特許第6374881号(P6374881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374881シリコンウェハのための印刷可能な拡散障壁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374881
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】シリコンウェハのための印刷可能な拡散障壁
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20180806BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C09D11/10
   H01L21/28 301R
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-550006(P2015-550006)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-509088(P2016-509088A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2013003836
(87)【国際公開番号】WO2014101987
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】12008660.8
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13005735.9
(32)【優先日】2013年12月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ドール,オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】バース,セバスチャン
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−034258(JP,A)
【文献】 特表2002−539615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00 − 13/00
C08G 77/00 − 77/62
H01L 21/26 − 21/268
H01L 21/322 − 21/326
H01L 21/42 − 21/428
H01L 21/477 − 21/479
H01L 31/02
H01L 31/0216− 31/0224
H01L 31/0236
H01L 31/0248− 31/0256
H01L 31/0352− 31/036
H01L 31/0392− 31/078
H02S 10/00 − 10/40
H02S 30/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェハ上のリンおよびホウ素拡散に対する拡散障壁に用いるための印刷可能な、高粘性酸化物媒体の調製方法であって、無水のゾルゲルベースの合成が、
a.対称的におよび/または非対称的に二〜四置換されたアルコキシシランおよびアルコキシアルキルシラン

b.強カルボン酸
との縮合により行われること、
およびペースト状の、高粘性媒体(ペースト)が、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、チタンもしくはジルコニウムの、アルコラート、エステル、酢酸塩、水酸化物もしくは酸化物およびそれらの混合物を使用するハイブリッドゾルおよび/またはゲルを基にして、制御されたゲル化により調製されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
使用される対称的におよび/または非対称的に二〜四置換されたアルコキシシランおよびアルコキシアルキルシランが、飽和または不飽和の、分岐または非分岐の、脂肪族、脂環式または芳香族ラジカルを個々に含むかまたは様々なこれらのラジカルを含み、これらは、O、N、S、Cl、Brの群から選択されるヘテロ原子によりアルコキシドラジカルまたはアルキルラジカルの任意の所望の位置で順に官能化されてもよい、請求項に記載の方法。
【請求項3】
使用される強カルボン酸が、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、モノ、ジおよびトリクロロ酢酸、グリオキサル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、2−オキソグルタル酸の群からの酸であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
酸化物媒体が、高粘性、ほぼガラス様材料を与えるためにゲル化され、および得られる生成物が適当な溶媒もしくは溶媒混合物の添加により再溶解されるかまたは高剪断混合装置を用いてゾル状態へと変換されおよび部分的もしくは完全な構造回復(ゲル化)により均質なゲルへと変換されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
高粘性酸化物媒体が、増粘剤の添加なく形成されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも3か月の間の貯蔵において安定である安定な混合物が調製されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
安定性を改善するために、アセトキシトリアルキルシラン、アルコキシトリアルキルシラン、ハロトリアルキルシランおよびそれらの誘導体の群から選択されるキャッピング剤が酸化物媒体に添加されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
調製の間、SiO−Al、および/またアルミニウム、ゲルマニウムスズ、チタンもしくはジルコニウムアルコラート、エステル、酢酸塩、水酸化物もしくは酸化物の使用によって生じる上位の混合物の群からの二成分系または三成分系を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法により調製された酸化物媒体。
【請求項9】
光起電、マイクロエレクトロニクス、マイクロメカニカルおよびマイクロ光学用途のためのシリコンウェハの処置方法における拡散障壁の製造のための、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法により調製された印刷可能な酸化物媒体の使用。
【請求項10】
PERC、PERL、PERT、IBC太陽電池の製造のための請求項1〜のいずれか一項に記載の方法により調製された酸化物媒体の使用であって、太陽電池がMWT、EWT、選択的なエミッタ、選択的な表面電界、選択的な背面電界および二面性などのさらなる構造特徴を有する、前記使用。
【請求項11】
シリコンウェハの表面上に印刷された酸化物媒体が1または2以上の連続で実行される加熱段階(階段関数を用いて加熱する)および/または加熱傾斜を使用して50℃から950℃の間温度範囲でガラス化のために乾燥および圧縮され、結果として500nmまでの厚さを有する耐取扱いおよび耐摩耗層を形成することを特徴とする、シリコンウェハ上の耐取扱いおよび耐摩耗層の製造方法における請求項1〜のいずれか一項に記載の方法により調製された酸化物媒体の使用。
【請求項12】
シリコンウェハが高粘性酸化物媒体で印刷され、および印刷された層が熱的に圧縮されていることを特徴とする、シリコンウェハ上のリンおよびホウ素拡散に対する拡散障壁の製造方法における請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷可能な低粘性から高粘性の酸化物媒体の新規の調製方法および太陽電池の製造におけるそれらの使用、および改善された寿命を有するこれらの新規の媒体を使用して製造された製品に関する。
【背景技術】
【0002】
単純な太陽電池または現在市場で最高の市場占有率を表す太陽電池の製造は、以下に概略が示される必須の製造ステップを含む:
【0003】
1.ソーダメージエッチングおよびテクスチャ化
シリコンウェハ(pまたはn型ドーピングに基づく、単結晶、多結晶または疑似単結晶)は一般的に、同じエッチング浴槽でエッチング方法を用いて粘着性のソーダメージが取り除かれ、および「同時に」テクスチャ化する。この場合にはテクスチャ化は、エッチングステップまたは単に意図されたしかし特に調整されていないウェハ表面の粗面化の結果として、優先的に調整された表面(特質)の創作の意味にとられる。テクスチャ化の結果として、現在ウェハの表面は拡散反射面として作動しひいては波長および入射角次第である直接的な反射を減らし、最終的に表面上の光入射の吸収割合を増加し同じ電池の変換効率を増加する結果となる。
