特許第6376694号(P6376694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376694
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】微生物燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20180813BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20180813BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20180813BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H01M8/16
   H01M8/04 J
   H01M8/02
   C02F3/34 Z
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-225062(P2014-225062)
(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-91805(P2016-91805A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭広
(72)【発明者】
【氏名】石田 三佳
(72)【発明者】
【氏名】森岡 理紀
【審査官】 菊地 リチャード平八郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/073284(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0033757(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/039464(WO,A1)
【文献】 特開平10−180291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内に収容された、有機物および電子供与微生物を含む液体と、
前記液体に接触するように配置されたアノードと、
外気に接触し、かつ前記液体に直接接触するか、またはカチオン透過性を有する隔膜を挟んで隣接するように配置された、ガス透過性を有するカソードと、
前記液体に酸素を含む気体を間欠的に送り込む曝気装置と、
を有する、微生物燃料電池。
【請求項2】
容器と、
前記容器内に収容された、有機物および電子供与微生物を含む液体と、
前記液体に接触するように配置されたアノードと、
カチオン透過性を有する隔膜と、
外気に接触し、かつ前記隔膜を挟んで前記液体に隣接するように配置された、ガス透過性を有するカソードと、
前記液体に酸素を含む気体を送り込む曝気装置と、
を有し、
前記隔膜および前記カソードは、一体化されて膜電極接合体を構成しており、
前記膜電極接合体は、前記隔膜が前記液体に接触し、前記カソードが外気に接触するように、前記液体の表面に浮いており、
前記アノードは、前記液体の中に浮いている、
微生物燃料電池。
【請求項3】
容器と、
前記容器内に収容された、有機物および電子供与微生物を含む液体と、
前記液体に接触するように配置されたアノードと、
カチオン透過性を有する隔膜と、
外気に接触し、かつ前記隔膜を挟んで前記液体に隣接するように配置された、ガス透過性を有するカソードと、
前記液体に酸素を含む気体を送り込む曝気装置と、
を有し、
前記アノード、前記隔膜および前記カソードは、一体化されて膜電極接合体を構成しており、
前記膜電極接合体は、前記アノードが前記液体に接触し、前記カソードが外気に接触するように、前記液体の表面に浮いている、
微生物燃料電池。
【請求項4】
容器と、
前記容器内に収容された、有機物および電子供与微生物を含む液体と、
前記液体に接触するように配置されたアノードと、
外気に接触し、かつ前記液体に直接接触するか、またはカチオン透過性を有する隔膜を挟んで隣接するように前記液体の表面に浮いている、ガス透過性を有するカソードと、
前記アノードおよび前記カソードを前記液体の中または表面に浮かすための浮きと、
前記液体に酸素を含む気体を送り込む曝気装置と、
を有する、微生物燃料電池。
【請求項5】
前記曝気装置が前記液体に前記気体を間欠的に送り込むことで、前記液体において好気状態と嫌気状態とが繰り返され、前記液体中の窒素が除去される、請求項に記載の微生物燃料電池。
【請求項6】
前記気体は、空気である、請求項1〜のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
【請求項7】
前記曝気装置は、前記アノードと前記カソードとの間を流れる電流に応じて前記気体を送り込む量を調整する、請求項1〜のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
【請求項8】
前記曝気装置は、前記アノードと前記カソードとの間を流れる電流により駆動する、請求項1〜のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
