(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記物体の方向及び速度を計測した計測データが入力され、入力された前記計測データに3次元軌道解析処理を施すことで、前記物体の3次元軌道モデルを生成する軌道モデル生成手段と、
前記物体の3次元軌道モデルを2次元座標系に投影し、投影された前記3次元軌道モデルが表す物体の位置から所定範囲を検出範囲として設定する検出範囲設定手段と、をさらに備え、
前記物体検出手段は、前記検出範囲設定手段が設定した検出範囲内で、前記フレーム画像に含まれる物体を検出することを特徴とする請求項2に記載の映像合成装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願発明の各実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0011】
(第1実施形態)
[映像合成システムの概略]
図1を参照し、本願発明の第1実施形態に係る映像合成システム1の概略について説明する。
図1のように、映像合成システム1は、例えば、ゴルフ映像(撮影映像)を撮影し、このゴルフ映像に含まれるゴルフボール(物体)90を拡大して合成するものであり、撮影カメラ10と、映像合成装置20とを備える。
【0012】
撮影カメラ10は、ゴルフ映像を撮影する一般的な放送用ビデオカメラである。また、撮影カメラ10は、ケーブル30を介して、映像合成装置20に接続されている。そして、撮影カメラ10は、撮影したゴルフ映像を映像合成装置20に出力する。
【0013】
例えば、撮影カメラ10は、ゴルフ選手91の右側(
図1左側)に配置され、ティーショットを行うゴルフ選手91を撮影する。ここで、ゴルフボール90は、撮影カメラ10と反対方向、つまり、ゴルフ選手91の左側(
図1右側)に飛んでいく。従って、撮影カメラ10は、手前側から奥側にゴルフボール90が遠ざかっていくゴルフ映像を撮影することになる。
【0014】
映像合成装置20は、撮影カメラ10から入力されたゴルフ映像のゴルフボール90を拡大して合成するものである。ここで、映像合成装置20は、撮影カメラ10から入力されたゴルフ映像を、画像ファイル化して扱ってもよい。
【0015】
[映像合成装置の構成]
図2を参照し、映像合成装置20の構成について説明する(適宜
図1参照)。
図2のように、映像合成装置20は、物体指定手段21と、2次元軌道算出手段22と、物体サイズ算出手段23と、映像合成手段24とを備える。
なお、合成映像とは、拡大したゴルフボール90が合成されたゴルフ映像のことである。
【0016】
物体指定手段21は、撮影カメラ10からのゴルフ映像を構成するフレーム画像に含まれるゴルフボール90が、外部(例えば、映像合成装置2の操作者)から指定されるものである。この物体指定手段21は、例えば、ゴルフボール90の指定対象となるフレーム画像を選択させた後、選択されたフレーム画像内でゴルフボール90の領域を操作者に指定させる。
【0017】
<フレーム画像の選択及びゴルフボールの指定>
以下、
図3,
図4を参照し、フレーム画像の選択及びゴルフボール90の指定について具体的に説明する(適宜
図1,
図2参照)。
まず、物体指定手段21は、
図3のように、ゴルフ映像を構成する各フレーム画像を時刻(タイムコード)t,t+1,t+2,…の順番で、図示を省略したディスプレイに表示する。すると、映像合成装置20の操作者は、タッチペン、キーボード、マウス等の操作手段(不図示)を用いて、表示されたフレーム画像のうち、ゴルフボール90の指定対象となるフレーム画像を選択する。このとき、操作者は、全フレーム画像を選択してもよく、1枚おきにフレーム画像を選択してもよく、任意のフレーム画像を選択してもよい。
図3の例では、操作者が、2枚おきにフレーム画像を選択している。
【0018】
なお、ゴルフ映像を構成するフレーム画像のうち、選択されたフレーム画像を「選択フレーム画像」と呼び、時刻順にn番目の選択フレーム画像を「選択フレーム画像n」と呼ぶ。
