特許第6376852号(P6376852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許6376852-ドレッシングボードの保持治具 図000002
  • 特許6376852-ドレッシングボードの保持治具 図000003
  • 特許6376852-ドレッシングボードの保持治具 図000004
  • 特許6376852-ドレッシングボードの保持治具 図000005
  • 特許6376852-ドレッシングボードの保持治具 図000006
  • 特許6376852-ドレッシングボードの保持治具 図000007
  • 特許6376852-ドレッシングボードの保持治具 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376852
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】ドレッシングボードの保持治具
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/12 20060101AFI20180813BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20180813BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B24B53/12 Z
   B24B53/00 K
   H01L21/78 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-120522(P2014-120522)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2016-434(P2016-434A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】北野 孝之
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−264575(JP,A)
【文献】 特開2005−251909(JP,A)
【文献】 特開2013−202740(JP,A)
【文献】 特開2011−183501(JP,A)
【文献】 実開昭62−039968(JP,U)
【文献】 特開2014−091206(JP,A)
【文献】 特開2000−049120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B53/00−57/04
H01L21/301;21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状フレームの開口にテープを介して被加工物を支持する被加工物ユニットの被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、前記チャックテーブルに吸引保持された被加工物を切削する切削ブレードを有する切削手段と、を備えた切削装置で使用されるドレッシングボードの保持治具であって、
前記チャックテーブルからの吸引力を作用させる貫通穴が形成されドレッシングボードが載置される載置領域を備え、前記環状フレームに対応した外径に形成されたプレート状の治具本体と、
前記治具本体の前記載置領域の周囲に形成され、ドレッシングボードの位置ずれを防ぐ位置ずれ規制部と、を備え
前記治具本体は、プラスチック又は金属を素材とした一体の部材であることを特徴とするドレッシングボードの保持治具。
【請求項2】
前記治具本体は、前記載置領域を設けた凸部と、前記載置領域の裏側の裏面に形成されかつ前記チャックテーブルが侵入する凹部と、を備えて、前記チャックテーブルのフレームクランプにより前記チャックテーブルの保持面より低い位置で挟持される請求項1に記載のドレッシングボードの保持治具。
【請求項3】
前記位置ずれ規制部は、前記ドレッシングボードの厚さより薄い厚さで前記治具本体に配設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のドレッシングボードの保持治具。
【請求項4】
前記切削装置は、複数の前記被加工物ユニットを収容するカセットを載置するカセット載置台と、前記カセット載置台に載置された前記カセットと前記チャックテーブルとの間で前記環状フレームを支持して前記被加工物ユニットを搬送する搬送手段と、を備え、
前記載置領域に前記ドレッシングボードが載置された前記治具本体は、前記カセットに収容可能であり、前記搬送手段に支持されて搬送されることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のドレッシングボードの保持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレッシングボードの保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置では、切削ブレードのドレッシング用にドレッシングボードを利用する際、他の被加工物と同様に、ドレッシングボードをダイシングテープで環状フレームに固定し、ドレッシングに用いる。
【0003】
