(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376165
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】光変調デバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20180813BHJP
G02B 6/27 20060101ALI20180813BHJP
G02B 6/30 20060101ALI20180813BHJP
G02B 6/34 20060101ALI20180813BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
G02F1/03 505
G02B6/27
G02B6/30
G02B6/34
G02B6/32
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-70474(P2016-70474)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181860(P2017-181860A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年3月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【審査官】
奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−052820(JP,U)
【文献】
国際公開第2014/051096(WO,A1)
【文献】
特開2015−169795(JP,A)
【文献】
特開2012−203282(JP,A)
【文献】
特開2010−156842(JP,A)
【文献】
特開2015−172630(JP,A)
【文献】
中国実用新案第204116646(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00− 1/125
G02B 6/12− 6/14
G02B 6/27
G02B 6/30− 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力光を並んで出射するように配された、2つの前記出力光をそれぞれ出射する第1の光変調素子及び第2の光変調素子と、
前記第1の光変調素子からの2つの前記出力光を一のビームに合成して出射する第1の偏波合成素子と、
前記第2の光変調素子からの2つの前記出力光を一のビームに合成して出射する第2の偏波合成素子と、
前記第1及び第2の偏波合成素子から出射される前記ビームをそれぞれ受ける第1の光ファイバ及び第2の光ファイバと、
を備え、
前記第1の偏波合成素子及び第2の偏波合成素子は、前記第1及び第2の光変調素子から並んで出射される4つの前記出力光の列の内側にある2つの出力光をその伝搬方向を変化させることなく通過させ、前記第1及び第2の光変調素子から並んで出射される4つの前記出力光の列の最も外側にある2つの出力光を、前記4つの出力光の列の内側にある他の2つの出力光に近づくようにそれぞれ反射し、前記並んで出射される4つの出力光の列の内側にある2つの出力光の光軸と一致させて、2つの偏波合成されたビームを出力し、前記第1及び第2の偏波合成素子がそれぞれ合成して出射する前記ビームの互いの間隔が、前記第1及び第2の光変調素子から前記並んで出射される4つの前記出力光の列の最も外側にある2つの出力光の互いの間隔よりも狭くなるように構成されている、
光変調デバイス。
【請求項2】
前記第1の偏波合成素子及び第2の偏波合成素子は一体として構成されている請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項3】
前記第1及び第2の光変調素子から前記並んで出射される4つの前記出力光の列の最も内側にある2つの出力光の偏波は波長板により回転する請求項1または2に記載の光変調デバイス。
【請求項4】
前記波長板は前記最も内側にある2つの出力光に対して共用となるよう1枚である請求項3に記載の光変調デバイス。
【請求項5】
前記第1及び第2の偏波合成素子がそれぞれ合成して出射する前記ビームの互いの間隔は、前記第1及び第2の光変調素子から前記並んで出射される4つの前記出力光の列の内側の2つの光軸の間隔に等しい、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項6】