また、ゴルフ映像を構成するフレーム画像のうち、選択フレーム画像として選択されていないフレーム画像を「未選択フレーム画像」と呼ぶ。
また、
図3では、選択フレーム画像を太枠で図示した。
【0019】
ここで、最初及び最後のフレーム画像が、後記する2次元軌道やゴルフボール90のサイズを算出する際に必要となる。そこで、物体指定手段21は、ゴルフボール90を打ったとき(つまり、ゴルフボール90をインパクトした瞬間)のフレーム画像を、最初のフレーム画像として操作者に選択させる。さらに、物体指定手段21は、ゴルフボール90が着地したときのフレーム画像を、最後のフレーム画像として操作者に選択させる。
【0020】
次に、物体指定手段21は、
図4のように、選択フレーム画像n,n+1,n+2,…を時刻順にディスプレイに表示する。すると、操作者は、操作手段(例えば、タッチペン92)を用いて、選択フレーム画像n,n+1,n+2,…のそれぞれに含まれるゴルフボール90の領域を指定する。このとき、物体指定手段21は、選択フレーム画像毎に指定されたゴルフボール90の領域における重心位置又は中心位置を、ゴルフボール90の位置として算出する。さらに、物体指定手段21は、最初の選択フレーム画像で指定されたゴルフボール90の領域の大きさ(例えば、直径)を、ゴルフボール90の初期サイズとして算出する。
【0021】
その後、物体指定手段21は、選択フレーム画像内でのゴルフボール90の位置と、ゴルフボール90の初期サイズとを2次元軌道算出手段22に出力する。
【0022】
図2に戻り、映像合成装置20の構成について説明を続ける。
2次元軌道算出手段22は、物体指定手段21より入力されたゴルフボール90の位置変化から、ゴルフ映像におけるゴルフボール90の2次元軌道を算出するものである。
【0023】
<2次元軌道の算出>
図5を参照し、2次元軌道93の算出を説明する(適宜
図2参照)。
以下、選択フレーム画像nにおいて、ゴルフボール90の位置をP
n(x
n,y
n)とする。このx
n,y
nは、選択フレーム画像nでのゴルフボール90のx座標、y座標を表す。また、選択フレーム画像nの時刻をT
nとする。
なお、ゴルフボール90がティーアップされた初期位置、つまり、最初の選択フレーム画像に含まれるゴルフボール90の位置P
1(0,0)を2次元軌道93の原点とする。
【0024】
ゴルフボール90の速度ベクトルV
nは、選択フレーム画像n,n+1での間において、ゴルフボール90の位置変化量(P
n+1−P
n)を経過時間(T
n+1−T
n)で除算することで求められる。つまり、ゴルフボール90の速度ベクトルV
nは、下記式(1)で求めることができる。
V
n=(P
n+1−P
n)/(T
n+1−T
n) …式(1)
【0025】
図5の例では、選択フレーム画像が5枚であることとする。この場合、2次元軌道算出手段22は、式(1)を用いて、ゴルフボール90の速度ベクトルV
1,…,V
4を算出する。そして、2次元軌道算出手段22は、選択フレーム画像の時刻T
1,…,T
5の順に速度ベクトルV
1,…,V
4を連結することで、ゴルフボール90の2次元軌道93を算出する。
その後、2次元軌道算出手段22は、算出した2次元軌道93と、物体指定手段21から入力されたゴルフボール90の初期サイズとを物体サイズ算出手段23に出力する。
【0026】
ここで、ゴルフ映像が映像同期信号(例えば、59.94Hz)を基準に撮影され、各フレーム画像にタイムコードが付加されているため、未選択フレーム画像の時刻は容易に把握できる。そして、未選択フレーム画像の時刻と速度ベクトルV
nとが求まっているので、未選択フレーム画像内でのゴルフボール90の位置を算出できる。すなわち、ゴルフボール90の2次元軌道93は、ゴルフボール90の位置(各フレーム画像内での座標)を表していると言える。
【0027】
図2に戻り、映像合成装置20の構成について説明を続ける。
