(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
カーボンブラックとしては、オイルファーネス法、ガスファーネス法、アセチレン法等の公知の製造方法で製造されたカーボンブラックが挙げられ、具体的には、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。カーボンブラックは粉体のまま用いてもよいし、乾式造粒法又は湿式造粒法等で造粒して用いてもよい。
【0009】
カーボンブラックとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の494頁に記載の、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、FEF(Fast Extrusion Furnace)、MAF、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)等が挙げられる。
また、表面が酸化処理されたカーボンブラック、カーボンブラックの表面にシリカを0.1〜50質量%付着させたカーボンブラック等の表面処理カーボンブラックを用いてもよい。
【0010】
カーボンブラックのCTAB(Cetyl Tri−methyl Ammonium Bromide)表面積は通常20〜400m
2/g、窒素吸着比表面積は通常5〜200m
2/g、粒子径は通常10〜500nm、窒素元素含有量は通常0〜1%、硫黄元素含有量は通常0.001〜1%である。
【0011】
式(I)で表される化合物(以降、化合物(I)という場合がある。)について説明する。
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基等が挙げられる。P
1とP
2とが互いに結合して形成する炭素数2〜6のアルカンジイル基としては、エチレン基(ジメチレン基)、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
P
1及びP
2は水素原子が好ましい。
mは2〜6であることが好ましく、3がより好ましい。
【0012】
M
n+は、H
+又はn価の金属カチオンを表し、金属カチオンとしては、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、セシウムカチオン等のアルカリ金属のカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、バリウムカチオン等のアルカリ土類金属のカチオン、マンガンカチオン、鉄カチオン、銅カチオン、亜鉛カチオン等が挙げられる。M
n+は、好ましくはH
+、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン又はセシウムカチオンであり、より好ましくはH
+又はナトリウムカチオンである。
【0013】
S−(アミノアルキル)チオ硫酸としては、S−(アミノエチル)チオ硫酸、S−(アミノプロピル)チオ硫酸、S−(アミノブチル)チオ硫酸、S−(アミノペンチル)チオ硫酸、S−(アミノヘキシル)チオ硫酸、S−(アミノヘプチル)チオ硫酸、S−(アミノオクチル)チオ硫酸、S−(アミノノニル)チオ硫酸等が挙げられる。
【0014】
S−(アミノアルキル)チオ硫酸塩としては、S−(アミノエチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(アミノプロピル)チオ硫酸ナトリウム、S−(アミノブチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(アミノペンチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(アミノヘキシル)チオ硫酸ナトリウム、S−(アミノヘプチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(アミノオクチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(アミノノニル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N,N−ジアルキルアミノアルキル)チオ硫酸としては、S−(N,N−ジメチルアミノエチル)チオ硫酸、S−(N,N−ジメチルアミノプロピル)チオ硫酸、S−(N,N−ジメチルアミノブチル)チオ硫酸、S−(N,N−ジメチルアミノペンチル)チオ硫酸、S−(N,N−ジメチルアミノヘキシル)チオ硫酸、S−(N,N−ジメチルアミノヘプチル)チオ硫酸、S−(N,N−ジメチルアミノオクチル)チオ硫酸、S−(N,N−ジメチルアミノノニル)チオ硫酸、S−(N,N−ジアルキルアミノアルキル)チオ硫酸塩としては、S−(N,N−ジメチルアミノエチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N,N−ジメチルアミノプロピル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N,N−ジメチルアミノブチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N,N−ジメチルアミノペンチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N,N−ジメチルアミノヘキシル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N,N−ジメチルアミノヘプチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N,N−ジメチルアミノオクチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N,N−ジメチルアミノノニル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N−モノアルキルアミノアルキル)チオ硫酸としては、S−(N−メチルアミノエチル)チオ硫酸、S−(N−メチルアミノプロピル)チオ硫酸、S−(N−メチルアミノブチル)チオ硫酸、S−(N−メチルアミノペンチル)チオ硫酸、S−(N−メチルアミノヘキシル)チオ硫酸、S−(N−メチルアミノヘプチル)チオ硫酸、S−(N−メチルアミノオクチル)チオ硫酸、S−(N−メチルアミノノニル)チオ硫酸、S−(N−モノアルキルアミノアルキル)チオ硫酸塩としては、S−(N−メチルアミノエチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N−メチルアミノプロピル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N−メチルアミノブチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N−メチルアミノペンチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N−メチルアミノヘキシル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N−メチルアミノヘプチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N−メチルアミノオクチル)チオ硫酸ナトリウム、S−(N−メチルアミノノニル)チオ硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0015】
化合物(I)は、例えば、式(I−2)で表される化合物とハロゲン化水素とを反応させ、式(I−3)で表される化合物のハロゲン化水素酸塩を得て、得られた式(I−3)で表される化合物のハロゲン化水素酸塩とチオ硫酸の金属塩とを反応させることにより得ることができる。以降、式(I−2)で表される化合物を化合物(I−2)、式(I−3)で表される化合物を化合物(I−3)という場合がある。
(式(I−2)中、P
3は、水酸基又は、炭素数1〜8のアルコキシ基を表す。
P
1、P
2及びmは、上記と同じ意味を表す。)
(式(I−3)中、X
1は、ハロゲン原子を表す。
P
1、P
2及びmは、上記と同じ意味を表す。)
【0016】
化合物(I−2)を製造する方法としては、例えば下記図式に示される方法が挙げられる。化合物(I−2)は、アクリロニトリルをアルコール中、水素雰囲気下で、ラネーニッケルを用いて接触還元し、その後必要に応じてN−アルキル化することによって製造することができる。
(P
1、P
2及びP
3は、上記と同じ意味を表す。)。
【0017】
P
3における炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等が挙げられ、好ましくはメトキシ基である。
【0018】
化合物(I−2)としては、好ましくは3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−n−プロピルオキシプロピルアミン、3−イソプロピルオキシプロピルアミン、3−n−ブチルオキシプロピルアミン、3−イソブチルオキシプロピルアミン、3−sec−ブチルオキシプロピルアミン、3−tert−ブチルオキシプロピルアミン、3−n−ペンチルオキシプロピルアミン、3−n−ヘキシルオキシプロピルアミン、3−n−ヘプチルオキシプロピルアミン、3−n−オクチルオキシプロピルアミン又は3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンであり、より好ましくは3−メトキシプロピルアミンである。
【0019】
