特許第6376565号(P6376565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6376565ガラス基材積層体の製造方法、光学素子の製造方法、光学素子及び集光型太陽光発電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376565
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】ガラス基材積層体の製造方法、光学素子の製造方法、光学素子及び集光型太陽光発電装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20180813BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B32B17/10
   G02B3/08
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-555873(P2015-555873)
(86)(22)【出願日】2014年12月26日
(86)【国際出願番号】JP2014084553
(87)【国際公開番号】WO2015102093
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2017年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-581(P2014-581)
(32)【優先日】2014年1月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】安部 浩司
(72)【発明者】
【氏名】平松 慎二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勝洋
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/010571(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/055798(WO,A1)
【文献】 特開昭60−2358(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/064551(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00〜43/00
G02B 1/00〜 1/08
3/00〜 3/14
7/00
7/18〜 7/24
H01L51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材上に樹脂成形体を積層したガラス基材積層体の製造方法であって、
前記樹脂成形体は、アクリル系ブロック共重合体(A)又はアクリル系ブロック共重合体(A)と、主としてメタクリル酸エステル単位から構成されるアクリル樹脂(B)とを含む熱可塑性重合体組成物を用いて形成され、前記熱可塑性重合体組成物は、前記アクリル系ブロック共重合体(A)が、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体であり、重量平均分子量が10,000〜100,000である熱可塑性樹脂成形体であり、
前記熱可塑性樹脂成形体のガラス基材側の第1界面に活性エネルギーを照射して、前記第1界面を表面処理し、
シランカップリング剤を架橋剤として、前記ガラス基材の熱可塑性樹脂成形体側の第2界面に前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を接着させることを特徴とするガラス基材積層体の製造方法。
【請求項2】
前記シランカップリング剤によって、接着前に前記ガラス基材の前記第2界面がシランカップリング処理され、
前記ガラス基材の前記第2界面と前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を、熱圧着することで接着させることを特徴とする請求項1に記載のガラス基材積層体の製造方法。
【請求項3】
前記シランカップリング剤によって、接着前に前記ガラス基材の前記第2界面がシランカップリング処理され、
前記ガラス基材の前記第2界面と前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を、液体により空隙を埋め、かつ液体を排出しつつラミネートすることで接着させることを特徴とする請求項1に記載のガラス基材積層体の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス基材の前記第2界面と前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を、前記シランカップリング剤を含有した液体により空隙を埋め、かつ液体を排出しつつラミネートすることで接着させることを特徴とする請求項1に記載のガラス基材積層体の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面に、前記シランカップリング剤が内包されており、
前記ガラス基材の前記第2界面と前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を、液体により空隙を埋め、かつ液体を排出しつつラミネートすることで接着させることを特徴とする請求項1に記載のガラス基材積層体の製造方法。
【請求項6】
ガラス基材と、一方の面に光学機能パターンを有し他方の面が前記ガラス基材上に接着された有機性樹脂からなるシート状成形体を備えた光学素子の製造方法であって、
前記シート状成形体は、アクリル系ブロック共重合体(A)又はアクリル系ブロック共重合体(A)と、主としてメタクリル酸エステル単位から構成されるアクリル樹脂(B)とを含む熱可塑性重合体組成物を用いて形成され、前記熱可塑性重合体組成物は、前記アクリル系ブロック共重合体(A)が、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体であり、重量平均分子量が10,000〜100,000である熱可塑性樹脂成形体であり、
