(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板状ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルが保持する板状ワークの上面に研削砥石の研削面を当接させて厚みを減じさせる研削手段と、該研削手段を該チャックテーブルに接近および離反させ研削送り方向に研削送りする研削送り手段と、該研削手段で研削される板状ワークの厚みを測定する測定手段と、該測定手段を該チャックテーブルの径方向に移動させる径方向移動手段と、該チャックテーブルと該研削手段との傾き関係を調整する傾き調整手段と、を備える研削装置を用いた研削方法であって、
該研削手段を用いて、予め設定される仕上げ厚みに達しない厚みで板状ワークを研削する予備研削工程と、
該予備研削工程で研削された板状ワークに該測定手段を該径方向移動手段で径方向に移動させて径方向における厚みを測定する厚み測定工程と、
該厚み測定工程で測定された測定結果を基に径方向における仕上げ厚みが均等になるように該傾き調整手段で該チャックテーブルと該研削手段との傾き関係を調整した時に、変化する該チャックテーブルの上面と該研削砥石の該研削面との距離の変化量を算出する算出工程と、
該算出工程で算出された該変化量に基づいて該研削送り手段と該傾き調整手段とを共に動作させ、該傾き調整手段で傾き調整動作中は、該研削面が該予備研削工程での板状ワークの被研削面に接した状態を維持する高さ調整工程と、
該高さ調整工程の後、予め設定される仕上げ厚みまで該測定手段で板状ワークの厚みを測定しながら該研削手段を該研削送り手段で研削送りさせ板状ワークを研削する仕上げ研削工程と、により構成される研削方法。
板状ワークを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルが保持する板状ワークの上面に研削砥石の研削面を当接させて厚みを減じさせる研削手段と、該研削手段を該チャックテーブルに接近および離反させ研削送り方向に研削送りする研削送り手段と、該研削手段で研削される板状ワークの厚みを測定する測定手段と、該測定手段を該チャックテーブルの径方向に移動させる径方向移動手段と、該チャックテーブルと該研削手段との傾き関係を調整する傾き調整手段と、を備える研削装置を用いた研削方法であって、
該研削手段を用いて、予め設定される仕上げ厚みに達しない厚みで板状ワークを研削する予備研削工程と、
該予備研削工程で研削された板状ワークに該測定手段を該径方向移動手段で径方向に移動させて径方向における厚みを測定する厚み測定工程と、
該厚み測定工程で測定された測定結果を基に径方向における仕上げ厚みが均等になるように該傾き調整手段で該チャックテーブルと該研削手段との傾き関係を調整した時に、変化する該チャックテーブルの上面と該研削砥石の該研削面との距離の変化量を算出する算出工程と、
該算出工程で算出された該変化量に基づいて該研削送り手段と該傾き調整手段とを共に動作させ、該研削手段と該チャックテーブルに保持された板状ワークとの相対的な移動速度を研削送り速度と等しくする高さ調整工程と、
該高さ調整工程の後、予め設定される仕上げ厚みまで該測定手段で板状ワークの厚みを測定しながら該研削手段を該研削送り手段で研削送りさせ板状ワークを研削する仕上げ研削工程と、により構成される研削方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、研削装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る研削装置の斜視図である。なお、本実施の形態では、
図1に示す構成に限定されない。研削装置は、板状ワークに対して研削加工を実施可能であれば、どのように構成されてもよい。
【0015】
図1に示すように、研削装置1は、フルオートタイプの加工装置であり、板状ワークWに対する搬入処理、粗研削処理、仕上げ研削処理、洗浄処理、搬出処理からなる一連の作業を全自動で実施するように構成されている。板状ワークWは略円板状に形成されており、例えば、シリコン、ガリウムヒ素等の半導体基板や、セラミック、ガラス、サファイア等の無機材料基板、半導体製品のパッケージ基板で構成される。