化合物(I−2)の市販品としては、3−ヒドロキシプロピルアミン(東京化成工業)、3−メトキシプロピルアミン(東京化成工業)、3−エトキシプロピルアミン(東京化成工業)、3−n−プロピルオキシプロピルアミン(東京化成工業)、3−イソプロピルオキシプロピルアミン(東京化成工業)、3−n−ブチルオキシプロピルアミン(東京化成工業)、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン(東京化成工業)等がある。
【0020】
ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が挙げられ、好ましくは塩化水素又は臭化水素であり、より好ましくは塩化水素である。
ハロゲン化水素の使用量は、化合物(I−2)100モルに対して通常200〜1500モル、好ましくは300〜1000モル、より好ましくは300〜900モルである。
化合物(I−2)とハロゲン化水素との反応は、通常、有機溶媒の非存在下又は反応に不活性な溶媒の存在下で行われ、好ましくは有機溶媒の非存在下で行われる。
【0021】
化合物(I−2)とハロゲン化水素との反応後、得られた混合物を冷却し、必要に応じて濾過等の通常の分離操作に供することにより化合物(I−3)のハロゲン化水素塩を得ることができる。
【0022】
X
1はハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0023】
化合物(I−3)としては、2−フルオロエチルアミン、2−クロロエチルアミン、2−ブロモエチルアミン、2−ヨードエチルアミン、3−フルオロプロピルアミン、3−クロロプロピルアミン、3−ブロモプロピルアミン、3−ヨードプロピルアミン、4−フルオロブチルアミン、4−クロロブチルアミン、4−n−ブロモブチルアミン、4−ヨードブチルアミン、5−フルオロペンチルアミン、5−クロロペンチルアミン、5−ブロモペンチルアミン、5−ヨードペンチルアミン、6−クロロヘキシルアミン、7−クロロヘプチルアミン、8−クロロオクチルアミン、9−クロロノニルアミン等が挙げられる。
化合物(I−3)と塩を形成するハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が挙げられ、好ましくは塩化水素又は臭化水素であり、より好ましくは塩化水素である。
【0024】
化合物(I−3)のハロゲン化水素塩とチオ硫酸の金属塩とを反応させることにより、化合物(I)が得られる。化合物(I−3)のハロゲン化水素塩とチオ硫酸の金属塩との反応は通常、化合物(I−3)のハロゲン化水素塩を溶媒に溶解し、得られた溶液と酸又は塩基とを混合することでpHを調整した後に、チオ硫酸の金属塩を加え、加熱攪拌することで行われる。
【0025】
溶媒としては、化合物(I−3)のハロゲン化水素塩及びチオ硫酸の金属塩に不活性であり又、チオ硫酸の金属塩を溶解し得る溶媒であれば制限はなく、通常、炭素数1〜4のアルコール、水又は炭素数1〜4のアルコールと水との混合溶媒等が使用され、好ましくは、水又は炭素数1〜4のアルコールと水との混合溶媒であり、より好ましくは水である。
溶媒の使用量は、化合物(I−3)のハロゲン化水素塩1重量部に対して、通常、0.5〜40重量部であり、好ましくは1〜20重量部であり、より好ましくは1.5〜10重量部である。
【0026】
酸には通常、フッ化水素酸、臭酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸又は、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸が使用される。
塩基には通常、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物が使用される。
pHは、通常pH1〜7の範囲、好ましくはpH2〜5の範囲、より好ましくはpH2〜3.5の範囲に調整される。
【0027】
チオ硫酸の金属塩としては、通常、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸カルシウム等が使用され、好ましくはチオ硫酸ナトリウムである。チオ硫酸の金属塩は、水和物であってもよい。
チオ硫酸の金属塩の使用量は、化合物(I−3)のハロゲン化水素塩100モルに対して、通常、80〜500モルであり、好ましくは90〜200モルであり、より好ましくは100〜110モルである。
反応後、化合物(I)は、通常晶析等の通常の単離操作により取り出すことができる。
【0028】
式(II)で表される化合物(以降、化合物(II)という場合がある。)について説明する。
化合物(II)は、下記式(II−1)で表される化合物であることが好ましい。
(式(II−1)中、R
1、R
2、R
3、R
4及びXは、上記と同じ意味を表す。)
【0029】
直鎖状の炭素数1〜12のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。分岐状の炭素数1〜12のアルカンジイル基としては、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルトリメチレン基、イソペンチレン基、イソヘキシレン基、イソオクチレン基、2−エチルヘキシレン基、イソデシレン基等が挙げられる。
【0030】
炭素数3〜12のシクロアルカンジイル基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、シクロドデシレン基、t−ブチルシクロヘキシレン基等が挙げられ、好ましくはシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基又はt−ブチルシクロヘキシレン基である。
【0031】
炭素数1〜12のアルカンジイル基および炭素数3〜12のシクロアルカンジイル基が有していてもよい置換基はとしては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜7のアシル基、炭素数3〜4のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基又は炭素数2〜7のアシルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられ、炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、炭素数1〜7のアシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等が挙げられ、炭素数3〜4のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基としては、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
置換基を有する炭素数1〜12のアルカンジイル基としては、以下の基が挙げられる。
【0033】
B
1及びB
2における炭素数1〜12のアルカンジイル基としては、上記と同じものが挙げられる。
Arにおける炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。
R
1における
*−B
1−Ar−B
2−
*基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、下記の基等が挙げられる。*は結合手を表す。
Arに含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1以上の基で置換されていてもよい。
R
1としては、炭素数2〜12のアルキレン基、フェニレン基又は下記の基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0034】
H
2N−は、R
1で表される基の任意の位置に結合する。
R
2及びR
3で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。
R
2及びR
3で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
R
2及びR
3で表される炭素数6〜12のアリール基としては、炭素数6〜12の単環式芳香族炭化水素又は縮合芳香族炭化水素が挙げられ、好ましくは、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基である。
R
2及びR
3で表される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0035】
R
2とR
3とが互いに結合して形成する炭素数2〜12のアルカンジイル基の炭素数は、3又は4であることが好ましい。
R
2とR
3とが互いに結合して形成する炭素数2〜12のアルカンジイル基としては、直鎖状のアルカンジイル基及び、分岐状のアルカンジイル基が挙げられる。直鎖状のアルカンジイル基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。分岐状のアルカンジイル基としては、例えば、プロピレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルトリメチレン基、イソペンチレン基、イソヘキシレン基、イソオクチレン基、2−エチルヘキシレン基、イソデシレン基等が挙げられる。
R
2は水素原子が好ましく、R
3は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。より好ましくはR
2及びR
3は水素原子である。
【0036】
R
4で表される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
R
4で表される炭素数6〜12のアリールオキシ基としては、上記R
2及びR
3が表す炭素数6〜12のアリール基にオキシ基が結合した基が挙げられ、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