前記熱可塑性樹脂成形体のガラス基材側の第1界面に活性エネルギーを照射して、前記第1界面を表面処理し、
シランカップリング剤を架橋剤として、前記ガラス基材の熱可塑性樹脂成形体側の第2界面に前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を接着させることを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記シランカップリング剤によって、接着前に前記ガラス基材の前記第2界面がシランカップリング処理され、
前記ガラス基材の前記第2界面と前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を、熱圧着することで接着させることを特徴とする請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記シランカップリング剤によって、接着前に前記ガラス基材の前記第2界面がシランカップリング処理され、
前記ガラス基材の前記第2界面と前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を、液体により空隙を埋め、かつ液体を排出しつつラミネートすることで接着させることを特徴とする請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項9】
前記ガラス基材の前記第2界面と前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を、前記シランカップリング剤を含有した液体により空隙を埋め、かつ液体を排出しつつラミネートすることで接着させることを特徴とする請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面に、前記シランカップリング剤が内包されており、
前記ガラス基材の前記第2界面と前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を、液体により空隙を埋め、かつ液体を排出しつつラミネートすることで接着させることを特徴とする請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項11】
ガラス基材と、一方の面に光学機能パターンを有し他方の面が前記ガラス基材上に接着された有機性樹脂からなるシート状成形体を備えた光学素子であって、
前記シート状成形体は、アクリル系ブロック共重合体(A)又はアクリル系ブロック共重合体(A)と、主としてメタクリル酸エステル単位から構成されるアクリル樹脂(B)とを含む熱可塑性重合体組成物を用いて形成され、前記熱可塑性重合体組成物は、前記アクリル系ブロック共重合体(A)が、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体であり、重量平均分子量が10,000〜100,000である熱可塑性樹脂成形体であり、
前記熱可塑性樹脂成形体のガラス基材側の第1界面は、活性エネルギーの照射で表面処理されており、
シランカップリング剤を架橋剤として、前記ガラス基材の熱可塑性樹脂成形体側の第2界面に前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面が接着されていることを特徴とする光学素子。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂成形体は、組成の異なる2種類の樹脂層からなり、前記ガラス基材に近接した側の樹脂層の弾性率が他方の樹脂層よりも低いことを特徴とする請求項11に記載の光学素子。
【請求項13】
前記ガラス基材の中に紫外線吸収剤を含んでいることを特徴とする請求項11又は12に記載の光学素子。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂成形体の中に紫外線吸収剤を含んでいることを特徴とする請求項11又は12に記載の光学素子。
【請求項15】
前記シート状成形体に形成された前記光学機能パターンは、フレネルレンズパターンであることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項16】
太陽光を集光する光学素子と、前記光学素子により集光された太陽光を受光して光電変換する太陽電池素子を備えた集光型太陽光発電装置において、
前記光学素子は、請求項15に記載の光学素子であることを特徴とする集光型太陽光発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材積層体の製造方法、光学素子の製造方法、光学素子及び集光型太陽光発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーの利用が注目されており、そのひとつに太陽光のエネルギーを太陽電池によって電力に変換する太陽光発電がある。このような太陽光発電として、発電効率(光電変換効率)を高めて大電力を得るために、同一平面上に複数配置された太陽電池素子の前方側に、太陽光を各太陽電池素子に集光させるための光学素子(集光レンズ)を配設した構成の集光型太陽光発電装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
集光型太陽光発電装置は、光学素子(集光レンズ)で太陽光を集光して太陽電池素子に受光させる構成により、高価な太陽電池素子のサイズを小さくできるので、発電装置全体の低コスト化を図ることができる。このため、集光型太陽光発電装置は、日照時間が長く、集光面を大面積化しても設置可能な広大な地域などで、電力供給用途として普及しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−343435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の集光型太陽光発電装置では、アクリル樹脂(PMMA樹脂)からなるシート状の光学素子(集光レンズ)の太陽光入射面側の表面には、耐環境性などを考慮して透明なガラス基板が接着されている。
