(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記B層を含む位相差フィルムが、固有複屈折値が負の熱可塑性樹脂bからなるb層を有する延伸前フィルムを延伸して得られるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の位相差フィルム積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
【0022】
本発明において、フィルム又は層の面内レターデーション(面内位相差)は、別に断らない限り、(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルム又は層の厚さ方向のレターデーション(厚さ方向の位相差)は、別に断らない限り、{|nx+ny|/2−nz}×dで表される値である。ここで、nxはフィルム又は層の厚さ方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表わし、nyは前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表し、nzは厚さ方向の屈折率を表し、dはフィルム又は層の厚さを表す。
【0023】
また、以下の説明において、固有複屈折が正であるとは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなることを意味する。また、固有複屈折が負であるとは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなることを意味する。固有複屈折の値は誘電率分布から計算することができる。
【0024】
[位相差フィルム積層体]
本発明の位相差フィルム積層体は、正の屈折率異方性を有するA層と、負の屈折率異方性を有するB層とを含んでなる複層構造のフィルムである。
【0025】
[A層]
A層は、液晶性化合物aを硬化してなる層であって、正の屈折率異方性を有する層である。ここで正の屈折率異方性を有するとは、層の面内に屈折率の最大方位が存在することを表す。
【0026】
A層の波長550nmにおける面内レターデーションRea
550は、好ましくは30nm以上、より好ましくは60nm以上であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは130nm以下である。Rea
550がこの範囲であると、本発明の位相差フィルム積層体を用いて得られる液晶表示装置の光漏れを抑制することができる。
【0027】
またA層は、波長450nmにおける面内レターデーションRea
450及び波長550nmにおける面内レターデーションRe
550が、0.80<Rea
450/Rea
550<0.92を満たす。A層のRea
450/Re
550は、0.90以下であることが好ましく、0.88以下であることがより好ましい。またA層は、Rea
550及び波長650nmにおける面内レターデーションRea
650が、Rea
650/Rea
550>1の関係を満たすことが好ましい。Rea
450、Rea
550及びRea
650がこれらの関係を満たすことにより、広い波長範囲において高い偏光板補償の効果を得ることができる。また、Rea
650/Rea
550の上限は、好ましくは1.2以下である。
【0028】
[液晶性化合物a]
液晶性化合物aは、それを硬化して得られるA層のRea
450及びRea
550が上記の関係を満たしうる化合物であれば限定されない。液晶性化合物aは、実用的な低い融点を有し、汎用溶媒に対する溶解性に優れ、低コストで製造可能で、かつ、広い波長域において偏光変換が可能との観点から、下記式(I)または(II)で表される重合性化合物が好ましい。
【0031】
式(I)において、Y
1〜Y
6はそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−、−C(=O)−NR
1−、−O−C(=O)−NR
1−、−NR
1−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−NR
1−、−O−NR
1−、又は、−NR
1−O−を表す。
ここで、R
1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0032】
R
1の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。
R
1としては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0033】
これらの中でも、Y
1〜Y
6は、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−であることが好ましい。
【0034】
G
1、G
2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族基を表す。
炭素数1〜20の2価の脂肪族基としては、例えば、鎖状構造を有する脂肪族基;飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造等の脂環式構造を有する脂肪族基;等が挙げられる。
【0035】
前記炭素数1〜20の2価の脂肪族基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシル基;等が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0036】
また、該脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
2−C(=O)−、−C(=O)−NR
2−、−NR
2−、又は−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。これらの中でも、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−C(=O)−が好ましい。
【0037】
ここで、R
2は、前記R
1と同様の、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0038】
これらの基が介在する脂肪族基の具体例としては、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−S−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−O−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−、−CH
2−O−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−NR
2−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−NR
2−CH
2−、−CH
2−NR
2−CH
2−CH
2−、−CH
2−C(=O)−CH
2−等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、G
1、G
2としては、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基〔−(CH
2)4−〕、及び、ヘキサメチレン基〔−(CH
2)
6−〕が特に好ましい。
【0040】
Z
1、Z
2はそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
該アルケニル基の炭素数としては、2〜6が好ましい。Z
1及びZ
2のアルケニル基の置換基であるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0041】
Z
1及びZ
2の炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
2=CH−CH
2−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−CH
2−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、CH
3−CH=CH−CH
2−等が挙げられる。
【0042】
なかでも、Z
1及びZ
2としては、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、それぞれ独立して、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、又は、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−であることが好ましく、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、又は、CH
2=C(Cl)−であることがより好ましく、CH
2=CH−であることが更に好ましい。
【0043】
A
xは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
本発明において、「芳香環」は、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造、すなわち、π電子を(4n+2)個有する環状共役構造及びチオフェン、フラン等に代表される硫黄、酸素等のヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示すものを意味する。
【0044】
A
xの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基は、芳香環を複数個有するものであってもよく、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を有するものであってもよい。
【0045】
前記芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環等が挙げられる。前記芳香族複素環としては、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の5員環芳香族複素環;ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の6員環芳香族複素環;ベンズイミダゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、カルバゾール環等の縮合環芳香族複素環;等が挙げられる。
【0046】
A
xが有する芳香環は任意の位置に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシル基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−OR基;−SO
2R基;等が挙げられる。ここでRは、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を表す。
【0047】
また、A
xが有する芳香環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であっても、縮合多環であってもよい。
なお、A
xの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する。また、後述するA
yにおいても、炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する。
【0048】
A
xの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、例えば、芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜30のアルキル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルケニル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルキニル基;等が挙げられる。
【0049】
A
yは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
【0050】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。
【0051】
前記置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシル基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−OR基;−SO
2R基;等が挙げられる。ここでRは前記と同じ意味を表す。
【0052】
A
yの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、例えば、前記A
xで例示したのと同様のものが挙げられる。
【0053】
A
yが有する芳香環は任意の位置に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、A
xが有する芳香環が有しうる置換基と同様の例が挙げられる。
【0054】
A
x、A
yの具体例を以下に示す。但し、本発明においては、A
x、A
yは以下に示すものに限定されるものではない。なお、下記化合物中、[−]は芳香環の結合手を示す(以下にて同じ。)。
