特許第6374339号(P6374339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374339
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20180806BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20180806BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01L33/48
   H01L33/50
   H01L33/56
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-65262(P2015-65262)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-184708(P2016-184708A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年5月5日
【審判番号】不服2017-14447(P2017-14447/J1)
【審判請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲也
【合議体】
【審判長】 森 竜介
【審判官】 村井 友和
【審判官】 近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−79723(JP,A)
【文献】 特開2005−277380(JP,A)
【文献】 特開2011−249807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有し横方向に長い素子収容器であって、前記横方向に並び前記凹部の底を構成する一対のリード電極と、前記一対のリード電極と一体に成形され前記凹部の側壁を構成する成形体と、を含む素子収容器と、
前記凹部の底の前記一対のリード電極の少なくとも一方の上に配置された発光素子と、を備え、
前記成形体は、前記凹部の縦方向に向かい合う2つの側壁同士を結ぶ補強部を有し、
前記補強部は、前記2つの側壁の其々に接続した2つの端部領域と、前記2つの端部領域の間の中間領域と、からなり、
前記2つの端部領域の高さは、前記中間領域の高さより高く、
前記中間領域の高さは、前記凹部の底の前記一対のリード電極の表面より高く且つ前記発光素子の上面の高さより低い発光装置。
【請求項2】
前記2つの端部領域の前記横方向の幅は、前記中間領域の前記横方向の幅より大きい請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記2つの端部領域における、それぞれの端部領域の前記縦方向の幅は、前記中間領域の前記縦方向の幅より小さい請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記2つの端部領域の表面は、前記凹部の底の前記一対のリード電極の表面に対して傾斜する傾斜面で構成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記2つの端部領域の高さは、前記発光素子の上面の高さ以上である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記補強部は、前記一対のリード電極を隔てる離間領域上にある請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記2つの端部領域の前記横方向の幅は、前記離間領域の前記横方向の幅より大きい請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記中間領域の前記横方向の幅は、前記離間領域の前記横方向の幅以下である請求項6又は7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記補強部は、前記凹部の前記横方向の略中央にある請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記成形体の外形の前記縦方向の幅は、1mm以下である請求項1乃至9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記成形体の母材は、熱可塑性樹脂である請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記成形体の母材は、不飽和ポリエステル系樹脂である請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記凹部内に充填された封止部材を備え、
前記封止部材は、前記発光素子が発する光を異なる波長の光に変換する波長変換物質を含有し、
前記波長変換物質は、緑色光乃至黄色光を発する第1蛍光体と、赤色光を発する第2蛍光体と、を含む請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記第2蛍光体は、マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体を含む請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
前記封止部材の母材は、フェニル基を含むシリコーン系樹脂である請求項13又は14に記載の発光装置。
【請求項16】
当該発光装置は、側面発光型である請求項1乃至15のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項17】