【0006】
ところで、透明性と耐光性と兼ね備えたアクリル系樹脂からなる光学部材(例えば、シート状の光学素子)とガラス基材との接着には、従来よりシリコーン樹脂等の接着剤などが用いられているが、特に屋外等での高温高湿環境下では長期的な接着力に問題があった。
【0007】
また、透明なアクリル系樹脂の表面を活性化処理することで、接着剤なしでもガラス基材との接着力を初期の間は維持することができるが、特に高温高湿環境下では時間の経過とともに接着力が著しく低下し、剥離するおそれがある。
【0008】
このように、ガラス基材とアクリル樹脂からなるシート状の光学素子との接着面間の接着力が低下し、接着面間に剥離が生じると、太陽電池素子上に光を効率よく集光できなくなり、発電効率が低下する。
【0009】
そこで、本発明は、ガラス基材と透明なアクリル系樹脂との接着面間を、高温高湿環境下においても長期にわたって安定して強い接着力で接着させることができるガラス基材積層体の製造方法、光学素子の製造方法、光学素子及び集光型太陽光発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明に係るガラス基材積層体の製造方法は、ガラス基材上に樹脂成形体を積層したガラス基材積層体の製造方法であって、前記樹脂成形体は、アクリル系ブロック共重合体(A)又はアクリル系ブロック共重合体(A)と、主としてメタクリル酸エステル単位から構成されるアクリル樹脂(B)とを含む熱可塑性重合体組成物を用いて形成され、前記熱可塑性重合体組成物は、前記アクリル系ブロック共重合体(A)が、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体であり、重量平均分子量が10,000〜100,000である熱可塑性樹脂成形体であり、前記熱可塑性樹脂成形体のガラス基材側の第1界面に活性エネルギーを照射して、前記第1界面を表面処理し、シランカップリング剤を架橋剤として、前記ガラス基材の熱可塑性樹脂成形体側の第2界面に前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を接着させることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る光学素子の製造方法は、ガラス基材と、一方の面に光学機能パターンを有し他方の面が前記ガラス基材上に接着された有機性樹脂からなるシート状成形体を備えた光学素子の製造方法であって、前記シート状成形体は、アクリル系ブロック共重合体(A)又はアクリル系ブロック共重合体(A)と、主としてメタクリル酸エステル単位から構成されるアクリル樹脂(B)とを含む熱可塑性重合体組成物を用いて形成され、前記熱可塑性重合体組成物は、前記アクリル系ブロック共重合体(A)が、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体であり、重量平均分子量が10,000〜100,000である熱可塑性樹脂成形体であり、前記熱可塑性樹脂成形体のガラス基材側の第1界面に活性エネルギーを照射して、前記第1界面を表面処理し、シランカップリング剤を架橋剤として、前記ガラス基材の熱可塑性樹脂成形体側の第2界面に前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面を接着させることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る光学素子は、ガラス基材と、一方の面に光学機能パターンを有し他方の面が前記ガラス基材上に接着された有機性樹脂からなるシート状成形体を備えた光学素子であって、前記シート状成形体は、アクリル系ブロック共重合体(A)又はアクリル系ブロック共重合体(A)と、主としてメタクリル酸エステル単位から構成されるアクリル樹脂(B)とを含む熱可塑性重合体組成物を用いて形成され、前記熱可塑性重合体組成物は、前記アクリル系ブロック共重合体(A)が、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体であり、重量平均分子量が10,000〜100,000である熱可塑性樹脂成形体であり、前記熱可塑性樹脂成形体のガラス基材側の第1界面は、活性エネルギーの照射で表面処理されており、シランカップリング剤を架橋剤として、前記ガラス基材の熱可塑性樹脂成形体側の第2界面に前記熱可塑性樹脂成形体の前記第1界面が接着されていることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る集光型太陽光発電装置は、太陽光を集光する光学素子と、前記光学素子により集光された太陽光を受光して光電変換する太陽電池素子を備えた集光型太陽光発電装置において、前記光学素子は、請求項15に記載の光学素子であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガラス基材と樹脂成形体(シート状成形体)の接着面間を強固に接着させることが可能となり、高温高湿環境下においても、ガラス基材と樹脂成形体(シート状成形体)の接着面間が剥離することなく、長期にわたって安定して強い接着力で接着されたガラス基材積層体(光学素子)を提供することができる。
【0015】
また、本発明の集光型太陽光発電装置は、高温高湿環境下においても、ガラス基材とシート状成形体の接着面間が剥離することなく、長期にわたって安定して強い接着力で接着された光学素子によって、長期にわたって安定して高い発電効率を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る光学素子を備えた集光型太陽光発電装置の概略構成を示した図。
図2】本発明の実施形態に係る集光型太陽光発電装置の太陽光入射側から見た概要を示した平面図。
図3A】ガラス基板とシート状成形体の各接着面を示した図。
図3B】ガラス基板とシート状成形体の各接着面が接着された状態を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る光学素子を備えた集光型太陽光発電装置の概略構成を模式的に示した概略断面図である。
