特許第6374597号(P6374597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374597
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20180806BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20180806BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01J37/22 501A
   H01J37/22 501Z
   H01J37/26
   H01J37/22 501H
   H01J37/244
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-507254(P2017-507254)
(86)(22)【出願日】2015年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2015059186
(87)【国際公開番号】WO2016151809
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2017年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−062630(JP,A)
【文献】 特開2002−279926(JP,A)
【文献】 特開平04−355038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/244
H01J 37/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を発生させる電子銃と、
試料を透過した前記電子線を結像させる結像レンズ系と、
開口が形成されたミラーであり、前記結像レンズ系を経由した前記電子線を前記ミラーで反射された第1の像成分と前記開口を通過した第2の像成分とに分岐する前記ミラーと、
前記第1の像成分を検出し、第1の画像を出力する第1の画像検出部と、
前記第2の像成分を検出し、第2の画像を出力する第2の画像検出部と、
処理部と、
表示部と、を有し、
前記第2の画像の倍率は前記第1の画像の倍率よりも大きく、
前記処理部は、前記第1の画像と前記第2の画像とを合成して第3の画像を生成し、
前記表示部は、前記第2の画像及び前記第3の画像を表示する
荷電粒子線装置。
【請求項2】
電子線を発生させる電子銃と、
試料を透過した前記電子線を結像させる結像レンズ系と、
前記結像レンズ系を経由した前記電子線を反射光である第1の像成分と透過光である第2の像成分とに分岐するハーフミラー又はビームスプリッターと、
前記第1の像成分を検出し、第1の画像を出力する第1の画像検出部と、
前記第2の像成分を検出し、第2の画像を出力する第2の画像検出部と、
処理部と、
表示部と、を有し、
前記第2の画像の倍率は前記第1の画像の倍率よりも大きく、
前記処理部は、前記第1の画像と前記第2の画像とを合成して第3の画像を生成し、
前記表示部は、前記第2の画像及び前記第3の画像を表示する
荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項に記載の荷電粒子線装置において、
前記第2の画像を複製後に縮小した第4の画像と前記第1の画像との境界に位置する画素の濃度値の差又は比の平均値を算出し、前記平均値を用いて、前記第1の画像及び/又は前記第4の画像のコントラストを調整した後に前記第3の画像を作成する、荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項に記載の荷電粒子線装置において、
前記第2の画像を複製後に縮小した第4の画像と前記第1の画像との境界に位置する画素の濃度値の差又は比の平均値を算出し、前記平均値を用いて、前記第1の画像及び/又は前記第4の画像のコントラストを調整した後に前記第3の画像を作成する、荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項に記載の荷電粒子線装置において、
不透明な基板の表面に蛍光物質を塗布したシンチレータを前記第2の像成分の投影面とし、前記第2の画像検出部は、前記シンチレータの上方側から前記第2の像成分を検出して前記第2の画像を出力する、荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項に記載の荷電粒子線装置において、
不透明な基板の表面に蛍光物質を塗布したシンチレータを前記第2の像成分の投影面とし、前記第2の画像検出部は、前記シンチレータの上方側から前記第2の像成分を検出して前記第2の画像を出力する、荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を透過した荷電粒子から対象物の構造を観察する荷電粒子線装置及び当該装置における試料観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型電子顕微鏡においては、高倍率で観察する視野領域を選定するために低倍率による観察及び鳥瞰観察が頻繁に用いられる。また、上記低倍率による観察で選定された視野領域を高倍率で表示し、微細構造を観察する方法も頻繁に用いられる。
