(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたのと同等の膜を60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露すると白濁することが分かった。この結果、かかる膜は耐久性が必ずしも十分ではないことが示唆された。
【0005】
本発明者らは、高い比誘電率を有しつつ、長時間使用しても透明性を維持できるタッチセンサーパネル用の膜について鋭意検討したところ、膜を構成する樹脂組成物に用いるフッ化ビニリデン樹脂のフッ化ビニリデンに由来する構造単位と、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位との含有量が、耐久性に大きく影響することを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は次の〔1〕〜〔21〕に記載された発明を含む。
〔1〕(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂を含む樹脂組成物であって、(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂の合計量100質量部当たり、(メタ)アクリル樹脂45〜60質量部と、フッ化ビニリデン樹脂40〜55質量部とを含み、前記フッ化ビニリデン樹脂が、その全構成単位を100質量%として、フッ化ビニリデンに由来する構造単位65〜90質量%と、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位10〜35質量%とを含むフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体である樹脂組成物;
〔2〕(メタ)アクリル樹脂が、次の(a1)又は(a2)の樹脂である〔1〕に記載の樹脂組成物;
(a1)メタクリル酸メチルの単独重合体、
(a2)メタクリル酸メチルに由来する構造単位50〜99.9質量%と、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する少なくとも1種の構造単位0.1〜50質量%とを含む共重合体
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
1が水素原子のときR
2は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R
1がメチル基のときR
2は炭素数2〜8のアルキル基を表す。)。
〔3〕(メタ)アクリル樹脂は、その重量平均分子量(Mw)が70,000〜300,000である〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物;
〔4〕樹脂組成物は、前記樹脂組成物に含まれるアルカリ金属の合計含有量が50ppm以下である〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物;
〔5〕フッ化ビニリデン樹脂は、そのメルトマスフローレート(MFR)が0.1〜30g/10分である〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物;
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物から形成される膜;
〔7〕(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂を含む膜であって、前記フッ化ビニリデン樹脂が、その全構成単位を100質量%として、フッ化ビニリデンに由来する構造単位65〜90質量%と、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位10〜35質量%とを含むフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体であり、
前記膜は、比誘電率が4.0以上であり、かつ60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露した後のヘーズが2%以下である膜。
〔8〕厚さが100〜2000μmである〔6〕又は〔7〕に記載の膜;
〔9〕〔6〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の膜と、コーティング層とを備える第1の積層体であって、前記コーティング層が、膜の少なくとも一方の面に配置され、少なくとも一種の機能を付与する層である第1の積層体;
〔10〕〔6〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の膜と、のいずれか一項に記載の膜と、熱可塑性樹脂層とを備える第2の積層体;
〔11〕熱可塑性樹脂層は、複数の熱可塑性樹脂層で構成され、膜の両面に配置される〔10〕に記載の第2の積層体;
〔12〕熱可塑性樹脂層が、前記熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂100質量部当たり(メタ)アクリル樹脂を50質量部以上含む〔10〕又は〔11〕に記載の第2の積層体;
〔13〕(メタ)アクリル樹脂は、その重量平均分子量(Mw)が50,000〜300,000である〔12〕に記載の第2の積層体;
〔14〕熱可塑性樹脂層は、その厚さが10〜200μmである〔10〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の第2の積層体;
〔15〕熱可塑性樹脂層は、そのビカット軟化温度が100〜150℃である〔10〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の第2の積層体。
〔16〕〔10〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の第2の積層体と、コーティング層とを備える第3の積層体であって、前記コーティング層が、膜の少なくとも一方の面に配置され、少なくとも一種の機能を付与する層である第3の積層体;
〔17〕〔6〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の膜を含むタッチセンサーパネル;
〔18〕〔9〕に記載の第1の積層体、〔10〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の第2の積層体又は〔
16〕に記載の第3の積層体を含むタッチセンサーパネル;
〔19〕〔6〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の膜を含む表示装置;
