(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376046
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/08 20120101AFI20180813BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20180813BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20180813BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
B24B37/08
B24B37/00 K
B24B37/00 H
H01L21/304 621A
C03C19/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-114759(P2015-114759)
(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2016-209987(P2016-209987A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-98267(P2015-98267)
(32)【優先日】2015年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】松井 晴信
(72)【発明者】
【氏名】原田 大実
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正樹
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−000644(JP,A)
【文献】
特開2008−101132(JP,A)
【文献】
特開2006−061995(JP,A)
【文献】
米国特許第05967882(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/08
B24B 37/00
C03C 19/00
H01L 21/304
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下定盤上に設けられたキャリアに形成されたワークホール中に基板を保持し、該基板表面に衝撃吸収液が塗布された状態で下定盤を回転させながら上定盤を上記基板表面に着盤させ、次いで、上記基板表面に研磨スラリーを同伴しながら上下定盤を回転させて上記基板を研磨加工する工程を含む基板の製造方法であって、前記衝撃吸収液が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ジエタノールアミン並びにトリエタノールアミンの中から選ばれる少なくとも1種の水溶液である基板の製造方法。
【請求項2】
予め衝撃吸収液が塗布された状態で下定盤を回転させることで該衝撃吸収液の液膜を基板表面に均一に形成し、更に下定盤を回転させながら上定盤を上記基板表面に着盤させる請求項1記載の基板の製造方法。
【請求項3】
上定盤を基板表面に着盤する際の下定盤の回転数が、1〜4rpmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記衝撃吸収液の20℃における粘度が、10〜100mPa・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記上定盤を基板表面に着盤させるときの下降速度が、5〜20mm/秒の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記研磨スラリーが、アルミナ系砥粒、炭化ケイ素系砥粒及び酸化ジルコニウム系砥粒の中から選ばれる少なくとも1種の砥粒を含む水分散液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
加工前の基板の厚みが、0.1〜7mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項8】
前記基板が、合成石英ガラス基板であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項9】
前記加工工程が、ラッピング工程である請求項1〜8のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板、特にフォトマスク、光学センサー、シークエンサチップ用等、最先端技術に用いられる合成石英ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路等の精密機器に導入される装置を製造する際、その製造工程で光リソグラフィーやナノインプリント等の手法が採用されている。このような手法を用いる際、基板表面における欠陥数の少なさが重要視される。例えば、フォトリソグラフィーの露光用原版として使用されるマスク用基板に欠陥があると、その欠陥がそのまま転写されてパターニング欠陥を引き起こす不具合が懸念される。
【0003】
一方、CMOSセンサーや光導波路センサー、シークエンサチップ等の用途には、板厚が0.1〜1.0mm程度の薄い基板が採用されることがしばしばある。例えば、DNAシークエンサチップに使用されるガラスは、今までは厚い基板上にパターンを形成しておき、パターンと逆側をバックグラインドすることにより基板を薄くして使用されていた。しかし、世代が進むにつれてパターンも複雑化し、パターン形成後にバックグラインドする手法では、基板が割れる不具合があったため、最初から薄い基板にパターンを描く手法が確立されてきている。