【0004】
シリコンウェハ処置のための上述のエッチング溶液は、典型的には、単結晶ウェハの場合には、溶媒としてイソプロピルアルコールを加えた希水酸化カリウム溶液からなる。イソプロピルアルコールより高蒸気圧または高沸点を有する他のアルコールは、もしこれが求められるエッチング結果を達成することができるなら代わりに加えてもよい。得られた求められるエッチング結果は、典型的には不規則に配置されまたは元の表面から少々エッチング除去された正方形の底部を有するピラミッドにより特徴づけられる形態である。密度、高さひいてはピラミッドの底部は、エッチング溶液の上述の構成要素、エッチング温度およびエッチングタンク中のウェハの滞留時間の好適な選択により部分的に影響され得る。単結晶ウェハのテクスチャ化は、典型的には70〜<90℃の温度範囲で行われ、ウェハの側ごとに10μmまでのエッチング除去速度が達成される。
【0005】
多結晶シリコンウェハの場合には、エッチング溶液は、中程度の濃度(10〜15%)を有する水酸化カリウム溶液からなる。しかしながら、このエッチング技術はまだ、産業的実施にほとんど使用されていない。さらに頻繁に、硝酸、フッ化水素酸および水からなるエッチング溶液が使用される。エッチング溶液は、例えば硫酸、リン酸、酢酸、N−メチルピロリドンならびにとりわけエッチング溶液の湿潤特性および特に影響を与えられるそのエッチング速度を可能にする界面活性剤などの様々な添加物により修正されることができる。これらの酸性のエッチング混合物は、表面上の入れ子のエッチングトレンチの形態を製造する。エッチングは典型的には4℃から<10℃の範囲の温度で行われ、ここでエッチング除去速度は一般的に、4μmから6μmである。
【0006】
テクスチャ化のすぐ後に、シリコンウェハを水で集中的に洗浄し、続く高温処理に備えて先行する処理ステップの結果として形成された化学酸化物層ならびにその中におよびその上にでも吸収されおよび吸着された汚染物質を除去するために希フッ化水素酸で処理する。
【0007】
2.拡散およびドーピング
先行するステップ(この場合にはp型ベースドーピング)でエッチングされ洗浄されたウェハは、昇温で、典型的には750℃と<1000℃との間で、酸化リンからなる蒸気で処理される。この操作の間、管状炉中の石英管で、ウェハは、乾燥した窒素、乾燥した酸素および塩化ホスホリルからなる制御された雰囲気下にさられる。この目的を達成するために、ウェハは、600℃と700℃の間の温度で石英管に注入される。気体混合物は、石英管を通して移動する。強く温められた管を通した気体混合物の移動の間、塩化ホスホリルは、酸化リン(例えばP2O5)および塩素ガスからなる蒸気が得られるように分解する。酸化リン蒸気は、とりわけウェハ表面上で凝結する(コーティング)。同時に、シリコン表面は、薄い酸化物層の形成を伴ってこれらの温度で酸化される。
【0008】
凝結された酸化リンは、この層に埋め込まれ、二酸化ケイ素および酸化リンの混合酸化物が、ウェハ表面上に形成される。この混合酸化物は、リンケイ酸ガラス(PSG)として知られている。このPSGガラスは、存在する酸化リンの濃度に依存して酸化リンに関して異なる軟化点および異なる拡散定数を有する。混合酸化物は、シリコンウェハの拡散源として働き、酸化リンは、PGFガラスとシリコンウェハとの間の接触面の方向への拡散の過程で拡散され、ウェハ表面上のシリコンとの反応(シリコサーマリー(silicothermally))によりリンに還元される。このようにして形成されたリンは、それから形成されそして高い析出係数により優先的にシリコン中に溶解するガラス基質中より高い桁のシリコンへの溶解性を有する。溶解の後、リンは、シリコンの容積(the volume of the silicon)中への濃度勾配に沿ってシリコン中に拡散する。この拡散工程では、約10程度の濃度勾配は、典型的な表面濃度1021原子/cmとベースドーピング領域の1016原子/cmとの間で形成する。典型的な拡散の深さは、250nm〜500nmであり、選択された拡散温度(例えば880℃)および強く温められた雰囲気中のウェハの総曝露時間(加熱およびコーティング段階および注入段階および冷却)に依存する。
【0009】
コーティング段階の間、PSG層は、典型的な様式では40〜60nmの層の厚さを有して形成される。シリコンの容積中への拡散も既に行われている間、PSGガラスを有するウェハのコーティングは、次に注入段階に続く。これはコーティング段階から切り離され得るが、実際には時間の観点から一般的にコーティングに直接的に結合され、そのため通常同じ温度でも行われる。ここで混合物の組成は、塩化ホスホリルの更なる供給が抑えられるように適応する。
【0010】
注入の間、シリコンの表面は、気体混合物中に存在する酸素によりさらに酸化され、酸化リンを同様に含む酸化リンが枯渇した二酸化ケイ素層が、実際のドーピング源である高度に酸化リン豊富なPSGガラスとシリコンウェハとの間に発生する。酸化物の成長は、ウェハ自身の高い表面ドーピングにより加速(1、2桁の加速)されるので、源(PSGガラス)からのドーパントの質量流量との関連でこの層の成長は非常により早い。これはある方法で達成されるドーピング源の枯渇または分離を可能にし、拡散している酸化リンを用いたその浸透、温度そして拡散係数に依存する材料の流れに依存する。このようにシリコンのドーピングは、ある限界で制御され得る。コーティング段階と注入段階からなる典型的な拡散継続時間は、例えば25分である。この処理の後、管状炉は、自動的に冷却され、ウェハは、600℃と700℃との間の温度でプロセス管から取り除かれ得る。
【0011】
n型ベースドーピングの形でのウェハのホウ素ドーピングの場合には、異なる方法が行われており、それはここでは別途説明されない。例えば、これらの場合のドーピングは、三塩化ホウ素または三臭化ホウ素を用いて行われる。ドーピングのために利用されるガス雰囲気の組成物の選択に依存して、ウェハ上にいわゆるボロンスキン(boron skin)の形成がみられ得る。このボロンスキンは、様々な影響を与える因子に依存する:重要なのは前述のドーピング雰囲気、温度、ドーピング継続時間、源の濃度および結合(線型結合された)パラメータ。
【0012】
かかる拡散工程では、基板が前もって対応する前処理(例えば拡散阻害および/または拡散抑制層および材料によるそれらの構築)にさらされない場合、使用されるウェハは、好ましい拡散およびドーピングの任意の領域を含むことができない(不均一な気体の流れにより形成されるものおよび不均一な組成物の結果物たる気体の区域は別として)のは当然である。
【0013】
完全を期すために、シリコンを基盤とした結晶太陽電池の製造における異なる範囲で確立されたさらなる拡散およびドーピング技術もまた、ここで注目されるべきである。したがって、
− イオン注入、
− APCVD、PECVD、MOCVDおよびLPCVDの工程を用いた、混合酸化物、例えばPGSおよびBSG(ホウケイ酸塩)のものなど、の気相堆積を介して促進されたドーピング、
− 混合酸化物および/またはセラミック材料および硬質材料(例えば窒化ホウ素)の(同時)スパッタリング、
− 最後の2つの気相堆積、
− 固体ドーパント源(例えば酸化ホウ素および窒化ホウ素)から始まる純粋に熱的な気相堆積、および
− ドーピング液(インク)およびペーストの液相堆積
について言及され得る。
【0014】
後者は、いわゆるインラインドーピングで頻繁に使用され、対応するペーストおよびインクは、ドープされるウェハ側へ好適な方法を用いて塗布される。塗布の後またはその間でさえもドーピングに用いられる組成物に存在する溶媒は、温度または/および真空処理により除去される。これは、ウェハ表面上に実際のドーパントを残す。用いられ得る液体ドーピング源は、例えば希リン酸溶液または希ホウ酸溶液であり、およびゾルゲルベースの系でもまたは重合ボラジン化合物でもある。
【0015】
