【実施例】
【0030】
本実施例による真空処理装置について
図1を用いて説明する。
図1は、本実施例による真空処理装置の構成の概略を示す上面図である。
【0031】
図1に示す真空処理装置100は、プラズマ処理装置であって、紙面上方側に示す真空側ブロック101と、紙面下方側に示す大気側ブロック102とに大別される。
【0032】
大気側ブロック102は、カセット109a,109bが載置されるカセット載置台108と、大気側搬送容器107とを有している。カセット109a,109bの内部には、真空処理装置100において処理対象となる被処理膜がその主面上に形成されたウエハを複数枚収納することができる。大気側搬送容器107の内部には、カセット109a,109bの内部に収納されたウエハが搬送される空間である搬送室が配置される。
【0033】
真空側ブロック101は、中心部に配置された真空側搬送容器105と、真空側搬送容器105の多角形の各辺に相当する側壁に取り付けられて、これに連結された複数の真空容器とを有している。真空側搬送容器105の2つの側壁には、それぞれエッチング処理ユニット103a,103bが配置されており、エッチング処理ユニット103a,103bの内部には、ウエハの主面上に形成された被処理膜がエッチング処理される処理室が備わっている。また、真空側搬送容器105の他の1つの側壁には、吸着処理装置104が配置されており、その内部において、ウエハの主面上に形成された被処理膜の表面に、剥離のための表面層を形成することができる。また、真空側搬送容器105と吸着処理装置104との間には、ガス供給装置111および脱離処理装置110が互いに隣接して配置されており、吸着処理装置104、脱離処理装置110、ガス供給装置111および真空側搬送容器105の順に併設されている。真空側搬送容器105と吸着処理装置104との間を、ウエハは真空中で搬送される。
【0034】
大気側搬送容器107と真空側搬送容器105との間には、大気−真空間でウエハのやりとりをするための真空容器であるロードロック室106aおよびアンロードロック室106bが配置されている。
【0035】
上記真空処理装置100の構成により、パターン倒れ、あるいは異物または金属汚染物質の被処理膜への再付着を抑制することのできるドライ洗浄を提供することができる。
【0036】
次に、本実施例によるドライ洗浄方法について
図2〜
図5を用いて説明する。
図2は、本実施例による真空処理装置の一部(真空側搬送容器105、ガス供給装置111、脱離処理装置110および吸着処理装置104)を示す断面図である。
図3は、本実施例による真空処理装置の一部(真空側搬送容器105、ガス供給装置111、脱離処理装置110および吸着処理装置104)を示す上面図である。
図4は、本実施例による真空処理装置の一部(ガス供給装置111および脱離処理装置110)を示す断面図である。
図5は、本実施例によるドライ洗浄方法の一例を示す工程図である。
【0037】
図2に示すように、本実施例によるドライ洗浄は、真空側搬送容器105と、ガス供給装置111と、脱離処理装置110と、吸着処理装置104とによって実施される。また、本実施例によるドライ洗浄は、吸着処理装置104で処理した後、被処理膜がその主面上に形成されたウエハ209を搬送装置、例えば搬送ワンド212に載置し、吸着処理装置104から脱離処理装置110、ガス供給装置111および真空側搬送容器105へウエハ209を搬送する状態で実施される。搬送ワンド212はウエハ209を載置することができればよいが、機械的または電気的に固定しておくことが望ましい。ウエハ209を搬送する速度は、除去の対象となる異物の大きさまたは金属汚染物質の種類に応じて設定される。
【0038】
吸着処理装置104は、処理室206と、ラジカル供給源207とに大別され、処理室206とラジカル供給源207との間は分散板208によって隔てられている。分散板208は、ラジカル供給源207で生成した活性化されたラジカルをウエハ209上へ均一に供給するために設けられている。分散板208の材質は、ラジカル供給源207で生成したラジカルの死滅率の低いものがよく、例えば石英(SiO
2)または酸化処理が施されたアルミニウム(Al)がこれに該当する。
【0039】
ラジカル供給源207もまた、石英(SiO
