特許第6377513号(P6377513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377513
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】シート状部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20180813BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/78 M
   H01L21/78 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-253739(P2014-253739)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-115827(P2016-115827A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田中 康平
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−109338(JP,A)
【文献】 特開2008−016485(JP,A)
【文献】 特開昭63−114870(JP,A)
【文献】 特開2013−213126(JP,A)
【文献】 実開昭58−052572(JP,U)
【文献】 特開2013−229403(JP,A)
【文献】 特開2007−141996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にデバイスが形成されたウエーハを保持する保持面を有する保持部と、該保持部を囲繞する枠体とからなるチャックテーブルの該保持面を覆い、該保持面に対面するウエーハ表面の該デバイスを保護するシート状部材であって、
可撓性と通気性を備えた材質で形成され、該保持面を覆い、該枠体に至る大きさの本体部と、
該枠体の周縁に沿って該本体部に断続的に形成され、該保持面と対応する本体部保持領域と該本体部保持領域の外周の外周部とに該本体部を区切る複数の断続孔部と、
を備えることを特徴とするシート状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持面で保持したウエーハのデバイスを保護するシート状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハや光デバイスウエーハの内部に改質層を形成し、改質層を破断基点として各デバイスチップにウエーハを分割する技術が知られている。この際、改質層を形成するレーザー光線は、ウエーハに対して透過性を有するが、ウエーハの表面に形成された膜に対しては透過性を有さない場合が多いため、膜が被覆されていないウエーハの裏面側からレーザー光線を入射することがある。
【0003】
ウエーハは、通常、粘着テープを介して環状のフレームにデバイスが形成された表面を露出して固定されて加工される。デバイスをアライメントなどで用いるためであり、レーザー加工後も同様な理由から、デバイスを露出させて固定されている方が効率的な工程となる。
【0004】
ウエーハの裏面側からレーザー光線を入射する場合には、デバイスが形成された表面をチャックテーブルの保持面で保持し、粘着テープを透過させつつウエーハの裏面からレーザー加工を実施する加工方法が提案されている。そして、デバイスが直接保持面に接触して損傷するのを防ぐために、シート状部材を介して保持する加工方法も提案され、シート状部材を固定する手段を備えたチャックテーブルも提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−229403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されたチャックテーブルでは、シート状部材の薄化による可撓性の増加により、保持面(チャックテーブル)からはみ出した外周部が保持面より下に垂れ下がりやすくなり、その際保持面を覆う領域によじれが発生しやすくなるという課題があった。
【0007】
また、シート状部材は多少の非粘着性処理が施されていても、チャックテーブルの外縁付近で粘着テープと強く接触する(クランプによって粘着テープが引き落とされているため、粘着テープはシート状部材と部分的に強く押圧されて接触する)ため、時として粘着テープが貼着し、加工終了後に粘着テープが剥がれずに、ウエーハの搬出が不能になり、動作エラーを引き起こしてしまう。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ウエーハの搬出を確実に行うことができるシート状部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のシート状部材は、表面にデバイスが形成されたウエーハを保持する保持面を有する保持部と、該保持部を囲繞する枠体とからなるチャックテーブルの該保持面を覆い、該保持面に対面するウエーハ表面の該デバイスを保護するシート状部材であって、可撓性と通気性を備えた材質で形成され、該保持面を覆い、該枠体に至る大きさの本体部と、該枠体の周縁に沿って該本体部に断続的に形成され、該保持面と対応する本体部保持領域と該本体部保持領域の外周の外周部とに該本体部を区切る複数の断続孔部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシート状部材は、加工後のウエーハの搬出を確実に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係るシート状部材を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るシート状部材が設置されるチャックテーブル機構を分解して示す斜視図である。