対応するドーピングペーストは、付加的な濃化剤ポリマーの使用により事実上排他的に特徴づけられ、好適な形状のドーパントを含む。上述のドーピング媒体からの溶媒の留去に続いて通常高温での処理があり、その間、望ましくなくおよび妨害する添加剤だが形成に必要なものが、「焼成」および/または熱分解のいずれかをされる。溶媒の除去および焼却は、同時に行われてもよいが、その必要はない。被覆された基板は、続いて通常800℃と1000℃との間の温度で流入加熱炉を通り、ここで温度は、通過速度を短くするために管状炉での気相拡散と比較してわずかに上昇することがある。流入炉で広がるガス雰囲気は、ドーピングの必要性にしたがい異なっていてもよく、乾燥した窒素、乾燥した空気、乾燥した空気および乾燥した窒素の混合物および/または通過する炉の設計に依存して、上述のガス雰囲気のうちいずれかの域からなっていてもよい。
【0016】
さらなるガス混合物があり得るが、現在のところ産業的に主要な重要性を有さない。インライン拡散の特徴は、ドーパントのコーティングおよび注入が原則として互いに分離して行われ得ることである。
【0017】
3.ドーパント源の除去および任意のエッジ絶縁
ドーピング後に存在するウェハは、表面の両側で多かれ少なかれガラスで両側を被覆される。この場合、多かれ少なかれとは、ドーピング工程の間用いられ得る改良のことである:使用されるプロセスボートの1つの位置における2つのウェハの連続の配置により促進される両面拡散対疑似片面拡散。後者の変形は、主に片面ドーピングを可能にし、しかし完全に裏での拡散を抑制しない。
【0018】
両方の場合、希フッ化水素酸でのエッチングを用いて表面からドーピングの後に存在するガラスを取り除くことは、現在のところ最新技術である。この目的を達成するために、ウェハは、はじめにウェットプロセスボートにバッチに分けて再ロードされ、その補助で典型的には2%〜5%の希フッ化水素酸の溶液に浸けられ、表面から完全にガラスがなくなるか、必要なエッチング期間と機械による工程自動化の和パラメータを表す工程サイクル期間が終了するまでその中に放置される。
【0019】
ガラスの完全な除去は、例えば希釈フッ化水素酸水溶液によるシリコンウェハ表面の完全な除湿により確立することができる。PSGガラスの完全な除去は、これらの工程条件下、例えば2%フッ化水素酸溶液を使用して室温で、210秒以内で達成される。対応するBSGガラスのエッチングは、よりゆっくりでより長い工程時間を必要とし、場合により使用されるフッ化水素酸の濃度もより高い。エッチングの後、ウェハは水で洗われる。
【0020】
一方で、ウェハ表面上のガラスのエッチングは、水平に作業する工程で行われることもでき、ウェハは、対応する工程タンク(インライン機械)を通り一定流量でエッチャに水平に注入される。この場合、ウェハは、工程タンクおよびそこに存在するエッチング溶液を通してローラで運ばれるか、またはエッチング媒体がローラ塗布を用いてウェハ表面上へ輸送される。PSGのエッチングの間、ウェハの典型的な滞留時間は、約90秒であり、使用されるフッ化水素酸は、増加するエッチング割合の結果としてより短い滞留時間を埋め合わせるためにバッチ処理の場合よりもいくらかより高く濃縮される。フッ化水素酸の濃度は、典型的には5%である。タンクの温度は、任意に付加的に室温(>25℃<50℃)と比較してわずかに増加してもよい。
【0021】
前に概要を述べた工程で、いわゆる縁絶縁を連続して同時に行うことが確立され、わずかに修正された工程の流れ:縁絶縁→ガラスエッチング、を生じさせる。縁絶縁は、両面拡散の、また意図的な片面連続拡散の場合にも、系固有の特徴から生じるプロセス工学必需品である。大きい領域の寄生のp−n接合は、太陽電池の裏(より後)に存在し、それはプロセス工学の理由のため、より後のプロセスの間、完全ではないが部分的に除去される。
【0022】
この結果として太陽電池の前および裏は、寄生のおよび残留p−n接合を用いて短絡され(トンネルコンタクト)、それはより後の太陽電池の変換効率を減少させる。この接合の除去のために、ウェハは、硝酸およびフッ化水素酸からなるエッチング溶液を越えて片側に送られる。エッチング溶液は、例えば第二の成分として硫酸またはリン酸を含んでもよい。代わりに、エッチング溶液は、ウェハの裏にローラを用いて輸送される(運ばれる)。この工程で典型的に達成されるエッチングの除去割合は、4℃と8℃との間の温度でシリコン(処理される表面に存在するガラス層を含む)の約1μmである。この工程において、未だウェハの反対側に存在するガラス層は、マスクとしての役割を果たし、それは、この側のエッチング浸食に対してある保護を与える。このガラス層は、続いて既に記載されたようにガラスエッチングを用いて除去される。
【0023】
さらに、縁絶縁は、プラズマエッチング工程を用いて行われることもできる。そして、このプラズマエッチングは通常、ガラスエッチングの前に行われる。この目的を達成するために、複数のウェハは、順に積み重ねられ、外側のエッジは、プラズマにさらされる。プラズマは、フッ素化されたガス、例えばテトラフルオロメタンを供給される。これらのガスのプラズマ分解で起こる反応種は、ウェハのエッジをエッチングする。そして、一般に、プラズマエッチングにガラスエッチングが続く。
【0024】
4.反射防止層による前面のコーティング
ガラスのエッチングおよび任意の縁絶縁の後、より後の太陽電池の前面は通常アモルファスおよび水素豊富な窒化ケイ素からなる反射防止コーティングで被覆される。代替の反射防止コーティングは、あり得る。可能なコーティングは、二酸化チタン、フッ化マグネシウム、二酸化スズであり得、および/または二酸化ケイ素および窒化ケイ素の対応する積み重ねられた層からなる。しかしながら、異なる組成を有する反射防止コーティングも、技術的に可能である。
【0025】
上述された窒化ケイ素でのウェハ表面のコーティングは、原則的に2つの機能を満たす:一方では、層はシリコン中の電荷担体を表面から隔離することができ、シリコン表面でこれらの電荷担体の再結合速度をかなり減らすことができる多数の併合した正電荷により電場を発生させ(電界効果表面安定化処理)、他方ではこの層は例えば屈折率および層の厚さなどの光学パラメータに依存する反射減少特性を発生させ、それはより多くの光をより後の太陽電池に連結させることを可能にする一因となる。2つの効果は、太陽電池の変換効率を増大することができる。
【0026】
現在使用されている層の典型的な性質は:約2.05の屈折率を有する上述した窒化ケイ素のみの使用に関する〜80nmの層の厚さである。反射防止減少は、600nmの光波長領域で最もはっきりと明白である。ここで方向性のあるおよび方向性のない反射は、当初の入射光(シリコンウェハの垂直な面への垂直入射)の約1%から3%の値を提示する。
【0027】
上述した窒化ケイ素層は現在、概して直接的PECVD工程を用いて表面に堆積される。この目的を達成するために、シランおよびアンモニアが導入されているプラズマは、アルゴンガス雰囲気下で刺激される。シランおよびアンモニアは、窒化ケイ素を得るためイオン性およびフリーラジカル反応を介してプラズマ中で反応させられ、同時にウェハ表面上に堆積される。層の特性は、例えば反応物質の個々のガスの流れにより調整および制御され得る。上述した窒化ケイ素層の堆積は、キャリアガスとして水素を用いておよび/または反応物単独で行うこともできる。典型的な堆積温度は、300℃と400℃との間の範囲である。代替の堆積方法は、例えばLPCVDおよび/またはスパッタリングであり得る。
【0028】
5.表面電極格子の製造
反射防止層の堆積の後、表面電極は、窒化ケイ素で被覆されたウェハ表面に規定される。産業的実施において、金属焼結ペーストを使用してスクリーン印刷法を用いて電極を製造することが定着した。しかしながら、これは、望ましい金属接触の製造の多くの異なる可能性のうちの1つに過ぎない。
【0029】
スクリーン印刷の金属化において、銀粒子で高度に強化されたペースト(銀含有量≧80%)が、通常使用される。残りの成分の総和は、例えば溶媒、結合剤および増粘剤などのペーストの形成に必要なレオロジー補助剤から生じる。さらに、銀ペーストは、特別なガラスフリット混合物、通常酸化物および二酸化ケイ素、ホウケイ酸ガラスおよびまた酸化鉛および/または酸化ビスマスに基づく混合酸化物を含む。ガラスフリットは、本質的に2つの機能を満たす:一方ではウェハ表面と焼結される銀粒子の塊の間の接着プロモーターとしての役割を果たし、他方で下層のシリコンとの直接の抵抗接点を促進するために窒化ケイ素の上層の浸透に関与する。
【0030】
窒化ケイ素の浸透は、シリコン表面中へのガラスフリットマトリックス中に溶解された銀の拡散が後続するエッチング工程を介して行われ、それにより抵抗接点形成は達成される。実際には、銀ペーストは、スクリーン印刷を用いてウェハ表面に堆積され、続いて数分間約200℃〜300℃の温度で乾燥される。完全を期すために、二重の印刷工程が、産業的に使用もされることが言及されるべきであり、それは第二の電極格子が、第一の印刷段階の間に生成された電極格子上に精密記録で印刷されることを可能にする。