R
4で表される炭素数7〜15のアリールアルコキシ基としては、フェニルエチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェニルプロピルオキシ等が挙げられる。
R
4で表される炭素数0〜12のアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0037】
Y
n+は、カルボキシラート塩を形成し得るカチオンを表す。
Yとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表IB、IIB族の遷移元素から選ばれる金属、又は、アミン等の有機塩基が挙げられ、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、銀(Ag)、NH
4、NH(C
2H
5)
3、NH(C
2H
5)(i−C
3H
7)
2等が挙げられる。
Y
n+としては、Li
+、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、Zn
2+、Cu
2+、Ag
+、(NH
4)
+、[NH(C
2H
5)
3]
+、[NH(C
2H
5)(i−C
3H
7)
2]
+等が挙げられる。
【0038】
R
4としては、ヒドロキシ基又は−O
−(Y
n+)
1/nが好ましく、ヒドロキシ基又は−O
−(Y
n+)
1/n(Yがアルカリ金属)がより好ましい。
【0039】
以下に化合物(II)の具体例を示す。
【0041】
化合物(II)は、メタノール又は水と溶媒和物を形成していてもよい。
化合物(II)は、例えば下記の式に示される方法により製造できる。
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は上記と同じ意味を表す。
P
1は保護基を表す。
波線は、炭素−炭素二重結合とR
3及びCO−R
4との結合を表し、炭素−炭素二重結合の構造がE体、Z体、又は、E体及びZ体の混合であることを表す。ここでE体とはR
2とR
3とが炭素−炭素二重結合に対して反対側に位置している構造を指し、Z体とはR
2とR
3とが炭素−炭素二重結合に対して同じ側に位置している構造を指す。)
P
1が表す保護基としては、tert−ブトキシカルボニル等が挙げられる。
炭素−炭素二重結合の構造がZ体の場合は、無水マレイン酸等の対応する酸無水物より製造することができる。その後、エステル化反応、アミド化反応又は塩形成反応により、所望の化合物を製造することができる。上記の製造方法において、製造の便宜上、保護基を使用した場合には、その保護基を汎用される方法にて除去することができる。
【0042】
次に、本発明の改質カーボンブラックについて説明する。
改質カーボンブラックとは、カーボンブラック表面に、静電相互作用、水素結合、分子間力等の化学的相互作用により有機物が吸着したカーボンブラックのことをいう。
本発明の改質カーボンブラックは、カーボンブラックと、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物とを含み、通常、カーボンブラックと化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物とを混合することで得ることができる。混合は溶媒の存在下又は溶媒の非存在下で行われるが、均一に混合し易いという点で溶媒の存在下であることが好ましい。溶媒としては、炭素数1〜4のアルコール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N、N−ジメチルホルムアミド、水、及びこれらの混合溶媒などが挙げられ、経済性と環境への影響の観点から好ましくは水が挙げられる。通常、混合はゴム成分の非存在下で行われる。ゴム成分が存在すると、カーボンブラックと化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物との吸着が妨げられるため好ましくない。
【0043】
本発明の改質カーボンブラックのCTAB(Cetyl Tri−methyl Ammonium Bromide)表面積は通常20〜400m
2/gであり、タイヤトレッド用ゴム組成物の成分として好適であるという点で20〜250m
2/gであると好ましい。
本発明の改質カーボンブラックの窒素吸着比表面積は通常5〜200m
2/gであり、タイヤトレッド用ゴム組成物の成分として好適であるという点で20〜200m
2/gであると好ましい。
本発明の改質カーボンブラックの粒子径は通常10〜500nmであり、タイヤトレッド用ゴム組成物の成分として好適であるという点で10〜50nmであると好ましい。
【0044】
化合物(I)を含む改質カーボンブラックの窒素元素含有量は改質前のカーボンブラックの窒素元素含有量よりも高く、通常0.01〜10重量%であり、硫黄元素含有量は改質前のカーボンブラックの硫黄元素含有量よりも高く、通常0.04〜13.5重量%である。窒素元素含有量は好ましくは0.01〜5重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%であり、さらに好ましくは0.11〜3重量%である。硫黄元素含有量は好ましくは0.04〜6.75重量%であり、より好ましくは0.4〜6.75重量%であり、さらに好ましくは0.5〜3重量%である。上記範囲内であると加硫ゴムの粘弾性がより改善される傾向にあることから好ましい。窒素元素含有量は通常、CHN自動分析装置又は微量窒素炭素分析装置によって測定することができ、好ましくは、NCH定量装置スミグラフNCH−22F型(住化分析センター製)によって測定する。硫黄元素含有量は通常、フラスコ燃焼イオンクロマトグラフ装置によって測定することができ、好ましくは、イオンクロマト装置DX−AQ−1120(ダイオネクス社製)によって測定する。
化合物(II)を含む改質カーボンブラックの窒素元素含有量は改質前のカーボンブラックの窒素元素含有量よりも高く、通常0.01〜10重量%であり、好ましくは0.01〜5重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%であり、さらに好ましくは0.11〜3重量%である。上記範囲内であると加硫ゴムの粘弾性がより改善される傾向にあることから好ましい。窒素元素含有量は化合物(I)を含む改質カーボンブラックの窒素元素含有量と同じ方法により測定することができる。
【0045】
化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物の含有量は、カーボンブラック100重量部に対して0.1〜50重量部であり、好ましくは0.1〜25重量部であり、より好ましくは0.5〜10重量部であり、さらに好ましくは1.5〜5重量部である。上記範囲内にあると加硫ゴムの粘弾性が改善される傾向にあるため好ましい。含有量は、窒素元素含有量から算出することができる。
【0046】
カーボンブラックと、過剰量の化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物とを混合した場合、又は、改質カーボンブラックの製造時に溶媒を使用しなかった場合若しくは溶媒を使用しても濾過操作を行わずに留去した場合は、改質カーボンブラックと、カーボンブラックに吸着されていない遊離の化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物とが混在することがある。この場合、かかる混在物を水で洗浄し、遊離の化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を除去した後に、窒素元素含有量を測定することにより、改質カーボンブラックの窒素元素含有量及び改質カーボンブラックにおける化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物の含有量を算出することができる。
【0047】
溶媒存在下で混合する改質カーボンブラックの製造方法としては以下の方法が挙げられる。
(1)カーボンブラックと、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、溶媒とを混合し、混合後に溶媒を留去する方法。
(2)カーボンブラックと、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、溶媒とを混合し、混合後に固形物を濾取する方法。
(3)カーボンブラックと、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、溶媒とを混合し、混合後に固形物を濾取し、さらに固体に含まれる溶媒を留去する方法。
【0048】
カーボンブラックと、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、溶媒の混合順序に制限はなく、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を溶媒に溶解又は分散させた後にカーボンブラックに加えてもよく、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を溶媒に溶解又は分散させた後にカーボンブラックを加えてもよく、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物とカーボンブラックとを混合した後に溶媒を加えて混合してもよい。通常は、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を溶媒に溶解させた後にカーボンブラックを加えて混合する方法が用いられる。また、一括で加えてもよく、逐次的に加えてもよい。