【0004】
フォトマスクや光学センサー等に使用される基板は、高平坦度、低欠陥性を追求するため、その表面調整に、ラッピング工程、ポリッシング工程等、数段階の工程を経て製品が製造される。
【0005】
例えば、合成石英ガラスをポリッシング等の研磨布を用いて加工するときは、研磨布が合成石英ガラス基板よりも柔らかいため、着盤時の衝撃が比較的小さいが、鋳鉄等の定盤を用いて加工が行われることが多いラッピング工程は、合成石英ガラス基板よりも硬い定盤と着盤時に直接接触するため、合成石英ガラス基板に伝わる衝撃の大きさはポリッシングに比べて格段に大きい。
【0006】
この衝撃によって生じる基板表面への欠陥を抑えるため、ラッピング工程における基板への着盤方法がいくつか提案されている。
【0007】
例えば、特開2012−192486号公報(特許文献1)では、定盤にかける圧力を通常の空圧式から水圧式にすることによって、気流特有の不規則な圧力変動を防ぎ、着盤及び加工時に基板に対して偏圧力を発生させない方法が提案されている。この方法を用いることで、厚みの薄い加工物に対しても、破損させることなく加工できることが示されている。
【0008】
また、特開平9−109021号公報(特許文献2)では、吸着盤によって基板の研磨面の反っている部分を矯正し、たわみの少ない剛性の高い定盤を用いて、研磨面圧の面内の不均一性を抑える手法が提案されている。この方法を用いることで、着盤時及び加工時の基板上における偏圧を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−192486号公報
【特許文献2】特開平9−109021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1は、水流という流動性のあるものを用いて圧力制御を行うことから、完全に着盤、加工時における不規則な圧力変動を防ぐ方法とは言い難い。
【0011】
また、特許文献2では、吸着によって基板の形状を矯正していることから、特に厚みが薄い基板等は、矯正時に割れることが考えられる。更に、たわみの少ない定盤を用いたとしても、研磨面圧の面内の不均一性をゼロにすることは非現実的であり、基板表面にキラー欠陥を与える可能性がある。また、そのような高精度の定盤を用意するために、多大な時間とコストがかかることが懸念される。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、基板、特に合成石英ガラス基板の加工において、キラー欠陥となり得る基板表面の欠陥を抑制し、かつ大掛かりな装置や高精度な定盤を用いることなく、既存の設備を用いた加工における不良率を減らして、歩留まりを向上させることができる基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために、基板を加工する際の定盤の着盤工程に着目して鋭意検討した。その結果、特に、上定盤を基板表面に着盤させるとき、衝撃吸収液が塗布されている基板が保持されている下定盤を回転させながら着盤させることが有用であることを見出した。この方法を用いることで、全ての基板サイズ、特に基板の厚みが薄いものに対して着盤時に入る基板表面への欠陥をなくすことができる。
【0014】
即ち、本発明は、以下の基板の製造方法を提供する。
[1]
下定盤上に設けられたキャリアに形成されたワークホール中に基板を保持し、該基板表面に衝撃吸収液が塗布された状態で下定盤を回転させながら上定盤を上記基板表面に着盤させ、次いで、上記基板表面に研磨スラリーを同伴しながら上下定盤を回転させて上記基板を研磨加工する工程を含
む基板の製造方法
であって、前記衝撃吸収液が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ジエタノールアミン並びにトリエタノールアミンの中から選ばれる少なくとも1種の水溶液である基板の製造方法。
[2]
予め衝撃吸収液が塗布された状態で下定盤を回転させることで該衝撃吸収液の液膜を基板表面に均一に形成し、更に下定盤を回転させながら上定盤を上記基板表面に着盤させる[1]記載の基板の製造方法。
[3]
上定盤を基板表面に着盤する際の下定盤の回転数が、1〜4rpmであることを特徴とする[1]
又は[2]に記載の基板の製造方法。
[4]
前記衝撃吸収液の20℃における粘度が、10〜100mPa・sであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の基板の製造方法。
[5]
前記上定盤を基板表面に着盤させるときの下降速度が、5〜20mm/秒の範囲であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の基板の製造方法。
[6]
前記研磨スラリーが、アルミナ系砥粒、炭化ケイ素系砥粒及び酸化ジルコニウム系砥粒の中から選ばれる少なくとも1種の砥粒を含む水分散液であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の基板の製造方法。
[7]
加工前の基板の厚みが、0.1〜7mmであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の基板の製造方法。
[8]
前記基板が、合成石英ガラス基板であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の基板の製造方法。
[9]
