(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0016】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理方法を示す流れ図である。
図1に示す方法MTは、シリコン製の天井部材を備えるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法である。
図2は、方法MTの適用対象である被処理体(以下、「ウエハW」という)を例示する断面図である。
図2に示すウエハWは、基板SB、被エッチング層EL、有機膜OL、反射防止膜BA、及びマスクMKを有している。
【0017】
被エッチング層ELは、基板SB上に設けられている。被エッチング層ELは、シリコンを含有する層であり、例えば、アモルファスシリコン層又は多結晶シリコン層である。有機膜OLは、有機材料から構成された膜であり、被エッチング層EL上に設けられている。反射防止膜BAは、Si含有反射防止膜であり、有機膜OL上に設けられている。マスクMKは、有機材料から構成されたマスクであり、例えば、レジストマスクである。マスクMKには、開口を提供するパターンがフォトリソグラフィによって形成されている。
【0018】
図1に戻り、方法MTでは、先ず工程ST1が実行される。工程ST1では、ウエハWがプラズマ処理装置の処理容器内に搬入される。
図3は、方法MTの実施に用いることが可能な処理システムの一例を示す図である。
図3に示す処理システム1は、台122a〜122d、収容容器124a〜124d、ローダモジュールLM、ロードロックチャンバLL1及びロードロックチャンバLL2、トランスファーチャンバ121、並びに、プラズマ処理装置10を備えている。
【0019】
台122a〜122dは、ローダモジュールLMの一縁に沿って配列されている。これら台122a〜122d上には、収容容器124a〜124dがそれぞれ設けられている。収容容器124a〜124d内には、ウエハWが収容されている。
【0020】
ローダモジュールLM内には、搬送ロボットRb1が設けられている。搬送ロボットRb1は、収容容器124a〜124dの何れかに収容されているウエハWを取り出して、当該ウエハWを、ロードロックチャンバLL1又はLL2に搬送する。
【0021】
ロードロックチャンバLL1及びLL2は、ローダモジュールLMの別の一縁に沿って設けられており、当該ローダモジュールLMに接続されている。ロードロックチャンバLL1及びLL2は、予備減圧室を構成している。ロードロックチャンバLL1及びLL2は、トランスファーチャンバ121にそれぞれ接続されている。
【0022】
トランスファーチャンバ121は、減圧可能なチャンバであり、当該トランスファーチャンバ121内には搬送ロボットRb2が設けられている。トランスファーチャンバ121には、プラズマ処理装置10が接続されている。搬送ロボットRb2は、ロードロックチャンバLL1又はロードロックチャンバLL2からウエハWを取り出して、当該ウエハWをプラズマ処理装置10に搬送する。
【0023】
また、処理システム1は、制御部100を更に備えている。この制御部100は、方法MTにおける各工程の実行のために、処理システム1の各部を制御する。一実施形態では、制御部100は、プロセッサ、記憶装置、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり得る。この実施形態では、制御部100は、方法MTの各工程において処理システム1の各部を制御するためのプログラムを記憶装置に格納しており、当該プログラムを実行することにより、処理システム1の各部、例えば、搬送ロボットRb1及びRb2、並びにプラズマ処理装置10の各部を制御する。
【0024】
図4は、
図3に示す処理システムのプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図4に示すプラズマ処理装置10は、容量結合型プラズマエッチング装置であり、処理容器12を備えている。処理容器12は、略円筒形状を有している。処理容器12は、例えば、アルミニウムから構成されている。この処理容器12は保安接地されている。
【0025】
処理容器12の底部上には、略円筒状の支持部14が設けられている。支持部14は、処理容器12内において、処理容器12の底部から鉛直方向に延在している。また、処理容器12内には、載置台PDが設けられている。載置台PDは、支持部14によって支持されている。
【0026】
載置台PDは、その上面においてウエハWを支持する。載置台PDは、下部電極LE及び静電チャックESCを有している。下部電極LEは、第1プレート18a及び第2プレート18bを含んでいる。第1プレート18a及び第2プレート18bは、例えばアルミアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状をなしている。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられており、第1プレート18aに電気的に接続されている。
【0027】
第2プレート18b上には、静電チャックESCが設けられている。静電チャックESCは、導電膜である電極を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置した構造を有している。静電チャックESCの電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。この静電チャックESCは、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着する。これにより、静電チャックESCは、ウエハWを保持することができる。
【0028】
第2プレート18bの周縁部上には、ウエハWのエッジ及び静電チャックESCを囲むようにフォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、エッチング対象の膜の材料によって適宜選択される材料から構成されており、例えば、シリコンから構成され得る。
