(54)【発明の名称】アミノ変性シロキサン化合物、変性イミド樹脂、熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、多層プリント配線板、及び半導体パッケージ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(i)、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物(ii)を反応させて得られる、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有する芳香族アゾメチン化合物(A)と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(B)を反応させ得られる、分子構造中に芳香族アゾメチン及びアミノ基を有するシロキサン化合物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
(アミノ変性シロキサン化合物)
本発明の芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物は、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(i)、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物(ii)を反応させて得られる、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有する芳香族アゾメチン化合物(A)と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(B)を反応させ得られるものである。
ここで、芳香族アゾメチンとは、シッフ塩基(−N=CH−)に少なくとも1つの芳香族が結合したものをいう。
【0019】
本発明の1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(i)(以下、成分(i)と呼ぶことがある)としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3−メチル−1,4−ジアミノベンゼン、2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルケトン、ベンジジン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0020】
これらの中で、例えば、反応時の反応性が高く、より高耐熱性化できる点から、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンが好ましい。さらに、安価であることや溶剤への溶解性の点から、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンがより好ましい。さらに、低熱膨張性や誘電特性の点から、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンが特に好ましい。また、高弾性率化できるp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3−メチル−1,4−ジアミノベンゼン、2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼンも好ましい。
【0021】
本発明の1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物(ii)(以下、成分(ii)と呼ぶことがある)としては、例えば、テレフタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、o−フタルアルデヒド、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボキシアルデヒド等が挙げられる。これらの中で、例えば、より低熱膨張化が可能であり、反応時の反応性が高く、溶剤溶解性にも優れ、商業的にも入手しやすいテレフタルアルデヒドが特に好ましい。
【0022】
本発明の分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(B)(以下、成分(B)と呼ぶことがある)は、下記の一般式(2)を含むものである。
【0023】
【化3】
[式中、R
3及びR
4はそれぞれ独立にアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、nは1〜100の整数である。]
一般式(2)の式中、nは1〜100の整数であり、より好ましくは、2〜50の整数である。
【0024】
また、成分(B)としては市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、「KF−8010」(アミノ基当量430)、「X−22−161A」(アミノ基当量800)、「X−22−161B」(アミノ基当量1500)、「KF−8012」(アミノ基当量2200)、「KF−8008」(アミノ基当量5700)、「X−22−9409」(アミノ基当量700)、「X−22−1660B−3」(アミノ基当量2200)(以上、信越化学工業株式会社製)、「BY−16−853U」(アミノ基当量460)、「BY−16−853」(アミノ基当量650)、「BY−16−853B」(アミノ基当量2200)(以上、東レダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中で、合成時の反応性が高く、低熱膨張性の点から、例えば、X−22−161A、X−22−161B、KF−8012、X−22−1660B−3、BY−16−853Bが好ましく、相溶性に優れ、高弾性率化できるX−22−161A、X−22−161Bがさらに好ましい。
【0025】
本発明において、分子構造中に芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物を得るための反応としては、始めに、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(i)と、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物(ii)を有機溶媒中で脱水縮合反応させることにより、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有する芳香族アゾメチン化合物(A)を得る(以下、成分(A)と呼ぶことがある)。次いで、前記成分(A)と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(B)を有機溶媒中で脱水縮合反応させることにより、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物を得ることができる。
また、本反応は、本発明の芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物の分子中における、芳香族アゾメチンの分子量制御が容易である特徴を有し、これを含有する樹脂組成物の高弾性率化に特に有効である。
【0026】
本発明において、成分(i)と成分(ii)を脱水縮合反応させる際に使用される有機溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤などが挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中で、例えば、溶解性の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン等が好ましい。さらに揮発性が高くプリプレグの製造時に残溶剤として残りにくい点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエンがより好ましい。
また、この反応は脱水縮合反応であるため副生成物として水が生成される。この副生成物である水を除去する目的で、例えば、芳香族系溶剤との共沸により副生成物である水を除去しながら反応することが望ましい。
【0027】
成分(i)と成分(ii)の脱水縮合反応には、必要により任意に反応触媒を使用することができる。反応触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。脱水縮合反応を効率よく進行させるため、例えば、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒が好ましい。
