特許第6375308号(P6375308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6375308化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、インク組成物、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375308
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、インク組成物、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20180806BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20180806BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180806BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20180806BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   C07D403/14
   C09K11/06 690
   C09D11/00
【請求項の数】38
【全頁数】137
(21)【出願番号】特願2015-553563(P2015-553563)
(86)(22)【出願日】2014年12月16日
(86)【国際出願番号】JP2014083314
(87)【国際公開番号】WO2015093496
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年7月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-261792(P2013-261792)
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】池田 潔
(72)【発明者】
【氏名】川上 宏典
(72)【発明者】
【氏名】八巻 太郎
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/086170(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/085676(WO,A1)
【文献】 特表2011−509247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C07D 403/14
C09D 11/00
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、陽極と、該陰極と該陽極の間に発光層を含む一層以上の有機薄膜層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記一層以上の有機薄膜層のうち少なくとも1層が式(1)で表される化合物を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

[式(1)において、
Czは、式(Cz−1)で表される基であり、
Czは、式(Cz−2)で表される基であり、
Aは、置換若しくは無置換の環形成原子数6〜30の含窒素芳香族複素環の残基であり、
及びLは、それぞれ独立に置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基であり、
n1及びn2は、それぞれ独立に0〜4の整数である。
ただし、−(Ln1−Czで表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なる。
なお、n1=0のとき、AとCzとは単結合で結合し、
n2=0のとき、AとCzとは単結合で結合し、
n1が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよく、L同士で環を形成してもよく、
n2が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよく、L同士で環を形成してもよい。]
【化2】

[式(Cz−1)において、
11〜X14は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
15〜X18のうちの1つは*11に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
21〜X24のうちの1つは*21に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
25〜X28のうちの1つは*22に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
31〜X34のうちの1つは*31に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はCRxであり、
35〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【化3】

[式(Cz−2)において、
41〜X44は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
45〜X48のうちの1つは*41に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
51〜X54のうちの1つは*51に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
55〜X58は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が、式(1−2)で表される化合物である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化4】

[式(1−2)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−2)におけるCz、A、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるCz、A、L、L、n1及びn2と同じである。
ただし、式(1−2)におけるAよりも左側の部分の構造と、−(Ln2−Czで表される構造とが異なる。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物が、式(1−4)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化5】

[式(1−4)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
式(1−4)におけるCz、A、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるCz、A、L、L、n1及びn2と同じである。
ただし、式(1−4)におけるAよりも左側の部分の構造と、−(Ln2−Czで表される構造とが異なる。
【請求項4】
Czが、式(Cz−2a)で表される基である、請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化6】

[式(Cz−2a)において、
41〜X44は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
45〜X48のうちの1つは*41に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
51〜X54のうちの1つは*51に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
55〜X58のうちの1つは*52に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
61〜X64のうちの1つは*61に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はCRxであり、
65〜X68は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物が、式(1−2a)で表される化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化7】

[式(1−2a)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52、X54〜X55、X57〜X58、X61〜X62及びX64〜X68は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよく、
Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−2a)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。
ただし、式(1−2a)におけるAよりも左側の部分の構造と、式(1−2b)におけるAよりも右側の部分の構造とが異なる。
【請求項6】
前記式(1)で表される化合物が、式(1−4a)で表される化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化8】

[式(1−4a)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
式(1−4a)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。
ただし、式(1−4a)におけるAよりも左側の部分の構造と、式(1−4a)におけるAよりも右側の部分の構造とが異なる。
【請求項7】
前記式(1)で表される化合物が、式(1−4b)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化9】

[式(1−4b)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Ryは、水素原子又は置換基である。
式(1−4b)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。]
【請求項8】
前記発光層が、前記式(1)で表される化合物をホスト材料として含む、請求項1〜7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記発光層が、燐光発光材料を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記陰極と前記発光層の間に電子輸送層を有し、該電子輸送層が前記式(1)で表される化合物を含む請求項1〜9のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記陽極と前記発光層の間に正孔輸送層を有し、該正孔輸送層が前記式(1)で表される化合物を含む請求項1〜10のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む電子機器。
【請求項13】
式(1)で表される化合物。
【化10】

[式(1)において、
Czは、式(Cz−1)で表される基であり、
Czは、式(Cz−2)で表される基であり、
Aは、置換若しくは無置換の環形成原子数6〜30の含窒素芳香族複素環の残基であり、
及びLは、それぞれ独立に置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基であり、
n1及びn2は、それぞれ独立に0〜4の整数である。
ただし、−(Ln1−Czで表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なる。
なお、n1=0のとき、AとCzとは単結合で結合し、
n2=0のとき、AとCzとは単結合で結合し、
n1が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよく、L同士で環を形成してもよく、
n2が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよく、L同士で環を形成してもよい。]
【化11】

[式(Cz−1)において、
11〜X14は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
15〜X18のうちの1つは*11に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
21〜X24のうちの1つは*21に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
25〜X28のうちの1つは*22に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
31〜X34のうちの1つは*31に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はCRxであり、
35〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【化12】

[式(Cz−2)において、
41〜X44は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
45〜X48のうちの1つは*41に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
51〜X54のうちの1つは*51に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
55〜X58は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【請求項14】
Czが、式(Cz−11)で表される基である、請求項13に記載の化合物。
【化13】

[式(Cz−11)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25及びX27〜X28は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【請求項15】
式(1−2)で表される、請求項13又は14に記載の化合物。
【化14】

[式(1−2)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−2)におけるCz、A、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるCz、A、L、L、n1及びn2と同じである。
ただし、式(1−2)におけるAよりも左側の部分を示す下記式(1−2−L)で表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なる。]
【化15】
【請求項16】
式(1−3)で表される、請求項13〜15のいずれかに記載の化合物。
【化16】

[式(1−3)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−3)におけるCz、A、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるCz、A、L、L、n1及びn2と同じである。
ただし、式(1−3)におけるAよりも左側の部分を示す下記式(1−3−L)で表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なる。]
【化17】
【請求項17】
式(1−4)で表される、請求項13〜16のいずれかに記載の化合物。
【化18】

[式(1−4)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
式(1−4)におけるCz、A、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるCz、A、L、L、n1及びn2と同じである。
ただし、式(1−4)におけるAよりも左側の部分を示す下記式(1−4−L)で表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なる。]
【化19】
【請求項18】
Czが、式(Cz−2a)で表される基である、請求項13〜17のいずれかに記載の化合物。
【化20】

[式(Cz−2a)において、
41〜X44は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
45〜X48のうちの1つは*41に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
51〜X54のうちの1つは*51に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
55〜X58のうちの1つは*52に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
61〜X64のうちの1つは*61に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はCRxであり、
65〜X68は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【請求項19】
Czが、式(Cz−21a)で表される基である、請求項13〜18のいずれかに記載の化合物。
【化21】

[式(Cz−21a)において、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52、X54〜X55及びX57〜X58は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
61〜X62及びX64〜X68は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【請求項20】
式(1−2a)で表される、請求項13〜15、18及び19のいずれかに記載の化合物。
【化22】

[式(1−2a)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52、X54〜X55、X57〜X58、X61〜X62及びX64〜X68は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよく、
Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−2a)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。
ただし、式(1−2a)におけるAよりも左側の部分を示す下記式(1−2a−L)で表される構造と、式(1−2a)におけるAよりも右側の部分を示す下記式(1−2a−R)で表される構造とが異なる。]
【化23】
【請求項21】
式(1−4a)で表される、請求項13〜20のいずれかに記載の化合物。
【化24】

[式(1−4a)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
式(1−4a)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。
ただし、式(1−4a)におけるAよりも左側の部分を示す下記式(1−4a−L)で表される構造と、式(1−4a)におけるAよりも右側の部分を示す下記式(1−4a−R)で表される構造とが異なる。]
【化25】
【請求項22】
Czが、式(Cz−21b)で表される基である、請求項13〜17のいずれかに記載の化合物。
【化26】

[式(Cz−21b)において、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52及びX54〜X58は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【請求項23】
式(1−2b)で表される、請求項15〜17のいずれかに記載の化合物。
【化27】

[式(1−2b)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52及びX54〜X58は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよく、
Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−2b)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。
ただし、式(1−2b)におけるAよりも左側の部分を示す下記式(1−2b−L)で表される構造と、式(1−2b)におけるAよりも右側の部分を示す下記式(1−2b−R)で表される構造とが異なる。]
【化28】
【請求項24】
式(1−4b)で表される、請求項13〜17、22及び23のいずれかに記載の化合物。
【化29】

[式(1−4b)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Ryは、水素原子又は置換基である。
式(1−4b)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。]
【請求項25】
Rx及びRxが、それぞれ独立に水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数7〜61のアラルキル基、アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のハロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ホウ素含有基、亜鉛含有基、スズ含有基、ケイ素含有基、マグネシウム含有基、リチウム含有基、ヒドロキシ基、アルキル置換又はアリール置換カルボニル基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる置換基である、請求項13〜20、22及び23のいずれかに記載の化合物。
【請求項26】
Ry及びRyが、それぞれ独立に水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数7〜61のアラルキル基、アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のハロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ホウ素含有基、亜鉛含有基、スズ含有基、ケイ素含有基、マグネシウム含有基、リチウム含有基、ヒドロキシ基、アルキル置換又はアリール置換カルボニル基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる置換基である、請求項13〜25のいずれかに記載の化合物。
【請求項27】
n1≠n2である、請求項23〜26のいずれかに記載の化合物。
【請求項28】
n1とn2のいずれか一方は0であり、他方が1〜4の整数である、請求項13〜27のいずれかに記載の化合物。
【請求項29】
n1=n2であり、かつ、LとLとが異なる、請求項13〜26のいずれかに記載の化合物。
【請求項30】
式(1)で表される化合物が、式(1−x)又は(1−y)で表される化合物である、請求項13又は29に記載の化合物。
【化30】


[式(1−x)及び(1−y)におけるCz、Cz及びAは、式(1)におけるCz、Cz及びAと同じである。]
【請求項31】
Aが、置換若しくは無置換のピリジン環、置換若しくは無置換のピラジン環、置換若しくは無置換のピリミジン環、置換若しくは無置換のピリダジン環、置換若しくは無置換のトリアジン環、置換若しくは無置換のキノリン環、置換若しくは無置換のイソキノリン環、置換若しくは無置換のキノキサリン環、置換若しくは無置換のキナゾリン環、置換若しくは無置換のシンノリン環、置換若しくは無置換のベンゾキナゾリン環、及び置換若しくは無置換のアザフルオランテン環からなる群より選ばれる含窒素芳香族複素環の残基である、請求項13〜30のいずれかに記載の化合物。
【請求項32】
Aが、置換若しくは無置換のピリミジン環、置換若しくは無置換のトリアジン環、置換若しくは無置換のキナゾリン環、置換若しくは無置換のベンゾキナゾリン環、及び置換若しくは無置換のアザフルオランテン環からなる群より選ばれる含窒素芳香族複素環の残基である、請求項13〜31のいずれかに記載の化合物。
【請求項33】
Aが、置換若しくは無置換のピリミジン環、及び置換若しくは無置換のキナゾリン環からなる群より選ばれる含窒素芳香族複素環の残基である、請求項13〜32のいずれかに記載の化合物。
【請求項34】
Aが、式(A−1)又は(A−2)で表される基である、請求項13〜32のいずれかに記載の化合物。
【化31】

[式(A−1)及び(A−2)において
及びXは、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
は、式(1)におけるLと結合し、
は、式(1)におけるLと結合する。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【請求項35】
Aが、式(A−3)又は(A−4)で表される基である、請求項13〜32のいずれかに記載の化合物。
【化32】