前記一対のリード電極の前記少なくとも一方が穴を有し、前記穴の上に前記中間領域が位置することを特徴とする1乃至16のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、発光素子が配置される底部と、互いに対向し第1方向へ延びる一対の第1壁部と、第1壁部よりも厚く形成され互いに対向し第2方向へ延びる一対の第2壁部と、により凹部が形成される樹脂材からなるケースにおいて、凹部の底部に、一対の第1壁部を接続する底部に対して垂直な板状の接続壁部を設けることによって、凹部に充填される封止材の熱膨張によるケースの変形を抑制できることが記載されている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、リセスを有する胴体と、リセスの底面より突出し、リセスの底面を複数の領域に分割する障壁部と、リセスの底面の第1領域に配置された第1発光ダイオード及びリセスの底面の第2領域に配置された第2発光ダイオードを含む複数の発光ダイオードと、リセスの内に互いに離隔され、複数の発光ダイオードに選択的に連結された複数のリード電極と、複数のリード電極と複数の発光ダイオードとを連結するワイヤと、リセスの内に形成された樹脂層と、を含み、障壁部に形成され、障壁部の上面より低く、リセスの底面より高い高さを有し、互いに反対側に配置されたリード電極と発光ダイオードとを連結するワイヤが配置される少なくとも1つの凹部を含む発光装置(特許文献2中では「発光素子」)が記載されている。そして、この障壁部の凹部の高さは、リセスの底面を基準にして第1及び第2発光ダイオードの厚さより高く形成されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−170795号公報
【特許文献2】特開2011−249807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の発光装置における接続壁部(障壁部)は、ケース(胴体)の変形を抑制できる反面、発光素子の光を遮って装置の配光に影響を及ぼしやすい。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、装置の配光に影響を及ぼしにくい構造で変形を抑制可能な素子収容器を備える発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態の発光装置は、凹部を有し横方向に長い素子収容器であって、前記横方向に並び前記凹部の底を構成する一対のリード電極と、前記一対のリード電極と一体に成形され前記凹部の側壁を構成する成形体と、を含む素子収容器と、前記凹部の底の前記一対のリード電極の少なくとも一方の上に配置された発光素子と、を備え、前記成形体は、前記凹部の縦方向に向かい合う2つの側壁同士を結ぶ補強部を有し、前記補強部は、前記2つの側壁の其々に接続した2つの端部領域と、前記2つの端部領域の間の中間領域と、からなり、前記2つの端部領域の高さは、前記中間領域の高さより高く、前記中間領域の高さは、前記凹部の底の前記一対のリード電極の表面より高く且つ前記発光素子の上面の高さより低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施の形態に係る発光装置の素子収容器は、装置の配光に影響を及ぼしにくい構造で変形を抑制することができ、配光特性及び信頼性に優れる発光装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る発光装置の概略前面図(a)と、そのA−A断面における概略断面図(b)と、概略下面図(c)である。
図2】本発明の別の一実施の形態に係る発光装置の概略前面図(a)と、そのB−B断面における概略断面図(b)と、概略下面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。但し、以下に説明する発光装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、一の実施の形態において説明する内容は、他の実施の形態にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0011】
なお以下、可視波長域は波長が380nm以上780nm以下の範囲とし、青色域は波長が420nm以上480nm以下の範囲、緑色乃至黄色域は波長が500nm以上590nm以下の範囲、赤色域は波長が610nm以上750nm以下の範囲とする。
【0012】
<実施の形態1>
図1(a)及び(c)は其々実施の形態1に係る発光装置100の概略前面図及び概略下面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面における概略断面図である。
【0013】
図1(a)〜(c)に示すように、実施の形態1に係る発光装置100は、素子収容器10と発光素子21,22を備えている。この発光装置100及び素子収容器10は、横方向(図中では左右方向)に長い。素子収容器10は、凹部10aを有している。凹部10aは、素子収容器10と同様に、横方向に長い。素子収容器10は、一対のリード電極11,12と、一対のリード電極11,12と一体に成形された成形体15と、を含んでいる。一対のリード電極11,12は、横方向に並んでいる。一対のリード電極11,12は、凹部10aの底を構成している。成形体15は、凹部10aの側壁を構成している。発光素子21,22は、凹部10a内に収容されている。より詳細には、2つの発光素子21,22は、凹部10aの底の一対のリード電極11,12の両方の上に各々配置されている。発光素子21,22は、一対のリード電極11,12と電気的に接続されている。なお、発光素子は、凹部10aの底の一対のリード電極11,12の少なくとも一方の上に1つ配置されていればよい。
【0014】
より詳細には、発光装置100は、発光ダイオード(LED)である。凹部10aは、素子収容器10の側面の1つ(前面)に設けられている。成形体15は、白色顔料及び充填剤を含有し、特に白色顔料により光反射性を有している。このため、発光装置100の発光領域(意図しない漏光は考慮に入れない)は、前面における凹部10aの開口に略一致している。本実施の形態1の一対のリード電極11,12は、発光装置100(素子収容器10)の横方向の中央を基準として略対称である。凹部10aの底は、成形体15の表面と一対のリード電極11,12の表面で構成されている。この凹部10aの底を構成する一対のリード電極11,12の部位は、発光素子21,22の接着領域及び/又はワイヤ50の接続領域を含む素子実装部11a,12aである。また、一対のリード電極11,12は、成形体15の外側にある部位として、外部接続端子部11b,12bを有している。外部接続端子部11b,12bは、成形体15の下面に沿うように折り曲げられている。発光装置100は、外部接続端子部11b,12bが回路基板等にはんだ付けされることで実装される。よって、発光装置100(素子収容器10)の実装側主面は下面である。より具体的には、成形体15の下面は、外部接続端子部11b,12bが各々配置される左/右の領域が上位にあり、中央領域が下位にあるように、段付きになっている。これに伴って、素子収容器10(成形体15)の前面の形状、及び凹部10aの開口の形状は、中央領域が左/右領域よりも下方側に幅広に(即ち縦方向の幅が大きく)形成されている。