【請求項9】
前記膜電極接合体は、前記液体の表面に対して傾斜するように配置されている、請求項または請求項に記載の微生物燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産農家にとって、畜舎から出る廃水の処理は、多大なコストおよび労力を要するため、大きな負担となっている。同様に、都市部における下水の処理も、多大なコストおよび労力を要する。一方、微生物燃料電池は、微生物による有機物の酸化によって電気エネルギーを生産できるだけでなく、有機廃棄物の分解処理も同時に行うことができる。このため、微生物燃料電池は、畜舎における廃水処理や都市部における下水の浄化処理などの様々な用途において有用な新技術として期待されている。
【0003】
微生物燃料電池は、2槽型と1槽型とに大別される。2槽型の微生物燃料電池は、カチオン透過性を有する隔膜で互いに仕切られているアノード槽およびカソード槽を有する。2槽型の微生物燃料電池では、カソード槽内にフェリシアン化カリウム(鉄化合物イオン)や酸素、鉄イオン、硝酸イオン、硫酸イオンなどの電子を受容可能な物質が必要である。
【0004】
一方、1槽型の微生物燃料電池では、カソード槽の代わりに、エアカソードとも称されるガス透過性を有するカソードが使用される(例えば、非特許文献1参照)。図1は、アノードとカソードとが別体の1槽型の微生物燃料電池の断面模式図であり、図2は、アノードとカソードとが一体の1槽型の微生物燃料電池の断面模式図である。図1および図2に示されるように、微生物燃料電池10は、容器11と、容器11内に収容された有機物および電子供与微生物12を含む液体(燃料)13と、液体13に接触するように配置されたアノード14と、液体13に接触するように配置されたカチオン透過性を有する隔膜15と、隔膜15を挟んで液体13に隣接するように配置され、かつ外気とも接触するカソード(エアカソード)16とを有する。カソード16は、隔膜15と、または隔膜15およびアノード14と膜電極接合体17を構成し、容器11の壁面の一部を構成する。このような1槽型の微生物燃料電池は、2槽型の微生物燃料電池と比較して、微生物による反応が起こる槽(アノード槽)とは別のカソード槽を必要としない点で優れている。
【0005】
微生物燃料電池は、電子供与微生物が嫌気条件下において有機物を分解する際にアノードを最終電子受容体として使用することを利用する。このように、微生物燃料電池は、電子供与微生物による嫌気処理を利用するため、1槽型の微生物燃料電池の容器内は、嫌気状態に保持されることが必須であると考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hong Liu, and Bruce E. Logan, "Electricity Generation Using an Air-Cathode Single Chamber Microbial Fuel Cell in the Presence and Absence of a Proton Exchange Membrane", Environ. Sci. Technol., Vol. 38, pp. 4040-4046.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のとおり、微生物燃料電池は、発電だけでなく廃水中の有機物を分解して浄化処理を行うことも期待されている。しかしながら、従来の微生物燃料電池は、活性汚泥法などに比べて有機物の分解能力が低い。このため、有機物の分解能力が高い微生物燃料電池の開発が期待されている。さらに、廃水の浄化では廃水中の窒素の除去も重要であるが、従来の微生物燃料電池は、嫌気状態で動作させるため窒素を除去することができない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、有機物の分解能力が高く、かつ窒素除去も可能な1槽型の微生物燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、1槽型の微生物燃料電池において曝気を行っても発電を継続できることを見出した。さらに、本発明者らは、1槽型の微生物燃料電池において曝気を行うことにより有機物の分解能力が顕著に高まり、かつ窒素除去も行われることを見出した。そして、本発明者らは、これらの知見にさらに検討を加えて本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の微生物燃料電池に関する。
【0011】
[1]容器と、前記容器内に収容された、有機物および電子供与微生物を含む液体と、前記液体に接触するように配置されたアノードと、外気に接触し、かつ前記液体に直接接触するか、またはカチオン透過性を有する隔膜を挟んで隣接するように配置された、ガス透過性を有するカソードと、前記液体に酸素を含む気体を送り込む曝気装置と、を有する、微生物燃料電池。
[2]前記曝気装置は、前記液体に前記気体を間欠的に送り込む、[1]に記載の微生物燃料電池。
