特許第6376532号(P6376532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376532
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/66 20060101AFI20180813BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20180813BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20180813BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20180813BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B01J23/66 AZAB
   B01J37/08
   B01J37/04 102
   B01D53/86 100
   F01N3/035
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-180071(P2014-180071)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-52637(P2016-52637A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】大澤 正人
(72)【発明者】
【氏名】林 義明
(72)【発明者】
【氏名】林 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 夏樹
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−036821(JP,A)
【文献】 特開平06−219721(JP,A)
【文献】 特開2002−282689(JP,A)
【文献】 特開2012−066238(JP,A)
【文献】 特開2000−246103(JP,A)
【文献】 WAN, D. et al.,The Preparation Methods of Pt/SnO2 Catalyst Dope by REOx,Journal of Beijing Polytechnic University,1992年 6月,Vol.18, No.2,p.88-90,96,ISSN:0254-0037
【文献】 ZENG, X. et al.,Study on ceria-modified SnO2 for CO and CH4 oxidation,Journal of Rare Earths,2012年10月,Vol.30, No.10,p.1013-1019,DOI:10.1016/S1002-0721(12)60171-9
【文献】 Zhong, Y. J. et al,Study of Ce0.7Sn0.3O2 supported PdO catalysts for CO oxidation,Reaction Kinetics and Catalysis Letters,2003年 5月,Vol.79, No.1,p.53-54(部分),DOI:10.1023/A:1024151516093
【文献】 TOLLA, B. et al.,Oxygen exchange properties in the new pyrochlore solid solution Ce2Sn2O7-Ce2Sn2O8,Comptes Rendus de l'Academie des Sciences - Series IIC,1999年 3月,Vol.2, No.3,p.139-146,DOI:10.1016/S1387-1609(99)80056-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/73
B01D 53/86−53/90
B01D 53/94
B01D 53/96
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化スズと酸化セリウムとで構成される担体粒子を作製し、作製した担体粒子に金属微粒子を担持させて排ガス浄化用触媒を得る排ガス浄化用触媒の製造方法であって、
前記担体粒子は、スズ微粒子及び酸化スズ微粒子の少なくとも一方を含む前駆体液に酸化セリウムの粉末と炭素微粒子とを混合してスラリーを調製し、調製したスラリーを乾燥し、乾燥したものを焼成して炭素微粒子を除去することにより作製し、