【0015】
そして、成形体15は、凹部10aの縦方向(図中では上下方向)に向かい合う2つの側壁151,152同士を結ぶ補強部17を有している。補強部17は、2つの側壁151,152の其々に接続した2つの端部領域17e1,17e2と、この2つの端部領域17e1,17e2の間の中間領域17mと、からなっている。2つの端部領域の高さHe1,He2は、中間領域の高さHmより高い。中間領域の高さHmは、凹部10aの底の一対のリード電極11,12の表面より高く且つ発光素子21,22の上面(前面)の高さHcより低い。
【0016】
以上のように構成された補強部17は、発光素子21,22の光の遮りを適度に抑えられ装置の配光に影響を及ぼしにくく、且つ成形体15の機械的強度を効果的に高めて変形を抑制することができる。したがって、外力のほか、リフローはんだ実装時における加熱、並びに/又は、発光素子21,22及び後述する波長変換物質40の発熱などによる温度変化に対して変形しにくく、且つ所望の配光を得やすい素子収容器10が得られる。これにより、発光装置100は、配光特性及び信頼性に優れる発光装置とすることができる。ひいては、広色域且つ高光質の発光装置の品質を安定させることができる。
【0017】
なお、補強部17は、凹部10a内、特に凹部10aの底から側壁151,152にかけて存在する。より詳細には、補強部17は、凹部10aの底の一対のリード電極11,12の表面より高い凸部である。また、2つの端部領域17e1,17e2は其々、側壁151,152の表面を基準として、凹部10aの内側に向かって凸の凸部である。なお、補強部17の各領域の高さは、最大高さに相当するものとし、凹部10aの底の一対のリード電極11,12の表面を含む平面を基準として、各領域の最も高い位置までの垂直距離として考えるものとする。また、後述する補強部17の各領域の幅は、最大幅に相当するものとする。
【0018】
以下、発光装置100の好ましい形態について説明する。
【0019】
図1(a)及び(b)に示すように、2つの端部領域の横方向の幅We1,We2は、中間領域の横方向の幅Wmより大きいことが好ましい。これにより、2つの端部領域17e1,17e2によって、成形体15(特に側壁151,152)を補強しやすく、成形体15の変形を抑制しやすい。また、成形体15の成形時に、金型内において成形体15の液状材料が流れやすくなり、成形体15の成形性を高めることができる。なお、2つの端部領域17e1,17e2の中間領域17mより横方向に幅広になる部位は、中間領域17mに対して直角に張り出してもよいが、中間領域17mから側壁151,152まで斜めに張り出す即ち徐々に幅広になるのがよい。
【0020】
図1(a)に示すように、2つの端部領域の縦方向の幅Le1,Le2は、中間領域の縦方向の幅Lmより小さいことが好ましい。このように、中間領域17mより高い端部領域17e1,17e2の縦方向の幅Le1,Le2が中間領域の縦方向の幅Lmより小さいことによって、端部領域17e1,17e2による発光素子21,22の光の遮りを適度に抑えやすい。
【0021】
図1(a)及び(b)に示すように、2つの端部領域17e1,17e2の表面は、凹部10aの底の一対のリード電極11,12の表面に対して傾斜する傾斜面で構成されていることが好ましい。これにより、端部領域17e1,17e2を小型にしやすく、端部領域17e1,17e2による発光素子21,22の光の遮りを適度に抑えやすい。本実施の形態1の2つの端部領域17e1,17e2の表面は、凹部10aの底の一対のリード電極11,12の表面に対して傾斜する複数の傾斜面で構成されている。
【0022】
図1(a)及び(b)に示すように、2つの端部領域の高さHe1,He2は、発光素子21,22の上面(前面)の高さHc以上であることが好ましく、Hcより高いことがより好ましい。これにより、2つの端部領域17e1,17e2によって、成形体15(特に側壁151,152)を補強しやすく、成形体15の変形を抑制しやすい。また、図1(a)及び(b)では、2つの端部領域の高さHe1,He2は、成形体15の前面の高さより低くなっているが、成形体15の前面の高さ以下であればよく、例えば成形体15の前面の高さと等しくてもよい。
【0023】
図1(a)及び(b)に示すように、補強部17は、一対のリード電極11,12を隔てる離間領域15g上にあることが好ましい。成形体15の離間領域15gの近傍は、成形体15のひび割れ等の損傷を生じやすい部位であるため、補強部17によって、成形体15の離間領域15gの近傍を補強することは技術的意義が大きい。なお、この場合、通常、補強部17は、成形体15の離間領域15gと連続している。
【0024】
図1(a)及び(b)に示すように、2つの端部領域の横方向の幅We1,We2は、離間領域の横方向の幅Wmより大きいことが好ましい。これにより、2つの端部領域17e1,17e2が凹部10aの底の一対のリード電極11,12の上を被覆し、一対のリード電極11,12を成形体15によって強固に保持することができる。
【0025】
図1(a)及び(b)に示すように、中間領域の横方向の幅Wmは、離間領域の横方向の幅Wg以下であることが好ましい。これにより、凹部10aの底における発光素子21,22の実装領域(素子実装部11a,12aを含む)を広く確保することができる。一方、中間領域の横方向の幅Wmが離間領域の横方向の幅Wgより大きくてもよく、その場合には中間領域17mが凹部10aの底の一対のリード電極11,12の上を被覆し、一対のリード電極11,12を成形体15によって強固に保持することができる。
【0026】
図1(a)及び(b)に示すように、補強部17は、凹部10aの横方向の略中央にあることが好ましい。凹部10aの横方向の中央近傍は、成形体15(特に側壁151,152)のひび割れ等の損傷を生じやすい部位であるため、補強部17によって、成形体15の凹部10aの横方向の中央の近傍を補強することは技術的意義が大きい。
【0027】
図1(a)及び(b)に示すように、2つの端部領域17e1,17e2は、成形体15を略均等に補強する観点において、中間領域17mを基準として略対称であることが好ましいが、非対称であってもよい。2つの端部領域17e1,17e2を非対称とする場合、例えば2つの端部領域17e1,17e2の一方の幅及び/又は高さを他方のそれより大きくすることが挙げられる。より詳細には、例えば、上面側の端部領域17e1の幅及び/又は高さを下面側の端部領域17e2のそれより大きくすることが挙げられる。
