【文献】
Riichi Kudo 他,Coherent Optical Single Carrier Transmission Using Overlap Frequency Domain Equalization for Long-Haul Optical Systems,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,2009年 8月,VOL. 27, NO. 16,p.3721-3728
【文献】
鈴木 扇太 他,光通信ネットワークの大容量化に向けたディジタルコヒーレント信号処理技術の研究開発,電子情報通信学会誌,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2012年12月,Vol.95, No.12,p.1100-1116
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波長分散補償部は所定の数のデータを処理範囲として順次的に補償処理を行い、隣接する処理範囲の間で一部のデータが共通となるオーバーラップ部分が存在することを特徴とする請求項1に記載の波長分散補償装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る波長分散補償装置、波長分散補償方法及び通信装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る通信装置を示す図である。送信装置において、データ生成部1が生成したデータを光信号送信部2が光信号に変換して光ファイバ3に送信する。受信装置において、光信号受信部4が光ファイバ3から光信号を受信して受信信号に変換する。
【0013】
光信号受信部4において、偏波分離器5が光信号を2つの直交偏波成分に分離する。これらの光信号と局発光源(不図示)の局発光が90°ハイブリッド回路(不図示)に入力され、両光を互いに同相及び逆相で干渉させた1組の出力光、直交(90°)及び逆直交(−90°)で干渉させた1組の出力光の計4つの出力光が得られる。これらの出力光はフォトダイオード(不図示)によりそれぞれアナログ信号に変換される。これらのアナログ信号はAD変換器6によりデジタル信号である受信信号に変換される。
【0014】
光ファイバ3中を光信号が伝搬する際に、波長分散によって信号波形が歪む。波長分散補償装置7は、その歪の大きさを受信信号から推定して、波長分散による受信信号の歪みを補償する。また、光通信において水平偏波と垂直偏波を合成して送信し受信において分離する際に、偏波モード分散によって偏波変動が生じ波形が歪む。偏波処理・適応等化部8は、偏波変動による受信信号の歪みを補償する等化処理を行う。偏波分離は最初に光復調器によって行われるが、偏波処理・適応等化部8においてより完全に偏波分離が処理される。送信側でトレーニング信号やパイロット信号を挿入し、受信した該信号との誤差を最小にする方法等が提案されている。その後、誤り訂正部9が受信信号の誤りを検出して訂正する。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態1に係る波長分散補償装置を示す図である。帯域分割タイミング調整部10において、周波数分割部11が、サンプルデータに変換された受信信号を2つの周波数帯域ごとに分割して2つの信号を出力する。周波数分割部11はFFT演算部12と2つのIFFT演算部13,14を有する。遅延部15は、遅延量を調整して2つの信号のタイミングを時間領域において揃える。結合部16は、タイミングを揃えた2つの信号を結合して再び1つの信号とする。
【0016】
次に、波長分散補償部17が、帯域分割タイミング調整部10の出力信号の波長分散を2つの周波数帯域ごとに補償する。波長分散補償部17は、FFT演算部18と、逆伝達関数乗算部19と、IFFT演算部20とを有する。
【0017】
続いて、本実施の形態の動作を比較例と比較して説明する。
図3は、比較例に係る通信装置を示す図である。比較例には帯域分割タイミング調整部10が存在しない。
【0018】
送信信号の占有帯域幅がFGHz、その波長の広がりが1nm、光ファイバ3を含む光伝送路での波長分散がDps/nmとすると、受信装置における遅延時間は、Dps/nm×1nm=Dpsとなる。波長分散による中心周波数fcから広がる周波数に対する位相回転量は、一般的に下記の式で表される(例えば、特許文献1参照)。