【0059】
上記式中、Eは、NR
5、酸素原子又は硫黄原子を表す。ここで、R
5は、水素原子;又は、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;を表す。
【0061】
上記式中、X、Y、Zは、それぞれ独立して、NR
5、酸素原子、硫黄原子、−SO−又は、−SO
2−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO
2−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。R
5は前記と同じ意味を表す。
【0062】
上記した芳香環の中でも、下記のものが好ましい。
【0064】
これらの中でも、下記のものが特に好ましい。
【0066】
また、A
xとA
yは一緒になって、環を形成していてもよい。その中でも、置換基を有していてもよい炭素数4〜30の不飽和複素環、又は、炭素数6〜30の不飽和炭素環を形成していることが好ましい。
炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環としては、特に制約はなく、芳香族性を有していても有していなくてもよい。なかでも、下記に示す環が好ましい。なお、式中には、便宜上、環と窒素原子を結ぶ二重結合を示している(以下にて同じ)。
【0069】
(式中、X、Y、Zは、前記と同じ意味を表す。)
また、これらの環は置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ニトロ基、−C(=O)−OR基、−SO
2R基等が挙げられる。ここで、Rは前記と同じ意味を表す。
これらの中でも、A
xとA
yが一緒になって形成する環としては、下記に示すものが特に好ましい。
【0071】
式中、X及びYは前記と同じ意味を表す。その中でも、X、Yは、それぞれ硫黄原子、及び、NR
5(R
5は前記と同じ意味を表す。)であることが好ましい。
【0072】
A
xとA
yに含まれるπ電子の総数は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、4以上24以下であるのが好ましい。
【0073】
A
x、A
yの組み合わせとしては、A
xが炭素数4〜30の芳香族基であり、A
yが水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基である組み合わせ;及び、A
xとA
yが一緒になって、不飽和複素環又は不飽和炭素環を形成している組み合わせが好ましい。その中でも、A
xが下記構造を有する基であり、A
yが水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基である組み合わせ
【0075】
(式中、Xは前記と同じ意味を表す。)
;及び、A
xとA
yが一緒になって下記に示す環を形成している組み合わせがより好ましい。
【0077】
(式中、X、Yはそれぞれ前記と同じ意味を表す。)
A
1は置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。三価の芳香族基としては、三価の炭素環式芳香族基であっても、三価の複素環式芳香族基であってもよい。本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、三価の炭素環式芳香族基が好ましく、下記式に示す三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がより好ましい。なお、下記式においては、結合状態をより明確にすべく、置換基Y
1、Y
2を便宜上記載している(Y
1、Y
2は、前記と同じ意味を表す。以下にて同じ。)。
【0079】
なかでも、A
1としては、下記に示す式(A11)〜(A18)で表される基がさらに好ましく、式(A11)で表される基が特に好ましい。
【0081】
A
1の、三価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記A
xの芳香族基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。A
1としては、置換基を有さないものが好ましい。
【0082】
A
2、A
3はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。
A
2、A
3の芳香族基は単環のものであっても、多環のものであってもよい。
A
2、A
3の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0084】
上記A
2、A
3の具体例として挙げた有機基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ニトロ基、−C(=O)−OR
7基;等が挙げられる。ここでR
7は、炭素数1〜6のアルキル基である。これらの中でも、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシル基が好ましく、ハロゲン原子としてはフッ素原子が、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が、アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0085】
これらの中でも、A
2、A
3としては、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、下記式(A21)及び(A22)で表される基が好ましく、置換基を有していてもよい式(A21)で表される基がより好ましい。
【0087】
Q
1は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、前記A
xで例示したのと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、Q
1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0088】
式(II)において、Y
1〜Y
6、G
1、G
2、Z
1、Z
2、A
x、A
2、A
3およびQ
1は、前記と同じ意味を表す。
【0089】
A
zは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、−C(=O)−R
3、−SO
2−R
6、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
【0090】
A
zの、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基の炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0091】
A
zの、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロピル基等の炭素数1〜6のアルコキシル基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;−C(=O)−R
4;−C(=O)−OR
4;−SO
2R
4;等が挙げられる。ここでR
4は前記と同じ意味を表す。
【0092】
A
zの、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基の炭素数2〜12のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。
【0093】
A
zの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0094】
A
zの、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、及び置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロピル基等の炭素数1〜6のアルコキシル基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;−C(=O)−R
4;−C(=O)−OR
4;−SO
2R
4;等が挙げられる。ここでR
4は前記と同じ意味を表す。
【0095】
A
zの、−C(=O)−R
3で表される基において、R
3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。これらの具体例は、前記A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の例として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0096】
A
zの、−SO
2−R
6で表される基において、R
6は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
R
6の、炭素数1〜12のアルキル基、及び炭素数2〜12のアルケニル基の具体例は、前記A
zの、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基の例として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0097】
前記A
zが有する芳香環は置換基を有していてもよい。
A
zの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、例えば、前記A
xで例示したのと同様のものが挙げられる。
また、A
zが有する芳香環は、任意の位置に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、前記A
xが有する芳香環の置換基として列記したものと同様のものが挙げられる。
A
zが有する芳香環の具体例としては、前記A
xが有する芳香環の具体例として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0098】
また、A
xとA
zは一緒になって、環を形成していてもよい。その中でも、置換基を有していてもよい炭素数4〜30の不飽和複素環、又は、炭素数6〜30の不飽和炭素環を形成していることが好ましい。
炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環としては、特に制約はなく、芳香族性を有していても有していなくてもよい。例えば、下記に示す環が挙げられる。なお、下記に示す環は、式(II)中の
【0100】
として表される部分を示すものである。
【0104】
式中、X、Y、Zは、前記と同じ意味を表す。
また、これらの環は置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ニトロ基、−C(=O)−R
4、−C(=O)−OR
4、−SO
2R
4等が挙げられる。ここで、R
4は前記と同じ意味を表す。
【0105】
A
xとA
zに含まれるπ電子の総数は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、4以上24以下であるのが好ましく、6以上18以下であるのがより好ましい。
【0106】
A
x、A
zの好ましい組み合わせとしては、A
xが炭素数4〜30の芳香族基で、A
zが水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基である組合わせ;及び、A
xとA
zが一緒になって不飽和複素環又は不飽和炭素環を形成している組み合わせが挙げられる。置換基を有していてもよいアルキル基の置換基として好ましいものは、例えば、シクロアルキル基、シアノ基、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。
【0107】
更に好ましい組み合わせとしては、A
xが下記構造でありA
zが水素原子である組み合わせ;及び、A
xが下記構造でありA
zが置換基を有していてもよいアルキル基である組合わせである。
【0110】
特に好ましい組み合わせとしては、A
xが下記構造であり、A
zが水素原子である組み合わせ;及び、A
xが下記構造であり、A
zが置換基を有していてもよいアルキル基である組合せである。置換基を有していてもよいアルキル基の置換基として好ましいものは、例えば、シクロアルキル基、シアノ基、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。式中、X、Yは、前記と同じ意味を表す。
【0112】
A
4は置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。三価の芳香族基としては、三価の炭素環式芳香族基であっても、三価の複素環式芳香族基であってもよい。本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、三価の炭素環式芳香族基が好ましく、下記式に示す三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がより好ましい。なお、下記式においては、結合状態をより明確にすべく、置換基Y
1、Y
2を便宜上記載している(Y
1、Y
2は、前記と同じ意味を表す。以下にて同じ。)。
【0114】
なかでも、A
4としては、下記に示す式(A41)〜(A52)で表される基がさらに好ましく、式(A41)で表される基が特に好ましい。
【0116】
A