【0028】
ここで、成分(i)と成分(ii)の使用量は、例えば、成分(i)の一級アミノ基数〔成分(i)の使用量/成分(i)の一級アミノ基当量〕が、成分(ii)のアルデヒド基数〔成分(ii)の使用量/成分(ii)のアルデヒド基当量〕の0.1倍〜5.0倍の範囲になるように使用することが望ましい。0.1倍以上とすることにより、本反応により得られる芳香族アゾメチン化合物の分子量の低下が抑制される傾向にある。また、5.0倍以下とすることにより、溶媒への溶解性の低下が抑制される傾向にある。
【0029】
また、有機溶媒の使用量は、例えば、成分(i)、及び成分(ii)の樹脂成分の総和100質量部に対して、25〜2000質量部とすることが好ましく、40〜1000質量部とすることがより好ましく、40〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶媒の使用量を25質量部以上とすることにより、溶解性の不足が抑制される傾向にある。また2000質量部以下とすることにより、反応に長時間を要すること少ない傾向にある。
【0030】
上記の原料、有機溶媒、必要により反応触媒を反応釜に仕込み、必要により加熱・保温しながら0.1時間から10時間攪拌し脱水縮合反応させることにより、成分(A)が得られる。
このときの反応温度は、例えば、70〜150℃が好ましく、100〜130がより好ましい。また、副生成物である水を除去しながら反応することが好ましい。反応温度を70℃以上とすることにより、反応速度が遅くなることが少ない傾向にある。また、反応温度を150℃以下とすることにより、反応溶媒に高沸点の溶媒を必要とせず、プリプレグを製造する際、残溶剤が残りにくく、良好な耐熱性低下が得られる傾向にある。
【0031】
次いで、前記反応により得られた成分(A)と、分子末端に少なくとも2個のアミノ基を有するシロキサン化合物(B)を有機溶媒中で脱水縮合反応させることにより、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物を得ることができる。
【0032】
ここで、成分(A)と成分(B)の使用量は、例えば、成分(B)の一級アミノ基数〔成分(B)の使用量/成分(B)の一級アミノ基当量〕が、成分(A)のアルデヒド基数〔成分(A)の使用量/成分(A)のアルデヒド基当量〕の1.0〜10.0倍の範囲になるように使用されることが望ましい。1.0倍以上とすることにより、溶媒への溶解性の低下が抑制される傾向にある。また、10.0倍以下とすることにより、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物を含有する熱硬化性樹脂において、良好な弾性率が得られる。
【0033】
また、有機溶媒の使用量は、例えば、成分(A)、及び成分(B)の樹脂成分の総和100質量部に対して、25〜2000質量部とすることが好ましく、40〜1000質量部とすることがより好ましく、40〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶媒の使用量を25質量部以上とすることにより、溶解性の不足が少ない傾向にある。また2000質量部以下とすることにより、反応に長時間を要することがない。
【0034】
上記の原料、有機溶媒、必要により反応触媒を反応釜に仕込み、必要により加熱・保温しながら0.1時間から10時間攪拌し脱水縮合反応させることにより、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物が得られる。
反応温度は、例えば、70〜150℃が好ましく、100〜130がより好ましい。また、副生成物である水を除去しながら反応することが好ましい。反応温度を70℃以上とすることにより、反応速度が遅くなりすぎない傾向にある。また、反応温度を150℃以下とすることにより、反応溶媒に高沸点の溶媒を必要とせず、プリプレグを製造する際、残溶剤が残りにくく、良好な耐熱性が得られる傾向にある。
【0035】
上記の反応により得られた芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物は、IR測定を行うことにより確認することができる。IR測定により、アゾメチン基(−N=CH−)に起因する1620cm
-1のピークが出現することを確認し、また、一級アミノ基に起因する3440cm
-1、及び3370cm
-1付近のピークが存在することを確認することにより、良好に反応が進行し、所望の化合物が得られていることを確認することができる。また、重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、1000〜300000であること好ましく、6000〜150000であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が1000以上であると、良好な低硬化収縮性、及び低熱膨張性が得られる傾向にある。また、300000以下であると、良好な相溶性、及び弾性率が得られる傾向にある。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作製した検量線により換算したものである。
【0036】
例えば、以下条件で行うことが出来る。
測定装置としては、オートサンプラー(東ソー社製AS−8020)、カラムオーブン(日本分光工業社製860−C0)、RI検出器(日本分光工業社製830−RI)、UV/VIS検出器(日本分光工業社製870−UV)、HPLCポンプ(日本分光工業社製880−PU)を使用する。
また、使用カラムとしては、東ソー社製 TSKgel SuperHZ2000,2300を使用し、測定条件としては、測定温度 40℃、流量 0.5ml/min、溶媒をテトラヒドロフランとすることで、測定可能である。
【0037】
(変性イミド樹脂)
本発明の変性イミド樹脂は、既述の本発明のアミノ変性シロキサン化合物と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(C)とを反応させて得られるものである。
【0038】
さらに、変性イミド樹脂は、酸性置換基を有し、該酸性置換基が下記一般式(1)に示すアミン化合物(D)の酸性置換基に由来するものであることが好ましい。当該酸性置換基はアミン化合物(D)を反応させることで導入できる。かかる酸性置換基を有することで、良好な低熱膨張性を得ることができる。
【化4】
(式(1)中、R
1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を、R
2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
なお、アミン化合物(D)のさらなる詳細については後述する。また、「アミン化合物(D)の酸性置換基に由来するもの」とは、アミン化合物(D)の酸性置換基そのもの、及び、当該酸性置換基を含むものをいう。
【0039】
変性イミド樹脂は、後述の熱硬化性樹脂組成物を製造する際の「プレ反応」において製造することができる。
【0040】
(熱硬化性樹脂組成物)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(C)とを含有してなるものである。
【0041】
1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(C)(以下、成分(C)と呼ぶことがある)としては、例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。成分(C)は、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0042】
これらの中で、例えば、反応性が高く、より高耐熱性化できる点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンが好ましく、溶剤への溶解性の点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンがより好ましく、安価である点からビス(4−マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
【0043】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物の使用量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部当たり、1〜30質量部とすることが好ましく、5〜20質量部とすることが、銅箔接着性、耐薬品性の点からより好ましい。
