特許第6377616号(P6377616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6377616収縮が低減された硬質ポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377616
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】収縮が低減された硬質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/66 20060101AFI20180813BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20180813BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20180813BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20180813BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20180813BHJP
【FI】
   C08G18/66
   C08G18/00 H
   C08G18/18
   C08G18/76 057
   C08G101:00
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-530401(P2015-530401)
(86)(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公表番号】特表2015-529264(P2015-529264A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】EP2013068421
(87)【国際公開番号】WO2014037476
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年9月5日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2012/081133
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】バルボ ブロック,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヤーユン
(72)【発明者】
【氏名】ホワン,チェル ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】シー,パンウェイ
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−511600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/66
C08G 18/00
C08G 18/18
C08G 18/76
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)イソシアネート、
(b)イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物、
(c)発泡剤、
(d)触媒、
(e)1種以上の泡安定剤、及び任意に
(f)さらなる添加剤
を混合し、反応混合物を形成し、前記反応混合物を補強材に塗布し、前記反応混合物を硬化することによって得られる硬質ポリウレタンフォームであって、
前記イソシアネート(a)が、25℃で、600mPas以下の粘度を有し、前記イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)が、
(b1)(b)の総質量に基づいて47〜60質量%の、2.5以下のモル平均官能価、及び220mgKOH/gより大きいヒドロキシル価を有する芳香族ポリエステルポリオール、
(b2)(b)の総質量に基づいて20〜40質量%の、4以上のモル平均官能価、及び400mgKOH/gより大きいヒドロキシル価を有するポリエーテルポリオール(但し、1種以上のo−トルエンジアミン開始ポリエーテルポリオール(b3)は除く)、及び
(b3)(b)の総質量に基づいて15質量%より多く20質量%以下の、1種以上の350未満の分子量を有する鎖延長剤、及び/又は1種以上の350未満の分子量を有する架橋剤、及び/又は1種以上のo−トルエンジアミン開始ポリエーテルポリオールを含み、且つ
前記発泡剤が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含むことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
75〜200g/Lのフリーライズ密度を有する請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
25℃で、600mPas以下の粘度を有するイソシアネート(a)として、ポリメリックMDI、又は粗ジフェニルメタンジイソシアネートが、使用される請求項1又は2に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
全てのポリオールが、13000mPas(25℃)未満の粘度を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
成分(b1)、(b2)及び(b3)の混合物が、5000mPas(25℃)未満の粘度を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
成分(b1)〜(b3)のポリオール混合物のモル平均OH−官能価が、2.3及び3.3の間であるか、又は前記ポリオール混合物、及び前記イソシアネート成分のOH、及びNCOのモル平均合計官能価が、2.5及び3.0の間である請求項1〜のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
補強材なしで、前記ポリウレタンフォームの平均密度が、80〜150g/lの範囲である請求項1〜のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
補強材なしで、前記ポリウレタンフォームの平均密度が、80〜120g/lの範囲である請求項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
第三級アミンのみを含む触媒混合物が、触媒(d)として使用される請求項1〜のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
補強材を含む前記硬質ポリウレタンフォームの総質量に基づいて、補強材としてガラス繊維マットを、5〜15質量%の量で含む請求項1〜のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項11】