前記加工工程が、ラッピング工程である[1]〜[8]のいずれかに記載の基板の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の加工方法と比較して上定盤を基板表面に着盤するときにおける基板表面におけるクラックのような傷を低減することが可能となる。また、本方法以外に着盤時における基板の割れ等に対する対策を特に施す必要はなく、歩留まり向上による生産性向上だけではなく、多大な投資をすることなく現状設備を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施に用いる両面研磨装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明における基板の製造方法は、下定盤上に設けられたキャリアに形成されたワークホール中に基板を保持し、ワークホール内の基板表面に衝撃吸収液が塗布された状態で下定盤を回転させながら上定盤を着盤することで、着盤時における基板にかかる力を低減し、これによりソフトな着盤条件を与えるものである。
【0018】
本発明の基板の製造方法においては、例えば
図1に示すような両面研磨装置を用いることができる。この研磨装置1は、垂直方向に昇降可能な上定盤2と、これと対抗して配設された下定盤3と、下定盤の回転軸4の周りに互いに等間隔に設けられた複数個のキャリア5とを具備する。各キャリアには基板(ワーク)6を保持するためのワークホール7が複数個形成されており、各ワークホールには基板が一枚ずつ保持されている。キャリアの厚みは基板の厚さよりも薄くなるように形成されており、上定盤2を降下させて上定盤2と下定盤3とで基板6を挟んだ状態で、上下定盤と基板との間に研磨スラリー(図示せず)を供給しながら上定盤2を上定盤の回転軸8により所定の回転速度で矢印a方向に回転させ、下定盤3を下定盤の回転軸4により矢印b方向に回転させると共に、キャリア5をそれぞれ矢印c又はd方向に回転させることで基板6が研磨されるものである。
【0019】
ここで、上定盤を静止状態の下定盤に対して垂直方向に下降させ、上定盤が下定盤上に設けられたキャリアに形成されたワークホールに仕込まれている基板に着盤するとき、基板には垂直方向の1成分のみからなる力が加わる。この垂直方向の力が大きすぎると、着盤時に基板表面に大きな傷を入れる主な要因となる。
【0020】
しかし、着盤時に下定盤が回転している場合、下定盤上に設けられたワークホールに仕込まれている基板は、上定盤の下降による垂直方向の力と、下定盤の回転による水平方向の力の2成分の合力が加わる。即ち、着盤時に基板に加わる力の合成ベクトルは、基板に対して垂直方向から水平方向へ傾いており、基板に大きな傷を入れる主な要因と考えられる垂直方向の力を軽減することができる。
【0021】
更に、基板表面に予め衝撃吸収液を塗布しておくことにより、着盤時の衝撃による基板に対して垂直方向の力を抑制することができる。衝撃吸収液は、基板を衝撃吸収液が入っている槽等に浸漬することによって基板表面に液を付着させても良いが、基板がワークキャリアに仕込まれた後に霧吹き等で基板表面に塗布する方法がより好ましい。
【0022】
衝撃吸収液によって着盤時にワークにかかる力が低減されることにより、日本工業規格JIS H 0614において定義されるクロートクラック、マクロスクラッチをはじめとする種々の欠陥が基板表面に生じることを低減させることが可能となる。
【0023】
衝撃吸収液は、基板表面上に塗布したまま放置しておくと、表面張力によって液膜の均一性が崩れているが、下定盤を回転させて基板上の液膜に対して水平方向の力を与えることで液膜を均一にすることが可能となり、着盤時に基板に対して上定盤からの偏圧がかからない効果も見込める。
【0024】
衝撃吸収液としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸及びその誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンの中から選ばれる少なくとも1種の水溶液であることが好ましい。
【0025】
衝撃吸収液の粘度は、衝撃吸収液が基板表面から流れ出る、もしくは衝撃吸収液が基板表面で均一に広がって上定盤からの力による偏圧を受けにくくする効果を得やすくすることを考慮すると、20℃における粘度が好ましくは10〜100mPa・s、より好ましくは10〜70mPa・s、更に好ましくは20〜50mPa・sである。なお、本発明において、衝撃吸収液の粘度は、例えば、東機産業(株)製TVC−7型粘度計により測定することができる。
【0026】
ここで、上定盤を着盤させるときの下定盤の回転速度は、基板の傷の入りやすさの観点から、好ましくは1〜4rpm、更に好ましくは2〜4rpmである。回転方向は特に制限されないが、基板と上定盤との水平方向の相対速度を大きくし、上定盤からかかる垂直方向の力との合成ベクトルをより水平方向にすることができることを考慮すると、研磨の際の上定盤の回転方向と逆方向であることが好ましい。
【0027】
上定盤の下降速度は、衝撃吸収液の蒸発等と、基板のダメージを考慮すると、好ましくは5〜20mm/秒、より好ましくは5〜15mm/秒、更に好ましくは5〜10mm/秒である。
【0028】
上定盤の着盤後、研磨する際の上定盤又は下定盤の回転速度、研磨圧等のその他の研磨条件は通常の条件を採用できる。
【0029】
