(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376567
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】高温イベントにおける動作を保証するべく動作頻度情報を持つプロセッサ
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20180813BHJP
G06F 1/04 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
G06F1/20 D
G06F1/20 B
G06F1/04 550
【請求項の数】24
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-46330(P2016-46330)
(22)【出願日】2016年3月9日
(62)【分割の表示】特願2014-42673(P2014-42673)の分割
【原出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-136411(P2016-136411A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2017年1月17日
(31)【優先権主張番号】13/843,855
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003943
【氏名又は名称】インテル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルマ、アンクシュ
(72)【発明者】
【氏名】ステインブレシェル、ロビン エー.
(72)【発明者】
【氏名】スミス、スーザン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】アフジャ、サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ガーグ、ヴィヴェック
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、テッシル
(72)【発明者】
【氏名】シストラ、クリシュナカンス ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ポワリエ、クリス
(72)【発明者】
【氏名】ロウランド、マーティン マーク ティー.
【審査官】
三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0255972(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0097603(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/018635(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/04−12/16
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサであって、
極度の熱イベントに対応する外囲温度について前記プロセッサの動作が保証される前記プロセッサの最高動作周波数および前記最高動作周波数での保証される動作についての時間制限を特定する情報を格納する不揮発性ストレージ回路であって、前記極度の熱イベントが1つ又は複数のファンの故障を含む、不揮発性ストレージ回路と、
前記不揮発性ストレージ回路にアクセスし、前記極度の熱イベントが発生すると、前記時間制限を超えない期間、前記プロセッサの動作周波数を前記最高動作周波数に設定することによって、前記プロセッサの性能および電力状態を管理する電力管理回路と
を備えるプロセッサ。
【請求項2】
前記最高動作周波数は、前記プロセッサの半導体チップの最高ダイ温度に対応する請求項1に記載のプロセッサ。
【請求項3】
前記プロセッサの動作は、限られた時間にわたって保証される請求項1または2に記載のプロセッサ。
【請求項4】
前記時間制限は、少なくとも2時間である請求項3に記載のプロセッサ。
【請求項5】
前記時間制限は、少なくとも2日である請求項3に記載のプロセッサ。
【請求項6】
前記不揮発性ストレージ回路はさらに、公称最高定格仕様を格納し、前記外囲温度における前記最高動作周波数は、前記公称最高定格仕様を超えることに対応する請求項1から5の何れか1項に記載のプロセッサ。
【請求項7】
前記不揮発性ストレージ回路は、ファンの少なくとも3つの状態についての情報を格納する請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセッサ。