前記第1の光変調素子と前記第2の光変調素子とは、並んで出射される前記出力光の方向に平行な線分に関して線対称な位置に配されており、かつ、
前記第1の偏波合成素子と前記第2の偏波合成素子とは、前記線分に関して線対称な位置に配されている、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項7】
前記第1及び第2の光変調素子から出射される4つの前記出力光をそれぞれ受ける4つの出射用レンズと、
前記第1及び第2の偏波合成素子のそれぞれから出射される前記ビームを、前記第1及び第2の光ファイバにそれぞれ結合させる2つの結合レンズと、を備え、
前記4つの出射用レンズ、及び又は前記2つの結合レンズは、それぞれ一体に形成されたマイクロレンズアレイである、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一の光ファイバから入射した光を光変調素子により変調して他の光ファイバから出射する光変調デバイスに関し、特に、個別の基板上にそれぞれ形成された又は一つの基板上に並べて形成された複数の光変調素子を備え、当該複数の光変調素子からそれぞれ出力される2つの変調された直線偏波光を偏波合成してそれぞれ一本の光ファイバから出力する、集積型の光変調デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、導波路型の光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO
3(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
このLNを用いた光変調素子では、LN基板上に例えばマッハツェンダ型光導波路が形成され、当該光導波路の近傍に形成された電極に高周波信号を印加することにより、当該高周波信号に応じた変調信号光(以下、変調光)が出力される。また、このような光変調素子を光伝送装置内で使用する場合には、光変調素子を収容した筺体と、光源からの光を光変調素子に入射する入射光ファイバと、光変調素子から出力される光を筺体外部へ導く出射光ファイバと、で構成される光変調デバイスが用いられる。
【0004】
光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏波光をそれぞれ位相偏移変調又は直交振幅変調して1本の光ファイバで伝送するDP−QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)やDP−QAM(Dual Polarization - Quadrature Amplitude Modulation)等、偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となりつつある。
【0005】
このようなDP−QPSK変調やDP−QAM変調を行う光変調デバイスでは、一の光源から出力された直線偏波光を光変調素子に入射し、当該光変調素子において当該入射された直線偏波光を2つの光に分岐してそれぞれを独立な2つの高周波信号を用いて変調し、それらの変調された2つの直線偏波変調光を偏波合成して一つの光ファイバに結合させて出力する。
【0006】
一方、光伝送システムの伝送容量を更に増加させるためには、例えば互いに異なる波長を持つ複数の光に対しそれぞれDP−QPSK変調やDP−QAM変調を行った後、変調された異なる波長を持つ複数の光を波長合成器により一つの光ビームにまとめて一本の光ファイバにより伝送する、波長多重システムが考えられる。このような、複数の光をそれぞれ変調して一本の光ファイバにより伝送する光伝送装置では、当該装置の小型化等の観点から、一つの入力光を変調して一つの変調光を出力する光変調デバイスを複数用いるのではなく、一つの筺体内に複数の光変調素子(又は複数の光変調素子を一つのLN基板上に形成した集積型光変調素子)を備えて、複数の入力光をそれぞれ変調して複数の変調光を出力する集積型の光変調デバイスが望ましい。
【0007】
この場合、複数の光変調素子からそれぞれ2つずつ出射される光(直線偏波光)を偏波合成するための偏波合成器や、当該偏波合成器を出射したビームを光ファイバに結合させるレンズ等の光学部品を設けるスペースを確保する必要性から、一般的には、一の光変調素子から出射する2つの直線偏波光と、他の光変調素子から出射する2つの直線偏波光と、の間の距離を拡げる必要がある。
【0008】