【0003】
一般に、低倍率による観察と高倍率による観察は、非特許文献1に示すように、(1)結像レンズ系を用い、観察対象物の拡大率を変化させることにより、または、(2)結像レンズ系と検出器の距離が異なる複数の検出器を用意し、観察に用いる検出器を切替えることにより、低倍率による観察と高倍率による観察とを切替えている。
【0004】
この他、特許文献1に示すように、結像レンズ系の拡大率を周期的に変化させ、該変化と表示装置の信号出力周期を同期させることで、低倍率による観察と高倍率による観察とを同時に行う方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−269438号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】高分解能電子顕微鏡-原理と利用法-, 堀内 繁雄 著, 共立出版株式会社(1988), pp11-12.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
透過電子顕微鏡による観察では、まず、低倍率による観察によって大まかな観察視野を決定し、その後、高倍率による観察に切替えて決定された観察視野内の微細構造を観察する手法が一般的である。低倍率による観察と高倍率による観察の切替えは、1つの観察対象物(サンプル)につき数十回行われるのが一般的である。従来は、前記観察を、観察対象物の拡大率を変化させて行うか、結像レンズ系の拡大率は変化せずに、観察に用いる検出器を切替えることで行っていた。
【0008】
上記観察倍率の切替え方法は、共に切替え操作が必要であり、観察者にとって負担となっている。特に検出器の切替えに関しては、結像レンズ系からの距離が短い位置にある検出器が、他の検出器に対して、検出信号を遮断する位置に配置されるため、当該検出器を検出信号経路から排除する動作が必要であり、一定の切替え時間が発生していた。また、上記切替え方法では、低倍率又は高倍率のどちらか一方の像を観察しているため、同時刻の低倍率像と高倍率像とを同時に観察することは不可能であった。
【0009】
なお、特許文献1に示す方法においては、結像レンズ系の拡大率の切替えタイミングと、表示装置における観察像の更新タイミングとを同期させることで、低倍率像及び高倍率像を同時に観察することが一応可能であるものの、像の更新速度が、結像レンズ系の拡大率の切替え時間で制限を受けるという技術上の課題を有している。また、一般的に透過電子顕微鏡の拡大レンズ系は磁気レンズを用いているため、上記拡大率の切替えは、軸ずれや焦点ずれを伴うという技術上の課題もある。
【0010】
そこで、発明者は、観察者による観察倍率の切替え操作だけでなく、結像レンズ系の拡大率の変化も不要で、しかも同時刻の低倍率像と高倍率像とを同時に観察することができる荷電粒子線装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記解題を解決する代表的な発明の一つとして、発明者は、「電子線を発生させる電子銃と、試料を透過した前記電子線を結像させる結像レンズ系と、前記結像レンズ系を経由した前記電子線を第1の像成分と第2の像成分とに分岐させる分岐部と、前記第1の像成分を検出し、第1の画像を出力する第1の画像検出部と、前記第2の像成分を検出し、第2の画像を出力する第2の画像検出部と、処理部と、表示部とを有し、前記第2の画像の倍率は前記第1の画像の倍率よりも大きく、前記処理部は、前記第1の画像と前記第2の画像とを合成して第3の画像を生成し、前記表示部は、前記第2の画像、及び前記第3の画像を表示する、荷電粒子線装置」を提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、結像レンズ系の拡大率を変化させることなく、異なる倍率の透過像を同時に観察することができ、観察条件の切替えに要する手間(拡大率の変更や検出器の切替え操作回数)を大幅に低減することができる。これにより、本発明は、透過電子顕微鏡の操作性を大きく向上させることができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1に係る透過電子顕微鏡の概略装置構成を示す図。
図2】第1の投影面の断面形状とその上面形状を説明する図。
図3】実施例1における画像処理の概念を説明する図。
図4】実施例1における画像処理の他の概念を説明する図。
図5】実施例2に係る透過電子顕微鏡の概略装置構成を示す図。
図6】実施例2における画像処理の概念を説明する図。
図7】実施例2における画像処理の他の概念を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施の形態は、後述する実施例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
【0015】
(1)実施例1
本実施例では、第1の投影面上に映し出された像を検出する第1のカメラの画像と、前記第1の投影面より下方に位置する第2の投影面上に映し出された像を検出する第2のカメラの画像とを同時に表示することで、低倍率による観察と高倍率による観察の同時実行が可能な透過電子顕微鏡について説明する。なお、本実施例は、権利の範囲を限定するものではない。