[式(A−3)及び(A−4)において
〜Xは、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
は、式(1)におけるLと結合し、
は、式(1)におけるLと結合する。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【請求項36】
Rxが、それぞれ独立に水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数7〜61のアラルキル基、アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のハロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ホウ素含有基、亜鉛含有基、スズ含有基、ケイ素含有基、マグネシウム含有基、リチウム含有基、ヒドロキシ基、アルキル置換又はアリール置換カルボニル基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる置換基である、請求項34又は35に記載の化合物。
【請求項37】
請求項13〜36のいずれかに記載の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項38】
溶媒と、該溶媒中に溶解した請求項13〜36のいずれかに記載の化合物と、を含むインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、インク組成物、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
陽極と陰極との間に発光層を含む有機薄膜層を備え、発光層に注入された正孔と電子との再結合によって生じる励起子(エキシトン)エネルギーから発光を得る有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、自発光型素子としての利点を活かし、発光効率、画質、消費電力さらには薄型のデザイン性に優れた発光素子として期待されている。有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層に種々の発光材料を用いることにより、多様な発光色を得ることが可能であることから、ディスプレイなどへの実用化研究が盛んである。特に赤色、緑色、青色の三原色の発光材料の研究が最も活発であり、特性向上を目指して鋭意研究がなされている
【0004】
特許文献1は、正孔輸送能力と電子輸送能力を併せ持ち、キャリアバランスに優れた化合物を提供することを目的としており、ビスカルバゾール構造と含窒素芳香族複素環構造とを同一分子内に含む化合物、及びトリカルバゾール構造と含窒素芳香族複素環構造とを同一分子内に含む化合物が記載されている。しかしながら、後者のトリカルバゾール構造を含む化合物は、有機EL素子には適用されておらず、有機EL素子用材料としての性能には言及されていない。有機EL素子用材料について記載されている文献としては、他にも特許文献2〜6がある。
有機EL素子の分野においては、更なる素子性能の向上を目指すため、それらに有用な材料系の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/086170号
【特許文献2】特開2012−149257号公報
【特許文献3】国際公開第2010/085676号
【特許文献4】国際公開第2012/069121号
【特許文献5】国際公開第2012/077902号
【特許文献6】国際公開第2013/081088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、特性の優れた有機EL素子及びそれを含む電子機器を提供することである。また、他の目的は、特性の優れた有機EL素子及びそれを含む電子機器を可能にする化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びインク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、陰極と、陽極と、該陰極と該陽極の間に発光層を含む一層以上の有機薄膜層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記一層以上の有機薄膜層のうち少なくとも1層が式(1)で表される化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子、が提供される。
【化1】
[式(1)において、
Czは、式(Cz−1)で表される基であり、
Czは、式(Cz−2)で表される基であり、
Aは、置換若しくは無置換の環形成原子数6〜30の含窒素芳香族複素環の残基であり、
及びLは、それぞれ独立に置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基であり、
n1及びn2は、それぞれ独立に0〜4の整数である。
なお、n1=0のとき、AとCzとは単結合で結合し、
n2=0のとき、AとCzとは単結合で結合し、
n1が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよく、L同士で環を形成してもよく、
n2が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよく、L同士で環を形成してもよい。]
【化2】
[式(Cz−1)において、
11〜X14は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
15〜X18のうちの1つは*11に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
21〜X24のうちの1つは*21に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
25〜X28のうちの1つは*22に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
31〜X34のうちの1つは*31に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はCRxであり、
35〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【化3】
[式(Cz−2)において、
41〜X44は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
45〜X48のうちの1つは*41に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
51〜X54のうちの1つは*51に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
55〜X58は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【0008】
本発明の一態様によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を含む電子機器が提供される。
【0009】
本発明の一態様によれば、式(1)で表される化合物が提供される。
【化4】
[式(1)において、
Czは、式(Cz−1)で表される基であり、
Czは、式(Cz−2)で表される基であり、
Aは、置換若しくは無置換の環形成原子数6〜30の含窒素芳香族複素環の残基であり、
及びLは、それぞれ独立に置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基であり、
n1及びn2は、それぞれ独立に0〜4の整数である。
ただし、−(Ln1−Czで表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なる。
なお、n1=0のとき、AとCzとは単結合で結合し、
n2=0のとき、AとCzとは単結合で結合し、
n1が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよく、L同士で環を形成してもよく、
n2が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよく、L同士で環を形成してもよい。]
【化5】
[式(Cz−1)において、
11〜X14は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
15〜X18のうちの1つは*11に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
21〜X24のうちの1つは*21に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
25〜X28のうちの1つは*22に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
31〜X34のうちの1つは*31に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はCRxであり、
35〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【化6】
[式(Cz−2)において、
41〜X44は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
45〜X48のうちの1つは*41に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
51〜X54のうちの1つは*51に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
55〜X58は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【0010】
本発明の一態様によれば、前記化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【0011】
本発明の一態様によれば、溶媒と、該溶媒中に溶解した前記化合物とを含むインク組成物が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、性能の向上した有機EL素子及びそれを含む電子機器を提供することができる。また、それを可能にする化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びインク組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一態様に係る有機EL素子の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「環形成炭素数」とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジニル基は環形成炭素数5であり、フラニル基は環形成炭素数4である。また、ベンゼン環やナフタレン環に置換基として例えばアルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、環形成炭素数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の炭素数は環形成炭素数の数に含めない。
【0015】
本明細書において、「環形成原子数」とは、原子が環状に結合した構造(例えば単環、縮合環、環集合)の化合物(例えば単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ピリジン環の環形成原子数は6であり、キナゾリン環の環形成原子数は10であり、フラン環の環形成原子数は5である。ピリジン環やキナゾリン環の炭素原子にそれぞれ結合している水素原子や置換基を構成する原子については、環形成原子数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の原子数は環形成原子数の数に含めない。
【0016】
本明細書において、「置換若しくは無置換の炭素数XX〜YYのZZ基」という表現における「炭素数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表すものであり、置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
【0017】
本明細書において、「水素原子」とは、中性子数が異なる同位体、すなわち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)及び三重水素(tritium)を包含する。
【0018】
[化合物]
本発明の一態様の化合物について説明する。
本発明の一態様の化合物は、式(1)で表される化合物(以後、「式(1)で表される化合物」を「化合物(1)」と呼称することがある)である。
【化7】
[式(1)において、
Czは、式(Cz−1)で表される基であり、
Czは、式(Cz−2)で表される基であり、
Aは、置換若しくは無置換の環形成原子数6〜30の含窒素芳香族複素環の残基であり、
及びLは、それぞれ独立に置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基であり、
n1及びn2は、それぞれ独立に0〜4の整数である。
なお、n1=0のとき、AとCzとは単結合で結合し、
n2=0のとき、AとCzとは単結合で結合し、
n1が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよく、L同士で環を形成してもよく、
n2が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよく、L同士で環を形成してもよい。]
【化8】
[式(Cz−1)において、
11〜X14は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
15〜X18のうちの1つは*11に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
21〜X24のうちの1つは*21に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
25〜X28のうちの1つは*22に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
31〜X34のうちの1つは*31に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はCRxであり、
35〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【化9】
[式(Cz−2)において、
41〜X44は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
45〜X48のうちの1つは*41に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
51〜X54のうちの1つは*51に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
55〜X58は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【0019】
化合物(1)は、上述の特定構造を有することによって、イオン化ポテンシャルが小さく、正孔注入性に優れる。このため、化合物(1)を有機EL素子に適用することで、素子の発光効率を向上させることができる。
【0020】
式(1)のCzは、上述の通り、式(Cz−1)で表される基である。式(Cz−1)の好適な様態ついて以下に説明する。
好ましくは、X11〜X14はそれぞれ独立にC−*である。
好ましくはX16及びX17のうちの1つが*11に結合する炭素原子であり、より好ましくはX16が*11に結合する炭素原子である。好ましくは、X15〜X18のうちの*11に結合しない3つは、それぞれ独立にC−*である。
好ましくはX22及びX23のうちの1つが*21に結合する炭素原子であり、より好ましくはX23が*21に結合する炭素原子である。好ましくは、X21〜X24のうちの*21に結合しない3つは、それぞれ独立にC−*である。
好ましくはX26及びX27のうちの1つが*22に結合する炭素原子であり、より好ましくはX26が*22に結合する炭素原子である。好ましくは、X25〜X28のうちの*22に結合しない3つは、それぞれ独立にC−*である。
好ましくはX32及びX33のうちの1つが*31に結合する炭素原子であり、より好ましくはX33が*31に結合する炭素原子である。好ましくは、X31〜X34のうちの*31に結合しない3つは、それぞれ独立にCRxである。
好ましくは、X35〜X38はそれぞれ独立にCRxである。
好ましくは、*のうちの1つが式(1)におけるLと結合し、他方がRyと結合し、*は全てRxと結合する。
【0021】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−11)で表される基である。
【化10】
[式(Cz−11)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25及びX27〜X28は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
好ましくは、X11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25及びX27〜X28は、それぞれ独立にC−*である。
好ましくは、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にCRxである。
好ましくは、*のうちの1つが式(1)におけるLと結合し、他方がRyと結合し、*は全てRxと結合する。
【0022】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−12)で表される基である。
【化11】
[式(Cz−12)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
は、式(1)におけるLと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
好ましくは、X11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にCRxである。
【0023】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−13)で表される基である。
【化12】
[式(Cz−13)において、
は、式(1)におけるLと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【0024】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−14)で表される基である。
【化13】
[式(Cz−14)において、
は、式(1)におけるLと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。]
【0025】
式(Cz−1)、(Cz−11)、(Cz−12)、(Cz−13)及び(Cz−14)におけるRyについて以下に説明する。
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。前記置換基としては、以下の<グループα>に示すものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
<グループα>
置換若しくは無置換の炭素数1〜50(より好ましくは1〜18、更に好ましくは1〜8)のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜50(より好ましくは3〜10、更に好ましくは3〜8)のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60(より好ましくは6〜25、更に好ましくは6〜18)のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数7〜61(より好ましくは7〜25、更に好ましくは7〜18)のアラルキル基、アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50(より好ましくは1〜18、更に好ましくは1〜8)のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60(より好ましくは6〜25、更に好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50(より好ましくは1〜18、更に好ましくは1〜8)のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜50(より好ましくは3〜10、更に好ましくは3〜8)のシクロアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60(より好ましくは6〜25、更に好ましくは6〜18)のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50(より好ましくは1〜18、更に好ましくは1〜8)のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60(より好ましくは6〜25、更に好ましくは6〜18)のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50(より好ましくは1〜18、更に好ましくは1〜8)のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60(より好ましくは6〜25、更に好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜60(より好ましくは5〜30、更に好ましくは5〜26)のヘテロアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50(より好ましくは1〜18、更に好ましくは1〜8)のハロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50(より好ましくは1〜18、更に好ましくは1〜8)のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60(より好ましくは6〜25、更に好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50(より好ましくは1〜18、更に好ましくは1〜8)のアルキル基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60(より好ましくは6〜25、更に好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ホウ素含有基、亜鉛含有基、スズ含有基、ケイ素含有基、マグネシウム含有基、リチウム含有基、ヒドロキシ基、アルキル置換又はアリール置換カルボニル基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、及びオキセタニル基。