【0031】
銀の金属化の厚さは、このように上昇し、電極格子中の伝導性に好ましい影響を及ぼし得る。この乾燥の間、ペースト中に存在する溶媒は、ペーストから除去される。印刷されたウェハは、続いて貫流炉を通る。この型の炉は、一般的に活性化されることができ、および互いに独立して温度制御されることができる複数の加熱領域を有する。貫流炉の表面安定化処理の間、ウェハは、約950℃までの温度に加熱される。しかしながら、個々のウェハは、一般的に数秒間このピーク温度にさらされるだけである。貫流段階の残りの間、ウェハは、600℃〜800℃の温度を有する。これらの温度では、例えば結合剤などの銀ペースト中に存在する有機共存物質は燃え尽き、窒化ケイ素層のエッチングが始まる。有効であるピーク温度の短時間間隔の間、シリコンを用いた接触形成が行われる。ウェハは、続いて冷却される。
【0032】
このように簡潔に概略された接触形成工程は通常、2つの残りの接触形成で同時に行われ(6および7と比較)、共焼成工程という用語がこの場合にも使用される理由である。
【0033】
前面の電極格子はそれ自体、典型的には80μm〜140μmの幅を有するフィンガー(thin finger)(典型的な数は>=68)、および1.2mm〜2.2mmの範囲の幅(それらの数に依存し、典型的には2〜3)を有する母線からなる。印刷された銀成分の典型的な高さは、一般的に10μmと25μmとの間である。アスペクト比は、まれに0.3より大きい。
【0034】
6.裏面母線の製造
裏面母線は一般的に、スクリーン印刷工程を用いて同じく適用および規定される。この目的を達成するために、前面金属化に使用される同様の銀ペーストが使用される。このペーストは、同様の組成を有するが、アルミニウムの割合が典型的には2%である銀およびアルミニウムの合金を含む。さらにこのペーストは、より低いガラスフリット内容物を含む。母線、一般的には2ユニット、はポイント5の下で既に記載されたように典型的な幅の4mmでスクリーン印刷を用いてウェハの裏に印刷され、ぎっしり詰められ、焼結される。
【0035】
7.裏面電極の製造
裏面電極は、母線の印刷後に規定される。電極材料は、アルミニウムからなり、アルミニウム含有ペーストが電極の規定のために縁剥離<1mmを有するスクリーン印刷を用いてウェハ裏の残りの空き領域に印刷される理由である。ペーストは、アルミニウム≧80%から構成される。残りの構成要素は、ポイント5の下で既に言及されている(例えば、溶媒、結合剤など)。アルミニウムペーストは、暖めている間溶け始めるアルミニウム粒子および溶けたアルミニウムに溶解しているウェハからのシリコンによる共焼成の間ウェハに結合される。溶けた混合物は、ドーパント源として機能し、シリコンにアルミニウムを放ち(溶解限度:0.016原子%)、ここでシリコンは、この注入の結果としてpドープされる。ウェハの冷却の間、577℃で凝固し、Siの0.12のモル分率を有する組成物を有するアルミニウムとシリコンの共融混合物はとりわけ、ウェハ表面上に堆積する。
【0036】
シリコンへのアルミニウムの注入の結果として、シリコン中の自由電荷担体の部分にある鏡(電子ミラー)の一種として機能する高度にドープされたp型層が、ウェハの裏に形成される。これらの電荷担体は、このポテンシャル壁を乗り越えることができずこのようにとても効果的に裏のウェハ表面から離れた状態であり、この表面で電荷担体の全体的に低減した再結合割合から明らかである。このポテンシャル壁は一般的に、背面電界と呼ばれる。
【0037】
ポイント5、6および7の下で記載される工程段階の順番は、ここで概説された順番に一致し得るが一致する必要はない。概説された工程段階が原則として任意の考えられる組合せで行われ得ることは当業者にとって明らかである。
【0038】
8.任意の縁絶縁
ウェハの縁絶縁がポイント3の下で記載されたように既に行われていない場合、これは典型的に、共焼成後にレーザービームを用いて行われる。この目的を達成するために、レーザービームは太陽電池の前に向けられ、前面側のp−n接合はこの光線により結合したエネルギーを用いて分離される。15μmまでの深さを有する切り溝は、ここでレーザーの作用の結果として生じる。シリコンはここで、アブレーション機構を介して処理された場所から取り除かれるかまたはレーザー溝から取り除かれる。このレーザー溝は、典型的には30μmから60μmの幅を有し、太陽電池の縁から約200μm離れている。
【0039】
製造の後、太陽電池は、それらの個々の動作に従って特徴づけられおよび個々の動作区分に分類される。
当業者はn型およびまたp型基板材料を両方用いた太陽電池構築に気づいている。これらの太陽電池の型は、PERT太陽電池
・PERC太陽電池
・PERL太陽電池
・PERT太陽電池
・それら由来のMWT−PERTおよびMWT−PERL太陽電池
・両面受光型太陽電池
・裏面接触電池
・指間接触でのインターデジタル接触電池
を含む。
【0040】
代替のドーピング技術の選択は、既に冒頭に記述された気相ドーピングへの代替として、一般にシリコン基板上の局所的に異なるドーピングを有する領域の製造の問題を解決することができない。ここで言及されてもよい代替技術は、PECVDおよびAPCVD工程を用いた、ドープされたガラスの、またはアモルファスの混合酸化物の、堆積である。これらのガラスの下に配置されるシリコンの熱的に誘導されるドーピングは、これらのガラスから簡単に達成され得る。しかしながら、例えば局所的に異なるドーピングを有する領域を製造するために、これらのガラスは、これらのうち対応する構造を調製するためにマスク処理を用いてエッチングされなければならない。
【0041】
この目的を達成するために、構築された拡散障壁は、ドープされた領域を規定するためにガラスの堆積より前にシリコンウェハ上に堆積され得る。異なるドーピングレベルが、ウェハの前面および裏面に必要とされる場合、同様の効果は、拡散障壁を用いて達成され得る。拡散障壁が、PVDおよびCVD工程を用いて堆積される材料からなる場合、二酸化ケイ素、窒化ケイ素あるいはまた例えばオキシ窒化ケイ素からなる従来の障壁材料の場合のように、それらはウェハ表面上に異なるドーピングを有する領域を製造するために後続工程ステップにおける構築を受けなければならない。
【発明の概要】
【0042】
発明の目的
通常太陽電池の産業的な製造において使用されるドーピング技術、すなわち塩化ホスホリルおよび/または三臭化ホウ素などの反応性の高い前駆体を有する気相促進拡散によるものは、シリコンウェハ上に局所的なドーピングおよび/または局所的に異なるドーピングを特異的に製造されることができない。既知のドーピング技術の使用において、かかる構造の製造は、複雑で高価な基板の構造化を介してのみ可能である。構造化の間、様々なマスク処理が互いに適合されなければならず、かかる基板の産業的な大量生産を非常に複雑にする。このため、かかる構造化を必要とする太陽電池の製造概念は、それ自身今まで確立されることができなかった。したがって、本発明の目的は、これらの問題を克服できるようにする、シリコンウェハおよびこの工程に用いられることができる媒体上での明確な局所的なドーピングの単純で安価な方法を提供することである。
【0043】
発明の主題
したがって、本発明の主題は、望まれていない拡散に対する保護層を単純な印刷技術に導入することができる好適で安価な媒体を提供することである。
この目的に好適な印刷可能な高粘性酸化物媒体が、
a.対称的におよび/または非対称的に二〜四置換されたアルコキシシランおよびアルコキシアルキルシラン

b.強カルボン酸
との縮合による無水のゾルゲルベースの合成を行うこと、および制御されたゲル化によりペースト状の、高粘性媒体(ペースト)を調製することにより、調製されることが今見出された。これらの媒体は対応する表面上への印刷の後、拡散障壁に変換され得る。
【0044】
ゾルゲル合成における縮合のために使用される対称的におよび/または非対称的に二〜四置換されたアルコキシシランおよびアルコキシアルキルシランは、飽和または不飽和の、分岐または非分岐の、脂肪族、脂環式または芳香族ラジカルを個々に含むかまたは様々なこれらのラジカルを含んでよく、これらは、O、N、S、Cl、Brの群から選択されるヘテロ原子によりアルコキシドラジカルまたはアルキルラジカルの任意の所望の位置で順に官能化されてもよい。本発明にしたがい、高粘性酸化物媒体の調製のための無水のゾルゲル合成は、強カルボン酸の存在下で行われる。それらは好ましくはギ酸、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、モノ、ジおよびトリクロロ酢酸、グリオキサル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、2−オキソグルタル酸の群から選択される酸である。