【0016】
研削装置1の基台10の前側には、複数の板状ワークWが収容された一対のカセット13が載置されている。一対のカセット13の後方には、カセット13に対して板状ワークWを出し入れするカセットロボット15が設けられている。カセットロボット15の両斜め後方には、研削前の板状ワークWを位置決めする位置決め機構20と、研削済みの板状ワークWを洗浄する洗浄機構25とが設けられている。位置決め機構20と洗浄機構25の間には、研削前の板状ワークWをチャックテーブル41に搬入する搬入手段30と、チャックテーブル41から研削済みの板状ワークWを搬出する搬出手段35とが設けられている。
【0017】
カセットロボット15は、多節リンクからなるロボットアーム16の先端にハンド部17を設けて構成されている。カセットロボット15では、カセット13から位置決め機構20に研削前の板状ワークWが搬送される他、洗浄機構25からカセット13に研削済みの板状ワークWが搬送される。位置決め機構20は、仮置きテーブル21の周囲に、仮置きテーブル21の中心に対して進退可能な複数の位置決めピン22を配置して構成される。位置決め機構20では、仮置きテーブル21上に載置された板状ワークWの外周縁に複数の位置決めピン22が突き当てられることで、板状ワークWの中心が仮置きテーブル21の中心に位置決めされる。
【0018】
搬入手段30は、基台10上で旋回可能な搬入アーム31の先端に搬入パッド32を設けて構成される。搬入手段30では、搬入パッド32によって仮置きテーブル21から板状ワークWが持ち上げられ、搬入アーム31によって搬入パッド32が旋回されることでチャックテーブル41に板状ワークWが搬入される。搬出手段35は、基台10上で旋回可能な搬出アーム36の先端に搬出パッド37を設けて構成される。搬出手段35では、搬出パッド37によってチャックテーブル41から板状ワークWが持ち上げられ、搬出アーム36によって搬出パッド37が旋回されることでチャックテーブル41から板状ワークWが搬出される。
【0019】
洗浄機構25は、スピンナーテーブル(不図示)に向けて洗浄水および乾燥エアーを噴射する各種ノズル(不図示)を設けて構成される。洗浄機構25では、板状ワークWを保持したスピンナーテーブルが基台10内に降下され、基台10内で洗浄水が噴射されて板状ワークWがスピンナー洗浄された後、乾燥エアーが吹き付けられて板状ワークWが乾燥される。搬入手段30および搬出手段35の後方には、3つのチャックテーブル41が周方向に均等間隔で配置されたターンテーブル40が設けられている。
【0020】
チャックテーブル41の上面にはポーラスセラミック材によって保持面42(
図2参照)が形成されている。保持面42は、チャックテーブル41の回転中心を頂点とし外周が僅かに低い円錐状に形成されている(
図2参照)。保持面42に板状ワークWが吸引保持されると、板状ワークWも保持面42に沿って緩傾斜の円錐状になる。チャックテーブル41では、傾き調整手段43(
図2参照)によって粗研削手段60および仕上げ研削手段80に対する傾きが調整される。傾き調整手段43については後述する。
【0021】
ターンテーブル40が120度間隔で間欠回転することで、板状ワークWが搬入および搬出される搬入出位置、粗研削手段60に対峙する粗研削位置、仕上げ研削手段80に対峙する仕上げ研削位置に順に位置付けられる。粗研削位置では、粗研削手段60によってチャックテーブル41上の板状ワークWが所定厚みまで粗研削される。仕上げ研削位置では、仕上げ研削手段80によってチャックテーブル41上の板状ワークWが仕上げ厚みまで仕上げ研削される。粗研削位置および仕上げ研削位置の近傍には、粗研削手段60が支持されるコラム11と、仕上げ研削手段80が支持されるコラム12とが立設されている。
【0022】