これらグループαに記載の置換基には、グループαに記載の置換基が更に置換されてもよい。また、これらグループαに記載の置換基は複数が互いに結合して環を形成してもよい。
【0026】
グループαのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基(異性体を含む)、ヘキシル基(異性体を含む)、ヘプチル基(異性体を含む)、オクチル基(異性体を含む)、ノニル基(異性体を含む)、デシル基(異性体を含む)、ウンデシル基(異性体を含む)、及びドデシル基(異性体を含む)、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、テトラコサニル基、テトラコンタニル基等が挙げられる。これらは置換されていてもよい。
【0027】
グループαのシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。これらは置換されていてもよい。
【0028】
グループαのアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ナフチルフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クアテルフェニリル基、キンクフェニリル基、アセナフチレニル基、アントリル基、ベンゾアントリル基、アセアントリル基、フェナントリル基、ベンゾフェナントリル基、フェナレニル基、フルオレニル基、9,9’−スピロビフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、ピセニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、s−インダニル基、as−インダニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、テトラセニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基、ペリレニル基、コロニル基、ジベンゾアントリル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、9,9−ジフェニルフルオレニル基等が挙げられる。これらは置換されていてもよい。
【0029】
グループαのヘテロアリール基は少なくとも1個、好ましくは1〜5個(より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)のヘテロ原子を含む。前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、リン原子が挙げられる。グループαのへテロアリール基としては、例えば、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチオフェニル基、インドリジニル基、キノリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズチアゾリル基、インダゾリル基、ベンズイソキサゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ビカルバゾリル基フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、アザトリフェニレニル基、ジアザトリフェニレニル基、キサンテニル基、アザカルバゾリル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基、ベンゾフラノベンゾチオフェニル基、ベンゾチエノベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラノナフチル基、ジベンゾチエノナフチル基、及びジナフトチエノチオフェニル基、ジナフト−<2’,3’:2,3:2’,3’:6,7>−カルバゾリル基等が挙げられる。これらは置換されていてもよい。
【0030】
本明細書において、置換若しくは無置換のカルバゾリル基は、下記のカルバゾリル基、
【化14】
及び任意の置換基を有する置換カルバゾリル基に加えて、例えば、下記の置換カルバゾリル基も含む。
【化15】
【0031】
本明細書において、置換若しくは無置換のジベンゾフラニル基及び置換若しくは無置換のジベンゾチオフェニル基は、下記のジベンゾフラニル基及びジベンゾチオフェニル基、
【化16】
及び任意の置換基を有する置換ジベンゾフラニル基及び置換ジベンゾチオフェニル基に加えて、例えば、下記の置換ジベンゾフラニル基及び置換ジベンゾチオフェニル基も含む。
【化17】
(式中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは酸素原子、硫黄原子、NH、NR(Rはアルキル基又はアリール基)、CH、又は、CR(Rはアルキル基又はアリール基)を表す。)
【0032】
グループαのアラルキル基としては、環形成炭素数6〜60の上記アリール基を有するアラルキル基が挙げられ、より具体的にはベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。これらは置換されていてもよい。
グループαのモノ置換又はジ置換アミノ基としては、前述のアルキル基及び前述のアリール基からなる群より選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基が挙げられる。これらは更に置換されていてもよい。
【0033】
グループαのアルコキシ基としては、炭素数1〜50の上記アルキル基を有するアルコキシ基が挙げられ、より具体的にはメトキシ基、エトキシ基、メトキシ基、i−プロポキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられ。これらは更に置換されていてもよい。
本実施形態のシクロアルコキシ基としては、炭素数3〜50の上記シクロアルキル基を有するシクロアルコキシ基が挙げられる。これらは更に置換されていてもよい。
グループαのアリールオキシ基としては、環形成炭素数6〜60の上記アリール基を有するアリールオキシ基が挙げられ、より具体的にはフェノキシ基等が挙げられる。これらは更に置換されていてもよい。
【0034】
グループαのアルキルチオ基としては、炭素数1〜50の上記アルキル基を有するアルキルチオ基が挙げられる。これらは更に置換されていてもよい。
グループαのアリールチオ基としては、環形成炭素数6〜60の上記アリール基を有するアリールチオ基が挙げられる。これらは更に置換されていてもよい。
【0035】
グループαのモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基としては、炭素数1〜50の上記アルキル基及び環形成炭素数6〜60の上記アリール基からなる群より選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基が挙げられ、より具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基等が挙げられる。これらは更に置換されていてもよい。
グループαのハロアルキル基としては、炭素数1〜50の上記アルキル基の水素原子の1以上が、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)により置換されたものが挙げられ、具体的にはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられる。これらは更に置換されていてもよい。
【0036】
グループαのスルフォニル基としては、炭素数1〜50の上記アルキル基又は環形成炭素数6〜60の上記アリール基からなる群より選ばれる置換基を有するスルフォニル基が挙げられる。これらは更に置換されていてもよい。
グループαのジ置換ホスフォリル基としては、炭素数1〜50の上記アルキル基及び環形成炭素数6〜60の上記アリール基からなる群より選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基が挙げられる。これらは更に置換されていても良い。
グループαのアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキル置換又はアリール置換カルボニル基としては、それぞれ、上記アルキル基及び上記アリール基から選ばれる置換基を有する基が挙げられる。
【0037】
Ryは、好ましくは置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基であり、より好ましくフェニル基である。
【0038】
式(Cz−1)、(Cz−11)、(Cz−12)及び(Cz−13)におけるRxについて以下に説明する。
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。前記置換基としては、前述の<グループα>に示すものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
Rxは、好ましくは水素原子又は置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基であり、より好ましくは水素原子である。
Rx同士で環を形成してもよい。前記環としては、特に限定されるわけではないが、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環及び置換若しくは無置換の環形成原子数5〜30の芳香族複素環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、キノリン環及びイソキノリン環である。
【0039】
式(1)のCzは、上述の通り、式(Cz−2)で表される基である。式(Cz−2)の好適な様態について以下に説明する。
好ましくは、X41〜X44はそれぞれ独立にC−*である。
好ましくはX46及びX47のうちの1つが*41に結合する炭素原子であり、より好ましくはX4641に結合する炭素原子である。好ましくは、X45〜X48のうちの*41に結合しない3つは、それぞれ独立にC−*である。
好ましくはX52及びX53のうちの1つが*51に結合する炭素原子であり、より好ましくはX53が*51に結合する炭素原子である。好ましくは、X51〜X54のうちの*51に結合しない3つは、それぞれ独立にC−*である。
好ましくは、X55〜X58はそれぞれ独立にC−*である。
好ましくは、*のうちの1つが式(1)におけるLと結合し、他方がRyと結合し、*は全てRxと結合する。
【0040】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−2a)で表される基である。
【化18】
[式(Cz−2a)において、
41〜X44は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
45〜X48のうちの1つは*41に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
51〜X54のうちの1つは*51に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
55〜X58のうちの1つは*52に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はC−*であり、
61〜X64のうちの1つは*61に結合する炭素原子であり、それ以外の3つはそれぞれ独立にN又はCRxであり、
65〜X68は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【0041】
好ましくは、X41〜X44はそれぞれ独立にC−*である。
好ましくはX46及びX47のうちの1つが*41に結合する炭素原子であり、より好ましくはX46が*41に結合する炭素原子である。好ましくは、X45〜X48のうちの*41に結合しない3つは、それぞれ独立にC−*である。
好ましくはX52及びX53のうちの1つが*51に結合する炭素原子であり、より好ましくはX53が*51に結合する炭素原子である。好ましくは、X51〜X54のうちの*51に結合しない3つは、それぞれ独立にC−*である。
好ましくはX56及びX57のうちの1つが*52に結合する炭素原子であり、より好ましくはX56が*52に結合する炭素原子である。好ましくは、X55〜X58のうちの*52に結合しない3つは、それぞれ独立にC−*である。
好ましくはX62及びX63のうちの1つが*61に結合する炭素原子であり、より好ましくはX63が*61に結合する炭素原子である。好ましくは、X61〜X64のうちの*61に結合しない3つは、それぞれ独立にCRxである。
好ましくは、X65〜X68はそれぞれ独立にCRxである。
好ましくは、*のうちの1つが式(1)におけるLと結合し、他方がRyと結合し、*は全てRxと結合する。
【0042】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−21a)で表される基である。
【化19】
[式(Cz−21a)において、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52、X54〜X55及びX57〜X58は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
61〜X62及びX64〜X68は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
好ましくは、X41〜X45、X47〜X48、X51〜X52、X54〜X55及びX57〜X58は、それぞれ独立にC−*である。
好ましくは、X61〜X62及びX64〜X68は、それぞれ独立にCRxである。
好ましくは、*のうちの1つが式(1)におけるLと結合し、他方がRyと結合し、*は全てRxと結合する。
【0043】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−22a)で表される基である。
【化20】
[式(Cz−22a)において、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52、X54〜X55、X57〜X58、X61〜X62及びX64〜X68は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
は、式(1)におけるLと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
好ましくは、X41〜X45、X47〜X48、X51〜X52、X54〜X55、X57〜X58、X61〜X62及びX64〜X68は、それぞれ独立にCRxである。
【0044】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−23a)で表される基である。
【化21】
[式(Cz−23a)において、
は、式(1)におけるLと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【0045】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−24a)で表される基である。
【化22】
[式(Cz−24a)において、
は、式(1)におけるLと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。]
【0046】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−21b)で表される基である。
【化23】
[式(Cz−21b)において、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52及びX54〜X58は、それぞれ独立にN又はC−*であり、
のうちの1つ又は*のうちの1つが、式(1)におけるLと結合し、
のうちLと結合しないものは、Ryと結合し、
のうちLと結合しないものは、Rxと結合し、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
好ましくは、X41〜X45、X47〜X48、X51〜X52及びX54〜X58は、それぞれ独立にC−*である。
好ましくは、*のうちの1つが式(1)におけるLと結合し、他方がRyと結合し、*は全てRxと結合する。
【0047】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−22b)で表される基である。
【化24】
[式(Cz−22b)において、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52及びX54〜X58は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
は、式(1)におけるLと結合し、
Ryは、水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
好ましくは、X41〜X45、X47〜X48、X51〜X52及びX54〜X58は、それぞれ独立にCRxである。
【0048】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−23b)で表される基である。
【化25】
[式(Cz−23b)において、
は、式(1)におけるLと結合し、
Ryは、水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
【0049】
式(1)のCzは、好ましくは式(Cz−24b)で表される基である。
【化26】
[式(Cz−24b)において、
は、式(1)におけるLと結合し、
Ryは、水素原子又は置換基である。]
【0050】
式(Cz−2)、式(Cz−2a)、(Cz−21a)、(Cz−22a)、(Cz−23a)、(Cz−24a)、(Cz−21b)、(Cz−22b)、(Cz−23b)及び(Cz−24b)におけるRyについて以下に説明する。
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。前記置換基としては、前述の<グループα>に示すものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
Ryは、好ましくは置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0051】
式(Cz−2)、式(Cz−2a)、(Cz−21a)、(Cz−22a)、(Cz−23a)、(Cz−21b)、(Cz−22b)及び(Cz−23b)におけるRxについて以下に説明する。
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。前記置換基としては、前述の<グループα>に示すものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
Rxは、好ましくは水素原子又は置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基であり、より好ましくは水素原子である。
Rx同士で環を形成してもよい。前記環としては、特に限定されるわけではないが、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環及び置換若しくは無置換の環形成原子数5〜30の芳香族複素環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、キノリン環及びイソキノリン環である。
【0052】
式(1)中のAは、上述の通り、置換若しくは無置換の環形成原子数6〜30の含窒素芳香族複素環の残基である。ここで「含窒素芳香族複素環の残基」とは、含窒素芳香族複素環から2つの水素原子を除くことで誘導される2価の基を意味する。例えば、含窒素芳香族複素環がピリジン環である場合、含窒素芳香族複素環の残基とはピリジレン基(又はピリジンジイル基とも呼ばれる)である。なお、含窒素芳香族複素環が置換されている場合、除かれる2つの水素原子は、当該含窒素芳香族複素環の環自体を構成する原子に連結する水素原子の中から選ばれるのであって、含窒素芳香族複素環に置換する置換基に連結する水素原子の中からは選ばれない。例えば、下記(i)に示す基は、アルキル基で置換されたピリジン環の残基と言えるが、下記(ii)に示す基は、アルキル基で置換されたピリジン環の残基とは言えない。
【化27】
【0053】
Aは、好ましくは置換若しくは無置換のピリジン環、置換若しくは無置換のピラジン環、置換若しくは無置換のピリミジン環、置換若しくは無置換のピリダジン環、置換若しくは無置換のトリアジン環、置換若しくは無置換のキノリン環、置換若しくは無置換のイソキノリン環、置換若しくは無置換のキノキサリン環、置換若しくは無置換のキナゾリン環、置換若しくは無置換のシンノリン環、置換若しくは無置換のベンゾキナゾリン環、及び置換若しくは無置換のアザフルオランテン環からなる群より選ばれる含窒素芳香族複素環の残基であり;より好ましくは置換若しくは無置換のピリミジン環、置換若しくは無置換のトリアジン環、置換若しくは無置換のキナゾリン環、置換若しくは無置換のベンゾキナゾリン環、及び置換若しくは無置換のアザフルオランテン環からなる群より選ばれる含窒素芳香族複素環の残基であり;さらに好ましくは置換若しくは無置換のピリミジン環、及び置換若しくは無置換のキナゾリン環からなる群より選ばれる含窒素芳香族複素環の残基である。
【0054】
式(1)のAは、好ましくは式(A−1)又は(A−2)で表される基である。
【化28】
[式(A−1)及び(A−2)において
及びXは、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
は、式(1)におけるLと結合し、
は、式(1)におけるLと結合する。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
好ましくは、X及びXはそれぞれ独立にCRxである。
【0055】
また、式(1)のAは、好ましくは式(A−3)又は(A−4)で表される基である。
【化29】
[式(A−3)及び(A−4)において
〜Xは、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
は、式(1)におけるLと結合し、
は、式(1)におけるLと結合する。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。]
好ましくは、X〜Xはそれぞれ独立にCRxである。
【0056】
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。前記置換基としては、前述の<グループα>に示すものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