[3]前記曝気装置が前記液体に前記気体を間欠的に送り込むことで、前記液体において好気状態と嫌気状態とが繰り返され、前記液体中の窒素が除去される、[2]に記載の微生物燃料電池。
[4]前記気体は、空気である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
[5]前記曝気装置は、前記アノードと前記カソードとの間を流れる電流に応じて前記気体を送り込む量を調整する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
[6]前記曝気装置は、前記アノードと前記カソードとの間を流れる電流により駆動する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
[7]前記カソードは、前記液体の表面に浮いている、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
[8]前記隔膜および前記カソードは、一体化されて膜電極接合体を構成しており、前記膜電極接合体は、前記隔膜が前記液体に接触し、前記カソードが外気に接触するように、前記液体の表面に浮いており、前記アノードは、前記液体の中に浮いている、[7]に記載の微生物燃料電池。
[9]前記アノード、前記隔膜および前記カソードは、一体化されて膜電極接合体を構成しており、前記膜電極接合体は、前記アノードが前記液体に接触し、前記カソードが外気に接触するように、前記液体の表面に浮いている、[7]に記載の微生物燃料電池。
[10]前記膜電極接合体は、前記液体の表面に対して傾斜するように配置されている、[8]または[9]に記載の微生物燃料電池。
[11]前記アノードおよび前記カソードを前記液体の中または表面に浮かすための浮きをさらに有する、[7]〜[10]のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有機物の分解能力が高く、かつ窒素除去も可能な微生物燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】アノードとカソードとが別体の従来の微生物燃料電池の断面模式図である。
図2】アノードとカソードとが一体の従来の微生物燃料電池の断面模式図である。
図3】実施の形態に係る微生物燃料電池の構成を示す断面模式図である。
図4】実施の形態の変形例に係る微生物燃料電池の構成を示す断面模式図である。
図5図5Aは、実施の形態に係る微生物燃料電池における酸化還元電位(ORP)の経時的変化を示すグラフであり、図5Bは、間欠曝気式活性汚泥槽における酸化還元電位の経時的変化を示すグラフである。
図6図6は、実施の形態に係る微生物燃料電池における、カソードの単位面積当たりの出力密度の経時的変化を示すグラフである。
図7図7は、実施の形態に係る微生物燃料電池および間欠曝気式活性汚泥槽における混合液の化学的酸素要求量の測定結果を示すグラフである。
図8図8は、実施の形態に係る微生物燃料電池および間欠曝気式活性汚泥槽における混合液の窒素濃度の測定結果を示すグラフである。
図9図9は、実施の形態に係る微生物燃料電池における、カソードの単位面積当たりの出力密度の経時的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、隔膜およびカソードを含む膜電極接合体(MEA)が有機物(燃料)および電子供与微生物を含む液体の上に浮いており、アノードが前記液体の中に浮いている微生物燃料電池について説明する。
【0015】
(微生物燃料電池の構成)
図3は、本発明の一実施の形態に係る微生物燃料電池100の構成を示す断面模式図である。図3に示されるように、微生物燃料電池100は、容器110、液体120、アノード130、膜電極接合体140、浮き150および曝気装置160を有する。液体120は、有機物および電子供与微生物122を含む。膜電極接合体140は、隔膜142およびカソード144を含む。曝気装置160は、ポンプ162、散気管164および制御部166を含む。また、アノード130とカソード144は、外部回路を構成する導線170により電気的に接続されており、ポンプ162は、制御部166を介して導線170に電気的に接続されている。
【0016】
容器110は、微生物燃料電池100の本体部を構成し、液体120を収容する。容器110の素材、形状および大きさは、特に限定されず、用途に応じて適宜設定されうる。本実施の形態に係る微生物燃料電池100では、従来の1槽型の微生物燃料電池(図1および図2参照)とは異なり、カソード144(またはカソード144を含む膜電極接合体140)が容器110の壁面の一部を構成するということはない。このため、液体120の圧力の増大によるカソード144の破壊を考慮することなく、容器110を大きくすること、すなわち微生物燃料電池100をスケールアップすることができる。
【0017】