通常、被加工物はテープマウンターと呼ばれる自動装置によって環状フレームにダイシングテープで装着されるが、ドレッシングボードは被加工物と形状が異なるため、テープマウンターにセッティングできないことから、オペレーターが1枚ずつ環状フレームにダイシングテープで固定している。よって、余分な工数がかかっている。
【0004】
また、ダイシングテープは1枚あたり数十円〜数百円程度のコストがかかっており、製品ではないドレッシングボードを加工するのに不要なコストがかかっていると言える。そこで、チャックテーブルの外周にドレッシングボード専用のテーブルを設けた切削装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−49120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ドレッシングボード専用のテーブルを設けた切削装置は、導入コストも低くはないため、あまり採用されていない。一方、作業工数やランニングコストはかかるが、手軽さからドレッシングボードをダイシングテープで環状フレームに固定する方法が根強く採用されている。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、環状フレーム及びダイシングテープのランニングコストを削減できると共に、環状フレームへドレッシングボードを固定する工数を削減できるドレッシングボードの保持治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係るドレッシングボードの保持治具は、環状フレームの開口にテープを介して被加工物を支持する被加工物ユニットの被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、前記チャックテーブルに吸引保持された被加工物を切削する切削ブレードを有する切削手段と、を備えた切削装置で使用されるドレッシングボードの保持治具であって、前記チャックテーブルからの吸引力を作用させる貫通穴が形成されドレッシングボードが載置される載置領域を備え、前記環状フレームに対応した外径に形成されたプレート状の治具本体と、前記治具本体の前記載置領域の周囲に形成され、ドレッシングボードの位置ずれを防ぐ位置ずれ規制部と、を備え、前記治具本体は、プラスチック又は金属を素材とした一体の部材であることを特徴とするものである。
また、前記ドレッシングボードの保持治具において、前記治具本体は、前記載置領域を設けた凸部と、前記載置領域の裏側の裏面に形成されかつ前記チャックテーブルが侵入する凹部と、を備えて、前記チャックテーブルのフレームクランプにより前記チャックテーブルの保持面より低い位置で挟持されることが好ましい。
【0009】
また、前記ドレッシングボードの保持治具において、前記位置ずれ規制部は、前記ドレッシングボードの厚さより薄い厚さで前記治具本体に配設されることが好ましい。
【0010】
また、前記ドレッシングボードの保持治具において、前記切削装置は、複数の前記被加工物ユニットを収容するカセットを載置するカセット載置台と、前記カセット載置台に載置された前記カセットと前記チャックテーブルとの間で前記環状フレームを支持して前記被加工物ユニットを搬送する搬送手段と、を備え、前記載置領域に前記ドレッシングボードが載置された前記治具本体は、前記カセットに収容可能であり、前記搬送手段に支持されて搬送されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のドレッシングボードの保持治具は、環状フレームとダイシングテープを不要にしながらも、被加工物が環状フレームにダイシングテープで保持された場合と同じようにドレッシングボードを搬送して固定することができる。これにより、環状フレーム及びダイシングテープのランニングコストを削減できると共に、環状フレームへドレッシングボードを固定する工数を削減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、ドレッシングボードの保持治具の構成例を示す斜視図である。
図3図3は、ドレッシングボードの保持治具の構成例を示す断面図である。
図4図4は、ドレッシングボードの保持治具の使用例を示す断面図である。
図5図5は、実施形態2に係るドレッシングボードの保持治具の構成例を示す斜視図である。
図6図6は、実施形態2に係るドレッシングボードの保持治具の構成例を示す断面図である。
図7図7は、実施形態2に係るドレッシングボードの保持治具の使用例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態1〕
実施形態1に係る切削装置を図1に基づいて説明する。図1は、切削装置の構成例を示す斜視図である。図1に示す切削装置1は、環状フレーム51の開口にテープ52を介してウェーハWを支持するウェーハユニット50のウェーハWを吸引保持するチャックテーブル3と、チャックテーブル3をX軸方向に移動させるテーブル移動手段4と、テーブル移動手段4を跨ぐように装置本体2に立設された門型形状の第1の支持部材5とを備える。ウェーハユニット50は被加工物ユニットであり、ウェーハWは被加工物である。
【0015】