【0045】
所望の目的に特に好適なハイブリッドのゾルおよび/またはゲルに基づく高粘性酸化物媒体はアルミニウム、ゲルマニウム、亜鉛、スズ、チタン、ジルコニウムもしくは鉛の、アルコラート、エステル、酢酸塩水酸化物もしくは酸化物、およびそれらの混合物を使用して調製される場合に得られる。
【0046】
本発明による工程において印刷可能な高粘性媒体を調製するために、酸化物媒体は高粘性、およそガラス様材料を与えるためにゲル化され、それは続いて適当な溶媒または溶媒混合物の添加により再溶解されるかあるいは高剪断混合装置を用いてゾル状態へと変換され、部分的もしくは完全な構造回復(ゲル化)により均質なゲルへと変換されるかである。組成物は、増粘剤の追加なしに高粘性酸化物媒体として有利に形成され得る。さらに、少なくとも3か月の間の貯蔵において安定である安定な混合物は、このように調製され得る。
【0047】
安定性を改善するために、アセトキシトリアルキルシラン、アルコキシトリアルキルシラン、ハロトリアルキルシランおよびそれらの誘導体の群から選択される「キャッピング剤」が酸化物媒体に添加される場合、印刷可能な高粘性媒体は特に良好な性質を有する。
【0048】
本発明の方法は、調製の間SiO−Al、および/またアルミニウム、ゲルマニウム、亜鉛、スズ、チタン、ジルコニウムもしくは鉛の、アルコラート、エステル、酢酸塩、水酸化物もしくは酸化物の使用によって生じる上位の混合物の群からの二成分系または三成分系を含む酸化物媒体を生じる。これらの印刷可能な高粘性酸化物媒体は、光起電、マイクロエレクトロニクス、マイクロメカニカルおよびマイクロ光学用途のためのシリコンウェハの処置方法における拡散障壁の製造のために特に好適である。この目的のために、これらの媒体は、スピンまたはディップコーティング、ドロップキャスティング、カーテンまたはスロットダイキャスティング(curtain or slot-dye casting)、スクリーンまたはフレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェットまたはエアゾールジェット印刷、オフセット印刷、マイクロコンタクト印刷、電気流体力学分配、ローラまたはスプレー印刷、超音波スプレー印刷、パイプジェッティング、レーザー転写印刷、パッド印刷またはロータリースクリーン印刷による、しかし好ましくはスクリーン印刷による単純な方法で印刷されることでき、そしてPERC、PERL、PERT、IBC太陽電池およびその他の製造のために使用されることができ、ここで太陽電池はMWT、EWTなどのさらなる構造特性、選択的なエミッタ、選択的な表面電界、選択的な背面電界および二面性を有することができる。
【0049】
酸化物媒体は、熱処理の結果としてLCD技術におけるナトリウムおよびカリウム拡散障壁として働く薄い高密度ガラス層の製造にとても好適である。特に、それらはカバーガラスから液晶相へのイオンの拡散を妨げる、上述した可能なハイブリッドゾルに由来し得るドープされたSiOおよび/または混合された酸化物からなるディスプレイのカバーガラス上の薄い高密度ガラス層の製造に好適である。
【0050】
シリコンウェハ上の耐取扱いおよび耐摩耗性の層の製造において、シリコンウェハの表面上に印刷された酸化物媒体は、50℃と950℃の間、好ましくは50℃と700℃の間、特に好ましくは50℃と400℃の間の温度範囲でガラス化のために乾燥および圧縮され、同時にまたは連続して、1または2以上の連続で実行される加熱段階(階段関数を用いて加熱する)および/または加熱傾斜を使用して500nmまでの厚さを有する耐取扱いおよび耐摩耗性の層の形成をもたらす。これに関連して、本発明による酸化物媒体が、親水性および/または疎水性シリコン表面に印刷されることができ、続いて拡散障壁に変換されることは特に重要である。
【0051】
シリコンウェハ上のリンおよびホウ素拡散に対する拡散障壁の製造のために、シリコンウェハは、高粘性酸化物媒体で印刷され、上に印刷された層は、熱的に圧縮される。さらにフッ化水素酸および任意にリン酸を含む酸混合物での熱処理により、本発明による酸化物媒体の印刷、乾燥および圧縮および/またはドーピングの後に形成されるガラス層をエッチングすることにより、塗布された酸化物媒体の除去の後、疎水性のシリコンウェハ表面を得ることが可能であり、ここで、使用されるエッチング混合物は、エッチング液として0.001〜10重量%または0.001〜10重量%フッ化水素酸および0.001〜10重量%リン酸の混合物を含む。
【0052】
発明の詳細な説明
実験は、上述された課題は、以下で酸化物媒体とも呼ばれ、粘性>500mPasを有する印刷可能な高粘性媒体の調製ならびに特定の局所ドーピングのためのおよび/またはシリコンウェハ上の局所的に異なるドーピングの製造のための工程におけるそれらの使用により解決され得ることを示した。本発明による印刷可能な高粘性酸化物媒体は、無水のゾルゲルベースの合成における二〜四置換されたアルコキシシランと強カルボン酸とを縮合することによりおよび制御されたゲル化による高粘性媒体(ペースト)を調製することにより、調製されることができる。
特に良好な工程結果が、アルコキシシランにより対称的におよび/または非対称的に二〜四置換されたアルコキシシランおよびアルコキシアルキルシランが無水のゾルゲルベースの合成において強カルボン酸と縮合され、拡散障壁として印刷されるペースト形状および高粘性の印刷可能なペーストが制御されたゲルにより調製される場合、達成される。
【0053】
拡散障壁の製造のために、高粘性ペーストは、スクリーン印刷を用いたウェハの表面上に印刷されることができ、続いて乾燥され、そして熱的に圧縮される。このウェハ上に印刷された材料の圧縮は通常、50〜950℃の温度範囲で行われ、しかし乾燥および圧縮は、500〜700℃の範囲の温度で従来のドーピング炉への導入の特別の条件下で同時に行われることができる。用いられるドーピング炉は通常水平な管状炉である。本発明の別の態様において、乾燥および圧縮は1工程ステップで行われることができる。
【0054】
しかしながら、このように製造された拡散障壁は、酸化物層であり、拡散障壁としてだけでなくエッチング障壁または太陽電池の製造におけるいわゆるエッチングレジストとしても役に立つことができる。太陽電池の製造の間、印刷されおよび乾燥されおよび任意に圧縮されたペーストは、フッ化水素酸を含む湿式化学エッチング浴およびそれらの蒸気またはフッ化水素酸を含む蒸気混合物への一時的なエッチング障壁として、しかしまたフッ素含有前駆体を用いたプラズマエッチング工程においてまたは反応性のイオンエッチングにおいて働く。
【0055】
拡散障壁の製造のための本発明による記載された工程を行うために、使用される対称的におよび/または非対称的に二〜四置換されたアルコキシシランは、個々にまたは異なって、飽和または不飽和の、分岐または非分岐の、脂肪族、脂環式または芳香族ラジカルを含んでもよく、これらは、O、N、S、Cl、Brの群から選択されるヘテロ原子によりアルコキシドラジカルの任意の所望の位置で順に官能化されてもよい。
【0056】
縮合反応は上記のようにカルボン酸の存在下で行われる。
カルボン酸は、一般式
【化1】
の有機酸を意味し、ここで、カルボニル基(C=O)は比較的強い電子吸引効果を有し、そのためヒドロキシル基におけるプロトンの結合は強く分極され、塩基性化合物の存在下においてHイオンの遊離でそれらの容易な放出をもたらし得るので、化学的および物理的な性質は一方では明らかにカルボキシル基により決定される。カルボン酸の酸性度は、電子吸引性(−I効果(-I effect))を有する置換基が、例えば対応するハロゲン化された酸またはジカルボン酸においてなど、アルファC原子上に存在する場合、より高い。
したがって、本発明による工程における使用に特に好適である強カルボン酸は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、モノ、ジおよびトリクロロ酢酸、グリオキサル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、ピルビン酸、リンゴ酸および2−オキソグルタル酸の群からの酸である。
【0057】
