特許第6377507号(P6377507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377507
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】半導体ウエーハ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   H01L21/66 F
   H01L21/66 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-239203(P2014-239203)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-100589(P2016-100589A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】前田 展秀
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−124279(JP,A)
【文献】 特開2001−53275(JP,A)
【文献】 特開2000−58614(JP,A)
【文献】 特開昭61−46040(JP,A)
【文献】 特開2004−6857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を備える集積回路と、
該集積回路の耐電圧テストに用いる評価用素子を備える評価用回路と、
該評価用回路に電圧を印加するプローブ針を接触させる電極部と、
該評価用回路と該電極部とを電気的に接続する配線と、を表面に備える半導体ウエーハであって、
該配線は、
該評価用回路と該電極部との間に、局所的に細い幅で形成されたヒューズ部を有し、
該ヒューズ部は、
該評価用回路を構成する回路の線幅より太く、
耐電圧テストによって該評価用回路が過電流状態となり該配線が発熱しても、該ヒューズ部が溶断することで、該プローブ針が接触している該電極部への発熱の広がりを抑制し、該プローブ針が接触している該電極部の溶融及び該電極部の保護膜の破裂を防ぐことを特徴とする半導体ウエーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン基板や化合物半導体基板を用いた半導体デバイスチップの製造工程において、基板上に多数形成された半導体素子を有する半導体ウエーハは、ダイシングの際切削ブレード等を用いて、半導体デバイス領域の周囲に設けられた分割予定ラインをダイシングして、チップ状の半導体デバイスに分割される。
【0003】
半導体素子が、その形成工程において問題無く形成されているかどうかを確認するために、評価用素子を備える回路(評価用回路)が例えば分割予定ラインに形成されている(例えば、特許文献1参照)。評価する内容としては、耐電圧テストがあり、評価用回路に接続する電極端子を介してプローブ針で電圧を印加し、所定の電圧まで評価用回路の絶縁状態が維持できるか否かを確認する。
【0004】
その際、破壊検査となるため、評価用回路の絶縁状態が破壊されるまでテストを行う。よって、評価用回路は高熱を持ち溶断してしまうことがあり、その熱が配線を伝って電極部へ及ぶ場合がある。電極部が発熱して溶断してしまうと、電極が溶融したりそれに伴って発生する電極部の保護膜(アルミニウム合金などで構成される)が破裂したりして、その屑が電極部に接触していたプローブ針に付着してしまい、プローブ針が正常に動作しなくなってしまう。そのため、プローブ針を交換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−217258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された方法では、プローブ針が比較的高価な部品であるため、コストがかかり、交換工数が発生してしまうといった問題があった。したがって、特許文献1に示された方法では、結果的に半導体ウエーハのコストを高騰させる虞があった。
【0007】
本発明の目的は、コストの高騰を抑制することができる半導体ウエーハを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の半導体ウエーハは、半導体素子を備える集積回路と、該集積回路の耐電圧テストに用いる評価用素子を備える評価用回路と、該評価用回路に電圧を印加するプローブ針を接触させる電極部と、該評価用回路と該電極部とを電気的に接続する配線と、を表面に備える半導体ウエーハであって、該配線は、該評価用回路と該電極部との間に、局所的に細い幅で形成されたヒューズ部を有し、該ヒューズ部は、該評価用回路を構成する回路の線幅より太く、耐電圧テストによって該評価用回路が過電流状態となり該配線が発熱しても、該ヒューズ部が溶断することで、該プローブ針が接触している該電極部への発熱の広がりを抑制し、該プローブ針が接触している該電極部の溶融及び該電極部の保護膜の破裂を防ぐことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
そこで、本願発明の半導体ウエーハは、評価用回路と電極部とを繋ぐ配線の一部を細くしてヒューズ部を形成する事で、耐電圧テストにおいてプローブ針が電極の発熱による溶融や保護膜の破裂により汚染されることがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る半導体ウエーハを示す平面図である。
図2図2は、図1中のII部を拡大して示す平面図である。
図3図3は、図2中のA−B−C−D線に沿う断面図である。
図4図4は、図2に示された電極部にプローブ針を接触させた状態を示す平面図である。
図5図5は、実施形態に係る半導体ウエーハの評価用回路が溶断する状態を示す平面図である。
図6図6は、実施形態に係る半導体ウエーハのヒューズ部が溶断する状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
実施形態に係る半導体ウエーハを、図1から図6に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る半導体ウエーハを示す平面図、図2は、図1中のII部を拡大して示す平面図、図3は、図2中のA−B−C−D線に沿う断面図、図4は、図2に示された電極部にプローブ針を接触させた状態を示す平面図、図5は、実施形態に係る半導体ウエーハの評価用回路が溶断する状態を示す平面図、図6は、実施形態に係る半導体ウエーハのヒューズ部が溶断する状態を示す平面図である。