ゴルフ映像では、ゴルフボール90が遠ざかるため、時刻が経過する程、ゴルフボール90が小さくなる。そこで、物体サイズ算出手段23は、ゴルフ映像の経過時刻に応じて、ゴルフボール90が大きくなるようにゴルフボール90のサイズを算出するものである。
【0028】
具体的には、物体サイズ算出手段23は、ゴルフ映像の経過時刻からゴルフボール90の飛翔時間を推定し、この飛翔時間からゴルフボール90の飛距離を推定し、この飛距離からゴルフボール90を拡大するサイズを算出する。
【0029】
<飛距離の推定>
図6を参照し、物体サイズ算出手段23による飛距離推定について具体的に説明する。
まず、物体サイズ算出手段23は、ゴルフ映像の経過時刻(最初及び最後の選択フレーム画像の時間差)を、ゴルフボール90を打ってからゴルフボール90が着地するまでの飛翔時間として算出する。
【0030】
また、物体サイズ算出手段23は、飛翔時間を飛距離に変換する飛翔時間−飛距離規則を予め設定しておく。この飛翔時間−飛距離規則は、例えば、飛翔時間が0秒を超えて1秒以下であれば飛距離が100メートル、飛翔時間が1秒を超えて2秒以下であれば飛距離が200メートル、といったように設定される。そして、物体サイズ算出手段23は、この飛翔時間−飛距離規則を参照し、ゴルフボール90の飛翔時間からゴルフボール90の飛距離を推定する。
【0031】
ここで、ゴルフボール90を打った直後、ゴルフボール90が左右に大きく外れた場合、ゴルフボール90の飛距離が短くなると考えられる。そこで、物体サイズ算出手段23は、ゴルフボール90の飛距離の推定結果に、ゴルフボール90の飛翔方向を反映させてもよい。
【0032】
例えば、飛翔方向を反映させる場合、物体サイズ算出手段23は、
図6のように、フレーム画像内でゴルフコースの地面を表す基準軸A
Xを予め設定する。そして、物体サイズ算出手段23は、ゴルフボール90を打った直後の速度ベクトルV
1の方向(飛翔方向)と、基準軸A
Xとのなす角θを算出する。さらに、物体サイズ算出手段23は、算出したなす角θのsin値を飛距離の推定結果に乗じる。
【0033】
続いて、物体サイズ算出手段23は、ゴルフボール90の飛距離をサイズ拡大率に変換する飛距離−サイズ拡大率を予め設定しておく。この飛距離−サイズ拡大率は、例えば、飛距離が100メートル以上150メートル未満であればサイズ拡大率が125%、飛距離が150メートル以上200メートル未満であればサイズ拡大率が150%、といったように設定される。
【0034】
続いて、物体サイズ算出手段23は、フレーム画像毎にサイズ拡大率を算出する。まず、物体サイズ算出手段23は、予め設定された初期値(例えば、100%)を、最初の選択フレーム画像におけるサイズ拡大率として算出する。次に、物体サイズ算出手段23は、前記した飛距離−サイズ拡大率を参照し、ゴルフボール90の飛距離の推定結果から、最後の選択フレーム画像におけるサイズ拡大率を算出する。さらに、物体サイズ算出手段23は、最初及び最後以外のフレーム画像におけるサイズ拡大率を、最初と最後との選択フレーム画像におけるサイズ拡大率から補間(例えば、線形補間)する。
【0035】
続いて、物体サイズ算出手段23は、フレーム画像毎にゴルフボール90のサイズを算出する。例えば、物体サイズ算出手段23は、ゴルフボール90の初期サイズと、フレーム画像毎に算出したサイズ拡大率とを乗じることで、フレーム画像毎にゴルフボール90のサイズを算出する。
【0036】
その後、物体サイズ算出手段23は、フレーム画像毎に算出したゴルフボール90のサイズと、2次元軌道算出手段22から入力された2次元軌道とを映像合成手段24に出力する。
【0037】
図2に戻り、映像合成装置20の構成について説明を続ける。
映像合成手段24は、物体サイズ算出手段23から入力された2次元軌道が表すゴルフボール90の位置とゴルフボール90のサイズとで、ゴルフボール90を各フレーム画像に合成するものである。
【0038】
