【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
本発明の研磨装置を使用して、本発明の研磨方法に従い直径450mmのシリコンウェーハの研磨を行った。すなわち、先の研磨終了後、次の研磨を開始するまでの待機時に、冷媒の流量を、研磨時の冷媒の流量未満に制御し、かつ、モーターにより定盤を回転させ、かつ、室温以上に調温された保水液を研磨布に供給した。また、次の研磨を開始する前に、ダミー研磨は行わなかった。
【0045】
研磨装置としては、2つの定盤を有する片面研磨機(不二越機械社製SRED研磨機)を用いた。また、各研磨加工ステージにおける研磨条件(定盤回転数、研磨ヘッド(保持手段)回転数、荷重、研磨時間、研磨布の種類、研磨剤の種類)は下記の表1の通りとした。また、研磨時に定盤の冷媒流路に供給する冷媒の流量は、4.5L/minとした。
【0046】
【表1】
【0047】
また、各定盤において、待機時の冷媒の流量を1.0L/min、定盤の回転数を5rpm、保水液の温度を25℃とした。なお、この際の室温は23℃であったため、保水液の温度は室温以上に温調されていた。また、保水液は間欠で供給した。また、各定盤で、研磨終了後、次の研磨を開始するまでの待機時間は4時間とした。
【0048】
次に、待機後の研磨加工において研磨した25枚のウェーハの取り代及び平坦度をKLA社製WaferSightにて測定し、各ウェーハ間の取り代及び平坦度のばらつきを評価した。その結果を表2、
図2、及び
図3に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2、
図2からわかるように、実施例1では、後述する比較例1と比べ、取り代の最大値と最小値の差が小さくなった。また、取り代の最大値と最小値の差も比較例1が170nmであるのに対し、実施例1では62nmと、約1/3に抑えることができた。
【0051】
また、表2、
図3からわかるように、実施例1では、後述する比較例1と比べ、ウェーハの平坦度の指標であるGBIR(Global Backsurface−referenced Ideal plane/Range)の最大値と最小値の差が小さくなった。また、GBIRの最大値と最小値の差も比較例1が176nmであるのに対し、実施例1では43nmと、約1/4に抑えることができた。
【0052】
以上のように、本発明であれば待機時の定盤温度の低下を抑制でき、その結果、ダミー研磨を省略しても、ウェーハ品質のばらつきを抑制することができることが分かった。
【0053】
(比較例1)
待機時に、冷媒の流量を研磨時の冷媒の流量と同じとし、定盤を回転させず、かつ、室温未満に調温された保水液を研磨布に供給したこと以外、実施例1と同様な条件でシリコンウェーハの研磨を実施した。その後、実施例1と同様な方法で、待機後の研磨加工において研磨したウェーハの取り代及び平坦度を測定し、各ウェーハ間の取り代及び平坦度のばらつきを評価した。
【0054】
待機時の各定盤において、冷媒の流量を研磨時と同じ4.5L/min、定盤回転数を0rpm(停止状態)、保水液の温度を20℃(すなわち、室温である23℃より低温)とした。
【0055】
その結果、表2、
図2、3からわかるように、実施例1に比べて、ウェーハ間の取り代及び平坦度のばらつきは大きくなった。従って、比較例1の研磨方法の場合、定盤を暖機するダミー研磨が必須となり、実施例1に比べて生産性が低下することが確認できた。
【0056】
(実施例2)
実施例1とは別に、実施例1と同じ条件でシリコンウェーハの研磨を行った。その際に、待機時における定盤の温度変化を測定し、後述の比較例2の待機時における定盤の温度変化と比較した。
【0057】
(比較例2)
待機時に定盤回転を行わなかったこと以外、実施例2と同じ条件でシリコンウェーハの研磨を行った。その際に、待機時における定盤の温度変化を測定し、実施例2の待機時における定盤の温度変化と比較した。
【0058】
その結果を
図4に示す。
図4には、待機時の定盤温度の変化率を示した。なお、
図4に示す「温度変化率」とは、研磨直後の待機時間が0分の定盤温度に対する、各待機時間の定盤温度の相対値であり、(温度変化率)=(各待機時間の定盤温度(℃))/(研磨直後の待機時間が0分の定盤温度(℃))で表される。「温度変化率」の定義は、後述の
図5、6においてもこれと同様である。
図4に示すように、待機時の定盤回転が無い比較例2では、定盤の温度が低下しやすいことが分かった。
【0059】
(実施例3)
実施例1、2とは別に、実施例1と同じ条件でシリコンウェーハの研磨を行った。その際に、待機時における定盤の温度変化を測定し、後述の比較例3の待機時における定盤の温度変化と比較した。
【0060】
(比較例3)
待機時の冷媒の流量を研磨時と同じ4.5L/minとしたこと以外、実施例3と同じ条件でシリコンウェーハの研磨を行った。その際に、待機時における定盤の温度変化を測定し、実施例3の待機時における定盤の温度変化と比較した。
【0061】
その結果を
図5に示す。
図5には、待機時の定盤温度の変化率を示した。
図5から、待機時の冷媒の流量を研磨時と同じとした比較例3では、実施例3に比べ温度低下が大きいことが分かった。
【0062】
(実施例4)
実施例1〜3とは別に、実施例1と同じ条件でシリコンウェーハの研磨を行った。その際に、待機時における定盤の温度変化を測定し、後述の比較例4の待機時における定盤の温度変化と比較した。
【0063】
(比較例4)
待機時の保水液の温度を室温未満の20℃としたこと以外、実施例4と同じ条件でシリコンウェーハの研磨を行った。その際に、待機時における定盤の温度変化を測定し、実施例4の待機時における定盤の温度変化と比較した。
【0064】
その結果を
図6に示す。
図6には、待機時の定盤温度の変化率を示した。
図6から、待機時の保水液の温度を室温未満の20℃とした比較例4では、実施例4に比べ温度低下が大きいことが分かった。
【0065】
(実施例5)
本発明の研磨装置において、シリコンウェーハの研磨終了後、定盤を待機させ、待機時の定盤の温度変化を測定した。待機時の冷媒の流量を1.0L/min、定盤の回転数を5rpm、保水液の温度を25℃とした。なお、研磨時の冷媒の流量は4.5L/min、室温は23℃であった。
【0066】
(比較例5)
待機時の各定盤において、冷媒の流量を研磨時と同じ4.5L/min、定盤回転数を0rpm(停止状態)、保水液の温度を20℃(すなわち、室温である23℃より低温)としたこと以外、実施例2と同様に、シリコンウェーハの研磨終了後、定盤を待機させ、待機時の定盤の温度変化を測定した。
【0067】
実施例5及び比較例5の定盤の温度変化をそれぞれ
図7及び
図8に示す。なお、
図7、8における「温度上昇割合」とは、研磨も待機もしていない装置停止時の定盤設定温度に対する、定盤温度の上昇割合で定義され、(温度上昇割合)=[(測定時定盤温度(℃))/(定盤設定温度(℃))]×100で表される。研磨も待機もしていない装置停止時も、定盤冷却水は供給され設定温度にコントロールをしている。
図7に示すように、実施例5では、待機時の定盤の温度変化は約0.73%に抑制することができた。一方で、比較例5では、待機時の定盤の温度変化は約2.17%となり、実施例5の約3倍となってしまった。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。