このような集積型の光変調デバイスとして、従来、2つの光変調素子を備え、一の光変調素子から出力される2つの直線偏波光と、他の光変調素子から出力される2つの直線偏波光と、の間の距離を、2つの光路シフト用プリズム(光路を平行移動させるためのプリズム)により拡げた後、それぞれの2つの直線偏波光を偏波合成プリズム等により偏波合成して、それぞれ1本の光ファイバにより筺体外へ出力させる集積型の光変調デバイスが知られている(特許文献1)。
【0009】
この光変調デバイスでは、2つの光変調素子から2つの光路シフト用プリズムまでの距離を互いに異ならせることで、上記2つの光路シフト用プリズムが互いに接触すること等による光学部品の損傷が防止される。
【0010】
しかしながら、光変調デバイスを構成する場合、光変調素子と出射光ファイバとの間の光結合効率の向上の観点、及び当該光結合効率の温度変動や経年変化の安定化の観点、並びにデバイスサイズの小型化やデバイスコストの低減の観点からは、光路内に挿入する光学部品の数を極力減らすことが望ましい。
【0011】
すなわち、上記従来の集積型光変調デバイスは、光学特性の向上及びその安定化、並びに小型化、低コスト化等の観点から未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2015−172630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記背景より、個別の基板上にそれぞれ形成された又は一つの基板上に並べて形成された複数の光変調素子を備え、当該複数の光変調素子からそれぞれ出力される2つの変調された直線偏波光を偏波合成してそれぞれ一本の光ファイバから出力する、集積型光変調デバイスにおいて、光学特性の向上及びその安定化、並びに小型化、低コスト化等の観点から更なる改善を図ることのできる構成の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の態様は、出力光を並んで出射するように配された、2つの前記出力光をそれぞれ出射する第1の光変調素子及び第2の光変調素子と、前記第1の光変調素子からの2つの前記出力光を一のビームに合成して出射する第1の偏波合成素子と、前記第2の光変調素子からの2つの前記出力光を一のビームに合成して出射する第2の偏波合成素子と、前記第1及び第2の偏波合成素子から出射される前記ビームをそれぞれ受ける第1の光ファイバ及び第2の光ファイバと、を備える光変調デバイスである。そして、本光変調デバイスでは、前記第1及び第2の偏波合成素子は、前記第1及び第2の偏波合成素子がそれぞれ合成して出射する前記ビームの互いの間隔が、前記第1及び第2の光変調素子から前記並んで出射される4つの前記出力光の列の最も外側にある2つの出力光の互いの間隔よりも狭くなるように構成されている。
本発明の他の態様によると、前記第1及び第2の偏波合成素子がそれぞれ合成して出射する前記ビームの互いの間隔は、前記第1及び第2の光変調素子から前記並んで出射される4つの前記出力光の列の内側の2つの光軸の間隔に等しい。
本発明の他の態様によると、前記第1の光ファイバ及び第2の光ファイバは、ファイバアレイを構成し、前記ファイバアレイを構成する第1及び第2の光ファイバの、それぞれの端面における光軸の互いの間隔は、前記第1及び第2の光変調素子から前記並んで出射される4つの前記出力光の列の内側の2つの光軸の間隔に等しい。
本発明の他の態様によると、前記第1及び第2の光変調素子を収容する筺体を有し、前記筺体は、前記第1及び第2の偏波合成素子のそれぞれから出射される前記ビームを筺体外へ出力する窓を有し、前記第1の光ファイバ及び第2の光ファイバは、前記筺体の外面の、前記窓を介して前記出力光を受ける位置に取り付けられている。
本発明の他の態様によると、前記第1の光変調素子と前記第2の光変調素子とは、並んで出射される前記出力光の方向に平行な線分に関して線対称な位置に配されており、かつ、前記第1の偏波合成素子と前記第2の偏波合成素子とは、前記線分に関して線対称な位置に配されている。
本発明の他の態様によると、前記第1及び前記第2の光変調素子は、位相偏移変調又は直交振幅変調を行う光変調素子である。
本発明の他の態様によると、前記第1及び前記第2の光変調素子は、それぞれ別の基板上に形成されているか、又は同一の基板上に並べて形成されている。