4の、三価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記A
xの芳香族基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。A
4としては、置換基を有さないものが好ましい。
【0117】
[液晶性化合物aの製造方法]
式(I)で表される重合性化合物は、例えば、下記に示す製造方法1、又は製造方法2により製造することができる。
(製造方法1)
【0119】
(式中、Y
1〜Y
6、G
1、G
2、Z
1、Z
2、A
x、A
y、A
1〜A
3、Q
1は、前記と同じ意味を表す。)
すなわち、式(3)で表されるヒドラゾン化合物(ヒドラゾン化合物(3))を、式(4)で表されるカルボニル化合物(カルボニル化合物(4))と反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする式(I)で示される重合性化合物を製造することができる。この際、(ヒドラゾン化合物(3):カルボニル化合物(4))のモル比は、通常1:2〜2:1であり、好ましくは1:1.5〜1.5:1である。
【0120】
この場合、例えば(±)−10−カンファースルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸;塩酸、硫酸等の無機酸;等の酸触媒を添加して反応を行うことができる。酸触媒を添加することで反応時間が短縮され、収率が向上する場合がある。酸触媒の添加量は、カルボニル化合物(4)1モルに対して、通常0.001モル〜1モルである。また、酸触媒はそのまま添加してもよいし、適当な溶液に溶解させた溶液として添加してもよい。
【0121】
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及びアルコール系溶媒とエーテル系溶媒の混合溶媒が好ましい。
【0122】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドラゾン化合物(3)1gに対し、通常1g〜100gである。
【0123】
反応は、−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。各反応の反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
【0124】
(製造方法2)
前記式(I)で示される重合性化合物のうち、前記式(I)中、式:Z
2−Y
6−G
2−Y
4−A
3−Y
2−で表される基が、式:Z
1−Y
5−G
1−Y
3−A
2−Y
1−で表される基と同一であり、且つ、Y
1が、Y
11−C(=O)−O−で表される基である化合物を、化合物(I’)と呼ぶ。この化合物(I’)は、以下に示す、工程1、工程2により製造することができる。
【0126】
(式中、Y
3、Y
5、G
1、Z
1、A
x、A
y、A
1、A
2、Q
1は、前記と同じ意味を表す。Y
11は、Y
11−C(=O)−O−がY
1となる基を表す。Y
1は前記と同じ意味を表す。Lは、例えば水酸基、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。)
【0127】
すなわち、分子内に、式:−C(=O)−Q
1で表される基(Q
1は前記と同じ意味を表す。)を有するジヒドロキシ化合物(ジヒドロキシ化合物(5))と、ヒドラゾン化合物(3)とを反応させて、ヒドロキシ化合物(7)を得た後(工程1)、このものと、2倍当量以上の式(8)で表される化合物とを反応させることにより(工程2)、式(I’)で表される化合物を得ることができる。
【0128】
工程1は、溶媒中、ジヒドロキシ化合物(5)とヒドラゾン化合物(3)を反応させて、ヒドロキシ化合物(7)を得る工程である。この際、(ジヒドロキシ化合物(5):ヒドラゾン化合物(3))のモル比は、通常1:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:3である。
【0129】
工程1の反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。
用いる溶媒としては、前記製造方法1で例示したのと同様のものが挙げられる。溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドラゾン化合物(3)1gに対し、通常1g〜100gである。
【0130】
工程2は、得られたヒドロキシ化合物(7)を精製した後、あるいは精製することなく、ヒドロキシ化合物(7)と式(8)で表される化合物(化合物(8))とを反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする化合物(I’)を製造する工程である。この際、(化合物(7):化合物(8))のモル比は、通常1:2〜1:4、好ましくは1:2〜1:3である。
【0131】
式(8)中、Lが水酸基の化合物(カルボン酸)である場合には、工程2において、例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下にヒドロキシ化合物(7)と化合物(8)とを反応させることにより、目的物を得ることができる。
脱水縮合剤の使用量は、化合物(8)1モルに対し、通常1モル〜3モルである。
【0132】
また、式(8)中、Lがハロゲン原子の化合物(酸ハライド)である場合には、塩基の存在下にヒドロキシ化合物(7)と化合物(8)とを反応させることにより、目的物を得ることができる。
用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(8)1モルに対し、通常1モル〜3モルである。
式(8)中、Lがメタンスルホニルオキシ基、又はp−トルエンスルホニルオキシ基の化合物(混合酸無水物)である場合、Lがハロゲン原子の場合と同様である。
【0133】
工程2で用いる溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;及びこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドロキシ化合物(7)1gに対し、通常1g〜50gである。
ヒドラゾン化合物(3)は、次のようにして製造することができる。
【0135】
すなわち、式(2)で表されるカルボニル化合物とヒドラジン(1)を、適当な溶媒中で反応させて、対応するヒドラゾン化合物(3)を得ることができる。この際、(カルボニル化合物(2):ヒドラジン(1))のモル比は、通常1:1〜1:20、好ましくは1:2〜1:10である。
【0136】
ヒドラジンとしては、通常1水和物のものを用いる。ヒドラジンは、市販品をそのまま使用することができる。
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及びアルコール系溶媒とエーテル系溶媒の混合溶媒が好ましい。
【0137】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドラジン1gに対し、通常1g〜100gである。
反応は、−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。各反応の反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
【0138】
また、上記方法で用いる式(7)で表される化合物は、下記に示す方法によっても得ることができる。
【0140】
すなわち、ジヒドロキシ化合物(5)にヒドラジンを反応させて、式(9)で表されるヒドラゾン化合物を得、このものに式(10)で表されるカルボニル化合物を反応させることによっても、式(7)で表される化合物を得ることができる。
【0141】
前記式(4)で表される化合物、及び式(8)で表される化合物は、典型的には、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)及びアミド結合(−C(=O)NH−、−NHC(=O)−)の形成反応を任意に組み合わせて、所望の構造を有する複数の公知化合物を適宜結合又は修飾することにより製造することができる。
【0142】
エーテル結合の形成は、例えば、以下のようにして行うことができる。
(i)式:D1−hal(halはハロゲン原子を表す。以下にて同じ。)で表される化合物と、式:D2−OMet(Metはアルカリ金属(主にナトリウム)を表す。以下にて同じ。)で表される化合物とを混合して縮合させる(ウイリアムソン合成)。なお、式中、D1及びD2は任意の有機基を表す(以下にて同じ。)。
(ii)式:D1−halで表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iii)式:D1−E(Eはエポキシ基を表す。)で表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iv)式:D1−OFN(OFNは不飽和結合を有する基を表す。)で表される化合物と、式:D2−OMetで表される化合物を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して付加反応させる。
(v)式:D1−halで表される化合物と、式:D2−OMetで表される化合物とを、銅あるいは塩化第一銅存在下、混合して縮合させる(ウルマン縮合)。
【0143】
エステル結合及びアミド結合の形成は、例えば、以下のようにして行うことができる。
(vi)式:D1−COOHで表される化合物と、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、脱水縮合剤(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド等)の存在下に脱水縮合させる。
(vii)式:D1−COOHで表される化合物にハロゲン化剤を作用させることにより、式:D1−CO−halで表される化合物を得る。この式:D1−CO−halで表される化合物と式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、塩基の存在下に反応させる。
(viii)式:D1−COOHで表される化合物に酸無水物を作用させることにより、混合酸無水物を得る。この混合酸無水物に、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物を反応させる。
(ix)式:D1−COOHで表される化合物と、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、酸触媒あるいは塩基触媒の存在下に脱水縮合させる。
【0144】
いずれの反応においても、反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作を行い、所望により、カラムクロマトグラフィー、再結晶法、蒸留法等の公知の分離・精製手段を施すことにより、目的物を単離することができる。
【0145】
目的とする化合物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定することができる。
【0146】
式(II)で表される重合性化合物は、例えば、下記に示す製造方法3により製造することができる。
(製造方法3)
【0148】
(式中、Y
1〜Y
6、G
1、G
2、Z
1、Z
2、A
x、A
z、A
2〜A
4、Q
1は、前記と同じ意味を表す。)
すなわち、式(11)で表されるヒドラジン化合物(ヒドラジン化合物(11))を、式(12)で表されるカルボニル化合物(カルボニル化合物(12))と反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする式(II)で示される重合性化合物を製造することができる。この際、〔ヒドラジン化合物(11):カルボニル化合物(12)〕のモル比は、通常1:2〜2:1、好ましくは1:1.5〜1.5:1である。
【0149】
この反応において使用できる酸触媒および溶媒、ならびに反応温度および反応時間は、前記式(I)で示される重合性化合物の製造方法1と同様である。
【0150】
ヒドラジン化合物(11)は、次のようにして製造することができる。
【0152】
(式中、A
x、A
zは、前記と同じ意味を表す。Xは、例えばハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。)
【0153】
すなわち、式(2a)で表される化合物とヒドラジン(1)を、適当な溶媒中で反応させて、対応するヒドラジン化合物(3a)を得ることができる。この際、(化合物(2a):ヒドラジン(1))のモル比は、通常1:1〜1:20、好ましくは1:2〜1:10である。さらに、ヒドラジン化合物(3a)と式(2b)で表される化合物を反応させることで、ヒドラジン化合物(11)を得ることができる。
【0154】
ヒドラジン(1)としては、通常1水和物のものを用いる。ヒドラジン(1)は、市販品をそのまま使用することができる。
この反応に用いる溶媒は、前記ヒドラゾン化合物(3)の製造に使用可能な溶媒と同様のものをいずれも用いることができる。
【0155】
また、ヒドラジン化合物(11)は、次のように、従来公知の方法を用いて、ジアゾニウム塩(13)を還元することによっても製造することができる。
【0157】
式(13)中、A
x、A
zは、前記と同じ意味を表す。X
−は、ジアゾニウムに対する対イオンである陰イオンを示す。X
−としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン等の無機陰イオン;ポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン等の有機陰イオン;等が挙げられる。
【0158】
上記反応に用いる還元剤としては、例えば、金属塩還元剤が挙げられる。
金属塩還元剤とは一般に低原子価金属を含む化合物、もしくは金属イオンとヒドリド源からなる化合物である(「有機合成実験法ハンドブック」1990年社団法人有機合成化学協会編 丸善株式会社発行810ページを参照)。
金属塩還元剤としては、例えば、NaAlH
4、NaAlH
n(OR)
m、LiAlH
4、iBu
2AlH、LiBH
4、NaBH
4、SnCl
2、CrCl
2、TiCl
3等が挙げられる。
【0159】
還元反応においては公知の反応条件を採用することができる。例えば、特開2005−336103号公報、新実験化学講座 1978年 丸善株式会社発行 14巻、実験化学講座 1992年 丸善株式会社発行 20巻、等の文献に記載の条件で反応を行うことができる。
また、ジアゾニウム塩(13)は、アニリン等の化合物から常法により製造することができる。
【0160】
式(12)で表される化合物は、前記式(4)で表される化合物、及び式(8)で表される化合物と同様の方法で製造することができる。
【0161】
例えば、式(12)で表される化合物のうち、前記式(12)中、式:Z
2−Y
6−G
2−Y
4−A
3−Y
2−で表される基が、式:Z
1−Y
5−G
1−Y
3−A
2−Y
1−で表される基と同一であり、且つ、Y
1が、Y
11−C(=O)−O−で表される基である化合物を、化合物(12’)と呼ぶ。この化合物(12’)は、例えば、以下に示す反応により製造することができる。
【0163】
(式中、Y
3、Y
5、G
1、Z
1、A
2、A
4、Q
1は、前記と同じ意味を表す。Y
11は、Y
11−C(=O)−O−がY
1となる基を表す。Y
1は前記と同じ意味を表す。Lは、例えば、水酸基、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。)
【0164】
上記反応においては、式(14)で表されるジヒドロキシ化合物(化合物(14))と式(15)で表される化合物(化合物(15))とを反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする化合物(12’)を得ることができる。この際、(化合物(14):化合物(15))のモル比は、通常1:2〜1:4、好ましくは1:2〜1:3である。
【0165】
式(15)中、Lが水酸基の化合物(カルボン酸)である場合には、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下に化合物(14)と化合物(15)とを反応させることにより、目的物を得ることができる。
脱水縮合剤の使用量は、化合物(15)1モルに対し、通常1モル〜3モルである。
【0166】
また、式(15)中、Lがハロゲン原子の化合物(酸ハライド)である場合には、塩基の存在下に化合物(14)と化合物(15)とを反応させることにより、目的物を得ることができる。
用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(15)1モルに対し、通常1モル〜3モルである。
式(15)中、Lがメタンスルホニルオキシ基、又はp−トルエンスルホニルオキシ基の化合物(混合酸無水物)である場合、Lがハロゲン原子の場合と同様である。
【0167】
上記反応に用いる溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;及びこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドロキシ化合物(14)1gに対し、通常1g〜50gである。
【0168】
化合物(15)の多くは公知化合物であり、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)及びアミド結合(−C(=O)NH−、−NHC(=O)−)の形成反応を任意に組合わせて、所望の構造を有する複数の公知化合物を適宜結合又は修飾することにより製造することができる。
【0169】
いずれの反応においても、反応終了後の化合物の単離および同定は、前記式(I)で示される化合物の製造と同様に行うことができる。
【0170】
上記のほか、特開2002−267838号公報、特開2005−208414号公報、特開2005−208415号公報、特開2005−208416号公報、特開2005−289980号公報、特開2006−330710号公報、特開2009−179563号公報、特開2010−31223号公報、特表2010−537954号公報、特表2010−537955号公報、特開2011−6360号公報および特開2011−6361号公報などに開示される液晶性化合物も、本発明における液晶性化合物aとして使用することができる。
【0171】
かかる液晶性化合物aの中でも、前記式(I)で表される化合物である下記化合物1、ならびに前記式(II)で表される化合物である下記化合物2および化合物3が特に好ましい。これらの化合物を用いることにより、Rea
450、Rea
550及びRea
650が上記の関係を満たすA層を容易に得ることができる。
【0175】
[液晶性化合物aを含む重合性組成物]
液晶性化合物aは好ましくは、重合開始剤を用いて硬化される。重合開始剤は液晶性化合物aの重合反応をより効率的に行う観点から配合される。重合開始剤は、好ましくは、重合開始剤および液晶性化合物aを含有する重合性組成物aとして用いられる。
【0176】
用いる重合開始剤としては、重合性化合物が有する重合性基の種類に応じて適宜なものを選択して使用しうる。例えば、重合性基がラジカル重合性であればラジカル重合開始剤を、アニオン重合性の基であればアニオン重合開始剤を、カチオン重合性の基であればカチオン重合開始剤を、それぞれ使用しうる。ラジカル重合開始剤としては、熱ラジカル発生剤と光ラジカル発生剤のいずれも使用可能であるが、光ラジカル発生剤を使用するのが好適である。
【0177】
光ラジカル発生剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。これらの化合物は、露光によって活性ラジカル又は活性酸、あるいは活性ラジカルと活性酸の両方を発生する成分である。光ラジカル発生剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0178】
アセトフェノン系化合物の具体例としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル・フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−オクタンジオン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4’−モルフォリノブチロフェノン等を挙げることができる。
【0179】
ビイミダゾール系化合物の具体例としては、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0180】
本発明においては、光重合開始剤としてビイミダゾール系化合物を用いる場合、水素供与体を併用することが、感度をさらに改良することができる点で好ましい。
「水素供与体」とは、露光によりビイミダゾール系化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味する。水素供与体としては、下記で定義するメルカプタン系化合物、アミン系化合物等が好ましい。
【0181】
メルカプタン系化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−2,5−ジメチルアミノピリジン等を挙げることができる。
アミン系化合物としては、例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾニトリル等を挙げることができる。
【0182】
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル基を有するトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0183】
O−アシルオキシム系化合物の具体例としては、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−ヘプタン−1,2−ジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−オクタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−〔4−(ベンゾイル)フェニル〕−オクタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン1−(O−アセチルオキシム)、1−[9−エチル−6−(3−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン1−(O−アセチルオキシム)、1−(9−エチル−6−ベンゾイル−9H−カルバゾール−3−イル)−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)ベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等を挙げることができる。
【0184】
光ラジカル発生剤は市販品をそのまま用いることもできる。具体例としては、例えば、BASF社製の、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure184、商品名:Irgacure369、商品名:Irgacure651、商品名:Irgacure819、及び商品名:Irgacure OXE02、ADEKA社製の、商品名:アデカオプトマーN1919等が挙げられる。
【0185】
前記アニオン重合開始剤としては、例えば、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩又はモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;等が挙げられる。
【0186】
また、前記カチオン重合開始剤としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩又は芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
これらの重合開始剤は一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
重合性組成物aにおいて、重合開始剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、0.1重量部〜30重量部、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。
【0187】
また、重合性組成物aには、表面張力を調整するために、界面活性剤を配合することが好ましい。当該界面活性剤としては、特に限定はないが、通常、ノニオン系界面活性剤が好ましい。当該ノニオン系界面活性剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、分子量が数千程度のオリゴマーであるノニオン系界面活性剤、例えば、セイミケミカル(株)製KH−40等が挙げられる。本発明の重合性組成物において、界面活性剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常0.01重量部〜10重量部、好ましくは0.1重量部〜2重量部である。
【0188】
また、重合性組成物aには、さらに、後述の任意の共重合可能な単量体、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等の、任意の添加剤を配合してもよい。重合性組成物aにおいて、任意の添加剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、各々0.1重量部〜20重量部である。
【0189】
重合性組成物aは、通常、液晶性化合物a、重合開始剤、及び所望により任意の添加剤の所定量を適当な有機溶媒に混合又は溶解させることにより、調製することができる。
【0190】
用いる有機溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;等が挙げられる。
【0191】
[液晶性化合物aの硬化]
液晶性化合物aを硬化することで、A層が得られる。ここで「硬化」とは、液晶性化合物aを重合及び/又は架橋させることにより高分子化することを意味する。液晶性化合物aを硬化して高分子を得る方法としては、(1)液晶性化合物aを硬化する方法、又は、(2)前記の重合性組成物aを硬化する方法が挙げられる。
【0192】
液晶性化合物aを重合して得られる高分子としては、液晶性化合物aの単独重合体、2種以上の液晶性化合物aからなる共重合体、又は、液晶性化合物aと他の任意の共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。
【0193】