前記前駆体液として、金属スズ微粒子を溶媒に分散させた金属スズ微粒子分散液を用いることを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項2】
前記スラリー中に含まれる炭素微粒子の重量をスズの重量の30%以上に設定したことを特徴とする請求項記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中に含まれる煤を主成分とする炭素系の粒子状物質(PM)を浄化する排ガス浄化用触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンからの排ガスには、煤を主成分とする炭素系の粒子状物質(以下「PM」という)が含まれており、このPMは大気中に放出されると容易に飛散して人体に悪影響を及ぼす。このため、ディーゼル車にはPMを捕集するフィルター(DPF:Diesel Particulate Filter)が搭載され、大気中に放出される前にPMを捕集しているが、PMの捕集量が増加するとフィルターの目詰まりが生じる。この目詰まりの解消法として、電気ヒータやバーナや排気系に燃料を噴射して燃焼させ、その燃焼熱を利用してフィルターを昇温し、捕集したPMを燃焼させる方法が用いられているが、燃費の悪化や装置構造の複雑化を招来するという問題があった。
【0003】
このため、フィルターに排ガス浄化用触媒を配置し、300℃程度の低温でPMを燃焼してDPFを再生する方法が、例えば非特許文献1で知られている。この排ガス浄化用触媒は、酸化セリウムで構成される担体粒子に銀粒子を担持させることによって作製される。
【0004】
しかしながら、フィルターは、ディーゼル車に搭載して使用されるときに1000℃程度まで昇温することがあり、上記従来例の排ガス浄化用触媒は、1000℃程度に加熱されたとき(1000℃程度の熱履歴を受けたとき)に失活するという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K.Shimizu、外5名、「Carbon oxidation with Ag/ceria prepared by self−dispersion of Ag powder into nano−particles」、Catalysis Today 175、2011年、p.93−99
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、低温でPMを燃焼させることができ、しかも、1000℃程度に加熱されても失活しない排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、酸化スズと酸化セリウムとで構成される担体粒子を作製し、作製した担体粒子に金属微粒子を担持させて排ガス浄化用触媒を得る本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、担体粒子が、スズ微粒子及び酸化スズ微粒子の少なくとも一方を含む前駆体液に酸化セリウムの粉末と炭素微粒子とを混合してスラリーを調製し、調製したスラリーを乾燥し、乾燥したものを焼成して炭素微粒子を除去することにより作製されることを特徴とする。なお、酸化セリウムの粉末には、顆粒状のものが含まれるものとする。
【0011】
本発明によれば、スズ微粒子を含む前駆体液を用いる場合を例に説明すると、酸化スズ担体粒子を作製する際、前駆体液に酸化セリウム粉末と鋳型としての炭素微粒子とを混合するため、この混合により調整されたスラリーを乾燥すると、スズ微粒子や酸化セリウムの間に炭素微粒子が介在するものが得られる。そして、この乾燥により得られたものを焼成すると、スズ微粒子が酸化されて酸化スズとなり、酸化スズと酸化セリウムとで構成される担体粒子が得られると共に、炭素微粒子が燃焼して除去され、この炭素微粒子が除去された部分が空孔となる。このため、焼成後に得られた担体粒子は、多孔質で広い表面積を有するものとなり、しかも、金属微粒子を担持させるための有効なサイトである酸素欠損を有するものとなる。この担体粒子にAg等の金属微粒子を担持すれば、従来例よりも多量の金属微粒子が分散した状態で担持される。このようにして作製された排ガス浄化用触媒は、低温でPMを燃焼させることができ、1000℃程度に加熱されても失活しないことが確認された。
【0012】
本発明において、前記スラリー中に含まれる炭素微粒子の重量をスズの重量の30%以上に設定することが好ましい。炭素微粒子の重量がこれより少ないと、酸化スズ担体粒子が多孔質で酸素欠損を有するものとならない場合がある。