【数1】
【0019】
図3の左下に、波長分散による位相回転量を示す。ここでは中心周波数fcにおける位相回転量を基準(ゼロ)としている。実際の位相回転量はexp(jφ)のφの部分に相当する。位相回転量は、3次の項を2次の項に比べて小さく無視し得ると考えると、中心周波数fcからの周波数差fc−fの2次関数で近似できる。光速をcとすると、波長の広がりは、c/(fc−δf)−c/(fc+δf)となる。
【0020】
波長分散補償部17では、まず、FFT演算部18が受信信号x(n)をFFT(高速フーリエ変換)により周波数領域X(k)に変換する。
【数2】
ここで、nは時間領域におけるサンプリングの順番を示す時間に関係する変数であり、kは周波数領域における周波数に関係する変数である。
【0021】
次に、逆伝達関数乗算部19が、上記の位相回転が逆回転になるようにH(k)=exp(−jφ)を乗ずる。これにより、波長分散による周波数に対する遅延を補償(相殺)できる。
【数3】
次に、IFFT演算部20が、Y(k)をIFFT(逆高速フーリエ変換)により時間領域の信号y(n)に戻す。
【数4】
【0022】
なお、中心周波数fcの信号に対する周波数fc−fの信号の遅延時間δtは、以下の式で示される。
【数5】
この式から、遅延時間δtは、中心周波数fcからの周波数の広がりに比例することが分る。なお、波長分散Dは、送信側で予め情報系列に既知信号を埋め込み、受信側で既知信号を検出して比較することで精度よく推定することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0023】
図4は、比較例の波長分散補償の基本動作を説明するための図である。送信信号イメージの横軸には時間、縦軸には中心周波数fc及び占有帯域に相当するfc+δf〜fc−δfが記されている。細線はサンプルのイメージを示す。各サンプルのデータはfc±δfの周波数成分を含んでおり、それらの周波数成分が合成されている。太線の範囲は、任意のサンプルデータの範囲が後にどのように変化するか分るように、便宜的に記載したものである。
【0024】
ここで、光ファイバ3を含む伝送路で、中心周波数からの周波数差に対して2次関数で近似される波長分散による位相回転が発生したとする。送信信号イメージで示した範囲には、受信信号イメージに示すように、周波数が増加するにつれてほぼ線形に遅延が生じる。送信信号イメージでは長方形だった範囲は、受信信号イメージでは平行四辺形に変化する。
【0025】
サンプリング速度をS[s/sec]とすると、サンプリング周期は1/S[sec]となる。これにより、遅延時間D[ps]はD÷(1/S)=Tサンプルと表すこともできる。この場合、中心周波数fcからfc+δfにおいてT/2サンプル分の遅れ、中心周波数fcからfc−δfにおいてT/2サンプル分の進みとなる。各サンプルでは、隣接するサンプルから遅れた信号又は進んだ信号が結合される。これらが波形歪の原因となる。
【0026】
上述した波長分散による遅延は、
図4の下段に示した逆伝達関数の乗算によって補償される。補償後の信号イメージは、
図4の下段右端に示した長方形に戻される。これは、時間領域において各周波数の信号が揃っていることを示している。各周波数の信号間の遅延差がほぼ無くなるため、波形歪が解消される。
【0027】
図5は、比較例の波長分散補償におけるFFT処理方法を示す図である。ここでは、サンプリングされたディスクリート信号を処理するため、FFTを用いる例を示しているが、本動作原理はアナログ的な処理にも適用可能であることは言うまでもない。
【0028】
波長分散がない場合は、
図5の(a)に示すように、FFT処理をオーバーラップなしに順次的に行う。FFT処理はDFT(ディスクリートフーリエ変換)処理を高速したものである。ここでは、DFTの一般式を用いて処理の手順について説明する。
【数6】
【0029】
x(n)は受信信号を時間領域でサンプリングしたデータ、nはサンプリングされたデータの順番を示す変数である。nにサンプリング周期を乗ずると、時間が得られる。Nは1回の処理におけるサンプルデータの数であり、一般的には“FFT処理範囲”、“FFTサイズ”又は“FFTのポイント数”と称される。kはFFTによって周波数領域に変換されたデータの順番を示す変数であり、周波数に関連する変数である。kにサンプリング周波数/Nを乗ずると、周波数が得られる。