前記任意の共重合可能な単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−メトキシフェニル、4−(6−メタクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸ビフェニル、4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロリルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロリルオキシエチルオキシ)安息香酸−3’,4’−ジフルオロフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸ナフチル、4−アクリロイルオキシ−4’−デシルビフェニル、4−アクリロイルオキシ−4’−シアノビフェニル、4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−メトキシビフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−(4”−フルオロベンジルオキシ)−ビフェニル、4−アクリロイルオキシ−4’−プロピルシクロヘキシルフェニル、4−メタクリロイル−4’−ブチルビシクロヘキシル、4−アクリロイル−4’−アミルトラン、4−アクリロイル−4’−(3,4−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシル、4−(2−アクリロイルオキシエチル)安息香酸(4−アミルフェニル)、4−(2−アクリロイルオキシエチル)安息香酸(4−(4’−プロピルシクロヘキシル)フェニル)等が挙げられる。市販品としては、具体的にLC−242(商品;BASF社製)を挙げることができる。
【0194】
液晶性化合物a、及び必要に応じて用いられる任意の共重合可能な単量体等の重合及び共重合は、適当な重合開始剤の存在下に行うことができる。重合開始剤の使用割合としては、前記重合性組成物a中の液晶性化合物aに対する配合割合と同様にしうる。
【0195】
A層を構成する高分子が、液晶性化合物aと、任意の共重合可能な単量体との共重合体である場合、液晶性化合物aの単量体単位の含有量は、特に限定されるものではない。液晶性化合物aの単量体単位の含有量は、全構成単位に対して、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。かかる範囲にあれば、高分子のガラス転移温度(Tg)が高く、高い膜硬度が得られるため好ましい。
【0196】
前記(1)の方法は、より具体的には、例えば、下記の(A)の方法及び(B)の方法が挙げられる。
(A)適当な重合開始剤の存在下、液晶性化合物a、及び必要に応じて用いられる任意の共重合可能な単量体等との重合及び共重合を適当な有機溶媒中で行う。その後、目的とする高分子を単離し、得られる高分子を適当な有機溶媒に溶解して溶液を調製する。この溶液を適当な基板上に塗工する。得られた塗膜を乾燥後、所望により加熱することにより、液晶性化合物aを重合した高分子を得る方法。
(B)液晶性化合物a、及び必要に応じて用いられる任意の共重合可能な単量体等を重合開始剤と共に有機溶媒に溶解した溶液を、公知の塗工法により基板上に塗布する。その後、脱溶媒し、次いで加熱又は活性エネルギー線を照射することにより硬化を行う方法。
用いる重合開始剤としては、前記重合性組成物aの成分として例示したのと同様のものが挙げられる。
【0197】
前記(A)の方法で重合反応に用いる有機溶媒としては、不活性なものであれば、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性に優れる観点から、沸点が60℃〜250℃のものが好ましく、60℃〜150℃のものがより好ましい。
【0198】
(A)の方法による場合、高分子を溶解するための有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶剤;等が挙げられる。
【0199】
前記(B)の方法で用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶剤;等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いが容易な点から、溶媒の沸点が60℃〜200℃のものが好ましい。
【0200】
用いる基板としては、有機、無機を問わず、公知慣用の材質のものを使用することができる。例えば、有機材料としてはポリシクロオレフィン〔例えば、ゼオネックス、ゼオノア(登録商標;日本ゼオン社製)、アートン(登録商標;JSR社製)、及びアペル(登録商標;三井化学社製)〕、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン等が挙げられ、無機材料としてはシリコン、ガラス、方解石等が挙げられ、中でも有機材料が好ましい。
【0201】
また、用いる基板は、単層のものであっても、積層体であってもよい。
基板としては、有機材料が好ましく、この有機材料をフィルムとした樹脂フィルムが更に好ましく、樹脂フィルムとして後述するB層に用いる位相差フィルムを用いることが特に好ましい。基板としてかかる位相差フィルムを用いることで、B層上に直接A層を形成することが可能であり、少ない工程数で工業的有利に本発明の位相差フィルム積層体を製造することが可能となる。
【0202】
(A)の方法において高分子の溶液を基板に塗布する方法、(B)の方法において重合反応用の溶液を基板に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が挙げられる。
【0203】
前記(2)の方法では、重合性組成物aを重合することにより、A層を容易に得ることができる。本発明においては、重合反応をより効率的に行う観点から、前記したような重合開始剤、特に光重合開始剤を含む重合性組成物を用いることが好ましい。
【0204】
具体的には、前記(B)と同様の方法によってA層を形成することが好適である。即ち、重合性組成物aを、基板上に塗布し、重合する方法によって、A層を形成することが好適である。用いる基板としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0205】
重合性組成物aを基板上に塗布する方法としては、例えば、バーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、キャップコーティング、ディッピング法等の公知慣用のコーティング法が挙げられる。このとき、塗工性を高めるために、本発明の重合性組成物に公知慣用の有機溶媒を添加してもよい。この場合は、本発明の重合性組成物を基板上に塗布後、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等で有機溶媒を除去することが好ましい。
【0206】
液晶性化合物a又は重合性組成物aを硬化する方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられるが、加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。
【0207】
照射時の温度は、30℃以下とすることが好ましい。紫外線照射強度は、通常、1W/m
2〜10kW/m
2の範囲、好ましくは5W/m
2〜2kW/m
2の範囲である。
【0208】
液晶性化合物a又は重合性組成物aを硬化して得られる高分子は、基板から剥離した後にB層と積層しうる。また、液晶性化合物a又は重合性組成物aを硬化して得られる高分子は、基板としてB層に用いる位相差フィルムを用いて、そのまま本発明の位相差フィルム積層体として使用しうる。
【0209】
以上のようにして得られる高分子の数平均分子量は、好ましくは500〜500,000、更に好ましくは5,000〜300,000である。該数平均分子量がかかる範囲にあれば、高い膜硬度が得られ、取り扱い性にも優れるため望ましい。高分子の数平均分子量は、単分散のポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0210】
液晶性化合物aを硬化して得られる高分子は、架橋点が分子内で均一に存在すると推定され、架橋効率が高く、硬度に優れている。かかる高分子を用いることで、広い波長域において偏光変換が可能なA層を低コストで形成することができる。
【0211】
[A層の形成方法]
本発明におけるA層は、上記液晶性化合物aを硬化して得られる高分子を構成材料とする光学異方体である。A層は、好ましくは、基板上に配向膜を形成し、該配向膜上で上記液晶性化合物aを硬化することによって、形成することができる。
【0212】
配向膜は、有機半導体化合物を面内で一方向に配向規制するために基板の表面に形成される。
配向膜は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリマーを含有するものである。配向膜は、このようなポリマーを含有する溶液(配向膜用組成物)を基板上に膜状に塗布し、乾燥し、次いで、一方向にラビング処理等することで、得ることができる。
配向膜の厚さは0.001μm〜5μmであることが好ましく、0.001μm〜1μmであることがさらに好ましい。
【0213】
本発明においては、配向膜あるいは基板にラビング処理を施すことができる。ラビング処理の方法は、特に制限されないが、例えばナイロン等の合成繊維、木綿等の天然繊維からなる布やフェルトを巻き付けたロールで一定方向に配向膜を擦る方法が挙げられる。ラビング処理した時に発生する微粉末(異物)を除去して配向膜の表面を清浄な状態とするために、ラビング処理後に配向膜をイソプロピルアルコール等によって洗浄することが好ましい。
また、ラビング処理する方法以外に、配向膜の表面に偏光紫外線を照射する方法によっても、配向膜に規則性を持つ液晶層を面内で一方向に配向規制する機能を持たせることができる。
【0214】
本発明において、配向膜上で液晶性化合物aを硬化する方法としては、前記と同様の方法をいずれも適用することができる。
【0215】
また、液晶性化合物aを硬化する前には、基板又は配向膜上の液晶性化合物aを配向させることが好ましい。
【0216】
この光学異方体は、前記の高分子を構成材料としているので、低コストで製造可能で、かつ、広い波長域において偏光変換が可能である。
【0217】
[A層の厚さ]
液晶性化合物aを硬化することで、nx−nyで表される複屈折(即ち面内レターデーションを、層の厚さ(nm)で除した値)が大きいA層を容易に形成することができる。したがって、厚さが薄くても所望の面内レターデーションの値を有するA層を得ることができる。A層の厚さは、好ましくは0.5μm〜5μm、より好ましくは1μm〜3μmである。
【0218】
[B層]
B層は、負の屈折率異方性を有し、固有複屈折値が負の熱可塑性樹脂bからなる層である。ここで負の屈折率異方性を有するとは、層の厚さ方向に屈折率の最大方位が存在することを表す。
【0219】
[熱可塑性樹脂b]
熱可塑性樹脂bの固有複屈折値が負であるので、通常、熱可塑性樹脂bは固有複屈折値が負である重合体を含む。この重合体の例を挙げると、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体または他の任意のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体;ポリアクリロニトリル重合体、ポリメチルメタクリレート重合体、あるいはこれらの多元共重合ポリマーなどが挙げられる。また、ポリスチレン系重合体に含まれる任意のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、及びブタジエンが好ましいものとして挙げられる。これらの重合体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、レターデーションの発現性が高いという観点から、ポリスチレン系重合体が好ましく、さらに耐熱性が高いという点で、スチレン又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。この場合、スチレン系重合体100重量部に対して、無水マレイン酸を重合して形成される構造単位(無水マレイン酸単位)の量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、特に好ましくは15重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは28重量部以下、特に好ましくは26重量部以下である。
【0220】
熱可塑性樹脂bは配合剤を含んでいてもよい。配合剤の例を挙げると、層状結晶化合物;微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。中でも、紫外線吸収剤は、耐候性を向上させることができるので好ましい。また、配合剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0221】
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。好適な紫外線吸収剤の具体例を挙げると、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。特に好適なものとしては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)が挙げられる。
【0222】