【請求項8】
前記設定は、前記動作周波数を低減することである請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセッサ。
【請求項9】
前記電力管理回路はさらに、前記時間制限に近づくと前記動作周波数を低減する請求項8に記載のプロセッサ。
【請求項10】
プロセッサについて、極度の熱イベントに対応する外囲温度で前記プロセッサの動作が保証される前記プロセッサの最高動作周波数および前記最高動作周波数での保証される動作についての時間制限を特定する情報を取得する段階であって、前記極度の熱イベントが1つ又は複数のファンの故障を含む、段階と、
前記情報に基づき、前記プロセッサの動作が保証される外囲温度および冷却システムの状態の関数として、前記プロセッサの性能状態を決定する段階と
を備える方法。
【請求項11】
前記時間制限は、少なくとも2時間である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記情報は、前記プロセッサの不揮発性ストレージに組み込まれる請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記情報は、前記プロセッサの電源がオンになると、前記不揮発性ストレージから読み出され、前記プロセッサのシステムメモリにロードされる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記情報は、前記プロセッサの電源がオンになると、前記不揮発性ストレージから読み出され、前記プロセッサのレジスタ空間にロードされる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
プロセッサの外囲温度および前記プロセッサの冷却システムの状態を決定する段階であって、前記外囲温度が極度の熱イベントに対応し、前記極度の熱イベントが1つ又は複数のファンの故障を含む、段階と、
前記プロセッサの性能状態を決定する段階であって、前記性能状態での保証される動作についての時間制限、および、前記プロセッサの外囲温度および前記冷却システムの状態の関数として前記プロセッサの動作が保証される前記プロセッサの複数の性能状態を特定する情報を参照することで、前記プロセッサの動作が保証される前記プロセッサの前記性能状態を決定する段階と、
前記プロセッサを前記性能状態に設定する段階と
を備える方法。
【請求項16】
前記情報は、前記プロセッサが集積化されているコンピューティングシステムのシステムメモリ内に存在し、前記設定する段階は、前記コンピューティングシステムの電力管理インテリジェンスによって実行される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コンピューティングシステムの電源が入ると、システムメモリに前記情報をロードする段階をさらに備える請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記時間制限は、少なくとも2時間である請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
コンピューティングシステムに、
プロセッサの外囲温度および前記プロセッサの冷却システムの状態を決定する段階であって、前記外囲温度が極度の熱イベントに対応し、前記極度の熱イベントが1つ又は複数のファンの故障を含む、段階と、
前記プロセッサの性能状態を決定する段階であって、前記性能状態での保証される動作についての時間制限、および、前記プロセッサの外囲温度および前記冷却システムの状態の関数として前記プロセッサの動作が保証される前記プロセッサの複数の性能状態を特定する情報を参照することで、前記プロセッサの動作が保証される前記プロセッサの前記性能状態を決定する段階と、
前記プロセッサを前記性能状態に設定する段階と
を実行させるプログラム。
【請求項20】
前記情報は、前記プロセッサが集積化されている前記コンピューティングシステムのシステムメモリ内に存在し、前記設定する段階は、前記コンピューティングシステムの電力管理インテリジェンスによって実行される請求項19に記載のプログラム。
【請求項21】
前記時間制限は、少なくとも2時間である請求項19または20に記載のプログラム。
【請求項22】
前記コンピューティングシステムにさらに、前記コンピューティングシステムの電源が入ると、前記コンピューティングシステムのシステムメモリに前記情報をロードする段階を実行させる請求項19から21の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項23】