記載されている工程は、印刷可能な高粘性酸化物媒体がアルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、亜鉛、スズ、チタン、ジルコニウム、ヒ素もしくは鉛の、アルコラート、エステル水酸化物もしくは酸化物、およびそれらの混合物を使用するハイブリッドゾルおよび/またはゲルに基づくドーピング媒体の形成において調製されることを可能にする。
【0058】
本発明にしたがって、酸化物媒体は、高粘性材料を与えるためにゲル化され、得られる生成物は、好適な溶媒または溶媒混合物の添加により再溶解されるかあるいは高剪断混合装置を用いてゾル状態へ変形され、部分的なまたは完全な構造回復(ゲル化)の結果として均質なゲルを与えるように回復する。
【0059】
本発明による工程は、高粘性酸化物媒体が増粘剤の添加なしに配合される事実を介して、特に有益であることを証明した。このように、少なくとも3か月の間の貯蔵において安定である安定な混合物が調製される。調製の間、アセトキシトリアルキルシラン、アルコキシトリアルキルシラン、ハロトリアルキルシランおよびそれらの誘導体の群から選択される「キャッピング剤」が酸化物媒体に添加される場合、これは、得られる媒体の安定性における改善をもたらす。添加された「キャッピング剤」は、縮合やゲル化反応に必ずしも組み込まれる必要はないが、代わりに、それらの添加の時間もまた、それらはゲル化が完了した後に得られるペースト材料にかき混ぜながら入れられることができるように選択されてもよく、ここでキャッピング剤は、例えばネットワークに存在するシラノール基などの反応性のある末端基と化学的に反応し、そしてそれらを制御されていないおよび望まれていない方法で起こるさらなる縮合事象を受けることから防ぐ。このように調製された酸化物媒体は、光起電、マイクロエレクトロニクス、マイクロメカニカルおよびマイクロ光学用途のためのシリコンウェハの処置における拡散障壁の製造のための印刷可能な媒体としての使用に特に好適である。
【0060】
本発明にしたがい調製された酸化物媒体は、粘稠度(consistency)に依存して(例えば粘性などのレオロジーの性質に依存して)、スピンまたはディップコーティング、ドロップキャスティング、カーテンまたはスロットダイキャスティング(curtain or slot-dye casting)、スクリーンまたはフレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェットまたはエアゾールジェット印刷、オフセット印刷、マイクロコンタクトプリンティング、電気流体力学分配、ローラまたはスプレー印刷、超音波スプレー印刷、パイプジェッティング、レーザー転写印刷、パッド印刷またはロータリースクリーン印刷により印刷されることができ、ここで、印刷は好ましくはスクリーン印刷により行われる。
【0061】
それに応じて調製される酸化物媒体は、PERC、PERL、PERT、IBC太陽電池(BJBCまたはBCBJ)および他のものの製造に特に好適であり、ここで、太陽電池は、MWT、EWT、選択的エミッタ、選択的表面電界、選択的背面電界および二面性などのさらなる構造的特徴を有し、あるいは熱処理の結果としてLCD技術におけるナトリウムおよびカリウム拡散障壁として働く薄い高密度ガラス層の製造に、特にカバーガラスから液晶相へのイオンの拡散を妨げるドープされたSiOからなるディスプレイのカバーガラス上の薄い高密度ガラス層の製造に、特に好適である。
【0062】
したがって、本発明はまた、上述された工程により調製されおよびSiO−Al、および/またアルミニウム、ゲルマニウム、亜鉛、スズ、チタン、ジルコニウムもしくは鉛の、アルコラート、エステル、酢酸塩、水酸化物もしくは酸化物の使用を介して生じる上位の混合物の群からの二成分系または三成分系を含む本発明にしたがって調製された新規な酸化物媒体に関する。化学量論比以下または完全に化学量論比における好適なマスキング剤、錯化剤およびキレート剤の添加は、これらのハイブリッドゾルが一方では立体的に安定化されることができ、他方では特に影響されならびにそれらの縮合およびゲル化割合に関してしかしまたレオロジー的な特徴に関して制御される。好適なマスキング剤および錯化剤ならびにキレート剤は特許明細書WO2012/119686A、WO2012119685A1およびWO2012119684Aに示される。したがって、これらの明細書の内容は、本願の開示内容に組み込まれる。
【0063】
この方法で得られた酸化物媒体を用いて、シリコンウェハ上の耐取扱いおよび耐摩耗性の層を製造することが可能である。この結果は、拡散障壁の製造のための親水性のウェハ上に酸化物媒体を印刷することにより達成され、ここで親水性のウェハは、例えば酸化膜(湿式化学、自然酸化物、PECVD、APCVDおよび/または例えば熱酸化物)を用いて提供されるものである。さらに、対応する拡散障壁は、疎水性のシリコンウェハ表面上に同様に製造されることができる。疎水性シリコンウェハ表面は、好適なフッ化アンモニウムまたはHF溶液での洗浄ステップにより酸化物がなくなり、末端HまたはFによる疎水性の特性を有する表面を意味すると解される。しかしながら、それらはまた、少数の原子の厚さを有するシラン層の堆積(ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で飽和された雰囲気における堆積)を介して疎水性の特性を有するウェハ表面を意味すると解される。
【0064】
拡散障壁は、本発明にしたがって調製され、表面に印刷された酸化物媒体が、同時にまたは連続で、任意に1または2以上の連続で実行される加熱段階(階段関数を用いて加熱する)および/または加熱傾斜を使用して50℃と950℃の間、好ましくは50℃と700℃の間、特に好ましくは50℃と400℃の間の温度範囲でガラス化のために乾燥されおよび圧縮される工程において製造され得る。
【0065】
一般化された条件では、耐取扱いおよび耐摩耗性の層の製造のためのこの工程は、
a)シリコンウェハは、所望の拡散障壁の製造のための酸化物媒体のための酸化物媒体を用いて印刷され、上に印刷された層は乾燥され、および任意に圧縮され、およびこのように被覆されたウェハは、ドーピング媒体を用いた後続の拡散を受け、ここで後者は印刷可能なゾルゲルベースの酸化物ドーピング材料、他の印刷可能なドーピングインクおよび/またはペースト、あるいはドーパントを与えるAPCVDおよび/またはPECVDガラス、およびまた塩化ホスホリルまたは三臭化ホウ素または三塩化ホウ素ドーピングを用いた従来の気相拡散からのドーパントとすることができ、保護された面はドープされないのに対し保護されていないウェハの面ではウェハのドーピングを引き起こすこと、
または
【0066】
b)a)の下に記載されたドーピングの後、処理されたウェハは、ドーパントおよびエッチングを用いて片面の拡散障壁の残渣をなくし、印刷可能な酸化物媒体はステップa)におけるウェハの面と反対の片面の全表面の上に拡散障壁として続いて印刷され、乾燥されおよび任意に圧縮され、ならびに現在拡散障壁により保護されていない反対のウェハ面は、さらなる拡散を受け、ここで使用されたドーピング媒体がa)に示された基準を満たすこと、
または
c)シリコンウェハは、印刷できる酸化物媒体を用いて片面の全表面の上に印刷され、酸化物媒体は、乾燥され、任意に圧縮され、反対のウェハ面は、構築された印刷パターンを使用して同じ印刷可能な酸化物媒体で被覆され、酸化物媒体は、乾燥されおよび/または圧縮され、およびこのように被覆されたウェハは、ドーピング媒体を用いて後続の拡散を受け、ここで使用されるドーピング媒体はa)に示された基準を満たし、印刷可能な酸化物媒体により保護されている領域はドープされない一方、ウェハの保護されていない領域においてドーピングが確立される結果となること、
または
【0067】
d)ポイントc)の下で示された工程が行われ、ここで処理されたウェハは、概説された工程手順の後ドーパントおよびエッチングを用いた片面の拡散障壁の残渣をなくし、印刷可能な酸化物媒体は、ポイントc)の下使用されたものに対し包括的な負の印刷パターンで構築された方法においてドープされたウェハ面上に印刷され、乾燥されおよび任意に圧縮され、およびドーピング媒体を用いた後続の拡散が続いて行われ、ここで使用されるドーピング媒体はa)に示された基準を満たし、印刷可能な酸化物媒体により保護されている領域はドープされない一方、ウェハの保護されていない領域においてドーピングが確立される結果となること、
または
e)本発明による工程は、ポイントc)の下記載された工程手順が使用される前に、本発明による工程がd)の下のように行われること、
または
【0068】