基板表面の加工に同伴させる研磨スラリーの砥粒は、アルミナ系砥粒、炭化ケイ素系砥粒、酸化ジルコニウム系砥粒を主成分とするものから選ばれることが好ましい。これら砥粒の一次粒子径は、加工レート及び加工由来の基板表面への傷の入りやすさを考慮すると、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは0.5〜30μm、更に好ましくは0.5〜10μmである。なお、本発明において、砥粒の粒子径は、例えば、大塚電子(株)製ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ−1000ZSにより測定することができる。
【0030】
砥粒としては、市販品を用いても固形砥粒を純水に分散させたものを使用することができ、アルミナ系砥粒であれば、例えば(株)フジミインコーポレーテッド製FOシリーズ等を用いることができる。炭化ケイ素系砥粒であれば、例えば信濃電気製錬(株)製GPシリーズ、(株)フジミインコーポレーテッド製GCシリーズ等を用いることができる。酸化ジルコニウム系砥粒であれば、例えば第一稀元素化学(株)製MZシリーズ、DK−3CHシリーズ、FSDシリーズ等を用いることができる。
【0031】
本発明に適用される基板は、合成石英ガラス基板であることが好ましい。これは、例えば合成石英ガラスインゴットを成形、アニール、スライス加工、面取り、ラッピング、基板表面を鏡面加工するための研磨工程を経ることにより得られる。本発明に適用できる基板としては、その他同様な手法で得られる、ソーダライムガラス基板、シリコンウェーハ基板、サファイヤ基板、ガリウムナイトライド基板、タンタル酸リチウム基板等が挙げられる。
【0032】
本発明は、基板の大きさや厚みを規定することはないが、特に基板の厚みが薄いもの、好ましくは0.1〜7mm、更に好ましくは0.1〜1mmの厚みを有する基板に対して大きな効果が得られる。基板の厚みが薄いものは、加工における全工程で基板表面に傷が比較的入りやすい傾向があり、特に基板への衝撃が強い上定盤の着盤時に歩留りを落とすことがしばしば見受けられるため、本発明を用いれば着盤時における不良率を激減させることが可能となる。
【0033】
加工対象の基板としては、例えば、四角形状の基板では6インチ角6.35mmt(6025基板)、2.3mmt(6009基板)、0.35mmt、400角1.0mmt基板、丸形状の基板では6インチφ、8インチφ、12インチφウェーハ等の大きさで0.1〜0.5mmtのものが挙げられる。このような基板を用いて、本発明の製造方法は、好ましくはラッピング工程において適用される。
【0034】
なお、本発明に関わる基板の製造方法としては、バッチ式の両面加工が一般的であるが、片面加工、枚葉式加工等定盤と基板の着盤工程を有する加工法において実施されるものであってもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0036】
[実施例1〜6]
合成石英ガラス基板(8インチφで厚みが0.3mmt)を、
図1のワークホール中に保持し、下定盤を回転させながら上定盤を基板に着盤させた。その際の条件を下記表1に示す。基板表面に塗布する衝撃吸収液は、20℃における粘度が18mPa・sのエチレングリコール水溶液を用いた。着盤後、ラッピング加工を行った。この際の研磨スラリーは、炭化ケイ素系砥粒(信濃電気製錬(株)製、商品名:シナノランダムGP#4000)を純水に分散させたものを用いた。各実施例とも基板100枚の加工を実施した。不良率は、JIS H 0614内で示された欠陥(クロートクラック、マクロスクラッチ)を、基板表面において1個以上有するものを不良として算出した。
なお、ラッピング加工機は、両面加工方式の16B機(浜井産業株式会社製:16BF)を用いた。
【0037】
【表1】
【0038】
[比較例1〜3]
表2に示す条件にて、下定盤を静止させる以外は実施例1〜6と同様にして着盤、加工を行い、評価した。
【0039】
【表2】
【0040】
[比較例4〜5]
表3に示す条件にて、基板表面に衝撃吸収液の塗布は行わなかった以外は、実施例1〜6と同様にして着盤、加工を行い、評価した。結果を表3に示す。
【表3】
【0041】
[実施例7〜9]
合成石英ガラス基板(6インチ角で厚みが6.35mmt)を、
図1のワークホール中に保持し、下定盤を回転させながら上定盤を基板に着盤させた。その際の条件を下記表4に示す。基板表面に塗布する衝撃吸収液は、プロピレングリコールとジエタノールアミンを10:1(質量比)の割合で混合して、最終的に20℃における粘度が40mPa・sとなるように調製した水溶液を用いた。着盤後、ラッピング加工を行った。この際の研磨スラリーは、アルミナ系砥粒(フジミインコーポレーテッド(株)製、商品名:FO#2000)を純水に分散させたものを用いて、実施例1〜6と同様にして加工を行い、評価した。結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
[実施例10〜11]
ソーダライムガラス基板(7インチ角で厚みが3.0mmt)を、
図1のワークホール中に保持し、下定盤を回転させながら上定盤を基板に着盤させた。その際の条件を下記表5に示す。基板表面に塗布する衝撃吸収液は、エチレングリコールとトリエタノールアミンを20:1(質量比)の割合で混合して、最終的に20℃における粘度が37mPa・sとなるように調製した水溶液を用いた。着盤後、ラッピング加工を行った。この際の研磨スラリーは、酸化ジルコニウム系砥粒(第一稀元素工業(株)製、商品名:MZ−1000B)を純水に分散させたものを用いて、実施例1〜6と同様にして加工を行い、評価した。結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【符号の説明】
【0045】
1 研磨装置
2 上定盤
3 下定盤
4 下定盤の回転軸
5 キャリア
6 基板
7 ワークホール
8 上定盤の回転軸