コラム11の前面には、粗研削手段60をチャックテーブル41に接近および離反させ、研削送り方向に研削送りする研削送り手段50が設けられている。研削送り手段50は、コラム11の前面にZ軸方向に平行な一対のガイドレール51(1つのみ図示)を配置し、一対のガイドレール51にモータ駆動のZ軸テーブル52をスライド可能に設置して構成される。Z軸テーブル52の前面には、ハウジング53を介して粗研削手段60が支持されている。Z軸テーブル52の背面側にはボールネジ54が螺合されており、ボールネジ54の一端には駆動モータ55が連結されている。駆動モータ55によってボールネジ54が回転駆動されることで、粗研削手段60がガイドレール51に沿ってZ軸方向に移動される。
【0023】
コラム12の前面には、仕上げ研削手段80をチャックテーブル41に接近および離反させ、研削送り方向に研削送りする研削送り手段70が設けられている。研削送り手段70は、コラム12の前面にZ軸方向に平行な一対のガイドレール71(1つのみ図示)を配置し、一対のガイドレール71にモータ駆動のZ軸テーブル(不図示)をスライド可能に設置して構成される。Z軸テーブルの前面には、ハウジング73を介して仕上げ研削手段80が支持されている。Z軸テーブルの背面側にはボールネジ74が螺合されており、ボールネジ74の一端には駆動モータ75が連結されている。駆動モータ75によってボールネジ74が回転駆動されることで、仕上げ研削手段80がガイドレール71に沿ってZ軸方向に移動される。
【0024】
粗研削手段60および仕上げ研削手段80は、円筒状のスピンドルの下端にマウント62、82を設けて構成されている。粗研削手段60のマウント62の下面には、複数の粗研削砥石63が環状に配置された粗研削用の研削ホイール64が装着される。粗研削砥石63は、例えば、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドやレジンボンド等の結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成される。また、仕上げ研削手段80のマウント82の下面には、複数の仕上げ研削砥石83が環状に配置された研削ホイール84が装着される。仕上げ研削砥石83は、粗研削砥石63よりも粒径が細かい砥粒で形成される。
【0025】
また、粗研削位置には、粗研削手段60に隣接して、板状ワークWの上面高さを測定する接触式の上面高さ測定手段85が設けられている。上面高さ測定手段85は、接触式のハイトゲージであり、接触子86を板状ワークWの上面に接触させて、接触位置の高さから板状ワークWの上面高さを検出する。さらに、仕上げ研削位置には、仕上げ研削手段80に隣接して、板状ワークWの厚みを測定する非接触式の厚み測定手段88が設けられている。厚み測定手段88は、板状ワークWにレーザー光を照射して、板状ワークWの上下面で反射されたレーザー光の光路差から板状ワークWの厚みを測定する。
【0026】
また、基台10内には、研削装置1の各部を統括制御する制御手段90が設けられている。制御手段90は、粗研削手段60による粗研削制御、仕上げ研削手段80による仕上げ研削制御、板状ワークWの厚み測定制御、傾き調整手段43によるチャックテーブル41の傾き調整制御等の各種制御を実施している。なお、制御手段90は、各種処理を実行するプロセッサや、メモリ等により構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。メモリには、粗研削量、板状ワークWの厚み測定結果、目標となる板状ワークWの仕上げ厚み、チャックテーブル41の傾き調整量等が一時的に格納される。
【0027】
このような研削装置1では、カセット13内から板状ワークWが位置決め機構20に搬送されて、位置決め機構20で板状ワークWがセンタリングされる。次に、チャックテーブル41上に板状ワークWが搬入され、ターンテーブル40の回転によって粗研削位置、仕上げ研削位置に板状ワークWが位置付けられる。粗研削位置では、上面高さ測定手段85で板状ワークWの上面高さを測定しながら粗研削が実施され、板状ワークWは、所定の粗研削量に達するまで粗研削手段60によって研削される。仕上げ研削位置では、仕上げ厚みに達しない厚みまで板状ワークWが予備研削された後、板状ワークWの厚みが複数箇所で測定される。そして、その厚みの測定結果に基づいて仕上げ研削手段80と傾き調整手段43を共に動作させながら、チャックテーブル41の傾きが微調整される。傾き調整後、板状ワークWが仕上げ厚みまで研削され、板状ワークWが均等な厚みに形成される。