前記したように、ゴルフボール90の2次元軌道は、各フレーム画像内でのゴルフボール90の位置を表している。従って、映像合成手段24は、ゴルフボール90の2次元軌道からゴルフボール90の位置を求められる。そして、映像合成手段24は、求めたゴルフボール90の位置に、物体サイズ算出手段23が算出したサイズでゴルフボール90を合成する。このようにして、映像合成手段24は、
図7のように、ゴルフボール90が拡大された合成映像を生成する。
【0039】
[映像合成装置の動作]
図8を参照し、映像合成装置20の動作について説明する(適宜
図2参照)。
映像合成装置20は、物体指定手段21によって、ゴルフ映像に含まれるゴルフボール90を手動で指定する。
具体的には、物体指定手段21は、ゴルフ映像を構成する全フレーム画像のうち、ゴルフボール90の指定対象となる選択フレーム画像を選択させる。そして、物体指定手段21は、選択フレーム画像に含まれるゴルフボール90を指定させ、指定されたゴルフボール90の領域における重心位置又は中心位置をゴルフボール90の位置として算出する。物体指定手段21は、最初の選択フレーム画像から検出されたゴルフボール90の領域の大きさを、ゴルフボール90の初期サイズとして算出する(ステップS1)。
【0040】
映像合成装置20は、2次元軌道算出手段22によって、ステップS1で算出したゴルフボール90の位置変化から、ゴルフ映像におけるゴルフボール90の2次元軌道を算出する。
具体的には、2次元軌道算出手段22は、前記した式(1)を用いてゴルフボール90の速度ベクトルを算出し、算出したゴルフボール90の速度ベクトルを選択フレーム画像の時刻順に連結することで、ゴルフボール90の2次元軌道を算出する(ステップS2)。
【0041】
映像合成装置20は、物体サイズ算出手段23によって、ゴルフ映像の経過時刻に応じて、ゴルフボール90が大きくなるようにゴルフボール90のサイズを算出する。
具体的には、物体サイズ算出手段23は、最初及び最後の選択フレーム画像の時間差をゴルフボール90の飛翔時間として算出する。次に、物体サイズ算出手段23は、飛翔時間−飛距離規則を参照し、算出したゴルフボール90の飛翔時間から、ゴルフボール90の飛距離を推定する。続いて、物体サイズ算出手段23は、飛距離−サイズ拡大率を参照し、ゴルフボール90の飛距離から、最後の選択フレーム画像におけるサイズ拡大率を算出する。続いて、物体サイズ算出手段23は、最初及び最後の選択フレーム画像におけるサイズ拡大率から、各フレーム画像におけるサイズ拡大率を算出する。続いて、物体サイズ算出手段23は、ゴルフボール90の初期サイズとサイズ拡大率とを乗じることで、フレーム画像毎にゴルフボール90のサイズを算出する(ステップS3)。
【0042】
映像合成装置20は、映像合成手段24によって、ステップS2で算出した2次元軌道が表すゴルフボール90の位置、及び、ステップS3で算出したゴルフボール90のサイズで、ゴルフボール90を各フレーム画像に合成する(ステップS4)。
【0043】
以上のように、本願発明の第1実施形態に係る映像合成装置20は、ゴルフボール90が遠ざかる程、そのゴルフボール90が拡大してゴルフ映像に合成されるので、再生速度を低下させずに、遠ざかるゴルフボール90が見易い合成映像を生成できる。これによって、映像合成装置20は、合成映像の臨場感を向上させることができる。
【0044】
(第2実施形態)
図9を参照し、本願発明の第2実施形態に係る映像合成装置20Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
映像合成装置20Bは、ゴルフ映像に含まれるゴルフボール90を検出する点が、第1実施形態と異なる。
【0045】
図9のように、映像合成装置20Bは、2次元軌道算出手段22Bと、物体サイズ算出手段23と、映像合成手段24と、物体検出手段25とを備える。
なお、物体サイズ算出手段23及び映像合成手段24は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0046】
物体検出手段25は、撮影カメラ10から入力されたゴルフ映像のフレーム画像に含まれるゴルフボール90を検出するものである。
