特許第6374680号(P6374680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374680
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】貼付方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20180806BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180806BHJP
   B30B 12/00 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20180806BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   C09J201/00
   B30B12/00 B
   H01L21/02 C
   C09J5/00
【請求項の数】6
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-52697(P2014-52697)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-133465(P2015-133465A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-258622(P2013-258622)
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋文
(72)【発明者】
【氏名】久保 安通史
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 孝広
(72)【発明者】
【氏名】中田 公宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】岩田 泰昌
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−172033(JP,A)
【文献】 特開2007−142381(JP,A)
【文献】 特開2011−165952(JP,A)
【文献】 特開2013−243226(JP,A)
【文献】 特開2013−165130(JP,A)
【文献】 特開2009−246067(JP,A)
【文献】 特開2013−115124(JP,A)
【文献】 特開2006−032815(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/036633(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B30B 12/00
C09J 5/00
C09J 201/00
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板又は上記基板を支持する支持体のいずれかに、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂からなる群より選ばれる一種以上の樹脂と希釈溶剤とを含む接着剤を、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、及びスリット塗布からなる群より選ばれる1つの方法により、上記基板又は上記支持体の面上略全域に塗布し、接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、
上記接着剤層形成工程の後、上記基板と上記基板を支持する上記支持体とを上記接着剤層を介して貼り合わせ、押圧手段を用いて押圧する押圧工程と、
上記押圧工程の後、上記接着剤層を介して貼り合わせた上記基板及び上記支持体を、上記押圧工程を行なう環境の気圧よりも高い気圧の環境下に置く気圧調整工程と、を包含し、
上記気圧調整工程では、10Hzの周波数における動的粘度が1,000Pa・s以上、50,000Pa・s以下の範囲内、かつ、180℃以上、300℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層を加熱することを特徴とする貼付方法。
【請求項2】
上記気圧調整工程によって上記基板及び上記支持体が置かれる環境の気圧と上記押圧工程を行なう環境の気圧との気圧差は、100Pa以上、500kPa以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の貼付方法。
【請求項3】
上記押圧工程を行なう環境の気圧は、0.1Pa以上、100kPa以下の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付方法。
【請求項4】
上記気圧調整工程によって上記基板及び上記支持体が置かれる環境の気圧は、大気圧であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の貼付方法。
【請求項5】
上記押圧工程及び上記気圧調整工程では、上記接着剤層を介して貼り合わせた上記基板及び上記支持体を、加熱することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付方法。
【請求項6】
上記押圧工程の後、上記気圧調整工程を行なう気圧調整室に、上記接着剤層を介して貼り合わせた上記基板及び上記支持体を搬送する搬送工程を包含する請求項1〜のいずれか1項に記載の貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、デジタルAV機器及びICカード等の高機能化に伴い、搭載される半導体シリコンチップ(以下、チップ)を小型化及び薄型化することによって、パッケージ内にチップを高集積化する要求が高まっている。例えば、CSP(chip size package)又はMCP(multi-chip package)に代表されるような複数のチップをワンパッケージ化する集積回路においては、一層の薄型化が求められている。パッケージ内のチップの高集積化を実現するためには、チップの厚さを25〜150μmの範囲にまで薄くする必要がある。
【0003】
しかしながら、チップのベースになる半導体ウエハ(以下、ウエハ)は、研削することにより肉薄になるため、その強度は弱くなり、クラック又は反りが生じ易くなる。また、薄板化することによって強度が弱くなったウエハを自動搬送することは困難であるため、人手によって搬送しなければならず、その取り扱いが煩雑である。
【0004】
そのため、研削するウエハにサポートプレートと呼ばれる、ガラス、シリコン又は硬質プラスチック等からなるプレートを貼り合わせることによって、ウエハの強度を保持し、クラックの発生及びウエハの反りを防止するウエハハンドリングシステムが開発されている。ウエハハンドリングシステムによりウエハの強度を維持することができるため、薄板化したウエハの搬送を自動化することができる。
【0005】
ウエハハンドリングシステムにおいて、ウエハとサポートプレートとは粘着テープ、熱可塑性樹脂、接着剤組成物等を用いて貼り合わせられる。そして、サポートプレートが貼り付けられたウエハを薄板化した後、ウエハをダイシングする前にサポートプレートを基板から剥離する。このウエハとサポートプレートとの貼り合わせに接着剤を用いた場合には、接着剤を溶解してウエハをサポートプレートから剥離する。
【0006】
特許文献1には、減圧プレス機における所定温度に加熱した上下一対の熱盤間に、半導体或いはセラミックスからなる無機基板を含む積層材と積層加工用の補助材料との組み合わせセットを設置して、上記組み合わせセットに上記一対の熱盤を接触させた後、少なくとも加圧開始から0.05MPaまでの低圧負荷を10秒間以上かけて行なう無機基板のプレス加工法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−192394号公報(2002年7月10日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のプレス加工法を用いて基板と支持体と接着剤層を介して貼り付ける場合、プレート部材によって加えられた押圧力は支持体の平面部を介して基板の段差が形成された面に加えられる。基板の段差が形成されると、基板の段差部分にまで均一に接着剤層を流動させることが困難となる。このため、基板の段差部分に接着剤層を十分に埋め込むことができず、貼り付け不良を生じる虞がある。従って、基板の段差部分に接着剤層を十分に埋め込むことができ、貼り付け不良の発生を防ぐことができる貼付方法が求められている。
【0009】
本発明は上記課題を解決すことを鑑みてなされたものであり、基板の段差部分に接着剤層を十分に埋め込むことができ、貼り付け不良の発生を防ぐことができる貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る貼付方法は、基板と上記基板を支持する支持体とを接着剤層を介して貼り合わせ、押圧手段を用いて押圧する押圧工程と、上記押圧工程の後、上記接着剤層を介して貼り合わせた上記基板及び上記支持体を、上記押圧工程を行なう環境の気圧よりも高い気圧の環境下に置く気圧調整工程と、を包含することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板の段差部分に接着剤層を十分に埋め込むことができ、貼り付け不良の発生を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る貼付方法及び変形例の概略を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る積層体形成システムの全体の構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る貼付方法に用いられる接着剤組成物の動的粘度と温度との関係を示すグラフである。
図4】実施例4に係る積層体と比較例4に係る積層体とにおける貼り付け後の積層体の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る貼付方法は、基板と上記基板を支持する支持体とを接着剤層を介して貼り合わせ、押圧手段を用いて押圧する押圧工程と、上記押圧工程の後、上記接着剤層を介して貼り合わせた上記基板及び上記支持体を、上記押圧工程を行なう環境の気圧よりも高い気圧の環境下に置く気圧調整工程と、を包含する。
【0014】
上記構成によれば、基板と支持体とを接着剤層を介して貼り合わせた積層体は、押圧手段を用いて押圧された後、気圧調整工程において、支持体が基板の段差に追従するように気圧によって押圧される。このため、基板の段差部分にまで均一に接着剤層を流動させることができる。従って、基板の段差部分に接着剤層を十分に埋め込むことができ、貼り付け不良の発生を防ぐことができる。
【0015】
<第1の実施形態>
図1及び図2を用いて一実施形態(第1の実施形態)に係る貼付方法をより詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る貼付方法の概略を説明する図である。また、図2は、一実施形態に係る積層体形成システム100の全体の構成を示す図である。