【0028】
以下、
図2を参照して、本実施の形態に係る研削手段およびチャックテーブルの構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係る研削装置の仕上げ研削位置周辺における模式図である。なお、
図2は、粗研削終了後の板状ワークが仕上げ研削位置に位置付けられた状態を示している。
【0029】
図2に示すように、チャックテーブル41は、傾き調整手段43を介してターンテーブル40上に回転可能に設けられている。傾き調整手段43は、2つの可動柱43a(1つのみ示す)と1つの固定柱43bとからなり、チャックテーブル41の外周付近を3点支持している。可動柱43aは、例えば、電動のアクチュエータで構成される。傾き調整手段43では、2つの可動柱43aの上下動により、固定柱43bを支点としてチャックテーブル41が傾斜される。例えば、仕上げ研削加工の際には、仕上げ研削砥石83の研削面83aとチャックテーブル41の保持面42とが平行になるように、2つの可動柱43aが作動されることで、チャックテーブル41の傾きが調整される。ターンテーブル40の上方には、仕上げ研削手段80が設けられている。チャックテーブル41は、研削砥石83が板状ワークWの中心を通るように位置づけられている。仕上げ研削手段80は、チャックテーブル41が保持する板状ワークWの上面に研削砥石83の研削面83aを当接させて板状ワークWの厚みを減じさせる。
【0030】
仕上げ研削手段80の側方には、板状ワークWの厚みを測定する厚み測定手段88が設けられている。厚み測定手段88は、ターンテーブル40外周の所定箇所を支点に旋回可能な旋回アーム89の先端に設けられる。旋回アーム89は、特許請求の範囲における径方向移動手段を構成し、厚み測定手段88は、旋回アーム89の旋回によって板状ワークW上を径方向に移動される。また、厚み測定手段88は、板状ワークWに向かってレーザー光を照射し、板状ワークWの上下面で反射されたレーザー光の光路差に基づいて板状ワークWの厚みを算出する。厚み測定は、チャックテーブル41の中央付近、チャックテーブル41の外周付近、中央と外周との間における任意の3箇所で実施される。なお、本実施の形態においては、3箇所で板状ワークWの厚みが測定される構成について説明するが、この構成に限定されない。測定箇所は、2箇所以上であれば、何箇所測定されてもよい。
【0031】
厚み測定手段88、研削送り手段70、傾き調整手段43は、制御手段90に接続されている。厚み測定手段88で測定された板状ワークWの厚みは制御手段90に出力される。また、制御手段90は、測定された3箇所の厚み測定結果から、チャックテーブル41と仕上研削手段80との傾き関係を調整したときの、チャックテーブル41の保持面42と仕上げ研削砥石83の研削面83aとの距離の変化量を算出する。すなわち、径方向における3点の測定箇所から、チャックテーブル41の傾き具合が認識される。
【0032】
制御手段90は、当該変化量に基づいて、傾き調整時における傾き調整手段43の可動柱43aの駆動量および研削送り手段70の送り量を制御する。傾き調整後、制御手段90は、厚み測定手段88で板状ワークWの厚みを監視しながら、予め設定される板状ワークWの仕上げ厚みに達するまで研削送り手段70の研削送り量を制御する。なお、予め設定される板状ワークWの仕上げ厚みは、制御手段90のメモリ内に記憶されている。
【0033】
次に、第1の動作パターンで実施される研削方法について説明する。
図3は、本実施の形態に係る研削方法の第1の動作パターンの説明図である。
図4は、本実施の形態に係る研削方法の第2の動作パターンの説明図である。
【0034】