〔20〕〔9〕に記載の第1の積層体、〔10〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の第2の積層体又は〔
16〕に記載の第3の積層体を含む表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物から形成される膜は、高い比誘電率を有しつつ、長時間使用しても透明性を維持できるので、タッチセンサーパネルのウインドウシートとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<(メタ)アクリル樹脂>
本発明に用いられる(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体又は2種以上の共重合体;(メタ)アクリル系モノマーとその他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0011】
優れた硬度、耐候性、透明性などを有する点から、(メタ)アクリル樹脂としてメタクリル樹脂を用いることが好ましい。メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステル(メタクリル酸アルキル)を主体とする単量体を重合して得られる重合体であり、例えば、メタクリル酸エステルの単独重合体(ポリアルキルメタクリレート)、メタクリル酸エステルの共重合体、50質量%以上のメタクリル酸エステルと50質量%以下のメタクリル酸エステル以外の単量体との共重合体などが挙げられる。メタクリル酸エステルとメタクリル酸エステル以外の単量体との共重合体の場合、単量体総量100質量%に対して、好ましくはメタクリル酸エステルが70質量%以上、メタクリル酸エステル以外の単量体が30質量%以下であり、より好ましくはメタクリル酸エステルが90質量%以上、メタクリル酸エステル以外の単量体が10質量%以下である。
【0012】
メタクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリル酸エステル、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する単官能単量体が挙げられる。
【0013】
単官能単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化アルケニル;アクリル酸;メタクリル酸;無水マレイン酸;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、メチルマレイミド等のN−置換マレイミド;等が挙げられる。耐熱性の観点より、(メタ)アクリル樹脂の分子鎖中((メタ)アクリル樹脂中の主骨格中又は主鎖中ともいう)にラクトン環構造、グルタル酸無水物構造、若しくはグルタルイミド構造等が導入されていてもよい。
【0014】
(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、次の(a1)又は(a2)の樹脂であることが好ましい。なお、次の(a2)において、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する少なくとも1つの構造単位との合計量を100質量%とすることが好ましい。
(a1)メタクリル酸メチルの単独重合体、
(a2)メタクリル酸メチルに由来する構造単位50〜99.9質量%と、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する少なくとも1つの構造単位0.1〜50質量%とを含む共重合体
【化2】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
1が水素原子のときR
2は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R
1がメチル基のときR
2は炭素数2〜8のアルキル基を表す。)。
【0015】
ここで、R
1が水素原子のときにR
2で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられ、R
1がメチル基のときにR
2で表される炭素数2〜8のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0016】
式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルとして、好ましくは、アクリル酸メチル又はアクリル酸エチルであり、より好ましくは、アクリル酸メチルである。
【0017】
(メタ)アクリル樹脂は、JIS K7210に従って、3.8kg荷重で測定した230℃におけるメルトマスフローレート(以下、MFRと記すことがある。)が、通常0.1〜20g/10分であり、好ましくは0.2〜5g/10分であり、より好ましくは0.5〜3g/10分である。
(メタ)アクリル樹脂のMFRが大きすぎると、得られる膜の強度が低下する傾向にあり、(メタ)アクリル樹脂のMFRが小さすぎると、成膜性が低下する傾向にある。
【0018】
(メタ)アクリル樹脂は、GPC測定によって求められる重量平均分子量(以下、Mwと記すことがある。)が70,000〜300,000であることが好ましく、100,000〜250,000がより好ましく、120,000〜250,000であることがさらに好ましく、150,000〜200,000であることがことさら好ましい。(メタ)アクリル樹脂のMwが大きいほど、得られた膜の60℃で相対湿度90%の環境下に暴露したあとの透明性が高い傾向にあるが、Mwが大きすぎると成膜性が低下する傾向にある。
【0019】
(メタ)アクリル樹脂は、耐熱性の観点から、JIS K7206に従って測定したビカット軟化温度(以下、VSTと記すことがある。)が90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、102℃以上であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル樹脂のVSTは、単量体の種類やその割合又は(メタ)アクリル樹脂の分子量を調整することにより、適宜設定することができる。
【0020】
(メタ)アクリル樹脂は、上記単量体成分を、懸濁重合、バルク重合等の方法により重合させることにより、調製することができる。その際、適当な連鎖移動剤を添加することにより、(メタ)アクリル樹脂のMFRやMwやVST等を好ましい範囲に調整することができる。連鎖移動剤の添加量は、単量体の種類やその割合、求める特性等に応じて、適宜決定すればよい。(メタ)アクリル樹脂は、アルカリ金属の含有量が少ないものが好ましい。アルカリ金属の含有量は、重合の際にアルカリ金属を含む化合物の使用量を減らすか、重合後の洗浄工程を増やしてアルカリ金属を含む化合物を除去することにより調整できる。