前記発泡剤(c)が、少なくとも90mol%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項12】
前記発泡剤(c)が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンからなる請求項11に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォームを製造するための方法であって、
(a)イソシアネート、
(b)イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物、
(c)発泡剤、
(d)触媒、
(e)1種以上の泡安定剤、及び任意に
(f)さらなる添加剤
を混合し、反応混合物を形成する工程、前記反応混合物を補強材に塗布する工程、及び前記反応混合物を硬化する工程を含み、
前記イソシアネート(a)が、25℃で、600mPas以下の粘度を有し、前記イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)が、
(b1)(b)の総質量に基づいて47〜60質量%の、2.5以上のモル平均官能価、及び250mgKOH/gより大きいヒドロキシル価を有する芳香族ポリエステルポリオール、
(b2)(b)の総質量に基づいて20〜40質量%の、4より大きいモル平均官能価、及び400mgKOH/gより大きいヒドロキシル価を有するポリエーテルポリオール(但し、1種以上のo−トルエンジアミン開始ポリエーテルポリオール(b3)は除く)、及び
(b3)(b)の総質量に基づいて15質量%より多く20質量%以下の、1種以上の350未満の分子量を有する鎖延長剤、及び/又は1種以上の350未満の分子量を有する架橋剤、及び/又は1種以上のo−トルエンジアミン開始ポリエーテルポリオールを含み、且つ
前記発泡剤が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(「FTP」)を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォームを含む液化天然ガスタンク用の断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム、その製造方法、及びその断熱材としての、特に液化ガスタンカーのタンク等の液化ガス輸送タンク用の断熱材としての使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油は別として、天然ガスは、現代の最も重要なエネルギー源の一つである。しかしながら、そのガスをその調達元から、取引先まで移動させるためには、通常、それは遠距離を越えて輸送されなければならない。例えば、これは、パイプラインを介して達成される、しかしながら、中心部から離れた地域への、又は極めて長距離に渡るパイプラインを介した天然ガスの輸送は、非常に費用が掛かるものである。さらに、いくつかの国における政治情勢が、パイプラインを建設することを不可能にするかもしれない。そのような場合、別の方法として、しばしば天然ガスタンカー(液化天然ガス(LNG)キャリアとして知られる)における海上輸送が選択される。この目的のため、天然ガスは陸上で液化され、船上の巨大なタンク中へ入れられる。天然ガスは、約−160℃の極めて低温でのみ液化され得、また、大気圧でこの温度で貯蔵され、且つ輸送されなければならないので、蒸発を下げることにより液化ガスの損失をできるだけ維持するため、特に船上のタンクを断熱することが必要である。
【0003】
断熱材として、ポリスチレンフォーム又はミネラルウール等の他の断熱材と比較して、その優れた断熱性能のために、主に、硬質ポリウレタンフォームが使用される。
【0004】
液化天然ガスキャリアにおける全体的な断熱構造は極めて複雑である。したがって、そのタンクの断熱は、天然ガスの蒸発を防止しなければならないだけでなく、タンクにある程度の安定性を付与しなければならない。したがって、硬質ポリウレタンフォームは別として、タンクを安定化するために、例えば、合板、ガラス繊維、及びステンレス鋼層等が使用される。
【0005】
実際のタンクは、通常、断熱構造が、要求される安定性の大部分を提供するように、非常に薄いステンレス鋼のバリア層を含む。したがって、主に使用される硬質ポリウレタンフォームは、かなり高い密度を有する。さらに、それは、好ましくは、必要な機械的特性を提供する補強材、通常、ガラス繊維マット(CSMs−連続ストランドマット)を含む。最適な安定性の確保を可能にするため、フォームの全体の厚さに渡る、これらの連続ストランドマットの均一分布(uniform distribution)が、重要なパラメータである。
【0006】
そのような断熱構造は、例えば、韓国特許KR2000−010021及びKR2000−010022、日本特許出願JP2003−240198及びJP2001−150558、米国特許出願US2005/0115248、US2007/0015842、US3,319,431及びUS3,341,050、EP−A1 698 649、WO2008/083996、及びWO2010/066635に記載されている。
【0007】
大きな温度差、及び温度変化を受ける硬質フォームの場合、せん断力が、フォーム本体に生じる。ポリウレタンフォームは、断熱材であるので、フォーム本体に温度勾配が生じ、フォーム本体におけるせん断力を次々に引き起こす収縮/膨張勾配を、結果的にもたらす。せん断強度もまた、例えば、液体の積荷を運搬する船舶上で発生するような、応力を受ける硬質フォームにとって重要な特性である。この理由のため、液化天然ガス用のタンクの断熱に使用される硬質ポリウレタンフォームは、優れた圧縮強度及び圧縮弾性率(ヤング係数)等の機械的特性だけでなく、特に高いせん断強度を有していなければならない。
【0008】
この方法で、特に低い熱伝導率を有するフォームが得られるので、発泡剤として、通常、クロロフルオロカーボン、及びフッ素化炭化水素のようなハロゲン化発泡剤が使用される。しかしながら、クロロフルオロカーボンは、オゾン層の破壊に責任があり、クロロフルオロカーボン及びフッ素化炭化水素のどちらも地球温暖化の原因となるガスである。これらの理由のため、代替手段が探索される必要がある。炭化水素のようなハロゲンを含まない物理的発泡剤が、使用され得るが、それらは引火性が高く、天然ガス漏れ検出器の誤認警報の原因となり得る。水又はギ酸のような化学的発泡剤もまた使用され得るが、それらは、高い熱伝導率を引き起こす。ヒドロフルオロオレフィンのような、次世代発泡剤、又は第4世代発泡剤とも称される物理的発泡剤は、低い熱伝導率、低い又は非オゾン破壊可能性、及び低い地球温暖化可能性を有する。しかし、本出願において記載されるように、低い架橋密度を有する硬質フォームにおいて使用される場合、それらは、強いフォーム収縮を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】KR2000−010021