液体120は、容器110内に収容されており、燃料となる有機物および電子供与微生物122を含む。通常、液体120は、1種または2種以上の電解質を含有する水溶液である。電解質の種類は、水中で電離可能な物質であれば特に限定されない。電解質の例には、NaHPO/NaHPO、KHPO/KHPO、NaCO/NaHCO、NaCl、KCl、NHClなどが含まれる。また、液体120には、必要に応じて電子メディエータや導電性微粒子などの電子伝達性介在物質をさらに添加してもよい。
【0018】
液体120中の電子供与微生物122のうち、少なくとも一部の電子供与微生物122は、アノード130に担持されている。すなわち、アノード130は、電子供与微生物122を高密度で保持する担体としても機能する。電子供与微生物122の種類は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。有機廃水や汚泥などを燃料として使用する場合は、外部から電子供与微生物を加えなくとも、それらに生息する電子供与微生物をそのまま利用することができる。たとえば、シュードモナスやジオバクターなどは、土壌や淡水、海水などの自然環境の至るところに生息しているため、有機廃水や汚泥などを燃料とすれば、外部から添加することなく利用できる。
【0019】
燃料となる有機物の種類は、電子供与微生物122が代謝可能であれば、特に限定されない。燃料となる有機物としては、アルコールや単糖類、多糖類、タンパク質などの有用資源だけでなく、農産業廃棄物や有機廃液、し尿、汚泥、食物残渣などの未利用資源(有機性廃棄物)も使用することができる。燃料となる有機物は、電子供与微生物122の維持および増殖のため、また微生物燃料電池100を連続して稼働させるため、必要に応じて追加される。
【0020】
アノード130は、液体120に接触するように配置される。本実施の形態では、アノード130は、導線170を介して浮き150により支持されており、液体120中に浮いている(浸漬されている)。アノード130の素材および形状は、特に限定されず、電子供与微生物122の付着性や電子供与微生物122からの電子伝達度などに応じて適宜選択されうる。アノード130の素材の例には、炭素や金属などが含まれる。アノード130の形状の例には、クロスなどの平面形状や、ブラシ状や棒状、粒状などの立体形状が含まれる。アノード130の例には、カーボンペーパーやグラファイト板、カーボンクロス、カーボンメッシュ、グラファイト粒子、活性化グラファイト粒子、カーボンフェルト、網状ガラス化カーボン、カーボンブラシ、ステンレス鋼メッシュなどが含まれる。
【0021】
膜電極接合体140は、カチオン透過性を有する隔膜142と、ガス透過性を有するカソード144とを含む。隔膜142およびカソード144は、一体化されて膜電極接合体140を構成している。膜電極接合体140は、隔膜142が液体120に接触し、カソード144が外気に接触するように配置される。本実施の形態では、円環形状の浮き150の貫通孔を塞ぐように浮き150の下側に隔膜142が固定されており、浮き150の貫通孔内において隔膜142上にカソード144が積層されている。その結果、膜電極接合体140は、液体120の表面に浮いている。膜電極接合体140は、液体120の表面(液面)と平行となるように配置されていてもよいが、隔膜142の下に気泡が留まることを抑制するために液体120の表面(液面)に対して傾斜するように配置されていることが好ましい(図3参照)。
【0022】
隔膜142は、カチオンを選択的に透過させうる膜であり、液体120とカソード144との間に配置されている。前述のとおり、本実施の形態では、円環形状の浮き150の貫通孔を塞ぐように浮き150の下側に隔膜142が固定されている。隔膜142の種類は、カチオンを選択的に透過させることができれば、特に限定されない。隔膜142の例には、プロトン交換膜が含まれる。プロトン交換膜は、プロトン伝導性のイオン交換高分子電解質からなる膜である。プロトン交換膜の素材の例には、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、有機/無機複合化合物が含まれる。パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂は、例えば、スルホ基および/またはカルボキシル基を有するパーフルオロビニルエーテルを基礎とする重合単位と、テトラフルオロエチレンを基礎とする重合単位とを含む共重合体を含む。そのようなフッ素イオン交換樹脂としては、ナフィオン(登録商標)が知られている。また、有機/無機複合化合物は、炭化水素系高分子(例えばポリビニルアルコール)および無機化合物(例えばタングステン酸)が複合化した化合物からなる物質である。これらの素材からなる膜は、市販されている。
【0023】
カソード(エアカソード)144は、隔膜142を挟んで液体120と隣接するように配置されている。前述のとおり、本実施の形態では、円環形状の浮き150の貫通孔内において隔膜142上にカソード144が積層されている。カソード144の素材および形状は、ガス透過性および導電性を両立できれば特に限定されない。カソード144の素材の例には、炭素や金属などが含まれる。カソード144の例には、カーボンペーパーやカーボンクロス、カーボンメッシュ、グラファイト粒子、活性化グラファイト粒子、カーボンフェルト、網状ガラス化カーボン、ステンレス鋼メッシュなどが含まれる。また、これらの表面に、プラチナや活性炭などの酸素還元触媒を担持させてもよい。