【0018】
〈集光型太陽光発電装置の全体構成〉
図1に示すように、本実施形態に係る集光型太陽光発電装置1は、受光した太陽光を光電変換する太陽電池素子(太陽電池セル)2と、該太陽電池素子2が実装された太陽電池基板3と、太陽電池素子2の前方側(太陽光入射側)に対向するようにして配置され、太陽光を集光する光学素子4とを主要構成部材として備えている。なお、図1において、L1は光学素子4に入射する太陽光、L2は光学素子4で集光された太陽光を示している。
【0019】
光学素子4は、太陽光入射側に設けた透明なガラス基板5と、該ガラス基板5の出射側(太陽電池素子2と対向する側)の面に接着された透光性を有する熱可塑性重合体組成物からなるシート状成形体6とで構成されている。
【0020】
シート状成形体6のガラス基板5と反対側(太陽電池素子2と対向する側)の面には、入射された太陽光を太陽電池素子2の受光領域に集光させるフレネルレンズパターン6aが同心円状に形成されている。このように、このフレネルレンズパターン6aが形成されたシート状成形体6は、集光レンズとして機能する。
【0021】
この集光型太陽光発電装置1は、図2に示すように、太陽電池基板3(図1参照)上に一定間隔で複数の太陽電池素子2が実装され、また各太陽電池素子2の受光領域とそれぞれ対向するようにして複数の光学素子4が同一平面上に一体的に設けられている。
【0022】
各太陽電池素子2と各光学素子4は、精度よく位置決めされて配置されており、また太陽電池基板3と光学素子4との間の側面周囲等は、太陽電池基板3と光学素子4との間の空間内部に湿気(水分)や塵等が侵入しないように封止されている。なお、対向配置される太陽電池素子2と光学素子4の数や大きさは、集光型太陽光発電装置1のサイズや設置場所等によって任意に設定される。
【0023】
〈シート状成形体6の詳細〉
本実施形態におけるシート状成形体6は、透明性、耐候性、柔軟性等に優れている、以下のようなアクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル樹脂(B)とを含む熱可塑性重合体組成物を用いて形成されている。
【0024】
上記の熱可塑性重合体組成物は、前記アクリル系ブロック共重合体(A)が、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)が結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であって;
前記アクリル系ブロック共重合体(A)が、重合体ブロック(a2)の含有量が40質量%以上80質量%以下であるアクリル系ブロック共重合体(A1)と重合体ブロック(a2)の含有量が10質量%以上40質量%未満であるアクリル系ブロック共重合体(A2)を含み;
前記アクリル樹脂(B)が、主としてメタクリル酸エステル単位から構成され;
アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル樹脂(B)との質量比〔(A)/(B)〕が97/3〜10/90である。
【0025】
なお、前記アクリル系ブロック共重合体(A)は、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)の両端末にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)が結合した構造、即ち、(a2)−(a1)−(a2)の構造(この構造中「−」は、化学結合を示す)を分子内に少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体である。
【0026】
また、前記アクリル樹脂(B)は、主として、メタクリル酸エステル単位から構成されるアクリル樹脂である。上記の熱可塑性重合体組成物からなるシート状成形体の透明性、成形加工性等を向上させる観点から、メタクリル酸エステルの単独重合体又はメタクリル酸エステル単位を主体とする共重合体であることが好ましい。
【0027】
本実施形態における上記の熱可塑性重合体組成物の詳細については、国際公開第2010/055798号に記載されている。そして、この熱可塑性重合体組成物からなるシート状成形体(表面にフレネルレンズパターンが形成される前の成形体)は、例えば、周知のTダイ法やインフレーション法などによって製造することができる。
【0028】
また、この熱可塑性重合体組成物からなるシート状成形体6の表面にフレネルレンズパターン6aを形成する方法として、例えば、周知のプレス成形法、射出成形法、紫外線硬化性樹脂を用いた2P(Photo Polymerization)成形法などが挙げられる。
【0029】
次に、本実施形態に係るガラス基材積層体としての光学素子4の製造方法における、ガラス基板5とシート状成形体6との接着方法について説明する。
【0030】
図3Aに示すように、ガラス基板5とシート状成形体6とを接着させる前に、シート状成形体6のガラス基板5との接着面(第1界面)6bにプラズマ(活性エネルギー)を照射して、表面処理(プラズマ処理)する。
【0031】
また、ガラス基板5とシート状成形体6とを接着させる前に、ガラス基板5のシート状成形体6との接着面(第2界面)5aにシランカップリング剤を塗布する処理を行う。
【0032】
そして、図3Bに示すように、このような処理が行われたガラス基板5とシート状成形体6の接着面5a,6b同士を、例えば、周知の真空圧着(熱圧着)法や真空ラミネート法によって接着する。
【0033】
このように、アクリル酸エステルを含む樹脂成形体(シート状成形体6)の接着面にプラズマ(活性化エネルギー)を照射することで、この接着面表面のアクリル酸エステルのエステル基を切断することにより、COOH基やOH基が増加した状態において、ガラス基板5とシート状成形体6の接着面5a,6b間に、特にアミノ基やエポキシ基末端を有するシランカップリング剤を介することで、シランカップリング剤の有機官能基であるアミノ基とエポキシ基が化学結合であるアミド結合やエステル結合の形成、または水素結合や塩の形成によって強固に結合する。