【0029】
第2プレート18bの内部には、冷媒流路24が設けられている。冷媒流路24は、温調機構を構成している。冷媒流路24には、処理容器12の外部に設けられたチラーユニットから配管26aを介して冷媒が供給される。冷媒流路24に供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。このように、冷媒流路24には、冷媒が循環するよう、供給される。この冷媒の温度を制御することにより、静電チャックESCによって支持されたウエハWの温度が制御される。
【0030】
また、プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャックESCの上面とウエハWの裏面との間に供給する。
【0031】
また、プラズマ処理装置10には、加熱素子であるヒータHTが設けられている。ヒータHTは、例えば、第2プレート18b内に埋め込まれている。ヒータHTには、ヒータ電源HPが接続されている。ヒータ電源HPからヒータHTに電力が供給されることにより、載置台PDの温度が調整され、当該載置台PD上に載置されるウエハWの温度が調整されるようになっている。なお、ヒータHTは、静電チャックESCに内蔵されていてもよい。
【0032】
また、プラズマ処理装置10は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、載置台PDの上方において、当該載置台PDと対向配置されている。下部電極LEと上部電極30とは、互いに略平行に設けられている。これら上部電極30と下部電極LEとの間には、ウエハWにプラズマ処理を行うための空間Sが提供されている。
【0033】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。上部電極30は、天井部材34及び電極支持体36を含んでいる。天井部材34は、シリコンから構成された板状の部材である。天井部材34は、載置台PDの上方に設けられており、空間Sに面している。天井部材34には複数のガス吐出孔34aが形成されている。
【0034】
電極支持体36は、天井部材34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、電極支持体36には、ガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0035】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを有している。複数のガスソースは、塩素ガス(Cl
2ガス)のソース、酸素ガス(O
2ガス)のソース、希ガスのソース、水素ガス(H
2ガス)のソース、窒素ガス(N
2ガス)のソース、及び、フルオロカーボンガスのソースを含んでいる。希ガスは、任意の希ガスであることができ、例えば、Arガスである。また、フルオロカーボンガスはC、xFyで表される任意のフルオロカーボンのガスであり、例えば、C
4F
8ガスである。
【0036】
バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44はマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器といった複数の流量制御器を含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースはそれぞれ、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。
【0037】
また、プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止する。
【0038】
処理容器12の底部側、且つ、支持部14と処理容器12の側壁との間には排気プレート48が設けられている。排気プレート48には、当該排気プレートの上方の空間と下方の空間とを連通させる複数の貫通孔が形成されている。この排気プレート48の下方、且つ、処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内の空間を所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0039】
また、プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波電力を発生する電源であり、27〜100MHzの周波数、一例においては40MHzの高周波電力を発生する。第1の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極LEに接続されている。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。
【0040】
第2の高周波電源64は、ウエハWにイオンを引き込むための第2の高周波電力、即ち高周波バイアス電力を発生する電源であり、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数、一例においては3.2MHzの高周波バイアス電力を発生する。第2の高周波電源64は、整合器68を介して下部電極LEに接続されている。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。
【0041】
また、プラズマ処理装置10は、電源70を更に備えている。電源70は、上部電極30に接続されている。電源70は、空間S内に存在する正イオンを天井部材34に引き込むための電圧を、上部電極30に印加する。一例においては、電源70は、負の直流電圧を発生する直流電源である。別の一例において、電源70は、比較的低周波の交流電圧を発生する交流電源であってもよい。電源70から上部電極に印加される電圧は、例えば、−150V以下の電圧であり得る。即ち、電源70によって上部電極30に印加される電圧は、絶対値が150V以上の負の電圧であり得る。このような電圧が電源70から上部電極30に印加されると、空間Sに存在する正イオンが、天井部材34に衝突する。これにより、天井部材34から二次電子及びシリコンが放出される。