【0016】
〔積層体形成システム100〕
まず、図2を用いて本実施形態に係る貼付方法を行なうための積層体形成システム100の構成について説明する。図2に示す通り、積層体形成システム100は、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して貼り合わせる重ね合わせ室52、及び接着剤層3を介して貼り合わせた基板1とサポートプレート2とを押圧し積層体10を形成する押圧室51を備えている。
【0017】
また、図2に示す通り、積層体形成システム100は、第一搬送手段43及び気圧調整室54をさらに備えている。
【0018】
また、図2に示す通り、積層体形成システム100は、基板1上に接着剤を塗布するスピンナー(塗布装置)62、及び接着剤が塗布された基板1を加熱して基板1上に接着剤層3を形成するベークプレート(加熱装置)61を備えていてもよい。
【0019】
また、図2に示す通り、積層体形成システム100は、厚み分布測定装置67、キャリアステーション60、保持部40、冷却部66、第二搬送手段64、及び洗浄装置63を備えていてもよい。
【0020】
(スピンナー62)
スピンナー(塗布装置)62は、基板上に接着剤層を形成するためのものである。基板1は、第二搬送手段64によってスピンナー62に搬入される。その後、スピンナー62は、基板1を回転させながら基板1上に接着剤をスピン塗布する。なお、基板1の回転速度は特に限定されず、接着剤の種類、基板1の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。また、スピンナーは、基板上に接着剤を塗布する際に、基板の端面又は裏面に付着した接着剤を洗浄する洗浄液を塗布する洗浄手段を備えていてもよい。
【0021】
(ベークプレート61)
ベークプレート(加熱装置)61は、塗布装置により接着剤が塗布された基板を加熱し、基板上に接着剤層を形成するものである。本実施形態においては、スピンナー62により基板1上に接着剤を塗布した後に、基板1をベークプレート61に載置し、接着剤をベークする。
【0022】
(貼り付けユニット50)
貼り付けユニット50は、重ね合わせ室52及び押圧室51を備えた、積層体10を貼り付けるためのユニットである。ここで、重ね合わせ室52と押圧室51とは、ゲート41を介して積層体を移動させることができるようになっている。本実施形態では、基板1及びサポートプレート2を、重ね合わせ室52にて接着剤層3を介して重ね合わせた後(図1の(a))、押圧室51にて基板1及びサポートプレート2を押圧しながら接着剤層3を加熱する(図1の(b)及び(c))。
【0023】
(重ね合わせ室52)
重ね合わせ室52は、基板1及びサポートプレート2を、接着剤層3を介して重ね合わせるための部屋である。重ね合わせ室52では、例えば、基板1とサポートプレート2との相対位置を、重ね合わせ室52に設けられた位置調整部(不図示)を用いて調整した後に、基板1とサポートプレート2とを重ね合わせを行なってもよい。
【0024】
(押圧室51)
押圧室51は、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して貼り合わせ、押圧するための貼り付けユニット50に設けられた部屋である。押圧室51には、公知の減圧手段が設けられており、内部の気圧を制御することができる。
【0025】
また、押圧室51には、上部プレート部材30a及び下部プレート部材30bからなるプレート部材30が設けられている。上部プレート部材30a及び下部プレート部材30bは、それぞれがプレスプレート21、ヒータ22、及びベースプレート23を備えており、下部プレート部材30bは、さらにピン24を備えている(図1の(b))。
【0026】
プレート部材30は、上部プレート部材30a及び下部プレート部材30bの少なくとも1方を上下に移動させることで、積層体10を挟み込むようにして押圧力を加える。
【0027】
プレスプレート21は、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して貼り合わされた積層体10に直接、押圧力を加えるための部材である。プレスプレート21は、例えば、セラミックスなどによって形成されている。また、プレスプレート21における上部プレート部材30aと下部プレート部材30bとが相互に対向する表面は、非押圧時の平面度が1.0μm以下となるように、その表面が形成されていることが好ましい。ここで、上記平面度とは、平面に対する凹凸の度合いを示す数値であり、「平面度が1.0μm以下」とは、非押圧時のプレスプレート21の表面の凹凸が±1.0μm以下であることを指す。これによって、積層体10に均一に押圧力を加えることができる。
【0028】
ヒータ22は、例えばリボンヒータ、面ヒータ等の加熱装置からなり、プレスプレート21を介して積層体10を加熱することができる。また、ヒータ22とベースプレート23との間には断熱材が設けられていてもよい。これによってベースプレート23にヒータ22の熱が放出されることを抑制することができる。
【0029】
ベースプレート23は、上部プレート部材30a及び下部プレート部材30bの少なくとも1方を上下方向に移動させることで生じた押圧力をプレスプレート21に伝えるための部材である。ベースプレート23は、ステンレス等の金属又はセラミックスや石等で形成されている。
【0030】
ピン24は、下部プレート部材30bに設けられており、基板1とサポートプレートの重ね合わせ、及び貼り合わせ後の積層体10の搬出などに用いられる。また、ピン24は、積層体10からはみ出した接着剤層によって、積層体10が下部プレート部材30bに貼り付くことを防止する貼り付き防止用ピンとしても機能する。なお、ピン24は、上部プレート部材30aにも設けてもよい。これにより、上部プレート部材30aに積層体10が貼り付くことを防止することができる。
【0031】
一実施形態において、貼り付けユニット50の重ね合わせ室52及び押圧室51は、一つの処理室の内部を二つの処理室に仕切る壁を設けた構造とすることができる。このほかにも重ね合わせ室52及び押圧室51は、重ね合わせ室52と押圧室51とがそれぞれの側面において隙間なく互いに接している構造であってもよい。重ね合わせ室52及び押圧室51の境界には、重ね合わせ室52及び押圧室51間で重ね合わせた基板1及びサポートプレート2、又は積層体10の受け渡しを行なうためのゲート41が設けられている。ゲート41はシャッターによって開閉が制御されている。また、重ね合わせ室52には、貼り付けユニット50と第一搬送手段43との間でサポートプレート2、基板1及び積層体10の受け渡しを行なうための開閉可能な受け渡し窓42が設けられている。重ね合わせ室52には、公知の減圧手段が設けられており(不図示)、内部圧の状態を独立に制御することができる。
【0032】
ゲート41は、シャッターが開いた状態で、重ね合わせた基板1及びサポートプレート2を重ね合わせ室52から押圧室51に移動させるように、また、積層体10を押圧室51から重ね合わせ室52に移動させることができるように形成されている。重ね合わせ室52及び押圧室51の何れも減圧させた状態でシャッターを開けることにより、重ね合わせた基板1及びサポートプレート2を重ね合わせ室52から押圧室51に減圧下で移動させることができる構造となっている。ここで、ゲート41の開閉には従来公知の手段を用いることができ、例えばゲートバルブ構造を適用することができる。
【0033】
貼り付けユニット50には、さらにゲート41を通じて重ね合わせ室52及び押圧室51間で積層体10の受け渡しを行なう内部搬送手段25が設けられている。なお、内部搬送手段25は、内部搬送アーム及びアーム旋回軸によって構成されている。ここで、アーム旋回軸は、受け渡し窓42が形成されている側面に近い側に形成されていることが好ましい。これにより、重ね合わせ室52と第一搬送手段43との間での受け渡しのストロークを短くすることができる。また、内部搬送アームの回動速度は、状況に応じた速度を設定するとよい。これにより、内部搬送アームが積層体10を保持しているときには、内部搬送アームを低速で回動させることができ、積層体10を保持していないときには、内部搬送アームを高速で回動させることができる。また、内部搬送アームの回動の立ち上がりと停止とがスムーズになるように加減速を制御することができる。
【0034】
(第一搬送手段43)
第一搬送手段43は、貼り付けユニット50及び気圧調整室54の間で基板1を搬送する手段である。ここで、第一搬送手段43は、図2における矢印方向に、第一搬送手段走行路53内を移動する。第一搬送手段43は、必要な処理が終了した後に次の処理を行なうために、基板1、サポートプレート2及び積層体10をそれぞれ所望の位置まで搬送する。また、第一搬送手段43は、キャリアステーション60、冷却部66及び厚み分布測定装置67の間で基板を搬送することもできる。
【0035】
(気圧調整室54)
気圧調整室54は、気圧調整工程を行なう部屋であり、押圧室51から、第一搬送手段43によって搬送されてきた積層体10を戴置するステージ31が設けられている(図1の(f)及び図2)。また、気圧調整室54には、公知の減圧手段が設けられており、内部の気圧を制御することができる。
【0036】
気圧調整室54と第一搬送手段43が設けられた第一搬送手段走行路53との間には、仕切りのための壁が設けられており、当該壁には積層体10を受け渡しするためのゲート及びシャッター(不図示)が設けられている。ここで、ゲートはシャッターによって開閉が制御されている。
【0037】
(厚み分布測定装置67)
厚み分布測定装置67は、積層体の厚み分布を測定するためのものである。積層体10の厚み分布とは、積層体10の厚みの、積層体10の上面(サポートプレート2又は基板1の上面)における面内分布を示す。厚み分布測定装置67は、物体の厚み分布を測定し得るものであれば特に限定されず、公知の装置を用いることができるが、例えば、触針式変位計、レーザー変位計等の装置を用いることにより好適に積層体の厚み分布を測定することができる。これにより、基板の薄化、実装等のプロセスにおける製品品質の管理、及び積層体10の異常の検出を行なうことができる。
【0038】
(キャリアステーション60)
キャリアステーション(格納部)60は、基板及び支持体を格納している。また、キャリアステーション60を介して、基板1、サポートプレート2を積層体形成システム100に投入することができる。また、押圧室51にて形成した積層体10を、キャリアステーション60を介して、積層体形成システム100から取り出すことができる。
【0039】
(保持部40)
保持部40は基板1及びサポートプレート2のアライメントをするためのものである。保持部40は、撮像部及び中心位置検出部を備えており、重ね合わされる前の基板1又はサポートプレート2を保持するようになっている。撮像部は、保持部40に保持された基板1又はサポートプレート2の互いに異なる端面を含む領域をそれぞれ撮像するようになっている。
【0040】