【0034】
シランカップリング剤の種類は限定されるものではないが、COOH基やOH基とよい親和性を示す材料が好ましい。シランカップリング剤の一例として信越化学工業株式会社の2-(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM−303),3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシラン(KBM-402)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBE-402)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE-403)、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-602)、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-603)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903)、3-トリエトキシシリル-N-(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン(KBE-9103)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573)等が挙げられる。
【0035】
これにより、ガラス基板5とシート状成形体6の接着面5a,6b間が強固に接着されるので、高温高湿環境下においても、ガラス基板5とシート状成形体6の接着面5a,6b間が剥離することなく、長期にわたって安定して強い接着力で接着された光学素子4を得ることができる。
【0036】
よって、高温高湿環境等の厳しい自然環境下においても長期にわたって、この光学素子4で集光された光を、太陽電池素子2の受光領域に良好に受光させることができるので、長期にわたって安定して良好な発電効率を維持することができる。
【0037】
なお、ガラス基板5側の接着面にシランカップリング剤を塗布する代わりに、プラズマ処理されたシート状成形体6側の接着面にシランカップリング剤を塗布するようにしてもよい。
【0038】
また、ゴムロールを用いたラミネートによってガラス基板5とシート状成形体6の接着面同士を接着させる際に、溶剤や水などの液体を接着面同士の間に介して気泡を含まないように埋め、かつ残留する液体を押し出して排出しながら接着させるようにしてもよい。気泡を含まないように液体を介するために、該工程は減圧下で行うのが好ましい。用いる液体としては、排出後に残渣を残さないために純度の高いものを用いるのが好ましく、水の場合は、イオン交換水、蒸留水等のいわゆる純水を用いるのが好ましい。
【0039】
また、上記した光学素子4の、シート状成形体6又は/及びガラス基板5の中に紫外線吸収剤を含むように構成してもよい。これらの構成によって、光学素子4に入射する太陽光の紫外線が吸収されるので、紫外線によるシート状成形体6の着色や物性の変化を抑制し、長期にわたって高い発電効率を維持することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、ガラス基材積層体が、ガラス基板5上に樹脂成形体として表面にフレネルレンズパターン6aを有するシート状成形体6(集光レンズ)が接着された光学素子であったが、上記したフレネルレンズパターン6aを有するシート状成形体6以外の樹脂成形体においても同様に本発明を適用することができる。
【実施例1】
【0041】
次に、前記した本実施形態に係る光学素子4の、ガラス基板5とシート状成形体6の接着面間の接着力を評価するために、以下に示す本発明の実施例1〜13と比較用の比較例1〜5の構成で接着力評価を行った。
【0042】
〈実施例1〉
実施例1では、メタアクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)のブロック共重合体とメタアクリル樹脂の混合物からなる厚み400μmのシート状の樹脂成形体(前記したフレネルレンズパターンが形成される前のシート状成形体に相当)に、密着性を高めるために下記の条件でプラズマ処理を行った。
【0043】
樹脂成形体に対面するガラス基板表面には、信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤(商品名:KBM-903)を厚み約40nmで塗布した。そして、180℃の温度で厚み2mmの透明なガラス基板に樹脂成形体を真空圧着(熱圧着)して貼り合わせた構成のガラス基板積層体(ガラス基材積層体)を作製した。
【0044】
樹脂成形体へのプラズマ処理は、次のように行った。
【0045】
春日電機株式会社製の大気圧プラズマ装置(APG-500型)を用いて、供給エアー流量190NL/min、定格出力電力を450〜500W、照射距離を10mmの条件で照射した。大気プラズマが照射される面積は約3cmであり、同一場所に約1秒間プラズマが照射される条件でヘッドを動かし、樹脂成形体全体にプラズマを照射した。作製したガラス基板積層体の剥離接着強さ(接着力)は、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0046】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0047】
表1は、上記した実施例1において、シランカップリング剤(商品名:KBM-903)をガラス基板表面に塗布するときの濃度(塗工濃度)と、真空圧着後の乾燥温度を変化させたときにおける、初期の接着状態と、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後の接着状態の評価結果である。
【0048】
【表1】
【0049】
この評価結果から明らかなように、シランカップリング剤の塗工濃度と真空圧着後の乾燥温度を変化させた場合でも、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後の接着力は、初期の接着力からあまり変化することなく、高い接着力であり、接着面が剥離することはなく材料破壊した。