【0042】
以下、再び
図1を参照し、プラズマ処理装置10を備える処理システム1において実施される形態を例にとって、方法MTについて詳細に説明する。しかしながら、方法MTは、処理システム1とは異なる処理システムにおいて実施されてもよく、また、そのような処理システムは、プラズマ処理装置以外のプラズマ処理装置を備えていてもよい。以下、
図1と共に
図5〜
図8を参照する。
図5〜
図8は、方法MTの各工程の実行後のウエハの状態を示す断面図である。
【0043】
方法MTの工程ST1では、ウエハWがプラズマ処理装置10の処理容器12内に搬入される。ウエハWは、収容容器124a〜124dの何れかから、ローダモジュールLM、ロードロックチャンバLL1又はロードロックチャンバLL2、並び、トランスファーチャンバ121を介して、処理容器12内に搬送される。処理容器12内に搬送されたウエハWは、載置台PD上に載置され、静電チャックESCによって保持される。
【0044】
一実施形態の方法MTでは、次いで、工程ST2が実行される。工程ST2では、処理容器12内において発生させた正イオンを天井部材34に衝突させる処理が行われる。この処理により、天井部材34から二次電子及びシリコンが放出される。この工程ST2では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち一つのガスソースから、処理容器12内に水素ガスが供給され、第1の高周波電源62からの高周波電力が下部電極LEに与えられる。これにより、処理容器12内において、正イオンが発生する。また、工程ST2では、電源70によって上部電極30に電圧が印加される。これにより、正イオンが天井部材34に引き付けられて当該天井部材34に衝突する。そして、天井部材34から二次電子が放出される。このように放出された二次電子により、マスクMKが改質され、硬化する。また、天井部材34からはシリコンも放出される。放出されたシリコンは、ウエハWの表面に堆積し、
図5に示すように、膜SLを形成する。この膜SLによりマスクMKが保護され、更に、マスクMKの寸法、例えばマスクMKによって提供される開口の幅が調整される。
【0045】
一実施形態の方法MTでは、次いで、工程ST3が実行される。工程ST3では、反射防止膜BAがエッチングされる。この工程ST3では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち一つのガスソースからフルオロカーボンガスが処理容器12内に供給される。工程ST3では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち二つのガスソースのそれぞれから処理容器12内に酸素ガス及び希ガスが更に供給されてもよい。また、第1の高周波電源62からの高周波電力が下部電極LEに与えられる。さらに、第2の高周波電源64からの高周波バイアス電力が下部電極LEに与えられる。これにより処理容器12内においてプラズマが生成され、フルオロカーボンに由来する活性種により、反射防止膜BAがエッチングされる。その結果、
図6に示すように、マスクMKによって提供される開口から露出した部分において、反射防止膜BAが除去される。なお、工程ST3のエッチングは異方性を有するため、膜SLの全領域のうちマスクMKの上面上及び反射防止膜BAの表面上に存在していた領域は除去され、膜SLの全領域のうちマスクMKの側面に沿って延在する領域のみが残される。
【0046】
一実施形態の方法MTでは、次いで、工程ST4が実行される。工程ST4では、有機膜OLがエッチングされる。この工程ST4では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち二つのガスソースから、水素ガス及び窒素ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62からの高周波電力が下部電極LEに与えられる。さらに、第2の高周波電源64からの高周波バイアス電力が下部電極LEに与えられる。これにより処理容器12内においてプラズマが生成され、水素の活性種によって、有機膜OLがエッチングされる。その結果、
図7に示すように、反射防止膜BAによって提供される開口から露出した部分において、有機膜OLが除去される。なお、工程ST4では、マスクMKも同時に除去され、膜SLもマスクMKと共に除去される。
【0047】
続く工程ST5では、被エッチング層ELのエッチングのために、処理ガスのプラズマが生成される。具体的に、工程ST5では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち二つのガスソースから、塩素ガス及び酸素ガスが処理容器12内に供給される。なお、処理ガスは、HBrといった他のガスを含んでいてもよい。また、第1の高周波電源62からの高周波電力が下部電極LEに与えられる。さらに、第2の高周波電源64からの高周波バイアス電力が下部電極LEに与えられる。これにより処理容器12内においてプラズマが生成され、塩素の活性種によって、被エッチング層ELがエッチングされる。その結果、
図8に示すように、反射防止膜BA及び有機膜OLによって提供される開口から露出した部分において、被エッチング層ELが除去される。
【0048】
図9は、工程ST5の実行後のプラズマ処理装置の状態を概略的に示す図である。上述したように、工程ST5で用いられる処理ガスは塩素ガスに加えて酸素ガスを含む。したがって、工程ST5の実行により、
図9に示すように、天井部材34はその表面を含む一部分において酸化し、酸化領域34dを有するものとなる。この酸化領域34dにより、工程ST5の実行時に塩素の活性種によるエッチングから天井部材34が保護され、当該天井部材34の削れが抑制される。
【0049】
また、一実施形態の工程ST5では、処理ガス中の酸素ガスの流量が、当該処理ガス中の塩素ガスの流量の0.75倍以上の流量に設定される。このように設定される流量の酸素ガス及び塩素ガスを含む処理ガスによれば、工程ST5において形成される酸化領域34dの厚さを小さくすることができる。