【0028】
発光装置100(素子収容器10)の外形の縦方向の幅(側面発光型の発光装置の場合は厚さ)が小さいほど、側壁151,152が薄くなりやすいため、補強部17によって成形体15を補強する技術的意義が大きくなる。この観点において、成形体15の外形の縦方向の幅は、1mm以下であることが好ましい。特に、成形体15の外形の縦方向の幅は、0.8mm以下であることが好ましく、0.6mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることがよりいっそう好ましい。成形体15の外形の縦方向の幅の下限値は、特に限定されないが、例えば0.2mm以上である。また、側壁151,152の最も薄い部位の厚さは、例えば0.1mm以下であり、発光領域(凹部10aの開口)を大きくする観点では、0.08mm以下であることが好ましく、0.06mm以下であることがより好ましい。但し、側壁151,152が薄くなり過ぎると、側壁151,152からの漏光が増大する虞があるため、側壁151,152の最も薄い部位の厚さの下限値としては0.03mm以上であることが好ましい。
【0029】
図1(a)〜(c)に示すように、発光装置100は、側面発光型(サイドビュー型)であることが好ましい。通常、発光装置は、回路基板等に実装される際、発光装置(の素子収容器)の実装側主面と反対の面を吸着ノズル(コレット)で吸着され、回路基板上に載置される。このとき、側面発光型の発光装置100(の素子収容器10)は、側面の1つに凹部10aを有し、上面を吸着ノズルで吸着されるため、吸着及び載置時の外力が側壁151,152(特に上面側の側壁151)に直接的に加えられる。このため、側面発光型の発光装置100(の素子収容器10)の側壁151,152を、補強部17によって補強することは技術的意義が大きい。また、側面発光型の発光装置100(の素子収容器10)は、薄型(例えば厚さ(外形の縦方向の幅)が1mm以下であることを言う)に形成されやすく、側壁151,152が薄くなりやすいため、より好適である。
【0030】
図1(a)及び(b)に示すように、発光装置100は、封止部材30を備えている。封止部材30は、凹部10a内に充填されている。封止部材30は、発光素子21,22が発する光を異なる波長の光に変換する波長変換物質40を含有している。波長変換物質40は、緑色光乃至黄色光を発する第1蛍光体41と、赤色光を発する第2蛍光体42と、を含んでいる。この場合、発光素子21,22は、青色光を発する素子であると良い。このような構成により、色再現性又は演色性に優れる発光が可能となる。しかしながら、その反面、波長変換物質40の使用量が比較的多くなり、それに伴いストークスロスによる発熱が増大する。したがって、素子収容器の成形体15及び/又は封止部材30の変形を生じやすくなるため、本実施の形態の発光装置100の構成が効果を奏しやすい。
【0031】
さらに、第2蛍光体42は、マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体を含むことが好ましい。マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体は、赤色域においてスペクトル半値幅の狭い発光が可能であるが、発光効率が比較的低いため、使用量が多くなりやすく、それに伴いストークスロスによる発熱が増大しやすい。したがって、素子収容器の成形体15及び/又は封止部材30の変形をよりいっそう生じやすくなるため、本実施の形態の発光装置100の構成が特に効果を奏しやすい。
【0032】
封止部材30の母材は、フェニル基を含むシリコーン系樹脂であることが好ましい。シリコーン系樹脂は、熱硬化性樹脂であって優れた耐熱性及び耐光性を有し、フェニル基を含むことで耐熱性が更に強化されている。フェニル基を含むシリコーン系樹脂は、シリコーン系樹脂の中ではガスバリア性が比較的高いため、マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体の水分による劣化を抑制しやすい。加えて、一対のリード電極11,12及び後述のワイヤ50の硫黄含有ガス等の腐食性ガスによる劣化も抑制しやすい。なお、マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体は、水分及び熱による劣化を抑制するため、封止部材30中において、前方側より後方側に即ち凹部10aの底側に多く存在していることが好ましい。
【0033】
図1(a)及び(b)に示すように、発光装置100は、一対のリード電極11,12と発光素子21,22を接続するワイヤ50を備えている。ワイヤ50は、凹部10a内に収容され、封止部材30に封止されている。ワイヤ50は、光反射性を高める観点において、銀を含むことが好ましい。すなわち、ワイヤ50は、少なくとも表面が銀若しくは銀合金で構成されていることが好ましく、銀線若しくは銀合金線であることがより好ましい。ここで、ワイヤ50は、封止部材30の伸縮により歪みを生じ、ひいては破断することがある。特に、金より延性の小さい銀を含むワイヤ50は、金線に比べ破断しやすくなるが、成形体15が変形しにくいことで封止部材30の伸縮が抑えられ、その破断を抑制することができる。また、この破断抑制の観点から、銀を含むワイヤ50は、特に、表面に銀若しくは銀合金の被膜を有する金線、又は金を含む銀合金線であることが好ましい。さらに、この銀合金は、銀75%以上/金15%以上又は銀85%以上/金5%以上(残りの成分は例えばパラジウム等)の構成とするのが良い。なお、ワイヤ50は、一対のリード電極11,12の少なくとも一方と発光素子21,22を接続していればよい。
【0034】
なお、図1(b),(c)に示すように、成形体15は、一対のリード電極11,12の後面を覆う後方成形部にゲート痕15aを有している。特に、この成形体15の後方成形部は、一対のリード電極11,12の成形体15の内側にある部位の後面の全てを覆っている。このような成形体15は、主として、射出成形法により成形されたものである。射出成形法では、溶融粘度の比較的高い樹脂をゲートから金型のキャビティ内に勢いよく注入する。このため、樹脂の圧力により、一対のリード電極11,12の前面、特に素子実装部11a,12aが金型に押し付けられ、素子実装部11a,12a上へのバリの発生が抑制される。また、このように、成形体15が一対のリード電極11,12の前面及び後面の両方を覆うことで、一対のリード電極11,12を成形体15によって強固に保持することができる。例えば、熱可塑性樹脂及び不飽和ポリエステル系樹脂は、リード電極との密着性が比較的得られにくいため、このような成形体15の構成が好適である。なお、「ゲート痕」とは、金型のキャビティ内への樹脂の注入口であるゲートの痕跡として成形体15に形成される突起である。また、成形体15の前方成形部は、主として、凹部10a周囲の側壁を構成する。