【0050】
〈実施例2〉
実施例2では、実施例1で用いたシランカップリング剤を別のシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製;商品名:KBE-903)に変更した以外は、実施例1と同様の条件でガラス基材積層体を作製した。
【0051】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0052】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0053】
〈実施例3〉
実施例3では、実施例1のシランカップリング剤をガラス基板面ではなく樹脂成形体のガラス基板と接する表面に、水を溶媒として分散した溶液を調整後に厚さ40nmとなるように塗布し、温度40度、湿度95%の条件下で加水分解した以外は、実施例1と同様の条件でガラス基板積層体を作製した。
【0054】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さを、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0055】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0056】
〈実施例4〉
実施例4では、実施例3で用いたシランカップリング剤を別のシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製;商品名:KBE-903)に変更した以外は、実施例3と同様の条件でガラス基板積層体を作製した。
【0057】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0058】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0059】
〈実施例5〉
実施例5では、実施例1のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にイオン交換水を介してゴムロールによるラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0060】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0061】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0062】
〈実施例6〉
実施例6では、実施例1のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にイソプロピルアルコールを介してゴムロールを用いたラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0063】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0064】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0065】
〈実施例7〉
実施例7では、実施例1のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にトルエンを介してゴムロールを用いたラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0066】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0067】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0068】
〈実施例8〉
実施例8では、実施例2のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にイオン交換水を介してゴムロールを用いたラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0069】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0070】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0071】
〈実施例9〉
実施例9では、実施例2のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にイソプロピルアルコールを介してゴムロールを用いたラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0072】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0073】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0074】
〈実施例10〉
実施例10では、実施例2のように処理されたガラス基板と樹脂成形体を用い、このガラス基板と樹脂成形体の間にトルエンを介してゴムロールを用いたラミネートにより貼り合わせた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0075】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0076】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0077】
〈実施例11〉
実施例11では、積水化学工業株式会社製の常圧プラズマ表面処理装置を用い、照射ヘッドと樹脂成形体の距離を3mm、照射速度を3m/分で貼り合わせ面を処理された樹脂成形体と、表面にシランカップリング剤を塗布していないガラスを用い、この樹脂成形体とガラス基板の間に、信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤(商品名:KBE−903)を1重量部、超純水を1重量部、エタノールを98重量部を混合した溶液を介してゴムロールによるラミネートにより貼り合せた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0078】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0079】