【0049】
カーボンブラックと、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物との混合比率は、通常、カーボンブラック100重量部に対して、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物0.1〜100重量部であり、好ましくは0.1〜50重量部である。
溶媒量はカーボンブラック100重量部に対して通常、0.1〜1000重量部であり、好ましくは1〜500重量部である。
【0050】
カーボンブラックと化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、溶媒との混合方法としては溶融混練装置{バッチ混練機(反応槽等)}、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、プロセスホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル等により上記方法に従って原料を混合する方法等が挙げられる。
混合温度は通常5〜400℃であり、好ましくは5〜300℃であり、より好ましくは5〜250℃であり、特に好ましくは100℃を超え250℃以下である。
混合時間は通常1分〜24時間であり、好ましくは1分〜12時間である。
混合は、常圧条件下で行ってもよいし、加圧条件下で行ってもよいし、減圧条件下で行ってもよい。
溶媒の留去時の加熱温度は通常5〜400℃であり、好ましくは5〜300℃であり、より好ましくは5〜250℃である。
溶媒の留去時の圧力は通常0.01〜1.0MPaであり、好ましくは0.02〜0.09MPaである。
【0051】
溶媒非存在下で混合する改質カーボンブラックの製造方法としては、カーボンブラックと、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物とを混合する方法が挙げられる。
溶媒存在下又は、溶媒非存在下で混合して得られた改質カーボンブラックを、湿式造粒法又は乾式造粒法等の特開昭52−130481、特公昭54−20478、特開昭63−83171等に記載の公知の方法により造粒することで顆粒を得ることができる。
【0052】
本発明における顆粒とは、粒子径が0.01〜10mmの粒子のことをいう。顆粒の数平均粒子径は通常0.01〜10mmであり、好ましくは0.1〜5mmである。改質カーボンブラックの取り扱い時の操作性が優れるという点で0.1〜5mmであると好ましい。
【0053】
また、湿式造粒法では改質カーボンブラックの製造と、造粒とを一つの工程で行うことができる。具体的には、湿式造粒機にカーボンブラックと化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と造粒用の水とを加え造粒工程に供することで改質カーボンブラックの顆粒が得られる。造粒工程には、混合段階、造粒段階、乾燥段階の一連の段階が含まれる。化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物は、そのまま一括もしくは逐次添加してもよいし、水に溶解又は分散して一括もしくは逐次添加してもよい。好ましくは水に溶解して一括添加する方法である。また、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を加える段階は造粒工程であれば制限はないが、湿式造粒機内でをカーボンブラックが転動している造粒段階、又は乾燥段階で加えるのが好ましい。
【0054】
化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を水に溶解させた水溶液の濃度としては0.1〜50重量%が好ましい。
カーボンブラックと、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物との混合比率は、通常、カーボンブラック100重量部に対して、化合物(I)及び化合物(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物0.1〜100重量部であり、好ましくは0.1〜50重量部である。
混合は、常圧条件下で行ってもよいし、加圧条件下で行ってもよいし、減圧条件下で行ってもよい。
乾燥温度は通常5〜400℃であり、好ましくは50〜350℃である。
乾燥時間は通常1分〜24時間であり、好ましくは1分〜12時間である。
【0055】
次に本発明の改質カーボンブラック又は改質カーボンブラックの顆粒とゴム成分とを混練して得られるゴム組成物について説明する。まず本発明の改質カーボンブラック又は改質カーボンブラックの顆粒とゴム成分とを混練する工程(A)について説明する。本発明の改質カーボンブラック及び改質カーボンブラックの顆粒の使用量は、後述するゴム成分100重量部に対して、5〜150重量部となる範囲が好ましい。より好ましくは5〜75重量部の範囲である。
【0056】
ゴム成分としては、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、脱蛋白天然ゴムおよびその他の変性天然ゴムのほか、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム(NBR)、イソプレン・イソブチレン共重合ゴム(IIR)、エチレン・プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ハロゲン化ブチルゴム(HR)等の各種の合成ゴムが例示されるが、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム等の高不飽和性ゴムが好ましく用いられる。特に好ましくは天然ゴムである。また、天然ゴムとスチレン・ブタジエン共重合ゴムの併用、天然ゴムとポリブタジエンゴムの併用等、数種のゴム成分を組み合わせることも有効である。
【0057】
天然ゴムの例としては、RSS#1、RSS#3、TSR20、SIR20等のグレードの天然ゴムを挙げることができる。エポキシ化天然ゴムとしては、エポキシ化度10〜60モル%のものが好ましく、例えばクンプーラン ガスリー社製ENR25やENR50が例示できる。脱蛋白天然ゴムとしては、総窒素含有率が0.3質量%以下である脱蛋白天然ゴムが好ましい。変性天然ゴムとしては天然ゴムにあらかじめ4−ビニルピリジン、N,N−ジアルキルアミノエチルアクリレート(例えばN,N−ジエチルアミノエチルアクリレート)、2−ヒドロキシアクリレート等を反応させた極性基を含有する変性天然ゴムが好ましく用いられる。
【0058】
SBRの例としては、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の210〜211頁に記載されている乳化重合SBRおよび溶液重合SBRを挙げることができる。とりわけトレッド用ゴム組成物としては溶液重合SBRが好ましく用いられ、更には日本ゼオン社製「ニッポール(登録商標)NS116」等の4,4’−ビス−(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンを用いて分子末端を変性した溶液重合SBR、JSR社製「SL574」等のハロゲン化スズ化合物を用いて分子末端を変性した溶液重合SBR、旭化成社製「E10」、「E15」等シラン変性溶液重合SBRの市販品や、ラクタム化合物、アミド化合物、尿素系化合物、N,N−ジアルキルアクリルアミド化合物、イソシアネート化合物、イミド化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物(トリアルコキシシラン化合物等)、アミノシラン化合物のいずれかを単独で用いて、または、スズ化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物や、アルキルアクリルアミド化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物等、前記記載の異なった複数の化合物を2種以上用いて、それぞれ分子末端を変性しで得られる分子末端に窒素、スズ、ケイ素のいずれか、またはそれら複数の元素を有する溶液重合SBRが、特に好ましく用いられる。また、乳化重合SBRおよび溶液重合SBRに重合後、プロセスオイルやアロマオイル等のオイルを添加した油展SBRは、トレッド用ゴム組成物等として好ましく用いることができる。
【0059】
BRの例としては、シス1,4結合が90%以上の高シスBRやシス結合が35%前後の低シスBR等の溶液重合BRが例示され、高ビニル含量の低シスBRは好ましく用いられる。更には日本ゼオン製「Nipol(登録商標)BR 1250H」等スズ変性BRや、4,4‘−ビス−(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、ハロゲン化スズ化合物、ラクタム化合物、アミド化合物、尿素系化合物、N,N−ジアルキルアクリルアミド化合物、イソシアネート化合物、イミド化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物(トリアルコキシシラン化合物等)、アミノシラン化合物のいずれかを単独で用いて、または、スズ化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物や、アルキルアクリルアミド化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物等、前記記載の異なった複数の化合物を2種以上用いて、それぞれ分子末端を変性して得られる分子末端に窒素、スズ、ケイ素のいずれか、またはそれら複数の元素を有する溶液重合BRが、特に好ましく用いられる。これらBRは、トレッド用ゴム組成物やサイドウォール用ゴム組成物として好ましく用いることができ、通常はSBRおよび/または天然ゴムとのブレンドで使用される。ブレンド比率は、トレッド用ゴム組成物においては、総ゴム質量に対して、SBRおよび/または天然ゴムが60〜100質量%、BRは0〜40質量%が好ましく、サイドウォール用ゴム組成物においては、総ゴム質量に対して、SBRおよび/または天然ゴムが10〜70質量%、BRは90〜30質量%が好ましく、更には総ゴム質量に対し、天然ゴム40〜60質量%、BR60〜40質量%のブレンドが特に好ましい。この場合、変性SBRと非変性SBRとのブレンドや、変性BRと非変性BRとのブレンドも好ましい。