中心位置検出部は、撮像部が撮像した複数の画像に基づいて、保持部40に保持された基板1又はサポートプレート2の中心位置を検出する。中心位置検出部は、円板の端面の画像に基づいて、仮想円を算出し、中心位置を検出するようになっていればよい。端面の画像に基づく中心位置の検出技術は、公知の画像処理を用いればよく、特に限定されない。
【0041】
(冷却部)
冷却部66は基板を冷却することにより、基板の温度調節を行なう冷却板と、基板の位置を調整する位置調整装置とを備えている。図2に示す通り、第一搬送手段43と第二搬送手段64とは、冷却部66を挟んで、基板1の受け渡しを行なっている。
【0042】
基板1又は積層体10を冷却板に載置することで、冷却することができる。また、冷却時に位置調整装置を用いて、基板1のアライメントを行なうことができる。よって、積層体形成システム100を省スペース化することができるとともに、積層体の形成時間を短縮することができる。
【0043】
さらに、冷却部66は接着剤層3を形成した後の基板1及び積層体10を自然冷却するための冷却エリアを有している。冷却エリアは、基板1及び積層体10の熱を効率よく逃がすことができる構成であればよい。例えば、冷却エリアには、基板1及び積層体10を支持するための支持点が形成されており、基板1及び積層体10の面の内周部を三点〜十点において支持点に支持させることにより、基板1及び積層体10全体の熱を効率よく逃がすことができる。
【0044】
(第二搬送手段)
第二搬送手段64は、冷却部66、ベークプレート61、スピンナー62、及び洗浄装置63の間で基板1を搬送する。また、第二搬送手段64は、図2における矢印方向に、第二搬送手段走行路65内を移動する。第二搬送手段64は、必要な処理が終了した後に次の処理を行なうために、基板1をそれぞれ所望の位置まで搬送する。
【0045】
(洗浄装置63)
洗浄装置63は、接着剤を塗布した基板を洗浄するためのものである。洗浄方法としては、例えば、端面又は裏面に接着剤が付着した基板1を3000rpmで回転させながら、洗浄液を端面又は裏面に塗布すればよい。洗浄液としては、接着剤を溶解させることができれば限定されず、例えば、接着剤層3を形成するために用いられる接着剤の希釈溶剤を用いることができる。
【0046】
〔本実施形態に係る貼付方法〕
次に、本実施形態に係る貼付方法について図1及び図2を用いて説明する。また、図1に示す通り、本実施形態に係る貼付方法は、基板1と上記基板1を支持するサポートプレート(支持体)2とを接着剤層3を介して貼り合わせ、プレート部材(押圧手段)30を用いて押圧する押圧工程(図1の(a)〜(c))と、上記押圧工程の後、上記接着剤層3を介して貼り合わせた上記基板1及び上記サポートプレート2を、上記押圧工程を行なう環境の気圧よりも高い気圧の環境下に置く気圧調整工程(図1の(f))と、を包含する。
【0047】
また、上記押圧工程の後、上記気圧調整工程を行なう気圧調整室54に、上記接着剤層3を介して貼り合わせた上記基板1及び上記サポートプレート2を搬送する搬送工程(図1の(e))を包含する。
【0048】
〔押圧工程〕
本実施形態に係る貼付方法が包含している押圧工程では、接着剤層3が形成された基板1及びサポートプレート2を、図2に示す積層体形成システム100に設けられた貼り付けユニット50の重ね合わせ室52において、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して貼り合わせ(図1の(a))、続いて接着剤層3を介して重ね合わせた基板1とサポートプレート2とを押圧室51に搬送し(図1の(b))、プレート部材30を用いて押圧する(図1の(c))。これにより、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して貼り付けた積層体10を形成する。
【0049】
(基板1)
図1の(a)に示すように基板1は、接着剤層3を介してサポートプレート2に貼り付けられる。基板1としては、例えば、ウエハ基板、セラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を使用することができる。また、一実施形態において、基板1における接着剤層3が形成される側の面には回路が形成されている。ここで、基板1に形成された回路が立体的である場合、基板1には凹凸などによる段差が形成されている。
【0050】
(接着剤層3)
接着剤層3は、基板1とサポートプレート2とを貼り付けるために用いられる。接着剤層を形成する方法は、スピンナー62により接着剤を基板1に塗布する方法に限定されない。接着剤層を形成する方法は、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法により形成してもよい。また、接着剤層3は、例えば、接着剤を直接、基板1に塗布する代わりに、接着剤が予め塗布されているフィルムを、基板1に貼付することで形成してもよい。接着剤層3は、基板1に塗布することによって形成してもよく、サポートプレート2に塗布することによって形成してもよい。
【0051】
接着剤層3の厚さは、貼り付けの対象となる基板1及びサポートプレート2の種類、貼り付け後の基板1に施される処理等に応じて適宜設定すればよいが、10〜150μmの範囲内であることが好ましく、15〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
【0052】
接着剤として、例えばアクリル系、ノボラック系、ナフトキノン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の、当該分野において公知の種々の接着剤が、本発明に係る接着剤層3を構成する接着剤として使用可能である。以下、本実施の形態における接着剤層3が含有する樹脂の組成について説明する。
【0053】
接着剤層3が含有する樹脂としては、接着性を備えたものであればよく、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂等、又はこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。
【0054】
接着剤のガラス転移温度(Tg)は、上記樹脂の種類や分子量、及び接着剤への可塑剤等の配合物によって変化する。上記接着剤に含有される樹脂の種類や分子量は、基板及び支持体の種類に応じて適宜選択することができるが、接着剤に使用する樹脂のTgは−60℃以上、200℃以下の範囲内が好ましく、−25℃以上、150℃以下の範囲内がより好ましい。接着剤に使用する樹脂のTgが−60℃以上、200℃以下の範囲内であることによって、冷却に過剰なエネルギーを要することなく、好適に接着剤層3の接着力を低下させることができる。また、接着剤層3のTgは、適宜、可塑剤や低重合度の樹脂等を配合することによって調整してもよい。
【0055】
ガラス転移温度(Tg)は、例えば、公知の示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定することができる。
【0056】
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、並びに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、これに限定されない。
【0057】
樹脂(A)としては、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂等が挙げられる。
【0058】
樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、テトラシクロペンタジエン等の七環体、又はこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)置換体、アルケニル(ビニル等)置換体、アルキリデン(エチリデン等)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチル等)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが好ましい。
【0059】
樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィン等が挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
【0060】
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィンモノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性及び溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
【0061】
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状又は分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性及び柔軟性の観点からは10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
【0062】
なお、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制する上で好ましい。
【0063】
単量体成分を重合するときの重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
【0064】
樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」及び「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」等が挙げられる。
【0065】
樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移温度が60℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着剤層3の軟化をさらに抑制することができる。
【0066】
樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族又は芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
【0067】
樹脂(B)の軟化点は特に限定されないが、80〜160℃であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。一方、樹脂(B)の軟化点が160℃以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好なものとなる。
【0068】
樹脂(B)の重量平均分子量は特に限定されないが、300〜3,000であることが好ましい。樹脂(B)の重量平均分子量が300以上であると、耐熱性が充分なものとなり、高温環境下において脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の重量平均分子量が3,000以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好なものとなる。なお、本実施形態における樹脂(B)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