【0035】
<実施の形態2>
図2(a)及び(c)は其々実施の形態2に係る発光装置200の概略前面図及び概略下面図であり、図2(b)は図2(a)のB−B断面における概略断面図である。
【0036】
図2(a)〜(c)に示すように、実施の形態2に係る発光装置200及び素子収容器102は、一対のリード電極11,12の形状、発光素子21,22の配置、及び補強部17の形状を除けば、実施の形態1に係る発光装置100及び素子収容器10と実質上同様である。したがって、以下、発光装置200及び素子収容器102について、発光装置100及び素子収容器10と異なる点のみを説明し、その他の点の説明は省略する。
【0037】
図2(a)及び(b)に示すように、発光装置200(素子収容器102)における一対のリード電極11,12は、非対称である。第1リード電極11は、第2リード電極12より大きく、より詳細には素子実装部11aが第2リード電極の素子実装部12aより横方向に長い。そして、発光素子21,22は、第1リード電極11(素子実装部11a)上に配置され、第2リード電極12(素子実装部12a)上には配置されていない。凹部10aの底の第2リード電極12の表面(素子実装部12a)は、ワイヤ50の接続領域となっている。
【0038】
図2(a)及び(b)に示すように、発光装置200(素子収容器102)における補強部17は、第1リード電極11上にあり、より詳細には第1リード電極11上の2つの発光素子21,22の間にある。この補強部17における2つの端部領域17e1,17e2及び中間領域17mの表面は、曲面で構成されている。
【0039】
図2(a)及び(b)に示すように、第1リード電極11には、穴11dが形成されている。そして、補強部の中間領域17mが、穴11dの上にあり、穴11dを埋めている。これにより、第1リード電極11を成形体15によって強固に保持することができる。また、第1リード電極11の機械的強度等の観点から、穴11dの前面視における大きさは、穴11dの全てが補強部17の内側にある大きさであることが好ましく、中間領域17mの内側にある大きさであることがより好ましい。さらに、同観点から、穴11dの前面視における形状は円形状であることが好ましい。なお、この穴11dは、第1リード電極11の前面から後面に貫通しているが、非貫通即ち窪みであってもよい。
【0040】
以上のような素子収容器102もまた、装置の配光に影響を及ぼしにくい構造で変形を抑制することができる。これにより、発光装置200は、配光特性及び信頼性に優れる発光装置とすることができる。
【0041】
以上、本発明の一実施の形態として、横方向が長手方向、縦方向が短手方向となる発光装置及び素子収容器について説明したが、本発明は、前面視で略正方形状、又は横方向が短手方向、縦方向が長手方向となる発光装置及び素子収容器への適用を排除しない。
【0042】
以下、本発明の一実施の形態に係る発光装置における各構成要素について説明する。
【0043】
(発光装置100,200)
発光装置は、発光素子が素子収容器に収容され一対のリード電極と電気的に接続されて構成され、好ましくは更に封止部材により封止されて構成される。発光装置は、例えば「発光ダイオード(LED)」等と呼ばれるものであってよい。また、発光装置は、側面発光型だけでなく、上面発光型(トップビュー型)も含む。
【0044】
(素子収容器10,102)
素子収容器は、発光素子を収容し、その発光素子に外部から給電するための電極(端子)を有する容器である。素子収容器は、少なくとも、一対のリード電極と、成形体と、により構成される。素子収容器は、例えば「パッケージ」等と呼ばれるものであってよい。また、側面発光型発光装置用の素子収容器だけでなく、上面発光型(トップビュー型)発光装置用の素子収容器も含む。
【0045】
(リード電極11,12)
一対のリード電極は、素子収容器における正負一対の電極(端子)を構成する。1つの素子収容器において、リード電極は、少なくとも一対あればよいが、複数対あってもよい。リード電極は、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、又はこれらの合金の平板に、プレス(打ち抜き含む)、エッチング、圧延など各種の加工を施したものが母体となる。リード電極は、これらの金属又は合金の積層体で構成されてもよいが、単層で構成されるのが簡便で良い。特に、銅を主成分とする銅合金(燐青銅、鉄入り銅など)が好ましい。また、その表面に、銀、アルミニウム、ロジウム又はこれらの合金などの光反射膜が設けられていてもよく、なかでも光反射性に優れる銀又は銀合金が好ましい。特に、硫黄系光沢剤を用いた銀又は銀合金の膜(例えばめっき膜)は、膜の表面が平滑で、極めて高い光反射性が得られる。なお、この光沢剤中の硫黄及び/又は硫黄化合物は、銀又は銀合金の結晶粒中及び/又は結晶粒界に散在することになる(硫黄の含有量としては例えば50ppm以上300ppm以下)。光反射膜の光沢度は、特に限定されないが、1.5以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましい。なお、この光沢度は、GAM(Graphic Arts Manufacturing)社製のdigital densitometer Model 144を用いて測定される値とする。リード電極の厚さは、特に限定されないが、例えば0.05mm以上1mm以下が挙げられ、0.07mm以上0.3mm以下が好ましく、0.1mm以上0.2mm以下がより好ましい。リード電極は、例えばリードフレームの小片であってもよい。
【0046】
(成形体15)
成形体は、素子収容器における容器の母体をなす。成形体は、素子収容器の外形の一部を構成している。成形体は、光反射性の観点から、発光素子の発光ピーク波長における光反射率が、75%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。さらに、成形体は、白色であることが好ましい。成形体は、硬化前には流動性を有する状態つまり液状(ゾル状又はスラリー状を含む)を経る。成形体は、射出成形法、トランスファ成形法などにより成形することができる。