図3に示すように、本実施の形態に係る研削方法では、仕上げ研削位置において、予備研削工程、厚み測定工程、算出工程、高さ調整工程、仕上げ研削工程が、この順番で実施される。なお、仕上げ研削位置における仕上げ研削手段80の研削送り速度は、粗研削位置における粗研削手段60(
図1参照)の研削送り速度に対して比較的遅い。そこで、本実施の形態に係る研削方法では、仕上げ研削位置における動作時間をできる限り短縮することで、研削工程全体に要する時間を短縮することが可能になっている。
【0035】
板状ワークWが仕上げ研削位置に位置付けられる前には、先ず、粗研削位置において、粗研削工程が実施される(
図1参照)。粗研削工程では、板状ワークWの上面高さを測定しながら粗研削が実施され、板状ワークWは、目標の粗研削量に達するまで研削される。なお、粗研削工程においては、粗研削手段60の研削面とチャックテーブル41の保持面42とが平行になるように、チャックテーブル41の傾きが調整されている。しかしながら、粗研削手段60の研削面とチャックテーブル41の保持面42との平行度合いには、誤差が含まれている。よって、粗研削直後の板状ワークWは、不均一な厚み分布を有している。第1の動作パターンでは、粗研削工程によって中央部分が薄く、外周部分が厚く形成された板状ワークWについて説明する。
【0036】
粗研削工程が終了すると、ターンテーブル40の間欠回転によって、板状ワークWが粗研削位置から仕上げ研削位置に位置付けられる。このとき、チャックテーブル41は、粗研削時の傾きを維持したまま、仕上げ研削位置に位置付けられる。しかし、粗研削手段60と仕上げ研削手段80とでは、取付誤差等により、板状ワークWに対する研削面の接触角度が微妙に異なる場合がある。そこで、本実施の形態に係る研削方法では、仕上げ研削位置において、先ず、仕上げ研削手段80による予備研削工程が実施される。
【0037】
図3Aに示すように、予備研削工程では、仕上げ研削手段80によって、予め設定される仕上げ厚みに達しない厚みで板状ワークWが研削される。具体的には、仕上げ研削手段80が回転されながら降下され、仕上げ研削砥石83の研削面83aと板状ワークWの上面とが回転接触されることで、板状ワークWが予備研削される。そして、所定研削量に達したところで、研削移動手段の送り動作が停止される。このとき、研削面83aが板状ワークWの上面に接触している。なお、このとき、仕上げ研削手段80の回転動作を停止してもよい。
【0038】
予備研削工程では、板状ワークWの上面が僅かに研削されるため、板状ワークWの上面が整えられる。よって、次の厚み測定工程において、厚み測定手段88から照射される測定光が板状ワークWの上面で乱反射するのを防止することができる。この結果、板状ワークWの厚み測定に与える影響を最小限に抑えることができる。また、仕上げ研削砥石83の研削面83aの表面形状が板状ワークWに転写され、研削面83aと板状ワークWの上面とが一致する。これにより、板状ワークWの厚みを仕上げ研削砥石83の研削面83aとチャックテーブル41の保持面42との距離とみなすことができる。
【0039】
次に、厚み測定工程が実施される。
図3Bに示すように、厚み測定工程では、仕上げ研削手段80の研削送りが一旦停止された後、予備研削工程で研削された板状ワークWに対して厚み測定手段88を径方向に移動させる。これにより、板状ワークWの厚みが測定される。具体的には、旋回アーム89(径方向移動手段)を旋回させて厚み測定手段88を板状ワークWの中心から外周に向かって移動させる。このとき、厚み測定手段88は、板状ワークWの径方向の任意の3箇所で板状ワークWの厚みを測定する。
【0040】
次に、算出工程が実施される。算出工程では、厚み測定工程で測定された測定結果を基に、傾き調整の前後における保持面42と研削面83aとの距離の変化量が算出される。保持面42と研削面83aとの距離は、測定した3箇所でそれぞれ異なるため、測定結果からチャックテーブル41の傾き具合を認識することができる。そして、その傾き具合から、保持面42と研削面83aが平行になるのに必要な保持面42と研削面83aの距離の変化量を算出することができる。すなわち、板状ワークWの厚み測定結果から、板状ワークWを均等な厚みに仕上げるために必要な保持面42と研削面83aの距離の変化量を算出することができる。