Rxは、好ましくは置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基又は置換若しくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基であり、より好ましくは置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基であり、さらに好ましくはフェニル基である。
Rx同士で環を形成してもよい。前記環としては、特に限定されるわけではないが、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環及び置換若しくは無置換の環形成原子数5〜30の芳香族複素環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、キノリン環及びイソキノリン環である。
【0057】
式(1)中のL及びLは、上述の通り、それぞれ独立に置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基である。
及びLは、それぞれ独立に、好ましくはフェニレン基又はナフチレン基である。
【0058】
式(1)中のn1及びn2は、上述の通り、それぞれ独立に0〜4の整数である。
n1及びn2は、それぞれ独立に、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1である。
【0059】
n1=0のとき、AとCzとは単結合で結合することを意味する。
n2=0のとき、AとCzとは単結合で結合することを意味する。
n1が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、L同士で環を形成してもよい。
n2が2〜4の整数のとき、Lは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、L同士で環を形成してもよい。
【0060】
式(1)において、−(Ln1−Czで表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なることが好ましい。そのような構造を有することで、化合物(1)が溶媒へ溶解しやすくなる。
−(Ln1−Czで表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なるために、例えば、以下の(a)〜(e)が好ましい。
(a):式(1)において、n1≠n2である。
(b):式(1)において、n1とn2のいずれか一方は0であり、他方が1〜4の整数である。
(c):式(1)において、n1=n2であり、かつ、LとLとが異なる。
(d):化合物(1)が、式(1−x)又は(1−y)で表される。
【化30】
[式(1−x)及び(1−y)におけるCz、Cz及びAは、式(1)におけるCz、Cz及びAと同じである。]
(e):式(1)において、Czが式(Cz−24b)で表される。
【0061】
化合物(1)は、好ましくは式(1−2)で表される。
【化31】
[式(1−2)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−2)におけるCz、A、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるCz、A、L、L、n1及びn2と同じである。]
好ましくは、X11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にCRxである。
式(1−2)において、式(1−2−L)で表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なることが好ましい。
【化32】
【0062】
化合物(1)は、好ましくは式(1−2a)で表される。
【化33】
[式(1−2a)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52、X54〜X55、X57〜X58、X61〜X62及びX64〜X68は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよく、
Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−2a)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。]
好ましくは、X11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にCRxである。
好ましくは、X41〜X45、X47〜X48、X51〜X52、X54〜X55、X57〜X58、X61〜X62及びX64〜X68は、それぞれ独立にCRxである。
式(1−2a)において、式(1−2a−L)で表される構造と式(1−2a−R)で表される構造とが異なることが好ましい。
【化34】
【0063】
化合物(1)は、好ましくは式(1−2b)で表される。
【化35】
[式(1−2b)において、
11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
41〜X45、X47〜X48、X51〜X52及びX54〜X58は、それぞれ独立にN又はCRxであり、
Ryは、水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよく、
Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−2b)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。]
好ましくは、X11〜X15、X17〜X18、X21〜X22、X24〜X25、X27〜X28、X31〜X32及びX34〜X38は、それぞれ独立にCRxである。
好ましくは、X41〜X45、X47〜X48、X51〜X52及びX54〜X58は、それぞれ独立にCRxである。
式(1−2b)において、式(1−2b−L)で表される構造と式(1−2b−R)で表される構造とが異なることが好ましい。
【化36】
【0064】
化合物(1)は、好ましくは式(1−3)で表される。
【化37】
[式(1−3)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−3)におけるCz、A、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるCz、A、L、L、n1及びn2と同じである。]
式(1−3)において、式(1−3−L)で表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なることが好ましい。
【化38】
【0065】
化合物(1)は、好ましくは式(1−3a)で表される。
【化39】
[式(1−3a)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよく、
Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−3a)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。]
式(1−3a)において、式(1−3a−L)で表される構造と式(1−3a−R)で表される構造とが異なることが好ましい。
【化40】
【0066】
化合物(1)は、好ましくは式(1−3b)で表される。
【化41】
[式(1−3b)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Ryは、水素原子又は置換基であり、
Rxは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
なお、Rx同士で環を形成してもよく、
Rx同士で環を形成してもよい。
式(1−3b)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。]
式(1−3b)において、式(1−3b−L)で表される構造と式(1−3b−R)で表される構造とが異なることが好ましい。
【化42】
【0067】
化合物(1)は、好ましくは式(1−4)で表される。
【化43】
[式(1−4)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
式(1−4)におけるCz、A、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるCz、A、L、L、n1及びn2と同じである。]
式(1−4)において、式(1−4−L)で表される構造と−(Ln2−Czで表される構造とが異なることが好ましい。
【化44】
【0068】
化合物(1)は、好ましくは式(1−4a)で表される。
【化45】
[式(1−4a)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
式(1−4a)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。]
式(1−4a)において、式(1−4a−L)で表される構造と式(1−4a−R)で表される構造とが異なることが好ましい。
【化46】
【0069】
化合物(1)は、好ましくは式(1−4b)で表される。
【化47】
[式(1−4b)において、
Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、
Ryは、水素原子又は置換基である。
式(1−4b)におけるA、L、L、n1及びn2は、式(1)におけるA、L、L、n1及びn2と同じである。]
【0070】
式(1−2)、(1−2a)、(1−2b)、(1−3)、(1−3a)、(1−3b)、(1−4)、(1−4a)及び(1−4b)におけるRyの好適な様態は、式(Cz−1)、(Cz−11)、(Cz−12)、(Cz−13)及び(Cz−14)におけるRyの好適な様態と同様である。
式(1−2)、(1−2a)、(1−2b)、(1−3)、(1−3a)及び(1−3b)におけるRxの好適な様態は、式(Cz−1)、(Cz−11)、(Cz−12)及び(Cz−13)におけるRxの好適な様態と同様である。
式(1−2)、(1−2a)、(1−2b)、(1−3)、(1−3a)、(1−3b)、(1−4)、(1−4a)及び(1−4b)におけるRyの好適な様態は、式(Cz−2)、式(Cz−2a)、(Cz−21a)、(Cz−22a)、(Cz−23a)、(Cz−24a)、(Cz−21b)、(Cz−22b)、(Cz−23b)及び(Cz−24b)におけるRyの好適な様態と同様である。
式(1−2)、(1−2a)、(1−2b)、(1−3)、(1−3a)及び(1−3b)におけるRxの好適な様態は、式(Cz−2)、式(Cz−2a)、(Cz−21a)、(Cz−22a)、(Cz−23a)、(Cz−21b)、(Cz−22b)及び(Cz−23b)におけるRxの好適な様態と同様である。
【0071】
上記の「置換若しくは無置換」という表現における任意の置換基としては、炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基;環形成炭素数3〜50(好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8、さらに好ましくは5又は6)のシクロアルキル基;環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基;環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基を有する炭素数7〜51(好ましくは7〜30、より好ましくは7〜20)のアラルキル基;アミノ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基を有するアルコキシ基;環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基を有するアリールオキシ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基;環形成原子数5〜50(好ましくは5〜24、より好ましくは5〜13)のヘテロアリール基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のハロアルキル基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);シアノ基;ニトロ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基;、アルキルスルホニルオキシ基;アリールスルホニルオキシ基;アルキルカルボニルオキシ基;アリールカルボニルオキシ基;ホウ素含有基;亜鉛含有基;スズ含有基;ケイ素含有基;マグネシウム含有基;リチウム含有基;ヒドロキシ基;アルキル置換又はアリール置換カルボニル基;カルボキシル基;ビニル基;(メタ)アクリロイル基;エポキシ基;並びにオキセタニル基からなる群より選ばれるものが好ましい。
これらの置換基は、さらに上述の任意の置換基により置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成してもよい。
また、「置換若しくは無置換の」という場合における「無置換」とは置換基で置換されておらず、水素原子が結合していることを意味する。
【0072】
以下に、化合物(1)の具体例を記載する。ただし、化合物(1)はそれら具体例に限定されるわけではない。
【化48】
【0073】
【化49】
【0074】
【化50】
【0075】
【化51】
【0076】
【化52】
【0077】
【化53】
【0078】
【化54】
【0079】
【化55】
【0080】
【化56】
【0081】
【化57】
【0082】
【化58】
【0083】
【化59】
【0084】
【化60】
【0085】
[有機エレクトロルミネッセンス素子用材料]
本発明の一態様の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料(以後、「有機エレクトロルミネッセンス素子用材料」を「有機EL素子用材料」と略記することがある)について説明する。
本発明の一態様の有機EL素子用材料は、化合物(1)を含む。化合物(1)は有機EL素子における材料として有用である。
有機EL素子用材料中の化合物(1)の含有量は、1質量%以上であればよく、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の一態様の有機EL素子用材料は、例えば、蛍光発光ユニットの発光層におけるホスト材料若しくはドーパント材料、又は燐光発光ユニットの発光層におけるホスト材料として用いることができる。この場合、発光層は本発明の一態様の有機EL素子用材料と蛍光発光材料又は燐光発光材料とを含有する。また、蛍光発光ユニット及び燐光発光ユニットのいずれにおいても、有機EL素子の陽極と発光層との間に設けられる陽極側有機薄膜層や、有機EL素子の陰極と発光層との間に設けられる陰極側有機薄膜層の材料、すなわち、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層、電子阻止層等の材料としても、本発明の一態様の有機EL素子用材料は有用である。
ここで、「発光ユニット」とは、一層以上の有機層を含み、そのうちの一層が発光層であり、注入された正孔と電子が再結合することにより発光することができる最小単位をいう。
【0086】
[インク組成物]
本発明の一態様のインク組成物について説明する。
本発明の一態様のインク組成物は、溶媒と該溶媒中に溶解した化合物(1)とを含む。本発明の一態様のインク組成物は、有機EL素子を構成する有機薄膜層を形成するために使用することができる。
本発明の一態様のインク組成物は、化合物(1)以外に、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、アクセプター材料、安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の一態様のインク組成物は、粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤、例えば、増粘剤(高分子量化合物等)、粘度降下剤(低分子量化合物等)、界面活性剤等を含有していてもよい。また、保存安定性を改善するために、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等、有機EL素子の性能に影響しない酸化防止剤を含有していてもよい。
インク組成物中の化合物(1)の含有量は、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0087】
増粘剤として使用可能な高分子量化合物としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂が挙げられる。
【0088】
溶媒としては、例えばクロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、アニソール等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロへキサン、メチルシクロへキサン、n−ペンタン、n−へキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキサノン、べンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−へキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロへキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0089】
これらの溶媒のうち、溶解性、成膜の均一性及び粘度特性等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、5−ブチルベンゼン、n−へキシルベンゼン、シクロへキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、テトラリン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、アニソール、エトキシベンゼン、シクロへキサン、ビシクロへキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロへキサン、n−へキシルシクロヘキサン、デカリン、安息香酸メチル、シクロへキサノン、2−プロピルシクロへキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロへキシルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンがより好ましい。
【0090】
[有機エレクトロルミネッセンス素子]
本発明の一態様の有機エレクトロルミネッセンス素子(以後、「有機エレクトロルミネッセンス素子」を「有機EL素子」と略記することがある)について説明する。
本発明の一態様の有機EL素子は、陰極と、陽極と、該陰極と該陽極の間に発光層を含む一層以上の有機薄膜層とを有し、前記一層以上の有機薄膜層のうち少なくとも1層が化合物(1)を含む。
化合物(1)が含まれる有機薄膜層の例としては、陽極と発光層との間に設けられる陽極側有機薄膜層(正孔輸送層、正孔注入層等)、発光層、陰極と発光層との間に設けられる陰極側有機薄膜層(電子輸送層、電子注入層等)、スペース層、障壁層等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。化合物(1)は、上記いずれの層に含まれていてもよく、例えば、蛍光発光ユニットの発光層におけるホスト材料やドーパント材料、燐光発光ユニットの発光層におけるホスト材料、発光ユニットの正孔輸送層、電子輸送層等として用いることができる。
【0091】
本発明の一態様の有機EL素子は、蛍光又は燐光発光型の単色発光素子であっても、蛍光/燐光ハイブリッド型の白色発光素子であってもよいし、単独の発光ユニットを有するシンプル型であっても、複数の発光ユニットを有するタンデム型であってもよく、中でも、燐光発光型であることが好ましい。ここで、「発光ユニット」とは、一層以上の有機層を含み、そのうちの一層が発光層であり、注入された正孔と電子が再結合することにより発光することができる最小単位をいう。
【0092】
従って、シンプル型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(1)陽極/発光ユニット/陰極
また、上記発光ユニットは、燐光発光層や蛍光発光層を複数有する積層型であってもよく、その場合、各発光層の間に、燐光発光層で生成された励起子が蛍光発光層に拡散することを防ぐ目的で、スペース層を有していてもよい。発光ユニットの代表的な層構成を以下に示す。
(a)正孔輸送層/発光層(/電子輸送層)
(b)正孔輸送層/第一燐光発光層/第二燐光発光層(/電子輸送層)
(c)正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(d)正孔輸送層/第一燐光発光層/第二燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(e)正孔輸送層/第一燐光発光層/スペース層/第二燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(f)正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/第一蛍光発光層/第二蛍光発光層(/電子輸送層)
(g)正孔輸送層/電子障壁層/発光層(/電子輸送層)
(h)正孔輸送層/発光層/正孔障壁層(/電子輸送層)
(i)正孔輸送層/蛍光発光層/トリプレット障壁層(/電子輸送層)
【0093】
上記各燐光又は蛍光発光層は、それぞれ互いに異なる発光色を示すものとすることができる。具体的には、上記積層発光層(d)において、正孔輸送層/第一燐光発光層(赤色発光)/第二燐光発光層(緑色発光)/スペース層/蛍光発光層(青色発光)/電子輸送層といった層構成等が挙げられる。
なお、各発光層と正孔輸送層あるいはスペース層との間には、適宜、電子障壁層を設けてもよい。また、各発光層と電子輸送層との間には、適宜、正孔障壁層を設けてもよい。電子障壁層や正孔障壁層を設けることで、電子又は正孔を発光層内に閉じ込めて、発光層における電荷の再結合確率を高め、発光効率を向上させることができる。
【0094】
タンデム型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(2)陽極/第一発光ユニット/中間層/第二発光ユニット/陰極
ここで、上記第一発光ユニット及び第二発光ユニットとしては、例えば、それぞれ独立に上述の発光ユニットと同様のものを選択することができる。
上記中間層は、一般的に、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、第一発光ユニットに電子を、第二発光ユニットに正孔を供給する、公知の材料構成を用いることができる。
【0095】