【0047】
(成形体の母材)
成形体の母材は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、以下に示す樹脂は、その変性樹脂、及びハイブリッド樹脂も含むものする。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂のうちのいずれか1つが好ましい。特に、不飽和ポリエステル系樹脂は、熱硬化性樹脂の優れた耐熱性及び耐光性を有しながら、射出成形法により成形可能であり量産性にも優れている。不飽和ポリエステル系樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、並びにその変性樹脂及びハイブリッド樹脂のうちの少なくとも1つを用いることができる。具体的には、特開2013−153144号公報、特開2014−207304号公報、特開2014−123672号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。また、成形体の母材としては、熱可塑性樹脂も好ましい。一般的に、熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂に比べ、安価であるが、耐熱性及び耐光性に劣っており、変形しやすいためである。熱可塑性樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリフタルアミド樹脂、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリカーボネート樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂などが挙げられる。なかでも、芳香族ポリフタルアミド樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレートのうちのいずれか1つが好ましい。成形体は、光反射性、機械的強度、熱伸縮性などの観点から、母材中に、以下のような白色顔料と充填剤を含有することが好ましいが、これに限定されない。
【0048】
(白色顔料)
白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。白色顔料は、これらのうちの1種を単独で、又はこれらのうちの2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、酸化チタンは、屈折率が比較的高く、光隠蔽性に優れるため、好ましい。白色顔料の形状は、特に限定されず、不定形(破砕状)でもよいが、流動性の観点では球状が好ましい。白色顔料の粒径(以下「粒径」は例えば平均粒径D50で定義される)は、特に限定されず、例えば0.01μm以上1μm以下であり、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。成形体中の白色顔料の含有量は、特に限定されず、成形体の光反射性の観点では多いほうが良いが、流動性への影響を考慮して、20wt%以上70wt%以下が好ましく、30wt%以上60wt%以下がより好ましい。なお、「wt%」は、重量パーセントであり、全構成材料の総重量に対する各材料の重量の比率を表す。
【0049】
(成形体の充填剤)
充填剤は、シリカ、酸化アルミニウム、ガラス、チタン酸カリウム、珪酸カルシウム(ワラストナイト)、マイカ、タルクなどが挙げられる。充填剤は、これらのうちの1種を単独で、又はこれらのうちの2種以上を組み合わせて用いることができる。但し、充填剤は、上記の白色顔料とは異なるものとする。特に、成形体の熱膨張係数の低減剤としては、シリカ(粒径は例えば5μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上30μm以下)が好ましい。強化剤としては、ガラス、チタン酸カリウム、珪酸カルシウム(ワラストナイト)が好ましい。中でも、珪酸カルシウム(ワラストナイト)、又はチタン酸カリウムは比較的径が小さく、薄型又は小型の成形体に好適である。具体的には、強化剤の平均繊維径は、特に限定されず、例えば0.05μm以上100μm以下であり、0.1μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上30μm以下がより好ましく、2μm以上15μm以下がよりいっそう好ましい。強化剤の平均繊維長は、特に限定されず、例えば0.1μm以上1mm以下であり、1μm以上200μm以下が好ましく、3μm以上100μm以下がより好ましく、5μm以上50μm以下がよりいっそう好ましい。強化剤の平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、特に限定されず、例えば2以上300以下であり、2以上100以下が好ましく、3以上50以下がより好ましく、5以上30以下がよりいっそう好ましい。充填剤の形状は、特に限定されず、不定形(破砕状)でもよいが、強化剤としての機能の観点では繊維状(針状)又は板状(鱗片状)が好ましく、流動性の観点では球状が好ましい。成形体中の充填剤の含有量は、特に限定されず、成形体の熱膨張係数、機械的強度等を考慮して適宜決めればよいが、10wt%以上80wt%以下が好ましく、30wt%以上60wt%以下がより好ましい(うち強化剤は5wt%以上30wt%以下が好ましく、5wt%以上20wt%以下がより好ましい)。
【0050】
(発光素子21,22)
発光素子は、LED素子などの半導体発光素子を用いることができる。発光素子は、多くの場合に基板を有するが、少なくとも、種々の半導体で構成される素子構造と、正負(pn)一対の電極と、を有するものであればよい。特に、紫外〜可視域の発光が可能な窒化物半導体(InAlGa1−x−yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)の発光素子が好ましい。発光素子の発光ピーク波長は、発光効率、他の光源の光との混色関係、波長変換物質の励起効率などの観点から、445nm以上465nm以下の範囲が好ましい。このほか、緑色〜赤色発光のガリウム砒素系、ガリウム燐系半導体の発光素子を含んでいてもよい。正負一対の電極が同一面側に設けられている発光素子の場合、各電極をワイヤで一対のリード電極と接続される(フェイスアップ実装)。また、各電極を導電性接着剤で一対のリード電極と接続されてもよい(フリップチップ実装(フェイスダウン実装))。正負一対の電極が互いに反対の面に各々設けられている対向電極構造の発光素子の場合、下面電極が導電性接着剤で一方のリード電極に接着され、上面電極がワイヤで他方のリード電極と接続される。1つの素子収容器に搭載される発光素子の個数は1つでも複数でもよい。複数の発光素子は、ワイヤにより直列又は並列に接続することができる。また、1つの素子収容器に、例えば青色・緑色・赤色発光の3つの発光素子が搭載されてもよい。