【0069】
なお、樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合したものを用いてもよい。混合することにより、耐熱性及び剥離速度が良好なものとなる。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合としては、(A):(B)=80:20〜5545(質量比)であることが、剥離速度、高温環境時の熱耐性、及び柔軟性に優れるので好ましい。
【0070】
(アクリル−スチレン系樹脂)
アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン又はスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体として用いて重合した樹脂が挙げられる。
【0071】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐状であってもよい。
【0072】
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0073】
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0074】
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の鎖状又は分岐状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
【0075】
(マレイミド系樹脂)
マレイミド系樹脂としては、例えば、単量体として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等のアルキル基を有するマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の脂肪族炭化水素基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等のアリール基を有する芳香族マレイミド等を重合して得られた樹脂が挙げられる。
【0076】
例えば、下記化学式(1)で表される繰り返し単位及び下記化学式(2)で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを接着成分の樹脂として用いることができる。
【0077】
【化1】
【0078】
(化学式(2)中、nは0又は1〜3の整数である。)
このようなシクロオレフィンコポリマーとしては、APL 8008T、APL 8009T、及びAPL 6013T(全て三井化学株式会社製)等を使用することができる。
【0079】
(エラストマー)
エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましく、当該「スチレン単位」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。また、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であることがより好ましい。さらに、エラストマーは、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であることが好ましい。
【0080】
スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、後述する炭化水素系の溶剤に容易に溶解するので、より容易且つ迅速に接着剤層を除去することができる。また、スチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上記の範囲内であることにより、ウエハがレジストリソグラフィー工程に供されるときに曝されるレジスト溶剤(例えばPGMEA、PGME等)、酸(フッ化水素酸等)、アルカリ(TMAH等)に対して優れた耐性を発揮する。
【0081】
なお、エラストマーには、上述した(メタ)アクリル酸エステルをさらに混合してもよい。
【0082】
また、スチレン単位の含有量は、より好ましくは17重量%以上であり、また、より好ましくは40重量%以下である。
【0083】
重量平均分子量のより好ましい範囲は20,000以上であり、また、より好ましい範囲は150,000以下である。
【0084】
エラストマーとしては、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、種々のエラストマーを用いることができる。例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、及び、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SeptonV9461(株式会社クラレ製)、SeptonV9475(株式会社クラレ製))、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する、SeptonV9827(株式会社クラレ製))、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレンブロックコポリマー(SEEPS−OH:末端水酸基変性)等が挙げられる。エラストマーのスチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上述の範囲内であるものを用いることができる。
【0085】
また、エラストマーの中でも水添物がより好ましい。水添物であれば熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
【0086】
また、エラストマーの中でも両端がスチレンのブロック重合体であるものがより好ましい。熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示すからである。
【0087】
より具体的には、エラストマーは、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることがより好ましい。熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示す。さらに、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
【0088】
接着剤層3を構成する接着剤に含まれるエラストマーとして用いられ得る市販品としては、例えば、株式会社クラレ製「セプトン(商品名)」、株式会社クラレ製「ハイブラー(商品名)」、旭化成株式会社製「タフテック(商品名)」、JSR株式会社製「ダイナロン(商品名)」等が挙げられる。
【0089】
接着剤層3を構成する接着剤に含まれるエラストマーの含有量としては、例えば、接着剤組成物全量を100重量部として、50重量部以上、99重量部以下の範囲内が好ましく、60重量部以上、99重量部以下の範囲内がより好ましく、70重量部以上、95重量部以下の範囲内が最も好ましい。これら範囲内にすることにより、耐熱性を維持しつつ、ウエハと支持体とを好適に貼り合わせることができる。
【0090】
また、エラストマーは、複数の種類を混合してもよい。つまり、接着剤層3を構成する接着剤は複数の種類のエラストマーを含んでいてもよい。複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいればよい。また、複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内である、又は、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、本発明の範疇である。また、接着剤層3を構成する接着剤において、複数の種類のエラストマーを含む場合、混合した結果、スチレン単位の含有量が上記の範囲内となるように調整してもよい。例えば、スチレン単位の含有量が30重量%である株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSepton4033と、スチレン単位の含有量が13重量%であるセプトン(商品名)のSepton2063とを重量比1対1で混合すると、接着剤に含まれるエラストマー全体に対するスチレン含有量は21〜22重量%となり、従って14重量%以上となる。また、例えば、スチレン単位が10重量%のものと60重量%のものとを重量比1対1で混合すると35重量%となり、上記の範囲内となる。本発明はこのような形態でもよい。また、接着剤層3を構成する接着剤に含まれる複数の種類のエラストマーは、全て上記の範囲内でスチレン単位を含み、且つ、上記の範囲内の重量平均分子量であることが最も好ましい。
【0091】
なお、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて接着剤層3を形成することが好ましい。光硬化性樹脂以外の樹脂を用いることで、接着剤層3の剥離又は除去の後に、被支持基板の微小な凹凸の周辺に残渣が残ることを防ぐことができる。特に、接着剤層3を構成する接着剤としては、あらゆる溶剤に溶解するものではなく、特定の溶剤に溶解するものが好ましい。これは、基板1に物理的な力を加えることなく、接着剤層3を溶剤に溶解させることによって除去可能なためである。接着剤層3の除去に際して、強度が低下した基板1からでさえ、基板1を破損させたり、変形させたりせずに、容易に接着剤層3を除去することができる。
【0092】
(希釈溶剤)
接着剤層3を形成するときに使用する希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン等の環状炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
【0093】
(その他の成分)
接着剤層3を構成する接着剤は、本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、熱重合禁止剤及び界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
【0094】
本実施形態に係る貼付方法では、接着剤層3を形成した後、基板1上に形成された接着剤層3の外周部分の盛り上がり(エッジビード)よりも外側を除去してもよい。これによって、過剰に塗布された接着剤を除去することができる。このため、押圧工程において接着剤層3が積層体10の外周部分からはみ出し、サポートプレート2に過剰に付着することを防止することができる。また、基板1とサポートプレート2とを貼り合わせたときに接着剤層3が基板1の外周部分の端部まで覆うように接着剤層3を行き渡らせることができ、基板1に形成された段差部分を外部から密封することができる。
【0095】