成分(C)の使用量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部当たり、30〜99質量部とすることが好ましく、40〜95質量部とすることが、低熱膨張性、高弾性率の点からより好ましい
【0044】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(C)を含有してなるものである。また、上記化合物をプレ反応させて芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂として使用することもできる。このようなプレ反応を行うことにより、分子量を制御することができ、更なる低硬化収縮性、低熱膨張性向上を行うことができる。
【0045】
このプレ反応は、有機溶媒中で加熱保温しながら芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(C)とを反応させて変性イミド樹脂を合成することが好ましい。
有機溶媒中で芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(C)とを反応させる際の反応温度は、例えば、70〜150℃であることが好ましく、100〜130℃であることがより好ましい。反応時間は、例えば、0.1〜10時間であることが好ましく、1〜6時間であることがより好ましい。
【0046】
このプレ反応において、成分(C)と芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物の使用量は、例えば、成分(C)のマレイミド基数〔成分(C)の使用量/成分(C)のマレイミド基当量〕が、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物の一級アミノ基数〔芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物の使用量/芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物の一級アミノ基当量〕の2.0〜10.0倍になる範囲であることが好ましい。2.0倍以上とすることによりゲル化及び耐熱性の低下が抑制される傾向にある。また、10.0倍以下とすることにより有機溶剤への溶解性、及び耐熱性の低下が抑制される傾向にある。
【0047】
プレ反応における成分(C)の使用量は、上記のような関係を維持しつつ、例えば、アミノ変性シロキサン化合物の樹脂成分100質量部に対して50〜3000質量部が好ましく、100〜1500質量部がより好ましい。50質量部以上とすることにより耐熱性の低下が抑制される傾向にある。また、3000質量部以下とすることにより低熱膨張性を良好に保つことができる。
【0048】
このプレ反応で使用される有機溶媒は、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤などが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0049】
これらの有機溶媒の中で、例えば、溶解性の点からシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトンが好ましく、低毒性であることや揮発性が高く残溶剤として残りにくい点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0050】
有機溶媒の使用量は、例えば、芳香族アゾメチンを有する変性シロキサン化合物、及び1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(C)の樹脂成分の総和100質量部に対して、25〜2000質量部とすることが好ましく、40〜1000質量部とすることがより好ましく、40〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶媒の使用量を25質量部以上とすることにより、溶解性の不足が抑制される傾向にある。また、2000質量部以下とすることにより、反応に長時間を要することがない。
【0051】
また、このプレ反応には任意に反応触媒を使用することができる。反応触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド等のアルカリ金属アミドなどが挙げられる。これらの反応触媒は1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0052】
また、上記プレ反応より得られた芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂の使用量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部当たり、50〜100質量部とすることが好ましく、60〜100質量部とすることがより好ましい。芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂の配合量を50質量部以上とすることにより、良好な低熱膨張性、高弾性率が得られる。
【0053】
本発明の芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(C)を含有してなる熱硬化性樹脂組成物及び前記化合物をプレ反応させて得られる芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂は、単独で良好な熱硬化反応性を有するが、必要により、硬化剤及びラジカル開始剤を併用することができる。硬化剤及びラジカル開始剤を用いることで、耐熱性や接着性、機械強度を向上させることができる。
併用する硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミドや、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミン、キシレンジアミン等の芳香族アミン類、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン類、メラミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン化合物類などが挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0054】
また、上記ラジカル開始剤としては、例えば、アシル過酸化物、ハイドロパーオキサイド、ケトン過酸化物、t−ブチル基を有する有機過酸化物、クミル基を有する過酸化物等の有機過酸化物などが使用できる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。これらの中で、例えば、良好な反応性や耐熱性の点から、芳香族アミン類が好ましい。
【0055】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1)に示す酸性置換基を有するアミン化合物(D)を含有することができる
【化5】
(式(1)中、R
1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を、R
2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
【0056】
酸性置換基を有するアミン化合物(D)(以下、成分(D)と呼ぶことがある)としては、例えば、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられる。これらの中で、例えば、溶解性や合成の収率の点から、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、及び3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましい。また、耐熱性の点から、m−アミノフェノール及びp−アミノフェノールがより好ましい。
【0057】
成分(D)の使用量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部当たり、0.5〜30質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることが、低熱膨張性の点からより好ましい。