【0041】
次に、高さ調整工程が実施される。
図3Cに示すように、高さ調整工程では、算出工程で算出された保持面42と研削面83aとの距離の変化量に基づいて、研削送り手段70と傾き調整手段43とが共に動作される。このとき、仕上げ研削手段80及びチャックテーブル41の回転を停止してもよい。
図3Cに示す状態では、板状ワークWの中心より外周の方が厚くなっているため、外周部分の研削量を増やすように、傾き調整手段43の可動柱43aが上昇される。可動柱43aの上昇に伴い、チャックテーブル41の保持面42が上昇した分だけ、仕上げ研削手段80が上昇される。例えば、可動柱43aが上昇する上昇量によって板状ワークWの上面の外周Waが上昇する距離が仕上げ研削手段80の上昇する距離となる。
【0042】
このとき、仕上げ研削手段80は可動柱43aの動作に追従して、可動柱43aの上昇速度と同一の速度で上昇される。例えば、可動柱43aが上昇する上昇速度によって板状ワークWの上面の外周Waが上昇する速度が仕上げ研削手段80の上昇する速度となる。すなわち、仕上げ研削砥石83と板状ワークWとの相対的な移動速度がゼロになるように、仕上げ研削手段80の移動速度(送り速度)及び傾き調整手段43の可動柱43aの移動速度が制御される。これにより、傾き調整動作中は、板状ワークWの上面(被研削面)外周付近に研削面83aが接した状態が維持される。このため、傾き調整時の仕上げ研削手段80の移動量を最小限に抑えることができ、傾き調整に要する時間を短縮することができる。傾き調整手段43が駆動された結果、研削面83aと保持面42とが平行で、板状ワークWの仕上げ厚みが均等になるように、チャックテーブル41の傾きが調整される。
【0043】
次に、仕上げ研削工程が実施される。
図3Dに示すように、仕上げ研削工程では、予め設定された仕上げ厚みに達するまで、板状ワークWが研削される。仕上げ研削の際には、仕上げ研削手段80及びチャックテーブル41を回転させながら、仕上げ研削手段80が研削送り手段70によって研削送りされる。仕上げ研削は、板状ワークWの外周縁上方に位置付けられた厚み測定手段88で板状ワークWの厚みを測定しながら実施される。そして、設定した仕上げ厚みに測定値が達したところで研削送りが停止され、仕上げ研削が終了する。この結果、板状ワークWが均等な厚みで研削される。
【0044】
次に、
図4を参照して、第2の動作パターンについて説明する。第2の動作パターンでは、粗研削後の板状ワークの形状が第1の動作パターンと相違する。なお、第2の動作パターンでは、粗研削工程によって中央部分が厚く、外周部分が薄く形成された板状ワークについて説明する。
【0045】
図4Aに示すように、先ず、仕上げ研削位置において、予備研削工程が実施され、予め設定される仕上げ厚みに達しない厚みで板状ワークWが研削される。そして、
図4Bに示すように、厚み測定工程が実施され、板状ワークWの3箇所において厚みが測定される。次に、算出工程が実施され、厚み測定工程で測定された測定結果を基に、傾き調整の前後におけるチャックテーブル41の保持面42と仕上げ研削砥石83の研削面83aとの距離の変化量が算出される。
【0046】
次に、高さ調整工程が実施される。
図4Cに示すように、高さ調整工程では、算出工程で算出された保持面42と研削面83aとの距離の変化量に基づいて、研削送り手段70と傾き調整手段43とが共に動作される。
図4Cに示す状態では、上述したように、板状ワークWの中心より外周の方が薄くなっているため、中央部分の研削量を増やすように、傾き調整手段43の可動柱43aが下降される。可動柱43aの下降に伴い、チャックテーブル41の保持面42が下降した分だけ、仕上げ研削手段80が下降される。例えば、可動柱43aが下降する下降量によって板状ワークWの上面の中心Wbが下降する距離が仕上げ研削手段80の下降する距離となる。
【0047】