【0060】
また本発明の改質カーボンブラック又は改質カーボンブラックの顆粒とゴム成分とを混練して得られるゴム組成物には本発明の改質カーボンブラック及び改質カーボンブラックの顆粒を除く、他の充填剤が含有されていてもよい。充填剤としては、ゴム分野で通常使用されているカーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が例示されるが、カーボンブラック及びシリカが好ましく用いられ、更にはカーボンブラックが特に好ましく使用される。カーボンブラックとしては、例えば、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の494頁に記載されるものが挙げられ、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、FEF(Fast Extrusion Furnace)、MAF、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)等のカーボンブラックが好ましい。タイヤトレッド用ゴム組成物にはCTAB(Cetyl Tri−methyl Ammonium Bromide)表面積40〜250m
2/g、窒素吸着比表面積20〜200m
2/g、粒子径10〜50nmのカーボンブラックが好ましく用いられ、CTAB表面積70〜180m
2/gであるカーボンブラックが更に好ましく、その例としてはASTMの規格において、N110、N220、N234、N299、N326、N330、N330T、N339、N343、N351等である。またカーボンブラックの表面にシリカを0.1〜50質量%付着させた表面処理カーボンブラックを含んでいてもよく、更にはカーボンブラックとシリカの併用等、数種の充填剤を組み合わせることも有効であり、タイヤトレッド用ゴム組成物においてはカーボンブラック単独あるはカーボンブラックとシリカの両方を用いることが好ましい。カーカス、サイドウォール用ゴム組成物においてはCTAB表面積20〜60m
2/g、粒子径40〜100nmのカーボンブラックが好ましく用いられ、その例としてはASTMの規格において、N330、N339、N343、N351,N550、N568、N582、N630、N642、N660、N662、N754、N762等である。かかる充填剤の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり1〜50重量部の範囲が好ましい。
【0061】
充填剤として使用するシリカとしては、CTAB比表面積50〜180m
2/gのシリカや、窒素吸着比表面積50〜300m
2/gのシリカが例示され、東ソー・シリカ(株)社製「AQ」、「AQ−N」、デグッサ社製「ウルトラジル(登録商標)VN3」、「ウルトラジル(登録商標)360」、「ウルトラジル(登録商標)7000」、ローディア社製「ゼオシル(登録商標)115GR」、「ゼオシル(登録商標)1115MP」、「ゼオシル(登録商標)1205MP」、「ゼオシル(登録商標)Z85MP」、日本シリカ社製「ニップシール(登録商標)AQ」等の市販品が好ましく用いられる。また、pHが6〜8であるシリカやナトリウムを0.2〜1.5質量%含むシリカ、真円度が1〜1.3の真球状シリカ、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルやエトキシシリル基を含有する有機ケイ素化合物、エタノールやポリエチレングリコール等のアルコールで表面処理したシリカ、二種類以上の異なった窒素吸着比表面積を有するシリカを配合することも好ましく用いられる。
【0062】
充填剤の使用量は特に限定されるものではない。また通常充填剤としてシリカを用いる場合には、国際公開第2010/140704号に記載された、シリカと結合可能なケイ素等の元素またはアルコシキシラン等の官能基を有する化合物を添加することが好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製「Si−69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(デグッサ社製「Si−75」)、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(ジェネラルエレクトロニックシリコンズ社製「NXTシラン」)が特に好ましい。これらの化合物の添加時期は特に限定されないが、シリカと同時期にゴムに配合することが好ましく、配合量はシリカに対して、好ましくは2〜10質量%、更に好ましくは7〜9質量%である。配合する場合の配合温度は80〜200℃が好ましく、更に好ましくは110〜180℃の範囲である。更には充填剤としてシリカを用いる場合には、シリカ、シリカと結合可能なケイ素等の元素またはアルコシキシラン等の官能基を有する化合物に加えて、エタノール、ブタノール、オクタノール等の1価アルコールやエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ポリエーテルポリオール等の2価以上のアルコール、N−アルキルアミン、アミノ酸、分子末端がカルボキシル変性またはアミン変性された液状ポリブタジエン、等を配合することも好ましい。
【0063】
水酸化アルミニウムとしては、窒素吸着比表面積5〜250m
2/gの水酸化アルミニウムや、DOP給油量50〜100ml/100gの水酸化アルミニウムが例示される。
【0064】
次に、上記工程(A)で得られた混練物と硫黄成分と加硫促進剤とを混練する工程(B)について説明する。本明細書において「未加硫ゴム組成物」とは、本工程により得られるゴム組成物をいう。
【0065】
硫黄成分としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、及び高分散性硫黄等が挙げられる。通常は粉末硫黄が好ましく、ベルト用部材等の硫黄量が多いタイヤ部材に用いる場合には不溶性硫黄が好ましい。なお、上記硫黄成分には化合物(I)およびその金属塩並びに加硫促進剤は含まれないものとする。硫黄成分の使用量は、ゴム成分100重量部あたり0.3〜5重量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜3重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0066】
加硫促進剤の例としては、ゴム工業便覧<第四版>(平成6年1月20日社団法人 日本ゴム協会発行)の412〜413ページに記載されているチアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が挙げられる。
【0067】
具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ジフェニルグアニジン(DPG)が挙げられる。また、公知の加硫剤であるモルフォリンジスルフィドを用いることもできる。充填剤としてカーボンブラックを用いる場合には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)のいずれかとジフェニルグアニジン(DPG)とを併用することが好ましく、充填剤としてシリカとカーボンブラックとを併用する場合には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)のいずれかとジフェニルグアニジン(DPG)とを併用することが好ましい。なお、加硫促進剤には化合物(I)は含まれないものとする。
【0068】
硫黄と加硫促進剤との比率は特に制限されないが、質量比で硫黄/加硫促進剤=2/1〜1/2の範囲が好ましい。また天然ゴムを主とするゴム部材において耐熱性を向上させる方法である硫黄/加硫促進剤の比を1以下にするEV加硫は、耐熱性向上が特に必要な用途においては、好ましく用いられる。
【0069】
本発明の改質カーボンブラック及び改質カーボンブラックの顆粒は、工程(B)で配合し、混練してもよいが、工程(A)で配合し、混練することが好ましい。混練時の混合比率はゴム成分100重量部に対して改質カーボンブラック0.1〜10重量部となる範囲が好ましい。より好ましくは0.4〜3重量部の範囲である。
【0070】
工程(A)で改質カーボンブラック又は改質カーボンブラックの顆粒を混練する場合の混練温度は、通常、混練終了時の混練物の温度が140℃〜200℃の範囲であることが好ましく、120℃〜180℃の範囲であることがより好ましい。工程(A)の混練は通常発熱を伴う。混練終了時の混練物の温度が140℃以上であれば、改質カーボンブラックと、ゴム成分及び充填剤との反応が良好に進行する傾向にあり、180℃以下であれば、ゴム成分の劣化やゲル化が抑制される傾向にあり、最終的に得られる加硫ゴムの粘弾性特性を改善させる傾向にある。
【0071】
工程(B)で改質カーボンブラックを混練する場合の混練温度は、通常、混練終了時の混練物の温度が60℃〜120℃の範囲であることが好ましい。
【0072】
混練時間は、1分〜10分であることが好ましく、より好ましくは2分〜7分の範囲である。混練時間が1分以上であれば、ゴム成分への充填剤の分散が良好となる傾向にあり、10分以下であれば、ゴム成分の劣化やゲル化が抑制される傾向にあり、最終的に得られる加硫ゴムの粘弾性特性を改善させる傾向にある。