【0030】
上述したように、1回のFFT処理では、N個のサンプルデータずつ処理が行われる。ここで、波長分散が無い場合は、FFT処理の範囲(N)において、各サンプルデータの周波数成分は遅延差なく受信側に伝送されるので、周波数に対する遅延差による歪を考える必要はない。従って、各FFT処理は、遅延を考慮したオーバーラップなしで順次的に処理を行うことができる。この場合は、1回のFFT処理で処理が行えるサンプル数は、Nのままである。勿論、FFT処理を行う上で、エイリアシングを考慮した計算は必要であることは言うまでもない。
【0031】
しかし、波長分散がある場合は、
図5の(b)に示すように、波長分散補償部17は所定の数のデータを処理範囲として順次的に補償処理を行い、隣接する処理範囲の間で一部のデータが共通となるオーバーラップ部分が必要となる。オーバーラップ部分のオーバーラップ量は、複数の周波数帯域ごとの波長分散による遅延量に応じて決まる。この図では、FFT処理範囲の半分がオーバーラップとして使用される例を示している。
【0032】
図6は、比較例のFFT処理におけるオーバーラップを説明するための図である。各サンプルデータの周波数成分では、
図4の受信信号イメージで示したように、周波数に応じて遅延量が変化する。
図6の上段の図において、FFTの処理範囲の後端のT/2サンプルの部分に着目する。この部分のサンプルデータに関して、中心周波数fcからfc+δfまでの周波数成分には、遅延によりFFT処理範囲の外に出る成分Aと、遅延によりFFT処理範囲に残る成分Bがある。また、中心周波数fcからfc−δfまでの周波数成分には、FFT処理範囲の外から進みによって入ってくる成分Cがある。
【0033】
ここで、成分Bは、それよりも時間的に前のデータの補償に使用される。成分Aは、FFT処理範囲にないためこのFFT処理では補償に使用できない。即ちT/2のfc〜fc+δfの周波数範囲は正しく補償されない。また、成分Cは、FFT処理範囲外のfc〜fc−δfの範囲のデータが入り込んできているため、この部分についても正しく補償されない。即ち、T/2の部分は、それよりも時間的に前のデータの補償に使用されるが、その部分自体は正しく補償されない。従って、この部分が、各FFT処理範囲のオーバーラップ部分となり、中央部のデータの補償には必要であるが、自身の補償は行えず、補償処理後は破棄される。上述したように、一般的にオーバーラップ部分は、T/2とすることが望ましい。なお、波長分散補償は、それぞれのFFT処理結果に逆伝達関数を乗ずることで行われる。
【0034】
上述の結果から、波長分散により周波数に対して遅延が生じた受信信号をFFT処理する場合は、遅延量に対応したオーバーラップが必要である。そして、遅延時間の増加に対してオーバーラップ量も大きくする必要がある。オーバーラップ量の増大は、FFT処理範囲の増大にもつながり、計算量と消費電力が増える。逆に、FFT処理範囲(=FFTサイズ)が決まっていると、FFT処理範囲からオーバーラップ部分を引いた量が、実質的に1回の処理で補償処理が行える範囲となる。この補償処理が行える範囲が小さくなると、全体の処理速度の低下に繋がる。
【0035】
図7は、本発明の実施の形態1に係る帯域分割タイミング調整部の動作を説明するための図である。FFT演算部12が受信信号をFFTにより周波数領域に変換する。その出力を2つに分けることで周波数帯域を2つに分ける。次に、
図7の上段の左側の図に示すように、2つに分けた周波数帯域の信号をIFFT演算部13,14がIFFTによりそれぞれ時間領域に変換する。次に、
図7の上段の右側の図に示すように、遅延部15が、時間領域に戻した2つの信号の片側に、2つの信号の遅延差に相当する遅延を挿入する。この遅延は、サンプル遅延量をずらすことで容易に実施できる。これにより、2つの信号のタイミングを揃えることで、全体の遅延量を帯域分割前の遅延量の半分に低減することができる。この例では、FFT処理の前端と後端の遅延量をそれぞれT/4に低減できる。
【0036】
なお、帯域分割タイミング調整部10のFFT演算部12の処理範囲Mは、波長分散補償部17のFFT演算部18の処理範囲Nと同じである必要はない。順次的にMデータずつ処理することで、