f)シリコンウェハは、全表面の上でおよび/またはポイントa)の下示されたドーピング媒体を用いた構築された方法において被覆され、ここで前記ドーピング媒体の構築は、本発明において印刷可能な、乾燥されおよび任意に圧縮された酸化物媒体の使用を介して達成され、堆積したドーピング媒体は続いて全表面にわたりおよび/または印刷可能な酸化物媒体を用いた構築された方法において被覆され、ならびに酸化物媒体の乾燥および任意の圧縮の後完全に封入されること、
または
g)シリコンウェハは、制御された湿潤膜(wet-film)塗布および後続の乾燥およびそれらの任意の圧縮の結果として、続いて堆積されるドーピング媒体に拡散抑制作用を有する1層の厚さの拡散障壁という結果をもたらすよう、全表面にわたりおよび/または印刷可能な酸化物媒体を用いた構築された方法において印刷され、ここで使用されるドーピング媒体はa)で示される基準を満たす、よって基板に解放されるドーパントの用量は制御されること、
を特徴とする。
【0069】
本発明にしたがって製造された層は、シリコンウェハへの高粘性ゾルゲル酸化物媒体の塗布およびそれらの熱圧縮の後により得られ、リンおよびホウ素拡散に対する拡散障壁として働くことが特に有利であることが証明された。
【0070】
この方法で特徴づけられる工程において、言及されたドーピング媒体は、熱的に活性化され拡散をもたらされなければならないことは当然である。活性化は、例えば基板がバッチ式または連続的に乗せられる炉における加熱による、レーザー光線を用いたまたは高エネルギーのランプ、好ましくはハロゲンランプを用いた基板の照射によるものなどの様々な方法で行われ得る。
【0071】
疎水性のシリコンウェハ表面の形成のために、本発明による酸化物媒体の印刷、それらの乾燥および圧縮および/または温度処理によるドーピングの後のこの工程において形成されたガラス層は、フッ化水素酸および任意にリン酸を含む酸混合物でエッチングされ、ここで使用されるエッチング混合物は、エッチング液として0.001〜10重量%の濃度のフッ化水素酸を含みまたは0.001〜10重量%のフッ化水素酸および0.001〜10重量%のリン酸の混合物を含んでもよい。
乾燥され圧縮されたドーピングガラスはさらに、以下のエッチング混合物を使用してウェハ表面から除去される:緩衝フッ化水素酸混合物(BHF)、緩衝酸化物エッチング混合物、例えばいわゆるp−エッチング、R−エッチング、S−エッチングまたはフッ化水素および硫酸からなるエッチング混合物などのフッ化水素酸および硝酸からなるエッチング混合物、ここで上述のリストは完全性を要求しない。
【0072】
ペーストの配合のために添加される結合剤は、化学的に精製することまたは金属の微量成分の量(freight)をなくすことが一般的に極めて困難でありまたは不可能でさえある。それらの精製の努力は高く、コスト高のため、安価なそして優位性のある、例えばシリコンウェハのためのスクリーン印刷可能な拡散障壁、の作成の要求と調和がとれていない。したがって、これらの補助剤は今まで、印刷媒体に存在する金属種の形態の汚染物質により処理された基板の望まれていない汚染が強く支持される、絶え間のない汚染源を表す。
【0073】
驚くべきことに、これらの課題は、記載された本発明により、より正確には本発明による印刷可能な粘性のある酸化物媒体により解決されることができ、それはゾルゲル工程により調製されることができる。本発明の過程ではこれらの酸化物媒体はまた、対応する添加物を用いた印刷可能なドーピング媒体として調製されることができる。相応に適応させた工程および最適化された合成手段は、印刷可能な酸化物媒体の調製を可能にする。
【0074】
・優れた貯蔵安定性を有し、
・凝集の除外およびスクリーン上の凝集を伴う優れた印刷性能を有し、
・極めて低い固有の汚染物の量の金属種を有しそして処理されたシリコンウェハの寿命に逆に影響しない
・残渣は熱処理の後処理されたウェハの表面から非常に容易に除去でき、および
・またこのために従来既知の増粘剤を使用せず、しかし代わりにそれらの使用を完全に省くことができる。
【0075】
新規の媒体は、必要な場合、ゾルゲル工程に基づいて合成されることができ、さらに形成されることができる。
ゾルおよび/またはゲルの合成は、例えば強カルボン酸などの縮合開始剤の添加により水の除外を伴って明確に制御されることができる。そして粘性は、化学量論のカルボン酸などの添加を介して制御され得る。このように超化学量論量の添加は、シリカ粒子の架橋度を調製することを可能にし、様々な印刷工程を用い、表面上に、好ましくはシリコンウェハ表面上に塗布されることができる高度に膨張し印刷可能なネットワーク、すなわちペースト形状ゲルの形成を可能にする。
【0076】
好適な印刷工程は下記であり得る:
スピンまたはディップコーティング、ドロップキャスティング、カーテンまたはスロットダイコーティング(curtain or slot-dye coating)、スクリーンまたはフレキソ印刷、グラビア印刷またはインクジェットまたはエアゾールジェット印刷、オフセット印刷、マイクロコンタクトプリンティング、電気流体力学分配、ローラまたはスプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、パイプジェッティング、レーザー転写印刷、パッド印刷およびロータリースクリーン印刷である。印刷は好ましくは、スクリーン印刷を用いて行われることができる。
ここで与えられるリストは、限定的であり、他の印刷工程もまた好適であり得る。
【0077】
さらに、本発明による高粘性媒体の特性は、より明確にさらなる添加物の添加により調整されることができ、したがって理想的に特定の印刷工程におよび非常に強い相互作用になってもよいある表面への適用に好適である。このように、例えば表面張力、粘性、ぬれ挙動、乾燥挙動および付着挙動などの性質は、特に調整されることができる。調製される酸化物媒体の要件に依存して、さらなる添加物はまた、加えられてもよい。それらは:
【0078】
・ぬれおよび乾燥挙動に影響を与えるための、界面活性剤、張力活性化合物、
・乾燥挙動に影響を与えるための消泡剤および脱気剤、
・粒径分配、縮合前の程度、縮合、ぬれおよび乾燥挙動ならびに印刷挙動に影響を与えるためのさらなる高および低沸点の極性のあるプロトン性のおよび非プロトン性の溶媒、
・粒径分配、縮合前の程度、縮合、ぬれおよび乾燥挙動ならびに印刷挙動の程度に影響を与えるためのさらなる高および低沸点の無極性の溶媒、
・レオロジー特性に影響を与えるための微粒子添加物、
・乾燥後に生じる乾燥塗膜の厚さならびにそれらの形態に影響を与えるための微粒子添加物(例えば水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウム、二酸化ケイ素)、
・乾燥塗膜の擦り傷耐性に影響を与えるための微粒子添加物(例えば水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウム、二酸化ケイ素)、
・ハイブリッドゾルの形成のためのホウ素、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、亜鉛、スズ、リン、チタン、ジルコニウム、イットリウム、ニッケル、コバルト、鉄、セリウム、ニオビウム、ヒ素、鉛およびその他の酸化物、水酸化物、塩基性酸化物、酢酸塩、あらかじめ縮合されたアルコキシド、
であってよい。
【0079】
これに関連して、各印刷およびコーティング方法が、印刷される組成物のそれ自身の必要なものを作成することは当然である。典型的には、特別な印刷方法のために個々に設定されるパラメータは、表面張力、粘性および生じる配合物の全体の蒸気圧などのパラメータである。
【0080】
拡散障壁の製造のためのそれらの使用以外では、印刷可能な媒体は、例えば金属産業における構成要素の製造において、好ましくはエレクトロニクス産業において擦り傷保護および腐食保護層として使用されることができ、およびこの場合には特にマイクロエレクトロニクス、光起電、微小電気機械(MEMS)構成要素の生産において使用されることができる。これに関連して光起電構成要素は、特に太陽電池およびモジュールを意味すると解される。電子産業における応用はさらに、例として言及された領域における前記ペーストの使用により特徴づけられ、しかし包括的に記載されない:
薄膜太陽モジュールからの薄膜太陽電池の生産、有機太陽電池の製造、印刷された電気回路および有機電子機器の製造、薄膜トランジスタ(TFTs)、液晶ディスプレイ(LCDs)、有機発光ダイオード(OLEDs)ならびにタッチセンサ式容量性のおよび抵抗のセンサの技術に基づくディスプレイの製造。
【0081】
本明細書の記載は当業者が本発明を包括的に利用することを可能とする。そのため、さらなる解説なしでさえ、当業者が最も広範な範囲で上の説明を利用することができることが推測される。