【0058】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(C)、酸性置換基を有するアミン化合物(D)を含有してもよい。また、前記化合物をプレ反応させて、酸性置換基と芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂として使用することもできる。このようなプレ反応を行うことにより、分子量を制御することができ、更なる低硬化収縮性、低熱膨張性向上を行うことができる。
【0059】
このプレ反応は、有機溶媒中で加熱保温しながら、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物、成分(C)、及び成分(D)を反応させて酸性置換基を有する変性イミド樹脂を合成することが好ましい。
有機溶媒中で芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物、成分(C)、及び成分(D)を反応させる際の反応温度は、例えば、70〜150℃であることが好ましく、100〜130℃であることがより好ましい。反応時間は、例えば、0.1〜10時間であることが好ましく、1〜6時間であることがより好ましい。
【0060】
このプレ反応において、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物、成分(C)、及び成分(D)の使用量は、例えば、成分(C)のマレイミド基数〔成分(C)の使用量/成分(C)のマレイミド基当量〕が、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物と成分(D)の一級アミノ基数〔芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物の使用量/芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物の一級アミノ基当量+成分(D)の使用量/成分(D)の一級アミノ基当量〕の2.0〜10.0倍になる範囲であることが望ましい。2.0倍以上とすることによりゲル化及び耐熱性の低下が抑制される傾向にある。また、10.0倍以下とすることにより有機溶剤への溶解性、及び耐熱性の低下が抑制される傾向にある。
【0061】
プレ反応における成分(C)の使用量は、上記のような関係を維持しつつ、例えば、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物の樹脂成分100質量部に対して50〜3000質量部が好ましく、100〜1500質量部がより好ましい。50質量部以上とすることにより耐熱性の低下が抑制される傾向にある。また、3000質量部以下とすることにより低熱膨張性を良好に保つことができる。
また、プレ反応における成分(D)の使用量は、例えば、アミノ変性シロキサン化合物の樹脂成分100質量部に対して1〜1000質量部が好ましく、5〜500質量部がより好ましい。1質量部以上とすることにより耐熱性の低下が抑制される傾向にある。また、1000質量部以下とすることにより低熱膨張性を良好に保つことができる。
【0062】
このプレ反応で使用される有機溶媒は、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤などが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0063】
これらの有機溶媒の中で、例えば、溶解性の点からシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトンが好ましく、低毒性であることや揮発性が高く残溶剤として残りにくい点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0064】
有機溶媒の使用量は、例えば、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物、成分(C)、及び成分(D)の樹脂成分の総和100質量部に対して、25〜2000質量部とすることが好ましく、40〜1000質量部とすることがより好ましく、40〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶媒の使用量を25質量部以上とすることにより、溶解性の不足が抑制される傾向にある。また、2000質量部以下とすることにより、反応に長時間を要することがない。
【0065】
また、このプレ反応には任意に反応触媒を使用することができる。反応触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド等のアルカリ金属アミドなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0066】
また、上記プレ反応より得られた酸性置換基と芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂の使用量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部当たり、50〜100質量部とすることが好ましく、60〜90質量部とすることがより好ましい。酸性置換基と芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂の配合量を50質量部以上とすることにより、良好な低熱膨張性、及び高弾性率が得られる傾向にある。
【0067】
本発明の芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(C)、及び酸性置換基を有するアミン化合物(D)を含有してなる熱硬化性樹脂組成物並びに前記化合物をプレ反応させて得られる酸性置換基と芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂は、単独で良好な熱硬化反応性を有するが、必要により、硬化剤及びラジカル開始剤を用いてもよい。硬化剤及びラジカル開始剤を併用することで、耐熱性や接着性、機械強度を向上させることができる。
併用する硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミドや、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミン、キシレンジアミン等の芳香族アミン類、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン類、メラミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン化合物類などが挙げられる。
また、上記ラジカル開始剤としては、例えば、アシル過酸化物、ハイドロパーオキサイド、ケトン過酸化物、t−ブチル基を有する有機過酸化物、クミル基を有する過酸化物等の有機過酸化物などが使用できる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。これらの中で、例えば、良好な反応性や耐熱性の点から、芳香族アミン類が好ましい。
【0068】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱可塑性エラストマー(E)を含有すことができる。
熱可塑性エラストマー(E)(以下、成分(E)と呼ぶことがある)としては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマーやその誘導体等が挙げられる。これらは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分を含んでおり、一般に前者が耐熱性及び強度に、後者が柔軟性及び強靭性に寄与している。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0069】
また、成分(E)としては、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものを用いることができる。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等が挙げられる。これら反応性官能基を分子末端又は分子鎖中に有することにより、樹脂への相溶性が向上し、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化時に発生する内部応力をより効果的に低減することができる。そのため、結果として、基板の反りを顕著に低減することが可能となる。