決定した前記外囲温度および前記冷却システムの状態の一方は、変更された外囲温度および変更された前記冷却システムの状態の一方であり、前記性能状態を決定する段階は、前記プロセッサの動作が保証される新しい性能状態を特定する段階を有する請求項19から22の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項24】
請求項19から23のいずれか一項に記載のプログラムを格納するコンピュータ可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、概してコンピューティングシステムに関し、より具体的には動作を保証するために最高温度情報を持つプロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューティングシステムの消費電力が懸念事項となる中、大半の最新型のシステムは高度な電力管理機能を持つ。一般的な構成では、コンピュータシステムのプロセッサ(複数のプロセッシングコアを含むとしてもよい)について「性能」状態および「電力」状態の両方を定義する。プロセッサの性能とは、一定の期間で作業を行う能力である。プロセッサの性能が高い程、一定の期間で行うことができる作業が多くなる。このため、プロセッサの消費電力は、性能が向上するにつれて、増加する。
【0003】
プロセッサの性能は、内部クロックの速度および電圧レベルを変更することで実行時間中に調整することができる。このため、プロセッサのさまざまな性能状態はそれぞれ、異なるクロック設定および内部電圧設定に対応するので、性能と消費電力との間のトレードオフが異なる。アドバンスドコンフィグレーションアンドパワーインターフェース(ACPI)規格によると、複数の異なる性能状態は、複数の異なる「P+数」P0、P1、P2、・・・、P_Rと分類される。P0は、最も高い性能状態および消費電力状態を表し、P_Rは、プロセッサが作業を実行可能な消費電力であってそのうち最も低い消費電力レベルを表す。「P_R」における「R」という用語は、プロセッサ毎に性能状態の数が異なる可能性があることを意味する。
【0004】
性能状態と対照的に、電力状態は主に、プロセッサについて複数の異なる「スリープモード」を定義することに関する。ACPI規格によると、C0状態は、プロセッサが作業を行うことができる唯一の電力状態である。このため、プロセッサが(P0からP_Rのうち)いずれかの性能状態に移行するためには、プロセッサはC0電力状態でなければならない。行うべき作業が無く、プロセッサがスリープ状態に移行すべき場合、プロセッサは、複数の電力状態C1、C2、・・・、C_Sのいずれかに移行する。C1、C2、・・・、C_Sの各電力状態は、異なるスリープレベルを表し、これに対応して、動作可能なC0電力状態に戻るために必要な時間も異なる。ここで、スリープレベルが異なると、プロセッサがスリープ状態にある間の省電力効果が異なる。
【0005】
このため、スリープレベルが深くなると、内部クロック周波数が低くなり、および/または、内部供給電圧が低くなり、および/または、低いクロック周波数および/または低い供給電圧を受け取る論理ブロックの数が増える。Cに続く数が大きくなると、スリープレベルが深くなっていく。このため、例えば、C2電力状態のプロセッサは、C1状態のプロセッサよりも、内部供給電圧が低く、オフになっている論理ブロックの数が多い。電力状態が深くなると、周波数スイングおよび/または電圧スイングが大きくなり、および/または、C0状態に戻るためにオンにする必要がある論理ブロックの数が多くなるので、電力状態が深くなると、C0状態に戻るまでにかかる時間も長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明は、添付図面において一例として図示されており限定が目的ではない。添付図面では、同様の参照番号は同様の構成要素を指し示す。図面は以下の通りである。
【0007】
【
図1】プロセッサを特徴付けるプロセスを示す図である。
【0008】
【
図2】プロセッサの動作を保証された状態に維持するプロセスを示す図である。
【0009】
【
図3】外囲温度および冷却システム状態の関数としてプロセッサの動作を保証するべく、最高プロセッサ性能状態を詳細に説明するテーブルである。
【0010】
【
図4】
図3のテーブル情報等のテーブル情報を利用するプロセスを示す図である。
【0011】
【
図5】特徴付け情報が埋め込まれたプロセッサを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