【0021】
(メタ)アクリル樹脂は、市販品を使用してもよい。好ましい市販品の例としては、住友化学(株)製の“SUMIPEX(登録商標) MM”などが挙げられる。
【0022】
<フッ化ビニリデン樹脂>
本発明に用いられるフッ化ビニリデン樹脂は、得られる膜の透明性の観点から、フッ化ビニリデン樹脂の全構成単位を100質量%として、フッ化ビニリデンに由来する構造単位65〜90質量%と、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位10〜35質量%とを含むフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体である。フッ化ビニリデン樹脂は、フッ化ビニリデンに由来する構造単位と、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位に加えて、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル及びエチレンからなる群から選択される少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含んでいても良い。
【0023】
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体に含まれるヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位の含有量として、好ましくは10〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体に含まれるフッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量として、好ましくは70〜90質量%であり、より好ましくは75〜90質量%である。なお、フッ化ビニリデン樹脂100質量%における、フッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量と、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位の含有量の合計量を100質量%とすることが好ましい。これらの単量体に由来する構造単位は、フッ化ビニリデン樹脂の全構成単位を100質量%として、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0024】
フッ化ビニリデン樹脂は、JIS K7210に従って、3.8kg荷重で測定した230℃におけるメルトマスフローレート(MFR)が、通常、0.1〜40g/10分である。上記MFRの上限は、好ましくは35g/10分であり、より好ましくは30g/10分であり、さらに好ましくは25g/10分であり、殊更好ましくは20g/10分である。上記MFRの
下限は、好ましくは0.2g/10分であり、より好ましくは0.5g/10分である。フッ化ビニリデン樹脂のMFRが大きすぎると、得られる膜を長期間使用したときに透明性が低下する傾向にあり、フッ化ビニリデン樹脂のMFRが小さすぎると、成膜性が低下する傾向にある。
【0025】
フッ化ビニリデン樹脂は、GPC測定によって求められる重量平均分子量(Mw)が100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜450,000であることがより好ましく、200,000〜450,000であることがさらに好ましい。
フッ化ビニリデン樹脂のMwが大きいほど、得られた膜の60℃で相対湿度90%の環境下に暴露したあとの透明性が高い傾向にあるが、Mwが大きすぎると成膜性が低下する傾向にある。
【0026】
フッ化ビニリデン樹脂は、工業的には、懸
濁重合法又は乳化重合法により製造される。懸濁重合法では、水を媒体とし、単量体を分散剤で媒体中に液滴として分散させ、単量体中に溶解した有機過酸化物を重合開始剤として重合させることにより、100〜300μmの粒状の重合体が得られる。懸濁重合物は乳化重合物と比較して、製造工程が簡単で、粉体の取扱性に優れ、また乳化重合物のようにアルカリ金属を含む乳化剤や塩析剤を含まないため、好ましい。フッ化ビニリデン樹脂に含まれるアルカリ金属の量は、1ppm以下であることが好ましい。これにより、本発明の成形体を含む表示部材は、高温及び高湿度の環境下で使用されても、従来生じていた白濁が抑制される。
【0027】
フッ化ビニリデン樹脂は、市販品を使用してもよい。好ましい市販品の例としては、(株)クレハの“KFポリマー(登録商標)”のT#2950、Solvay社製の“SOLEF(登録商標)”の21508が挙げられる。
【0028】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂の合計量100質量部当たり、(メタ)アクリル樹脂45〜60質量部と、フッ化ビニリデン樹脂40〜55質量部とを含むものである。好ましくは、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂の合計量100質量部当たり、(メタ)アクリル樹脂47〜60質量部と、フッ化ビニリデン樹脂40〜53質量部とを含み、より好ましくは、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂の合計量100質量部当たり、(メタ)アクリル樹脂50〜60質量部と、フッ化ビニリデン樹脂40〜50質量部とを含むものである。樹脂組成物100質量%中の(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂の合計含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
【0029】
樹脂組成物は、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体以外のフッ化ビニリデン樹脂を含んでいてもよく、その含有量は、樹脂組成物100質量%において10質量%以下であることが好ましい。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体以外のフッ化ビニリデン樹脂の例としては、いずれも市販品名で、(株)クレハの“KFポリマー(登録商標)”のT#1300、T#1100、T#1000、T#850、W#850、W#1000、W#1100及びW#1300、Solvay社製の“SOLEF(登録商標)”の6012、6010、6008、31508などが挙げられる。
【0030】