【0024】
浮き150は、液体120の表面(液面)に浮いており、アノード130、隔膜142およびカソード144を直接または間接的に支持している。その結果、アノード130は、液体120の中に浮いており、隔膜142およびカソード144は、液体120の表面に浮いている。すなわち、アノード130、隔膜142およびカソード144と、浮き150とは、一つの浮遊体を構成する。浮き150の素材および形状は、アノード130、隔膜142およびカソード144を液体120の中または表面に浮かすことができれば特に限定されない。たとえば、浮き150は、発泡スチロールなどの発泡プラスチックや、樹脂や金属などからなる中空構造体などである。本実施の形態では、浮き150は、円環形状の発泡プラスチックである。
【0025】
曝気装置160は、ポンプ162、散気管164および制御部166を含む。曝気装置160は、液体120に酸素を含む気体を送り込む。本実施の形態では、曝気装置160は、液体120に空気168を送り込む。曝気装置160は、外部から供給される電力により駆動されてもよいし、微生物燃料電池100の発電により得られる電力により駆動されてもよい。本実施の形態では、曝気装置160は、アノード130とカソード144の間を流れる電流(すなわち微生物燃料電池100の発電により得られる電力)により駆動される。
【0026】
曝気装置160は、液体120に空気168を連続的に送り込んでもよいが、発電能力と有機物の分解能力とのバランスを容易に調整する観点からは、液体120に空気168を間欠的に送り込むことが好ましい。曝気装置160が液体120に空気168を間欠的に送り込む場合、曝気状態の時間および無曝気状態の時間は、微生物燃料電池100の発電能力や有機物の分解能力、液体120に含まれる有機物の濃度などに応じて適宜調整される。たとえば、液体120に含まれる有機物の濃度が濃い場合は、1回あたりの曝気時間は30分〜4時間程度であり、1回あたりの無曝気時間は1〜12時間程度である。有機物が十分に分解されて、液体120が浄化された場合は、微生物燃料電池100の発電により得られる電力は低下する。つまり、液体120中の有機物の濃度は、アノード130とカソード144の間を流れる電流により検出することができる。したがって、曝気装置160は、アノード130とカソード144の間を流れる電流に応じて、空気168を送り込む量を調整してもよい。たとえば、液体120の生物化学的酸素要求量(BOD)が2000mg/L超のときに相当する電流の場合、1回あたりの曝気時間を3時間程度とし、1回あたりの無曝気時間を3時間程度とすればよい。BODが500〜2000mg/Lのときに相当する電流の場合は、1回あたりの曝気時間を2時間程度とし、1回あたりの無曝気時間を4時間程度とすればよい。BODが50〜500mg/Lのときに相当する電流の場合は、1回あたりの曝気時間を1時間程度とし、1回あたりの無曝気時間を5時間程度とすればよい。また、BODが500mg/L未満のときに相当する電流の場合は、曝気を行わなくてもよいが、窒素濃度が高い場合は、曝気して硝化反応を促進させてもよい。この場合、硝化反応の後、汚水の原水を電子供与体として容器110内に少量投入して脱窒反応を起こさせることで、窒素除去をすることができる。
【0027】
ポンプ162は、制御部166の制御下において外部から取り込んだ空気を散気管164に送り込む。ポンプ162の種類は、特に限定されず、必要とされる空気吐出量などに応じて適宜選択されうる。
【0028】
散気管164は、ポンプ162から送り込まれた空気を液体120内に放出する。液体120への酸素溶解効率を高めたい場合は、散気管164は、微細化した気泡を放出する。散気管164の形状および構成は、上記目的を達成することができれば特に限定されない。散気管164の例には、メッシュを取り付けた管やメンブレンチューブなどが含まれる。
【0029】
制御部166は、予め設定された条件で曝気するようにポンプ162の動作を制御する。たとえば、間欠的に曝気を行う場合、制御部166は、所定の時間だけ動作するようにポンプ162を制御する。また、前述のとおり、制御部166は、アノード130とカソード144の間を流れる電流に応じてポンプ162を制御してもよい。曝気装置160による曝気は、液体120中の有機物の分解を促進するために行われるため、液体120中の有機物の濃度が低下した場合は曝気する必要はなく、発電能力を向上させる観点からは嫌気状態にするために曝気をしない方が却って好ましいことがある。このような場合、制御部166は、電流の低下を検出したときにポンプ162の動作を止めてもよい。このようにすることで、ポンプ162による電力消費を抑制することもできる。
【0030】
(微生物燃料電池の動作)
次に、本実施の形態に係る微生物燃料電池100の動作について説明する。
【0031】