図1に、本発明の一態様の有機EL素子の一例の概略構成を示す。有機EL素子1は、基板2、陽極3、陰極4、及び該陽極3と陰極4との間に配置された発光ユニット10とを有する。発光ユニット10は、例えば、燐光ホスト材料と燐光ドーパント(燐光発光材料)を含む少なくとも1つの燐光発光層を含む発光層5を有する。発光層5と陽極3との間に正孔注入・輸送層(陽極側有機薄膜層)6等、発光層5と陰極4との間に電子注入・輸送層(陰極側有機薄膜層)7等を形成してもよい。また、発光層5の陽極3側に電子障壁層を、発光層5の陰極4側に正孔障壁層を、それぞれ設けてもよい。これにより、電子や正孔を発光層5に閉じ込めて、発光層5における励起子の生成確率を高めることができる。
【0096】
なお、本明細書において、蛍光ドーパント(蛍光発光材料)と組み合わされたホストを蛍光ホストと称し、燐光ドーパントと組み合わされたホストを燐光ホストと称する。蛍光ホストと燐光ホストは分子構造のみにより区分されるものではない。すなわち、燐光ホストとは、燐光ドーパントを含有する燐光発光層を構成する材料を意味し、蛍光発光層を構成する材料として利用できないことを意味しているわけではない。蛍光ホストについても同様である。
【0097】
(基板)
本発明の一態様の有機EL素子は、透光性基板上に作製する。透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、400nm〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で平滑な基板が好ましい。具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を原料として用いてなるものを挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を原料として用いてなるものを挙げることができる。
【0098】
(陽極)
有機EL素子の陽極は、正孔を正孔輸送層又は発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有するものを用いることが効果的である。陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅等が挙げられる。陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選択される。
【0099】
(陰極)
陰極は電子注入層、電子輸送層又は発光層に電子を注入する役割を担うものであり、仕事関数の小さい材料により形成するのが好ましい。陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等が使用できる。陰極も、陽極と同様に、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。また、必要に応じて、陰極側から発光を取り出してもよい。
【0100】
(発光層)
発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料を含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。
燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
【0101】
ここで、上記発光層は、例えば、電子輸送性のホストと正孔輸送性のホストを組み合わせるなどして、発光層内のキャリアバランスを調整するダブルホスト(ホスト・コホストともいう)を採用してもよい。
また、量子収率の高いドーパント材料を二種類以上入れることによって、それぞれのドーパントが発光するダブルドーパントを採用してもよい。具体的には、ホスト、赤色ドーパント及び緑色ドーパントを共蒸着することによって、発光層を共通化して黄色発光を実現する態様が挙げられる。
【0102】
上記発光層は、複数の発光層を積層した積層体とすることで、発光層界面に電子と正孔を蓄積させて、再結合領域を発光層界面に集中させて、量子効率を向上させることができる。
発光層への正孔の注入し易さと電子の注入し易さは異なっていてもよく、また、発光層中での正孔と電子の移動度で表される正孔輸送能と電子輸送能が異なっていてもよい。
【0103】
発光層を形成する燐光ドーパント(燐光発光材料)は三重項励起状態から発光することのできる化合物であり、三重項励起状態から発光する限り特に限定されないが、Ir,Pt,Os,Au,Cu,Re及びRuから選択される少なくとも一つの金属と配位子とを含む有機金属錯体であることが好ましい。前記配位子は、オルトメタル結合を有することが好ましい。燐光量子収率が高く、発光素子の外部量子効率をより向上させることができるという点で、Ir,Os及びPtから選ばれる金属原子を含有する金属錯体が好ましく、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体、特にオルトメタル化錯体がより好ましく、イリジウム錯体及び白金錯体がさらに好ましく、オルトメタル化イリジウム錯体が特に好ましい。
【0104】
燐光ドーパントの発光層における含有量は特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜70質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。燐光ドーパントの含有量が0.1質量%以上であると十分な発光が得られ、70質量%以下であると濃度消光を避けることができる。
【0105】
燐光ドーパントとして好ましい有機金属錯体の具体例を、以下に示す。
【化61】
【0106】
【化62】
【0107】
【化63】
【0108】
【化64】
【0109】
さらに、本発明の一態様の有機EL素子においては、燐光発光材料として、下記式(X)又は(Y)で表される錯体が好ましい。
【化65】
式(X)、(Y)において、R10は、水素原子又は置換基であり、kは、1〜4の整数である。Mは、Ir、Os、又はPtである。
10の示す置換基としては、上記式(1)のR〜R等で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
【0110】
燐光ホストは、燐光ドーパントの三重項エネルギーを効率的に発光層内に閉じ込めることにより、燐光ドーパントを効率的に発光させる機能を有する化合物である。本発明の一態様の化合物(1)は燐光ホストとして有用であるが、化合物(1)以外の化合物も、燐光ホストとして、上記目的に応じて適宜選択することができる。また、化合物(1)は、上記燐光ホストへの適用に限定されない。
化合物(1)とそれ以外の化合物を同一の発光層内の燐光ホスト材料として併用してもよいし、複数の発光層がある場合には、そのうちの一つの発光層の燐光ホスト材料として化合物(1)を用い、別の一つの発光層の燐光ホスト材料として化合物(1)以外の化合物を用いてもよい。また、本発明の一態様の化合物(1)は発光層以外の有機層にも使用しうるものであり、その場合には発光層の燐光ホストとして、化合物(1)以外の化合物を用いてもよい。
【0111】
化合物(1)以外の化合物で、燐光ホストとして好適な化合物の具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。燐光ホストは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。具体例としては、以下のような化合物が挙げられる。
【0112】
【化66】
【0113】
本発明の一態様の有機EL素子は、蛍光発光材料を含有する発光層、つまり蛍光発光層を有していてもよい。蛍光発光層としては、公知の蛍光発光材料を使用できる。該蛍光発光材料としては、アントラセン誘導体、フルオランテン誘導体、スチリルアミン誘導体及びアリールアミン誘導体から選択される少なくとも1種が好ましく、アントラセン誘導体、アリールアミン誘導体がより好ましい。特に、ホスト材料としてはアントラセン誘導体が好ましく、ドーパントとしてはアリールアミン誘導体が好ましい。具体的には、国際公開第2010/134350号や国際公開第2010/134352号に記載する好適な材料が選択される。本発明の一態様の有機EL素子用材料は、蛍光発光層の蛍光発光材料として用いてもよく、蛍光発光層のホスト材料として用いてもよい。
【0114】
(電子供与性ドーパント)
本発明の一態様の有機EL素子は、陰極と発光ユニットとの界面領域に電子供与性ドーパントを有することも好ましい。このような構成によれば、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。ここで、電子供与性ドーパントとは、仕事関数3.8eV以下の金属を含有するものをいい、その具体例としては、アルカリ金属、アルカリ金属錯体、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属錯体、アルカリ土類金属化合物、希土類金属、希土類金属錯体、及び希土類金属化合物等から選ばれた少なくとも一種類が挙げられる。
【0115】
アルカリ金属としては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)、Cs(仕事関数:1.95eV)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち好ましくはK、Rb、Cs、さらに好ましくはRb又はCsであり、最も好ましくはCsである。アルカリ土類金属としては、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0eV〜2.5eV)、Ba(仕事関数:2.52eV)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。希土類金属としては、Sc、Y、Ce、Tb、Yb等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
【0116】
アルカリ金属化合物としては、LiO、CsO、KO等のアルカリ酸化物、LiF、NaF、CsF、KF等のアルカリハロゲン化物等が挙げられ、LiF、LiO、NaFが好ましい。アルカリ土類金属化合物としては、BaO、SrO、CaO及びこれらを混合したBaSr1−xO(0<x<1)、BaCa1−xO(0<x<1)等が挙げられ、BaO、SrO、CaOが好ましい。希土類金属化合物としては、YbF、ScF、ScO、Y、Ce、GdF、TbF等が挙げられ、YbF、ScF、TbFが好ましい。
【0117】
アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、希土類金属錯体としては、それぞれ金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンの少なくとも一つ含有するものであれば特に限定はない。また、配位子にはキノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、アゾメチン類、及びそれらの誘導体などが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0118】
電子供与性ドーパントの添加形態としては、界面領域に層状又は島状に形成すると好ましい。形成方法としては、抵抗加熱蒸着法により電子供与性ドーパントを蒸着しながら、界面領域を形成する有機化合物(発光材料や電子注入材料)を同時に蒸着させ、有機化合物に電子供与性ドーパントを分散する方法が好ましい。分散濃度はモル比で有機化合物:電子供与性ドーパント=100:1〜1:100、好ましくは5:1〜1:5である。
【0119】
電子供与性ドーパントを層状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を層状に形成した後に、還元ドーパントを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは層の厚み0.1nm〜15nmで形成する。電子供与性ドーパントを島状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を島状に形成した後に、電子供与性ドーパントを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは島の厚み0.05nm〜1nmで形成する。
本発明の一態様の有機EL素子における、主成分と電子供与性ドーパントの割合は、モル比で主成分:電子供与性ドーパント=5:1〜1:5であると好ましく、2:1〜1:2であるとさらに好ましい。
【0120】
(電子輸送層)
電子輸送層は、発光層と陰極との間に形成される有機層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有する。電子輸送層が複数層で構成される場合、陰極に近い有機層を電子注入層と定義することがある。電子注入層は、陰極から電子を効率的に有機層ユニットに注入する機能を有する。本発明の一態様の化合物(1)は、電子輸送層(第2の電荷輸送材料)に含有される電子輸送材料として用いることもできる。
【0121】
電子輸送層に用いる電子輸送性材料としては、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましく用いられ、特に含窒素環誘導体が好ましい。また、含窒素環誘導体としては、含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する芳香族環、又は含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する縮合芳香族環化合物が好ましい。
この含窒素環誘導体としては、例えば、下記式(A)で表される含窒素環金属キレート錯体が好ましい。
【0122】
【化67】
【0123】
式(A)におけるR101〜R106は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、オキシ基、アミノ基、炭素数1〜40(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5)の炭化水素基、炭素数1〜40(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5)のアルコキシ基、環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜20、より好ましくは6〜12)のアリールオキシ基、炭素数2〜40(好ましくは2〜20、より好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)のアルコキシカルボニル基又は環形成原子数5〜50(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20)の芳香族複素環基であり、これらは置換されていてもよい。
【0124】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
置換されていてもよいアミノ基の例としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基が挙げられる。
アルキルアミノ基及びアラルキルアミノ基は−NQと表される。Q及びQは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアラルキル基を表す。Q及びQの一方は水素原子であってもよい。
アリールアミノ基は−NAr’Ar’と表され、Ar’及びAr’は、それぞれ独立に、炭素数6〜50の非縮合芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基を表す。Ar’及びAr’の一方は水素原子であってもよい。
【0125】
炭素数1〜40の炭化水素基はアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基を含む。
アルコキシカルボニル基は−COOY’と表され、Y’は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
Mは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)であり、Inであると好ましい。
100は、下記式(A’)又は(A”)で表される基である。
【0126】
【化68】
【0127】
式(A’)中、R107〜R111は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5)の炭化水素基であり、R107〜R111のうちの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。また、前記式(A”)中、R112〜R126は、それぞれ独立に、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5)の炭化水素基であり、R112〜R126のうちの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。
【0128】
式(A’)及び式(A”)のR107〜R126が示す炭素数1〜40の炭化水素基は、前記式(A)中のR101〜R106が示す炭化水素基と同様である。また、R107〜R111のうちの2つ以上が結合して環状構造を形成した場合及びR112〜R126のうちの2つ以上が結合して環状構造を形成した場合の2価の基としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメタン−2,2’−ジイル基、ジフェニルエタン−3,3’−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
【0129】
電子輸送層に用いられる電子伝達性化合物としては、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体、オキサジアゾール誘導体、含窒素複素環誘導体が好適である。上記8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウムを用いることができる。そして、オキサジアゾール誘導体としては、下記のものを挙げることができる。
【0130】
【化69】
【0131】
前記式中、Ar17、Ar18、Ar19、Ar21、Ar22及びAr25は、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基を示し、Ar17とAr18、Ar19とAr21、Ar22とAr25は、たがいに同一でも異なっていてもよい。芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基などが挙げられる。これらの置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。
【0132】
Ar20、Ar23及びAr24は、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数6〜60の2価の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基を示し、Ar23とAr24は、たがいに同一でも異なっていてもよい。2価の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基などが挙げられる。これらの置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。
【0133】
これらの電子伝達性化合物は、薄膜形成性の良好なものが好ましく用いられる。そして、これら電子伝達性化合物の具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【0134】
【化70】
【0135】
電子伝達性化合物としての含窒素複素環誘導体は、以下の式を有する有機化合物からなる含窒素複素環誘導体であって、金属錯体でない含窒素化合物が挙げられる。例えば、下記式(B)に示す骨格を含有する5員環もしくは6員環や、下記式(C)に示す構造のものが挙げられる。
【0136】
【化71】
【0137】
前記式(C)中、Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。ZならびにZは、それぞれ独立に含窒素ヘテロ環を形成可能な原子群を表す。
【0138】
含窒素複素環誘導体は、さらに好ましくは、5員環もしくは6員環からなる含窒素芳香多環族を有する有機化合物である。さらには、このような複数窒素原子を有する含窒素芳香多環族の場合は、上記式(B)と(C)もしくは上記式(B)と下記式(D)を組み合わせた骨格を有する含窒素芳香多環有機化合物が好ましい。
【0139】
【化72】
【0140】
前記の含窒素芳香多環有機化合物の含窒素基は、例えば、以下の式で表される含窒素複素環基から選択される。
【0141】
【化73】
【0142】
前記各式中、R’’’は、環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の芳香族炭化水素基又は環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の縮合芳香族炭化水素基、環形成原子数5〜40(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の芳香族複素環基又は環形成原子数5〜40(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)縮合芳香族複素環基、炭素数1〜20(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアルキル基、又は炭素数1〜20(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアルコキシ基である。
は0〜5の整数であり、nが2以上の整数であるとき、複数のR’’’は互いに同一又は異なっていてもよい。
【0143】
さらに、好ましい具体的な化合物として、下記式(D1)で表される含窒素複素環誘導体が挙げられる。
HAr−L101−Ar101−Ar102 (D1)
前記式(D1)中、HArは、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の含窒素複素環基であり、
101は単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の縮合芳香族複素環基である。
Ar101は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の2価の芳香族炭化水素基であり、Ar102は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜14)の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の縮合芳香族複素環基である。
【0144】
HArは、例えば、下記の群から選択される。
【化74】
【0145】
101は、例えば、下記の群から選択される。
【化75】
【0146】
Ar101は、例えば、下記式(D2)、式(D3)ので表される基から選択される。
【化76】
【0147】
前記式(D2)、式(D3)中、R201〜R214は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の縮合芳香族複素環基である。