本発明の他の態様によると、前記第1及び第2の光変調素子から出射される4つの前記出力光をそれぞれ受ける4つの出射用レンズと、前記第1及び第2の偏波合成素子のそれぞれから出射される前記ビームを、前記第1及び第2の光ファイバにそれぞれ結合させる2つの結合レンズと、を備え、前記4つの出射用レンズ、及び又は前記2つの結合レンズは、それぞれ一体に形成されたマイクロレンズアレイである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調デバイスの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す光変調デバイスにおける、マイクロレンズアレイ周辺の部分詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る光変調デバイスの構成を示す図である。本光変調デバイス100は、光変調器102と、光変調器102に光源(不図示)からの光を入射する光ファイバである入射光ファイバ104a、104bと、出射用マイクロレンズアレイ106と、半波長板108と、偏波合成プリズム110と、ファイバ結合アセンブリ112と、これらの光学部品を収容する筺体114と、を有する。
【0017】
入射光ファイバ104a、104bは、それぞれ、2つの光源(不図示)からの、例えば互いに異なる波長を有する直線偏波光を、光変調器102に入射する。
【0018】
光変調器102は、一枚のLN基板上に形成された、光導波路で構成される2つの光変調素子120a、120bを有する。これらの光変調素子120a、120bは、例えばDP−QPSK変調やDP−QAM変調を行う光変調素子である。
【0019】
光変調素子120a、120bは、
図1に示すように、出力光が並んで出射されるように配されている。すなわち、
図1において、光変調素子120a、120bは、当該光変調素子120a、120bのすべての出力光が、変調器102の図示左側の端面170から図示左方向に、図示上下方向に並んで出射されるように、配されている。また。本実施形態では、光変調素子120a、120bは、上記並んで出射される出力光の方向に平行な線分180に関して線対称な位置に配されている。
【0020】
なお、本実施形態では、光変調素子120a、120bは、当該光変調素子120a、120bから出射される全ての出力光が
図1の図示上下方向に直線状に並んで出射されるように配されているが、これに限らず、「並んで」出射される限りにおいて、光変調素子120a、120bの出射光が互いに任意の位置関係を持つように配されるものとすることができる。例えば、光変調素子120a、120bは、当該光変調素子120a、120bのそれぞれの光の出射端面(
図1の図示左側端面)が
図1の図示左右方向に所定距離だけ互いにずれて配されていても良い。また、例えば、光変調素子120a、120bは、当該光変調素子120a、120bからのそれぞれの光の出射点が、当該光変調素子120a、120bの基板厚さ方向(
図1の紙面に垂直な方向)においてそれぞれ互いに異なる位置にあるように構成されていても良い。
【0021】
光変調素子120aは、第1の光変調素子であり、入射光ファイバ104aから入射される直線偏波光は2つの光に分岐され、それぞれ異なる電気信号により変調されたのち、それぞれ出射導波路130a、132aから出力する。また、光変調素子120bは、第2の光変調素子であり、入射光ファイバ104bから入射される直線偏波光は2つの光に分岐され、それぞれ異なる信号により変調されたのち、それぞれ出射導波路130b、132bから出力する。
【0022】
光変調器102の光出射側の基板端面170(出射導波路130a、132a、130b、132bが形成されている側(すなわち、図示左側)の基板端面)には、出射用レンズである4つのマイクロレンズ140a、142a、140b、142bから成る出射用マイクロレンズアレイ106が配されている。
【0023】
図2は、
図1に示す光変調デバイス100の、出射用マイクロレンズアレイ106周辺の部分詳細図である。
光変調素子120aの出射導波路130a、132aから出力される光はマイクロレンズ140a、142aに入射し、光変調素子120bの出射導波路130b、132bから出力される光はマイクロレンズ140b、142bに入射する。マイクロレンズ140a、142a、140b、142bに入射した光は、それぞれ、例えばコリメートされて平行光(コリメート光)となり出力される。
【0024】
そして、光変調素子120aから出力される一方の出力光である出射導波路132aから出力された光と、光変調素子120bから出力される一方の出力光である出射導波路132bから出力された光と、は、それぞれマイクロレンズ142a及び142bを通過した後、共に1枚の半波長板108に入射する。半波長板108は、偏波回転素子であり、当該半波長板108に入射した上記2つの直線偏波光である出力光は、当該半波長板108を通過する際に、それぞれの偏波が90度回転される。なお、本説明において半波長板108は2つの出力光に対して共用となるよう1枚としたが、2つの出力光に対してそれぞれ個別に1枚ずつ配置してもよい。但し、半波長板108は2つの出力光に対して共用となるよう1枚とした方が、部品点数の削減、組立工数の削減及び信頼性を向上することができる。