【0016】
(1−1)装置構成
図1に、本実施例で使用する透過電子顕微鏡の概略構成を示す。なお、図1では、鏡筒等、本発明の説明と直接関係のない構成部材についての記載を省略している。電子銃1から発生された電子線は、照射レンズ系3を通じて観察対象物2に照射される。このとき、対物レンズ系4により、電子線の焦点は観察対象物2に合わせられる。観察対象物2を透過した電子線は、結像レンズ系5によって拡大又は縮小され、第1の投影面6に結像される。本実施例の場合、第1の投影面6として用いられるシンチレータは、不透明な基板の表面に蛍光物質を塗布した構成を有している。このため、電子線の入射で発生した蛍光による像は、第1の投影面6の上方に反射し、第1の画像検出部7によって検出される。
【0017】
第1の投影面6には不図示の開口が形成されており、当該開口を通過した電子線は、第1の投影面6よりも下方に位置する第2の投影面8に到達する。第2の投影面8として用いられるシンチレータは、透明基板の表面に蛍光物質を塗布した構成を有している。このため、電子線の入射で発生した蛍光による像は、第2の投影面8の下方に配置された第2の画像検出部9において取得される。
【0018】
第1の画像検出部7及び第2の画像検出部9から出力された信号は、信号伝達部10を通じてコンピュータ11に入力される。コンピュータ11には、種々の演算制御処理を実行する演算装置12と、各種のデータを記憶する記憶装置13とが設けられている。演算装置12の具体的な処理動作については後述する。図1の場合、第1の画像検出部7で取得された画像は第1の出力部(表示部)14に出力され、第2の画像検出部9で取得された画像は第2の出力部(表示部)15に出力される。もっとも、第1の画像検出部7で取得された画像と第2の画像検出部9で取得された画像は1つの表示画面として合成され、1つの出力部(表示部)に出力されても良い。コンピュータ11に対する操作情報の入力には入力装置16が用いられる。
【0019】
図2に、第1の投影面6の形状を示す。図2の上段は、第1の投影面6の断面形状を表しており、下段は電子線の入射方向から第1の投影面6を見た第1の投影面6の上面形状を表している。図2に示すように、第1の投影面6のうち電子線の光軸と交差する領域付近には開口21が形成されている。この開口21の大きさは、開口21を透過した電子線が第2の画像検出部9の検出範囲と一致するように定められている。開口21の外縁を規定する開口部側面22は、電子線の光軸に対して角度23(θ)だけ傾斜されている。具体的には、シンチレータの下面側(第2の投影面8側)の開口径よりも上面側(電子線の入射側)の方の開口径の方が小さいテーパー形状に加工されている。換言すると、開口部側面22の延長線が第1の投影面6の上方で電子線の光軸と交差するように形成されている。
【0020】
角度θは、結像レンズ系5の最下段に位置するレンズ24の焦点位置から第2の投影面8までの距離25(L)と、光軸26から第2の画像検出部9の検出範囲の端面までの距離27(X)及び次式を用いて導出することができる。ここでは、光軸26から第2の投影面8の端面までの距離と光軸26から第2の画像検出部9の検出範囲の端面までの距離27(X)とが同じであるものとする。
【0021】
第1の投影面6として用いられるシンチレータに設けられた開口21の開口部側面22に、角度θの傾斜を設けたことにより、開口21に入射する電子線は、過不足なく、第2の投影面8に投影することができる。ここで、開口部側面22には、電子線に対して不感光な物質を使用することで、第1の画像検出部7及び第2の画像検出部9への不要な信号(蛍光)の伝達を防ぐことができる。
【0022】
(1−2)処理動作
図3を用いて、図1に示す構成を有する透過電子顕微鏡で実行される処理動作について説明する。
【0023】
前述したように、本実施例で使用する第1の投影面6には、第2の画像検出部9の検出範囲に相当する大きさの開口21が形成されている。このため、第1の画像検出部7のうち、開口21に対応するピクセル領域31には蛍光が入射することはない。このため、第1の画像検出部7から出力される第1の画像32のうちピクセル領域31に対応する部分の濃度値は極めて低くなる。本明細書では、この濃度値が極めて低くなる部分を「切除部分」ともいう。なお、第1の画像32は、第1の投影面6を斜め上方から観察した画像であるので、実際には画像に歪が存在する。第1の画像32は、演算装置12において歪を除去した後の画像を表している。因みに、この第1の画像32は、低倍率観察による画像に相当する。
【0024】
一方、第1の投影面6の開口21に入射した電子線は、そのまま第2の投影面8に投影され、蛍光の強度値に応じた像へと変換される。この際、第2の投影面8に結像される像の焦点距離は、図3に示すように、第1の投影面6に結像される像の焦点距離よりも長くなる。このため、第2の画像検出部9からは、第1の画像32よりも高倍率の第2の画像33が、第1の画像32と同時に出力される。すなわち、観察倍率の異なる第1の画像32と第2の画像33が同時に得られる。
【0025】