具体的には、物体検出手段25は、ゴルフボール90の検出対象となるフレーム画像を、選択フレーム画像として予め設定する。例えば、物体検出手段25は、全フレーム画像又は1枚おきのフレーム画像を、選択フレーム画像として予め設定する。また、物体検出手段25では、最初及び最後のフレーム画像も、選択フレーム画像として予め設定する。
【0047】
次に、物体検出手段25は、
図10のように、選択フレーム画像のそれぞれに任意の物体検出処理を施して、ゴルフボール90の領域を検出する。第2実施形態では、物体検出手段25は、選択フレーム画像の画面全体に対し、物体検出処理を施す。例えば、物体検出処理として、パターンマッチング、色領域抽出処理、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)といった特徴量検出処理をあげることができる。
【0048】
続いて、物体検出手段25は、検出されたゴルフボール90の領域の重心位置又は中心位置を、ゴルフボール90の位置として算出する。そして、物体検出手段25は、最初の選択フレーム画像から検出されたゴルフボール90の領域の大きさ(例えば、直径)を、ゴルフボール90の初期サイズとして算出する。
【0049】
その後、物体検出手段25は、選択フレーム画像内でのゴルフボール90の位置と、ゴルフボール90の初期サイズとを2次元軌道算出手段22Bに出力する。
【0050】
2次元軌道算出手段22Bは、物体検出手段25より入力されたゴルフボール90の位置変化から、ゴルフ映像におけるゴルフボール90の2次元軌道を算出するものである。
なお、2次元軌道算出手段22Bは、第1実施形態と同様の手法で2次元軌道を算出するため、これ以上の説明を省略する。
【0051】
[映像合成装置の動作]
図11を参照し、映像合成装置20Bの動作について説明する(適宜
図9参照)。
なお、ステップS2〜S4の処理は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0052】
映像合成装置20Bは、物体検出手段25によって、ゴルフ映像のフレーム画像に含まれるゴルフボール90を検出する。
具体的には、物体検出手段25は、ゴルフ映像を構成する全フレーム画像のうち、ゴルフボール90の検出対象となる選択フレーム画像を設定する。そして、物体検出手段25は、選択フレーム画像に含まれるゴルフボール90の領域を検出し、検出したゴルフボール90の領域の重心位置又は中心位置をゴルフボール90の位置として算出する。さらに、物体検出手段25は、最初の選択フレーム画像から検出されたゴルフボール90の領域の大きさをゴルフボール90の初期サイズとして算出する(ステップS5)。
【0053】
以上のように、本願発明の第2実施形態に係る映像合成装置20Bは、第1実施形態と同様の理由により、合成映像の臨場感を向上させることができる。さらに、映像合成装置20Bは、ゴルフ映像に含まれるゴルフボール90を手動で指定する必要がないので、合成映像を生成する手間を低減することができる。
【0054】
(第3実施形態)
[映像合成システムの概略]
図12を参照し、本願発明の第3実施形態に係る映像合成システム1Cの概略について、第2実施形態と異なる点を説明する。
第2実施形態では、ゴルフ映像の画面全体をゴルフボール90の検出範囲としたが、ゴルフボール90が小さいといった理由でゴルフボール90を検出できない場合がある。このため、第3実施形態では、ゴルフボール90の3次元軌道を推定し、その推定結果からゴルフボール90の検出範囲を絞り込む点が第2実施形態と異なる。
【0055】
図12のように、映像合成システム1Cは、撮影カメラ10Cと、映像合成装置20Cと、レーザ計測器40とを備える。また、映像合成システム1Cでは、ケーブル30を介して、撮影カメラ10C及びレーザ計測器40のそれぞれと、映像合成装置20Cとが接続されている。
【0056】
撮影カメラ10Cは、例えば、ゴルフ選手91の右前側に配置される。これ以外、撮影カメラ10Cは、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0057】