【0070】
これらの成分(E)の中で、例えば、耐熱性、絶縁信頼性の点で、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びシリコーン系エラストマーが好ましく、誘電特性の点から、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーが特に好ましい。
【0071】
また、これら成分(E)の分子末端又は分子鎖中に有する反応性官能基は、例えば、金属箔との密着性の点で、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及びアミド基が好ましく、耐熱性、絶縁信頼性の点から、エポキシ基、水酸基、及びアミノ基が特に好ましい。
【0072】
成分(E)の使用量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、2〜30質量部であることがより好ましい。樹脂の相溶性が良く、硬化物の低硬化収縮性、低熱膨張性、優れた誘電特性を効果的に発現できる点からより好ましい。
【0073】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂から選ばれた少なくとも一種の熱硬化性樹脂(F)(以下、成分(F)と呼ぶことがある)を含有することができる。
成分(F)のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物並びにこれらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。これらの中で、例えば、耐熱性、難燃性の点からビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0074】
また、成分(F)のシアネート樹脂としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどを挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。これらの中で、例えば、耐熱性、難燃性の点からノボラック型シアネート樹脂が好ましい。
【0075】
これらの成分(F)には、必要に応じて硬化剤を使用することができる。硬化剤の例としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、アミノトリアジンノボラック樹脂等の多官能フェノール化合物、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等のアミン化合物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物などが挙げられる。これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0076】
成分(F)の使用量としては、例えば、樹脂成分の総和100質量部当たり、1〜50質量部とすることが好ましく、耐熱性、耐薬品性の点から、3〜35質量部であることがより好ましい。
【0077】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材(G)を含有することができる。
無機充填材(G)(以下、成分(G)と呼ぶことがある)としては,例えば、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、EガラスやTガラス、Dガラス等のガラス粉や中空ガラスビーズなどが挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0078】
成分(G)としては、例えば、誘電特性、耐熱性、低熱膨張性の点からシリカが特に好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカなどが挙げられる。乾式法シリカとしてはさらに、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカ等が挙げられる。これらの中で、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性から溶融球状シリカが好ましい。
【0079】
成分(G)として溶融球状シリカを用いる場合、例えば、その平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましい。該溶融球状シリカの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保つことができる。また、10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らし粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる。ここで,平均粒子径とは,粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0080】
成分(G)の含有量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部に対して20〜500質量部であることが好ましく、50〜350質量部であることがより好ましい。成分(G)の含有量を樹脂成分の総和100質量部に対して20〜500質量部にすることで、樹脂組成物の成形性と低熱膨張性を良好に保つことができる。
また、樹脂組成物に成分(G)を配合するに際しては、例えば、成分(G)をシラン系、チタネート系等のカップリング剤、シリコーンオリゴマー等の表面処理剤で前処理、あるいはインテグラルブレンド処理してもよい。
【0081】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤(H)を含有することができる。
硬化促進剤(H)(以下、成分(H)と呼ぶことがある)としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、イミダゾール類及びその誘導体、ホスフィン類及びホスホニウム塩等の有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩などが挙げられる。これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、例えば、促進効果と保存安定性の点から、ナフテン酸亜鉛、イミダゾール誘導体、ホスホニウム塩が好ましい。
【0082】
成分(H)の含有量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部に対して0.01〜3.0質量部であることが好ましく、0.05〜2.0質量部であることがより好ましい。成分(H)の含有量を樹脂成分の総和100質量部に対して0.01〜3.0質量部にすることで、促進効果と保存安定性を良好に保つことができる。
【0083】
本発明では,その目的に反しない範囲内で、任意に公知の熱可塑性樹脂、有機充填材、難燃剤,紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び接着性向上剤等を使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0084】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0085】
有機充填材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等よりなる樹脂フィラー、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、共役ジエン系樹脂等よりなるゴム状態のコア層と、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、シアン化ビニル系樹脂等よりなるガラス状態のシェル層を持つコアシェル構造の樹脂フィラーなどが挙げられる。
【0086】
難燃剤としては、例えば、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、赤リン等のリン系難燃剤、スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤、シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤などが挙げられる。
【0087】
その他、紫外線吸収剤の例としてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、酸化防止剤の例としてはヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系酸化防止剤、光重合開始剤の例としてはベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系の光重合開始剤、蛍光増白剤の例としてはスチルベン誘導体の蛍光増白剤、接着性向上剤の例としては尿素シラン等の尿素化合物やシラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤などが挙げられる。
【0088】
本発明の芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグに用いられるため、最終的には、各成分が有機溶媒中に溶解もしくは分散されたワニスの状態とすることが好ましい。
【0089】
この際用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、例えば、溶解性の点からメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、低毒性である点からメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0090】
最終的に得られるワニス中の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、ワニス全体の40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。ワニス中の熱硬化性樹脂組成物の含有量を40〜90質量%にすることで、塗工性を良好に保ち、適切な樹脂組成物付着量のプリプレグを得ることができる。
【0091】
ここで、本明細書において「樹脂成分」とは、アミノ変性シロキサン化合物、変性イミド樹脂(既述の一般式(1)に示すアミン化合物(D)の酸性置換基に由来する酸性置換基を有する変性イミド樹脂を含む)、マレイミド化合物(C)、酸性置換基を有するアミン化合物(D)、熱可塑性エラストマー(E)、熱硬化性樹脂(F)、及びこれらの反応生成物をいう。また、「熱硬化性樹脂組成物」とは、上記樹脂成分に、無機充填材及び硬化促進剤等を含むものをいう。
【0092】
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、前記した本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸してなるものである。。以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させる方法として特に限定されないが、例えば、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上することができる。
本発明の基材としては、例えば、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物などが挙げられる。他の用途では、例えば、繊維強化基材であれば、炭素繊維等を用いることも可能である。
【0093】
これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマットの形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。基材の厚さは、例えば、約0.03〜0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。
【0094】
本発明のプリプレグは、例えば、該基材に対する熱硬化性樹脂組成物の付着量が,乾燥後のプリプレグの熱硬化性樹脂組成物の含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて得ることができる。
【0095】
(樹脂付フィルム)
本発明の樹脂付フィルムは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を支持体上に層形成してなるものである。本発明で得られる熱硬化性樹脂組成物を支持体上に層形成する方法として特に限定されないが、例えば、本発明で得られる熱硬化性樹脂組成物をワニスの状態にし、各種コーターを用いて支持体に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により乾燥させて樹脂組成物層を形成させることができる。このように加熱等により半硬化(Bステージ化)して本発明の樹脂付フィルムを製造することができる。この半硬化状態は、樹脂付きフィルムと回路基板を積層し、硬化する際に、樹脂付きフィルムの樹脂組成物層と回路基板との接着力が確保される状態で、また、回路基板への埋めこみ性(流動性)が確保される状態であることが好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布する際に用いるコーターは、特に限定されるものではないが、例えば、ダイコーター、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター等が利用できる。これらは、樹脂組成物層の厚みによって適宜選択できる。また、乾燥方法としては、加熱、あるいは熱風吹きつけ等を用いることができる。
【0096】
熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗布した後の乾燥条件は、例えば、該樹脂組成物層への有機溶媒の含有量が通常の10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス中の有機溶媒量は、有機溶媒の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶媒を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、樹脂組成物層が形成される。乾燥条件は、予め簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することが好ましい。
【0097】
支持体上に形成される樹脂組成物層の厚さは、通常、回路基板が有する導体層の厚さ以上とする。導体層の厚さは、例えば、5〜70μmであることが好ましく、多層プリント配線板の軽薄短小化のために、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。
【0098】
樹脂付フィルムにおける支持体は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどからなるフィルム、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などが挙げられる。なお、支持体及び後述する保護フィルムには、マット処理、コロナ処理の他、離型処理等を施してもよい。
【0099】
支持体の厚さは、例えば、10〜150μmが好ましく、より好ましくは25〜50μmである。樹脂組成物層の支持体が設けられていない面には、保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムは、支持体の材質と同じでも、異なっていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、異物混入を防止することができ、樹脂付フィルムをロール状に巻き取って保管することもできる。
【0100】
(積層板)
本発明の積層板は、前述の樹脂付フィルムを積層成形して得られるものである。例えば、樹脂付フィルムを、真空ラミネーターを用いて、回路基板、プリプレグ及び基材等の片面又は両面にラミネートし、必要に応じ、加熱により硬化することで製造することができる。回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面に回路パターンが形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に複数積層してなるプリント配線板において、該プリント配線板の最外層の片面又は両面に回路パターンが形成されたものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0101】