樹脂組成物中に含まれるアルカリ金属は、例えば、フッ化ビニリデン樹脂として上記の乳化重合で得られたものを用いる際に残留する乳化剤に由来するナトリウムやカリウムが挙げられる。樹脂組成物中のアルカリ金属の合計含有量が少ないほど、得られる膜を長期間使用したときに透明性が低下しなくなる傾向があり好ましい。その範囲は、通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下であり、実質的に含まれないことがさらに好ましい。樹脂組成物中のアルカリ金属の含有量は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS)により求めることができる。
【0031】
さらに、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的に用いられる各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、発泡剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、重合抑制剤、難燃助剤、補強剤、核剤、ブルーイング剤等の着色剤などが挙げられる。
【0032】
着色剤としては、アントラキノン骨格を有する化合物、フタロシアニン骨格を有する化合物などを挙げることができる。これらの中でも、アントラキノン骨格を有する化合物が、耐熱性の観点から好ましい。
【0033】
着色剤としてブルーイング剤を用いる場合、その含有量は、0.01〜5ppmであり、好ましくは0.05〜4ppm、より好ましくは0.1〜3ppmである。ブルーイング剤は、公知のものを適宜使用することができる。ブルーイング剤としては、例えば、それぞれ商品名で、マクロレックス(登録商標)ブルーRR(バイエル社製)、マクロレックス(登録商標)ブルー3R(バイエル社製)、Sumiplast(登録商標) Violet B(住化ケムテックス社製)及びポリシンスレン(登録商標)ブルーRLS(クラリアント社製)が挙げられる。
【0034】
これらの添加剤は、本発明の樹脂組成物中に存在すればよく、(メタ)アクリル樹脂又はフッ化ビニリデン樹脂のいずれの成分に含まれていてもよく、後述する(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂との溶融混練の際に添加してもよく、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂との溶融混練後に添加してもよく、樹脂組成物を用いて膜を作製する際に添加してもよい。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂とを、通常、混練することにより得られる。かかる混練は、例えば、150〜350℃の温度にて、10〜1000/秒の剪断速度で溶融混練する工程を含む方法により実施できる。
【0036】
溶融混練を行う際の温度が150℃未満の場合、樹脂が溶融しないおそれがある。一方、溶融混練を行う際の温度が350℃を超える場合、樹脂が熱分解するおそれがある。さらに、溶融混練を行う際の剪断速度が10/秒未満の場合、十分に混練されないおそれがある。一方、溶融混練を行う際の剪断速度が1000/秒を超える場合、樹脂が分解するおそれがある。
【0037】
各成分がより均一に混合された樹脂組成物を得るために、溶融混練は、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜300℃の温度で行われ、好ましくは20〜700/秒、より好ましくは30〜500/秒の剪断速度で行われる。
【0038】
溶融混練に用いる機器としては、通常の混合機や混練機を用いることができる。具体的には、一軸混練機、二軸混練機、多軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等が挙げられる。また、剪断速度を上記範囲内で大きくする場合には、高剪断加工装置等を使用してもよい。
【0039】
<膜>
本発明の膜は、上記本発明の樹脂組成物から形成される。かかる膜は、厚さが100〜2000μmであることが好ましく、200〜1500μmであることがより好ましい。
【0040】
本発明の膜は、60℃で相対湿度90%の環境のように、高温高湿熱環境下に長時間、例えば120時間暴露しても、暴露後におけるJIS K7136に従って測定したヘーズ(Haze)が、2%以下となる。すなわち、本発明の膜は、高温高湿熱環境下で生じる膜の白化を抑制することができる。上記のヘーズは、好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.5%以下である。値が小さいほど、膜の白化がより抑制されていることを示す。また、本発明の膜は、高温高湿熱環境下に長時間暴露した前後におけるヘーズ値の変化量が、好ましくは10ポイント以下であり、より好ましくは5ポイント以下であり、さらに好ましくは1ポイント以下であり、ことさら好ましくは0.5ポイント以下である。
【0041】
<積層体>
本発明の積層体の1つの実施形態は、上述の膜と熱可塑性樹脂層とを備える(第2の積層体)。かかる積層体は、耐熱性及び表面硬度に優れる。熱可塑性樹脂層は、本発明の樹脂組成物から形成される膜の少なくとも一方の面に積層されていればよく、膜と必ずしも接触している必要はなく、他の層を介して積層されてもよい。熱可塑性樹脂層は、本発明の樹脂組成物からなる膜と接して熱可塑性樹脂層が積層されるのが好ましい。膜の形状維持の観点から、積層体は、膜の両面に熱可塑性樹脂層を含むことが好ましい。積層体は、後述するコーティング層をさらに備えていてもよい(第3の積層体)。
【0042】
熱可塑性樹脂層の厚さは、10〜200μmであることが好ましく、50〜150μmであることがより好ましい。積層体が膜の両面に熱可塑性樹脂層を含む場合、各熱可塑性樹脂層の厚さや組成は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、膜の形状維持の観点から、互いに実質的に同一であることが好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂層のJIS K5600-5-4に従って測定した鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることがさらに好ましい。JIS K7206に従って測定した熱可塑性樹脂層のビカット軟化温度は、100〜150℃であることが好ましい。
【0044】
熱可塑性樹脂層には、1種類以上の(メタ)アクリル樹脂又は1種類以上の(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂から選択することができる。これらの樹脂から、一種類又は複数種類の熱可塑性樹脂を、単独で、又は混合して使用することができる。熱可塑性樹脂層は、単層構成又は複数の層が積層された構成とすることができる。
【0045】