基板1上における外周部分に形成された接着剤層3を除去する方法としては、公知の方法を用いればよく、特に限定されないが、例えば、接着剤層3の外周部分に対して溶剤をスプレーしてもよいし、ディスペンスノズルを用いて溶剤を供給してもよい。また、溶剤のスプレー、供給等は、基板1を回転させながら行なってもよい。
【0096】
なお、接着剤層3を溶解するための溶剤は、接着剤の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、上述した希釈溶剤として使用される溶剤を用いることができ、特に、直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、モノテルペン類、ジテルペン類等の環状の炭化水素(テルペン類)を好適に使用することができる。
【0097】
(接着フィルム)
接着剤層3を形成する方法は、塗布により形成する方法に限定されず、用途に応じて様々な利用形態を採用することができる。例えば、接着フィルム、すなわち、予め可撓性フィルムなどのフィルム上に接着剤を用いて接着剤層を形成した後、乾燥させておき、このフィルム(接着フィルム)を、被加工体に貼り付けて使用する方法(接着フィルム法)を用いてもよい。
【0098】
接着フィルムによって接着剤層3を形成する場合、例えば、接着剤層3を形成するための接着剤を用いてフィルム上に接着剤層を形成するとよい。
【0099】
接着フィルムは、接着剤層にさらに保護フィルムを被覆して用いてもよい。この場合には、接着剤層上の保護フィルムを剥離し、基板1又はサポートプレート2の上に露出した接着剤層を重ねた後、接着剤層から上記フィルムを剥離することによって基板1又はサポートプレート2の上に接着剤層3を容易に設けることができる。
【0100】
したがって、この接着フィルムを用いれば、基板1又はサポートプレート2の上に直接、接着剤を塗布して接着剤層3を形成する場合と比較して、膜厚均一性及び表面平滑性の良好な接着剤層を形成することができる。
【0101】
接着フィルムの製造に使用するフィルムとしては、フィルム上に製膜された接着剤層を当該フィルムから剥離することができ、接着剤層を基板やサポートプレートなどの被処理面上に転写できる離型フィルムであればよく、特に限定されるものではない。例えば、膜厚15〜125μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、及びポリ塩化ビニルなどの合成樹脂フィルムからなる可撓性フィルムが挙げられる。上記フィルムには、必要に応じて、転写が容易となるように離型処理が施されていることが好ましい。
【0102】
フィルム上に接着剤層を形成する方法としては、所望する接着剤層の膜厚や均一性に応じて適宜、公知の方法を用いて、フィルム上に接着剤層の乾燥膜厚が10〜1,000μmとなるように、接着剤を塗布する方法が挙げられる。
【0103】
また、保護フィルムを用いる場合、保護フィルムとしては、接着剤層から剥離することができる限り限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムが好ましい。また、各保護フィルムは、シリコンをコーティングまたは焼き付けしてあることが好ましい。接着剤層からの剥離が容易となるからである。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、15〜125μmが好ましい。保護フィルムを備えた接着フィルムの柔軟性を確保できるからである。
【0104】
接着フィルムの使用方法は、特に限定されるものではないが、例えば、保護フィルムを用いた場合には、これを剥離した上で、基板1又はサポートプレート2の上に露出した接着剤層を重ねて、フィルム上(接着剤層の形成された面の裏面)から加熱ローラを移動させることにより、接着剤層3を基板1又はサポートプレート2の表面に熱圧着させる方法が挙げられる。なお、限定されないが、接着フィルムを用いて接着剤層3を形成する場合、サポートプレート2側に接着剤層3を形成すれば、後の押圧工程及び気圧調整工程において基板1の段差に接着剤層3をより好適に追従させることができる。
【0105】
なお、接着フィルムから剥離した保護フィルムは、順次巻き取りローラなどのローラでロール状に巻き取れば、保存し再利用することが可能である。
【0106】
(サポートプレート2)
サポートプレート2は、基板1を支持する支持部材であり、基板1の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、基板1の破損又は変形を防止するために必要な強度を有していればよい。以上の観点から、サポートプレート、例えば、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂からなるものが挙げられる。
【0107】
ここで、基板とサポートプレートとの間には、貼り付けを妨げない限り、接着剤層以外の他の層がさらに形成されていてもよい。例えば、サポートプレートと接着剤層との間に、光を照射することによって変質する分離層が形成されていてもよい。分離層が形成されていることにより、基板の薄化、搬送、実装等のプロセス後に光を照射することで、基板とサポートプレートとを容易に分離することができる。
【0108】
(押圧条件)
以下に押圧工程の条件及び流れについて図1及び図2を用いて説明する。押圧工程は、貼り付けユニット50が備えている重ね合わせ部52及び押圧室51において行なわれる(図1の(a)〜(c)及び図2)。
【0109】
重ね合わせ部52及び押圧室51は、減圧手段によって押圧工程を行なう環境の気圧を調整されている。ここで、本実施形態では、重ね合わせ部52及び押圧室51において押圧工程を行なう環境の気圧は、0.1Pa以上、100kPa以下の範囲内であることが好ましく、0.1Pa以上、5kPa以下の範囲内であることがより好ましく、0.1Pa以上、1kPa以下の範囲内であることが最も好ましい。押圧工程を行なう環境の気圧が、0.1Pa以上、100kPa以下の範囲内であれば、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して貼り合わせるときに、接着剤層3とサポートプレート2との間に空気が入ることを好適に防止することができる。また、後の気圧調整工程を行なう環境の気圧を大気圧にすることができる。
【0110】
まず、図2に示す重ね合わせ室52の受け入れ窓42が開く。次に、第一搬送手段43が、スピンナー62及びベークプレート61において接着剤層3が形成された基板1と、サポートプレート2とを気圧を調整した重ね合わせ室52に搬入する(図1の(a))。次に、重ね合わせ室52の受け入れ窓42が閉じられる。
【0111】
次に、基板1とサポートプレート2とは、保持部40において検出された中心位置が重なるように、重ね合わせ室52の内部に設けられた位置調整部(不図示)を用いて位置を調整される。その後、基板1とサポートプレート2とは、接着剤層3を介して重ね合わされる。
【0112】
次に、図2に示すゲート41が開き、基板1とサポートプレート2と接着剤層3を介して重ね合せた積層体10は、内部搬送手段25によって押圧室51にゲート41を通じて搬送される。続いて、押圧室51の下部プレート部材30bに設けられたピン24が下に移動することによって、積層体10は下部プレート部材30bの上に戴置される(図1の(b))。続いて、ゲート41が閉じられる。その後、積層体10は、押圧室51において予備加熱される。
【0113】
ここで、積層体10を予備加熱するための温度は、40℃以上、300℃以下の範囲内であることが好ましい。これによって、接着剤層3の粘度を調整することができ、積層体10に押圧力を加えたときに接着剤層3を好適に流動させることができる。
【0114】
次に、プレート部材30が、上部プレート部材30a及び下部プレート部材30bに挟み込むようにして積層体10に押圧力を加える(図1の(c))。なお、積層体10をプレート部材30によって押圧している間の押圧室51の気圧は、重ね合わせ室52の気圧と同じ気圧に調整されている。
【0115】
本実施形態に係る貼付方法が包含している押圧工程では、上記接着剤層3を介して貼り合わせた上記基板1及び上記サポートプレート2を加熱する。これによって、接着剤層3に用いられる接着剤の粘度を調整することができる。つまり、接着剤層3の流動性を調整することができる。なお、プレート部材30のプレスプレート21は、ヒータ22によって加熱されている。これによって、接着剤層3は加熱される。
【0116】
ここで、押圧工程では、10Hzの周波数における動的粘度が1,000Pa・s以上、200,000Pa・s以下の範囲内になるように接着剤層3を加熱することがより好ましい。プレート部材30のプレスプレート21によって押圧力を加えることで、基板1とサポートプレート2との間に接着剤層3を迅速に流動させることができる。また、積層体10の厚さを均一にすることができる。つまり、厚さが均一な積層体10を迅速に形成することができる。
【0117】
また、押圧工程では、40℃以上、300℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層3を加熱することが好ましい。これによって、ガラス転移温度が高い接着剤を接着剤層3の形成に用いた場合でも、接着剤層3に好適な流動性を付与することができる。このため、ガラス転移温度が高い接着剤層3を用いて、厚さが均一な積層体10を形成することができる。
【0118】
押圧工程においてプレート部材30によって積層体10に加える押圧力は、接着剤層の種類、厚さ、及び粘度、並びに積層体の大きさ等を考慮して適宜調整すればよい。より具体的には、例えば、直径12インチの積層体であれば、押圧工程において少なくとも100kg以上の押圧力を加えることが好ましく、100kg以上、5000kg以下の押圧力を加えることがより好ましい。押圧工程では、積層体10の厚さが均一になるようにプレート部材30によって積層体10に加える押圧力を調整すればよい。また、基板1とサポートプレート2とを貼り付けたときに、積層体10の外周部分の端部にまで接着剤層3が行き渡るように積層体10に加える押圧力を調整することがより好ましい。これにより、基板1に形成された段差部分を、接着剤層3によって外部から密封することができる。
【0119】
〔搬送工程〕
本実施形態に係る貼付方法は、押圧工程の後、気圧調整工程を行なう気圧調整室54に、接着剤層3を介して貼り付けた積層体10を搬送する搬送工程を包含する(図1の(e))。これによって、押圧工程と気圧調整工程とを異なる場所において行なうことができる。
【0120】
図1の(d)は、プレート部材30の上部プレート部材30aが上部に移動し、ピン24が積層体10を持ち上げている状態を説明する図である。この時点において、気圧調整室54の気圧は、押圧室51と同じ、例えば真空条件に調整されている。
【0121】
まず、搬送工程では、押圧室51によって押圧力を加えられた積層体10は、ゲート41を通じて内部搬送手段25によって重ね合わせ室52に搬送される。次に、受け渡し窓42を通じて、積層体10は第一搬送手段43によって重ね合わせ室52から第一搬送手段走行路53に搬出される(図1の(e)及び図2)。その後、重ね合わせ室52の受け渡し窓42は閉じられる。
【0122】