【0073】
従来からゴム分野で用いられている粘弾性特性を改善させる剤を配合し混錬することも可能である。かかる剤としては、例えば、国際公開第2010/140704号に記載された化合物が挙げられる。
【0074】
中でも、N,N’−ビス(2−メチル−2−ニトロプロピル)−1,6−ヘキサンジアミン(住友化学社製「スミファイン(登録商標)1162」)、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン(NQ−58)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製「Si−69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(デグッサ社製「Si−75」)、1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン(バイエル社製「KA9188」)、ヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物、1,3−ビスシトラコンイミドメチルベンゼン(フレキシス社製「パーカリンク900」)、田岡化学製「タッキロール(登録商標)AP、V−200」等のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物が好ましい。これら粘弾性特性を改善させる剤の使用量は、ゴム成分100重量部あたり0.1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。
【0075】
また、酸化亜鉛やステアリン酸を配合し、混練することが好ましい。酸化亜鉛の使用量は、ゴム成分100重量部あたり1〜15重量部の範囲内であることが好ましく、3〜8重量部の範囲内であることがより好ましい。ステアリン酸の使用量は、ゴム成分100重量部あたり0.5〜10重量部の範囲内であることが好ましく、1〜5重量部の範囲内であることがより好ましい。
酸化亜鉛を配合するときは工程(A)で配合することが好ましく、加硫促進剤を配合するときは工程(B)で配合することが好ましい。
【0076】
従来からゴム分野で用いられている各種の配合剤を配合し、混練することも可能である。かかる配合剤としては、例えば、老化防止剤;オイル;ステアリン酸等の脂肪酸類;日鉄化学(株)のクマロン樹脂NG4(軟化点81〜100℃)、神戸油化学工業(株)のプロセスレジンAC5(軟化点75℃)等のクマロン・インデン樹脂;テルペン樹脂、テルペン・フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;三菱瓦斯化学(株)「ニカノール(登録商標)A70」(軟化点70〜90℃)等のロジン誘導体;水素添加ロジン誘導体;ノボラック型アルキルフェノール系樹脂;レゾール型アルキルフェノール系樹脂;C5系石油樹脂;液状ポリブタジエン;が挙げられる。これら配合剤は、工程(A)および工程(B)のいずれでも配合し得る。
【0077】
上記のオイルとしては、プロセスオイル、植物油脂等が挙げられる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。
【0078】
上記の老化防止剤としては、例えば日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の436〜443頁に記載されるものが挙げられる。中でもN−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、アニリンとアセトンの反応生成物(TMDQ)、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−)ジヒドロキノリン)(松原産業社製「アンチオキシダントFR」)、合成ワックス(パラフィンワックス等)、植物性ワックスが好ましく用いられる。
【0079】
従来からゴム分野で用いられているモルフォリンジスルフィド等の加硫剤を配合し、混練することも可能である。これらは工程(B)で配合することが好ましい。
また、しゃく解剤やリターダーを配合し、混練してもよく、さらには、一般の各種ゴム薬品や軟化剤等を必要に応じて配合し、混練してもよい。
リターダーとしては、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、N−ニトロソジフェニルアミン、N−(シクロヘキシルチオ)−フタルイミド(CTP)、スルホンアミド誘導体、ジフェニルウレア、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト等が例示され、N−(シクロヘキシルチオ)−フタルイミド(CTP)が好ましく用いられる。
リターダーは、工程(A)で配合し、混錬してもよいが、工程(B)で配合し、混錬することが好ましい。
かかるリターダーの使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり0.01〜1重量部の範囲が好ましい。特に好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0080】
次に、工程(B)で得られた混練物を熱処理する工程(C)について説明する。
熱処理における温度は120〜180℃の範囲が好ましい。熱処理は、通常、常圧又は加圧下で行われる。
加硫ゴムの製造方法は、通常、工程(B)で得られた混練物を工程(C)での熱処理に供する前に、該混練物を特定の状態に加工する工程を含む。本発明の加硫ゴムは、かかる特定の状態に加工された該混練物を工程(C)での熱処理に供して得られる加硫ゴムを含む。
【0081】
ここで、工程(B)で得られた混練物を「特定の状態に加工する工程」とは、例えばタイヤの分野においては、該混練物を、「スチールコードに被覆する工程」「カーカス繊維コードに被覆する工程」「トレッド用部材の形状に加工する工程」等が挙げられる。また、これらの工程によりそれぞれ得られるベルト、カーカス、インナーライナー、サイドウォール、トレッド(キャップトレッド又はアンダートレッド)等の各部材は、通常、その他の部材とともに、タイヤの分野で通常行われる方法により、さらにタイヤの形状に成型され、すなわち該混練物をタイヤに組み込む工程を経て、該混練物を含む生タイヤの状態で工程(C)での熱処理に供される。かかる熱処理は、通常、加圧下で行われる。本発明の加硫ゴムは、かくして得られるタイヤの上記各部材を構成する加硫ゴムを含む。
【0082】
トラックやバス、ライトトラック、建設用車両等の大型タイヤに適したトレッド部材に好適なゴム配合におけるゴム成分としては、天然ゴム単独または天然ゴムを主成分とするSBRおよび/またはBRと天然ゴムとのブレンドが好ましい。また、充填剤としては、カーボンブラック単独またはシリカを主成分をするシリカをカーボンブラックとのブレンドが好ましく用いられる。更に、N,N’−ビス(2−メチル−2−ニトロプロピル)−1,6−ヘキサンジアミン(住友化学社製「スミファイン(登録商標)1162」)、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン(NQ−58)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si−69)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si−75)、1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン(バイエル社製「KA9188」)、ヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物、1,3−ビスシトラコンイミドメチルベンゼン(フレキシス社製「パーカリンク900」)、田岡化学製「タッキロール(登録商標)AP、V−200」等のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、等の粘弾性改良剤を併用することが好ましい。
【0083】
乗用車用タイヤに適したトレッド部材に好適なゴム配合におけるゴム成分としては、ケイ素化合物で分子末端を変性した溶液重合SBR単独または前記末端変性の溶液重合SBRを主成分とする、非変性の溶液重合SBR、乳化重合SBR、天然ゴムおよびBRからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムと前記末端変性の溶液重合SBRとのブレンドが好ましい。また、充填剤としては、シリカを主成分とするシリカとカーボンブラックとのブレンドが好ましく用いられる。更に、N,N’−ビス(2−メチル−2−ニトロプロピル)−1,6−ヘキサンジアミン(住友化学社製「スミファイン(登録商標)1162」)、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン(NQ−58)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si−69)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si−75)、1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン(バイエル社製「KA9188」)、ヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物、1,3−ビスシトラコンイミドメチルベンゼン(フレキシス社製「パーカリンク900」)、田岡化学製「タッキロール(登録商標)AP、V−200」等のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、等の粘弾性改良剤を併用することが好ましい。