レーザ計測器40は、ゴルフボール90の方向及び速度を計測し、その計測結果を計測データとして映像合成装置20Cに出力するものである。この計測データは、ゴルフボール90の3次元軌道を推定する際に必要となる。
【0058】
例えば、レーザ計測器40は、ゴルフ選手91の正面側(
図1下側)に配置され、ゴルフボール90を打ったタイミングで、ゴルフボール90の方向及び速度を計測する。このとき、ゴルフボール90を打ったタイミングは、図示を省略したハイスピードカメラでの画像処理(例えば、ゴルフボール90に対する動きベクトル検出処理)や、レーダ計測器により検出してもよい。そして、レーザ計測器40は、ケーブル30を介して、計測した方向及び速度を計測データとして、映像合成装置20Cに出力する。
【0059】
[映像合成装置の構成]
図13を参照し、映像合成装置20Cの構成について説明する(適宜
図12参照)。
図13のように、映像合成装置20Cは、2次元軌道算出手段22Bと、物体サイズ算出手段23と、映像合成手段24と、物体検出手段25Cと、軌道モデル生成手段26と、検出範囲設定手段27とを備える。
なお、2次元軌道算出手段22B、物体サイズ算出手段23及び映像合成手段24は、第2実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0060】
軌道モデル生成手段26は、レーザ計測器40から入力された計測データに3次元軌道解析処理を施すことで、3次元軌道モデルを生成するものである。
なお、3次元軌道モデルは、ゴルフボール90が実空間(ゴルフコース)で飛んだ軌道を表すモデルである。
【0061】
例えば、軌道モデル生成手段26は、3次元軌道解析処理として、下記の参考文献1に記載の手法を用いることができる。この参考文献1に記載の手法は、ゴルフボール90の回転軸が傾いていることにより揚力の分力が生じ、この分力がゴルフボール90の曲がりの空気力学的な原因であるとして、3次元飛翔軌道方程式を定式化したものである。
参考文献1:「ゴルフボールの空気力測定と3次元飛翔軌道解析」、日本流体力学学会誌、第23巻、第3号、P203-211、2004
【0062】
この参考文献1に記載の手法では、ゴルフボール90を打ったときの速度、仰角、横ぶれ角、回転速度、回転軸の傾きを初期条件として設定する必要がある。この初期条件のうち、ゴルフボール90を打ったときの速度は、計測データに含まれる速度とする。また、ゴルフボール90を打ったときの仰角及び横ぶれ角は、計測データに含まれる方向の垂直方向成分及び水平方向成分から求めることができる。また、ゴルフボール90を打ったときの回転速度及び回転軸は、任意の値で予め設定しておく。
【0063】
このようにして、軌道モデル生成手段26は、計測データから、ある程度の精度を有する3次元軌道解析結果を得ることができる。そして、軌道モデル生成手段26は、生成した3次元軌道モデルを検出範囲設定手段27に出力する。
【0064】
検出範囲設定手段27は、軌道モデル生成手段26から入力された3次元軌道モデルを2次元座標系に投影し、投影された3次元軌道モデルが表すゴルフボール90の位置から所定範囲を検出範囲として設定するものである。
【0065】
例えば、検出範囲設定手段27は、平行投影、透視投影等の投影法を用いて、3次元軌道モデルをフレーム画像の2次元座標系に投影する。つまり、検出範囲設定手段27は、実空間でゴルフボール90の軌道を表す3次元軌道モデルを、フレーム画像内でゴルフボール90の軌道を表す2次元軌道モデルに変換する。
【0066】
次に、検出範囲設定手段27は、2次元軌道モデルの始点を基準点として設定する。そして、検出範囲設定手段27は、基準点を中心として、縦横に所定の画素数を有する矩形領域を、検出範囲として設定する。さらに、検出範囲設定手段27は、基準点が2次元軌道モデルの終点に達するまで、基準点の移動と、検出範囲の設定とを繰り返す。
【0067】