システム設計者は現在、「保証された」プロセッサ性能と、熱システムコストとの間でのトレードオフを解決しようと苦戦している。特に、コンピューティングシステムの稼働期間の間、システムのプロセッサが、可能性は低いが可能性は存在するような極度の外囲温度イベントを経験する場合がある。例えば、冷却ファンがめったにない暑い日に故障したり、または、空調の無い砂漠でシステムを稼働させたりする場合があるとしてもよい。システム設計者は現在、このような可能性に対応する冷却システムを設計するという大きな課題に直面している。このような状況下でプロセッサを十分に冷却した状態に維持可能な冷却システムは、このような状況に置かれるであろうシステムの数が非常にわずかであり、および/または、このような極度の温度の期間が、存在するとしても、短いという現実を考慮すると、高価過ぎる。
【0013】
この問題がさらに複雑になるのは、プロセッサの動作を、特に、極度の熱条件(例えば、突然のファンの故障)下において、保証するという考えのためである。現在、プロセッサ製造者は、定格の供給電圧、動作周波数、および、温度の仕様を最大化している。ここで、「動作の保証」とは、当該プロセッサが許容できない動作エラーを発生させないと期待されることを意味する。しかし、先述した定格仕様は、ある程度の余裕があり、および/または、いくらか控えめである。このため、少なくとも一部の出荷された部品は、この定格仕様を超えても適切に動作することが可能であるとしてよい。特定のプロセッサの動作が保証される当該プロセッサについての「真の」最大定格仕様は、システム設計者には分からない。
【0014】
したがって、少なくとも一部のシステム設計者は、公称の冷却システムを構築することに限定し(冷却システムのコストを低く抑えるため)、プロセッサの電力管理制御を向上させて、極度の熱イベントに応じてプロセッサの性能状態を下げるという考えを検討したいと願っている。こうすることで、プロセッサの動作は低性能の状態で依然として保証される。ここで、ある部品の形式上の定格仕様と、少なくとも限られた期間において、例えば、突然の熱イベントが発生した場合、当該部品が実際に耐久可能である動作条件との間にはある程度の余裕がある限りにおいて、当該部品を形式上の定格仕様を超えて動作させることは許容可能であり、動作が保証されるとしてよい。
【0015】
物理学を考慮すると、プロセッサの動作は、ダイ温度の関数として保証され得る。ここで、動作不良メカニズムは、半導体チップの温度が高くなり過ぎる場合に発生する半導体チップの物理組成の変化に主に関連すると理解される。プロセッサダイの温度は、ダイの消費電力、ダイのパッケージング、パッケージングに適用されている冷却システム、および、外囲温度の関数である。プロセッサダイの消費電力(ダイの「性能」に主に対応する)は、ダイが引き込む電流と、供給電圧とを乗算した結果である。特定の供給電圧においてダイが引き込む電流は、プロセッサダイの作業負荷およびクロック周波数の関数である。
【0016】
このように、特定の供給電圧、クロック周波数および作業負荷がダイに与えられると、ダイの温度はある程度のレベルまで上昇し、このレベルは、冷却システムが高機能化し外囲温度が下がると、低くなる。言い換えると、特定の供給電圧、クロック周波数および作業負荷がダイに適用され、どんな種類の冷却もダイのパッケージに適用されない場合には、ダイの温度は、ダイの物理的特性、冷却を行わないパッケージング、および外囲温度によって決まるレベルまで昇温する。ダイのパッケージングに適用される冷却がより高度/高性能になると、および/または、外囲温度が低くなると、ダイの温度が到達するレベルは、印加する供給電圧、クロック周波数および作業負荷が同じ場合には、より低くなる。
【0017】
このため、プロセッサ製造者にとっては、各プロセッサについて、プロセッサの性能が変わらず保証される極度の熱条件下で当該プロセッサに適用され得る1以上の動作周波数を設定することが有用である。考えられ得る限りでは、このような動作周波数では、プロセッサは、形式上の最高定格仕様を超過する場合がある。ある実施形態によると、このような特別な動作周波数は、プロセッサの公称最高定格仕様を越えた動作に対応する場合、適用されるのは一時的(例えば、数時間または数日)に過ぎないと理解される。実際にはその場合、システム設計者は、極度の熱イベントに応じて、プロセッサの動作周波数をこれらの周波数のいずれかになるように上限を課すものとして電力管理機能を構成する。別の実施形態によると、複数の異なる周波数が複数の異なる外囲温度の関数として提供されるので、外囲環境の熱条件の逸脱程度に応じて適切な動作周波数が特定されるという効果が得られる。
【0018】
