【実施例1】
【0041】
次に、前記した本実施形態に係る光学素子4の、ガラス基板5とシート状成形体6の接着面間の接着力を評価するために、以下に示す本発明の実施例1〜13と比較用の比較例1〜5の構成で接着力評価を行った。
【0042】
〈実施例1〉
実施例1では、メタアクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)のブロック共重合体とメタアクリル樹脂の混合物からなる厚み400μmのシート状の樹脂成形体(前記したフレネルレンズパターンが形成される前のシート状成形体に相当)に、密着性を高めるために下記の条件でプラズマ処理を行った。
【0043】
樹脂成形体に対面するガラス基板表面には、信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤(商品名:KBM-903)を厚み約40nmで塗布した。そして、180℃の温度で厚み2mmの透明なガラス基板に樹脂成形体を真空圧着(熱圧着)して貼り合わせた構成のガラス基板積層体(ガラス基材積層体)を作製した。
【0044】
樹脂成形体へのプラズマ処理は、次のように行った。
【0045】
春日電機株式会社製の大気圧プラズマ装置(APG-500型)を用いて、供給エアー流量190NL/min、定格出力電力を450〜500W、照射距離を10mmの条件で照射した。大気プラズマが照射される面積は約3cm
2であり、同一場所に約1秒間プラズマが照射される条件でヘッドを動かし、樹脂成形体全体にプラズマを照射した。作製したガラス基板積層体の剥離接着強さ(接着力)は、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0046】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0047】
表1は、上記した実施例1において、シランカップリング剤(商品名:KBM-903)をガラス基板表面に塗布するときの濃度(塗工濃度)と、真空圧着後の乾燥温度を変化させたときにおける、初期の接着状態と、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後の接着状態の評価結果である。
【0048】
【表1】
【0049】
この評価結果から明らかなように、シランカップリング剤の塗工濃度と真空圧着後の乾燥温度を変化させた場合でも、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後の接着力は、初期の接着力からあまり変化することなく、高い接着力であり、接着面が剥離することはなく材料破壊した。
【0050】
〈実施例2〉
実施例2では、実施例1で用いたシランカップリング剤を別のシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製;商品名:KBE-903)に変更した以外は、実施例1と同様の条件でガラス基材積層体を作製した。
【0051】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0052】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0053】
〈実施例3〉
実施例3では、実施例1のシランカップリング剤をガラス基板面ではなく樹脂成形体のガラス基板と接する表面に、水を溶媒として分散した溶液を調整後に厚さ40nmとなるように塗布し、温度40度、湿度95%の条件下で加水分解した以外は、実施例1と同様の条件でガラス基板積層体を作製した。
【0054】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さを、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0055】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0056】
〈実施例4〉
実施例4では、実施例3で用いたシランカップリング剤を別のシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製;商品名:KBE-903)に変更した以外は、実施例3と同様の条件でガラス基板積層体を作製した。
【0057】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0058】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0059】
〈実施例5〉
実施例5では、実施例1のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にイオン交換水を介してゴムロールによるラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0060】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0061】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0062】
〈実施例6〉
実施例6では、実施例1のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にイソプロピルアルコールを介してゴムロールを用いたラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0063】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0064】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0065】
〈実施例7〉
実施例7では、実施例1のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にトルエンを介してゴムロールを用いたラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0066】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0067】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0068】
〈実施例8〉
実施例8では、実施例2のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にイオン交換水を介してゴムロールを用いたラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0069】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0070】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0071】
〈実施例9〉
実施例9では、実施例2のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にイソプロピルアルコールを介してゴムロールを用いたラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0072】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0073】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0074】
〈実施例10〉
実施例10では、実施例2のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にトルエンを介してゴムロールを用いたラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0075】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0076】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0077】
〈実施例11〉
実施例11では、積水化学工業株式会社製の常圧プラズマ表面処理装置を用い、照射ヘッドと樹脂成形体の距離を3mm、照射速度を3m/分で貼り合わせ面を処理された樹脂成形体と、表面にシランカップリング剤を塗布していないガラスを用い、この樹脂成形体とガラス基板の間に、信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤(商品名:KBE−903)を1重量部、超純水を1重量部、エタノールを98重量部を混合した溶液を介してゴムロールによるラミネートにより貼り合せた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0078】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0079】
そして、同じ条件にて作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0080】
〈実施例12〉
実施例12では、積水化学工業株式会社製の常圧プラズマ表面処理装置を用い、照射ヘッドと樹脂成形体の距離を3mm、照射速度を3m/分で貼り合わせ面を処理された樹脂成形体と、表面にシランカップリング剤を塗布していないガラスを用い、この樹脂成形体とガラス基板の間に、信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤(商品名:KBE−903)を1重量部、超純水を3重量部、エタノールを96重量部を混合した溶液を介してゴムロールによるラミネートにより貼り合せた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0081】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0082】
そして、同じ条件にて作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0083】
〈実施例13〉
実施例13では、積水化学工業株式会社製の常圧プラズマ表面処理装置を用い、照射ヘッドと樹脂成形体の距離を3mm、照射速度を3m/分で貼り合わせ面を処理された樹脂成形体と、表面にシランカップリング剤を塗布していないガラスを用い、この樹脂成形体とガラス基板の間に、信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤(商品名:KBE−903)を1重量部、超純水を99重量部を混合した溶液を介してゴムロールによるラミネートにより貼り合せた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0084】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0085】
そして、同じ条件にて作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0086】
〈比較例1〉
比較例1では、実施例1の樹脂成形体に対してプラズマ処理しない樹脂成形体を用いる以外は、実施例1と同様にしてガラス基板積層体を作製した。
【0087】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。このときの接着力は33.2N/25mmであり、樹脂成形体はガラス基板から部分的に剥離した。
【0088】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、接着力は5.5N/25mmと更に弱くなり、樹脂成形体はガラス基板から容易に剥離した。
【0089】
〈比較例2〉
比較例2では、実施例2の樹脂成形体に対してプラズマ処理しない樹脂成形体を用いる以外は、実施例1と同様の接着方法でガラス基板積層体を作製した。
【0090】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。このときの接着力は48.9N/25mmであり、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0091】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、接着力は2.5N/25mmと弱くなり、樹脂成形体はガラス基板から容易に剥離した。
【0092】
〈比較例3〉
比較例3では、実施例1のガラス基板に対してシランカップリング処理しない以外は、このガラス基板と実施例1のようなプラズマ処理した樹脂成形体を用い、実施例1と同様の接着方法でガラス基板積層体を作製した。
【0093】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。このときの接着力は38.3N/25mmであり、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0094】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に500時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、接着力は0.5N/25mmと弱くなり、樹脂成形体はガラス基板から容易に剥離した。
【0095】
〈比較例4〉
比較例4では、シランカップリング処理していない実施例1のガラス基板と、プラズマ処理していない実施例1の樹脂成形体を用い、それ以外は、実施例1と同様の接着方法でガラス基板積層体を作製した。
【0096】
比較例4のガラス基板積層体では、ガラス基板と樹脂成形体は接着せず、容易に剥離する結果となった。
【0097】
〈比較例5〉
比較例5では、メタアクリル酸メチル(MMA)とゴム成分を含む株式会社クラレ製のコモグラス(商品名:HI50)からなる厚み500μmのシート状の樹脂成形体を用いる以外は、実施例1と同様の接着方法でガラス基板積層体を作製した。
【0098】
比較例5のガラス基板積層体では、ガラス基板と樹脂成形体は接着せず、容易に剥離する結果となった。