このとき、仕上げ研削手段80は可動柱43aの動作に追従して、可動柱43aの下降速度と同一の速度で下降(研削送り)される。例えば、可動柱43aが下降する下降速度によって板状ワークWの上面の中心Wbが下降する速度が仕上げ研削手段80の下降する速度となる。すなわち、仕上げ研削砥石83と板状ワークWとの相対的な移動速度がゼロになるように、仕上げ研削手段80の移動速度(送り速度)および傾き調整手段43の可動柱43aの移動速度が制御される。これにより、傾き調整動作中は、板状ワークWの上面(被研削面)中央付近に研削面83aが接した状態が維持される。このため、傾き調整時の仕上げ研削手段80の移動量を最小限に抑えることができ、傾き調整に要する時間を短縮することができる。傾き調整手段43が駆動された結果、研削面83aと保持面42とが平行で、板状ワークWの仕上げ厚みが均等になるように、チャックテーブル41の傾きが調整される。
【0048】
次に、仕上げ研削工程が実施される。
図4Dに示すように、仕上げ研削工程では、予め設定された仕上げ厚みに達するまで、板状ワークWが研削される。この結果、板状ワークWが均等な厚みで研削される。このように、第2の動作パターンにおいても、仕上げ研削位置における動作時間をできる限り短縮することで、研削工程全体に要する時間を短縮することができる。
【0049】
以上のように、本実施の形態に係る研削方法の第1、第2の動作パターンによれば、予備研削工程によって、チャックテーブル41に対して所定の高さにある仕上げ研削砥石83の研削面83aが板状ワークWに転写される。このため、板状ワークWの厚みを測定することで、保持面42と研削面83aとの距離が求められる。また、板状ワークWの厚み測定結果から、チャックテーブル41の傾きを調整した場合における保持面42と研削面83aとの距離の変化量が算出される。そして、当該変化量に基づいて、板状ワークWの上面(被研削面)と研削面83aとの接触状態が維持されるように仕上げ研削手段80および傾き調整手段88が共に動作される。このため、チャックテーブル41の傾き調整動作に追従して仕上げ研削手段80の高さが調整される。よって、傾き調整時の仕上げ研削手段80の移動距離を最小限に抑えることができ、研削時間を短縮することができる。
【0050】
次に、
図5を参照して、本実施の形態に係る研削方法の第3の動作パターンについて説明する。第3の動作パターンでは、研削しながら傾き調整を実施する点で第1の動作パターンと相違する。以下、主に相違点について重点的に説明する。なお、第3の動作パターンでは、粗研削工程によって中央部分が薄く、外周部分が厚く形成された板状ワークについて説明するが、この構成に限定されない。
図4に示すように、中央部分が厚く、外周部分が薄く形成された板状ワークにも適用可能である。
【0051】
図5Aに示すように、先ず、仕上げ研削位置において、予備研削工程が実施され、予め設定される仕上げ厚みに達しない厚みで板状ワークWが研削される。そして、
図5Bに示すように、厚み測定工程が実施され、板状ワークWの3箇所において厚みが測定される。次に、算出工程が実施され、厚み測定工程で測定された測定結果を基に、傾き調整の前後におけるチャックテーブル41の保持面42と仕上げ研削砥石83の研削面83aとの距離の変化量が算出される。
【0052】
次に、高さ調整工程が実施される。
図5Cに示すように、高さ調整工程では、算出工程で算出された保持面42と研削面83aとの距離の変化量に基づいて、研削送り手段70と傾き調整手段43とが共に動作される。このとき、仕上げ研削手段80及びチャックテーブル41は回転されている。
図5Cに示す状態では、上述したように、板状ワークWの中心より外周の方が厚くなっているため、外周部分の研削量を増やすように、傾き調整手段43の可動柱43aが上昇される。一方、仕上げ研削手段80は、研削面83aを板状ワークWに押し付けながら、研削送り手段70によって一定の送り速度を維持して下降(研削送り)される。これにより、板状ワークWを研削しながら、チャックテーブル41の傾き調整を実施することができる。
【0053】