ある実施形態によると、プロセッサ製造者は、このような動作周波数を実現するべく、プロセッサ毎に当該プロセッサの動作が保証され得るダイ温度を決定し、当該プロセッサについてこの最高許容温度で動作する場合の最高許容可能消費電力を決定する。そして、特定の外囲温度の関数としてこれらのパラメータを特定のプロセッサの動作周波数に変換するべく、公称の供給電圧および冷却システムがプロセッサ製造者によって仮定される。システム設計者は、それぞれの供給電圧および冷却システム技術に基づき、これらの動作周波数および/または温度を調整することができる。例えば、仮定された冷却システムよりも高機能の冷却システムを選択するシステム設計者は、特定の外囲温度についてプロセッサ製造者が提示する動作周波数より高い動作周波数を利用するとしてよく、または、より高い外囲温度を特定するとしてよい。この情報によると、システム設計者は、例えば、極度の熱イベントに応じてプロセッサの動作周波数を自動的に低減させて、ダイを最高許容可能温度および最高許容可能消費電力で動作させ、ダイを動作保証領域に留める電力管理方式を実現することができる。
【0019】
図1は、発送後の各プロセッサを、外囲温度情報の関数としてプロセッサの動作が変わらず保証される最高動作周波数情報で実質的に特徴付ける(101)プロセッサ製造者によって実行されるべきプロセスを示す。さまざまな実施形態によると、このような特徴情報は、プロセッサ毎に固有の情報である。
【0020】
このような特徴情報は、例えば、製造された各プロセッサに対して特徴付け試験を実行することによって取得されるとしてよい。ここで、一のダイはパッケージング前に試験されるとしてもよいし、および/または、完成したプロセッサを形成するパッケージング後のダイに対して特徴付けを行うとしてもよい。ダイ温度は、直接的に測定するとしてもよい(例えば、パッケージングされていないダイの場合、または、(パッケージング済みまたはパッケージング前の)ダイが提供するダイの1以上の埋め込み熱センサの測定値を利用する場合)し、または、計算するとしてもよい(例えば、パッケージング後のダイの筐体温度および外囲温度を測定して、ダイのパッケージングの理論上の熱特性に基づきダイ温度を決定する)。
【0021】
実質的にダイの温度をダイの消費電力にマッピングする特徴データの第2の部分を更に収集するとしてよい。ここで、例えば、動作を保証するための最高許容可能ダイ温度および最高許容可能消費電力から始まり、次第に消費電力およびダイ温度を低減していき、複数のデータ点が収集されるとしてよい。これに代えて、ダイ温度の降温幅を消費電力の低減幅で記述する公式を決定して、利用するとしてもよい。
【0022】
所与の範囲のクロック周波数および対応するダイ消費電力レベルにわたって、ダイの消費電力をダイのクロック周波数(例えば、最高供給電圧における、そして、プロセッサダイ内の全ての論理ブロックがイネーブルされている場合のクロック周波数)に実質的にマッピングする特徴データの第3の部分をさらに提供するとしてよい。ここで、例えば、最高供給電圧およびプロセッサ内の全ての論理ブロックをイネーブルする作業負荷の条件において、最高許容可能消費電力および最高許容可能クロック周波数から開始し、次第にクロック周波数および対応する消費電力を低減させていき、複数のデータ点を収集するとしてよい。これに代えて、ダイ消費電力の低減幅をクロック周波数の低減幅で記述する第2の公式を決定して利用するとしてもよい。
【0023】
この後、特徴データは、仮定したシステム供給電圧およびダイパッケージの外部にある冷却システムと関連付けて分析して、ダイパッケージの外囲温度の関数としてプロセッサについて特定の動作周波数を決定する。別の実施形態によると、動作周波数は、最高性能状態として提供されるとしてよい。
【0024】
このような情報はこの後、特定のプロセッサ102に対応付ける。一実施形態によると、周波数および外囲温度の情報は、プロセッサのダイに埋め込まれる。例えば、データはダイの不揮発性ストレージ回路(例えば、ダイに埋め込まれているヒューズストレージ回路であって、ヒューズが飛ぶと特徴データをデジタル方式で格納する)に書き込まれるとしてよい。これに代えて、周波数および外囲温度の情報は、ダイに埋め込まれるのではなく、ダイに関連付けられるとしてよい。例えば、多数のプロセッサの顧客が、各ダイの対応するシリアル番号が特定する各ダイの情報をダウンロードするとしてもよいし、その他の方法で受信するとしてよい。
【0025】