熱可塑性樹脂層の(メタ)アクリル樹脂として、上記本発明の樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル樹脂と同じ一次構造の樹脂を用いることができる。例えば、メタクリル酸メチルの単独重合体、メタクリル酸メチルに由来する構造単位50〜99.9質量%とアクリル酸メチルに由来する構造単位0.1〜50質量%からなる共重合体、ラクトン環構造が導入されたメタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸メチルに由来する構造単位とメタクリル酸に由来する構造単位からなる共重合体、又はスチレンに由来する構造単位、無水マレイン酸に由来する構造単位及びメタクリル酸メチルに由来する構造単位からなる三元共重合体などを用いることができる。(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50,000〜300,000であることが好ましく、70,000〜250,000であることがより好ましい。熱可塑性樹脂層と上述の樹脂組成物からなる膜とを含む積層体において、熱可塑性樹脂層に含まれる(メタ)アクリル樹脂は、膜を形成する樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル樹脂と同じであっても異なっていてもよい。
【0046】
(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂として、カーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、エチレンテレフタレート系樹脂、スチレン系樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、ABS樹脂などを用いることができる。(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂は、耐熱性の観点から、JIS K7206に従って測定したビカット軟化温度が115℃以上であることが好ましく、117℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。
【0047】
カーボネート系樹脂の例としては、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂層がポリカーボネート樹脂層である場合、ポリカーボネート樹脂層は、1種類以上のポリカーボネート樹脂又は1種類以上のポリカーボネート樹脂と1種類以上のポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂との複合樹脂から形成することができる。これらのポリカーボネート樹脂は、温度300℃及び荷重1.2kgの条件で測定されるメルトボリュームレート(以下、MVRとも言う。 )が3〜120cm
3/10分であるのが好ましい。MVRは、より好ましくは、3〜80cm
3/10分であり、さらに好ましくは4〜40cm
3/10分、ことさら好ましくは10〜40cm
3/10分である。MVRが3cm
3/10分未満の場合は、流動性が低下するため、溶融共押出成形などの成形加工しにくくなる傾向や、外観不良が生じることがある。また、MVRが120cm
3/10分を超えると、ポリカーボネート樹脂層の強度等の機械特性 が低下する傾向にある。MVRは、JIS K 7210に準拠し、1.2kgの荷重下、300℃の条件にて測定することができる。
【0048】
ポリカーボネート樹脂は、例えば、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0049】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられる。
【0050】
これらは単独又は2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0051】
さらに、上記のジヒドロキシ
ジアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0052】
ポリカーボネート樹脂層が、1種類以上のポリカーボネート樹脂と1種類以上のポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂との複合樹脂から形成される場合、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂は、透明性を損なわない範囲で配合することができる。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂と相溶する(メタ)アクリル樹脂が好ましく、芳香環又はシクロオレフィンを構造中に有するメタクリル樹脂がより好ましい。ポリカーボネート樹脂がこのような
メタクリル樹脂を含むと、得られるポリカーボネート樹脂層の表面硬度を、ポリカーボネート樹脂単独から形成されるときよりも高くすることができる。
【0053】
上記ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂として、イソソルバイトと芳香族ジオールから合成されるポリカーボネートが挙げられる。例えば、三菱化学製「DURABIO(商標登録)」が挙げられる。
【0054】
ポリカーボネート樹脂には、離型剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、重合抑制剤、酸化防止剤、難燃化剤、補強剤等の添加剤、前記ポリカーボネート樹脂以外の重合体などを、本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよい。
【0055】
ポリカーボネート樹脂は、市販品を使用してもよく、例えば、住化スタイロンポリカーボネート(株)製“カリバー(登録商標)”の301-4、301-10、301-15、301-22、301-30、301-40、SD2221W、SD2201W、TR2201などが挙げられる。
【0056】
熱可塑性樹脂層に、(メタ)アクリル樹脂を二種類以上混合して使用する場合、又は(メタ)アクリル樹脂を他の熱可塑性樹脂と混合して使用する場合は、熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂100質量部当たり(メタ)アクリル樹脂を50質量部以上含むことが好ましい。(メタ)アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては(メタ)アクリル樹脂と相溶する熱可塑性樹脂が好ましい。メタクリル酸メチルの単独重合体、又はメタクリル酸メチルに由来する構造単位50〜99.9質量%とアクリル酸メチルに由来する構造単位0.1〜50質量%からなる共重合体と相溶する熱可塑性樹脂として、電気化学工業製のレジスファイ(登録商標)R-100、R-200、アルケマ社製のAltuglas(登録商標)HT-121などが挙げられる。