図3図3は、図2に示されたチャックテーブル機構がウエーハなどを保持する状態を示す斜視図である。
図4図4は、図2に示されたチャックテーブル機構に保持したウエーハにレーザー加工を施す状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態〕
実施形態に係るシート状部材を図面に基いて説明する。図1(a)は、実施形態に係るシート状部材の平面図である。図1(b)は、図1(a)中のIB−IB線に沿う断面図である。図2は、実施形態に係るシート状部材が設置されるチャックテーブル機構を分解して示す斜視図である。図3は、図2に示されたチャックテーブル機構がウエーハなどを保持する状態を示す斜視図である。図4は、図2に示されたチャックテーブル機構に保持したウエーハにレーザー加工を施す状態を示す側断面図である。
【0014】
本実施形態に係るシート状部材20は、図2及び図4に示すチャックテーブル11の保持面12aを覆い、ウエーハW表面WSのデバイスDを保護するものである。デバイスDが保護されるウエーハWは、図4に示すレーザー加工装置1によりレーザー光線Lが照射される加工対象である。ウエーハWは、本実施形態ではシリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。
【0015】
ウエーハWは、図3に示すように、表面WSに格子状に設けられた分割予定ラインSによって区画された各領域にデバイスDがそれぞれ形成されている。ウエーハWは、図3及び図4に示すように、外周縁が環状フレームFに貼着された粘着テープTの粘着面TaにデバイスDが複数形成されている表面WSの裏側の裏面WRが貼着されることで、環状フレームFに固定される。このために、ウエーハWは、デバイスDが複数形成された表面WSが露出した状態で環状フレームFに固定される。なお、ウエーハWの表面WSには、図示しないエピ層が形成されている。このエピ層は、レーザー光線Lを減衰又は遮断する材料で構成されている。また、粘着テープT及び粘着面Taは、レーザー光線Lを透過する材料で構成されている。
【0016】
ウエーハWにレーザー光線Lを照射するレーザー加工装置1は、ウエーハWの内部に改質層K(図4に示す)を形成する装置である。なお、改質層Kとは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。
【0017】
レーザー加工装置1は、図4に示すように、ウエーハWを保持するチャックテーブル機構10と、チャックテーブル機構10に保持されたウエーハWに該ウエーハWを透過する例えば波長が1064nmのレーザー光線Lを照射するレーザー光線照射手段30と、チャックテーブル機構10とレーザー光線照射手段30とを互いに直交する水平方向と平行なX、Y軸方向に相対的に移動させるX軸移動手段及びY軸移動手段(図示しない)などを少なくとも含んで構成されている。
【0018】
チャックテーブル機構10は、ウエーハWを保持面12aで吸引保持するものである。チャックテーブル機構10は、図2及び図3に示すように、ウエーハWの表面WS側を保持面12aで吸引保持するチャックテーブル11と、チャックテーブル11に着脱自在に締結される環状固定部15とを含んで構成されている。
【0019】
チャックテーブル11は、レーザー加工前のウエーハWが保持面12a上に載置されて、環状フレームFの開口に貼着されたウエーハWを保持するものである。チャックテーブル11は、ウエーハWを吸引保持する保持面12aを有する保持部12と、保持部12を囲繞する枠体13とからなる。即ち、チャックテーブル11は、保持面12aを有する。保持部12は、ポーラスセラミック等の多孔質材から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面12aに載置されたウエーハWを吸引することで保持する。枠体13は、ステンレス鋼などの金属で構成され、円環状に形成されている。
【0020】
チャックテーブル11は、X軸移動手段によりX軸方向に加工送りされ、かつ回転駆動源(図示せず)により中心軸線回りに回転されるとともに、Y軸移動手段によりY軸方向に割り出し送りされる。また、チャックテーブル11の周囲には、エアーアクチュエータにより駆動してウエーハWの周囲の環状フレームFを挟持するクランプ部14が複数設けられている。
【0021】
環状固定部15は、ステンレス鋼などの金属で構成され、円環状に形成されている。環状固定部15は、チャックテーブル11の枠体13の外周に嵌合し、保持面12aを覆ったシート状部材20のチャックテーブル11の枠体13の外縁からはみ出した外周部24を枠体13の外周面との間に挟んで保持面12aより下方に押し下げて固定するものである。
【0022】