顧客/システム設計者は、システムの実際の冷却システムおよび当該システムの理論上の動作の知識を持ち、プロセッサ製造者が仮定した冷却システムと相対的に、極度の外囲温度に直面した場合の冷却システムによるプロセッサダイの冷却能力の高低を決定することができる。両者が非常に類似している場合には、システムの製造者は、プロセッサ製造者が供給した動作周波数をそのまま、任意の特定の極度の外囲温度について利用することができるとしてよい。言い換えると、動作が保証される外囲温度の関数として最高プロセッサ動作周波数を説明する情報を製造者が提供しており、システム設計者103は、製造者が提供した動作周波数をそのまま、特定の極度の外囲温度に応じて利用することができるか(仮定した冷却および供給電圧が同等である場合)、または、「微調整」することもできる(実際のシステムが仮定したシステムと異なる場合)。
【0026】
システム設計者/製造者は、製造者が提供する情報に基づき、外囲温度の関数としてプロセッサのクロック周波数を低減するようにシステムの電力管理機能104を設定する。尚、低減したクロック周波数では、プロセッサの動作が、動作保証領域内に留まる。
【0027】
このため、例えば、
図2を参照すると、極度の熱イベントが検出されると201、プロセッサ製造者が提供した情報に基づいた動作周波数に応じてプロセッサのクロック周波数を低減して202、ダイの温度を低減して、プロセッサを動作が保証された状態に維持するという効果を奏する。プロセッサ製造者が、この特定の外囲温度におけるこの動作周波数について時間制限を特定している場合、システム設計者は、この時間制限が近づくと、プロセッサの周波数を再度低減するとしてよい。
【0028】
一実施例によると、システム設計者はさらに、情報を分解して直接、プロセッサの電力状態管理テーブルに入れる。電力状態管理テーブルは、さらに分解して、プロセッサについて、特定の障害イベントが発生する場合(または、特定の障害イベントが発生しない場合)および外囲温度について、特定の電力状態を特定するとしてもよい。
【0029】
図3は、一例を示す。
図3から分かるように、保証された動作を維持するための特定の最高許容可能プロセッサ性能状態が、冷却システム301の特定の状態および外囲温度302について説明されている。この例によると、システム設計者は、プロセッサがP1性能状態で動作したとしても(および最高数の論理ブロックがイネーブルされてP1状態の最高クロック周波数で動作したとしても)、外囲温度が摂氏35度以下であり少なくとも1つのファンが動いていれば、プロセッサの動作は依然として保証されると判断している。しかし、第2のファンが故障すると、プロセッサの最高許容可能性能状態は、P3状態に落とす必要がある。
【0030】
同様に、プロセッサの最高許容可能電力状態は、外囲温度が上昇するにつれてさらに低減され、1以上のファンが故障すると再度低減される。
【0031】
図4は、
図3に示した表のような表を作成および利用するプロセスを示す図である。
図4から分かるように、冷却システム状態および外囲温度の関数として、プロセッサ動作が保証される最高許容可能プロセッサ性能状態を説明するテーブルのエントリを決定する401。ここで、プロセッサ製造者が供給する情報は、冷却システムの設計および各プロセッサの性能状態の定義に関して設計者が知っている内容と組み合わせて、複数の異なる条件について複数の異なるプロセッサ性能状態を記述する。このようにして、ダイが集積化されている特定のシステムについてテーブル情報をダイ毎に決定する。このため、モデル番号が同じプロセッサを持つモデル番号が同じシステムであっても、プロセッサ製造者が提供するダイ固有情報に起因して、テーブル形式のエントリの内容が異なる場合があるとしてよい。
【0032】
テーブルのエントリが決定されると、例えば、システムのBIOSシステムファームウェアが保持されている不揮発性メモリに格納される。システムの電源が入る度に、テーブル情報がロードされて402、ソフトウェア、ハードウェア、または、これらの組み合わせで実現され得るシステムの電力管理インテリジェンスに入れられる。このため、テーブル形式のエントリは、プロセッサのレジスタ空間にロードされるとしてもよいし、または、システムのシステムメモリの領域にロードされるとしてもよい(または、ファームウェア内に留まるしてもよい)。
【0033】
システムの実行時間中、センサは、外囲温度および冷却システムの状態を示すさまざまな情報を収集する403。冷却システムおよび外囲温度の現在の状態に基づいて、テーブル情報は、プロセッサの動作が保証されるプロセッサの最高性能状態を示す404。電力管理ロジックに、現在の条件における最高性能状態を認識させ、テーブル情報が特定する最高状態を超えてプロセッサの性能状態を上げないようにする(しかし、他の電力管理プロトコルによっては低減する場合もある)。
【0034】