図7の最下段の図に示すように、波長分散による遅延量を処理前の半分にしたサンプルデータ列を作ることができる。各帯域における信号の遅延量が比較例と比べて1/2になったため、波長分散補償部17のFFT処理におけるオーバーラップ量も半分にすることができる。なお、本実施の形態では帯域分割タイミング調整部10にFFTを用いた例を示したが、これに限らず、帯域フィルタ等、周波数を分ける方法であればよい。
【0037】
本実施の形態に係る波長分散補償部17の構成は比較例と基本的には同じであるが、逆伝達関数乗算部19の関数設定が異なる。
図8は、本発明の実施の形態1に係る波長分散補償部の動作原理を説明するための図である。
【0038】
帯域分割タイミング調整部10によって遅延調整された2つの信号における波長分散に関する遅延量が比較例の半分になった。従って、
図8の上段に示すように、波長分散補償部17のFFT処理のオーバーラップ量も、比較例の半分であるT/4にできる。更に、この信号の2つの周波数帯域にそれぞれ波長分散が生じていると考えられるため、逆伝達関数の乗算による補償はそれぞれの周波数帯域に対して実行される。具体的には、
図8に示した逆伝達関数のように、それぞれの周波数帯域に対する2次関数の共役値が逆伝達関数となる。
【0039】
本実施の形態では、オーバーラップ量は片側T/4サンプルである。FFT処理範囲はNサンプルのため、それから両側のオーバーラップ量を減ずると、1回のFFTで処理されるサンプル数はN−T/4×2となる。一方、比較例では、オーバーラップ量は片側T/2サンプルであるため、1回のFFTで処理されるサンプル数はN−T/2×2となる。FFT処理範囲Nの半分をオーバーラップとする1/2オーバーラップFFTの場合、N=T/2×2×2=2Tとなる。従って、1回のFFTで処理されるサンプル数は、比較例ではN−T/2×2=Tとなり、本実施の形態ではN−T/4×2=(3/2)Tとなる。よって、本実施の形態の処理速度は比較例と比べて1.5倍となる。また、オーバーラップの処理に要する電力も半減できる。
【0040】
図9は、本発明の実施の形態1に係る波長分散補償装置を一般化した例を示す図である。この例では、上記の実施の形態を更に一般化して複数の周波数帯域に分けて処理する。即ち、帯域分割タイミング調整部10は、波長分散によって周波数に応じて遅延した受信信号を複数の周波数帯域ごとに分割する。具体的には、FFT演算部12が、入力した信号をFFTによって周波数領域に変換し、複数の周波数帯域ごとに分割して出力する。複数のIFFT演算部13,14が、FFT演算部12の複数の出力信号をそれぞれ時間領域へ変換して複数の信号を得る。遅延部15が、それらの複数の信号の遅延量を調整してタイミングを時間領域において揃える。結合部16が、タイミングを揃えた複数の信号を結合する。
【0041】
波長分散補償部17は、帯域分割タイミング調整部10の出力信号の波長分散を複数の周波数帯域ごとに補償する。具体的には、FFT演算部18が、入力した信号をFFTによって周波数領域に変換する。逆伝達関数乗算部19が、FFT演算部18の出力信号に複数の周波数帯域ごとに各周波数帯域に応じた波長分散を補償する逆伝達関数を乗算する。IFFT演算部20が、逆伝達関数乗算部19の出力信号を逆フーリエ変換によって時間領域に変換する。
【0042】
分割された複数の信号の各周波数帯域は元の受信信号の周波数帯域に比べて小さいため、分割された各信号における波長分散による遅延量も元の受信信号の遅延量より小さくなる。従って、各帯域における遅延量は分割前の帯域の遅延量よりも低減される。また、周波数帯域ごとに分割した複数の信号のタイミングを揃えることで全体の遅延量を低減することができる。従って、補償に要する処理を減らすことができるため、波長分散による遅延時間が大きい場合でも効率よく波長分散補償を行うことができる。
【0043】
また、波長分散補償部17におけるフーリエ変換などの補償処理において、隣接する処理範囲のオーバーラップ量は遅延量に応じて増大させる必要がある。これに対して、本実施の形態では、帯域分割タイミング調整部10が、複数の周波数帯域ごとに分割した複数の信号を時間領域においてシフト調整してタイミングを揃える。このため、波長分散による遅延時間が大きい場合でも波長分散補償のオーバーラップ量を増やさなくてもよい。よって、処理速度を向上させ、消費電力を限定することができる。本例では、周波数分割数が大きい程、効果も向上するが、その効果は飽和すると共に回路が複雑化する。実質的な分割数は、上記のバランスを考慮して決定することが望ましい。
【0044】
実施の形態2.