【0013】
実施形態に係る半導体ウエーハ(以下、単にウエーハと記す)Wは、例えば、シリコンなどを母材とする円板状の半導体ウエーハである。ウエーハWは、図1及び図2に示すように、基板の表面WSに、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)と金属層などにより構成される半導体素子DSなどを備える集積回路Dを備える。
【0014】
集積回路Dは、ウエーハWの表面WSに形成された複数の分割予定ラインSによって区画されている。また、ウエーハWは、図2に示すように、分割予定ラインS上に形成されたTEG1(Test Element Group:特性評価用金属素子に相当する)を表面WSに備える。TEG1は、集積回路Dに発生する設計上や製造上の問題を見つけ出すための評価用素子である。なお、図2では、TEG1は、分割予定ラインSの幅方向の中央に設けられているが、本発明では、これに限定されることなく、種々の形状、配置のTEG1が用いられる。
【0015】
TEG1は、図2及び図3に示すように、評価用回路2と、一対の電極部3と、配線4とを備える。評価用回路2は、集積回路Dの耐電圧テストに用いる評価用素子2aを備えるものである。評価用回路2は、その長手方向が分割予定ラインSの長手方向と平行に配置されている。
【0016】
一対の電極部3は、評価用回路2に電圧を印加するプローブ針10(図4などに示す)を接触させるものである。一対の電極部3は、分割予定ラインSの幅方向に間隔をあけて配置されている。また、一対の電極部3は、評価用回路2よりもウエーハWの外縁側に配置されている。
【0017】
配線4は、評価用回路2と一対の電極部3とを電気的に接続するものである。本実施形態では、配線4は、一方の電極部3と、評価用回路2と、他方の電極部3とを順に直列に電気的、機械的に接続している。また、評価用回路2、一対の電極部3及び配線4は、銅などの導電性の厚みの一定の金属で構成されている。さらに、電極部3は、導電性の金属の表面にアルミニウム合金などの導電性の金属で構成された保護膜3aが積層されている。
【0018】
配線4は、評価用回路2と一方の電極部3との間に局所的に細い幅で形成されたヒューズ部4aを有している。ヒューズ部4aは、評価用回路2の評価用素子2aを構成する回路の線幅よりも太く形成され、配線4の他の部分よりも幅が細く形成されている。ヒューズ部4aは、評価用回路2の評価用素子2aを構成する回路よりも電気的な抵抗値が小さく、配線4の他の部分よりも電気的な抵抗値が大きく形成されている。また、配線4のヒューズ部4a以外の他の部分も、評価用回路2の評価用素子2aを構成する回路の線幅よりも太く形成されて、評価用回路2の評価用素子2aを構成する回路よりも電気的な抵抗値が小さく形成されている。
【0019】
次に、TEG1の耐電圧テストを図面に基いて説明する。まず、耐電圧評価装置の一対のプローブ針10を一対の電極部3に接触させる。このとき、図4に示すように、一方の電極部3に一方のプローブ針10を接触させ、他方の電極部3に他方のプローブ針10を接触させる。なお、プローブ針10の価格は、数十万円から数百万円である。
【0020】
そして、耐電圧評価装置により一対のプローブ針10間即ち一対の電極部3間に直流の電力を印加し、一対のプローブ針10間即ち一対の電極部3間に印加する直流の電力の電圧を、予め定められた耐え得ることが要求される所定の電圧まで徐々に増加させる。所定の電圧を印加した際に、耐電圧評価装置は、評価用回路2の評価用素子2aの絶縁状態を維持できると、TEG1即ち集積回路Dが良品であると判定し、絶縁状態を維持できないと、TEG1即ち集積回路Dが不良品であると判定する。
【0021】
TEG1及び集積回路Dが良品であっても、一対のプローブ針10間即ち一対の電極部3間に印加する直流の電力の電圧をさらに増加させる。すると、配線4のヒューズ部4a及び配線4の他の部分よりも評価用回路2の評価用素子2aを構成する回路の電気的な抵抗値が大きいために、図5に示すように、評価用回路2の評価用素子2aの絶縁状態が破壊されて、評価用回路2の評価用素子2aが過電流状態で発熱、溶断し、配線4が発熱する。そして、耐電圧評価装置は、評価用回路2の評価用素子2aの絶縁状態が破壊された時の電圧を記録する。
【0022】
さらに、一対のプローブ針10間即ち一対の電極部3間に直流の電力を印加すると、図6に示すように、ヒューズ部4aが溶断して、一対のプローブ針10間即ち一対の電極部3間に電力が流れなくなり、電極部3の溶断や保護膜3aの破裂が抑制される。このように、TEG1は、耐電圧テストによって評価用回路2が過電流状態となり配線4が発熱しても、ヒューズ部4aが溶断することで、プローブ針10が接触している電極部3への発熱の広がりを抑制し、プローブ針10が接触している電極部3の溶融及び電極部3の保護膜3aの破裂を防ぐこととなる。
【0023】
実施形態に係るウエーハWによれば、評価用回路2と電極部3とを繋ぐ配線4の一部を細くしてヒューズ部4aを形成する事で、プローブ針10が接触している電極部3の溶融及び電極部3の保護膜3aの破裂を防ぐことができる。したがって、ウエーハWは、耐電圧テストにおいてプローブ針10が電極部3の発熱による溶融や、電極部3の保護膜3aの破裂により汚染されることがないという効果を奏し、高価なプローブ針10を頻繁に交換する必要がなくなって、結果的に、ウエーハWのコストの高騰を抑制することができる。
【0024】
前述した実施形態では、ヒューズ部4aを配線4の他の部分よりも細い幅に形成したが、本発明では、ヒューズ部4aを配線4の他の部分よりも薄く形成してもよく、ヒューズ部4aを配線4の他の部分よりも電気的な抵抗値が大きく融点の低い材料で構成してもよい。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態、変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0026】
2 評価用回路
2a 評価用素子
3 電極部
3a 保護膜
4 配線
4a ヒューズ部
10 プローブ針
W 半導体ウエーハ
WS 表面
D 集積回路
DS 半導体素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6