【0025】
これにより、光変調素子120aから出力される一方の出力光である出射導波路132aから出力された光と、他方の出力光である出射導波路130aから出力された光は、偏波方向が互いに直交する直線偏波光となって、偏波合成プリズム110に入射することとなる。同様に、光変調素子120bから出力される一方の出力光である出射導波路132bから出力された光と、他方の出力光である出射導波路130bから出力された光は、偏波方向が互いに直交する直線偏波光となって、偏波合成プリズム110に入射することとなる。
【0026】
ここで、入射光ファイバ104a、104bからそれぞれ入射する光の波長が互いに異なることにより、光変調素子120aの出射導波路132aから出力される光の波長と、光変調素子120bの出射導波路132bから出力される光の波長と、が互いに異なる場合(であって、且つそうすることが必要な場合)には、半波長板108のうち、光変調素子120aの出射導波路132aから出力された光が通る領域の光学的厚さと、光変調素子120bの出射導波路132bから出力された光が通る領域の光学的厚さと、をそれらの波長に応じた相異なる厚さとしてもよい。
【0027】
半波長板108は、例えば、当該半波長板108を構成する光変調素子120aの出射導波路132aから出力された光が通る領域と、光変調素子120bの出射導波路132bから出力された光が通る領域とが、線分180に関して線対称となるように配置される。各領域を有する半波長板108は1枚の半波長板で構成してもよい。また各領域を有する半波長板をそれぞれ作製し、それらを個別に配置する構成としてもよいし、それらを1つに組み合わせた構成としてもよい。
【0028】
偏波合成プリズム110は、2つの偏波合成プリズムを一体として構成したものであり、偏波合成プリズム部110aと、偏波合成プリズム部110bと、を有する。偏波合成プリズム部110aは、第1の偏波合成素子であり、前記光変調素子120aから出射して偏光方向が互いに直交することとなった2つの直線偏波光を一つのビームに合成して出力する。また、偏波合成プリズム部110bは、第2の偏波合成素子であり、前記光変調素子120bから出射して偏光方向が互いに直交することとなった2つの直線偏波光を一つのビームに合成して出力する。
【0029】
ここで、偏波合成プリズム部110a、110bは、それぞれ、入射した2つの直線偏波光の一方をその伝搬方向を変化させることなく通過させ、当該一方の直線偏波光の光軸と平行な光軸を有する他方の直線偏波光の光軸を光軸方向を維持したままシフトさせて当該一方の直線偏波光の光軸と一致させることにより、偏波合成された一つのビームを出力する。
【0030】
本実施形態では、偏波合成プリズム110は、光変調素子120a、120bから並んで出射される4つの出力光の列の最も外側にある2つの出力光(すなわち、出射導波路130a及び130bから出射される出力光)の光軸を光軸方向を維持したままシフトさせ、それぞれ、当該並んで出射される4つの出力光の列の内側にある2つの出力光(すなわち、出射導波路132a及び132bから出射される出力光)の光軸と一致するようにして、2つの偏波合成されたビームを出力する。したがって、本実施形態では、偏波合成プリズム110から出射される2つの偏波合成されたビームの光軸の互いの間隔は、光変調素子120a、120bから並んで出射される4つの出力光の列の内側にある2つの出力光の光軸の間隔(したがって、出射導波路132aと132bの間隔)に等しい。
【0031】
また、偏波合成プリズム110は、例えば、偏波合成プリズム部110a、110bが線分180に関して線対称となるように構成され及び又は配される。
【0032】
ファイバ結合アセンブリ112は、ファイバアレイ116と結合用マイクロレンズアレイ118と、で構成される。ファイバアレイ116は、2本の出射光ファイバ116aと116bとで構成され、結合用マイクロレンズアレイ118は、結合レンズである2つのマイクロレンズ118aと118bとで構成される。
【0033】