【0013】
本発明において、前記前駆体液として、金属スズ微粒子を溶媒に分散させた金属スズ微粒子分散液を用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法を説明する模式図。
図2】本発明の実施例1で得た排ガス浄化用触媒の性能を示すグラフ。
図3】本発明の実施例2で得た排ガス浄化用触媒の性能を示すグラフ。
図4】本発明の比較例1で得た排ガス浄化用触媒の性能を示すグラフ。
図5】本発明の比較例2で得た排ガス浄化用触媒の性能を示すグラフ。
図6】担体粒子の酸化スズ含有率と発熱ピーク温度Tpkとの関係を示すグラフ。
図7】担体粒子の酸化スズ含有率と温度T50との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の排ガス浄化用触媒及びその製造方法について説明する。先ず、図1を参照して、スズ微粒子又は酸化スズ微粒子を含む前駆体液に炭素微粒子を混合し、酸化セリウム粉末を更に混合して攪拌してスラリーを調整する。
【0016】
前駆体液としては、分散剤で被覆されたスズ微粒子や酸化スズ微粒子を溶媒に分散させてなる金属スズ微粒子分散液や酸化スズ微粒子分散液(コロイド溶液)を用いることができる。ここで、スラリー中に含まれる炭素微粒子の重量をスズの重量の30%以上に設定することが好ましい。炭素微粒子の重量がこれより少ないと、後述する担体粒子が多孔質で酸素欠損を有するものとならない場合がある。炭素微粒子としては、そのBET比表面積が100m/g以上のを用いることが好ましく、250m/g以上のものを用いることがより好ましい。BET比表面積が100m/g未満であると、鋳型としての効果が不十分となる場合がある。また、攪拌する際、超音波処理を施すことが好ましい。
【0017】
スズ微粒子としては、その平均粒子径が1nm〜50nmの範囲内であるものを用いることができる。平均粒子径が1nm未満になると、比表面積が増大してスズ微粒子表面を被覆する分散剤の量が増大し、焼成時に分散剤の脱離が不十分になるという不具合が生じる。一方、平均粒子径が50nmを超えると、スズ微粒子の分散性が低下するという不具合が生じる。
【0018】
金属スズ微粒子分散液は、スズ微粒子の分散性を高めるための分散剤を含むことが好ましく、分散剤としては、炭素数6〜18の脂肪酸および炭素数6〜18の脂肪族アミンの少なくともいずれか一方を用いることが好ましい。炭素数6未満の脂肪酸や脂肪族アミンでは、スズ微粒子の分散性が低下するという不具合が生じる。一方、炭素数19以上の脂肪酸や脂肪族アミンでは、焼成時にスズ微粒子表面からの脂肪酸や脂肪族アミンの脱離が不十分となるという不具合が生じる。脂肪酸としては、例えば、カルボン酸を用いることができる。具体的には、炭素数6のヘキサン酸、2−エチル酪酸、ネオヘキサン酸(2,2−ジメチル酪酸);炭素数7のヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸;炭素数8のオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオオクタン酸(2,2−ジメチルヘキサン酸);炭素数9のノナン酸;炭素数10のデカン酸、ネオデカン酸(2,2−ジメチルオクタン酸);炭素数11のウンデカン酸;炭素数12のドデカン酸;炭素数14のテトラデカン酸;及び炭素数16のパルミチン酸;及び炭素数18のステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸から選択された少なくとも1種を用いることが好ましい。脂肪族アミンとしては、炭素数6のヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン;炭素数7のヘプチルアミン;炭素数8のオクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン;炭素数9のノニルアミン;炭素数10のデシルアミン;炭素数12のドデシルアミン;炭素数14のテトラドデシルアミン:炭素数16のパルミチルアミン;及び炭素数18のステアリルアミン、オレイルアミンから選択された少なくとも1種を好ましく用いることができる。
【0019】