本実施の形態に係る微生物燃料電池100を稼働させると、容器110内において、電子供与微生物122により有機物(例えば酢酸)が二酸化炭素に分解される際に、水素イオンと電子が生成される。有機物の分解により生成された水素イオンは、隔膜142を透過してカソード144表面に移動する。一方、有機物の分解により生成された電子は、アノード130で回収されて、外部回路を経由してカソード144に移動する。また、カソード144は通気性を有するため、カソード144表面には酸素も存在する。このような状況において、カソード144表面では、水素イオンおよび電子が酸素と反応することで、水が生成される。したがって、容器110内に有機物を供給することで、上記サイクルを維持して、外部回路に電力を連続して供給することができる。
【0032】
本実施の形態に係る微生物燃料電池100は、稼働中に曝気することを主たる特徴とする。上記メカニズムによる発電は嫌気処理を利用するため、従来の微生物燃料電池では、液体中が嫌気状態(溶存酸素がほとんど無い状態)となるようにされていた。一方、本実施の形態に係る微生物燃料電池100では、有機物の分解能力を向上させるために、連続的に、好ましくは間欠的に曝気して液体120中の溶存酸素濃度をある程度上昇させる。このように曝気することで、嫌気処理による発電および有機物の分解に加えて、好気処理による有機物の分解も行うことができる。結果として、従来の微生物燃料電池や間欠曝気による活性汚泥法(間欠曝気式活性汚泥法)よりも効率的に有機物を分解することができる(図7参照)。なお、この後実施例で示すように、本発明者らの実験によれば、間欠的に曝気を行っても電子供与微生物122が死滅せずに発電を継続できること(図6参照)に加え、曝気条件によっては曝気をすることにより発電能力が向上することもあること(図9参照)がわかっている。
【0033】
また、本実施の形態に係る微生物燃料電池100は、好気処理も利用するため、嫌気処理のみを利用する従来の微生物燃料電池では不可能であった窒素の除去も可能である(図8参照)。たとえば、曝気装置160が液体120に空気168を間欠的に送り込んだ場合、液体120において好気状態と嫌気状態とが繰り返される。好気状態のときは、液体120に含まれるアンモニアは、硝酸へと酸化される。嫌気状態のときは、有機物から供給される電子を利用して硝酸からガス体の窒素への反応が促進され脱窒反応が起きる。したがって、畜舎や堆肥場などからの悪臭を含む空気を用いて曝気することで、本実施の形態に係る微生物燃料電池100を脱臭装置としても利用することが可能である。悪臭を含む空気を用いて曝気すると、アンモニアなどの悪臭成分は液体120に移り、好気処理と嫌気処理のサイクルにより無臭の窒素ガスに変換され脱臭される。
【0034】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る微生物燃料電池100では、曝気することにより嫌気処理および好気処理の両方を利用して、発電能力を維持しつつ、有機物の分解能力の向上と窒素の除去を実現している。すなわち、本実施の形態に係る微生物燃料電池100は、発電能力に加えて、従来の微生物燃料電池よりも高い浄化性能を有する。
【0035】
また、前述のとおり、本実施の形態に係る微生物燃料電池100は、液体120中の有機物濃度に応じて曝気時間を調整することも可能である。また、本実施の形態に係る微生物燃料電池100は、アノード130が電子供与微生物122を高濃度で担持しているため、微生物を担持する部材が無い間欠曝気式活性汚泥法よりも効率よく有機物を分解することもできる(図7参照)。また、本実施の形態に係る微生物燃料電池100は、好気処理だけでなく嫌気処理も利用するため、嫌気処理を利用しない活性汚泥法よりも余剰汚泥の発生量を低減することもできる。また、本実施の形態に係る微生物燃料電池100は、窒素除去および脱臭処理を行うこともできる(図8参照)。
【0036】
また、本実施の形態に係る微生物燃料電池100では、アノード130、隔膜142およびカソード144が容器110の壁面の一部を構成することなく液体120の中または表面に浮いている。このため、液体120の圧力の増大によるアノード130、隔膜142およびカソード144の破壊を考慮することなく、容器110を大きくすること、すなわち微生物燃料電池100をスケールアップすることができる。また、液体120の量に関係なく、アノード130およびカソード144の全面が常に液体120と直接または隔膜142を介して接触することから、液体120の量の変化の影響を受けずに外部回路に電力を安定して出力することができる。
【0037】
さらに、本実施の形態に係る微生物燃料電池100では、液体120中に空気168を送り込む曝気装置160を設置するとともに、アノード130、隔膜142およびカソード144を取り付けられた浮き150を液体120の表面に浮かべるか、または取り出すだけで、本実施の形態に係る微生物燃料電池100を容易に設置または撤去することができる。したがって、本実施の形態に係る微生物燃料電池100を既存の施設に導入することも容易である。
【0038】