次に、積層体10は、第一搬送手段43によって受け渡し窓(不図示)を通じて気圧調整室54のステージ31に戴置され、受け渡し窓が閉じられる。その後、重ね合わせ室52には、次に貼り合わせるための接着剤層を形成された基板及びサポートプレートが第一搬送手段43によって受け渡し窓42から搬入され、押圧工程が行なわれる。
【0123】
ここで、第一搬送手段走行路53は重ね合わせ室52及び気圧調整室54と同じ気圧に調整されている。このため、積層体10、基板及びサポープレートを搬送するときにおける重ね合わせ室52、気圧調整室54の気圧は同じ条件に維持される。従って、重ね合わせ室52及び押圧室51の気圧の変化させることなく、迅速に次の積層体を押圧することができる。また、当該押圧工程の間、先に気圧調整室54に搬送された積層体10に気圧調整工程を行なうことができる。つまり、押圧工程と気圧調整工程とを並行して行なうことで、多数の積層体を効率的に形成することができる。
【0124】
〔気圧調整工程〕
本実施形態に係る貼付方法は、押圧工程を行なう環境の気圧よりも高い気圧の環境下に積層体10を置く気圧調整工程を行なう(図1の(f))。
【0125】
上記構成によれば、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して貼り合わせた積層体10は、プレート部材30を用いて押圧された後、気圧調整工程において、サポートプレート2が基板1の段差に追従するように気圧によって押圧される。このため、基板1の段差部分にまで均一に接着剤層3を流動させることができる。従って、基板1の段差部分に接着剤層を十分に埋め込むことができ、貼り付け不良の発生を防ぐことができる。また、積層体10を、押圧手段によって全面的に押圧する場合と比較して、より効率的に基板1の段差部分に接着剤層3を埋め込むことができる。従って、貼り付け不良を防止しつつ、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して迅速に貼り付けることができる。
【0126】
図1の(f)は、気圧調整室54におけるステージ31に積層体10が戴置された状態を説明する図である。ここで、ステージ31には、ヒータ22が設けられている。これによって、積層体10を加熱することができるようになっている。また、気圧調整室54の気圧は、押圧室51における押圧工程を行なう環境の気圧である0.1Pa以上、5kPa以下の範囲内に調整されている。
【0127】
気圧調整工程では、気圧調整室54の内部の気圧を、押圧工程を行なう環境の気圧よりも高い環境下に置く。ここで、上記気圧調整工程によって上記基板1及び上記サポートプレート2が置かれる環境の気圧と上記押圧工程を行なう環境の気圧との気圧差は、100Pa以上、500kPa以下の範囲内であることが好ましく、1kPa以上、500kPa以下の範囲内であることがより好ましく、10kPa以上、500kPa以下の範囲内であることが最も好ましい。気圧調整工程において基板1及びサポートプレート2が置かれる環境の気圧と押圧工程を行なう環境の気圧との気圧差が、100Pa以上、500kPa以下の範囲内であれば、サポートプレート2が基板1の段差に追従するように気圧によって好適に押圧される。このため、基板1の段差部分にまで十分に接着剤層3を埋め込むことができる。
【0128】
また、押圧工程において、接着剤層3によって基板1の端部に形成された段差部分を外部から密封していれば、気圧調整工程において積層体10が置かれる環境の気圧を高くすることで、基板1の端部においても接着剤層3が段差部分に向かって押圧される。従って、基板1の端部に形成された段差部分にまで十分に接着剤層3を埋め込むことができる。
【0129】
また、本実施形態に係る貼付方法が包含している気圧調整工程では、上記気圧調整工程によって上記基板1及び上記サポートプレート2が置かれる環境の気圧は、大気圧であることが好ましい。気圧調整室54の真空条件を開放することで気圧調整室54の気圧は大気圧に調整される。つまり、気圧調整室54の気圧を大気圧にすることによって、押圧工程を行なう環境の気圧よりもより高い気圧の環境下に積層体10を置くことを簡便に行なうことができる。
【0130】
また、本実施形態が包含している気圧調整工程では、上記接着剤層3を介して貼り合わせた上記基板1及び上記サポートプレート2を加熱する。これによって、気圧調整工程においても、接着剤層3に用いられる接着剤の粘度を調整し、接着剤層3の流動性を向上させることができる。このため、より迅速に積層体10における基板1の段差部分に接着剤層3を埋め込むことができる。
【0131】
ここで、本実施形態が包含している気圧調整工程では、10Hzの周波数における動的粘度が1,000Pa・s以上、200,000Pa・s以下の範囲内になるように接着剤層3を加熱することが好ましく、1,000Pa・s以上、100,000Pa・s以下の範囲内になるように接着剤層3を加熱することがより好ましく、1,000Pa・s以上、50,000Pa・s以下の範囲内になるように接着剤層3を加熱することが最も好ましい。10Hzの周波数における動的粘度が1,000Pa・s以上、200,000Pa・s以下の範囲内になるように接着剤層3を加熱することによって、接着剤層3により好適な流動性を付与することができる。このため、気圧調整工程において、気圧によりサポートプレート2を基板1の段差に追従するように押圧することで、基板1の段差部分を埋め込むように接着剤層3を迅速に流動させることができる。また、ガラス転移温度が高い接着剤層であっても、流動性を付与することができる。従って、貼り付け不良を防止しつつ、基板1とサポートプレート2とをガラス転移温度が高い接着剤層3を介して迅速に貼り付けることができる。
【0132】
また、本実施形態が包含している気圧調整工程では、40℃以上、300℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層3を加熱することが好ましく、80℃以上、280℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層3を加熱することがより好ましく、120℃以上、260℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層3を加熱することが最も好ましい。気圧調整工程において40℃以上、300℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層3を加熱することで、ガラス転移温度が高い接着剤層3を1,000Pa・s以上、200,000Pa・s以下の範囲内になるように調整することができる。このため、接着剤層3に好適な流動性を付与することができる。従って、ガラス転移温度が高い接着剤層3を基板1の段差部分に埋め込むことができる。
【0133】
ここで、ガラス転移温度が高い接着剤層3を備えた積層体10は、耐熱性が高い。このため、基板1に所望の処理を行なうときに、熱により基板1とサポートプレート2とが分離することを防止することができる。つまり、本実施形態(第1の実施形態)に係る貼付方法によれば、積層体10を貼り付け不良を防止しつつ、迅速に形成することができるのみならず、耐熱性が高い積層体をも貼り付け不良を防止しつつ、迅速に形成することができる。
【0134】
(その他の工程)
気圧調整工程を行なった後、積層体10は第一搬送手段43によって気圧調整室54から搬出される。続いて、積層体10は、冷却部66において冷却される。その後、積層体10は、第一搬送手段43によってキャリアステーション60に搬送される。なお、任意の工程として、積層体10を冷却した後、厚み分布測定装置67によって積層体10の厚みを測定し、品質管理及び異常の検出を行なってもよい。
【0135】
〔変形例1〕
本実施形態(第1の実施形態)に係る貼付方法は、上記の実施形態に限定されない。例えば、変形例1として搬送工程を行なわない実施形態を挙げることができる。
【0136】
変形例1に係る貼付方法では、押圧工程を行なった後(図1の(a)〜(c))、積層体10を形成した押圧室51において気圧調整工程を行なう(図1の(g))。
【0137】
なお、図1の(a)〜(c)に示す通り、変形例1に係る貼付方法では、第1の実施形態に係る貼付方法と同じ条件によって押圧工程を行なうとよい。その後、押圧室51において気圧調整工程を行なう。
【0138】
まず、貼付装置は、プレート部材30における上部プレート部材30aを上部に移動させ、積層体10への押圧を終了させる(図1の(d))。次いで、積層体10は、下部プレート部材30bの上に戴置される。ここで、押圧室51の内部の気圧は、押圧工程を行なったときの気圧が維持されている。また、下部プレート部材30bは、ヒータ22によって加熱されている。その後、押圧室51において、気圧調整工程を行なう(図1の(g))。なお、気圧調整工程における気圧及び加熱などの条件は、第1の実施形態における気圧調整工程と同じ条件下で行なうとよい。
【0139】
なお、気圧調整工程は、一例として、貼り付けユニット50の重ね合わせ室52において行なってもよい。
【0140】
<第2の実施形態>
本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る貼付方法について、図1を用いて説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0141】
本実施形態においては、押圧工程を行なう環境の気圧を維持しつつ、押圧工程の後に、積層体を加熱する加熱工程を行なう。
【0142】
図1に示す通り、本実施形態(第2の実施形態)に係る貼付方法は、基板1と上記基板1を支持するサポートプレート(支持体)2とを接着剤層3を介して貼り合わせ、プレート部材30を用いて押圧する押圧工程(図1の(a)〜(c))と、上記押圧工程の後、上記接着剤層3を介して貼り合わせた上記基板1及び上記サポートプレート2を加熱する加熱工程(図1の(f))と、を包含する。
【0143】
上記構成によれば、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して貼り合わせた積層体10は、プレート部材30を用いて押圧された後、加熱工程において接着剤層3の流動性を好適に維持することができる。これによって、基板1の段差部分にまで均一に接着剤層3を流動させることができる。従って、基板1の段差部分に接着剤層3を十分に埋め込むことができ、貼り付け不良の発生を防ぐことができる。また、接着剤層3の流動性が好適に維持されるため、より効率的に基板1の段差部分に接着剤層3を埋め込むことができる。従って、貼り付け不良を防止しつつ、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して迅速に貼り付けることができる。
【0144】
また、上記押圧工程の後、上記加熱工程を行なう気圧調整室(加熱室)54に、上記接着剤層3を介して貼り合わせた上記基板1及び上記サポートプレート2を搬送する搬送工程(図1の(e))を包含する。
【0145】
なお、図1の(a)〜(c)に示す通り、本実施形態に係る貼付方法では、第1の実施形態に係る貼付方法と同じ条件によって押圧工程を行なう。その後、搬送工程を経て、加熱工程を行なう。
【0146】