【0050】
次いで、方法MTでは、工程ST6が実行される。工程ST6では、ウエハWが処理容器12から搬出される。例えば、ウエハWは、処理容器12からトランスファーチャンバ121に搬送され、ロードロックチャンバLL1又はロードロックチャンバLL2、及びローダモジュールLMを介して、収容容器124aから124dの何れかに搬送される。
【0051】
一実施形態の方法MTでは、次いで、工程ST7〜ST9において第1〜第3のクリーニングが実行される。工程ST7の第1クリーニングでは、プラズマ処理装置10の処理容器12内にウエハが収容されていない状態において、クリーニングガスが処理容器12内に供給される。このクリーニングガスは、ガスソース群40の複数のガスソースのうち一つのガスソースから供給される酸素ガスを含む。一例では、クリーニングガスは、酸素ガスのみを含む。また、第1の高周波電源62からの高周波電力が下部電極LEに与えられる。これにより、酸素ガスのプラズマが処理容器12内において生成され、処理容器12内の空間Sに接する部材表面が酸素の活性種によってクリーニングされる。なお、この工程ST7においても、天井部材34の表面を含む一部領域が酸化する。
【0052】
続く工程ST8の第2クリーニングでは、プラズマ処理装置10の処理容器12内にダミーウエハが搬入され、当該ダミーウエハが載置台PD上に載置される。このダミーウエハは、プラズマ処理装置10のクリーニング時に静電チャックESCの上面上に載置され、当該静電チャックESCを保護するためのウエハである。工程ST8の第2クリーニングでは、次いで、ガスソース群40の複数のガスソースのうち一つのガスソースからフルオロカーボンガスが処理容器12内に供給される。工程ST8では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち一つのガスソースから処理容器12内に希ガスが更に供給されてもよい。また、第1の高周波電源62からの高周波電力が下部電極LEに与えられる。これにより処理容器12内においてプラズマが生成され、フルオロカーボンに由来する活性種により、処理容器12内の空間Sに接する部材表面がクリーニングされる。この工程ST8の実行後、ダミーウエハが処理容器12から搬出される。
【0053】
続く工程ST9の第3クリーニングでは、工程ST7と同様の処理が行われる。
【0054】
一実施形態の方法MTでは、続く工程STaにおいて、全てのウエハWの処理が終了しているか否かが判定される。未処理のウエハW、即ち、別のウエハWが存在する場合には、当該別のウエハWに対して工程ST1からの処理が再び実行される。一方、全てのウエハWの処理が終了している場合には、方法MTの実施が終了する。
【0055】
上述したように一実施形態の方法MTでは、工程ST5のプラズマ処理、並びに、工程ST7及び工程ST9のクリーニングにおいて、天井部材34に酸化領域34dが形成されるが、工程ST2において天井部材34のシリコンに、即ち、酸化領域34dによって覆われたシリコン製の領域に正イオンを衝突させるためには、酸化領域34dの厚さが、小さいことが望まれる。このため、上記実施形態の工程ST5では、処理ガス中の酸素ガスの流量が、当該処理ガス中の塩素ガスの流量の0.75倍以上の流量に設定される。これにより、工程ST5において形成される酸化領域34dの厚さを小さくすることができる。したがって、工程ST2の実行直前の天井部材34の酸化領域34dの厚さを小さくすることが可能となる。
【0056】
以下、工程ST5における処理ガス中の酸素ガスの流量を種々に設定した実験について説明する。実験では、処理ガスの塩素ガスの流量を100sccmに設定し、当該処理ガス中の酸素ガスの流量を、0sccm、25sccm、50sccm、75sccm、100sccm、150sccmの六種の流量それぞれに設定して、工程ST5を実行した。そして、天井部材34に形成される酸化領域34dの厚さを測定した。なお、実験における他の処理条件は以下の通りである。
【0057】
<処理条件>
第1の高周波電源62の高周波電力:300W
第2の高周波電源64の高周波電力:100W
処理容器12内の圧力:20mTorr(2.666Pa)
処理時間:60秒
【0058】
実験の結果、処理ガス中の酸素ガスの流量を、25sccm、50sccm、75sccm、100sccm、150sccmのそれぞれの場合に、酸化領域34dの厚さは、34.9nm、32.5nm、15.9nm、8.7nm、9.1nmであった。また、理ガス中の酸素ガスの流量が0sccmの場合には、天井部材34の表面が大きく削られた。以上の実験結果から、酸素ガスの流量が50sccm以下の場合の酸化領域34dの厚さに対して、酸素ガスの流量が75sccm以上の場合の酸化領域34dの厚さは半分以下の厚さになることが確認された。よって、工程ST5では、処理ガス中の酸素ガスの流量を当該処理ガス中の塩素ガスの流量の0.75倍以上の流量に設定することにより、酸化領域34dの厚さを相当に小さくすることが可能であることが確認された。
【0059】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62からの高周波電力が下部電極LEに与えられるように構成されているが、第1の高周波電源62からの高周波電力が上部電極30に与えられるように構成されていてもよい。即ち、第1の高周波電源62は上部電極30に接続されていてもよい。
【0060】
また、方法MTの実施に用いられるプラズマ処理装置は、プラズマ処理装置10に限定されるものではなく、処理容器、被処理体を支持する載置台、及び載置台の上方に設けられるシリコン製の天井部材を備えるものであれば、任意のプラズマ処理装置であってもよい。例えば、方法MTの実施に用いられるプラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置、又は、マイクロ波といった表面波により処理ガスを励起させるプラズマ処理装置であってもよい。