配合剤の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めうる。例えば、延伸前フィルムの1mm厚での全光線透過率が80%以上を維持できる範囲としうる。
【0223】
熱可塑性樹脂bに含まれる重合体の重量平均分子量は、樹脂Bを用いて溶融押し出し法又は溶液流延法を実施できる範囲に調整することが好ましい。
【0224】
熱可塑性樹脂bのガラス転移温度Tgbは、通常80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度Tgbがこのように高いことにより、樹脂Bの配向緩和を低減することができる。ガラス転移温度Tgbの上限に特に制限は無いが、通常は200℃以下である。
【0225】
[B層の製造方法]
B層は、上記の熱可塑性樹脂bをフィルム状に成形して延伸前フィルムbとし、これを延伸して得ることができる。延伸前フィルムbを得る方法としては、公知の方法、例えば、溶液流延法、押出成形法、インフレーション成形法などを挙げることができる。これらのうち押出成形法が残留揮発性成分量が少なく、寸法安定性にも優れるので好ましい。
【0226】
延伸前フィルムbは、長尺のフィルムであることが好ましい。フィルムが「長尺」とは、その幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。長尺のフィルムは製造ラインにおいて、長尺方向に連続的に搬送しながら製造工程を行なうことができる。このため、位相差フィルムを製造する場合に、各工程の一部または全部をインラインで行うことが可能であるので、製造を簡便且つ効率的に行なうことできる。
【0227】
延伸前フィルムbの厚さは、十分なレターデーション及び機械的強度を得る観点からは、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上であり、柔軟性及びハンドリング性を良好にする観点からは、好ましくは800μm以下、より好ましくは600μm以下である。延伸前フィルムbの厚さは、最終的に得られる位相差フィルム積層体中の所望のA層及びB層の厚さの比率に応じて適宜決定することができる。
【0228】
延伸前フィルムbを延伸することで負の屈折率異方性が生じ、B層が得られる。延伸の方法としては、例えば、ロール間の周速の差を利用して長尺方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸);テンターを用いて幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸);縦一軸延伸と横一軸延伸とを順に行う方法(逐次二軸延伸);縦一軸延伸と横一軸延伸とを同時に行う方法(同時二軸延伸);延伸前フィルムの長尺方向に対して斜め方向に延伸する方法(斜め延伸);等を採用してもよい。中でも、横一軸延伸または二軸延伸により、配向方向をフィルムの幅方向とすることが好ましい。固有複屈折値が負である重合体がフィルムの幅方向に配向することで、B層において層の厚さ方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向(即ち、nxの方向)をフィルムの長さ方向とすることができる。
【0229】
延伸する際のフィルム温度は、熱可塑性樹脂bのガラス転移温度Tgbに対し、Tgb−20℃〜Tgb+20℃であることが好ましく、Tgb−15℃〜Tgb+2℃であることがより好ましく、Tgb−10℃〜Tgb℃であることがさらに好ましい。また、延伸倍率は、例えば1.2倍〜3倍としてもよい。
なお、延伸の回数は、1回でもよく、2回以上であってもよい。
【0230】
また、延伸前フィルムbを延伸してB層を得る際には、上述した以外の工程を行ってもよい。
例えば、延伸される前に延伸前フィルムbに対して予熱処理を施してもよい。延伸前フィルムbを加熱する手段としては、例えば、オーブン型加熱装置、ラジエーション加熱装置、又は液体中に浸すことなどが挙げられる。中でもオーブン型加熱装置が好ましい。予熱工程における加熱温度は、通常は「延伸温度−40℃」以上、好ましくは「延伸温度−30℃」以上であり、通常は「延伸温度+20℃」以下、好ましくは「延伸温度+15℃」以下である。なお延伸温度とは、加熱装置の設定温度を意味する。
【0231】
また、例えば、延伸後に固定化処理を施してもよい。固定処理における温度は、通常は室温以上、好ましくは「延伸温度−40℃」以上であり、通常「延伸温度+30℃」以下、好ましくは「延伸温度+20℃」以下である。
【0232】
[B層の特性]
かかる延伸処理により、得られるB層においては、延伸されたことにより、レターデーションが発現する。
B層の波長550nmにおける面内レターデーションReb
550は、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。Reb
550がこの範囲であると、延伸前フィルムbの延伸により容易に製造することができる。
【0233】
またB層は、波長450nmにおける面内レターデーションReb
450及び波長550nmにおける面内レターデーションReb
550が、Reb
450/Reb
550>1.00を満たすことが好ましい。Reb
450及びReb
550がこの関係を満たすことにより、広い波長範囲において高い偏光板補償の効果を得ることができる。
【0234】
またB層の波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションRthb
550は、好ましくは−150nm以上、より好ましくは−130nm以上であり、好ましくは−50nm以下、より好ましくは−60nm以下である。Rthb
550がこの範囲であると、延伸前フィルムbの延伸により容易に製造することができる。
【0235】
B層の厚さは、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上であり、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下である。厚さがこの範囲であると、本発明の位相差フィルム積層体を薄く、かつ高温耐久性に優れるものとできる。
【0236】
[他の層]
B層はさらに、必要に応じて、B層の保護及び取り扱い性の向上のため、例えばマット層、ハードコート層、反射防止層、防汚層等の他の層を積層してもよい。
【0237】
[C層]
中でも、位相差フィルム積層体は、熱可塑性樹脂cからなり、かつ波長550nmにおける面内レターデーションRec
550が30nm未満であるC層を、B層の少なくとも一方の面に有することが好ましい。B層の少なくとも一方の面にC層が存在することで、B層を保護し、B層の破断を防止することができる。C層は、B層の両面に存在することがより好ましい。
【0238】
[熱可塑性樹脂c]
熱可塑性樹脂cは、透明なC層を形成しうる樹脂である。熱可塑性樹脂cとしては、厚さ1mmの試験片を用いて測定した全光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。このような樹脂としては、例えば、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、(メタ)アクリル酸エステル−ビニル芳香族化合物共重合体樹脂、ポリエーテルスルホンなどを挙げることができる。これらの中で、アクリル樹脂を好適に用いることができる。
【0239】
アクリル樹脂は、アクリル重合体を含む樹脂である。アクリル重合体とは、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体の重合体を意味する。アクリル重合体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルなどの単独重合体及び共重合体が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」のことを意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」のことを意味する。アクリル樹脂は強度が高く硬いため、B層を適切に保護できるので、本発明の位相差フィルム積層体の強度を高めることができる。C層をB層の両面に有する場合は、一方のC層を構成するアクリル樹脂と、他方のC層を構成するアクリル樹脂とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0240】
アクリル重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルを重合して形成される構造単位を含む重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜15のアルカノール又はシクロアルカノールから誘導される構造のものが好ましく、炭素数1〜8のアルカノールから誘導される構造のものがより好ましい。
【0241】
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
【0242】
また、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
【0243】
さらに、前記の(メタ)アクリル酸エステルは、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、例えば水酸基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。そのような置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0244】
また、アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体のみの重合体であってもよく、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体とこれに共重合可能な単量体との共重合体でもよい。共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、並びに、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、およびオレフィン単量体などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0245】
(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0246】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、モノカルボン酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸の部分エステル及び多価カルボン酸無水物のいずれでもよい。その具体例としては、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0247】
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0248】
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0249】
非共役ジエン単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
【0250】
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0251】
オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどが挙げられる。
【0252】
アクリル重合体が共重合可能な単量体を含む場合、当該アクリル重合体における(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体を重合して形成される構造単位の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0253】
また、アクリル重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらのアクリル重合体のうち、ポリメタクリレートが好ましく、中でもポリメチルメタクリレートがより好ましい。
【0254】
アクリル樹脂は、ゴム粒子を含んでいてもよい。ゴム粒子を含むことにより、アクリル樹脂の可撓性を高め、位相差フィルム積層体の耐衝撃性を向上させることができる。また、ゴム粒子によってC層の表面に凹凸が形成され、当該層の表面における接触面積が減少するので、通常は、C層の表面の滑り性を高めることができる。
【0255】
ゴム粒子を形成するゴムとしては、例えば、アクリル酸エステル重合体ゴム、ブタジエンを主成分とする重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム等が挙げられる。アクリル酸エステル重合体ゴムとしては、例えば、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等を単量体単位の主成分とするものが挙げられる。これらの中でも、ブチルアクリレートを主成分としたアクリル酸エステル重合体ゴム及びブタジエンを主成分とする重合体ゴムが好ましい。
【0256】