Ar103は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の縮合芳香族複素環基である。
【0148】
Ar102は、例えば、下記の群から選択される。
【化77】
【0149】
電子伝達性化合物としての含窒素芳香多環有機化合物には、この他、下記の化合物も好適に用いられる。
【0150】
【化78】
【0151】
前記式(D4)中、R231〜R234は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の脂肪族式環基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50の芳香族環基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50の複素環基を表し、X21、X22は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又はジシアノメチレン基を表す。
【0152】
また、電子伝達性化合物として、下記の化合物も好適に用いられる。
【化79】
【0153】
前記式(D5)中、R221、R222、R223及びR224は互いに同一の又は異なる基であって、下記式(D6)で表される芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基である。
【化80】
【0154】
前記式(D6)中、R225、R226、R227、R228及びR229は互いに同一又は異なる基であって、水素原子、飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20のアルコキシル基、飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20のアルキル基、アミノ基、又は炭素数1〜20のアルキルアミノ基である。R225、R226、R227、R228及びR229の少なくとも1つは水素原子以外の基である。
【0155】
さらに、電子伝達性化合物は、該含窒素複素環基又は含窒素複素環誘導体を含む高分子化合物であってもよい。
【0156】
本発明の一態様の有機EL素子の電子輸送層は、下記式(E)〜(G)で表される含窒素複素環誘導体を少なくとも1種含むことが特に好ましい。
【化81】
【0157】
(式(E)〜式(G)中、Z201、Z202及びZ203は、それぞれ独立に、窒素原子又は炭素原子である。
301及びR302は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基又は置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基である。
vは、0〜5の整数であり、vが2以上の整数であるとき、複数のR301は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのR301同士が互いに結合して、置換もしくは無置換の炭化水素環を形成していてもよい。
Ar201は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)のアリール基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)のヘテロアリール基である。
Ar202は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)のアリール基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)のヘテロアリール基である。
但し、Ar201、Ar202のいずれか一方は、置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜50(好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20)の縮合芳香族炭化水素環基又は置換もしくは無置換の環形成原子数9〜50(好ましくは9〜30、より好ましくは9〜20)の縮合芳香族複素環基である。
Ar203は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)のアリーレン基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)のヘテロアリーレン基である。
201、L202及びL203は、それぞれ独立に、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)のアリーレン基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数9〜50(好ましくは9〜30、より好ましくは9〜20)の2価の縮合芳香族複素環基である。)
【0158】
環形成炭素数6〜50のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ピレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、トリル基、フルオランテニル基、フルオレニル基などが挙げられる。
環形成原子数5〜50のヘテロアリール基としては、ピローリル基、フリル基、チエニル基、シローリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、べンゾフリル基、イミダゾリル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、セレノフェニル基、オキサジアゾリル基、トリアゾーリル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル基、イミダゾ[1,2−a]ピリミジニル基などが挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基などが挙げられる。
炭素数1〜20のハロアルキル基としては、前記アルキル基の1又は2以上の水素原子をフッ素、塩素、ヨウ素及び臭素から選ばれる少なくとも1のハロゲン原子で置換して得られる基が挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、前記アルキル基をアルキル部位としては有する基が挙げられる。
環形成炭素数6〜50のアリーレン基としては、前記アリール基から水素原子1個を除去して得られる基が挙げられる。
環形成原子数9〜50の2価の縮合芳香族複素環基としては、前記ヘテロアリール基として記載した縮合芳香族複素環基から水素原子1個を除去して得られる基が挙げられる。
【0159】
電子輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1nm〜100nmである。
また、電子輸送層に隣接して設けることができる電子注入層の構成成分として、含窒素環誘導体の他に無機化合物として、絶縁体又は半導体を使用することが好ましい。電子注入層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
【0160】
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲニド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲニドとしては、例えば、LiO、KO、NaS、NaSe及びNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲニドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF及びBeF等のフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0161】
また、半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子注入層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子注入層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。なお、このような無機化合物としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0162】
このような絶縁体又は半導体を使用する場合、その層の好ましい厚みは、0.1nm〜15nm程度である。また、本発明の一態様の有機EL素子における電子注入層は、前述の電子供与性ドーパントを含有していても好ましい。
【0163】
(正孔輸送層)
発光層と陽極との間に形成される有機層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有する。正孔輸送層が複数層で構成される場合、陽極に近い有機層を正孔注入層と定義することがある。正孔注入層は、陽極から正孔を効率的に有機層ユニットに注入する機能を有する。本発明の一態様の化合物(1)は、正孔輸送層(第1の電荷輸送層)に含有される正孔輸送材料として用いることもできる。
【0164】
正孔輸送層を形成する他の材料としては、芳香族アミン化合物、例えば、下記式(H)で表される芳香族アミン誘導体が好適に用いられる。
【化82】
【0165】
前記式(H)において、Ar211〜Ar214は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の縮合芳香族複素環基、又は、それら芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基と芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基が結合した基を表す。Ar211とAr212、Ar213とAr214は互いに結合して飽和もしくは不飽和の環構造を形成してもよい。
また、前記式(H)において、L211は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜12)の縮合芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の芳香族複素環基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50(好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20、さらに好ましくは5〜12)の縮合芳香族複素環基を表す。
【0166】
式(H)の化合物の具体例を以下に記す。
【0167】
【化83】
【0168】
また、下記式(J)の芳香族アミンも正孔輸送層の形成に好適に用いられる。
【化84】
【0169】
前記式(J)において、Ar221〜Ar223の定義は前記式(H)のAr211〜Ar214の定義と同様である。以下に式(J)の化合物の具体例を記すがこれらに限定されるものではない。
【0170】
【化85】
【0171】
【化86】
【0172】
【化87】
【0173】
【化88】
【0174】
また、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール;2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD);トリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)から選ばれる芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を正孔輸送層に用いてもよい。
【0175】
本発明の一態様において、正孔輸送層は正孔輸送材料と溶剤を含有する正孔輸送層用組成物を用いて形成してもよい。
正孔輸送材料は、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよい。また、電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送材料の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
【0176】
ここで誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0177】
【化89】
【0178】
式(I)中、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基または置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基または置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表す。また、Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。Yは、下記から選ばれる連結基を表す。
【0179】
【化90】
【0180】
上記各式中、Ar〜Ar16は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基または置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表す。
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、及びピリジン環から選ばれる環を有する基が好ましく、ベンゼン環及びナフタレン環から選ばれる環を有する基がさらに好ましい。
【0181】
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基の任意の置換基の分子量は、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましい。
およびRが表す置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。
【0182】
正孔輸送材料としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4−エチレンジオキシチオフェンを高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
【0183】
正孔輸送層用組成物中の正孔輸送材料の濃度は任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、また、通常70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。この範囲であれば、膜厚ムラが生じたり、正孔輸送層に欠陥が生じることが無い。
【0184】
上記正孔輸送層用組成物は、電子受容性化合物を含有しても良い。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送材料から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
【0185】
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基を有するオニウム塩;塩化鉄(III)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0186】
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送材料を酸化することにより正孔輸送層の導電率を向上させることができる。
正孔輸送層用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送材料に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
【0187】
上述の正孔輸送材料や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を正孔輸送層用組成物に含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0188】
本発明の一態様において、塗布法に適した正孔輸送材料が好ましく用いられる。このような正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリフルオレン誘導体、芳香族アミン残基を有する高分子化合物、およびポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体が挙げられる。
【0189】
前記正孔輸送材料は高分子化合物、例えば重合体であることが好ましい。高分子化合物であると成膜性が向上し、有機EL素子の発光性を均一にすることができるからである。例えば、このような正孔輸送材料の標準ポリスチレンで検量した数平均分子量は、10000以上であり、好ましくは3.0×10〜5.0×10であり、より好ましくは6.0×10〜1.2×10である。また、正孔輸送材料の重量平均分子量は、1.0×10以上であり、好ましくは5.0×10〜1.0×10であり、より好ましくは1.0×10〜6.0×10である。
【0190】
前記正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリフルオレン誘導体、芳香族アミン残基を有する高分子化合物、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、およびポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体等の高分子化合物が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ポリフルオレン誘導体、芳香族アミン残基を有する高分子化合物である。正孔輸送材料が低分子である場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0191】
前記ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体は、例えばビニルモノマーをカチオン重合するか、またはラジカル重合することによって得られる。
【0192】
ポリシロキサン若しくはその誘導体としては、シロキサン骨格構造には正孔輸送性がほとんどないので、側鎖または主鎖に上記低分子正孔輸送材料の残基を有する化合物が好適に用いられる。特に正孔輸送性の芳香族アミン残基を側鎖または主鎖に有する化合物が挙げられる。
【0193】
正孔輸送材料としては、下記式(Z)で表されるフルオレンジイルユニットを有する重合体が好ましい。縮合環または複数の芳香環を有する有機化合物と接触させて有機EL素子の正孔輸送層とした場合に、正孔注入効率が向上し、駆動時の電流密度が大きくなるからである。
【0194】
【化91】
【0195】
式(Z)中、R、Rは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基を表す。アルキル基としては、炭素原子数が1〜10の基が挙げられる。アルコキシ基としては炭素原子数が1〜10の基が挙げられる。アリール基の例としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。1価の複素環基の例としてはピリジル基等が挙げられる。アリール基、1価の複素環基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、高分子化合物の溶解性向上の観点から、炭素原子数が1〜10のアルキル基、炭素原子数が1〜10のアルコキシ基等が挙げられる。
【0196】
式(Z)において、アリール基、1価の複素環基は架橋性基を有していてもよい。架橋基の例としては、ビニル基、エチニル基、ブテニル基、アクリル構造を有する基、アクリレート構造を有する基、アクリルアミド構造を有する基、メタクリル構造を有する基、メタクリレート構造を有する基、メタクリルアミド構造を有する基、ビニルエーテル構造を有する基、ビニルアミノ基、シラノール構造を有する基、小員環(例えばシクロプロパン、シクロブタン、エポキシド、オキセタン、ジケテン、エピスルフィド等)を有する基等が挙げられる。
【0197】
好ましいフルオレンジイルユニットの具体例を以下に示す。
【化92】
【0198】
特に好ましい正孔輸送材料は、繰り返し単位として上記フルオレンジイルユニットと芳香族3級アミン化合物ユニットとを含む重合体、例えばポリアリールアミン重合体である。
【0199】
芳香族3級アミン化合物ユニットとしては、下記式(K)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【化93】
【0200】
式(K)中、Ar、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表す。Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、アリール基または1価の複素環基を表す。あるいは、ArとArは、ArとArが結合する窒素原子とともに環を形成していてもよい。mおよびnは、それぞれ独立に、0または1を表す。
アリーレン基の例としては、フェニレン基等が挙げられる。2価の複素環基の例としては、ピリジンジイル基等が挙げられる。これらの基は置換基を有していてもよい。
アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。1価の複素環基の例としては、ピリジル基等が挙げられる。これらの基は置換基を有していてもよい。
1価の複素環基の例としては、チエニル基、フリル基、ピリジル基等が挙げられる。
【0201】
アリーレン基、アリール基、2価の複素環基、1価の複素環基の任意の置換基としては、高分子化合物の溶解性の観点からは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基としては、炭素原子数が1〜10の基が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素原子数が1〜10の基が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0202】
また、置換基は、架橋性基を有していてもよい。架橋性基の例としては、ビニル基、エチニル基、ブテニル基、アクリル構造を有する基、アクリレート構造を有する基、アクリルアミド構造を有する基、メタクリル構造を有する基、メタクリレート構造を有する基、メタクリルアミド構造を有する基、ビニルエーテル構造を有する基、ビニルアミノ基、シラノール構造を有する基、小員環(例えばシクロプロパン、シクロブタン、エポキシド、オキセタン、ジケテン、エピスルフィド等)を有する基等が挙げられる。
【0203】
式(K)において、Ar、Ar、ArおよびArは、アリーレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。Ar、ArおよびArはアリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
さらにAr中の炭素原子とAr中の炭素原子とが直接結合するか、または−O−、−S−等の2価の基を介して結合していてもよい。
モノマーの合成し易さの観点からは、mおよびnが0であることが好ましい。
【0204】