上記の分散剤を含んでなる金属スズ微粒子分散液の溶媒としては、低極性溶媒を用いることができ、具体的には、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シクロドデカン、シクロドデセン、オクチルベンゼン、ドデシルベンゼンから選ばれる少なくとも1種の液状炭化水素を単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、酸化スズ微粒子を含む前駆体液としては、市販の酸化スズゾル溶液を好ましく使用することができる。市販の酸化スズゾル溶液の溶媒としては、アルコールや水などが用いられる。
【0021】
酸化セリウム粉末としては、その平均粒径が0.1〜1μmの範囲内であるものを用いることができる。酸化セリウム粉末には、顆粒状のものが含まれるものとする。
【0022】
次に、上記スラリーを乾燥し、乾燥して得たものを焼成し、焼成して得られたものを粉砕することにより、担体粒子が得られる。乾燥は、減圧下で65〜110℃の温度で加熱することが好ましい。焼成は、大気中などの酸素含有雰囲気中で、上記炭素微粒子が完全に燃焼する温度、例えば、600〜800℃の温度で行うことが好ましい。このように焼成することにより、スズが酸化されて酸化スズとなり、酸化スズと酸化セリウムとで構成される担体粒子が得られる。しかも、焼成時に鋳型としての炭素微粒子が燃焼して脱離するため、その脱離した部分が空孔となる。このため、得られた担体粒子は、多孔質で広い表面積を有するものとなり、しかも、金属微粒子を担持するための有効なサイトである酸素欠損を有するものとなる。
【0023】
このようにして得られた多孔質の担体粒子に触媒金属微粒子を担持させることにより、排ガス浄化用触媒が得られる。触媒金属微粒子としては銀微粒子を用いることができ、その担持方法は公知の方法を用いることができる。例えば、担体粒子に銀微粒子分散液を混合、攪拌してスラリーを得て、そのスラリーを蒸発、乾燥し、その蒸発乾固物を焼成し、粉砕することで、排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0024】
次に、本実施形態をより具体化した実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例1では、前駆体液としてスズ微粒子分散液(株式会社アルバック製のスズナノメタルインク)「Sn1T」、スズ濃度:30.6重量%、溶媒:トルエン)を用い、フラスコ内でこのスズ微粒子分散液0.66gに炭素微粒子(オリオン・エンジニアドカーボンズ製のカーボンブラック「Printex 90」、BET比表面積:300m/g)0.10gを混合し、超音波処理により均一に攪拌した。この攪拌したものに、酸化セリウム粉末(高純度化学研究所製の「酸化セリウム(IV)粉末」、粒径:0.2μm)1.02gを更に混合(浸漬)し、超音波処理により均一に攪拌してスラリーを調製した(このとき、スラリー中に含まれる炭素微粒子の重量は、スズの重量の50%である)。このスラリーをロータリーエバポレータで減圧しながら80℃まで昇温し、スズ微粒子分散液の溶媒(トルエン)を留去して蒸発乾固物を得た。この蒸発乾固物を回収し、110℃で8時間乾燥させた後、マッフル炉にて、大気雰囲気中、700℃で3時間焼成し、焼成したものを粉砕することにより、酸化スズと酸化セリウムとで構成される担体粒子を得た。得られた担体粒子中の酸化スズ含有率は20重量%(酸化セリウム含有率は80重量%)であった。この担体粒子1.0gをフラスコに入れ、銀ナノ粒子分散液(株式会社アルバック製の銀ナノメタルインク「Ag1T」、銀濃度:4.5重量%、溶媒:トルエン)1.17gを混合し、超音波処理により均一に攪拌してスラリーを調製した。このスラリーをロータリーエバポレータで減圧しながら80℃まで昇温し、銀ナノ粒子分散液の溶媒(トルエン)を留去して蒸発乾固物を得た。この蒸発乾固物を回収し、110℃で8時間乾燥させた後、マッフル炉にて、大気雰囲気中、600℃で3時間焼成した。この焼成したものを粉砕することにより、担体粒子に銀微粒子が担持した排ガス浄化用触媒を得た(銀の担持量は排ガス浄化用触媒の総重量の5重量%である)。このようにして得た排ガス浄化用触媒を試料1aとし、この排ガス浄化用触媒の一部を分取して1000℃で10時間の加熱処理を更に行ったものを試料1bとした。これらの試料1a,1bの性能を「タイトコンタクト条件」により評価した。「タイトコンタクト条件」とは、浄化すべきPMと触媒とを十分に混合して両者の接触性を高めた状態で性能評価法である。