〔搬送工程〕
本実施形態に係る貼付方法は、押圧工程の後、加熱工程を行なう気圧調整室(加熱室)54に、接着剤層3を介して貼り付けた積層体10を搬送する搬送工程を包含する。これによって、押圧工程と加熱工程とを異なる場所において行なうことができる。
【0147】
なお、本実施形態における搬送工程は押圧室51から気圧調整室(加熱室)54に積層体10を搬送する工程であり、第1の実施形態と同じ動作を行なう。これによって、第1の実施形態と同様に、押圧工程と加熱工程とを並行して行なうことができる。従って、多数の積層体を効率的に形成することができる。
【0148】
〔加熱工程〕
図1の(f)に示す通り本実施形態に係る貼付方法は、押圧工程の後、基板1とサポートプレート2とを接着剤層3を介して貼り合わせた積層体10を加熱する加熱工程を包含する。
【0149】
図1の(f)は、気圧調整室(加熱室)54におけるステージ31に積層体10が戴置された状態を説明する図である。なお、加熱工程は、第1の実施形態における気圧調整室54を加熱室54として用いる。
【0150】
ここで、加熱室54のステージ31には、ヒータ22が設けられている。これによって、積層体10を加熱することができるようになっている。また、加熱室54の気圧は、押圧室51における押圧工程を行なう環境の気圧である0.1Pa以上、5kPa以下の範囲内に調整されている。なお、本実施形態においては、押圧工程における真空条件を維持した状態において、加熱工程を行なう。
【0151】
ここで、本実施形態に係る貼付方法が包含している加熱工程では、10Hzの周波数における動的粘度が1,000Pa・s以上、200,000Pa・s以下の範囲内になるように接着剤層3を加熱することが好ましく、1,000Pa・s以上、100,000Pa・s以下の範囲内になるように接着剤層3を加熱することがより好ましく、1,000Pa・s以上、50,000Pa・s以下の範囲内になるように接着剤層3を加熱することが最も好ましい。10Hzの周波数における動的粘度が1,000Pa・s以上、200,000Pa・s以下の範囲内になるように接着剤層3を加熱することによって、接着剤層3により好適な流動性を付与することができる。また、ガラス転移温度が高い接着剤層であっても、流動性を付与することができる。従って、貼り付け不良を防止しつつ、基板1とサポートプレート2とをガラス転移温度が高い接着剤層3を介して迅速に貼り付けることができる。
【0152】
また、本実施形態が包含している加熱工程では、40℃以上、300℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層3を加熱することが好ましく、80℃以上、280℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層3を加熱することがより好ましく、120℃以上、260℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層3を加熱することが最も好ましい。気圧調整工程において40℃以上、300℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層3を加熱することで、ガラス転移温度が高い接着剤層3を1,000Pa・s以上、200,000Pa・s以下の範囲内になるように調整することができる。このため、接着剤層3に好適な流動性を付与することができる。従って、ガラス転移温度が高い接着剤層3を基板1の段差部分に埋め込むことができる。
【0153】
ここで、ガラス転移温度が高い接着剤層3を備えた積層体10は、耐熱性が高い。このため、基板1に所望の処理を行なうときに、熱により基板1とサポートプレート2とが分離することを防止することができる。つまり、本実施形態(第2の実施形態)に係る貼付方法によれば、積層体10を貼り付け不良を防止しつつ、迅速に形成することができるのみならず、耐熱性が高い積層体をも貼り付け不良を防止しつつ、迅速に形成することができる。
【0154】
なお、本実施形態の貼付方法が包含している加熱工程において、押圧工程を行なう環境の気圧よりも高い気圧の環境下に積層体10を置くように気圧の調整を行なえば、第1の実施形態に係る貼付方法になることは言うまでもない。
【0155】
〔変形例2〕
本実施形態(第2の実施形態)に係る貼付方法は、上記の実施形態に限定されない。例えば、変形例2として搬送工程を行なわない実施形態を挙げることができる。
【0156】
変形例2に係る貼付方法では、押圧工程を行なった後(図1の(a)〜(c))、積層体10を形成した押圧室51において加熱工程を行なう(図1の(g))。
【0157】
なお、図1の(a)〜(c)に示す通り、変形例2に係る貼付方法では、第1の実施形態に係る貼付方法と同じ条件によって押圧工程を行なうとよい。その後、押圧室51において加熱工程を行なう。
【0158】
まず、貼付装置は、プレート部材30における上部プレート部材30aを上部に移動させ、積層体10への押圧を終了させる(図1の(d))。次いで、積層体10は、下部プレート部材30bの上に戴置される。ここで、押圧室51の内部の気圧は、押圧工程を行なったときの気圧が維持されている。また、下部プレート部材30bは、ヒータ22によって加熱されている。その後、押圧室51において、加熱工程を行なう(図1の(g))。なお、加熱工程における気圧及び加熱などの条件は、第2の実施形態と同じ条件下で行なうとよい。
【0159】
本明細書には、以下の発明も記載されている。
【0160】
本発明の一実施形態に係る貼付方法は、基板と上記基板を支持する支持体とを接着剤層を介して貼り合わせ、押圧手段を用いて押圧する押圧工程と、上記押圧工程の後、上記接着剤層を介して貼り合わせた上記基板及び上記支持体を加熱する加熱工程と、を包含する。
【0161】
上記構成によれば、基板と支持体とを接着剤層を介して貼り合わせた積層体は、押圧手段を用いて押圧された後、加熱工程において接着剤層の流動性を好適に維持することができる。これによって、基板の段差部分にまで均一に接着剤組成物を流動させることができる。従って、基板の段差部分に接着剤層を十分に埋め込むことができ、貼り付け不良の発生を防ぐことができる。また、接着剤層の流動性が好適に維持されるため、より効率的に基板の段差部分に接着剤層を埋め込むことができる。従って、貼り付け不良を防止しつつ、基板と支持体とを接着剤層を介して迅速に貼り付けることができる。
【0162】
本発明の一実施形態に係る貼付方法が包含している上記加熱工程では、10Hzの周波数における動的粘度が1,000Pa・s以上、200,000Pa・s以下の範囲内になるように上記接着剤層を加熱することが好ましい。
【0163】
上記構成によれば、接着剤層により好適な流動性を付与することができる。このため、基板の段差を埋め込むように接着剤層を迅速に流動させることができる。また、ガラス転移温度が高い接着剤層であっても、流動性を付与することができる。従って、貼り付け不良を防止しつつ、基板と支持体とをガラス転移温度が高い接着剤層を介して迅速に貼り付けることができる。
【0164】
本発明の一実施形態に係る貼付方法が包含している上記加熱工程では、40℃以上、300℃以下の範囲内の温度となるように上記接着剤層を加熱することが好ましい。
【0165】
上記構成によれば、ガラス転移温度が高い接着剤層を1,000Pa・s以上、200,000Pa・s以下の範囲内になるように調整することができる。このため、接着剤層に好適な流動性を付与することができる。従って、ガラス転移温度が高い接着剤層を基板の段差部分に埋め込むことができる。
【0166】
本発明の一実施形態に係る貼付方法が包含している上記加熱工程では、上記接着剤層を介して貼り合わせた上記基板及び上記支持体を、上記押圧工程を行なう環境の気圧よりも高い気圧の環境下に置くとよい。
【0167】
上記構成によれば、基板と支持体とを接着剤層を介して貼り合わせた積層体は、支持体が基板の段差に追従するように気圧によって押圧される。このため、基板の段差部分にまで均一に接着剤層を流動させることができる。従って、基板の段差部分に接着剤層を十分に埋め込むことができる。
【0168】
本発明の一実施形態に係る貼付方法では、上記加熱工程において上記基板及び上記支持体が置かれる環境の気圧と上記押圧工程を行なう環境の気圧との気圧差は、100Pa以上、500kPa以下の範囲内であることが好ましい。
【0169】
上記構成によれば、加熱工程において支持体が基板の段差に追従するように気圧によって好適に押圧される。このため、基板の段差部分にまで十分に接着剤層を埋め込むことができる。
【0170】
本発明の一実施形態に係る貼付方法では、上記押圧工程を行なう環境の気圧は、0.1Pa以上、5kPa以下の範囲内であることが好ましい。
【0171】
上記構成によれば、接着剤層が発泡することを抑制しつつ、基板と支持体とを接着剤層を介して貼り付けることができる。
【0172】
本発明の一実施形態に係る貼付方法では、上記加熱工程において上記基板及び上記支持体が置かれる環境の気圧は、大気圧であることが好ましい。
【0173】
上記構成によれば、加熱室の真空条件を開放することで加熱室の気圧は大気圧に調整される。つまり、加熱室の気圧を大気圧にすることによって、押圧工程を行なう環境の気圧よりも、より高い気圧の環境下に積層体を置くことを簡便に行なうことができる。
【0174】
本発明の一実施形態に係る貼付方法では、上記押圧工程の後、上記加熱工程を行なう加熱室に、上記接着剤層を介して貼り合わせた上記基板及び上記支持体を搬送する搬送工程を包含するとよい。
【0175】
上記構成によれば、押圧工程と加熱工程とを並行して行なうことで、多数の積層体を効率的に形成することができる。
【0176】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0177】
〔接着剤組成物の調製〕
まず、実施例1〜12及び比較例1〜6に使用した接着剤組成物A〜Dの調製を行なった。各接着剤組成物に使用した樹脂、添加剤、主溶剤及び添加溶剤を、以下の表1に示す。
【0178】
接着剤組成物A〜Dに用いた樹脂は、三井化学株式会社製のAPEL(商品名)のAPEL8008T(シクロオレフィンコポリマー;エチレン−テトラシクロドデセンのコポリマー、Mw=100,000、Mw/Mn=2.1、エチレン:シクロドデセン=80:20(モル比))、株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSeptonV9827(SEBS:スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー)、Septon2002(SEPS:スチレン−イソプレン−スチレンブロック)、ポリプラスチック株式会社製のTOPAS(商品名)TM(シクロオレフィンコポリマー;エチレン−ノルボルネンのコポリマー、Mw=10,000、Mw/Mn=2.08、ノルボルネン:エチレン=50:50(重量比))、旭化成株式会社製のタフテック(商品名)H1051(SEBS;水添スチレン系熱可塑性エラストマー;スチレン含有量42%、Mw=78,000)である。
【0179】
さらに、接着剤組成物B〜Dでは、アクリル系樹脂として、A2(Mw=10,000)を用いた。