チャックテーブル3は、ウェーハWを保持する保持面3aを有し、保持面3aは、図示しない真空吸引源と連通されており、真空吸引源の負圧によりウェーハWを吸引保持する。チャックテーブル3は、図示しない回転手段により鉛直方向に対して平行となる軸周りに回転可能に配設される。
【0016】
テーブル移動手段4は、チャックテーブル3を支持するテーブル移動基台4aを有している。テーブル移動基台4aは、X軸方向に対して平行に延在されるボールねじ(図示せず)に係合され、パルスモータ等で構成される駆動源によってX軸方向に移動する。
【0017】
門型形状の第1の支持部材5には、第1の搬送手段6と、第2の搬送手段7とが配設されている。第1の支持部材5の正面には、複数のウェーハユニット50を収容するカセット8と、カセット8を載置するカセット載置台8aと、ウェーハWを仮置きする一対のレール9と、ウェーハWを洗浄する洗浄テーブル10とが配設されている。
【0018】
第1の搬送手段6は、Y,Z軸方向に移動可能に第1の支持部材5に取り付けられ、図示しないアクチュエータにより駆動される。第2の搬送手段7は、X,Y,Z軸方向に移動可能に第1の支持部材5に取り付けられ、図示しないアクチュエータにより駆動される。第1及び第2の搬送手段6,7は、カセット8とチャックテーブル3との間で環状フレーム51を支持してウェーハユニット50を搬送する搬送手段として機能する。例えば、第1の搬送手段6は、カセット8から切削加工前のウェーハユニット50を取り出して一対のレール9上に仮置きし、レール9に仮置きされたウェーハユニット50の環状フレーム51を吸引保持してチャックテーブル3に搬送する。チャックテーブル3上で切削加工後、第2の搬送手段7は、チャックテーブル3に載置されたウェーハユニット50の環状フレーム51を吸引保持して洗浄テーブル10に搬送する。洗浄テーブル10で切削加工後のウェーハWを洗浄後、第1の搬送手段6は、ウェーハユニット50をレール9に搬送して仮置きし、その後カセット8に収容する。
【0019】
第1の支持部材5の背面には、テーブル移動手段4を跨ぐように装置本体2に立設された門型形状の第2の支持部材13を備える。第2の支持部材13には、第1の切削手段11と、第2の切削手段12とが対峙して配設されている。各切削手段11,12は、Y,Z軸方向に移動可能に取り付けられ、図示しないアクチュエータにより駆動される。第1の切削手段11は、チャックテーブル3に吸引保持されたウェーハWを一方側から切削する切削ブレード11aを備える。第2の切削手段12も同様に、チャックテーブル3に吸引保持されたウェーハWを他方側から切削する切削ブレード12aを備える。
【0020】
次に、ドレッシングボードの保持治具の構成例について説明する。図2は、ドレッシングボードの保持治具の構成例を示す斜視図である。図3は、ドレッシングボードの保持治具の構成例を示す断面図である。
【0021】
図2に示すドレッシングボード15の保持治具30Aは、プレート状の治具本体31aと、ドレッシングボード15が載置される載置領域32と、ドレッシングボード15の位置ずれを防ぐ位置ずれ規制部33とを備える。
【0022】
治具本体31aの素材はプラスチックや金属などであり、治具本体31aは環状フレーム51に対応した外径に形成されている。すなわち、治具本体31aは、ウェーハユニット50の環状フレーム51と同じ外周形状に形成されている。これは、ウェーハユニット50と同様に保持治具30Aをカセット8に収容し、ウェーハユニット50と同様に保持治具30Aを第1及び第2の搬送手段6,7により搬送するためである。ここで、カセット8は、一定の間隔でウェーハユニット50を積層して収容しているが、当該間隔は、保持治具30Aにドレッシングボード15を載置した時の高さH1よりも大きくなっている。これにより、保持治具30Aをウェーハユニット50と同様にカセット8に差し込んで収容することができる。また、第1及び第2の搬送手段6,7は、環状フレーム51を吸引保持して搬送するが、保持治具30Aも同様にして治具本体31aの外周部を吸引保持して搬送する。
【0023】
載置領域32は、治具本体31aの中央付近に2箇所設けられ、正方形のドレッシングボード15の形状に合わせて領域が設定されている。載置領域32には、チャックテーブル3からの吸引力を作用させる貫通穴34が形成されている。貫通穴34は、載置領域32の全域にわたって等間隔で所定の個数形成されている。これは、載置領域32に接するドレッシングボード15の面に対して等しく吸引力を働かせることで、ドレッシングボード15を載置領域32-に密着させるためである。載置領域32には、例えばシリコン樹脂のような摩擦力の高い滑止部材320が塗布されており、ドレッシングボード15が滑りにくいようになっている。もちろん、載置領域32に塗布された滑止部材320にも貫通穴34が形成されている。
【0024】
位置ずれ規制部33は、治具本体31aの載置領域32の周囲に形成され、ドレッシングボード15の位置ずれを防ぐ。例えば、位置ずれ規制部33は略L字形状であり、ドレッシングボード15の厚さより薄い厚さに形成され、載置領域32の一方の対角線上に配設される。位置ずれ規制部33は、一方の対角線上にのみ配設されるので、簡単な構成で部品数を少なくできると共に、使用後のドレッシングボード15を簡単に治具本体31aから取り外すことができる。更に好ましくは、位置ずれ規制部33の厚さは、ドレッシング時の切削ブレード11aによるドレッシングボード15の切り残し量より薄く形成されている。これにより、ドレッシングボード15の全面を余すことなく利用できる。