いくらか明瞭さの欠落がある場合、引用された公表文献および特許文献が参考にされるべきことは当然である。そのため、これらの文書は、本説明の開示内容の一部とみなされる。
【0082】
よりよい理解のためおよび本発明を説明するために、例は、本発明の保護範囲内で以下に示される。これらの例はまた可能な変形を説明するために役立つ。しかしながら記載された本発明の原理の一般的な妥当性により、例は、本明細書の保護範囲をそれらだけに限定するために適していない。
【0083】
さらに、与えられた例においておよびまた記載の残りにおいての両方で、組成物に存在する構成要素の量はいつも全組成物に基づき100重量%、mol%、vol%までだけ加えられ、より高い値が示されるパーセント範囲から起こることが可能な場合でさえこれを超えることができない。そのため、別に示されない限り、%データは重量%、mol%、vol%とされる。
例および説明ならびに請求の範囲の中で定められる温度は常に℃で与えられる。
【0084】
低粘性のドーピング媒体の例
例1:
L(+)酒石酸51.6gを丸底フラスコに計りとり、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル154gおよびオルトケイ酸テトラエチル25gを加える。反応混合物を90℃で90時間撹拌する。加温の間、酒石酸は2時間以内に完全に溶解し、無色および完全に透明な溶液が形成される。反応時間の最後に、混合物は透明なゲルの形成を伴って完全にゲル化する。ゲルを次に高剪断作用の下、ミキサーで均質にし、1日静止のまま置き、次にスクリーン印刷機を用いて片側を磨いた単結晶ウェハ上に印刷する。この目的を達成するために、以下のスクリーンおよび印刷パラメータを使用する:280メッシュ、25μmの線径(ステンレス鋼)、取り付け角度22.5°、布上8〜12μmのエマルジョン厚。分離は1.1mmであり、およびドクターブレード圧は1barである。印刷レイアウトは2cmのへりの長さを有する正方形に相当する。印刷の後にウェハをホットプレート上、300℃で2分乾燥する。干渉色を有する耐取扱いおよび耐摩耗性の層が形成される。当該層は容易にエッチングされ、希フッ化水素酸(5%)を使用して除去される。エッチングの後は、あらかじめ印刷された表面は親水性である。
【0085】
例2:
DL(+)マレイン酸49.2gを丸底フラスコに計りとり、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル80g、テルピネオール80gおよびオルトケイ酸テトラエチル25.5gを加える。反応混合物を140℃で24時間撹拌する。加温の間、マレイン酸は完全に溶解し、完全にゲル化しわずかに黄色がかったわずかに不透明な混合物が形成される。ゲルを次に高剪断作用の下、ミキサーで均質にし、1日静止のまま置き、次にスクリーン印刷機を用いて片側を磨いた単結晶ウェハ上に印刷する。この目的を達成するために、以下のスクリーンおよび印刷パラメータを使用する:280メッシュ、25μmの線径(ステンレス鋼)、取り付け角度22.5°、布上8〜12μmのエマルジョン厚。分離は1.1mmであり、およびドクターブレード圧は1barである。印刷レイアウトは2cmのへりの長さを有する正方形に相当する。印刷の後にウェハをホットプレート上、300℃で2分乾燥する。干渉色を有する耐取扱いおよび耐摩耗性の層が形成される。当該層は容易にエッチングされ、希フッ化水素酸(5%)を使用して除去される。エッチングの後は、あらかじめ印刷された表面は親水性である。
【0086】
例3:
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル80g、ジエチレングリコールモノエチルエーテル40g、テルピネオール40gおよびオルトケイ酸テトラエチル23.5gおよびピルビン酸19.2gを丸底フラスコに計りとり、撹拌しながら90℃に加熱する。混合物はこの温度で72時間放置し次に140℃で140時間加温される。反応の間、混合物はオレンジ〜黄色になり、わずかに曇りが生じるが、その度合いは増加しない。混合物を完全にゲル化し次に高剪断作用の下、ミキサーで均質にし、1日静止のまま置く。
【0087】
例4:
ジエチレングリコールモノエチルエーテル40g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル40g、テルピネオール40g、オルトケイ酸テトラエチル12gおよびグリコール酸20gを丸底フラスコに計りとり、撹拌しながら90℃に加温する。混合物をこの温度で48時間放置し、サリチル酸0.8g、エチルアセチルアセトン0.8gおよびピロカテコール1gを次に加える。マスキング剤が完全に溶解したとき、激しい撹拌をしながらアルミニウムイソプロポキシド16.7gを反応混合物に注入する。混合物をこの温度でさらに30分間放置し、わずかに放冷し次にロータリーエバポレーターで60℃において処理し、18.5gの減量となる。混合物のゲル化が始まる間、反応混合物を室温に放冷する。
【0088】
混合物を次に高剪断作用の下、ミキサーで均質にし、1日静止のまま置く。ペーストをスクリーン印刷機を用いて片側を磨いたシリコンウェハ上に印刷する(p型、525μm厚)。この目的を達成するために、以下のスクリーンおよび印刷パラメータを使用する:165cm−1の網目数、27μmのねじ径(ポリエステル)、取り付け角度22.5°、布上8〜12μmのエマルジョン厚。分離は1.1mmであり、およびドクターブレード圧は1barである。印刷レイアウトは2cmのへりの長さを有する正方形に相当する。印刷の後にウェハをホットプレート上、300℃で2分乾燥し(耐取扱いおよび耐摩耗性)、次にアトマイザー容器からの噴霧を用いてゾルゲルベースのリンを含むドーピングインクで表面を被覆し、次に2000rpmで30秒間スピンコーティングする。ドーピングインクの層を同様にホットプレート上、300℃で2分乾燥する。そして、被覆したウェハをマッフル炉で900℃、10分間処理し、次に希フッ化水素酸でのエッチングによりガラス化した層から取り除く。平均67ohm/sqrの抵抗が4点の測定ステーションを使用して拡散障壁により保護されていないウェハ領域で測定され、その一方で、保護された領域でのシートの抵抗は145ohm/sqrである。反対のウェハ表面上の上述のコーティングのシート抵抗の測定は平均142ohm/sqrである。
【0089】
例5:
ジエチレングリコールモノメチルエーテル40g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル40g、テルピネオール40g、オルトケイ酸テトラエチル8gおよびグリコール酸20gを丸底フラスコに計りとり、撹拌しながら90℃に加温する。混合物をこの温度で48時間放置し、サリチル酸0.8g、エチルアセチルアセトン0.8gおよびピロカテコール1gを次に加える。マスキング剤が完全に溶解したとき、激しい撹拌をしながらアルミニウムイソプロポキシド16.7gを反応混合物に注入する。混合物をこの温度でさらに30分間放置し、わずかに放冷し次にロータリーエバポレーターで60℃において処理し、17gの減量となる。混合物のゲル化が始まる間、反応混合物を室温に放冷する。混合物を次に高剪断作用の下、ミキサーで均質にし、1日静止のまま置く。
【0090】
ペーストをスクリーン印刷機を用いて片側を磨いたシリコンウェハ上に印刷する(p型、525μm厚)。この目的を達成するために、以下のスクリーンおよび印刷パラメータを使用する:165cm−1の網目数、27μmのねじ径(ポリエステル)、取り付け角度22.5°、布上8〜12μmのエマルジョン厚。分離は1.1mmであり、およびドクターブレード圧は1barである。印刷レイアウトは2cmのへりの長さを有する正方形に相当する。印刷の後にウェハをホットプレート上、300℃で2分乾燥し(耐取扱いおよび耐摩耗性)、次にアトマイザー容器からの噴霧を用いたゾルゲルベースのリンを含むドーピングインクで表面を被覆し、次に2000rpmで30秒間スピンコーティングする。ドーピングインクの層を同様にホットプレート上、300℃で2分乾燥する。被覆したウェハをマッフル炉で900℃、10分間処理し、次に希フッ化水素酸でのエッチングによりガラス化した層から取り除く。平均70ohm/sqrのシート抵抗が4点の測定ステーションを使用して拡散障壁により保護されていないウェハ領域で測定され、その一方で、保護された領域でのシートの抵抗は143ohm/sqrである。反対のウェハ表面上の上述のコーティングのシート抵抗の測定は平均139ohm/sqrである。