その後、検出範囲設定手段27は、各基準点で設定した検出範囲を物体検出手段25Cに出力する。
なお、検出範囲は、矩形領域に限定されず、円形領域、楕円形領域等の様々形状の領域に設定できる。
【0068】
物体検出手段25Cは、検出範囲設定手段27から入力された検出範囲内で、ゴルフ映像のフレーム画像に含まれるゴルフボール90を検出するものである。
図14のように、物体検出手段25Cは、ハッチングで図示したフレーム画像の検出範囲94に物体検出処理を施して、ゴルフボール90の領域を検出する。他の点、物体検出手段25Cは、第2実施形態と同様のため、これ以上の説明を省略する。
【0069】
[映像合成装置の動作]
図15を参照し、映像合成装置20Cの動作について説明する(適宜
図13参照)。
なお、ステップS2〜S4の処理は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0070】
映像合成装置20Cは、軌道モデル生成手段26によって、レーザ計測器40から入力された計測データに3次元軌道解析処理を施すことで、ゴルフボール90の3次元軌道モデルを生成する。
具体的には、軌道モデル生成手段26は、前記した参考文献1に記載の3次元飛翔軌道解析を用いて、3次元軌道モデルを生成する(ステップS6)。
【0071】
映像合成装置20Cは、検出範囲設定手段27によって、ステップS6で生成した3次元軌道モデルを2次元座標系に投影し、投影された3次元軌道モデルが表すゴルフボール90の位置から所定範囲を検出範囲として設定する。
具体的には、検出範囲設定手段27は、平行投影、透視投影等の投影法を用いて、3次元軌道モデルを2次元軌道モデルに変換する。そして、検出範囲設定手段27は、2次元軌道モデルの始点を基準点として設定し、この基準点を中心とした矩形領域を検出範囲として設定する。さらに、検出範囲設定手段27は、基準点が2次元軌道モデルの終点に達するまで、基準点の移動と、検出範囲の設定とを繰り返す(ステップS7)。
【0072】
映像合成装置20Cは、物体検出手段25Cによって、ステップS7で設定した検出範囲内で、各選択フレーム画像に含まれるゴルフボール90の領域を検出する(ステップS8)。
【0073】
以上のように、本願発明の第3実施形態に係る映像合成装置20Cは、第2実施形態と同様の理由により、合成映像の臨場感を向上させることができる。さらに、映像合成装置20Cは、ゴルフボール90の検出範囲を絞り込むため、ゴルフボール90が検出できない事態を低減でき、高品質な合成映像を生成することができる。
【0074】
以上、本願発明の各実施形態を詳述してきたが、本願発明は前記した各実施形態に限られるものではなく、本願発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0075】
(変形例1)
図12に戻り、変形例1に係る映像合成装置20Cについて説明する。
前記した第3実施形態では、ゴルフ映像から、ゴルフボール90の実際の高度を求めることができない。また、撮影カメラ10Cの位置とレーザ計測器40の位置とが異なっている。そこで、映像合成装置20Cでは、撮影カメラ10Cとレーザ計測器40との方位角φに基づいてキャリブレーションを実施することで、3次元軌道モデルを補正してもよい。
【0076】
図13のように、軌道モデル生成手段26は、第3実施形態と同様、3次元軌道モデルを生成する。また、2次元軌道算出手段22Bは、第3実施形態と同様、ゴルフボール90の2次元軌道を算出する。そして、2次元軌道算出手段22Bは、この2次元軌道を用いて、後記するようにゴルフボール90の仮想高度を算出し、算出した仮想高度を軌道モデル生成手段26に出力する(
図13の破線参照)。
【0077】
次に、軌道モデル生成手段26は、2次元軌道算出手段22Bから入力された仮想高度と、ゴルフボール90の推定高度との誤差が最小となるように最小二乗法でマッチングを行い、3次元軌道モデルを修正する(キャリブレーション)。そして、軌道モデル生成手段26は、修正した3次元軌道モデルを検出範囲設定手段27に出力する。