筺体114には、偏波合成プリズム110の偏波合成プリズム部110a、110bからそれぞれ出射されるビームを筺体114の外へ出射させるための窓122が設けられており、ファイバアレイ116及び結合用マイクロレンズアレイ118で構成されるファイバ結合アセンブリ112は、筺体114の外面の、上記窓122を介して上記ビームを受けることのできる位置に取り付けられている。ここで、窓122は、例えば、筺体114に設けられた孔124と、当該孔124を塞ぐように配された透明ガラス126と、で構成される。透明ガラス126は、例えばサファイアガラスであり、筺体114の内面に対し例えばロウ付けにより気密固定されている。
【0034】
これにより、偏波合成プリズム部110aから出力されたビームは、窓122を通過した後、マイクロレンズ118aにより集光されて出射光ファイバ116aに入射して、光変調デバイス100から出力される。同様に、偏波合成プリズム部110bから出力されたビームは、窓122を通過した後、マイクロレンズ118bにより集光されて出射光ファイバ116bに入射して、光変調デバイス100から出力される。
【0035】
ここで、ファイバ結合アセンブリ112のファイバアレイ116は、出射光ファイバ116a、116bの、それぞれの端面における光軸の互いの間隔が、偏波合成プリズム110から出射される2つのビーム(すなわち、偏波合成プリズム部110aから出射されるビームと、偏波合成プリズム部110bから出射されるビーム)の、それぞれの光軸の互いの間隔と等しくなるように構成されている。このような構成とすることで、偏波合成プリズム部110a及び偏波合成プリズム部110bから出力されるビームは、出力後に互いの光軸の間隔を調整するための光学部品を通ることがないため、出射光ファイバ116a、116aへの結合効率を高めるとともに、ビームの伝搬損失を抑制することができる。
【0036】
ファイバ結合アセンブリ112は、例えば、ファイバアレイ116を構成する出射光ファイバ116a、116bが線分180に関して線対称となるように配され、且つ結合用マイクロレンズアレイ118を構成する2つのマイクロレンズ118aと118bとが線分180に関して線対称となるように配される。なお、出射光ファイバ116a、116bは、それぞれ、偏波合成素子である偏波合成プリズム部110a、110bから出射されるビームをそれぞれ受ける第1の光ファイバ及び第2の光ファイバに対応する。
【0037】
上述したように、偏波合成プリズム110から出射される2つのビームの光軸の互いの間隔は、光変調素子120a、120bから並んで出射される4つの出力光の列の内側にある2つの出力光(すなわち、出射導波路132a及び132bからの出力光)の光軸の間隔に等しいので、ファイバアレイ116を構成する出射光ファイバ116a、116bの、それぞれの端面における光軸の互いの間隔も、出射導波路132a及び132bからの出力光の光軸の間隔に等しい。
【0038】
以上の構成により、入射光ファイバ104aから入射した光は、光変調素子120aで変調された後、半波長板108と偏波合成プリズム部110aにより偏波合成されて、出射光ファイバ116aから出射されこととなる。また、同様に、入射光ファイバ104bから入射した光は、光変調素子120bで変調された後、半波長板108と偏波合成プリズム部110bにより偏波合成されて、出射光ファイバ116bから出射されこととなる。
【0039】
特に、本実施形態に係る光変調デバイス100では、上述したように、偏波合成された2つのビームの間隔が、光変調素子120a、120bから並んで出射される4つの出力光の列のうちの、内側の2つの出力光(すなわち、出射導波路132a及び132bからの出力光)の間隔と等しくなるように構成され、これら2つのビームが、ファイバアレイ116を構成する出射光ファイバ116a、116bに結合されて出力される。
【0040】
このため本光変調デバイス100では、従来技術のように光路シフトのためのプリズムを用いる必要がなく、光学部品の数を減らすことができるため、光の通過損失(すなわち、光変調デバイス100の挿入損失)等の光学特性の向上、及び光学特性の安定化(環境温度に対する変動等)を図ることができ、且つ筺体114の小型化、及び資材コスト、組み立てコスト等の低減を図ることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、偏波合成プリズム110は、当該偏波合成プリズム110から出射される2つのビームの間隔が、光変調素子120a、120bから並んで出射される4つの出力光の列のうちの内側にある2つの出力光(すなわち、出射導波路132a及び132bから出射される出力光)の間隔と一致するように構成されるものとした。ただし、偏波合成プリズム110の構成は、これに限らず、偏波合成プリズム部110a、110bからそれぞれ出射されるビームの互いの間隔が、例えば光変調素子120a、120bから並んで出射される4つの出力光の列の最も外側にある2つの出力光(すなわち、出射導波路130a及び130bから出射される出力光)の互いの間隔(以下、「間隔L」という)よりも狭くなるように構成されていてもよい。