2)または酸化処理などの表面処理が施されたアルミニウム(Al)を材質とする容器により構成される。この容器に所定のガスを所定の流量で導入し、所定の圧力下において所定の電力を印加することにより、ラジカル供給源207の内部でプラズマを生成し、このプラズマからのガス流れによって活性化されたラジカル種を、ウエハ209上に供給することができる。
【0040】
ラジカル発生源としては、直流放電、高周波放電(容量結合型または誘電結合型)あるいはマイクロ波放電などの各種プラズマ源が使用可能であるが、放電による不純物の混入が低い点から、誘電結合型高周波放電またはマイクロ波放電といった無電極放電形式が好ましい。
【0041】
処理室206には、ウエハ209が吸着可能なウエハ載置用電極205が設けられており、ウエハ209の主面上に形成された被処理膜にラジカルが均一に付着し、ウエハ面内で均一な剥離のための表面層が形成されるように、ウエハ載置用電極205の内部には面内分布の小さい冷却機構が備え付けられている。処理室206の材質は、ラジカル供給源207または分散板208と同様に、ラジカル供給源207で生成したラジカルの死滅率の低いものがよく、例えば石英(SiO
2)または酸化処理が施されたアルミニウム(Al)がこれに該当する。
【0042】
脱離処理装置110は、吸着処理装置104の隣に配置される。図示はしないが、脱離処理装置110と吸着処理装置104との間には開閉バルブが設けられている。脱離処理装置110は、上部の加熱ユニット210が配置された空間と、下部の搬送ワンド212に載置されたウエハ209が通過する空間とに大別される。本実施例では、加熱ユニット210に赤外線ランプを使用した場合を例示している。
【0043】
図3および
図4に示すように、ウエハ209を加熱するための赤外線ランプ302は、円筒状であり、ウエハ209の搬送方向(x方向)とウエハの平面上で直交する方向(y方向)の赤外線ランプ302の寸法は、ウエハ209の搬送方向(x方向)の赤外線ランプ302の寸法よりも大きい。また、ウエハ209の搬送方向(x方向)とウエハの平面上で直交する方向(y方向)が長手方向となるように、赤外線ランプ302はウエハ209の上方に配置される。また、赤外線ランプ302の長手方向(y方向)の長さ(L1)は、ウエハ209の直径(R)よりも大きい(L1>R)。
【0044】
ウエハ209を加熱するため、固定したウエハ209の全面の上方に複数個の赤外線ランプ302を並べる場合がある。しかし、この場合、赤外線ランプ302下と赤外線ランプ302間の下とでは均一なエネルギーを得ることが難しく、均一に加熱することが困難である。このため、本実施例では、1本の円筒状の赤外線ランプ302を配置し、ウエハ209を搬送しながら照射する構成としている。
【0045】
なお、本実施例では、1本の赤外線ランプ302を図示したが、ウエハ209の搬送方向(x方向)に複数本の赤外線ランプ302を配置してもよい。但し、全ての赤外線ランプ302の長手方向(y方向)の長さ(L1)は、ウエハ209の直径(R)よりも大きくなるようにする(L1>R)ことが必要である。
【0046】
赤外線ランプ302には、例えば波長1μm程度の近赤外領域で発光するハロゲンランプを用いることができる。赤外線ランプ302下には、
図4に示すように、赤外線透過窓402が設置してあるが、赤外線透過窓402の透過率およびウエハ209の吸収特性を考慮して、ハロゲンランプの発光波長は決定される。すなわち、窓材の透過率が高く、ウエハ209に対して吸収しやすい波長を選択すればよい。ここでは、赤外線ランプ302を例示したが、吸着処理装置104で形成した表面層を剥離することが可能なエネルギーをウエハ209に照射できればよく、赤外線ランプ302に代えて、例えば真空紫外線(VUV:Vacuum Ultra-Violet Light)ランプを使用してもよい。また、加熱ユニット210の下部にヒータを配置し、輻射熱によってウエハ209を間接的に加熱する方法を採用してもよい。
【0047】
ガス供給装置111は、
図3に示すように、脱離処理装置110と真空側搬送容器105との間に配置される。ガス供給装置111は、図示はしないが、脱離処理装置110で脱離した異物または金属汚染物質を吸着処理装置104側へ押し流すために必要なガスを一定流量で供給するためのマスフローコントローラを備えている。ガスの流量は、除去の対象となる異物の大きさまたは金属汚染物質の種類に応じて設定される。供給されるガスとしては、被処理膜との反応を抑制するために、窒素(N