【0084】
サイドウォール部材に好適なゴム配合におけるゴム成分としては、BRを主成分とする、非変性の溶液重合SBR、乳化重合SBRおよび天然ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムとBRとのブレンドが好ましい。また、充填剤としては、カーボンブラック単独またはカーボンブラックを主成分とするシリカとカーボンブラックとのブレンドが好ましく用いられる。更に、N,N’−ビス(2−メチル−2−ニトロプロピル)−1,6−ヘキサンジアミン(住友化学社製「スミファイン(登録商標)1162」)、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン(NQ−58)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si−69)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si−75)、1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン(バイエル社製「KA9188」)、ヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物、1,3−ビスシトラコンイミドメチルベンゼン(フレキシス社製「パーカリンク900」)、田岡化学製「タッキロール(登録商標)AP、V−200」等のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、等の粘弾性改良剤を併用することが好ましい。
【0085】
カーカス、ベルト部材に好適なゴム配合におけるゴム成分としては、天然ゴム単独または天然ゴムを主成分とするBRと天然ゴムとのブレンドが好ましい。また、充填剤としては、カーボンブラック単独またはカーボンブラックを主成分とするシリカとのブレンドが好ましく用いられる。更に、N,N’−ビス(2−メチル−2−ニトロプロピル)−1,6−ヘキサンジアミン(住友化学社製「スミファイン(登録商標)1162」)、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン(NQ−58)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si−69)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si−75)、1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン(バイエル社製「KA9188」)、ヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物、1,3−ビスシトラコンイミドメチルベンゼン(フレキシス社製「パーカリンク900」)、田岡化学製「タッキロール(登録商標)AP、V−200」等のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、等の粘弾性改良剤を併用することが好ましい。
【0086】
本発明の加硫ゴムを含むタイヤが装着された自動車の燃費は向上し、低燃費化が達成できる。また、該加硫ゴムは、上述したタイヤ用途のみならず、エンジンマウント、ストラットマウント、ブッシュ、エグゾーストハンガー等の自動車用防振ゴムとしても使用できる。かかる自動車用防振ゴムは、通常、工程(B)で得られた混練物を前記各自動車用防振ゴムの形状に加工した後に、工程(C)の熱処理に供することにより得られる。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。例中の部及び%は、特に断らないかぎり重量基準を意味する。
【0088】
以下の実施例において、物性測定は以下の方法で行った。
<元素分析>
硫黄元素含有量:ダイオネクス社製イオンクロマト装置 DX−AQ−1120
窒素元素含有量:住化分析センター製NCH定量装置 スミグラフNCH−22F型
<粘弾性特性>
株式会社上島製作所製の粘弾性アナライザを用いて測定した。
条件:温度−5℃〜80℃(昇温速度:2℃/分)
初期歪10%、動的歪2.5%、周波数10Hz
【0089】
カーボンブラック100部に対する式(I)又は式(II)で表される化合物の含有量は以下の式(III)から算出した。
含有量=100×{(A−B)÷C}÷{100−(A−B)÷C} 式(III)
A:改質カーボンブラックの窒素元素含有量(%)
B:改質前のカーボンブラックの窒素元素含有量(%)
C:式(I)又は式(II)で表される化合物の窒素原子の重量分率
【0090】
<製造例1(化合物(I)の製造)>
窒素置換された反応容器に3−クロロプロピルアミン塩酸塩100部(0.77mol)、水180mLおよびチオ硫酸ナトリウム五水和物200.4部(0.81mol)を仕込み、得られた混合物を浴温70〜80℃で5時間攪拌した。反応混合物を一晩放冷し、結晶を濾取した後、水、メタノールで洗浄した。得られた結晶を、50℃で4時間乾燥することにより下記式で表される化合物(a)を得た。窒素原子の重量分率:0.082、
1H−NMR(270.05MHz,D
2O)δ
ppm:3.0−3.1(4H,m),2.0−2.1(2H,m)
【0091】
<製造例2(化合物(II)の製造)>
窒素雰囲気下、反応容器に1,4−フェニレンジアミン211.3g(1.95mol)とテトラヒドロフラン3900mlを仕込んだ。そこへ氷冷下、無水マレイン酸127.2g(1.30mol)をテトラヒドロフラン600mlに溶解した溶液を約3.3時間で滴下した後、室温で一晩撹拌した。反応終了後、析出した結晶を濾取し、テトラヒドロフラン280mlで2回洗浄し、黄橙色の粉末を得た。得られた黄橙色の粉末259.2gに水520mlを加えて0〜10℃に冷却し、5N水酸化ナトリウム水溶液237ml、次いで1N水酸化ナトリウム水溶液6.5mlを滴下した。その後、減圧下に溶媒を留去して得られた残渣に2−プロパノール200mlを加えて再度減圧下に溶媒を留去した。得られた黄褐色固体にテトラヒドロフラン800mlを加えて室温で一晩撹拌し、固体を濾取、テトラヒドロフラン100mlで4回洗浄して45℃で5時間乾燥し、下記式で表される化合物(b)を得た。窒素原子の重量分率:0.106、H
1−NMR(270MHz,DMSO−d6)δ
ppm:14.6(1H,s),7.3(2H,d,J=8.9Hz),6.5(2H,d,J=8.9Hz),6.1(1H,d,J=13.5Hz),5.6(1H,d,J=13.5Hz),4.8(2H、s),3.3(4H,s)。
【0092】
<実施例1(改質カーボンブラック(1)の製造)>
3ツ口のナスフラスコに、攪拌器、温度計、還流冷却管をつけて、フラスコ内を窒素で置換した。ここに水278部、HAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」窒素元素含量0.1%、硫黄元素含有量0.4%)100部、上記製造例1で得られた化合物(a)1.1部を加えて撹拌した。得られた混合物を50℃で加熱し、1時間攪拌した。得られた混合物を室温に冷却し、固形物を濾取し、得られた固形物を50℃で減圧乾燥して改質カーボンブラック(1)を得た。改質カーボンブラック(1)の元素分析結果を以下に示す。
硫黄元素含有量:0.6%
窒素元素含有量:0.15%
カーボンブラック100部に対する化合物(a)の含有量:0.61部
【0093】
<実施例2(改質カーボンブラック(2)の製造)>
3ツ口のナスフラスコに、攪拌器、温度計、還流冷却管をつけて、フラスコ内を窒素で置換した。ここに水278部、HAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」窒素元素含量0.1%、硫黄元素含有量0.4%)100部、上記製造例1で得られた化合物(a)1.1部を加えて撹拌した。得られた混合物を100℃で加熱し、1時間攪拌した。得られた混合物を室温に冷却し、固形物を濾取し、得られた固形物を50℃で減圧乾燥して改質カーボンブラック(2)を得た。改質カーボンブラック(2)の元素分析結果を以下に示す。
硫黄元素含有量:0.6%
窒素元素含有量:0.18%
カーボンブラック100部に対する化合物(a)の含有量:1.0部
【0094】
<実施例3(改質カーボンブラック(3)の製造)>
セパラフラスコに、攪拌器、温度計、還流冷却管をつけて、フラスコ内を窒素で置換した。ここにHAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」窒素元素含量0.1%、硫黄元素含有量0.4%)100部、上記製造例1で得られた化合物(a)2.2部を加えて、160℃で30分間攪拌した。得られた混合物を室温に冷却し、改質カーボンブラック(3)を得た。改質カーボンブラック(3)の元素分析結果を以下に示す。
硫黄元素含有量:0.9%
窒素元素含有量:0.25%
カーボンブラック100部に対する化合物(a)の含有量:1.9部
【0095】
<実施例4(改質カーボンブラック(4)の製造)>
HAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」窒素元素含量0.1%、硫黄元素含有量0.4%)100部に、上記製造例1で得られた化合物(a)2.2部を室温で水11部に溶解した溶液を霧吹きで噴霧し、200℃で30分間加熱した。得られた混合物を室温に冷却し、改質カーボンブラック(4)を得た。元素分析の結果、仕込んだ化合物(a)の全てが改質カーボンブラック(4)に含まれていた。
【0096】
<実施例5(改質カーボンブラック(5)の製造)>