センサによる情報の収集403は、連続的に行われ、冷却システム状態または外囲温度における、適用可能なテーブル位置の変化に対応する何らかの変化が特定され、その結果としての最高許容可能プロセッサ性能状態の変化は、電力管理ロジックインテリジェンスに伝えられる。プロセッサの性能状態を即座に変更する必要がある場合(例えば、現在の性能状態からより低い性能状態へと低減する場合)、電力管理ロジックインテリジェンスは、例えば、プロセッサのレジスタ空間(モデル固有レジスタ空間等)に書き込んで電力状態の変更を実現することによって、変更するとしてよい。レジスタ空間に書き込まれる情報は、性能状態を直接的に特定するとしてもよいし、または、新しいプロセッサ性能状態に対応する1以上の設定(例えば、クロック周波数設定、論理ブロックイネーブル/ディセーブル設定)に対応するとしてもよい。
【0035】
プロセッサ製造者が供給する最高動作周波数もまた、時間制限が対応付けられている場合(例えば、数日、数時間)、
図4の方法は、極度の外囲温度イベントが時間制限に近づくと、(例えば、さらに低い電力状態へと低減することによって)プロセッサの動作周波数を自動的に落とす。
【0036】
図5は、マルチコアプロセッサ500の一例のアーキテクチャを示す図である。
図5から分かるように、プロセッサは、1)複数のプロセッシングコア501_1から501_Nと、2)相互接続ネットワーク502と、3)ラストレベルキャッシュシステム503と、4)メモリコントローラ504およびI/Oハブ505とを備える。各プロセッシングコアは、プログラムコード命令を実行するための1以上の命令実行パイプラインを含む。相互接続ネットワーク502は、コア501_1から501_Nを互いに相互接続する役割を持つと同時に、コア501_1から501_Nのそれぞれを他の構成要素503、504、505に相互接続する役割も持つ。ラストレベルキャッシュシステム503は、命令および/またはデータがシステムメモリ506にエビクションされる前は、プロセッサにおける最終キャッシュレイヤとしての役割を持つ。各コアは通常、独自の1以上のキャッシュレベルを持つ。
【0037】
メモリコントローラ504は、システムメモリ506との間でデータおよび命令の読み書きを行う。I/Oハブ505は、プロセッサと「I/O」デバイス(例えば、不揮発性ストレージデバイスおよび/またはネットワークインターフェース)との間の通信を管理する。ポート507は、相互接続ネットワーク502から導き出されて、複数のプロセッサをリンクさせて、N個のコアより多いコアを持つシステムを実現させるとしてよい。グラフィクスプロセッサ508は、グラフィクス計算を実行する。電力管理回路509は、プロセッサ全体(「パパッケージレベル」)の性能および電力状態を管理すると同時に、プロセッサ内のそれぞれのユニット、例えば、各コア501_1から501_N、グラフィクスプロセッサ508等の性能および電力状態の側面を管理する。他の重要な機能ブロック(例えば、フェーズロックループ(PLL)回路)は、便宜上、
図5には図示していない。
【0038】
尚、
図5のプロセッサはさらに、ストレージ回路550が埋め込まれている。ストレージ回路550には、プロセッサの動作が保証されている特定の極度の外囲温度についてのプロセッサの最高動作温度に関する情報が格納されている。
【0039】
上記の説明が教示するプロセスのいずれもソフトウェアで実現され得るが、このようなプロセスは、これらの命令を実行する機械に特定の機能を実行させる機械実行可能命令等のプログラムコードで実現され得る。上記の説明が教示するプロセスはさらに、(プログラムコードの実行に代えて、または、プログラムコードの実行と組み合わせて、)プロセス(またはその一部)を実行するよう構成されている電子回路によって実行されるとしてよい。
【0040】
上記の説明が教示するプロセスはさらにソースレベルプログラムコードにおいてさまざまなオブジェクト指向型または非オブジェクト指向型のコンピュータプログラミング言語で記述されると考えられている。製造物品を用いてプログラムコードを格納するとしてよい。プログラムコードを格納する製造物品は、これらに限定されないが、1以上のメモリ(例えば、1以上のフラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(スタティック型、ダイナミック型等))、光ディスク、CD−ROM、DVD ROM、EPROM、EEPROM、磁気カードあるいは光カード、または、電子命令を格納するのに適したその他の種類の機械可読媒体として具現化され得る。プログラムコードはさらに、リモートコンピュータ(例えば、サーバ)から要求元のコンピュータ(例えば、クライアント)へと、伝搬媒体で具現化されるデータ信号を用いて(例えば、通信リンク(例えば、ネットワーク接続)を介して)、ダウンロードされるとしてよい。
【0041】