熱可塑性樹脂層は実質的にフッ化ビニリデン樹脂を含まないことが好ましい。
【0057】
本発明の膜は、目視で観察した場合に透明であり、JIS K7361-1に従って測定される全光線透過率(Tt)が、好ましくは88%以上、より好ましくは90%以上であり、60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露した後にも、この範囲を維持する。
【0058】
本発明の膜は、(メタ)アクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂を含み、60℃で相対湿度90%の環境下に120時間暴露した後にJIS K7136に従って測定したヘーズが、通常2%以下、好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.5%以下である。
【0059】
さらに、本発明の膜は、JIS K6911に従い、自動平衡ブリッジ法で測定した3V、100kHzにおける比誘電率が、通常4.0以上、好ましくは4.1以上である。なお、本発明の積層体は、JIS K6911に従い、自動平衡ブリッジ法で測定した3V、100kHzにおける比誘電率が、通常3.5以上、3.6以上が好ましく、より好ましくは3.8以上である。上記比誘電率の値は、膜を高温及び高湿環境下に暴露する前に行う測定で得られる値である。
【0060】
本発明の膜は、上記本発明の樹脂組成物を、例えば、溶融押出成形法、熱プレス法、射出成形法等により成形することにより製造できる。
【0061】
上記の成形により本発明の樹脂組成物を成形した膜と、別途成形した熱可塑性樹脂層とを、例えば粘着剤や接着剤を介して貼合することにより積層体を製造してもよいが、本発明の樹脂組成物と(メタ)アクリル樹脂とを溶融共押出成形により積層一体化させることにより積層体を製造することが好ましい。このように溶融共押出成形により製造された積層体は、貼合により製造された積層体と比較して、通常、二次成形しやすい傾向にある。
【0062】
溶融共押出成形は、例えば、本発明の樹脂組成物と(メタ)アクリル樹脂とを、2基又は3基の一軸又は二軸の押出機に、別々に投入して各々溶融混練した後、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイ等を介して、本発明の膜と熱可塑性樹脂層とを積層一体化し、押出す成形法である。得られた積層体は、例えば、ロールユニット等により冷却、固化されるのが好ましい。
【0063】
本発明の積層体の別の実施形態は、上述の膜と、膜の少なくとも一方の表面に配置される、傷つき防止、反射防止、防眩及び指紋防止からなる群から選択される少なくとも一種の機能を付与するコーティング層とを備える(第1の積層体)。コーティング層は、膜の少なくとも一方の面に積層されていればよく、膜と必ずしも接触している必要はなく、他の層を介して積層されてもよい。コーティング層としては、例えば、特開2013−86273号公報に記載されている硬化被膜を用いることができる。
【0064】
コーティング層の厚さは、1〜100μmが好ましく、3〜80μmがより好ましく、5〜70μmがさらに好ましい。1μmよりも薄いと、機能の発現が困難であり、100μmよりも厚いと、コーティング層の割れが懸念される。
【0065】
必要に応じて、コーティング層の表面に、コート法、スパッタ法、真空蒸着法等により反射防止処理が施されてもよい。また、反射防止効果を付与の目的として、コーティング層の片面又は両面に、別途作製した反射防止性のシートが貼合されてもよい。反射防止性のシートは、コーティング層の少なくとも一方の面に積層されていればよく、コーティング層と必ずしも接触している必要はなく、他の層を介して積層されてもよい。
【0066】
本発明の膜をA層、熱可塑性樹脂層をB層、コーティング層をC層と略記したとき、本発明の膜及び積層体の層構成例としては、下記(1)〜(12)が挙げられる。
(1) A層
(2) A層/B層
(3) B層/A層/B層
(4) B層/A層/B層/A層/B層
(5) A層/C層
(6) C層/A層/C層
(7) A層/B層/C層
(8) C層/A層/B層/C層
(9) B層/A層/B層/C層
(10)C層/B層/A層/B層/C層
(11)B層/A層/B層/A層/B層/C層
(12)C層/B層/A層/B層/A層/B層/C層
【0067】
本発明の膜をA層、熱可塑性樹脂層をB層としたとき、B層/A層/B層で表される構成の積層体を次のようにして製造できる。
図1を用いて説明する。
まず、A層の形成材料として、(メタ)アクリル樹脂とフッ化ビニリデン樹脂とを混合し、本発明の樹脂組成物を得ることができる。次いで、前記樹脂組成物を一軸押出機2で、B層の形成材料として熱可塑性樹脂を一軸押出機1及び3で、それぞれ溶融させる。次いで、これらをフィードブロック4を介してB層/A層/B層で表される構成となるように積層し、マルチマニホールド型ダイス5から押し出して、フィルム状の溶融樹脂6を得ることができる。フィルム状の溶融樹脂6を、対向配置した第1冷却ロール7と第2冷却ロール8との間に挟み込み、次いで第2冷却ロール8に密着させながら第2冷却ロール8と第3冷却ロール9との間に挟み込んだ後、第3冷却ロール9に密着させて、成形・冷却することで、3層構成の積層体10を得ることができる。
【0068】
<透明導電シート>
上記本発明の膜又は積層体の少なくとも片面に透明導電膜を形成して、透明導電シートを得ることができる。
【0069】
本発明の膜又は積層体の表面に透明導電膜を形成させる方法としては、本発明の膜の表面に直接透明導電膜を形成させる方法でもよく、又は、予め透明導電膜が形成されたプラスチックスフィルムを本発明の膜又は積層体の表面に積層することにより透明導電膜を形成させる方法でもよい。
【0070】
予め透明導電膜が形成されたプラスチックフィルムのフィルム基材としては、透明なフィルムであって透明導電膜を形成することができる基材であればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリアミド、これらの混合物又は積層物等を挙げることができる。また、透明導電膜を形成させる前に、表面硬さの改良、ニュートンリングの防止、帯電防止性の付与などを目的として、上記フィルムにコーティングを施しておくことは有効である。
【0071】
予め透明導電膜が形成されたフィルムを本発明の膜又は積層体の表面に積層する方法は、気泡等がなく、均一で透明なシートが得られる方法であればいかなる方法でもよい。常温、加熱、紫外線又は可視光線により硬化する接着剤を使用して積層する方法を用いてもよいし、透明な粘着テープにより貼り合わせてもよい。
【0072】