演算装置12は、第2の画像33を記憶装置13上で複製し、複製画像34を作成する。続いて、演算装置12は、複製画像34の画像サイズを、算出された倍率に応じて縮小する。複製画像34を縮小した画像35のサイズは、開口21に対応するピクセル領域31のサイズと一致する。演算装置12は、縮小後の画像35を第1の画像32の切除部分(開口に対応するピクセル領域31)に埋め込み、合成画像36を作成する。
【0026】
この後、演算装置12は、合成画像36(第2の画像33を縮小した画像35と第1の画像32の合成画像)を第1の出力部14に表示し、第2の画像33を第2の出力部15に表示する。これらの処理を、第1の画像検出部7及び第2の画像検出部9の信号出力周期に同期して実行することで、第1の投影面6に投影された低倍率像と、第2の投影面8に投影された高倍率像とを、観察者は同時に観察することができる。
【0027】
なお、本実施例では、第1及び第2の投影面6及び8と第1及び第2の画像検出部7及び9の各パラメータを表1に示すように定義する。
【表1】
【0028】
このとき、第1の出力部14と第2の出力部15に表示された画像の倍率比は次式で表すことができる。
また、演算装置12において算出される倍率は、次式で表すことができる。
【0029】
(1−3)まとめ
以上の通り、本実施例に係る透過電子顕微鏡を用いれば、低倍率観察と高倍率観察を同時に行うことができる。また、本実施例の場合には、観察条件の切替えが不要であるため、拡大率の変更や検出器の切替え操作の回数を大幅に低減することができ、透過電子顕微鏡の操作性を大きく向上させることができる。特に、鳥瞰観察と微小構造の観察を繰り返し行う細胞の形態観察分野への適用において高い効果が期待できる。また、前述したように、本実施例では、倍率の異なる画像を同時に取得できるため、時間的に形状や状態が変化する観察対象物2の観察への適用に適している。
【0030】
(1−4)変形例1
本実施例では、第1の画像32に対して、第2の画像33を複製後に縮小した画像35を埋め込んで合成画像36を生成しているが、第1の画像32を第1の出力部14にそのまま出力し、高倍率像に相当する第2の画像33を縮小した画像35を第2の出力部15に出力しても、観察倍率の異なる画像の同時観察を実現することができる。
【0031】
(1−5)変形例2
本実施例では、第1の投影面6に投影された像を第1の画像検出部7で直接検出しているが、ミラーを介して第1の投影面6に投影された像を第1の画像検出部7に導き検出しても良い。
【0032】
(1−6)変形例3
本実施例では、合成画像36を作成する際、コントラスト調整を行わずに作成しているが、演算装置12において、第2の画像33を複製後に縮小した画像35と第1の画像32との境界に位置する画素の濃度値の差又は比の平均値を算出し、該平均値を用いて、第1の画像33及び/又は画像35のコントラストを調整した後に合成画像36を作成しても良い。このような処理機能の搭載により、境界部分のコントラストが大きい場合に生じる合成画像36の違和感を低減することができる。
【0033】
(1−7)変形例4
本実施例では、第1の画像32と、第2の画像33を複製後に縮小した画像35との境界部分に加工を施すことなく合成画像36を作成しているが、演算装置12において、第1の画像32と画像35の境界を枠で明示する合成画像36を作成しても良い。
【0034】
(1−8)変形例5
本実施例では、第2の画像33を第2の投影面8の下面側から取得しているが、第2の投影面8として用いられるシンチレータを、不透明な基板の表面に蛍光物質を塗布した構成とすることで、第2の投影面の上方側から投影像を取得しても良い。
(1−9)変形例6
本実施例では、第2の画像33を縮小した画像35を第1の画像32に埋め込んでいるが、図4に示すように、第1の画像32の複製画像37を拡大した画像38に、第2の画像33を埋め込んでも構わない。
【0035】
(2)実施例2
本実施例においては、観察倍率の異なる2つの画像を同時に取得するための別の手法について説明する。ここでは、投影面を1つのみ用いる実施例について説明する。具体的には、投影面上に映し出された像の全体を検出する第1のカメラの画像と、投影面上に映し出された像の一部分を拡大して検出する第2のカメラの画像を同時に表示することで、低倍率による観察と高倍率による観察の同時実行が可能な透過電子顕微鏡について説明する。本実施例は権利の範囲を限定するものではない。
【0036】
(2−1)装置構成
図5に、本実施例で使用する透過電子顕微鏡の概略構成を示す。図5では、図1との対応部分に同一符号を付して示している。同一の符号を付した部分の説明は省略する。実施例1との相違点は、電子線を蛍光に変換する投影面41、ミラー42、第1の画像検出部43、拡大レンズ44、第2の画像検出部45である。
【0037】
本実施例の場合、投影面41には、透明基板の表面全体に蛍光物質を塗布したシンチレータを使用する。投影面41は透明であるので、電子線の入射で発生した蛍光による像は、投影面41を透過し、ミラー42に到達する。ミラー42によって、像は、一部分とその他の部分とに分離される。後述するように本実施例のミラー42には開口が形成されており、開口を通過する蛍光の像とその他の蛍光の像とに分離される。
【0038】
ミラー42で反射された蛍光の像は、第1の画像検出部43によって検出され、第1の画像として出力される。ミラー42の開口を通過した蛍光の像は拡大レンズ44によって拡大され、第2の画像検出部45の撮像面に結像される。第2の画像検出部45は、検出された像を第2の画像として出力する。