【0042】
この場合、従来のように偏波合成プリズム部がLN基板の幅よりも大きくはみ出て占有することがないため光変調デバイスを小型化することができる。また、偏波合成プリズム部110a、110bをLN基板の幅よりも小さく配置することも可能であり、この場合、更なる小型化が可能となる。また偏波合成プリズム110は、2つの偏波合成プリズムを一体として構成しているため、従来のように偏波合成プリズムを離散して広い範囲に配置した構成と比べて狭い範囲に配置でき小型化に貢献している。
【0043】
さらに、本実施形態の光変調デバイス100では、筺体114内における光路配置を決定する主要因となる光変調素子120a、120b、及び偏波合成プリズム部110a、110b、が、それぞれ光変調素子120a、120bの出射光の方向に平行な線分180に関して線対称な位置に配されている。
【0044】
一般に、
図1に示す筺体114のような矩形筺体は、環境温度変動時に発生する歪が幾何学的に略対称性を有することから、上記のように、入射光ファイバ104aから出射光ファイバ116aまでの光学系と、入射光ファイバ104bから出射光ファイバ116bまでの光学系と、を線分180に関して互いに対称に配置することで、環境温度変動時におけるそれぞれの光学系での光学素子の位置ずれ量を互いに同程度のものとすることができる。
【0045】
その結果、例えば波長多重伝送システムの2つの波長チャネルを構成する2つの光を光変調デバイス100を用いて変調する場合には、入射光ファイバ104aから出射光ファイバ116aに至るまでの光損失(通過損失又は挿入損失。以下同じ。)と、入射光ファイバ104bから出射光ファイバ116bに至るまでの光損失の、環境温度変動に伴う変動を同程度のものとして、環境温度変動に伴う上記波長チャネル間の損失差の発生又は増大化を防止し(従って、上記波長多重システムにおける波長チャネル間での送信光のレベル差の発生又は増大化を防止し)、チャネル相互間における伝送品質の格差が発生又は増大してしまうのを防止することができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係る光変調デバイス100では、偏波合成プリズム110から出射する2つのビームの間隔、及び出射光ファイバ116a、116bの光軸間隔が、光変調素子120aと光変調素子120bの出射導波路132a、132b間の間隔と同程度まで狭く設定されるので、筺体114に設けた一つの窓122を介して、偏波合成プリズム110から出射する2つのビームを筺体114外部へ導くことができる。
【0047】
このため、光変調デバイス100では、出射光(又は出射光ファイバ)を筺体外へ導くために2つの孔(又は窓)を筺体に設ける従来技術に比べて、筺体114の環境温度変動時に発生する歪を低減して上記光損失の変動を低減することができると共に、例えば筺体114にカバーを加圧溶融して気密封止する際に発生する当該筺体114の歪を低減して、気密封止前後における上記光損失の変動を低減することができる。
【0048】
なお、上述した実施形態では、光変調器として、2つの光変調素子120a、120bが一枚の基板上に形成された1つの光変調器102を用いるものとしたが、これに限らず、個別の基板上に形成された1つの光変調素子で構成される光変調器を2つ用いるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
100・・・光変調デバイス、102・・・光変調器、104a、104b・・・入射光ファイバ、106・・・出射用マイクロレンズアレイ、108・・・半波長板、110・・・偏波合成プリズム、112・・・ファイバ結合アセンブリ、114・・・筺体、116・・・ファイバアレイ、116a、116b・・・出射光ファイバ、118・・・結合用マイクロレンズアレイ、120a、120b・・・光変調素子、122・・・窓、124・・・孔、126・・・透明ガラス、130a、132a、130b、132b・・・出射導波路、118a、118b、140a、142a、140b、142b・・・マイクロレンズ、170・・・基板端面。