2)ガス、酸素(O
2)ガス、希ガス(ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)またはラドン(Rn))またはこれらを混合したガスが望ましい。
【0048】
ガス供給装置111には、
図3に示すように、ガスを供給するための開口部301が設けられており、ウエハ209の搬送方向(x方向)とウエハ209の平面上で直交する方向(y方向)の開口部301の寸法は、ウエハ209の搬送方向(x方向)の開口部301の寸法よりも大きい。また、ウエハ209の搬送方向(x方向)とウエハ209の平面上で直交する方向(y方向)が長手方向となるように、開口部301は設けられている。また、開口部301の長手方向(y方向)の長さ(L2)は、ウエハ209の直径(R)よりも大きい(L2>R)。
【0049】
また、ガス供給装置111には、
図4に示すように、その内部にガスだまり403が設けられており、マスフローコントローラを介して供給されたガスは、このガスだまり403において均一化され、ガス供給装置111の下部に設けられたガス供給部からシート状に排出され、ウエハ209上に均一に供給される。また、ガスを供給する開口部301には、ガス案内板404を設けるとよい。ガス案内板404により供給されたガスは、ウエハ209の搬送方向(x方向)と反対方向から供給され、脱離した異物または金属汚染物質が被処理膜に再付着することなく、排気方向へ効率的に排出される。
【0050】
次に、本実施例による被処理体のドライ洗浄の一例について
図5を用いて説明する。
【0051】
(工程S1):処理の対象となる被処理体は、エッチング処理前またはエッチング処理後に、真空側搬送容器に備え付けられた搬送ワンドにより、吸着処理装置に搬送される。被処理体が吸着処理装置に搬送された後、吸着処理装置と脱離処理装置との間に設置された開閉バルブは閉じられる。
【0052】
(工程S2):被処理体は、吸着処理装置に設けられたウエハ載置用電極に吸着され、冷却される。
【0053】
(工程S3):ラジカル供給源から、生成されたラジカルが被処理体に供給され、被処理体の表面に、脱離するために好適である表面層が均一に形成される。
【0054】
(工程S4):吸着処理装置の処理室は排気により減圧される。
【0055】
(工程S5):吸着処理装置と脱離処理装置との間に設置された開閉バルブは開き、再度、ウエハは搬送ワンドに載置され、固定される。
【0056】
(工程S6):ガス供給装置からガスがシート状に一様に供給される。
【0057】
(工程S7):赤外線ランプが点灯される。
【0058】
(工程S8):この状態において、ウエハは、搬送ワンドにより吸着処理装置から真空側搬送容器に向けて搬送される。ここで、除去する異物の大きさまたは金属汚染物質の種類に応じて、被処理体を搬送する速度およびガス供給装置から供給されるガスの流量は設定される。
【0059】
(工程S9):被処理体を真空側搬送容器に搬送した後、赤外線ランプが消灯される。
【0060】
(工程S10):ガス供給装置と真空側搬送容器との間に設置された開閉バルブは閉じられる。その後、ガス供給装置からのガスの供給が停止される。
【0061】
以上の工程により、パターン倒れ、あるいは異物または金属汚染物質の被処理体への再付着を抑制したドライ洗浄を行うことができる。
【0062】
このように、本実施例によれば、ドライ洗浄において、ウエハ面内で均一に異物または金属汚染物質を除去することができる。さらに、パターン倒れ、並びに除去された異物または金属汚染物質の被処理体への再付着を抑制することができる。これにより、半導体装置の製造歩留りを向上することができる。
【0063】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0064】
例えば、前記実施の形態では、エッチング装置と組み合わせた真空処理装置について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、真空側搬送容器を介してウエハが成膜処理ユニットに導入されるCVD(Chemical Vapor Deposition)装置と組み合わせた真空処理装置でもよく、異物または金属汚染物質の除去および被処理体への再付着を抑制することができる。