上記のようにラミネートする際に、樹脂付フィルムが保護フィルムを有している場合には、該保護フィルムを除去した後、必要に応じて樹脂付フィルム及び回路基板をプレヒートし、樹脂付フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本発明の樹脂付フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネート条件は、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは0.1〜1.1MPaとし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのことが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0102】
樹脂付フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は、支持体を剥離した後に、前記樹脂組成物層を熱硬化する(以下、熱硬化後の樹脂組成物層を絶縁層と呼ぶことがある)。熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分〜180分、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。また、樹脂組成物層を熱硬化した後に、支持体を剥離してもよい。
【0103】
次いで必要により、回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけが最も一般的な方法である。
【0104】
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、例えば、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキの場合は、まず、硬化した絶縁樹脂組成物層の表面を、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理し、凸凹のアンカーを形成する。酸化剤としては、特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)が好ましく用いられる。次いで、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法等を用いることができる。
【0105】
本発明の積層板は、前述の本発明のプリプレグを積層成形して得られるものである。本発明のプリプレグを、例えば、1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅、アルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。
積層板を積層成形する際の成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、積層板を製造することもできる。
【0106】
(多層プリント配線板)
本発明の多層プリント配線板は、前記積層板を用いて製造される。例えば、本発明の積層板の導体層を通常のエッチング法によって配線加工し回路基板を得ることが出来る。そして、前述のプリプレグを介して配線加工した積層板を複数積層し、加熱プレス加工することによって一括して多層化する。その後、ドリル加工、レーザー加工等によるスルーホール又はブラインドビアホールの形成と、メッキ又は導電性ペーストによる層間配線の形成を経て多層プリント配線板を製造することができる。
【0107】
(半導体パッケージ)
本発明の半導体パッケージは、前記多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなるものである。本発明の半導体パッケージは、前記プリント配線板の所定の位置に半導体チップやメモリ等の半導体素子を搭載し製造される。
【実施例】
【0108】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、各実施例及び比較例で得られた樹脂板を用いて硬化収縮率について以下の方法で測定し、評価した。さらに、銅張積層板を用いて、ガラス転移温度、熱膨張率、銅箔接着性、銅付きはんだ耐熱性、曲げ弾性率、及び誘電特性について以下の方法で測定し、評価した。
【0109】
(1)樹脂板の硬化収縮率の測定
5mm角の樹脂板(厚さ1mm)を作製し、TMA試験装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。樹脂板を前記装置にZ方向に装着後、荷重5g、昇温速度45℃/分とし、20℃(5分保持)〜260℃(2分保持)〜20℃(5分保持)の温度プロファイルにて測定した。樹脂板の初期寸法と昇温開始前の20℃及び昇温後の20℃での寸法変化量から樹脂板の硬化収縮率を評価した。
具体的には、以下の式を用いて、樹脂板の硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率(%)=[(昇温開始前20℃の寸法(mm)−昇温後20℃の寸法(mm))/昇温開始前20℃の寸法(mm)]×100
【0110】
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて圧縮法で熱機械分析をおこなった。評価基板を前記装置にZ方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における熱膨張曲線の異なる接線の交点で示されるTgを求め、耐熱性を評価した。
【0111】
(3)熱膨張率の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて圧縮法で熱機械分析をおこなった。評価基板を前記装置にX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における30℃から100℃までの平均熱膨張率を算出し、これを熱膨張率の値とした。
【0112】
(4)銅箔接着性(銅箔ピール強度)の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより3mm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔の接着性(ピール強度)を測定した。
【0113】
(5)銅付きはんだ耐熱性の評価
銅張積層板から25mm角の評価基板を作製し、温度288℃のはんだ浴に、120分間評価基板をフロートし、外観を観察することにより銅付きはんだ耐熱性を評価した。
【0114】
(6)曲げ弾性率
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた25mm×50mmの評価基板を作製し、オリエンテック社製5トンテンシロンを用い、クロスヘッド速度1mm/min、スパン間距離20mmで測定した。
【0115】
(7)誘電特性(比誘電率及び誘電正接)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた100mm×2mmの評価基板を作製し、空洞共振機装置(株式会社関東電子応用開発製)を用いて、周波数1GHzでの比誘電率及び誘電正接を測定した。
【0116】
製造実施例1:芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン:12.9g、テレフタルアルデヒド:17.1g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:45.0gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮により脱水し、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有する芳香族アゾメチン化合物含有溶液(樹脂成分:60質量%)を得た。
次に、上記反応溶液に、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物X−22−161B〔信越化学工業株式会社製、商品名〕:325.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:513.3gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮により脱水し、分子構造中に芳香族アゾメチンを有する変性シロキサン化合物(I−1)含有溶液(Mw:30000、樹脂成分:90質量%)を得た。
【0117】