実施の形態1では、受信信号を帯域分割して時間領域で遅延調整を行い、その時間信号に対して波長分散補償を行う。これらは時間領域において独立的な線形処理であるので、順番を逆にしても同様の効果が得られる。
【0045】
図10は、本発明の実施の形態2に係る波長分散補償装置を示す図である。帯域分割タイミング調整部10と波長分散補償部17の配置が実施の形態1とは逆である。波長分散補償部17の構成は比較例と基本的には同じであるが、逆伝達関数乗算部19の関数設定が異なる。
【0046】
図11は、本発明の実施の形態2に係る波長分散補償部の動作を説明するための図である。受信信号には、波長分散によって周波数帯域に対してTサンプルの遅延が生じている。なお、FFT処理範囲内に描かれている太字で囲まれている平行四辺形は、周波数帯域に対する遅延を分りやすく表現するために便宜上描いているもので、補償されるデータのみを表してはいない。
【0047】
波長分散補償部17は、実施の形態1と同様の処理を行う。即ち、オーバーラップ量をFFT処理範囲の前端と後端で片側T/4サンプルとしてFFT処理を行い、そのオーバーラップ量で処理できる遅延量に対応する周波数帯域に分ける。その分けた周波数帯域ごとに逆伝達関数を設定することで、一度の乗算で補償処理を行う。
【0048】
これにより各周波数帯域で補償が行われるが、
図11の上段の右端に示すように、補償された2つの周波数帯域の信号間には補償前の2つの周波数帯域の信号間の遅延差とほぼ同じ遅延差が生じる。次のFFT処理範囲においても同様の信号が形成される。この遅延差を持った2つの周波数帯域の信号が時間領域において帯域分割タイミング調整部10に供給される。
【0049】
図12は、本発明の実施の形態2に係る帯域分割タイミング調整部の動作を説明するための図である。FFT演算部12が、帯域分割タイミング調整部10に入力された信号をFFTにより再び周波数領域に変換し、波長分散補償部17で分けた周波数帯域ごとに分割する。IFFT演算部13,14が、それぞれの信号をIFFTにより時間領域の信号にする。遅延部15が、時間領域に戻した2つの信号の片側に、2つの信号の遅延差に相当する遅延を挿入して2つの信号のタイミングを揃える。次に、結合部16が、シフト調整した2つの信号を結合する。
【0050】
上記の処理により、実施の形態1と同様に、波長分散補償部17でのFFT処理のオーバーラップ量を比較例のオーバーラップ量よりも半減できる。従って、FFT処理範囲からオーバーラップ量を減じた1回当たりのFFT処理量及び処理速度は比較例の1.5倍となる。また、オーバーラップの処理に要する電力を半減できる。
【0051】
図13は、本発明の実施の形態2に係る波長分散補償装置を一般化した例を示す図である。この例では、上記の実施の形態を更に一般化して複数の周波数帯域に分けて処理する。
【0052】
波長分散補償部17の逆伝達関数乗算部19には、複数の周波数帯域ごとに、それぞれの波長分散によって生じる遅延を補償する逆伝達関数が設定される。分割数をpとすると、分割後の各周波数帯域の遅延量は分割前の遅延量の1/pとなる。従って、FFT処理におけるオーバーラップ量も分割前の1/pに減らすことができる。この波長分散補償部17によって補償された受信信号では、時間領域において、複数の周波数帯域の間で1/pの遅延量とほぼ等しい遅延差が生じる。そこで、帯域分割タイミング調整部10において、複数の周波数帯域ごとに信号を分割した後、複数の遅延部15が複数の信号を時間領域においてシフト調整して波長分散による遅延量を揃える。これにより、実施の形態1と同様に、複数の周波数帯域の信号のタイミングが一致するように調整される。
【0053】
これにより、波長分散補償部17のFFT処理のオーバーラップ量を
図10の例よりも低減することができる。その分、1回当たりのFFT処理量を増大できるため、処理速度が速くなる。また、オーバーラップの処理に要する電力を1/pにできる。本例では、周波数分割数が大きい程、効果も向上するが、その効果は飽和すると共に回路が複雑化する。実質的な分割数は、上記のバランスを考慮して決定することが望ましい。
【0054】
なお、実施の形態1,2では、波長分散補償部17をFFTで構成する例を示したが、この構成に限定されない。例えば、
図10および
図13のIFFT演算部20とFFT演算部12が、
図10および
図13のように接続された場合、データに対して恒等的な演算となるため、これを省略することができる。即ち、逆伝達関数乗算部19の出力を直接的に周波数分割部11のIFFT演算部に入力できる。この場合、FFT演算のポイント数に差があっても、分割する周波数帯域をほぼ同じにすればよい。波長分散補償部17が所定の数のデータ(有限のサンプルデータ)を処理範囲として順次的に補償処理を行い、隣接する処理範囲の間で一部のデータが共通となるオーバーラップ部分が存在すればよい。この場合において、周波数帯域を分割して各帯域の遅延を低減する帯域分割タイミング調整部10を組み合わせることで、上記と同様にオーバーラップ量を低減することができる。例えば、波長分散補償部17は、有限インパルス応答(FIR)フィルタでも構成できる。この場合、複数の周波数帯域ごとに各周波数帯域に応じた波長分散を補償する上述の逆伝達関数を逆フーリエ変換して生成したインパルス応答を有限インパルス応答フィルタのフィルタ係数として使用することができる。この方法はトランスバーサルフィルタとして用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0055】
また、実施の形態1,2の波長分散補償方法を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステム又はプログラマブルロジックデバイスに読み込ませ、実行することにより波長分散補償を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。