式(K)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記式で表される繰り返し単位等が挙げられる。
【化94】
【0205】
正孔輸送材料が架橋性基を有しない場合には、架橋性基を有する架橋剤を用いることが好ましい。架橋剤の例としては、ビニル基、アセチル基、ブテニル基、アクリル基、アクリルアミド基、メタクリル基、メタクリルアミド基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基、シラノール基、シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基、オキセタン基、ジケテン基、エピスルフィド基、ラクトン基、及びラクタム基からなる群から選ばれる重合可能な置換基を有する化合物を挙げることができる。架橋剤としては、例えば多官能アクリレートが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、トリスペンタエリスリトールオクタアクリレート(TPEA)などが挙げられる。
このように架橋性基を有する材料を用いるか、または架橋剤を用いることにより、下層(正孔輸送層)上にさらに別の機能層(上層)を塗布法により形成したとしても、上層形成用の溶媒等による下層の溶解を効果的に抑制することができる。
【0206】
本発明の一態様において、正孔輸送部位を有し、架橋性基を有する正孔輸送材料が好ましく用いられる。正孔輸送部位としては、例えばトリアリールアミン構造、フルオレン環、アントラセン環、ピレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、フェノキサジン環、フェナントロリン環などの3環以上の芳香族環構造、チオフェン環、シロール環などの芳香族複素環構造、及び金属錯体構造が挙げられる。
【0207】
中でも、電気化学的安定性及び正孔輸送能を向上させる点で、正孔輸送部位としてトリアリールアミン構造を有することが好ましい。
また、架橋反応によって有機溶剤に不溶になりやすい点で、重合体であることが好ましい。特に、電気化学的安定性及び正孔輸送能を向上させる点で、下記式(L)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。
【0208】
【化95】
【0209】
式(L)中、mは0〜3の整数を表し、Ar及びArは、各々独立して、単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表し、Ar〜Arは、各々独立に、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表す。但し、Ar及びArが同時に、単結合であることはない。
【0210】
前記芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5個の6員環を含む縮合環の一価の基が挙げられる。
前記芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4個の5又は6員環を含む縮合環の一価の基が挙げられる。
【0211】
溶剤に対する溶解性及び耐熱性の点から、Ar〜Arは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環の一価の基が好ましい。
また、Ar〜Arとしては、前記群から選ばれる1種又は2種以上の環を単結合により連結した基も好ましく、ビフェニル基、ビフェニレン基及びターフェニル基、ターフェニレン基がさらに好ましい。
【0212】
前記芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基の任意の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基などの炭素数が1〜24、好ましくは1〜12である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;ビニル基等の炭素数が2〜24、好ましくは2〜12であるアルケニル基;エチニル基等の炭素数が2〜24、好ましくは2〜12であるアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数が1〜24、好ましくは1〜12であるアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の炭素数が4以上、好ましくは5以上であり、36以下、好ましくは24であるアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数が2〜24、好ましくは2〜12であるアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数が2〜24、好ましくは2〜12であるジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の炭素数が10以上、好ましくは12以上であり、36以下、好ましくは24以下のジアリールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等の炭素数が7〜36、好ましくは7〜24であるアリールアルキルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等の炭素数が2〜24、好ましくは2〜12であるアシル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の炭素数が1〜12、好ましくは1〜6のハロアルキル基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数が1〜24、好ましくは1〜12のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の炭素数が4以上、好ましくは5以上であり、36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の炭素数が2以上、好ましくは3以上であり、36以下、好ましくは24以下であるシリル基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の炭素数が2以上、好ましくは3以上であり、36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数が6〜36以下、好ましくは6〜24である芳香族炭化水素環基;及びチエニル基、ピリジル基等の炭素数が3以上、好ましくは4以上であり、36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基が挙げられる。
【0213】
上記任意の置換基の中でも、溶解性の点から、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。
また、上記各任意の置換基がさらに置換基を有していてもよく、その例としては任意の置換基として上記した基から選択される。
正孔輸送性に優れる点から、Ar〜Arは、置換基を含めて、その炭素数は3以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上であり、72以下、好ましくは48以下、さらに好ましくは25以下である。
【0214】
式(L)におけるmは、0〜3の整数を表し、成膜性が高められる点で、mは0であることが好ましい。また、正孔輸送能が向上する点で、mは1〜3であることが好ましい。
なお、mが2以上である場合、2個以上のAr及び2個以上のArは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。さらに、Ar同士、Ar同士は、それぞれ互いに直接又は連結基を介して結合して環状構造を形成していてもよい。
【0215】
正孔輸送材料が架橋性基を有すると、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(不溶化反応)の前後で、溶媒に対する溶解性を大きく変化させることができる。
架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。
架橋性基としては、不溶化がしやすいという点で、例えば、下記の架橋性基が挙げられる。
【0216】
【化96】
【0217】
上記式中、R21〜R23は、各々独立に、水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を示す。Ar21は置換もしくは無置換の芳香族基を示す。
、X及びXは、各々独立して水素原子又はハロゲン原子を示す。
24は水素原子又はビニル基を示す。
ベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよく、該置換基同士が、互いに結合して環を形成してもよい。
21〜R23のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基等の炭素数が1〜24、好ましくは1〜12であるアルキル基等が挙げられる。
【0218】
Ar21の芳香族基としては、前記Ar〜Arが表す芳香族基と同じ基等が挙げられる。
なお、R21〜R23、及びAr21の任意の置換基としては、特に制限はないが、例えば、前記した任意の置換基から選ばれる基が挙げられる。
さらに、架橋性基として、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合によって不溶化反応する基が、反応性が高く不溶化が容易な点で好ましい。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点でオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化をまねくおそれのあるヒドロキシル基が生成しにくい点でビニルエーテル基が好ましい。
【0219】
シンナモイル基などアリールビニルカルボニル基、ベンゾシクロブテン環を有する基などの環化付加反応する基が、電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましい。
また、架橋性基の中でも、不溶化後の構造が特に安定な点で、ベンゾシクロブテン環を有する基が特に好ましい。
具体的には、下記式(M)で表される基であることが好ましい。
【0220】
【化97】
【0221】
式(M)中のベンゾシクロブテン環は置換基を有していてもよい。又、該置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。
【0222】
架橋性基は分子内の1価又は2価の芳香族基に直接結合してもよいが、2価の基を介して結合してもよい。この2価の基としては、−O−、−C(=O)−、及び置換基を有していてもよい−CH−から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる2価の基が好ましい。これら2価の基を介して結合する架橋性基の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0223】
【化98】
【0224】
【化99】
【0225】
上記式中、mは0〜12の整数を示し、nは1〜12の整数を示す。
【0226】
他の架橋性基を含む基の具体例としては、次のものが挙げられる。
【化100】
【0227】
【化101】
【0228】
さらに、本発明の一態様において、正孔輸送材料は、導電性ポリマーやオリゴマーを含むことが好ましい。この導電性ポリマーやオリゴマーは、通常、電子供与性化合物、電子受容性化合物、又は酸性化合物との混合物である。混合物は固体状でも液体状でもいいが、塗布法により成膜し、固体膜を得る方法に好適に用いられる溶液、分散液、コロイド、インク、ワニス等が好ましい。また、正孔輸送性の向上のためや、成膜性を向上させることを目的に、該混合物に添加剤を加えてもよい。
以下に本発明の一態様に用いることのできる導電性ポリマーやオリゴマーの例を示す。
前記電子供与性化合物の代表的な例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、チオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、アニリン誘導体、ピロール誘導体、フェニレンビニレン誘導体、チエニレンビニレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。これらの誘導体は分子量が1000未満の低分子、分子量が1000〜10000のオリゴマー及びデンドリマー、及び分子量が10000以上の高分子のいずれであってもよい。中でも芳香族アミン誘導体やポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、オリゴアニリン誘導体が好適に用いられる。
【0229】
前記電子受容性化合物及び酸性化合物の代表的な例としては、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基を有するオニウム塩;塩化鉄(III)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
電子供与性化合物の場合と同様に、これらの誘導体は分子量が1000未満の低分子、分子量が1000〜10000のオリゴマー及びデンドリマー、及び分子量が10000以上のポリマーのいずれであってもよい。
【0230】
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送材料を酸化することにより正孔輸送層の導電率を向上させることができる。正孔輸送層或いは正孔輸送層用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送材料に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
以下、本発明の一態様に用いることができる正孔輸送材料の代表例(i)〜(x)を示す。なお、これらは単独、あるいは、混合して用いることもできるが、相対的に電子供与性のものと、相対的に電子受容性のものを混合することが望ましい。さらに、電子供与性化合物と電子受容性化合物との間での電荷移動を促進させたり、塗布成膜性を向上させるための添加剤などを第三の成分として添加することもできる。第三の成分は複数用いることもできる。
【0231】
【化102】
【0232】
式中、RおよびR’は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜4のアルキルから選択される。RおよびR’は互いに結合して、炭素数1〜4のアルキレン鎖を表してもよい。該アルキレン鎖は任意に炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12の芳香族基、または1,2−シクロヘキシレン基で置換されてもよい。nは約6よりも大きい数を表す。
【0233】
(ii)及び/又は(iii)のモノマー単位を有するポリアニリン
【化103】
【0234】
上記式中、nは、0〜4の整数であり、
m−1は、1〜5の整数で、n+(m−1)=5であり、
は、同一又は異なり、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルカノイル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリール基、アルキルスルフィニル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニル基、アリールチオ基、アリールスルフィニル基、アルコキシカルボニル基、アリールスルホニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、または1つまたは複数のスルホン酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基もしくはエポキシ基によって置換されたアルキル基から選択される。隣接する2つのR基が互いに結合して、1つまたは複数の二価の窒素原子、イオウ原子または酸素原子を含んでもよい3、4、5、6または7員の芳香族環もしくは脂環式環を完成するアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成してもよい。
【0235】
【化104】
【0236】
上記式中、Rは、独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリール基、アルキルスルフィニル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニル基、アリールチオ基、アリールスルフィニル基、アルコキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アクリル酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、シリル基、シロキサン基、アルコール基、ベンジル基、カルボキシレート基、エーテル基、エーテルカルボキシレート基、アミドスルホネート基、エーテルスルホネート基、およびウレタン基から選択される。2つのR基は互いに結合して、3員環、4員環、5員環、6員環または7員環の芳香族環または脂環式環を完成するアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成してもよく、この環は、1個または複数の二価の窒素、硫黄または酸素原子を含んでもよい。
は、独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカノイル基、アルキルチオアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アミノ基、エポキシ基、シリル基、シロキサン基、アミドスルホネート基、アルコール基、ベンジル基、カルボキシレート基、エーテル基、エーテルカルボキシレート基、エーテルスルホネート基、およびウレタン基から選択される基である。
【0237】
【化105】
【0238】
上記式中、Qは、S、Se、およびTeからなる群から選択され、Rは、独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルキチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリール基、アルキルスルフィニル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニル基、アリールチオ基、アリールスルフィニル基、アルコキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アクリル酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、シリル基、シロキサン基、アルコール基、ベンジル基、カルボキシレート基、エーテル基、エーテルカルボキシレート基、アミドスルホネート基、エーテルスルホネート基、エステルスルホネート基、およびウレタン基から選択される。2つのR基は互いに結合して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成するアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成してもよく、該環は、1つまたは複数の二価の窒素原子、セレン原子、テルル原子、硫黄原子、または酸素原子を含んでもよい。
【0239】
【化106】
【0240】
上記式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の一価炭化水素基、t−ブトキシカルボニル基、またはベンジルオキシカルボニル基を示し、R〜R34は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、置換もしくは無置換の一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基またはハロゲン原子を示し、mおよびnは、それぞれ独立して1以上の整数で、m+n≦20を満足する。
【0241】
【化107】
【0242】
上記式中、Xは、O、SまたはNHを表し、Aは、Xおよびn個のSOH基以外の置換基を有していてもよいナフタレン環またはアントラセン環を表し、Bは、置換もしくは無置換の炭化水素基、1,3,5−トリアジン基、または、置換もしくは無置換の下記式(vii−1)もしくは(vii−2)で示される基(式中、WおよびWは、それぞれ独立して、O、S、S(O)、S(O)、または、置換もしくは無置換のN、Si、P、P(O)を示す)を表し、nは1≦n≦4を満たす整数であり、qは1≦qを満たす整数である。
【化108】
【0243】
Bとしては、耐久性向上および電荷輸送性向上を図ることを考慮すると、一つ以上の芳香環を含んでいる2価以上の置換もしくは無置換の炭化水素基、2価もしくは3価の1,3,5−トリアジン基、置換もしくは無置換の2価のジフェニルスルホン基が好ましく、特に、2価もしくは3価の置換もしくは無置換のベンジル基、2価の置換もしくは無置換のp−キシリレン基、2価もしくは3価の置換もしくは無置換のナフチル基、2価もしくは3価の1,3,5−トリアジン基、2価の置換もしくは無置換のジフェニルスルホン基、2〜4価のパーフルオロビフェニル基、2価の置換もしくは無置換の2,2−ビス((ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロピル基、置換もしくは無置換のポリビニルベンジル基が好ましい。
【0244】
式(vii)で表される化合物は式(vii−3)表されることが特に好ましい。
【化109】
【0245】
【化110】
【0246】
式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基またはスルホン酸基を示し、AおよびBは、それぞれ独立して、式(viii−1)または(viii−2)で表される二価の基を示す。
【化111】
【0247】
式中、R〜R11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基またはスルホン酸基を示す。mおよびnは、それぞれ独立して、1以上の整数で、m+n≦20を満足する。
【0248】
下記化合物の混合物(ix)
【化112】
nは、3以上の整数を表す。
【0249】
下記化合物の混合物(x)
【化113】
【0250】
本発明の一態様において、下記式(X)のフェニルアミン系ポリマーを正孔輸送材料として用いることもできる。
【化114】
nは、3以上の整数を表す。
【0251】
本発明の一態様の有機EL素子の正孔輸送層は第1正孔輸送層(陽極側)と第2正孔輸送層(陰極側)の2層構造にしてもよい。
正孔輸送層の膜厚は特に限定されないが、10〜200nmであるのが好ましい。
【0252】
本発明の一態様の有機EL素子では、正孔輸送層又は第1正孔輸送層の陽極側にアクセプター材料を含有する層を接合してもよい。これにより駆動電圧の低下及び製造コストの低減が期待される。
前記アクセプター材料としては下記式(Y)で表される化合物が好ましい。
【0253】
【化115】
【0254】