製造実施例2:芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I−2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼン:8.7g、テレフタルアルデヒド:21.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:45.0gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮により脱水し、芳香族アゾメチン化合物含有溶液(樹脂成分:60質量%)を得た。
次に、上記反応溶液に、X−22−161B〔信越化学工業株式会社製、商品名〕:413.8g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:645.7gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮により脱水し、芳香族アゾメチンを有する変性シロキサン化合物(I−2)含有溶液(Mw:25000、樹脂成分:90質量%)を得た。
【0118】
製造実施例3:芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂(J−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、芳香族アゾメチンを有する変性シロキサン化合物(I−1)含有溶液(樹脂成分:90質量%):62.4g、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン:243.9g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:443.8gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂(J−1)含有溶液(Mw:8000、樹脂成分:60質量%)を得た。
【0119】
製造実施例4:酸性置換基と芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂(K−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、芳香族アゾメチンを有する変性シロキサン化合物(I−1)含有溶液(樹脂成分:90質量%):62.5g、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン:238.1g、p−アミノフェノール:5.7g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:443.8gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、酸性置換基と芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂(K−1)含有溶液(Mw:6500、樹脂成分:60質量%)を得た。
【0120】
実施例1〜18及び比較例1〜6
製造実施例1、2で得られた芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物含有溶液(I−1、I−2)、製造実施例3で得られた芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂含有溶液(J−1)及び製造実施例4で得られた酸性置換基と芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂含有溶液(K−1)と、以下に示す芳香族アミン化合物(i)、芳香族アルデヒド化合物(ii)、シロキサン化合物(B)、マレイミド化合物(C)、酸性置換基を有するアミン化合物(D)、熱可塑性エラストマー(E)、熱硬化性樹脂(F)、無機充填材(G)、硬化促進剤(H)、及び希釈溶剤にメチルエチルケトンを使用して、第1表〜第4表に示した配合割合(質量部)で混合して樹脂分65質量%のワニスを得た。
次に、上記ワニスを、16μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムに、乾燥後の樹脂厚が35μmとなるようにフィルムアプリケーター(テスター産業株式会社製、PI−1210)を用いて塗布し、160℃で10分加熱乾燥し、半硬化物の樹脂粉を得た。支持体としては、特に制限はなく、汎用のものを使用することができ、また、塗布の方法としても特に制限はなく、通常の卓上塗工機を用いて塗布すればよい。
この樹脂粉をテフロン(登録商標)シートの型枠に投入し、12μmの電解銅箔の光沢面を上下に配置し、圧力2.0MPa、温度240℃で60分間プレスを行った後、電解銅箔を除去して樹脂板を得た。
また,上記ワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し,160℃で10分加熱乾燥して熱硬化性樹脂組成物含有量48質量%のプリプレグを得た。
このプリプレグを4枚重ね,12μmの電解銅箔を上下に配置し,圧力3.0MPa、温度240℃で60分間プレスを行って,銅張積層板を得た。
得られた樹脂板及び銅張積層板の測定・評価結果を第1表〜第4表に示す。
【0121】
芳香族アミン化合物(i)
・KAYAHARD A−A:3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン〔日本化薬株式会社製、商品名〕
【0122】
芳香族アルデヒド化合物(ii)
・TPAL:テレフタルアルデヒド〔東レ・ファインケミカル株式会社製、商品名〕
【0123】
シロキサン化合物(B)
・X−22−161B:末端アミノ変性シロキサン〔信越化学工業株式会社製、商品名〕
【0124】
マレイミド化合物(C)
・BMI:ビス(4−マレイミドフェニル)メタン〔ケイ・アイ化成株式会社製、商品名〕
・BMI−4000:2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン〔大和化成工業株式会社製、商品名〕
【0125】
酸性置換基を有するアミン化合物(D)
・p−アミノフェノール〔関東化学株式会社製、商品名〕
【0126】
熱可塑性エラストマー(E)
・タフテックH1043:水添スチレン−ブタジエン共重合樹脂〔旭化成ケミカルズ株式会社、商品名:〕
・エポフレンドCT−310:エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合樹脂〔株式会社ダイセル製、商品名:〕
【0127】
熱硬化性樹脂(F)
・PT−30:ノボラック型シアネート樹脂〔ロンザジャパン株式会社製、商品名〕
・NC−7000L:α−ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔日本化薬株式会社製、商品名〕
【0128】
無機充填材(G)
・SC2050−KNK:溶融シリカ〔株式会社アドマテックス(株)製、商品名〕
・モリブデン酸亜鉛〔シャーウィン・ウィリアムズ社製、商品名:KEMGARD1100〕
【0129】
硬化促進剤(H)
・ナフテン酸亜鉛(II)8%ミネラルスピリット溶液〔東京化成工業株式会社製、商品名〕
・G−8009L:イソシアネートマスクイミダゾール〔第一工業製薬株式会社製、商品名〕
・TPP−MK:テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート〔北興化学工業株式会社製、商品名〕
【0130】
以下、表1〜4の芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物含有溶液(I−1)、(I−2)、芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂含有溶液(J−1)、及び酸性置換基と芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂含有溶液の配合量(質量部)は、樹脂成分の固形分換算の値を示すものである。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】
第1表〜第4表から明らかなように、本発明の実施例では、樹脂板の硬化収縮率が小さく低硬化収縮性に優れ、また、積層板の特性においても、熱膨張率、銅箔接着性、弾性率、誘電特性に優れている。
一方、比較例は、樹脂板の硬化収縮率が大きく、また、積層板の特性においても、熱膨張率、銅箔接着性、弾性率、誘電特性において実施例と比較し、いずれかの特性に劣っている。