そして、同じ条件にて作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0080】
〈実施例12〉
実施例12では、積水化学工業株式会社製の常圧プラズマ表面処理装置を用い、照射ヘッドと樹脂成形体の距離を3mm、照射速度を3m/分で貼り合わせ面を処理された樹脂成形体と、表面にシランカップリング剤を塗布していないガラスを用い、この樹脂成形体とガラス基板の間に、信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤(商品名:KBE−903)を1重量部、超純水を3重量部、エタノールを96重量部を混合した溶液を介してゴムロールによるラミネートにより貼り合せた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0081】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0082】
そして、同じ条件にて作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0083】
〈実施例13〉
実施例13では、積水化学工業株式会社製の常圧プラズマ表面処理装置を用い、照射ヘッドと樹脂成形体の距離を3mm、照射速度を3m/分で貼り合わせ面を処理された樹脂成形体と、表面にシランカップリング剤を塗布していないガラスを用い、この樹脂成形体とガラス基板の間に、信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤(商品名:KBE−903)を1重量部、超純水を99重量部を混合した溶液を介してゴムロールによるラミネートにより貼り合せた構成のガラス基板積層体を作製した。
【0084】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0085】
そして、同じ条件にて作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0086】
〈比較例1〉
比較例1では、実施例1の樹脂成形体に対してプラズマ処理しない樹脂成形体を用いる以外は、実施例1と同様にしてガラス基板積層体を作製した。
【0087】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。このときの接着力は33.2N/25mmであり、樹脂成形体はガラス基板から部分的に剥離した。
【0088】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、接着力は5.5N/25mmと更に弱くなり、樹脂成形体はガラス基板から容易に剥離した。
【0089】
〈比較例2〉
比較例2では、実施例2の樹脂成形体に対してプラズマ処理しない樹脂成形体を用いる以外は、実施例1と同様の接着方法でガラス基板積層体を作製した。
【0090】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。このときの接着力は48.9N/25mmであり、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0091】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に2000時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、接着力は2.5N/25mmと弱くなり、樹脂成形体はガラス基板から容易に剥離した。
【0092】
〈比較例3〉
比較例3では、実施例1のガラス基板に対してシランカップリング処理しない以外は、このガラス基板と実施例1のようなプラズマ処理した樹脂成形体を用い、実施例1と同様の接着方法でガラス基板積層体を作製した。
【0093】
作製したガラス基板積層体の剥離接着強さは、JISK685-2で規定されている180度剥離接着強さを測定する手法で測定した。このときの接着力は38.3N/25mmであり、樹脂成形体はガラス基板から剥離せずに材料破壊し、強固に接着していた。
【0094】
そして、同じ条件で作製したガラス基板積層体を、高温高湿(温度65℃、湿度85%)の環境下に500時間放置後、同様の接着力測定を実施した結果、接着力は0.5N/25mmと弱くなり、樹脂成形体はガラス基板から容易に剥離した。
【0095】
〈比較例4〉
比較例4では、シランカップリング処理していない実施例1のガラス基板と、プラズマ処理していない実施例1の樹脂成形体を用い、それ以外は、実施例1と同様の接着方法でガラス基板積層体を作製した。
【0096】
比較例4のガラス基板積層体では、ガラス基板と樹脂成形体は接着せず、容易に剥離する結果となった。
【0097】
〈比較例5〉
比較例5では、メタアクリル酸メチル(MMA)とゴム成分を含む株式会社クラレ製のコモグラス(商品名:HI50)からなる厚み500μmのシート状の樹脂成形体を用いる以外は、実施例1と同様の接着方法でガラス基板積層体を作製した。
【0098】
比較例5のガラス基板積層体では、ガラス基板と樹脂成形体は接着せず、容易に剥離する結果となった。
【関連出願の相互参照】
【0099】
本願は、2014年1月6日に日本国特許庁に出願された特願2014−000581号に基づく優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。
【符号の説明】
【0100】
1 集光型太陽光発電装置
2 太陽電池素子
3 太陽電池基板
4 光学素子
5 ガラス基板(ガラス基材)
5a 接着面
6 シート状成形体
6a フレネルレンズパターン
6b 接着面
図1
図2
図3A
図3B