【0039】
(2−2)処理動作
図6を用いて、図5に示す構成を有する透過電子顕微鏡で実行される処理動作について説明する。図6には、図3及び図5と対応する部分に同一の符号を付して示している。
【0040】
前述したように、本実施例で使用するミラー42には、第2の画像検出部9の検出範囲に相当する部分に開口51が形成されている。この開口のサイズは、実施例1の開口21と同様に定められている。ミラー42で反射された像は、第1の画像検出部43に映し出される。また、開口51を通過した像は、拡大レンズ44で拡大された後、第2の画像検出部45に映し出される。第1及び第2の画像検出部43及び45から出力された信号に対する画像処理の内容は実施例1と同様である。
【0041】
なお、本実施例では、拡大レンズ44と、第1及び第2の画像検出部43及び45の各パラメータを表2に示すように定義する。
【表2】
【0042】
このとき、第1の出力部14と第2の出力部15に表示された画像の倍率比は次式で表すことができる。
また、演算装置12において算出される倍率は、次式で表すことができる。
【0043】
(2−3)まとめ
本実施例に係る透過電子顕微鏡によっても、実施例1に係る透過電子顕微鏡と同様の効果を実現することができる。
【0044】
(2−4)変形例1
本実施例の場合も、第1の画像32に対して、第2の画像33を複製後に縮小した画像35を埋め込んで合成画像36を生成しているが、第1の画像32を第1の出力部14にそのまま出力し、高倍率像に相当する第2の画像33を縮小した画像35を第2の出力部15に出力しても、観察倍率の異なる画像の同時観察を実現することができる。
【0045】
(2−5)変形例2
本実施例の場合も、合成画像36を作成する際、コントラスト調整を行わずに作成しているが、演算装置12において、第2の画像33を複製後に縮小した画像35と第1の画像32との境界に位置する画素の濃度値の差又は比の平均値を算出し、該平均値を用いて、第1の画像33及び/又は画像35のコントラストを調整した後に合成画像36を作成しても良い。このような処理機能の搭載により、境界部分のコントラストが大きい場合に生じる合成画像36の違和感を低減することができる。
【0046】
(2−6)変形例3
本実施例の場合も、第1の画像32と、第2の画像33を複製後に縮小した画像35との境界部分に加工を施すことなく合成画像36を作成しているが、演算装置12において、第1の画像32と画像35の境界を枠で明示する合成画像36を作成しても良い。
【0047】
(2−7)変形例4
本実施例では、開口51付きのミラー42を用いているが、ミラー42に代えてハーフミラー又はビームスプリッターを用いても、前述の効果を得ることができる。
【0048】
(2−8)変形例5
本実施例では、第2の画像33を縮小した画像35を第1の画像32に埋め込んでいるが、図7に示すように、第1の画像32の複製画像37を拡大した画像38に、第2の画像33を埋め込んでも構わない。
【0049】
(3)他の実施例
本発明は、上述した実施例に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。例えば前述の実施例では、透過電子顕微鏡について説明しているが、電子以外の荷電粒子(例えばイオン)を使用する顕微鏡装置にも適用することができる。また、ある実施例の一部を他の実施例の構成に置き換えることができる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることもできる。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の一部を追加、削除又は置換することもできる。
【0050】
また、上述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより(すなわちソフトウェア的に)実現しても良い。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必要な全ての制御線や情報線を表すものでない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0051】
1:電子銃
2:観察対象物
3:照射レンズ系
4:対物レンズ系
5:結像レンズ系
6:第1の投影面
7:第1の画像検出部
8:第2の投影面
9:第2の画像検出部
10:信号伝達部
11:コンピュータ
12:演算装置
13:記憶装置
14:第1の出力部(表示部)
15:第2の出力部(表示部)
16:入力装置
21:開口
22:開口部側面
23:角度θ
24:結像レンズ系の最下段に位置するレンズ
25:距離L
26:光軸
27:距離X
31:開口に対応するピクセル領域
32:第1の画像
33:第2の画像
34:第2の画像の複製画像
35:縮小後の画像
36:合成画像
37:複製画像
38:拡大後の画像
39:合成画像
41:投影面
42:ミラー
43:第1の画像検出部
44:拡大レンズ
45:第2の画像検出部
51:開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7