透明導電膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法等が知られており、必要とする膜厚に応じて、これらの方法を適宜用いることができる。
【0073】
スパッタリング法の場合、例えば、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、必要により、基板に直流、交流、高周波等のバイアスを印加してもよい。透明導電膜に使用する透明導電性の金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物等が挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)が好適である。
【0074】
また、透明導電膜を形成する方法として、透明導電膜を形成することができる各種の導電性高分子を含むコーティング剤を塗布し、熱又は紫外線等の電離放射線を照射して硬化させることにより形成する方法等も適用できる。導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等が知られており、これらの導電性高分子を用いることができる。
【0075】
透明導電膜の厚さとしては、特に限定されるものではないが、透明導電性の金属酸化物を使用する場合、通常50〜2000Å、好ましくは70〜1000Åである。この範囲であれば導電性及び透明性の両方に優れる。
【0076】
透明導電シートの厚さは特に限定されるものではなく、ディスプレイの製品仕様の求めに応じた最適の厚さを選択することができる。
【0077】
<タッチセンサーパネル>
本発明の膜又は積層体及び該膜又は該積層体を含む透明導電シートは、ディスプレイパネル面板、タッチスクリーン等の透明電極として好適に用いることができる。具体的には、本発明の膜又は積層体をタッチスクリーン用ウインドウシートとして使用することができる。また、本発明の膜又は積層体は、透明導電シートを抵抗膜方式や静電容量方式のタッチスクリーンの電極基板として使用することができる。このタッチスクリーン用ウインドウシート又はタッチスクリーンを、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの前面に配置することでタッチスクリーン機能を有するタッチセンサーパネルが得られる。
【0078】
本発明の膜又は積層体をタッチスクリーン用ウインドウシートとして使用する場合、タッチスクリーン用ウインドウシートは、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイの最表面に配置されるガラスシートの代替品として使用することができる。なお、タッチスクリーン用ウインドウシートは、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、SED方式平面型ディスプレイ、電子ペーパーなどにも使用することができる。
【0079】
図2に、本発明の膜又は積層体及び該膜又は積層体を含む透明導電シートを用いた一般的な静電容量式タッチセンサーパネルの断面の模式図を示す。図中、11は本発明の膜によるウインドウシートを、14は本発明の膜又は積層体を含む透明導電シートを、12は光学粘着層を、13は液晶表示装置をそれぞれ示す。駆動時にはユーザーがウインドウシート上の任意の位置に指を接触させると、透明導電シートを介して、端子位置から接触位置までの距離が検出され、接触位置が検知される仕組みとなる。これにより、パネル上の接触部分の座標を認識し、適切なインターフェース機能が図られるようになっている。
【0080】
図3に、本発明の膜又は積層体を適用した液晶表示装置の一例を断面模式図で示す。本発明の膜又は積層体20は、光学粘接着剤を介して、偏光板21に積層することができ、この積層体は、液晶セル23の視認側に配置することができる。液晶セルの背面側には、通常、偏光板が配置される。液晶表示装置25は、このような部材から構成される。なお、
図3は、液晶表示装置の一例であり、この構成に限られるものではない。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
実施例及び比較例に用いた(メタ)アクリル樹脂と、その物性を表1に示す。なお、表1におけるビカット軟化点(VST)は、JIS K 7206:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験方法」に規定のB50法に準拠し、ヒートディストーションテスター〔(株)安田精機製作所製の“148−6連型”〕を使用して測定した。その際の試験片は、各原料を3mm厚にプレス成形して測定を行った。
メルトマスフローレート(MFR)は、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に規定される方法に準拠して測定した。ポリ(メタクリル酸メチル)系の材料については、温度230℃、荷重3.80kg(37.3N)で測定することが、このJISに規定されている。
【0083】
【表1】
【0084】
メタクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。GPCの検量線の作成には、分子量分布が狭く分子量が既知の昭和電工(株)製のメタクリル樹脂を標準試薬として使用し、溶出時間と分子量から検量線を作成し、各樹脂組成物の重量平均分子量を測定した。具体的には、樹脂40mgをテトラヒドロフラン(THF)溶媒20mlに溶解させ、測定試料を作製した。測定装置には、東ソー(株)製のカラムである「TSKgel SuperHM-H」2本と、「SuperH2500」1本とを直列に並べて設置し、検出器にRI検出器を採用したものを用いた。測定された分子量分布曲線は、横軸の分子量を対数とした上で、下記の(式1)の正規分布関数を用いてフィッティングを行った。
【数1】
【0085】
実施例に用いたフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び比較例に用いたフッ化ビニリデン−トリフッ化クロロエチレン共重合体及びポリフッ化ビニリデンと、その物性を表2に示す。なお、表2中「VDF」は、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフッ化クロロエチレン共重合体又はポリフッ化ビニリデンに含まれる、フッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有割合(質量%)を表し、表2中「HFP」は、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフッ化クロロエチレン共重合体又はポリフッ化ビニリデンに含まれる、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位の含有割合(質量%)を表し、表2中「CETF」は、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフッ化クロロエチレン共重合体又はポリフッ化ビニリデンに含まれる、トリフッ化クロロエチレンに由来する構造単位の含有割合(質量%)を表す。VDF、HFP、及びCETFは、NMRで測定した。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)−d7に20〜30mg/mlとなるように各共重合体を溶解し、Varian社製INOVA300を用い、積算回数64回、観測核19F、共鳴周波数282MHzの条件で測定を行った。