具体的には、疑似PMとしてのカーボンブラック(オリオン・エンジニアドカーボンズ製のカーボンブラック「Printex 55」、BET比表面積:110m/g)と上記試料1a,1bとを1:10の重量比で乳鉢を用いて30分間夫々混合し、各混合粉体を窒素:酸素=79:21組成の混合ガスを流下させた雰囲気にて熱重量−示唆熱分析(TG−DTA)を行い、疑似PMの燃焼に伴う発熱反応が起こる温度をDTAプロファイルにて測定すると共に、疑似PMの燃焼に伴う重量減少をTGプロファイルにて測定することにより、試料1a,1bの性能を評価した。図2のDTAプロファイルを参照して、図中に実線で示す試料1aの発熱ピーク温度Tpkは302℃であり、破線で示す試料1bの発熱ピーク温度Tpkは370℃であり(表1参照)、両者の差は68℃であることが確認された。また、TGプロファイルより、燃焼によって疑似PMの重量が半分に減少する温度T50を求めたところ、表2に示すように、試料1aは332℃であり、試料1bは432℃であり、いずれのT50も450℃以下であり、両者の差は100℃であることが確認された。これらの結果より、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒は、低温でPMを燃焼させることができ、しかも、1000℃程度に加熱されても失活しない優れた耐熱性を有するものであることが判った。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
(実施例2)
スズ微粒子分散液の量を1.65gとし、炭素微粒子の混合量を0.25gとし(このとき、スラリー中に含まれる炭素微粒子の重量は、スズの重量の50%である)、酸化セリウム粉末の混合量を0.64gとした以外は、上記実施例1と同様の方法で排ガス浄化用触媒を得て、得られた触媒を試料2aとした(このとき、担体粒子中の酸化スズ含有率は50重量%(酸化セリウム含有率は50重量%)であった)。そして、上記実施例1と同様に、試料2aをさらに1000℃で10時間の加熱処理したものを試料2bとし、これらの試料2a,2bの性能を評価した。図3のDTAプロファイルを参照して、図中実線で示す試料2aの発熱ピーク温度Tpkは338℃であり、破線で示す試料2bの発熱ピーク温度Tpkは362℃であり(表1参照)、両者の差は24℃であることが確認された。また、表2に示すように、試料2aの温度T50は370℃であり、試料2bの温度T50は414℃であり、何れのT50も450℃以下であり、両者の差は44℃であることが確認された。これらの結果より、実施例2で得られた排ガス浄化用触媒は、低温でPMを燃焼させることができ、しかも、1000℃程度に加熱されても失活しない優れた耐熱性を有するものであることが判った。
【0028】
(実施例3)
スズ微粒子分散液の量を2.64gとし、炭素微粒子の混合量を0.40gとし(このとき、スラリー中に含まれる炭素微粒子の重量は、スズの重量の50%である)、酸化セリウム粉末の混合量を0.26gとした以外は、上記実施例1と同様の方法で排ガス浄化用触媒を得て、得られた触媒を試料3aとした(このとき、担体粒子中の酸化スズ含有率は80重量%(酸化セリウム含有率は20重量%)であった)。そして、上記実施例1と同様に、試料3aをさらに1000℃で10時間の加熱処理したものを試料3bとし、これらの試料3a,3bの性能を評価した。図示省略のDTAプロファイルから、試料3aの発熱ピーク温度Tpkは366℃であり、試料3bの発熱ピーク温度Tpkは374℃であり(表1参照)、両者の差は8℃であることが確認された。また、表2に示すように、試料3aの温度T50は410℃であり、試料3bの温度T50は430℃であり、何れのT50も450℃以下であり、両者の差は20℃であることが確認された。これらの結果より、実施例3で得られた排ガス浄化用触媒は、低温でPMを燃焼させることができ、しかも、1000℃程度に加熱されても失活しない優れた耐熱性を有するものであることが判った。
【0029】
(実施例4)
前駆体溶液として、酸化スズゾル(日産化学製セルナックスCX−S204IP、酸化スズ濃度20重量%、イソプロピルアルコール溶媒)を用いて、その混合量を1.30gとした点(このとき、スラリー中に含まれる炭素微粒子の重量は、スズの重量の50%である)以外は、上記実施例1と同様の方法で排ガス浄化用触媒を得て、得られた触媒を試料4aとした。そして、上記実施例1と同様に、試料4aをさらに1000℃で10時間の加熱処理したものを試料4bとし、これらの試料4a,4bの性能を評価した。図示省略のDTAプロファイルから、試料4aの発熱ピーク温度Tpkは310℃であり、試料4bの発熱ピーク温度Tpkは380℃であり、両者の差は70℃であることが確認された。また、図示省略のTGプロファイルから、試料4aの温度T50は338℃であり、試料4bのT50は429℃であり、両者の差は91℃であることが確認された。これらの結果より、実施例5で得られた排ガス浄化用触媒は、低温でPMを燃焼させることができ、しかも、1000℃程度に加熱されても失活しない優れた耐熱性を有するものであることが判った。