また、ゴム粒子には、2種類以上のゴムが含まれていてもよい。また、それらのゴムは、均一に混ぜ合わせられていてもよいが、層状になったものであってもよい。ゴムが層状になったゴム粒子の例としては、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとスチレンとをグラフト化したゴム弾性成分からなるコアと、ポリメチルメタクリレート及びメチルメタクリレートの一方又は両方とアルキルアクリレートとの共重合体からなる硬質樹脂層(シェル)とが、コア−シェル構造で層を形成している粒子が挙げられる。
【0257】
ゴム粒子は、数平均粒子径が、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、0.3μm以下であることが好ましく、0.25μm以下であることがより好ましい。数平均粒子径を前記範囲内とすることにより、C層の表面に適度な凹凸を形成して、位相差フィルム積層体の滑り性を向上させることができる。
【0258】
ゴム粒子の量は、アクリル重合体100重量部に対して、好ましくは5重量部以上であり、好ましくは50重量部以下である。ゴム粒子の量を前記範囲内とすることにより延伸積層体の耐衝撃性を高めてハンドリング性を向上させることができる。
【0259】
また、アクリル樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、アクリル重合体及びゴム粒子以外の成分を含んでいてもよい。例えば、アクリル重合体以外に他の重合体を含んでいてもよい。ただし、本発明の利点を顕著に発揮させる観点からは、アクリル重合体以外の重合体の量は少ないことが好ましい。アクリル重合体以外の重合体の具体的な量は、例えばアクリル重合体100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が更に好ましい。中でも、全く含まないことが特に好ましい。
【0260】
また、アクリル樹脂は、例えば配合剤などを含んでいてもよい。配合剤の例としては、熱可塑性樹脂bが含んでいてもよい配合剤と同様の例が挙げられる。なお、配合剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、配合剤の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めることができる。
【0261】
[C層の製造方法]
C層は、上記の熱可塑性樹脂cをフィルム状に成形して得ることができる。C層を得る方法としては、公知の方法、例えば、溶液流延法、押出成形法、インフレーション成形法などを挙げることができる。これらのうち押出成形法が残留揮発性成分量が少なく、寸法安定性にも優れるので好ましい。また、熱可塑性樹脂cをフィルム状に成形した後に延伸を行ってもよい。
【0262】
[C層の特性]
C層の波長550nmにおける面内レターデーションRec
550は、30nm未満、好ましくは20nm未満、より好ましくは5nm未満であり、理想的にはゼロである。ここで、C層がB層の両面に存在する場合は、上記Rec
550の値は、各C層のRec
550の値の総和である。Rec
550がこの範囲であると、A層およびB層による偏光板補償機能を好適に発現させることができる。
【0263】
C層の厚さは、Rec
550が上記範囲である限り限定されないが、B層を保護して破断を防止し、かつ本発明の位相差フィルム積層体を薄くするとの観点からは、C層の一層あたりの厚さで、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下である。
【0264】
B層の少なくとも一方の面にC層を積層する方法は限定されず、例えばB層とC層とを公知の接着剤で接着することにより積層してもよいが、共延伸によることが好ましい。
【0265】
共延伸は、具体的には、熱可塑性樹脂bからなるb層、および熱可塑性樹脂cからなるc層を有する延伸前複層フィルムを得て、これを延伸(共延伸)してB層の少なくとも一方の面にC層を有する複層位相差フィルムとする方法である。共延伸の延伸方法や延伸方向などの延伸条件は、前記B層の製造と同様である。
【0266】
延伸前複層フィルムを得る方法は限定されず、例えば、b層とc層とを公知の接着剤で接着することにより積層する方法が挙げられる。この場合のb層は前記延伸前フィルムbを用いることができる。また、c層は前記C層の製造方法と同様に、熱可塑性樹脂cをフィルム状に成形して得ることができる。
【0267】
延伸前複層フィルムを得る方法としては、共押出成形がより好ましい。より具体的には、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形法により成形することができる。なかでも共押出Tダイ法が好ましい。また、共押出Tダイ法にはフィードブロック方式およびマルチマニホールド方式があるが、厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式が特に好ましい。また、他の方法として、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形法;共流延法;及び樹脂フィルム表面に樹脂溶液をコーティングする等のコーティング成形法;などの方法により延伸前フィルムを成形することもできる。但しこれらに比べて共押出成形法は、製造効率や、延伸前複層フィルムに溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、好ましい。
【0268】
共押出Tダイ法を採用する場合、Tダイを有する押出機における樹脂の溶融温度は、各層を構成する材料のガラス転移温度よりも、80℃高い温度以上にすることが好ましく、100℃高い温度以上にすることがより好ましく、また、180℃高い温度以下にすることが好ましく、150℃高い温度以下にすることがより好ましい。押出機での溶融温度を前記範囲の下限値以上にすることにより樹脂の流動性を十分に高くでき、上限値以下とすることにより樹脂が劣化することを防止できる。
【0269】
延伸前複層フィルムを延伸して複層位相差フィルムを得る場合において、熱可塑性樹脂b及び熱可塑性樹脂cのガラス転移温度をそれぞれTgb(℃)、Tgc(℃)としたとき、Tgb>Tgc+20℃であることが好ましく、Tgb>Tgc+24℃であることがより好ましい。固有複屈折値が負の樹脂からなる未延伸の樹脂層(b層)と未延伸の樹脂層(c層)が積層された延伸前複層フィルムを延伸するとき、好ましくはTgb−20℃〜Tgb+20℃、より好ましくはTgb−15℃〜Tgb+2、さらに好ましくはTgb−10℃〜Tgb℃で延伸すると、固有複屈折値が負の樹脂からなるB層の複屈折特性を十分かつ均一に発現させることができる。このとき、未延伸の樹脂層(c層)は、そのガラス転移温度Tgcよりも高い温度で延伸されるので、c層に含まれる重合体はほとんど配向せず、得られるC層の波長550nmにおける面内レターデーションRec
550を上記範囲とすることが可能である。延伸前複層フィルムを共延伸することにより、別々に得たB層とC層を貼り合わせて積層する場合に比べて、製造工程を短縮し、製造コストを低減することができる。また、固有複屈折値が負の熱可塑性樹脂bからなる延伸前フィルムbは、単独では延伸しにくく、延伸ムラや破断などが生ずる場合があるが、ガラス転移温度が低い他の透明な樹脂と積層することにより、安定して共延伸することが可能となり、かつ得られるB層の厚さむらを小さくすることができる。
【0270】
本発明において、C層を形成する熱可塑性樹脂cは、引張破断伸びが30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。引張破断伸びが30%以上である樹脂層(c層)と固有複屈折値が負の樹脂層(b層)とを積層することにより、延伸前複層フィルムを安定して共延伸することができる。前記引張破断伸びは、ASTM D638に準拠して測定される値である。
【0271】
[位相差フィルム積層体]
前記のA層とB層を積層して、本発明の位相差フィルム積層体が得られる。積層の方法は限定されず、A層とB層とを別々に得て、これらを必要に応じ接着剤等を用いて貼り合せてもよいが、前記の方法によりB層の表面に液晶性化合物aを塗布し、硬化することでB層上に直接A層を形成することが、製造工程を短縮し、製造コストを低減することができるため好ましい。すなわち、B層を含む位相差フィルムに液晶性化合物aを塗布する工程、液晶性化合物aを配向させる工程、および、液晶性化合物aを硬化する工程を有する製造方法が好ましい。また、前記の位相差フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂bからなるb層を有する延伸前フィルムを延伸して得られたフィルムを用いうる。
【0272】
前記のように、B層はその少なくとも一方の面にC層を有していてもよい。すなわち、B層およびC層を有する複層位相差フィルムと、A層とを積層して本発明の位相差フィルム積層体を得ることができる。例えば、複層位相差フィルムに液晶性化合物aを塗布する工程、この液晶性化合物aを配向させる工程、および、液晶性化合物aを硬化する工程を有する製造方法により、本発明の位相差フィルム積層体を製造しうる。
【0273】
この場合において、A層は複層位相差フィルムのいずれの面に積層してもよい。すなわち、複層位相差フィルムがB層の一方の面のみにC層を有する場合、A層はB層およびC層のいずれの表面と接するように積層してもよい。また複層位相差フィルムがB層の両面にC層を有する場合、A層はいずれかのC層の表面と接するように積層される。
【0274】
A層をC層の表面と接するように積層する場合、前記と同様の方法によりC層の表面に液晶性化合物aを塗布し、硬化することでC層上に直接A層を形成することが、製造工程を短縮し、製造コストを低減することができるため好ましい。
【0275】
[用途]
本発明の位相差フィルム積層体は、高度な偏光板補償が可能なので、それ単独で用いてもよく、他の部材と組み合わせて用いてもよい。例えば液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、FED(電界放出)表示装置、SED(表面電界)表示装置などに適用してもよい。
【0276】
[液晶表示装置]
液晶表示装置は、通常、光源側偏光板、液晶セル及び視認側偏光板がこの順に配置された液晶パネルと、液晶パネルに光を照射する光源とを備える。位相差フィルム積層体としての光学フィルムを、例えば液晶セルと光源側偏光板との間、液晶セルと視認側偏光板との間などに配置することで、液晶表示装置の視認性を大幅に向上できる。
【0277】
液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどが挙げることができる。中でも、本発明の位相差フィルム積層体は、インプレーンスイッチングモードの液晶表示装置に好適に用いることができる。
【0278】
本発明の位相差フィルム積層体を備える液晶表示装置の好適な態様としては、各吸収軸が略直交するように配置される一対の偏光子(偏光板)と、前記一対の偏光子の間に設けられる液晶セルと、を備える液晶表示装置であって、前記一対の偏光子のいずれかと前記液晶セルとの間に本発明の位相差フィルム積層体を備える液晶表示装置が挙げられる。
【0279】
液晶表示装置において、位相差フィルム積層体は液晶セルまたは偏光板に貼り合わせるようにしてもよい。また、位相差フィルム積層体は、2枚の偏光子のそれぞれに貼り合わせるようにしてもよい。さらに、位相差フィルム積層体を2枚以上用いるようにしてもよい。貼り合わせには接着剤を用いてもよい。
偏光子は、例えば、その両面に保護フィルムが貼り合わせられたものを用いてもよい。この際、保護フィルムに代えて本発明の位相差フィルム積層体を偏光子に直接貼り合せ、光学補償フィルム及び保護フィルムの両方の機能を有する層として用いてもよい。かかる構成をとることにより、保護フィルムが省略されて、液晶表示装置の薄型化、軽量化、低コスト化に貢献することができる。
【実施例】
【0280】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。なお、実施例および比較例中の量を表す部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例及び比較例において、各特性の測定は、下記に基づき行った。
【0281】
〔フィルムの厚さ〕
フィルムの各層及びフィルム全体の膜厚は、フィルムをエポキシ樹脂に包埋したのち、ミクロトーム(大和工業社製「RUB−2100」)を用いてスライスし、走査電子顕微鏡を用いて断面を観察して測定した。
【0282】
〔ガラス転移温度〕
示差走査熱量計(セイコーインストルメンツ社製EXSTAR6220)を用いて昇温速度20℃/分で測定した。
【0283】
〔レターデーション〕
各層の面内レターデーションReおよび厚さ方向のレターデーションRthは、自動複屈折計(王子計測機器社製「KOBRA−21ADH」)を用いて、波長450nmおよび550nmで、フィルムの幅方向における中心付近を5点測定しその平均値を測定値とした。
ただし液晶性化合物を硬化してなる層については、実施例および比較例で得た層と同じ厚さの層を同様の方法でポリエチレンテレフタレート製のフィルムの表面に形成し、これをガラス基板に転写した層について上記の方法で測定を行い、実施例および比較例における各層のレターデーションとした。
また、B層およびC層を有する複層位相差フィルムについては、まず上記の方法で複層位相差フィルム全体のレターデーションを測定した後、サンドペーパーで磨いてC層を除去してB層のみのフィルムを得、これを上記の方法で測定してB層のレターデーションを求めた。さらに、複層位相差フィルム全体のレターデーションからB層のレターデーションの寄与を差し引いて得られる計算値として、C層のレターデーションを求めた。