なお、本実施の形態では、隔膜142およびカソード144を含む膜電極接合体140が液体120の表面に浮いており、アノード130が液体120の中に浮いている微生物燃料電池100について説明したが、アノード130、隔膜142およびカソード144の位置はこれに限定されない。たとえば、液体透過性を有するアノード130、隔膜142およびカソード144が一体化されて膜電極接合体を構成しており、この膜電極接合体がアノード130が液体120に接触し、カソード144が外気に接触するように、液体120の表面に浮いていてもよい。この場合も、膜電極接合体は、液体120の表面(液面)に対して傾斜するように配置されることが好ましい。また、図4に示されるように、従来の1槽型の微生物燃料電池と同様に、容器110の壁面にアノード130およびカソード144を配置してもよい。この場合も、曝気装置160が、容器110内の液体120に酸素を含む気体(例えば空気168)を送り込むことは変わらない。
【0039】
また、本実施の形態では、アノード130およびカソード144を液体120の中または表面に浮かすための浮き150を有する微生物燃料電池100について説明したが、浮き150は必須の構成要件ではない。たとえば、アノード130、隔膜142またはカソード144を中空構造とするなどしてこれら自身を浮くようにすれば、浮き150は無くてもよい。しかしながら、電池の実用性を考慮した場合は、浮き150はあることが好ましい。
【0040】
また、本実施の形態では、隔膜142を有する微生物燃料電池100について説明したが、隔膜142は必須の構成要件ではない。すなわち、カソード144は、アノード130と接触してはいけないが、液体120には直接接触していてもよい。しかしながら、電池の実用性を考慮した場合は、隔膜142はあることが好ましい。
【0041】
以下、実施例を参照して本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0042】
[実験1]
本実験では、上記実施の形態に係る微生物燃料電池(図3参照)を作製し、その発電特性および有機物分解特性を評価した。本実験では、間欠的に曝気を行った。
【0043】
1.微生物燃料電池の作製
(1)アノードの作製
10×9cmのカーボンクロス1枚および10×3cmのカーボンクロス2枚を、結束バンドを用いて導線に固定することで、アノードを作製した。
【0044】
(2)膜電極接合体の作製
粒子径30〜40nmの導電性カーボン粉末(Vulcan XC-72;CABOT社)16mg、粒子径2〜3nmのプラチナ粉末(田中貴金属工業株式会社)16mg、イオン伝導性ポリマー溶液(ナフィオン(登録商標)を5質量%含む溶液)0.32mLを混合して、ペーストを作製した。得られたペーストをテフロン(登録商標)シート(直径7.0cm)の面上に均一に塗布し乾燥させて、触媒層を形成した。プロトン交換膜(Nafion-117;直径11cm)に触媒層が接触するように、触媒層を形成したテフロンシートをプロトン交換膜上に積層した状態で、ホットプレス機を用いてプレス(120℃、10分間)することで、触媒層(厚み約100μm)をプロトン交換膜に転写した。
【0045】
次いで、テフロン加工済みのカーボンクロス(直径7.0cm)に前述のイオン伝導性ポリマー溶液0.8mLを塗布した。さらに、その上に前述のプロトン交換膜を、イオン伝導性ポリマー溶液に触媒層が接触するように積層した状態で、前述と同様の条件でプレスして圧着させることで、カソードおよび隔膜を含む膜電極接合体を作製した。
【0046】
(3)培地の調製
以下の表に示される添加物を蒸留水に加えて、培地(電解質溶液)を調製した。
【表1】
【0047】
(4)微生物燃料電池の作製
容器として、プラスチック製の容量2Lのビーカーを準備した。ビーカー内の底部には、ポンプ(空気吐出量:1.7〜2.0L/分)に接続された散気管を配置した。前述の培地と、電子供与微生物および燃料としての活性汚泥とを4:1の割合で混合した。得られた混合液1.5Lを、ビーカー内に導入した。
【0048】
発泡スチロールからなる円環形状の浮き(外径10cm×内径7cm×高さ5cm)にアノードおよび膜電極接合体(プロトン交換膜およびカソード)を固定した。アノードは、導線を介して浮きに固定した(図3参照)。
【0049】
ビーカー内の混合液に浮きを浮かべることで、ビーカー内にアノードおよび膜電極接合体を設置した。アノードは、混合液中に浮いた状態となり、カソードは、外気と接触した状態となった。また、膜電極接合体は、混合液の液面に対して傾斜していた。アノードおよびカソードを外部の電力計と接続した。
【0050】
2.微生物燃料電池の評価
作製した上記実施の形態に係る微生物燃料電池の発電特性および浄化特性を評価した。また、比較のため、同じ容器、ポンプ、散気管および混合液を用いて間欠曝気式活性汚泥法を行う反応槽(以下「間欠曝気式活性汚泥槽」という)を作製し、浄化特性を評価した。
【0051】