【0025】
次に、ドレッシングボード15の保持治具30Aの使用例について説明する。図4は、ドレッシングボードの保持治具の使用例を示す断面図である。ドレッシングボード15が載置された保持治具30Aは、作業員により予めカセット8に収容されている。保持治具30Aは、第1の搬送手段6により、カセット8から取り出されて一対のレール9上に仮置きされてチャックテーブル3に搬送される。保持治具30Aは、チャックテーブル3により吸引保持された状態でドレッシングを行う。
【0026】
例えば、図4に示す保持治具30Aは、チャックテーブル3の保持面3aに載置され、治具本体31aがチャックテーブル3のフレームクランプ3bにより挟持されている。このとき、ドレッシングボード15は、治具本体31aの貫通穴34を介して保持面3aから受ける負圧により、治具本体31aに吸引保持される。さらに、ドレシングボード15は、位置ずれ規制部33により、X軸方向及びY軸方向への移動が規制される。この状態で、切削ブレード11aがドレッシングボード15を切削して、切削ブレード11aのドレッシング(目立て)を行う。
【0027】
ドレッシングボード15は、切削ブレード11aによりX軸方向からドレッシングされても、治具本体31aに吸引保持されると共に位置ずれ規制部33により移動が規制され、更に滑止部材320により滑り止めされているので、載置領域32からずれることがない。また、位置ずれ規制部33の厚みは、ドレッシングボード15の厚みより薄いので、切削ブレード11aの目立ての際に切削ブレード11aが位置ずれ規制部33に接触することを防止できる。なお、切削ブレード11aの目立ては、切削ブレード11aが目潰れして目立てが必要になった場合や、切削ブレード11aが磨耗して新たな切削ブレードに交換する場合に行われる。
【0028】
ドレッシング処理が終了した後、チャックテーブル3に載置された保持治具30Aは、第2の搬送手段7により、レール9に搬送されて仮置きされる。レール9に仮置きされた保持治具30Aは、第1の搬送手段6により、カセット8に収容される。なお、ドレッシング終了後、第2の搬送手段7によりレール9に仮置きされた保持治具30Aをカセット8に収容せずに作業員が回収するようにしてもよい。
【0029】
以上のように、実施形態1に係るドレッシングボード15の保持治具30Aによれば、治具本体31aが環状フレーム51に対応した外径に形成され、チャックテーブル3からの吸引力を作用させる貫通穴34が形成されてドレッシングボード15が載置される載置領域32と、ドレッシングボード15の位置ずれを防ぐ位置ずれ規制部33とを備える。これにより、保持治具30Aは、第1及び第2の搬送手段6,7により環状フレーム51と同様に治具本体31aが保持されるので、ウェーハユニット50と同様に搬送することができる。また、保持治具30Aは、チャックテーブル3により載置領域32の貫通穴34に負圧が与えられるので、ドレッシングボード15を治具本体31aに吸着して固定することができる。また、保持治具30Aは、位置ずれ規制部33によりドレッシングボード15の移動を規制するので、ドレッシングボード15を余すところなく予定通り切削して良好に目立てができる。従って、環状フレーム51とテープ52を不要にしながらも、環状フレーム51にテープ52によりドレッシングボード15が保持された場合と同じようにドレッシングを行うことができる。これにより、環状フレーム51及びテープ52のランニングコストを削減できると共に、テープ52により環状フレーム51へドレッシングボード15を固定する工数を削減できる。
【0030】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係るドレッシングボードの保持治具の構成例について説明する。図5は、実施形態2に係るドレッシングボードの保持治具の構成例を示す斜視図である。図6は、実施形態2に係るドレッシングボードの保持治具の構成例を示す断面図である。実施形態1と同じ構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0031】
ドレッシングボード15の保持治具30Bは、フレームクランプ3cがチャックテーブル3の保持面3aよりも低い位置で挟持する場合に使用される(図7参照)。例えば、フレームクランプ3cの支持基台部3dの支持面3fは、チャックテーブル3の保持面3aよりも高さH4だけ低い位置で環状フレーム51を挟持する。
【0032】
保持治具30Bは、治具本体31bと、ドレッシングボード15が載置される載置領域32と、ドレッシングボード15の位置ずれを防ぐ位置ずれ規制部33とを備える。治具本体31bは凸部35と、縁部36と、凹部37とを備え、縁部36は環状フレーム51に対応した外径に形成されている。すなわち、治具本体31bは、ウェーハユニット50の環状フレーム51と同じ外周形状に形成されている。治具本体31bの凸部35は、縁部36よりも高い位置に形成され、チャックテーブル3の保持面3aと略同じ大きさに形成されている。治具本体31bの裏面側には凹部37が形成され、凹部37の深さH3とフレームクランプ3cの支持基台部3dの支持面3fからのチャックテーブル3の保持面3aの高さH4は等しい高さである。治具本体31bの素材は、プラスチックや金属などである。載置領域32は、治具本体31aにおける凸部35の中央付近に2箇所設けられ、正方形のドレッシングボード15の形状に合わせて領域が設定されている。