このとき、仕上げ研削手段80の送り速度は、可動柱43aに対する仕上げ研削手段80の下降速度が仕上げ研削に適した速度になるように調整される。すなわち、仕上げ研削砥石83と板状ワークWとの相対的な移動速度が研削送り速度に等しくなるように、仕上げ研削手段80の移動速度(送り速度)及び傾き調整手段43の可動柱43aの移動速度が制御される。例えば、仕上げ研削手段80の研削送りを停止させ、傾き調整手段43の可動柱43aの上昇速度によって板状ワークWの上面の外周Waが研削送りと同じ速度で仕上げ研削砥石83に研削送りされる。また、仕上げ研削手段80の研削送りを停止させなくてもよい。その場合は、仕上げ研削手段80の送り速度より可動柱43aが上昇する上昇速度を速くすることで、仕上げ研削砥石83と板状ワークWとの相対的な移動速度を研削送り速度に等しくすることができる。
【0054】
このように、傾き調整中も研削が実施されることで、傾き調整の時間を有効活用することができる。また、傾き調整のために仕上げ研削手段80を上昇させる必要がなく、移動量を最小限に抑えることができる。よって、傾き調整に要する時間を短縮することができる。傾き調整手段43が駆動された結果、研削面83aと保持面42とが平行で、板状ワークWの仕上げ厚みが均等になるように、チャックテーブル41の傾きが調整される。
【0055】
傾き調整された後は、そのまま研削送りが継続され、仕上げ研削工程に移行する。
図5Dに示すように、仕上げ研削工程では、予め設定された仕上げ厚みに達するまで、板状ワークWが研削される。この結果、板状ワークWが均等な厚みで研削される。このように、第3の動作パターンでは、高さ調整工程において、板状ワークWを研削しながらチャックテーブル41の傾き調整が実施されるため、傾き調整時間を短縮するだけでなく、仕上げ研削工程における仕上げ研削時間も短縮することができる。よって、仕上げ研削位置における研削装置1(
図1参照)の動作時間をできる限り短縮することで、研削工程全体に要する時間を短縮することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0057】
例えば、上記した実施の形態では、厚み測定手段88が板状ワークWにレーザー光を照射して、板状ワークWの厚みを測定する構成にしたが、この構成に限定されない。厚み測定手段88は、板状ワークWの厚みを測定可能な構成であれば、どのように構成されていてもよい。
【0058】
また、上記した実施の形態では、ターンテーブル40上に3つのチャックテーブル41が配置される構成にしたが、この構成に限定されない。ターンテーブル40は、複数のチャックテーブル41が周方向に均等間隔で配置されていればよい。例えば、ターンテーブル40上に、2つのチャックテーブル41が配置されてもよいし、4つ以上のチャックテーブル41が配置されてもよい。
【0059】
また、上記した実施の形態では、傾き調整手段43を2つの可動柱43aと1つの固定柱43bとで構成したが、この構成に限定されない。傾き調整手段43は、1つの固定柱43bに対して、3つ以上の可動柱43aで構成されてもよく、また、3つ以上の可動柱43aのみで構成されてもよい。
【0060】
また、上記した実施の形態では、研削装置1が第1、第2、第3の動作パターンを実施する構成にしたが、この構成に限定されない。研削装置1の動作パターンは、上記した予備研削工程、厚み測定工程、算出工程、高さ調整工程、仕上げ研削工程を含んでいればよい。
【0061】
また、上記した実施の形態では、第3の動作パターンの高さ調整工程において、仕上げ研削手段80を研削送りしながらチャックテーブル41の傾き調整を実施する構成としたがこの構成に限定されない。高さ調整工程では、仕上げ研削手段80を回転させたまま研削送り手段70による研削送りを一旦停止して、チャックテーブル41の傾き調整を実施してもよい。この場合、可動柱43aの移動速度を仕上げ研削に適した研削送り速度にする必要がある。
【0062】
また、上記した実施の形態では、保持面42と研削面83aとの距離の変化量に基づいて研削送り手段70と傾き調整手段43とを共に動作させる構成としたが、この構成に限定されない。保持面42と研削面83aとが成す角の変化量に基づいて研削送り手段70と傾き調整手段43とを共に動作させてもよい。