【0051】
(封止部材30)
封止部材は、発光素子を封止して、埃や水分、外力などから保護する部材である。封止部材は、電気的絶縁性を有し、発光素子から出射される光に対して透光性(好ましくは発光素子の発光ピーク波長における光透過率が70%以上、より好ましくは85%以上)を有する部材であればよい。封止部材は、これらの母材中に、少なくとも波長変換物質を含有することが好ましいが、これに限定されない。
【0052】
(封止部材の母材)
封止部材の母材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂、又はこれらの変性樹脂若しくはハイブリッド樹脂が挙げられる。特に、フェニル基を含むシリコーン系樹脂は、メチル・フェニルシリコーン樹脂、ジフェニルシリコーン樹脂、並びにその変性樹脂及びハイブリッド樹脂のうちの少なくとも1つを用いることができる。フェニル基を含むシリコーン系樹脂中のケイ素原子に結合した全有機基のうちフェニル基の含有率は、例えば5mol%以上80mol%以下であり、20mol%以上70mol%以下であることが好ましく、30mol%以上60mol%以下であることがより好ましい。
【0053】
(波長変換物質40)
波長変換物質は、発光素子から出射される一次光の少なくとも一部を吸収して、一次光とは異なる波長の二次光を出射する。これにより、可視波長の一次光及び二次光の混色光(例えば白色光)を出射する発光装置とすることができる。波長変換物質は、以下に示す具体例のうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
(第1蛍光体41)
第1蛍光体は、緑色光乃至黄色光を発する。第1蛍光体の発光ピーク波長は、発光効率、他の光源の光との混色関係などの観点から、緑色域(500nm以上560nm以下の範囲)が好ましく、520nm以上560nm以下の範囲がより好ましい。具体的には、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばY(Al,Ga)12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばLu(Al,Ga)12:Ce)、シリケート系蛍光体(例えば(Ba,Sr)SiO:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えばCaMg(SiOCl:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えばSi6−zAl8−z:Eu(0<Z<4.2))などが挙げられる。
【0055】
(第2蛍光体42)
第2蛍光体は、赤色光を発する。第2蛍光体の発光ピーク波長は、発光効率、他の光源の光との混色関係などの観点から、620nm以上670nm以下の範囲が好ましい。具体的には、窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CASN又はSCASN)系蛍光体(例えば(Sr,Ca)AlSiN:Eu)などが挙げられる。また、マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体は、一般式A[M1−aMn]で表される蛍光体である(但し、上記一般式(I)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNHからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、aは0<a<0.2を満たす)。このフッ化物蛍光体の代表例としては、フッ化珪酸カリウム系蛍光体(例えばKSiF:Mn)がある。
【0056】
このほか、波長変換物質は量子ドットを含んでもよい。量子ドットは、粒径1nm以上100nm以下程度の粒子であり、粒径によって発光波長を変えることができる。量子ドットは、例えば、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化鉛、セレン化鉛、又はテルル化カドミウム・水銀などが挙げられる。
【0057】
(封止部材の充填剤)
封止部材の充填剤は、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛などが挙げられる。封止部材の充填剤は、これらのうちの1種を単独で、又はこれらのうちの2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、封止部材の熱膨張係数の低減剤としては、シリカが好ましい。封止部材の充填剤の形状は、特に限定されず、不定形(破砕状)でもよいが、流動性の観点では球状が好ましい。封止部材中の充填剤の含有量は、特に限定されず、封止部材の熱膨張係数、流動性等を考慮して適宜決めればよいが、0.1wt%以上50wt%以下が好ましく、1wt%以上30wt%以下がより好ましい。また、封止部材の充填剤として、ナノ粒子(粒径が1nm以上100nm以下の粒子)を用いることで、発光素子の青色光など短波長の光の散乱(レイリー散乱を含む)を増大させ、波長変換物質の使用量を低減することもできる。このナノ粒子の充填剤としては、例えばシリカ又は酸化ジルコニウムが好ましい。
【0058】
(接着剤)
接着剤は、発光素子をリード電極に接着する部材である。絶縁性接着剤は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、又はこれらの変性樹脂若しくはハイブリッド樹脂などを用いることができる。導電性接着剤としては、銀、金、パラジウムなどの導電性ペーストや、錫−ビスマス系、錫−銅系、錫−銀系、金−錫系の半田などを用いることができる。
【0059】
(ワイヤ50)
ワイヤは、発光素子の電極と、リード電極と、を接続する導線である。具体的には、金、銅、銀、白金、アルミニウム、パラジウム又はこれらの合金の金属線を用いることができる。ワイヤの線径は、特に限定されないが、例えば5μm以上50μm以下が挙げられ、10μm以上40μm以下が好ましく、15μm以上30μm以下がより好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0061】