化合物(a)の代わりに化合物(b)を用いた以外は実施例4と同様にして改質カーボンブラック(5)を得た。元素分析の結果、仕込んだ化合物(b)の全てが改質カーボンブラック(5)に含まれていた。
<実施例6(改質カーボンブラック(6)の製造)>
化合物(a)の代わりに化合物(b)を用いる以外は実施例1と同様にして改質カーボンブラック(6)を得る。
<実施例7(改質カーボンブラック(7)の製造)>
化合物(a)の代わりに化合物(b)を用いる以外は実施例2と同様にして改質カーボンブラック(7)を得る。
<実施例8(改質カーボンブラック(8)の製造)>
化合物(a)の代わりに化合物(b)を用いる以外は実施例3と同様にして改質カーボンブラック(8)を得る。
【0097】
<参考例1(ゴム組成物の製造)>
<手順1>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、天然ゴム(RSS#1)100部、HAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45部、ステアリン酸3部、酸化亜鉛5部、老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン:商品名「アンチゲン(登録商標)6C」住友化学株式会社製)1部を混練配合し、ゴム組成物を得た。本手順1は、各種成分投入後5分間、50rpmのミキサーの回転数で混練することにより実施し、その時のゴム温度は160〜170℃であった。
【0098】
<手順2>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、手順1により得られたゴム組成物と、加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1部及び硫黄2部とを混練配合し、ゴム組成物を得た。
【0099】
<参考例2(加硫ゴムの製造)>
参考例1の手順2で得たゴム組成物を145℃で加硫処理し、加硫ゴムを得た。
【0100】
<実施例9(ゴム組成物の製造)>
参考例1においてHAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45部の代わりに上記実施例1で得た改質カーボンブラック45.5部を用いた以外は参考例1と同様にしてゴム組成物を得た。
<実施例10(加硫ゴムの製造)>
実施例9で得たゴム組成物を145℃で加硫処理し、加硫ゴムを得た。
【0101】
<実施例11(ゴム組成物の製造)>
参考例1においてHAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45部の代わりに上記実施例2で得た改質カーボンブラック45.5部を用いた以外は参考例1と同様にしてゴム組成物を得た。
<実施例12(加硫ゴムの製造)>
実施例11で得たゴム組成物を145℃で加硫処理し、加硫ゴムを得た。
【0102】
<実施例13(ゴム組成物の製造)>
参考例1においてHAF(旭カーボン仕製、商品名「旭#70」)45部の代わりに上記実施例3で得た改質カーボンブラック46部を用いた以外は参考例1と同様にしてゴム組成物を得た。
<実施例14(加硫ゴムの製造)>
実施例13で得たゴム組成物を145℃で加硫処理し、加硫ゴムを得た。
【0103】
<実施例15(ゴム組成物の製造)>
参考例1においてHAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45部の代わりに上記実施例4で得た改質カーボンブラック46部を用いた以外は参考例1と同様にしてゴム組成物を得た。
<実施例16(加硫ゴムの製造)>
実施例15で得たゴム組成物を145℃で加硫処理し、加硫ゴムを得た。
【0104】
<実施例17(ゴム組成物の製造)>
参考例1においてHAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45部の代わりに上記実施例5で得た改質カーボンブラック46部を用いた以外は参考例1と同様にしてゴム組成物を得た。
<実施例18(加硫ゴムの製造)>
実施例17で得たゴム組成物を145℃で加硫処理し、加硫ゴムを得た。
【0105】
<実施例19(ゴム組成物の製造)>
参考例1においてHAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45部の代わりに上記実施例6で得られる改質カーボンブラック45.5部を用いる以外は参考例1と同様にしてゴム組成物を得る。
<実施例20(加硫ゴムの製造)>
実施例19で得るゴム組成物を145℃で加硫処理することで加硫ゴムを得る。
【0106】
<実施例21(ゴム組成物の製造)>
参考例1においてHAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45部の代わりに上記実施例7で得る改質カーボンブラック45.5部を用いる以外は参考例1と同様にしてゴム組成物を得る。
<実施例22(加硫ゴムの製造)>
実施例21で得られるゴム組成物を145℃で加硫処理することで加硫ゴムを得る。
【0107】
<実施例23(ゴム組成物の製造)>
参考例1においてHAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45部の代わりに上記実施例8で得る改質カーボンブラック46部を用いる以外は参考例1と同様にしてゴム組成物を得る。
<実施例24(加硫ゴムの製造)>
実施例23で得られるゴム組成物を145℃で加硫処理することで加硫ゴムを得る。
【0108】
<比較例1(ゴム組成物の製造)>
参考例1の手順1において、天然ゴム(RSS#1)100部、HAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45部、ステアリン酸3部、酸化亜鉛5部、老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン:商品名「アンチゲン(登録商標)6C」住友化学株式会社製)1部、上記製造例1で得た化合物(a)0.5部を混練配合し、ゴム組成物を得た以外は参考例1と同様にしてゴム組成物を得た。
<比較例2(加硫ゴムの製造)>
比較例1で得たゴム組成物を145℃で加硫処理し、加硫ゴムを得た。
【0109】
<比較例3(ゴム組成物の製造)>
比較例1において上記製造例1で得た化合物(a)の使用量を0.5部から1部に変更した以外は比較例1と同様にしてゴム組成物を得た。
<比較例4(加硫ゴムの製造)>
比較例3で得たゴム組成物を145℃で加硫処理し、加硫ゴムを得た。
【0110】
参考例2、実施例10、12、14、16、18、比較例2及び比較例4で得た加硫ゴムについて粘弾性特性(60℃でのtanδ)を測定し、参考例2で得た加硫ゴムを基準とした粘弾性特性の低下率を求めた。結果を表1に示す。また実施例20、22、24で得られる加硫ゴムについても粘弾性特性(60℃でのtanδ)を測定することができる。本発明の改質カーボンブラックを加えた加硫ゴムは、改質を行っていない汎用のカーボンブラックを加えた加硫ゴムに比較して、粘弾性特性を改善した。
【0111】
低下率(%)=(参考例1で得た加硫ゴムの粘弾性特性−実施例又は比較例で得た加硫ゴムの粘弾性特性)/参考例2で得た加硫ゴムの粘弾性特性×100
【表1】
【0112】
<実施例25>
実施例9で得たゴム組成物で、黄銅メッキ処理が施されたスチールコードを被覆することにより、ベルトが得られる。得られるベルトを用いて、通常の製造方法に従い、生タイヤを成形し、得られた生タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、加硫タイヤが得られる。
【0113】
<実施例26>
実施例9で得たゴム組成物を押し出し加工し、トレッド用部材を得る。得られたトレッド用部材を用いて、通常の製造方法に従い、生タイヤを成形し、得られた生タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、加硫タイヤが得られる。
【0114】
<実施例27>
実施例9で得たゴム組成物を押し出し加工して、カーカス形状に応じた形状のゴム組成物を調製し、ポリエステル製のカーカス繊維コードの上下に貼り付けることにより、カーカスが得られる。得られたカーカスを用いて、通常の製造方法に従い、生タイヤを成形し、得られた生タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、加硫タイヤが得られる。
【0115】
<実施例28〜30>
実施例25〜27において、実施例9で得たゴム組成物の代わりに実施例11で得たゴム組成物を用いる以外は実施例25〜27と同様にして、加硫タイヤが得られる。
<実施例31〜33>
実施例25〜27において、実施例9で得たゴム組成物の代わりに実施例13で得たゴム組成物を用いる以外は実施例25〜27と同様にして、加硫タイヤが得られる。
<実施例34〜36>
実施例25〜27において、実施例9で得たゴム組成物の代わりに実施例15で得たゴム組成物を用いる以外は実施例25〜27と同様にして、加硫タイヤが得られる。
<実施例37〜39>
実施例25〜27において、実施例9で得たゴム組成物の代わりに実施例17で得たゴム組成物を用いる以外は実施例25〜27と同様にして、加硫タイヤが得られる。
<実施例40〜42>
実施例25〜27において、実施例9で得たゴム組成物の代わりに実施例19で得るゴム組成物を用いる以外は実施例25〜27と同様にして、加硫タイヤが得られる。
<実施例43〜45>
実施例25〜27において、実施例9で得たゴム組成物の代わりに実施例21で得るゴム組成物を用いる以外は実施例25〜27と同様にして、加硫タイヤが得られる。
<実施例46〜48>
実施例25〜27において、実施例9で得たゴム組成物の代わりに実施例23で得るゴム組成物を用いる以外は実施例25〜27と同様にして、加硫タイヤが得られる。