室温において、曝気1時間および無曝気5時間のサイクルで実施の形態に係る微生物燃料電池を稼働させて、1分ごとに電力を測定し、カソードの単位面積当たりの出力密度を算出した。同時に、混合液の酸化還元電位(ORP)も測定した。また、1日ごとに混合液の化学的酸素要求量(COD)を測定した。また、稼働してから4日目に、混合液の全窒素(TN)の濃度を測定した。比較のため、曝気処理を行わずに稼働させた微生物燃料電池についても、化学的酸素要求量の測定および混合液の全窒素濃度の測定を行った。
【0052】
同様に、室温において、曝気1時間および無曝気5時間のサイクルで間欠曝気式活性汚泥槽を稼働させて、1分ごとに混合液の酸化還元電位を測定した。また、1日ごとに混合液の化学的酸素要求量を測定した。また、稼働してから4日目に、混合液の全窒素の濃度を測定した。
【0053】
図5Aは、実施の形態に係る微生物燃料電池における酸化還元電位(ORP)の経時的変化を示すグラフであり、図5Bは、間欠曝気式活性汚泥槽における酸化還元電位の経時的変化を示すグラフである。これらのグラフから、実施の形態に係る微生物燃料電池および間欠曝気式活性汚泥槽のいずれにおいても、曝気により酸化還元電位が正の値まで上昇しており、好気状態になっていることがわかる。
【0054】
図6は、実施の形態に係る微生物燃料電池における、カソードの単位面積当たりの出力密度の経時的変化を示すグラフである。このグラフから、間欠的に曝気を行っても、実施の形態に係る微生物燃料電池が発電を継続できることがわかる。また、時間の経過と共に有機物の濃度が低減することによる出力密度の低下および出力波形の変化が生じることもわかる。
【0055】
図7は、実施の形態に係る微生物燃料電池および間欠曝気式活性汚泥槽における混合液の化学的酸素要求量の測定結果を示すグラフである。このグラフでは、曝気処理を行わずに稼働させた微生物燃料電池の測定結果も示している。このグラフから、本発明に係る微生物燃料電池は、間欠曝気式活性汚泥槽よりも速く有機物を分解できることがわかる。これは、電子供与微生物を含む様々な微生物が高密度でアノードに付着することにより、容器内に微生物が高濃度に保持されたことと、さらには曝気により混合液中の有機物と電子供与微生物が効率よく接触できたためと考えられる。また、本発明に係る微生物燃料電池は、曝気処理を行わずに稼働させた微生物燃料電池よりも顕著に速く有機物を分解できることもわかる。
【0056】
図8は、実施の形態に係る微生物燃料電池および間欠曝気式活性汚泥槽における混合液の窒素濃度の測定結果を示すグラフである。このグラフでは、曝気処理を行わずに稼働させた微生物燃料電池の測定結果も示している。このグラフから、本発明に係る微生物燃料電池は、間欠曝気式活性汚泥槽と同様に混合液中の窒素を除去できることがわかる。また、曝気処理を行わずに稼働させた微生物燃料電池では、窒素を除去できないこともわかる。これは、曝気処理を行わずに稼働させた微生物燃料電池では、常に嫌気状態であり、好気状態で生じるアンモニア酸化反応(硝化)が生じず、脱窒反応も生じないためであると考えられる。このことから、微生物燃料電池において(間欠)曝気を行うことにより、窒素の除去が促進されることがわかる。
【0057】
[実験2]
本実験では、実験1と異なる条件で稼働させたときの微生物燃料電池の発電特性を評価した。
【0058】
1.微生物燃料電池の作製
本実験では、空気吐出量が1.1L/分のポンプを用いたこと、および異なる組成の培地を用いたことを除いては、実験1で作製した微生物燃料電池と同じ構成の微生物燃料電池を作製した。培地(電解質溶液)は、以下の表に示される添加物を蒸留水に加えることで調製した。
【表2】
【0059】
2.微生物燃料電池の評価
室温において、曝気2時間および無曝気4時間のサイクルで実施の形態に係る微生物燃料電池を動作させて、1分ごとに電力を測定し、カソードの単位面積当たりの出力密度を算出した。
【0060】
図9は、実施の形態に係る微生物燃料電池における、カソードの単位面積当たりの出力密度の経時的変化を示すグラフである。このグラフでは、曝気を行った時期を矢印で示している。このグラフから、培地に含まれる有機物の組成や曝気の条件などによっては、曝気を行うことにより発電の出力が増大することがわかる。この理由は不明であるが、一つの可能性として、弱い曝気により混合液が適度に撹拌されたり、アノードに付着した阻害物が除去されたりしたことが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る微生物燃料電池は、発電能力を維持しつつ有機物の分解能力が高いため、例えば畜舎における廃水処理や都市部における下水の浄化処理などにおいて有用である。
【符号の説明】
【0062】
10 微生物燃料電池
11 容器
12 電子供与微生物
13 液体
14 アノード
15 隔膜
16 カソード(エアカソード)
17 膜電極接合体(MEA)
100 微生物燃料電池
110 容器
120 液体
122 電子供与微生物
130 アノード
140 膜電極接合体(MEA)
142 隔膜
144 カソード(エアカソード)
150 浮き
160 曝気装置
162 ポンプ
164 散気管
166 制御部
168 空気
170 導線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9