した。
実施例14の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-4(125) / HT-3(15) / DA : GH-4 : GD-6(25, 49% : 50% : 1%) / HB-2(5) / ET(35) / LiF(1) / Al(80)
【0354】
〔有機EL素子の評価〕
実施例6〜14において作製した有機EL素子について、駆動電圧、輝度、CIE1931色度、電流効率L/J、電力効率η、主ピーク波長λ、および外部量子効率EQEの評価を行った。評価方法は、前述と同様である。なお、実施例6〜14では、有機EL素子を駆動させる際の電流密度を、0.10mA/cm、1.00mA/cm、または10mA/cmとした。各評価の結果を表2に示す。
【0355】
【表2】
【0356】
表2が示すように、実施例6〜実施例14に係る有機EL素子は、いずれの電流密度で駆動させた場合でも、電流効率L/J、電力効率η、及び外部量子効率EQEが高くなった。実施例6〜実施例14に係る有機EL素子は、発光層における第一の化合物、第二の化合物、および第三の化合物との組み合わせにより、発光効率が高くなったと考えられる。実施例6〜実施例14で用いた化合物GH−1、化合物GH−3、および化合物GH−4の主骨格(前記式(L−1)で表される骨格)のように、環が7つ縮合した縮合七環のラダー骨格は、環が5つ程度縮合した縮合環と比較して、ドナー性が強い。これにより、実施例6〜実施例14の化合物GH−1、化合物GH−3、および化合物GH−4において、HOMO準位およびLUMO準位の電子状態が、熱活性遅延蛍光性を有するのに適した状態になると考えられる。その結果、実施例6〜実施例14で用いた第一の化合物から、第三の化合物である蛍光発光性化合物に効率よくエネルギーを移動させることができ、高効率な有機EL素子を得ることができたと考えられる。本実施例では、第一の化合物と、第三の化合物としての蛍光発光性化合物であるジアミノピレン誘導体またはアミノフルオランテン誘導体と、第二の化合物としてのジベンゾフラン誘導体との組み合わせが好適であった。
【符号の説明】
【0357】
1…有機EL素子、2…基板、3…陽極、4…陰極、5…発光層、6…正孔注入層、
7…正孔輸送層、8…電子輸送層、9…電子注入層。
図1
図2
図3
図4