上記の説明では、本発明の具体的な実施形態例を参照しつつ本発明を説明した。しかし、特許請求の範囲に記載した本発明の広義の意図および範囲から逸脱することなくさまざまな変形および変更が為され得ることは明らかである。したがって、明細書および図面は、限定的ではなく例示と見なされたい。
[項目1]
プロセッサであって、
前記プロセッサの最高動作周波数を特定する情報を含む不揮発性ストレージ回路を有する半導体チップを備え、
前記プロセッサの前記最高動作周波数では、前記プロセッサの動作は、極度の熱イベントに対応する外囲温度について保証されるプロセッサ。
[項目2]
前記最高動作周波数は、前記半導体チップの最高ダイ温度に対応する項目1に記載のプロセッサ。
[項目3]
前記プロセッサの動作は、限られた時間にわたって保証される項目1または2に記載のプロセッサ。
[項目4]
前記時間は、1時間単位で測定される項目3に記載のプロセッサ。
[項目5]
前記時間は、複数の日数に対応する項目3または4に記載のプロセッサ。
[項目6]
前記プロセッサはさらに、公称最高定格仕様を持ち、前記外囲温度における前記最高動作周波数は、前記公称最高定格仕様を超えることに対応する項目1から5の何れか1項に記載のプロセッサ。
[項目7]
プロセッサについて、前記プロセッサの動作が保証される特定の外囲温度における前記プロセッサの最高動作周波数を特定する情報を取得する段階と、
前記情報に基づき、前記プロセッサの動作が保証される外囲温度および冷却システムの状態の関数として、前記プロセッサの性能状態を決定する段階と、
前記情報および前記プロセッサをコンピュータシステムに組み込む段階と
を備え、
前記特定の外囲温度は極度の熱イベントに対応する方法。
[項目8]
前記情報は、前記コンピュータシステムのBIOSに組み込まれる項目7に記載の方法。
[項目9]
前記情報は、前記コンピュータシステムの不揮発性ストレージに組み込まれる項目7に記載の方法。
[項目10]
前記情報は、前記コンピュータシステムの電源がオンになると、前記不揮発性ストレージから読み出され、前記コンピュータシステムのシステムメモリにロードされる項目9に記載の方法。
[項目11]
前記情報は、前記コンピュータシステムの電源がオンになると、前記不揮発性ストレージから読み出され、前記プロセッサのレジスタ空間にロードされる項目9に記載の方法。
[項目12]
プロセッサの外囲温度および前記プロセッサの冷却システムの状態を決定する段階と、
前記プロセッサの動作が保証される前記プロセッサの性能状態を特定する情報を参照することで、前記プロセッサの外囲温度および前記冷却システムの状態の関数として、前記プロセッサの動作が保証されている前記プロセッサの性能状態を決定する段階と、
前記プロセッサを決定された前記性能状態に設定する段階と
を備え、
前記外囲温度は、極度の熱イベントに対応する方法。
[項目13]
前記情報は、前記プロセッサが集積化されているコンピューティングシステムのシステムメモリ内に存在する項目12に記載の方法。
[項目14]
前記設定する段階は、前記コンピューティングシステムの電力管理インテリジェンスによって実行される項目13に記載の方法。
[項目15]
前記コンピューティングシステムの電源が入ると、前記コンピューティングシステムのシステムメモリに前記情報をロードする段階をさらに備える
項目13または14に記載の方法。
[項目16]
コンピューティングシステムに、
プロセッサの外囲温度および前記プロセッサの冷却システムの状態を決定する手順と、
前記プロセッサの動作が保証される前記プロセッサの性能状態を特定する情報を参照することで、前記プロセッサの外囲温度および前記冷却システムの状態の関数として、前記プロセッサの動作が保証されている前記プロセッサの性能状態を決定する手順と、
前記プロセッサを決定された前記性能状態に設定する手順と
を実行させるためのプログラムであって、
前記外囲温度は、極度の熱イベントに対応するプログラム。
[項目17]
前記情報は、前記プロセッサが集積化されているコンピューティングシステムのシステムメモリ内に存在する項目16に記載のプログラム。
[項目18]
前記設定する手順は、前記コンピューティングシステムの電力管理インテリジェンスによって実行される項目17に記載のプログラム。
[項目19]
前記コンピューティングシステムにさらに、前記コンピューティングシステムの電源が入ると、前記コンピューティングシステムのシステムメモリに前記情報をロードする手順を実行させるための項目16から18の何れか1項に記載のプログラム。
[項目20]
決定した前記外囲温度および前記冷却システムの状態の一方は、変更された外囲温度および変更された前記冷却システムの状態のうち少なくとも一方であり、前記性能状態を決定する手順は、前記プロセッサの動作が保証される新しい性能状態を特定する手順を有する項目16から19の何れか1項に記載のプログラム。