チャックテーブル11の保持面12aを覆ってチャックテーブル機構10に取り付けられるシート状部材20は、保持面12aに対面するウエーハW表面WSのデバイスDを保護するものである。シート状部材20は、超高分子量ポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質フィルムであって、可撓性と通気性と離型性を備えた材質で形成されている。シート状部材20は、保持部12の保持面12aよりも直径の大きな円形である。なお、本実施形態では、シート状部材20の直径は、340mmに形成され、厚さが0.1mm〜0.4mm程度、例えば、0.2mm程度に形成されている。
【0023】
シート状部材20は、図1(a)及び図1(b)に示すように、保持部12の保持面12aを覆い、枠体13に至る大きさの本体部21と、複数の断続孔部22とを備える。本体部21の直径は、枠体13の外径即ちチャックテーブル11の外径よりも大きく形成されている。断続孔部22は、枠体13の周縁(外縁)に沿って、本体部21に断続して形成され、保持面12aと対応する本体部保持領域23と、本体部保持領域23の外周の外周部24とに本体部21を区切るものである。断続孔部22は、本体部21に開口した孔であり、平面形状が本体部21の中心を曲率の中心とする円弧状に形成され、本体部21の周方向に間隔をあけて等間隔に配置されている。
【0024】
断続孔部22により区切られる本体部21の本体部保持領域23は、シート状部材20がチャックテーブル機構10のチャックテーブル11を覆うと、保持面12a及び枠体13の上面に重なる。本体部21の外周部24は、シート状部材20がチャックテーブル機構10のチャックテーブル11を覆うと、枠体13の外周面に重なり、外周に環状固定部15が嵌合して、枠体13の外周面と環状固定部15との間に挟まれる。このために、断続孔部22は、シート状部材20がチャックテーブル機構10のチャックテーブル11を覆うと、枠体13の角部13aに重なる。なお、本実施形態では、シート状部材20の外周部24の幅は、20mm程度に形成されている。
【0025】
前述した構成のチャックテーブル機構10へのシート状部材20の設置方法について説明する。環状固定部15が嵌合していない状態で、チャックテーブル11の保持面12aにシート状部材20の本体部保持領域23を重ね、断続孔部22をチャックテーブル11の枠体13の角部13aに重ねる。そして、シート状部材20の外周部24をチャックテーブル11の枠体13の外周面に押し付けながら、環状固定部15をチャックテーブル11の枠体13の外周に嵌合させる。シート状部材20の断続孔部22がチャックテーブル11の枠体13の角部13aに重なっているので、シート状部材20がチャックテーブル11の枠体13の角部13aにおいて確実に屈曲して、保持面12aに本体部保持領域23を密着させることができる。
【0026】
前述した構成のチャックテーブル機構10を備えたレーザー加工装置1は、チャックテーブル11の保持部12の保持面12a上にシート状部材20を介して、ウエーハWの表面WSを吸引保持し、かつ、クランプ部14により環状フレームFを挟持する。すると、粘着テープTの粘着面Taが主に枠体13の角部13a上でシート状部材20に対面する。そして、レーザー加工装置1は、X軸移動手段、Y軸移動手段、回転駆動源によりチャックテーブル機構10に保持したウエーハWとレーザー光線照射手段30とを分割予定ラインSに沿って相対的に移動させながらレーザー光線照射手段30からウエーハWの裏面WRに向けてレーザー光線Lを照射して、分割予定ラインSに改質層Kを形成する。全ての分割予定ラインSに改質層Kを形成すると、レーザー光線照射手段30からのレーザー光線Lの照射を停止する。そして、改質層Kが形成されたウエーハWは、次工程などに搬送された後、改質層Kを基点としてデバイスチップに分割される。
【0027】
以上のように、本実施形態に係るシート状部材20によれば、枠体13の周縁に沿って本体部21に断続的に開口した断続孔部22が枠体13の角部13aに重なる。このために、シート状部材20は、断続孔部22が粘着テープTとの接触面積を削減することとなる。したがって、シート状部材20は、粘着テープTが貼着する恐れを低減させることができ、レーザー加工終了時に粘着テープTが剥がれなくなることを抑制でき、レーザー加工後のウエーハWの搬出を確実に行うことができる。
【0028】
また、シート状部材20によれば、本体部21に断続的に開口した断続孔部22が枠体13の角部13aに重なるので、枠体13の角部13aで確実に屈曲させることができ、本体部保持領域23を保持面12aに密に接触させて沿わせることができ、外周部24を枠体13の外周面に密に接触させて沿わせることができる。したがって、シート状部材20は、外周部24が保持面12aより垂れ下がって枠体13の外周面に沿わされる際に、保持面12aを覆う本体部保持領域23への影響を最小限に抑え、保持面12aを覆う本体部保持領域23がうねることなく、平らな状態を維持することができる。したがって、シート状部材20は、チャックテーブル機構10に固定する事が容易になった。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
11 チャックテーブル
12 保持部
12a 保持面
13 枠体
20 シート状部材
21 本体部
22 断続孔部
23 本体部保持領域
24 外周部
W ウエーハ
WS 表面
D デバイス
図1
図2
図3
図4