【0284】
〔液晶表示装置の光漏れ〕
液晶表示器用シミュレーター(シンテック社製「LCD MASTER」)を用いて、黒表示で液晶表示装置を全方位から見た場合の最大光漏れYmaxを測定した。Ymaxの値が小さいほど、光漏れが少なく表示特性が優れることを表す。
【0285】
[製造例1]
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒドを20g(144.8mmol)、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSH社製)を105.8g(362.0mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジンを5.3g(43.4mmol)、N−メチルピロリドン200mlに溶解させた。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を83.3g(434.4mmol)加え、室温下にて12時間攪拌した。反応終了後、反応液を水1.5リットルに投入し、酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液からロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを減圧留去して、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1(体積比))により精製し、白色固体として中間体Aを75g得た(収率:75.4%)。
構造は
1H−NMRで同定した。
【0286】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3,TMS,δppm):10.20(s,1H)、8.18−8.12(m,4H)、7.78(d,1H,J=2.8Hz)、7.52(dd,1H,J=2.8Hz,8.7Hz)、7.38(d,1H,J=8.7Hz)、7.00−6.96(m,4H)、6.40(dd,2H,J=1.4Hz,17.4Hz)、6.12(dd,2H,J=10.6Hz,17.4Hz)、5.82(dd,2H,J=1.4Hz,10.6Hz)、4.18(t,4H,J=6.4Hz)、4.08−4.04(m,4H)、1.88−1.81(m,4H)、1.76−1.69(m,4H)、1.58−1.42(m,8H)
【0287】
【化41】
【0288】
これとは別に、温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、9−フルオレノンを5g(27.7mmol)、ヒドラジン一水和物を13.9g(277.7mmol)、1−プロパノール50mlに溶解させ、全量を室温下にて16時間攪拌した。反応終了後、析出した固体をろ取し、得られた固体を1−プロパノールで洗浄して、風乾することで中間体Bを黄色固体として2.2g得た。このものは精製することなく、そのまま次の反応に用いた。
【0289】
【化42】
【0290】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、上記で合成した中間体Aを3.0g(4.37mmol)と、中間体Bを1.1g(5.68mmol)とを、エタノール80ml及びテトラヒドロフラン(THF)40mlの混合溶剤に溶解させた。この溶液に、(±)−10−カンファースルホン酸を0.1g(0.44mmol)、THF3mlに溶解させてゆっくりと加えた。その後、室温下にて2時間反応させた。反応終了後、反応液を飽和重曹水300mlに投入し、クロロホルム100mlで2回抽出した。得られたクロロホルム層を飽和食塩水200mlで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液からロータリーエバポレーターにてクロロホルムを減圧留去して、黄色固体を得た。この黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=8:2(体積比))により精製し、黄色固体として化合物1を1.8g得た(収率:47.7%)。
目的物の構造は
1H−NMRで同定した。
【0291】
1H−NMR(400MHz,CDCl3,TMS,δppm):8.65(s,1H)、8.29(d,1H,J=7.3Hz)、8.21−8.16(m,5H)、7.82(d,1H,J=7.3Hz)、7.60−7.57(m,2H)、7.43−7.25(m,6H)、7.01−6.96(m,4H)、6.402(dd,1H,J=1.8Hz,17.4Hz)、6.398(dd,1H,J=1.8Hz,17.4Hz)、6.122(dd,1H,J=10.5Hz,17.4Hz)、6.117(dd,1H,J=10.5Hz,17.4Hz)、5.820(dd,1H,J=1.8Hz,10.5Hz)、5.816(dd,1H,J=1.8Hz,10.5Hz)、4.18(t,2H,J=6.6Hz)、4.17(t,2H,J=6.6Hz)、4.06(t,2H,J=6.4Hz)、4.05(t,2H,J=6.4Hz)、1.87−1.80(m,4H)、1.76−1.68(m,4H)、1.59−1.42(m,8H)。
【0292】
【化43】
【0293】
上記で得られた化合物1を1000部、光重合開始剤として、アデカオプトマーN−1919(ADEKA社製)を30部、界面活性剤として、KH−40(AGCセイミケミカル社製)の1%シクロペンタノン溶液100部を、4000部のシクロペンタノンに溶解した。この溶液を0.45μmの細孔径を有するディスポーサブルフィルターでろ過し、重合性組成物1を得た。
【0294】
[製造例2]
下式で表される化合物4を75部、光重合開始材としてイルガキュアIrg184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を1部、溶剤としてのトルエン25部を混合して、さらにカイラル材として両末端に重合可能なアクリレート基を有するカイラル剤を10部加えて重合性組成物2を得た。
【0295】
【化44】
【0296】
[製造例3]
厚さ80μmの長尺のポリビニルアルコールフイルムを0.3%のヨウ素水溶液中で染色した。その後、4%のホウ酸水溶液及び2%のヨウ化カリウム水溶液中で5倍まで延伸した後、50℃で4分間乾燥させて偏光子を製造した。
【0297】
[実施例1]
ゴム粒子を含むアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート;ガラス転移温度105℃)からなるc1層、c2層、スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノヴァケミカルジャパン社製、ダイラークD332、ガラス転移温度130℃)からなるb層を有する、c1層(35μm)−b層(50μm)−c2層(35μm)の延伸前複層フィルムc1を共押出成形により得た。得られた延伸前複層フィルムc1をテンター延伸機に供給し、引き取り張力とテンターチェーン張力を調整しながら、延伸温度135℃で横方向に3.0倍に延伸し、B層の両面にC層を有する複層位相差フィルムB1を得た。複層位相差フィルムB1はRe
450/Re
550>1の関係を満たし、波長分散は順波長分散であった。複層位相差フィルムB1の各特性を測定した結果を表1に示す。なお表1において、C層についての結果はB層の両面のC層の合計値である。
【0298】
この複層位相差フィルムB1をフィルム搬送装置の繰り出し部に取り付け、当該基材フィルムを搬送しながらラビング処理を施し、ラビング処理を施した面に製造例1で得た重合成組成物1をダイコーターを使用して塗布した。塗膜を135℃で30秒間乾燥した後、80℃で3分間配向処理し、膜厚1.4μmの液晶層を形成した。その後、液晶層の塗布面側から2000mJ/cm
2の紫外線を照射して重合してA層を形成した。A層のRe
450/Re
550は0.82であり、波長分散は逆波長分散であった。こうして、複層位相差フィルムB1からなるB層と、液晶性化合物が重合されてなるA層とからなる位相差フィルム積層体1を得た。
【0299】
入射面側偏光子、液晶セル、上記で得られた位相差フィルム積層体1、表示面側偏光子をこの順に積層して液晶表示装置1を得た。液晶セルとしては、Re=349nm、プレチルト角=1.5°、ラビング方向=90°、スプレイ配向の、インプレーンスイッチングモードの液晶セルを用いた。入射面側および表示面側偏光子としては、いずれも製造例3で得た偏光子を用いた。この際、入射面側偏光子と表示面側偏光子の吸収軸が垂直になるように配置し、位相差フィルム積層体1は遅相軸が表示面側偏光子の吸収軸と平行で、B層が液晶セル側になるように配置した。この液晶表示装置1の光漏れを評価した結果を表1に示す。
【0300】
[実施例2]
ゴム粒子を含むアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート;ガラス転移温度105℃)からなるc1層、c2層、スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノヴァケミカルジャパン社製、ダイラークD332、ガラス転移温度130℃)からなるb層を有する、c1層(30μm)−b層(40μm)−c2層(30μm)の延伸前複層フィルムc2を共押出成形により得た。得られた延伸前複層フィルムc2をテンター延伸機に供給し、引き取り張力とテンターチェーン張力を調整しながら、延伸温度140℃で横方向に1.8倍に延伸し、B層の両面にC層を有する複層位相差フィルムB2を得た。複層位相差フィルムB2はRe
450/Re
550>1の関係を満たし、波長分散は順波長分散であった。複層位相差フィルムB2の各特性を測定した結果を表1に示す。なお表1において、C層についての結果はB層の両面のC層の合計値である。
【0301】
複層位相差フィルムB1に代えて、上記で得られた複層位相差フィルムB2を用い、液晶層の膜厚が1.5μmとなるように塗布する他は実施例1と同様にして、複層位相差フィルムB2からなるB層と、液晶性化合物が重合されてなるA層とからなる位相差フィルム積層体2を得た。位相差フィルム積層体1に代えて、この位相差フィルム積層体2を用いる他は実施例1と同様にして、液晶表示装置2を得た。この液晶表示装置2の光漏れを評価した結果を表1に示す。
【0302】
[比較例1]
実施例1で得られた延伸前複層フィルムc1をテンター延伸機に供給し、引き取り張力とテンターチェーン張力を調整しながら、延伸温度134℃で縦方向に1.8倍、横方向に1.1倍に同時二軸延伸し、B層の両面にC層を有する複層位相差フィルムB3を得た。複層位相差フィルムB3はRe
450/Re
550>1の関係を満たし、波長分散は順波長分散であった。複層位相差フィルムB3の各特性を測定した結果を表1に示す。なお表1において、C層についての結果はB層の両面のC層の合計値である。
【0303】
ノルボルネン系樹脂であるゼオノア1420(日本ゼオン社製)のペレットを押出し機に供給して厚さ80μmの未延伸フィルムを得た。続いて、この未延伸フィルムをテンター延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、145℃で横方向に2.5倍に延伸し、位相差フィルムA1を得た。位相差フィルムA1はRe
450/Re
550>1の関係を満たし、波長分散は順波長分散であった。位相差フィルムA1の各特性を測定した結果を表1に示す。
【0304】
入射面側偏光子、液晶セル、上記で得られた複層位相差フィルムB3、位相差フィルムA1、表示面側偏光子をこの順に積層して液晶表示装置3を得た。液晶セル、ならびに入射面側および表示面側偏光子としては、いずれも実施例1と同じものを用いた。この際、入射面側偏光子と表示面側偏光子の吸収軸が垂直になるように配置し、複層位相差フィルムB3および位相差フィルムA1はいずれも遅相軸が表示面側偏光子の吸収軸と平行になるように配置した。この液晶表示装置3の光漏れを評価した結果を表1に示す。
【0305】
[比較例2]
A層として、ポリカーボネート樹脂からなる位相差フィルムA2(帝人化成社製「ピュアエースWR」)を用いた。位相差フィルムA2はRe
450/Re
550が0.82であり、波長分散は逆波長分散であった。位相差フィルムA2の各特性を測定した結果を表1に示す。
【0306】
製造例2で得た重合性組成物2を、スピンコーティング法を用いて位相差フィルムA2上に塗布した。次いで、重合性組成物2を塗布したフィルムをホットプレート上で100℃で5分間加熱し、残存溶剤を除去し、ツイスト配向した液晶構造を発現させた。続いて、塗布した液晶層の塗布面側から20mJ/cm
2の紫外線を照射して重合して厚さ5μmのB層を形成した。B層はRe
450/Re
550>1の関係を満たし、波長分散は順波長分散であった。こうして、位相差フィルムA2からなるA層と、液晶性化合物が重合されてなるB層とからなる位相差フィルム積層体4を得た。
【0307】
位相差フィルム積層体1に代えて、この位相差フィルム積層体4を用いる他は実施例1と同様にして、液晶表示装置4を得た。この液晶表示装置4の光漏れを評価した結果を表1に示す。
【0308】
【表1】
【0309】
以上の実施例および比較例より、本発明の位相差フィルム積層体は薄膜化が可能で、かつ少ない工程数により工業的有利に製造可能であることが分かる。また、本発明の位相差フィルム積層体を用いた本発明の液晶表示装置は、光漏れが少なく表示特性に優れることが分かる。