【0030】
(比較例1)
次に、上記実施例に対する比較例について説明する。比較例1では、担体粒子を作製する際に、スズ微粒子分散液及び炭素微粒子を配合せず、酸化セリウム粉末1.28gを用いた点以外は、上記実施例1と同様の方法で排ガス浄化用触媒を得て、得られた触媒を試料5aとした。そして、上記実施例1と同様に、試料5aをさらに1000℃で10時間の加熱処理したものを試料5bとし、これらの試料5a,5bの性能を評価した。図5のDTAプロファイルを参照して、図中実線で示す試料5aの発熱ピーク温度Tpkは297℃であり、破線で示す試料5bの発熱ピーク温度Tpkは494℃であり、両者の差は197℃と大きいことが確認された。また、表2に示すように、試料5aの温度T50は310℃であり、試料5bの温度T50は464℃であり、両者の差は154℃と大きいことが確認された。これらの結果より、比較例1で得られた排ガス浄化用触媒は、耐熱性が低く、1000℃程度に加熱されると失活することが判った。
【0031】
(比較例2)
比較例2では、担体粒子を作製する際に、酸化セリウム粉末を配合せず、スズ微粒子分散液の量を3.29gとし、炭素微粒子の混合量を0.50gとした点以外は、上記実施例1と同様の方法で排ガス浄化用触媒を得て、得られた触媒を試料6aとした(このとき、スラリー中に含まれる炭素微粒子の重量は、スズの重量の50%である)。そして、上記実施例1と同様に、試料6aをさらに1000℃で10時間の加熱処理したものを試料6bとし、これらの試料6a,6bの性能を評価した。図6のDTAプロファイルを参照して、図中実線で示す試料6aの発熱ピーク温度Tpkは390℃であり、破線で示す試料6bの発熱ピーク温度Tpkは382℃であり、両者の差は8℃であることが確認された。また、表2に示すように、試料6aの温度T50は439℃であり、試料6bの温度T50は464℃であり、両者の差は25℃と小さいことが確認された。しかし、試料6bのT50が450℃以上となり、比較例2で得られた排ガス浄化用触媒は、1000℃程度に加熱されたときの活性が不十分であることが判った。
【0032】
図6は、担体粒子の酸化スズ含有率と発熱ピーク温度Tpkとの関係を示すグラフであり、図7は、担体粒子の酸化スズ含有率と温度T50との関係を示すグラフである。これらのグラフによれば、PM燃焼温度の指標となるTpk及びT50の双方を低くするには、酸化スズ含有率を20〜80重量%の範囲に設定することが好ましく、50〜80重量%の範囲にすることがより好ましい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態及び実施例によれば、担体粒子を作製する際、前駆体液に酸化セリウム粉末と鋳型としての炭素微粒子とを混合するため、この混合により調整されたスラリーを乾燥すると、酸化セリウムやスズ微粒子の間に炭素微粒子が介在するものが得られる。そして、この乾燥により得られたものを焼成すると、スズ微粒子が酸化されて酸化スズ粒子となると共に、炭素微粒子が燃焼して除去され、この炭素微粒子が除去された部分が空孔となる。このため、焼成後に得られた担体粒子は、酸化セリウムと酸化スズとで構成され、多孔質で広い表面積を有するものとなり、しかも、金属微粒子を担持させるための有効なサイトである酸素欠損を有するものとなる。この担体粒子にAg等の金属微粒子を担持すれば、従来例よりも多量の金属微粒子が分散した状態で担持される。このようにして作製された排ガス浄化用触媒は、低温でもPMを燃焼させることができ、1000℃程度に加熱されても失活しないことが確認された。
【0034】
なお、本発明は、上記に限定されるものではない。例えば、上記実施形態及び実施例では、前駆体液に炭素微粒子を混合した後に酸化セリウム粉末を混合しているが、酸化セリウム粉末と炭素微粒子とを同時に混合してもよく、また、酸化セリウム粉末を混合した後に炭素微粒子を混合してもよい。
【0035】
また、上記実施形態及び実施例では、スズ微粒子を含む前駆体液を用いる場合を例に説明したが、酸化スズ微粒子を含む前駆体液を用いて担体粒子を作製してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7