<実施例1>
実施例1の発光装置は、図1(a)〜(c)に示す例の発光装置100の構造を有する側面発光型のLEDである。この発光装置(素子収容器)の大きさは、横幅(左右方向の幅)3.8mm、奥行き(前後方向の幅)0.85mm、厚さ(上下方向の幅)0.4mmである。
【0062】
素子収容器10は、成形体15が第1リード電極11(負極)及び第2リード電極12(正極)と一体に成形されて成っている。素子収容器10は、前面に横3.3mm、縦0.29mm(左右幅狭部0.19mm)、深さ0.3mmの凹部10aを有している。成形体15は、脂肪族ポリアミド樹脂の母材中に、酸化チタンの白色顔料(30wt%)と、繊維状の珪酸カルシウム(ワラストナイト;15wt%)の充填剤を含有している。成形体15は、射出成形法により成形されており、(後方成形部の)後面の略中心にゲート痕15aを有している。第1リード電極11及び第2リード電極12は、銅合金の母体上に硫黄系光沢剤を用いた銀めっきが施された厚さ0.11mmの金属小片である。凹部10aの側壁面は成形体15の表面で構成され、凹部10aの底は成形体15の表面と、第1リード電極11及び第2リード電極12の表面で構成されている。この凹部10aの底を構成する第1リード電極11及び第2リード電極12の部位は、第1素子実装部11a及び第2素子実装部12aである。また、第1リード電極11及び第2リード電極12は、成形体15の外側にある部位として、第1外部接続端子部11b及び第2外部接続端子部12bを有している。第1外部接続端子部11b及び第2外部接続端子部12bは、成形体15の下面から延出してその下面に沿うように折り曲げられ、更に左/右端面に沿うように折り曲げられている。
【0063】
成形体15は、凹部10aの縦方向に向かい合う2つの側壁151,152同士を結ぶ補強部17を有している。補強部17は、2つの側壁151,152の其々に接続した2つの端部領域17e1,17e2と、2つの端部領域17e1,17e2の間の中間領域17mと、からなっている。この補強部17は、第1リード電極11と第2リード電極12を隔てる離間領域15g(横方向の幅Wgは0.12mm)上にあり、且つ凹部10aの横方向の略中央にある。中間領域17mの前面視形状は矩形状(幅のある直線状)であり、中間領域17mの断面視形状は台形状(側面の傾斜角(内角)は、凹部10aの底のリード電極の表面を含む平面を基準として79°)である。中間領域の縦方向の幅Lmは0.145mmであり、中間領域の横方向の幅Wmは0.11mmであり、中間領域の高さHmは0.1mmである。2つの端部領域17e1,17e2の表面は、傾斜角(凹部10aの底のリード電極の表面を含む平面を基準とする内角)が約64°の3つの傾斜面で構成されている。2つの端部領域17e1,17e2は、中間領域17mから側壁に向かって15°の角度で横方向に幅が大きくなっている。2つの端部領域の縦方向の幅Le1,Le2は0.055mmであり、2つの端部領域の横方向の幅We1,We2は0.14mmであり、2つの端部領域の高さHe1,He2は0.25mmである。なお、側壁151,152の傾斜角(凹部10aの底のリード電極の表面を含む平面を基準とする内角)は85°である。
【0064】
素子収容器の凹部10a内には、2つの発光素子21,22が収容されている。この発光素子21は、サファイア基板上に、窒化物半導体のn型層、活性層、p型層が順次積層された、青色(発光ピーク波長約455nm)発光可能な、縦0.18mm、横0.8mm、厚さ0.12mm(Hcにほぼ相当)の略直方体のLEDチップである。2つの発光素子21,22は、第1素子実装部11aと第2素子実装部12上に各々接着剤で接着されている。第1の発光素子21のn電極と第1素子実装部11a、第1発光素子21のp電極と第2発光素子22のn電極、第2発光素子22のp電極と第2素子実装部12aがワイヤ50により各々接続されている。接着剤は、ジメチルシリコーン樹脂である。ワイヤ50は、線径25μmの銀−金合金線(銀約80%/金約20%)である。
【0065】
素子収容器の凹部10a内には、封止部材30が発光素子21,22を被覆するように充填されている。封止部材30は、メチル・フェニルシリコーン樹脂を母材とし、その中にβサイアロン系蛍光体である緑色(発光ピーク波長約540nm)発光可能な第1蛍光体41とフッ化珪酸カリウム系蛍光体である赤色(発光ピーク波長約630nm)発光可能な第2蛍光体42からなる波長変換物質40と、を含有している。封止部材30の前面は、成形体15の前面と略同一面(硬化収縮により若干の凹面)となっている。波長変換物質40は、封止部材30中において、凹部10aの底面側に多く存在している。
【0066】
<評価>
実施例1の発光装置について、固着性試験と抗折強度試験により、機械的強度を評価する。固着性試験は、発光装置を回路基板上にはんだ実装し、発光装置の後方中央を基板面に平行に治具で押圧して、発光装置が破壊する荷重を計測する。また、抗折強度試験は、1mmの間隔がある支持治具上に発光装置の上面側を載せて、発光装置の下面中央を鉛直方向に治具で押圧して、発光装置が破壊する荷重を計測する。比較例1の発光装置としては、実施例1の発光装置において、2つの端部領域17e1,17e2をなくし、中間領域17mを側壁151,152まで延長した形状の補強部に置換したものである。実施例1の発光装置は、固着性試験及び抗折強度試験において、比較例1の発光装置に対して、2.5%の機械的強度の向上を確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の一実施の形態に係る発光装置は、液晶ディスプレイのバックライト装置、各種照明器具、大型ディスプレイ、広告や行き先案内等の各種表示装置、プロジェクタ装置、さらには、デジタルビデオカメラ、ファクシミリ、コピー機、スキャナ等における画像読取装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10,102…素子収容器(10a…凹部)
11,12…リード電極(11a,12a…素子実装部、11b,12b…外部接続端子部、11d…穴)
15…成形体(15a…ゲート痕、15g…離間領域、151,152…側壁、17…補強部(17e1,17e2…端部領域、17m…中間領域))
21,22…発光素子
30…封止部材
40…波長変換物質(41…第1蛍光体、42…第2蛍光体)
50…ワイヤ
100,200…発光装置
図1
図2