【0078】
なお、ゴルフボール90の推定高度とは、軌道モデル生成手段26で生成された3次元軌道モデルが示すゴルフボール90の高度のことである。
以後、映像合成装置20Cは、第3実施形態と同様、検出範囲の設定と、ゴルフボール90の検出と、2次元軌道の算出とを行う。
【0079】
<仮想高度の算出>
以下、
図16を参照し、2次元軌道算出手段22Bによる仮想高度の算出を具体的に説明する(適宜
図13参照)。
まず、2次元軌道算出手段22Bは、ゴルフ映像に進行軸P
Xを設定する。
図16のように、進行軸P
Xは、ゴルフ映像に含まれる地面上でゴルフボール90が進行する方向を表したものである。例えば、操作者は、ゴルフ映像のうち代表的な構図のフレーム画像について、タッチペン等の操作手段を用いて、ゴルフボール90の進行軸P
Xを設定する。ここで、進行軸P
Xの開始位置は、ゴルフボール90が飛ぶ前の位置、つまり、ティーアップされたゴルフボール90の位置とすればよい。
【0080】
前記したように、ゴルフボール90の2次元軌道93は、ゴルフボール90の位置(各フレーム画像内での座標)を表している。従って、2次元軌道算出手段22Bは、算出した2次元軌道93を用いて、フレーム画像毎にゴルフボール90の仮想高度を算出する。2次元軌道算出手段22Bは、2次元軌道93と進行軸P
Xとの距離(ピクセル数)h
2〜h
5を算出する。
図16の例では、2次元軌道算出手段22Bは、2次元軌道93に含まれる速度ベクトルV
1〜V
5の先頭位置(つまり、選択フレーム画像から検出されたゴルフボール90の位置)と進行軸P
Xとの距離を算出している。
【0081】
続いて、2次元軌道算出手段22Bは、算出した距離をゴルフボール90の仮想高度に変換する距離−仮想高度変換規則を予め設定する。この距離−仮想高度変換規則は、例えば、距離が10ピクセルであればゴルフボール90の仮想高度が3メートル、距離が20ピクセルであればゴルフボール90の仮想高度が5メートル、といったように設定される。
【0082】
そして、2次元軌道算出手段22Bは、前記した距離−仮想高度変換規則を参照し、算出した距離から、選択フレーム画像におけるゴルフボール90の仮想高度を算出する。さらに、2次元軌道算出手段22Bは、未選択フレーム画像におけるゴルフボール90の仮想高度を、選択フレーム画像におけるゴルフボール90の仮想高度から補間(例えば、線形補間)する。その後、2次元軌道算出手段22Bは、フレーム画像毎に算出したゴルフボール90の仮想高度を、軌道モデル生成手段26に出力する。
【0083】
以上のように、変形例1に係る映像合成装置20Cは、3次元軌道モデルをゴルフボール90の仮想高度に合わせて修正するため、より正確な検出範囲を設定できる。これによって、映像合成装置20Cは、ゴルフボール90の検出精度をより向上させることができる。
【0084】
(その他実施形態)
前記した実施形態では、ゴルフ映像を例に説明したが、本願発明が対象とする撮影映像は、これに限定されない。例えば、本願発明は、テニス、卓球、射撃等のスポーツ映像に適用することができる。また、本願発明の対象となる撮影映像は、何らかの物体が遠ざかる映像であれば、スポーツ映像でなくともよい。例えば、本願発明は、高速飛行する動物や高速移動する乗り物が被写体となる科学環境番組に用いると、これら物体(動物や乗り物)が見易くなるので好ましい。
【0085】
前記した実施形態では、映像合成装置を独立したハードウェアとして説明したが、本願発明は、これに限定されない。例えば、本願発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスク等のハードウェア資源を、映像合成装置として協調動作させる映像合成プログラムで実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD−ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布してもよい。