(上記式(Y)中、R311〜R316は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立にシアノ基、−CONH、カルボキシル基、又は−COOR317(R317は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基を表す)を表す。ただし、R311及びR312、R313及びR314、並びにR315及びR316の1又は2以上の対が一緒になって−CO−O−CO−で示される基を形成してもよい。)
317としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アクセプター材料を含有する層の膜厚は特に限定されないが、5〜20nmであるのが好ましい。
前記アクセプター材料として下記の材料を用いてもよい。
【0255】
【化116】
【0256】
【化117】
【0257】
【化118】
【0258】
【化119】
【0259】
【化120】
【0260】
【化121】
【0261】
【化122】
【0262】
【化123】
【0263】
【化124】
【0264】
【化125】
【0265】
【化126】
【0266】
【化127】
【0267】
【化128】
【0268】
【化129】
【0269】
(n/pドーピング)
上述の正孔輸送層や電子輸送層においては、ドナー性材料のドーピング(n)やアクセプター性材料のドーピング(p)により、キャリア注入能を調整することができる。
nドーピングの代表例としては、電子輸送材料にLiやCs等の金属をドーピングする方法が挙げられ、pドーピングの代表例としては、正孔輸送材料にFTCNQ(2,3,5,6-Tetrafluoro-7,7,8,8-tetracyanoquinodimethane)等のアクセプター材料をドーピングする方法が挙げられる。
【0270】
(スペース層)
上記スペース層とは、例えば、蛍光発光層と燐光発光層とを積層する場合に、燐光発光層で生成する励起子を蛍光発光層に拡散させない、あるいは、キャリアバランスを調整する目的で、蛍光発光層と燐光発光層との間に設けられる層である。また、スペース層は、複数の燐光発光層の間に設けることもできる。
スペース層は発光層間に設けられるため、電子輸送性と正孔輸送性を兼ね備える材料であることが好ましい。また、隣接する燐光発光層内の三重項エネルギーの拡散を防ぐため、三重項エネルギーが2.6eV以上であることが好ましい。スペース層に用いられる材料としては、上述の正孔輸送層に用いられるものと同様のものが挙げられる。スペース層用の材料として、本発明の一態様の有機EL素子用材料を用いることもできる。
【0271】
(障壁層)
本発明の一態様の有機EL素子は、発光層に隣接する部分に、電子障壁層、正孔障壁層、トリプレット障壁層といった障壁層を有することが好ましい。ここで、電子障壁層とは、発光層から正孔輸送層へ電子が漏れることを防ぐ層であり、正孔障壁層とは、発光層から電子輸送層へ正孔が漏れることを防ぐ層である。正孔障壁層用の材料として、本発明の一態様の有機EL素子用材料を用いることもできる。
トリプレット障壁層は、発光層で生成する三重項励起子が、周辺の層へ拡散することを防止し、三重項励起子を発光層内に閉じ込めることによって三重項励起子の発光ドーパント以外の電子輸送層の分子上でのエネルギー失活を抑制する機能を有する。
トリプレット障壁層を設ける場合、燐光素子においては、発光層中の燐光発光性ドーパントの三重項エネルギーをE、トリプレット障壁層として用いる化合物の三重項エネルギーをETBとすると、E<ETBのエネルギー大小関係であれば、エネルギー関係上、燐光発光性ドーパントの三重項励起子が閉じ込められ(他分子へ移動できなくなり)、該ドーパント上で発光する以外のエネルギー失活経路が断たれ、高効率に発光することができると推測される。ただし、E<ETBの関係が成り立つ場合であってもこのエネルギー差ΔE=ETB−Eが小さい場合には、実際の素子駆動環境である室温程度の環境下では、周辺の熱エネルギーにより吸熱的にこのエネルギー差ΔEを乗り越えて三重項励起子が他分子へ移動することが可能であると考えられる。特に燐光発光の場合は蛍光発光に比べて励起子寿命が長いため、相対的に吸熱的励起子移動過程の影響が現れやすくなる。室温の熱エネルギーに対してこのエネルギー差ΔEは大きい程好ましく、0.1eV以上であるとさらに好ましく、0.2eV以上であると特に好ましい。一方、蛍光素子においては、国際公開WO2010/134350A1に記載するTTF素子構成のトリプレット障壁層用の材料として、本発明の一態様の有機EL素子用材料を用いることもできる。
【0272】
また、トリプレット障壁層を構成する材料の電子移動度は、電界強度0.04〜0.5MV/cmの範囲において、10−6cm/Vs以上であることが望ましい。有機材料の電子移動度の測定方法としては、Time of Flight法等幾つかの方法が知られているが、ここではインピーダンス分光法で決定される電子移動度をいう。
電子注入層は、電界強度0.04〜0.5MV/cmの範囲において、10−6cm/Vs以上であることが望ましい。これにより陰極からの電子輸送層への電子注入が促進され、ひいては隣接する障壁層、発光層への電子注入も促進し、より低電圧での駆動を可能にするためである。
【0273】
本発明の一態様の有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されない。従来公知の真空蒸着法、スピンコーティング法等による形成方法を用いることができる。本発明の一態様の有機EL素子における化合物(1)を含有する有機薄膜層は、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)、あるいは当該化合物を溶媒に解かした溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
【0274】
本発明の一態様の有機EL素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。本発明の一態様の化合物(1)を含有する層(特に発光層)を形成する方法としては、例えば、上述した本発明の一態様のインク組成物を成膜する方法が好ましい。
【0275】
成膜方法としては、公知の塗布法を有効に利用することができ、例えばスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、スリットコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、ノズルプリンティング法等が挙げられる。パターン形成をする場合には、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法が好ましい。これらの方法による成膜は、当業者に周知の条件により行うことができる。
成膜後は、真空下に加熱(上限250℃)乾燥して、溶媒を除去すればよく、光や250℃を超える高温加熱による重合反応は不要である。従って、光や250℃を超える高温加熱による素子の性能劣化の抑制が可能である。
【0276】
[電子機器]
本発明の一態様の電子機器について説明する。
本発明の一様態の電子機器は、本発明の一態様の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む。本発明の一態様の有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機ELパネルモジュール等の表示部品、テレビ、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の表示装置、並びに、照明及び車両用灯具の発光装置等の電子機器に使用できる。
【実施例】
【0277】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
【0278】
合成例1(化合物H−1の合成)
【化130】
【0279】
アルゴン雰囲気下、9−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸(12.06g、42mmol),3,6−ジブロモカルバゾール(5.60g、20mmol)、ジクロロ(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウム−塩化メチレン錯体(0.32g、0.4mmol)、1,4−ジオキサン(60mL)、2M炭酸ナトリウム水溶液(60mL)を順次加えて7時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、析出した固体を濾取し、1,4−ジオキサン及び水で洗浄し、減圧乾燥した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した後、1,4−ジオキサンから再結晶し、トリカルバゾリル中間体A1(11.05g,収率85%)を得た。
【0280】
ベンズアルデヒド(4.24g、40mmol)、3’−ブロモアセトフェノン(7.96、40mmol)をエタノール(80mL)に溶解し、水酸化ナトリウム(0.16g、4mmol)を加え、室温で8時間攪拌した。その後、4−ブロモベンズアミジン塩酸塩(4.71g、20mmol)、水酸化ナトリウム(1.60g、40mmol)を加えエタノール(40mL)を追加し、加熱還流下8時間反応させた。生成した白色粉末を濾取し、液の着色が無くなるまでエタノールで洗浄し、さらに水、エタノールで洗浄したのち真空乾燥し、目的とするピリミジン中間体B1(8.58g、収率92%)を得た。
【0281】
アルゴン雰囲気下、トリカルバゾリル中間体A1(4.09g、6.3mmol)、ピリミジン中間体B1(1.40g、3.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.055g、0.06mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩(0.070g、0.24mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.87g、9.0mmol)、無水キシレン(60mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H−1(3.27g,収率68%)を得た。
【0282】
化合物H−1について、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)及びFD−MS(Field Desorption ionization−Mass Spectrometry)の分析結果を以下に示す。
HPLC:純度99.3%
FD−MS:calcd for C118H74N8=1603、
found m/z=1603(M+,100)
【0283】
合成例2(化合物H−2の合成)
【化131】
【0284】
アルゴン雰囲気下、4−フェニル−2,6−ジクロロピリミジン(4.50g、20mmol)、3−クロロフェニルボロン酸(3.13g、20mmol)、ジクロロ(ビストリフェニルホスフィン)パラジウム錯体(0.351g、0.5mmol)、1,4−ジオキサン(80mL)、2M炭酸カリウム水溶液(40mL)を順次加えて8時間加熱還流した。室温まで反応液を冷却した後、トルエンを加えて希釈し、水で洗浄し、減圧乾燥した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ピリミジン中間体B2(4.70g,収率78%)を得た。
【0285】
アルゴン雰囲気下、トリカルバゾリル中間体A1(4.09g、6.3mmol)、ピリミジン中間体B2(0.90g、3.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.055g、0.06mmol)、キサントホス(4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン)(0.069g、0.12mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.87g、9.0mmol)、無水キシレン(60mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H−2(3.34g,収率73%)を得た。
【0286】
化合物H−2について、HPLC及びFD−MSの分析結果を以下に示す。
HPLC:純度99.0%
FD−MS:calcd for C112H70N8=1527、
found m/z=1527(M+,100)
【0287】
合成例3(化合物H−3の合成)
【化132】
【0288】
アルゴン雰囲気下、9−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸(12.06g、42mmol),2,7−ジブロモカルバゾール(5.60g、20mmol)、ジクロロ(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウム−塩化メチレン錯体(0.32g、0.4mmol)、1,4−ジオキサン(60mL)、2M炭酸ナトリウム水溶液(60mL)を順次加えて7時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、析出した固体を濾取し、1,4−ジオキサン及び水で洗浄し、減圧乾燥した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した後、1,4−ジオキサンから再結晶し、トリカルバゾリル中間体A2(11.05g,収率90%)を得た。
【0289】
アルゴン雰囲気下、トリカルバゾリル中間体A2(4.09g、6.3mmol)、ピリミジン中間体B2(0.90g、3.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.055g、0.06mmol)、キサントホス(0.069g、0.12mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.87g、9.0mmol)、無水キシレン(60mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H−3(2.43g,収率53%)を得た。
【0290】
化合物H−3について、HPLC及びFD−MSの分析結果を以下に示す。
HPLC:純度99.2%
FD−MS:calcd for C112H70N8=1527、
found m/z=1527(M+,100)
【0291】
合成例4(化合物H−4の合成)
【化133】
【0292】
7−ブロモナフトアルデヒド(9.40g、40mmol)、3’−ブロモアセトフェノン(7.96、40mmol)をエタノール(80mL)に溶解し、水酸化ナトリウム(0.16g、4mmol)を加え、室温で8時間攪拌した。その後、ベンズアミジン塩酸塩(3.13g、20mmol)、水酸化ナトリウム(1.60g、40mmol)を加えエタノール(40mL)を追加し、加熱還流下8時間反応させた。生成した白色粉末を濾取し、液の着色が無くなるまでエタノールで洗浄し、さらに水、エタノールで洗浄したのち真空乾燥し、目的とするピリミジン中間体B3(9.29g、収率90%)を得た。
【0293】
アルゴン雰囲気下、トリカルバゾリル中間体A1(4.09g、6.3mmol)、ピリミジン中間体B3(1.55g、3.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.055g、0.06mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩(0.070g、0.24mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.87g、9.0mmol)、無水キシレン(60mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H−4(3.47g,収率70%)を得た。
【0294】
化合物H−4について、HPLC及びFD−MSの分析結果を以下に示す。
HPLC:純度99.1%
FD−MS:calcd for C122H76N8=1654、
found m/z=1654(M+,100)
【0295】
合成例5(化合物H−5の合成)
【化134】
【0296】
アルゴン雰囲気下、2−アミノ−5−クロロベンゾニトリル(3.81g、25mmol)を無水THF100mLに溶解し、0℃に冷却した後、2MフェニルグリニヤールTHF溶液(25mL,50mmol)を30分かけて滴下した。その後3−クロロベンゾイルクロリド(4.37g、25mmol)を30分かけて滴下した。その後室温まで昇温し、飽和食塩水を加え、エーテルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、キナゾリン中間体B4(8.17g,収率93%)を得た。
【0297】
アルゴン雰囲気下、トリカルバゾリル中間体A1(4.09g、6.3mmol)、キナゾリン中間体B4(1.05g、3.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.055g、0.06mmol)、キサントホス(0.069g、0.12mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.87g、9.0mmol)、無水キシレン(60mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H−5(2.32g、収率49%)を得た。
【0298】
化合物H−5について、HPLC及びFD−MSの分析結果を以下に示す。
HPLC:純度98.9%
FD−MS:calcd for C116H72N8=1577、
found m/z=1577(M+,100)
【0299】
合成例6(化合物H−6の合成)
【化135】
【0300】
塩化鉄(III)(6.45g、40mmol)を水200mLに溶解した中に2−アミノベンズアミド(2.72g、20mmol)、3−クロロベンズアルデヒド(2.81g、20mmol)を順次加え、3時間加熱還流した。室温まで反応液を冷却した後、析出した固体を濾取し、水およびアセトンで洗浄し、減圧乾燥した。ここに塩化ホスホリル50mLを加え、3時間加熱還流した。室温まで反応液を冷却した後、反応液を氷水中にそそぎ、塩化メチレンで抽出した。有機層を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、キナゾリン中間体B5(4.40g,収率80%)を得た。
【0301】
アルゴン雰囲気下、キナゾリン中間体B5(2.75g、10mmol)、3−クロロフェニルボロン酸(1.56g、10mmol)、ジクロロ(ビストリフェニルホスフィン)パラジウム錯体(0.17g、0.25mmol)、トルエン(40mL)、2M炭酸カリウム水溶液(20mL)を順次加えて8時間加熱還流した。室温まで反応液を冷却した後、トルエンを加えて希釈し、水で洗浄し、減圧乾燥した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、キナゾリン中間体B6(2.49g,収率71%)を得た。
【0302】
アルゴン雰囲気下、トリカルバゾリル中間体A1(4.09g、6.3mmol)、キナゾリン中間体B6(1.05g、3.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.055g、0.06mmol)、キサントホス(0.069g、0.12mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.87g、9.0mmol)、無水キシレン(60mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H−6(3.41g、収率72%)を得た。
【0303】
化合物H−6について、HPLC及びFD−MSの分析結果を以下に示す。
HPLC:純度98.7%
FD−MS:calcd for C116H72N8=1577、
found m/z=1577(M+,100)
【0304】
上記反応に倣い、目的物に合わせた既知の代替反応や原料を用いることで、請求項の範囲内である化合物を合成することができる。
【0305】
実施例1
(基板の洗浄)
25mm×25mm×厚さ1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行った後、UVオゾン洗浄を5分間行った。
(下地層の形成)
正孔輸送材料としてHERAEUS社製CLEVIOUS AI4083(商品名)を30nmの厚さで前記のITO基板上にスピンコート法により成膜した。成膜後、アセトンにより不要部分を除去し、次いで大気中200℃のホットプレートで10分間焼成し、下地基板を作製した。
【0306】
(発光層の形成)
ホスト材料として合成例1で得た化合物H−1、ドーパント材料として下記化合物D−1を用い、化合物H−1:化合物D−1が質量比で95:5となるような混合して、1.6質量%のトルエン溶液を作製した。このトルエン溶液を用い、前記下地基板上にスピンコート法により、50nmの膜厚になるように塗布積層した。塗布成膜後、不要部分をトルエンにて除去し、150℃のホットプレート上で加熱乾燥し、発光層を成膜した塗布積層基板を作製した。なお、発光層の成膜にかかる全ての操作は窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。
【化136】
【0307】
(蒸着、封止)
塗布積層基板を蒸着チャンバー中に搬送し、電子輸送層として下記化合物ET−1を50nm蒸着した。さらに、フッ化リチウムを1nm、アルミニウムを80nm蒸着積層した。全ての蒸着工程を完了させた後、窒素雰囲気のグローブボックス中でザグリガラスによる封止を行い、有機EL素子を製造した。
【化137】
【0308】
得られた有機EL素子を、直流電流駆動により発光させ、電流密度10mA/cmにおける外部量子収率(EQE)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0309】
実施例2〜5
ホスト材料として合成例2〜5で得た化合物H−2〜H−5を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子を、実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0310】
比較例1
ホスト材料として下記比較化合物C−1を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【化138】
【0311】
【表1】
【0312】
本発明の一実施形態である化合物(1)を用いることで、発光層に隣接する正孔注入あるいは輸送材料からの正孔の注入が促進され、また、発光層内での正孔の受け渡しが効率化される。結果として、この化合物を用いた有機EL素子において、効率が更に向上することが分かった。これらは、本発明の一実施形態である化合物(1)を有機EL素子に適用することで得られた知見である。
【符号の説明】
【0313】
1 有機EL素子
2 基板
3 陽極
4 陰極
5 発光層
6 陽極側有機薄膜層
7 陰極側有機薄膜層
10 発光ユニット
図1