【0086】
【表2】
【0087】
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフッ化クロロエチレン共重合体又はポリフッ化ビニリデンの重量平均分子量(Mw)は、GPCで測定した。GPCの検量線の作成には、ポリスチレンを標準試薬として使用し、溶出時間と分子量から検量線を作成し、各樹脂の重量平均分子量を測定した。具体的には、樹脂40mgをN−メチルピロリドン(NMP)溶媒20mlに溶解させ、測定試料を作製した。測定装置には、東ソー(株)製のカラムである「TSKgel SuperHM-H」2本と、「SuperH2500」1本とを直列に並べて設置し、検出器にRI検出器を採用したものを用いた。
【0088】
<実施例1>
SUMIPEX(登録商標)MM(住友化学社製)を55質量部と、PVDF共重合体Aを45質量部とを、ドライブレンドし、東洋精機製作所製ラボプラストミル(20mm造粒機)を用いて、260℃下で溶融混練して、複合ペレットを得た。プレス成形機を用いて、設定温度220℃下で、得られた複合ペレットから、厚さ800μmの膜を作製した。作製した膜を目視で観察したところ、無色透明であった。
【0089】
<実施例2>
SUMIPEX(登録商標)MM(住友化学社製)を50質量部用い、PVDF共重合体Aを50質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ800μmの膜を作製した。作製した膜を目視で観察したところ、無色透明であった。
【0090】
<比較例1>
PVDF共重合体Aの代わりに、KFポリマー(登録商標)T#1300((株)クレハ製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ800μmの膜を作製した。作製した膜を目視で観察したところ、無色透明であった。
【0091】
<比較例2>
PVDF共重合体Aの代わりに、PVDF共重合体Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ800μmの膜を作製した。作製した膜を目視で観察したところ、無色透明であった。
【0092】
<比較例3>
PVDF共重合体Aの代わりに、SOLEF(登録商標)31508(Solvay製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ800μmの膜を作製した。作製した膜を目視で観察したところ、無色透明であった。
【0093】
得られた膜に含まれるアルカリ金属(Na+K)の量を表3に示す。アルカリ金属の含有量は、誘導結合プラズマ質量分析法により測定した。
【0094】
JIS K6911に従い、自動平衡ブリッジ法で測定した3V、100kHzにおけるそれぞれの膜の比誘電率を表3に示す。
【0095】
<高温及び高湿暴露試験>
実施例1及び2と、比較例1〜3で得られた膜を60℃で
相対湿度90%の恒温恒湿オーブンに120時間放置することにより高温及び高湿暴露試験を行った。高温及び高湿暴露試験前後の膜について、JIS K7136:2000に従って測定したヘーズ及びJIS K7361-1:1997に従って測定した全光線透過率(Tt)を、それぞれ表3に示す。ヘーズ及び全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:シングルビーム法」に準拠したヘーズ透過率計〔(株)村上色彩技術研究所製の“HR-100”〕で測定した。
【0096】
【表3】
【0097】
<実施例3>
実施例1及び2で得られた膜は、ディスプレイ用ウインドウシート及び/又は透明導電シートの基材として、
図2の断面図に示す構成のタッチセンサーパネルに使用することができる。
【0098】
<実施例4>
メタクリル樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂として、表1及び2に示すSUMIPEX MM及びSOLEF21508を、それぞれ表4に示す割合で混合し、中間層(A)を形成する樹脂組成物(A)を得た。熱可塑性樹脂層(B)及び(C)は、表1に示すSUMIPEX MHを使用した。
図1に示す装置を使用し、以下の方法で積層体を製造した。
図1を参照し、樹脂組成物(A)を65mmφ一軸押出機2〔東芝機械(株)製〕で、SUMIPEX MHを45mmφ一軸押出機1及び3〔日立造船(株)製〕で、それぞれ溶融させた。次いで、これらを設定温度230〜270℃の3種3層分配型フィードブロック4に供給し3層構成となるように分配した後、マルチマニホールド型ダイス5〔日立造船(株)製〕から押し出してB層/A層/C層で表される構成となるように積層し、フィルム状の溶融樹脂6を得た。得られたフィルム状の溶融樹脂6を、対向配置した第1冷却ロール7(直径350mm)と第2冷却ロール8(直径450mm)との間に挟み込み、第2ロール8に巻きながら第2ロール8と第3ロール9(直径350mm)との間に挟み込んだ。その後、第3冷却ロール9に巻き、成形冷却し、各層が表
4に示す膜厚の平均値を有する3層構成の積層体10を得た。得られた積層体10は、約800μmの総膜厚を有し、目視で観察したところ無色透明であった。
【0099】
実施例1と同様にして、得られた積層体の比誘電率の測定、及び高温及び高湿暴露試験を行った。結果を表5に示した。
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
<実施例5>
熱可塑性樹脂層をカリバー(登録商標)301−30から形成した以外は、実施例4と同様にして積層体を得た。表6には、樹脂組成物の含有量及び層構成を示した。積層体は、無色透明だった。また、実施例1と同様にして、得られた積層体の比誘電率の測定、及び高温及び高湿暴露試験を行った。結果を表7に示した。
【0103】
【表6】
【0104】
【表7】
【0105】
<実施例6>
実施例1及び2で得られた膜、又は実施例4及び5で得られた積層体は、ディスプレイ用ウインドウシートとして使用することにより、表示装置を作製することができる。