【0033】
載置領域32には、チャックテーブル3からの吸引力を作用させる貫通穴34が形成されている。載置領域32には滑止部材320が塗布されており、ドレッシングボード15が滑りにくいようになっている。位置ずれ規制部33は、治具本体31bの載置領域32の周囲に形成され、ドレッシングボード15の位置ずれを防ぐ。
【0034】
載置領域32にドレッシングボード15が載置された保持治具30Bは、ウェーハユニット50と同様にカセット8に収容され、第1及び第2の搬送手段6,7に支持されて搬送される。例えば、カセット8にウェーハユニット50を積層する間隔は、保持治具30Bにドレッシングボード15を載置した時の高さH2よりも大きくなっている。これにより、保持治具30Bをウェーハユニット50と同様にカセット8に差し込んで収容することができる。ところで、保持治具30Bは凸部35を有しているので、保持治具30Bの高さH2は保持治具30Aの高さH1よりも高く構成されている。このため、保持治具30Bの高さH2が、カセット8にウェーハユニット50を積層する間隔よりも高くなる場合は、カセット8の2段分のスペースを確保して保持治具30Bを収容するようにしてもよい。第1及び第2の搬送手段6,7は、環状フレーム51と同様に治具本体31bの縁部36を吸引保持して保持治具30Bを搬送する。
【0035】
次に、ドレッシングボードの保持治具の使用例について説明する。図7は、ドレッシングボードの保持治具の使用例を示す断面図である。図7に示す保持治具30Bは、凸部35がチャックテーブル3の保持面3aに載置され、縁部36がフレームクランプ3cにより挟持されている。
【0036】
フレームクランプ3cは、アクチュエータにより回動されて支持基台部3dに対向する爪部3eを有している。保持治具3Bがチャックテーブル3に載置されると、保持治具30Bの縁部36が支持基台部3dにより支持され、爪部3eが回動されて爪部3eと支持基台部3dにより縁部36が挟持されて保持治具30Bがチャックテーブル3に固定される。
【0037】
ドレッシングボード15は、治具本体31bの貫通穴34を介して保持面3aから受ける負圧により、治具本体31bに吸引保持される。さらに、ドレシングボード15は、位置ずれ規制部33により、X軸方向及びY軸方向への移動が規制される。この状態で、切削ブレード11aがドレッシングボード15を切削して、切削ブレード11aの目立てを行う。ドレッシングボード15は、切削ブレード11aによりX軸方向からドレッシングされても、治具本体31bに吸引保持されると共に位置ずれ規制部33により移動が規制され、更に滑止部材320により滑り止めされているので、載置領域32からずれることがない。
【0038】
以上のように、実施形態2に係るドレッシングボード15の保持治具30Bによれば、環状フレーム51を引き落としてクランプする切削装置に適用可能であって、実施形態1の保持治具30Aと同様に、環状フレーム51にテープ52によりドレッシングボード15が保持された場合と同じようにドレッシングを行うことができる。
【0039】
なお、位置ずれ規制部33は、略L字形状に形成されて載置領域32の一方の対角線上に配設されると説明したが、ドレッシングボード15の移動を規制できればよく、上述の構成に限定されない。例えば、位置ずれ規制部は、載置領域32の他方の対角線上にも略L字形状の部材を追加して配設するようにしてもよいし、載置領域32の全周を囲むような矩形枠の部材を配設するようにしてもよい。また、位置ずれ規制部は、柱状の部材を載置領域32の各辺に対して2点支持するように立設させて配設してもよい。また、位置ずれ規制部は、切削ブレードの回転方向(X軸方向)に特に負荷がかかるので、X軸方向にかかる負荷を支持する部材を、Y軸方向にかかる負荷を支持する部材よりも強固なものにしてもよい。例えば、X軸方向にかかる負荷を支持する部材の支持範囲を、Y軸方向にかかる負荷を支持する部材の支持範囲よりも広くすることが考えられる。
【0040】
また、載置領域32を2箇所に配設する例を説明したが、これに限定されない。例えば、切削ブレード11a,12aのそれぞれに対してX軸方向に2箇所ずつ、合計4箇所に載置領域32を配設するようにしてもよい。これにより、ドレッシングボード15を2倍載置することができるので連続してドレッシングをすることが可能となり、作業効率を向上できる。
【符号の説明】
【0041】
1 切削装置
3 チャックテーブル
3a 保持面
3b,3c フレームクランプ
8 カセット
8a カセット載置台
11 第1の切削手段
11a 切削ブレード
12 第2の切削手段
12a 切削ブレード
15 ドレッシングボード
30A,30B 保持治具
31a,31b 治具本体
32 載置領域
320 滑止部材
33 位置ずれ規制部
34 貫通穴
35 凸部
36 縁部
50 ウェーハユニット
51 環状フレーム
52 テープ
W ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7