【0180】
A2は、下記の構造を有するランダム重合体である(式中、l/m/n=60/20/20(重量比))。
【0181】
【化2】
【0182】
また、熱重合禁止剤(添加剤)としては、BASF社製の「IRGANOX(商品名)1010」を用いた。また、主溶剤としては、デカヒドロナフタレンを用いた。また、添加溶剤として、酢酸ブチルを用いた。
【0183】
まず、上述した樹脂、添加剤、主溶剤及び添加溶剤を用いて、接着剤組成物Aを調製した。具体的には、デカヒドロナフタレン100重量部に対して酢酸ブチル15重量部を配合した溶剤に、100重量部のAPEL8008T(三井化学株式会社製)を25重量%濃度で溶解させ、添加剤としてIRGANOX1重量部、及び、添加溶剤として酢酸ブチル15重量部を添加して接着剤組成物Aを調製した。他にも、上述した樹脂、添加剤、主溶剤及び添加溶剤を用いて、接着剤組成物B〜Dをそれぞれ調製した。接着剤組成物A〜Dの組成を以下の表1に示す。
【0184】
【表1】
【0185】
〔動的粘度の測定〕
上記接着剤層A〜Dを用いて形成した接着剤層を加熱しつつ、動的粘度を測定し、各接着剤層の動的粘度と温度との関係を求めた。
【0186】
調製した接着剤組成物A〜Dを、離型剤付のPETフィルムに塗布し、大気圧下のオーブンで100℃、160℃で各60分間焼成して接着剤層を形成した。次に、PETフィルムから剥がした接着剤層の動的粘度(η)を、動的粘度測定装置(Reogel−E4000、株式会社ユービーエム製)を用いて測定した。測定条件を、サンプル形状が厚さ0.5mm及び20mm角、並びにスリットせん断を用いて、周波数10Hzのせん断条件において、150℃から275℃まで、速度5℃/分で昇温する条件とし、動的粘度を測定した。接着剤組成物A〜Dを用いて形成した接着剤層の動的粘度と温度との関係は、図3に示す通りである。
【0187】
図3に示す通り、接着剤組成物A〜Dを用いて形成された接着剤層は、177℃〜207℃に加熱されることによって動的粘度が10,000Pa・sよりも低くなる傾向を示した。ここで、動的粘度が10,000Pa・sであるときの、接着剤組成物A〜Dの温度を用いて形成した接着剤層の温度は、以下の表2に示す通りである。
【0188】
【表2】
【0189】
表2に示す動的粘度が10,000Pa・sであるときの接着剤組成物A〜Dの温度の結果に基づき、各接着剤組成物におけるプレス時の温度及び大気圧ベーク時における温度を設定し、以下の貼付評価を行なった。
【0190】
〔貼付評価〕
以下の表3に示す条件で、実施例1〜12の積層体、及び比較例1〜6の積層体を作製し、それぞれの積層体について貼り付け不良の有無を評価した。
【0191】
(実施例1〜7の積層体の作製)
実施例1〜7では、ベアシリコンを基板として用いて積層体を作製した。
【0192】
まず、以下に示す手順に従い、実施例1の積層体を作製した。実施例1では、半導体ウエハ基板(12インチ、ベアシリコン)に接着剤組成物Aをスピン塗布し、90℃、160℃、220℃の温度で各4分間ベークし、接着剤層を形成した(膜厚50μm)。
【0193】
続いて、当該半導体ウエハ基板を回転させながら、EBRノズルによってTZNR(登録商標)HCシンナー(東京応化工業株式会社製)20cc/minの供給量で供給することによって、半導体ウエハ基板上のエッジビード(ウエハ周縁部の接着剤層の盛り上がり部分)よりも外側に形成された接着剤層を除去した。これによって、半導体ウエハ基板とベアガラス支持体とを接着剤層を介して貼り合わせたときに、接着剤層が基板の外周部分の端部にまで行き渡り、当該接着剤層がはみ出さないように予め接着剤層の調整を行なった。
【0194】
その後、真空下(<10Pa)において、押圧温度を180℃、押圧力を1000kgとした条件で60秒間、ベアのガラス支持体(12インチ)と前記ウエハ基板とを貼り合わせ、積層体を作製した(押圧工程)。次いで、押圧を開放し、真空条件を開放することによって大気圧にし、当該積層体を、180℃、120秒間の条件でベークした(気圧調整工程)。なお、表3の気圧調整工程における部屋の欄は、図2における重ね合わせ室52又は気圧調整室54のいずれにおいて気圧調整工程を行なったかを示している。
【0195】
その後、実施例1と同じ手順に従い、表3に示す条件で実施例2〜7の積層体を作製した。
【0196】
(実施例8〜10の積層体の作製)
実施例8〜10では、接着剤層として表1に示す接着剤組成物を用い、回路(パターン)による段差が形成されたシリコン基板(以下、「段差基板」とする)を用いて積層体を作製した。当該基板には、段差として、ライン幅が1mmの格子状の凹部が形成されており、格子状の凹部に囲まれた部分の内側には直径0.2mmの円柱状の凸部が形成されたものを用いた。また、基板の段差の高さは20μmであった。
【0197】
まず、以下に示す手順に従い、実施例8の積層体を作製した。実施例8では、ベアのガラス支持体(12インチ)に接着剤組成物Bをスピン塗布し、90℃、160℃、220℃の温度で各4分間ベークすることで接着剤層を形成した(膜厚50μm)。
【0198】
続いて、ガラス支持体を回転させながら、EBRノズルによってTZNR(登録商標)HCシンナー(東京応化工業株式会社製)20cc/minの供給量で供給することによって、ガラス支持体上のエッジビードよりも外側に形成された接着剤層を除去し、実施例1の場合と同様に接着剤層の調整を行なった。
【0199】
その後、基板の段差が形成された面が接着剤層に接するように前記段差基板とガラス支持体とを貼り合わせ、表3に示す条件で押圧工程及び気圧調整工程を行なった。
【0200】
その後、実施例8と同じ手順に従い、表3に示す条件で、実施例9〜10の積層体を作製した。
【0201】
(実施例11及び12の積層体の作製)
実施例11及び12では、接着フィルムを用いて接着剤層を形成し、前記段差基板を用いて積層体を作製した。
【0202】
まず、表1に示す接着剤組成物Bの25℃での粘度を、主溶剤等を用いて10,000cPに調整した。粘度調整後の接着剤組成物Bを、株式会社ラボ製の塗工機CAG−750を用いて東レ株式会社製のPETフィルム(商品名:ルミラーS10(厚さ100um))(ベースフィルム)に、ロールtoロール方式であるウェットコーティング(スロットダイ)方式で、塗工速度1m/minで500mm幅に塗布した。その後、150℃の乾燥炉を通過させて乾燥させることにより、接着剤層の厚さが50umの接着フィルムBを得た。次いで、接着剤層の露出面にポリエチレン保護フィルム(カバーフィルム)を重ねてロール状に巻き取り、上記接着フィルムを保管が容易なロール状とした。同様に、表1に示す接着剤組成物Dを用いて接着剤層の厚さが50umの接着フィルムDを得て、ロール状とした。
【0203】
次に、以下の手順に従い、実施例11の積層体を作製した。実施例11では、ベアのガラス支持体に、接着フィルムBにおけるカバーフィルムを剥がした面を重ね、ラミネーターを用いて100℃、0.2MPa、0.5m/minの条件で接着剤層をラミネートした。続いて、ベースフィルムを剥がすことで、ガラス支持体上に膜厚50μmの接着剤層を形成した。続いて、実施例8〜9に用いたものと同様の段差基板の段差が形成された面が接着剤層に接するように、基板とガラス支持体とを貼り合わせた。その後、表3に示す条件で押圧工程及び気圧調整工程を行なった。
【0204】
その後、実施例11と同じ手順に従い、表3に示す条件で、実施例12の積層体を作製した。なお、実施例12では、接着フィルムDを用いて積層体を作製した。
【0205】
(実施例の評価)
実施例1〜12の積層体に対して、それぞれのウエハ基板の裏面をDISCO社製バックグラインド装置にて薄化(50μm)処理し、220℃、10分間の真空加熱処理を行ない、接着剤層の内部において発泡していないか(泡が発生していないか)を評価した。評価結果は、以下の表3に示す通りである。
【0206】
【表3】
【0207】
表3に示す通り、大気圧ベーク(気圧調整工程)を行なった実施例1〜12の積層体は、大気圧ベークを行なうことによって、微小な貼り付け不良の発生を防止することができることが認められた(◎)。これら実施例のうち、実施例1〜10では、ベアシリコンを基板として用いた場合及び段差が形成されたシリコンを基板として用いた場合のいずれにおいても、基板の端部まで接着剤層に覆われており、貼付不良が発生していないことが認められた。接着フィルムを用いて接着剤層を形成した実施例11及び12においても、基板の周縁部分の内側において微小な貼り付け不良が発生していないことが認められ、十分に貼付不良の発生を防止できることが認められた。
【0208】
また、表3に示す通り、実施例1〜12の積層体は、重ね合わせ室52において気圧調整工程を行なった場合、及び搬出工程を経て気圧調整室54において気圧調整工程を行なった場合のいずれにおいても、微小な貼り付け不良の発生を防止することができることが認められた。また、実施例1〜12の積層体では、ウエハ基板の裏面をバックグラインド装置にて薄化処理し、220℃、10分間の真空加熱処理を行なっても、接着剤層の内部において発泡していないことが認められた。
【0209】
(比較例1〜6)
次いで、上記接着剤組成物A〜Dを用いて以下の条件において気圧調整工程を行なわない比較例1〜6の積層体を作製し、それぞれの積層体について貼り付け不良の有無を評価した。なお、比較例1〜6では、実施例1〜10と同じ条件で接着剤層の形成を行なった。押圧工程などの条件は以下の表4に示す通りである。また、表4に貼り付け不良の有無についての評価結果も示す。
【0210】
【表4】
【0211】
表4に示す通り、大気圧ベークを行なっていない比較例1〜6では、基板の種類に関わらず、12インチのベアのガラス支持体と接着剤層との間に貼り付け不良が発生していた(×)。
【0212】
図4の(a)及び(b)を用いて、実施例4と比較例4とにおける積層体の状態を説明する。図4の(a)は、実施例4の積層体をガラス支持体側から見た状態を説明する図であり、図4の(b)は、実施例4の条件と比較して、気圧調整工程を行なっていない以外は同じ条件である比較例4の積層体をガラス支持体側から見た状態を説明する図である。
【0213】
図4の(b)に示す通り、ガラス支持体の内側に示す実線部に微小な発泡を伴う貼り付け不良が認められた。この微小な発泡は、接着剤層の厚さがある領域に発生したと判断される。これに対して、気圧調整工程を行なった実施例4の積層体において微小な発泡は消失しており、貼り付け不良は認められなかった(図4の(a))。
【0214】
従って、上記の結果から、接着剤層を形成するために接着剤組成物及び接着フィルムのいずれを用いた場合であっても、押圧工程の後、気圧調整工程を行なうことによって、基板とサポートプレートとの貼り付け不良を防止することができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明は、例えば、微細化された半導体装置の製造工程において広範に利用することができる。
【符号の説明】
【0216】
1 基板
2 サポートプレート(支持体)
3 接着剤層
30 プレート部材(押圧手段)
54 気圧調整室(加熱室)
図1
図2
図3
図4