【特許文献2】KR2000−010022
【特許文献3】JP2003−240198
【特許文献4】JP2001−150558
【特許文献5】US2005/0115248
【特許文献6】US2007/0015842
【特許文献7】US3,319,431
【特許文献8】US3,341,050
【特許文献9】EP−A1 698 649
【特許文献10】WO2008/083996
【特許文献11】WO2010/066635
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、船上の液化天然ガスタンクの断熱用に適している硬質ポリウレタンフォームであって、発泡剤として使用される、従来のクロロフルオロカーボン又はフッ素化炭化水素が、完全に又は部分的に代替の発泡剤に置き換えられており、且つ非常に良好な圧縮強度、圧縮弾性率及びせん断強度等の機械的特性、並びに低い熱伝導率、及び低い架橋密度での低い収縮性を有する硬質ポリウレタンフォームを提供することにある。さらに、本発明の硬質フォームを誘導する反応混合物は、ガラス繊維の速い濡れ性、及びガラス繊維マットへの速い浸透性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、
(a)イソシアネート、
(b)イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物、
(c)発泡剤、
(d)触媒、
(e)1種以上の泡安定剤、及び任意に
(f)さらなる添加剤
を混合し、反応混合物を形成し、前記反応混合物を補強材に塗布し、前記反応混合物を硬化することによって得られる硬質ポリウレタンフォームであって、
前記イソシアネート(a)が、25℃で、600mPas以下の粘度を有し、
前記イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)が、
(b1)(b)の総質量に基づいて45〜70質量%の、2.5以下の官能価、及び220mgKOH/gより大きいヒドロキシル価を有する芳香族ポリエステルポリオール(ポリオール1)、
(b2)(b)の総質量に基づいて20〜40質量%の、4以上の官能価、及び400mgKOH/gより大きいヒドロキシル価を有するポリエーテルポリオール(ポリオール2)、及び
(b3)(b)の総質量に基づいて15質量%より多い、1種以上の低分子量鎖延長剤、及び/又は1種以上の架橋剤、及び/又は1種以上のo−トルエンジアミン開始ポリエーテルポリオール(「TDAポリオール」)(まとめて、ポリオール3)を含み、且つ
前記発泡剤が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(ヒドロフルオロカーボンオレフィン「HFCO」と称される)を含むことを特徴とする硬質ポリウレタンフォームによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ポリオール(b1)及び(b2)は、ある意味では、単独のポリオール、又はポリオールの混合物であり得、ポリオールの混合物は、それぞれ(b1)及び(b2)の定義に従う。
【0013】
イソシアネート(a)として、25℃で測定された600mPas未満の、好ましくは500mPas未満の、特に好ましくは250mPasの粘度を有する全ての通常の脂肪族、脂環式、及び好ましくは芳香族ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを使用することが可能である。イソシアネートとして、トリレンジイソシアネート(TDI)、及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、並びに特にジフェニルメタンジイソシアネート及びポリメリックMDI(PMDI)の混合物が特に好ましい。これらの特に好ましいイソシアネートは、任意に、完全に、又は部分的にウレトジオン、カルバメート、イソシアヌレート、カルボジイミド、アロファネート、及び/又は好ましくはウレタン基で変性されている。


【0014】
また、プレポリマー及び上記イソシアネート及びプレポリマーの混合物が、イソシアネート成分として使用され得る。これらのプレポリマーは、上記イソシアネート、及び以下に記載されるポリエーテル、ポリエステル、又は両方から調製され、14〜35質量%、好ましくは22〜32質量%のNCO含有量を有する。
【0015】
イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)として、少なくとも2個の、イソシアネートに対して反応性がある基、例えば、OH−、SH−及びCH−酸性基を有する全ての化合物を使用することが可能である。イソシアネートに対して反応性がある2〜8個の水素原子を有するポリエーテルオール及び/又はポリエステルオールを使用することが普通である。これらの化合物のOH価は、通常50〜850mgKOH/gの範囲、好ましくは80〜600mgKOH/gの範囲である。50mgKOH/gより低いOH価のポリオールの使用は、特に本明細書に記載されるような、低い架橋フォームにおいて、強い収縮、及び/又は不十分な機械的特性、引き起こす。
【0016】
ポリエーテルオールは、公知の方法、例えば、触媒存在下で、2〜8個、好ましくは2〜6個の結合形態の反応性水素原子を含む少なくとも1種の開始剤分子を添加して、アルキレンオキサイドのアニオン重合によって得られる。触媒として、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、若しくはカリウムエトキシド、又はカリウムイソプロポキシド等のアルカリ金属アルコキシド、又はカチオン重合の場合は、五塩化アンチモン、三フッ化ホウ素エーテル等のルイス酸又は漂白土を触媒として使用することが可能である。
【0017】
アルキレンオキサイドとして、アルキレンラジカル中に2〜4個の炭素原子を有する1種以上の化合物、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、又は2,3−ブチレンオキサイド、それぞれの場合単独、又は混合物の形態のどちらかで、好ましくはエチレンオキサイド、及び/又は1,2−プロピレンオキサイドを使用することが好ましい。
【0018】
可能性のある開始剤分子は、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、シュクロース等の糖誘導体、ソルビトール等のヘキシトール誘導体、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、アニリン、トルイジン、トルエンジアミン、ナフチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’−メチレンジアニリン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びその他の二価、若しくは多価アルコール、又は一官能性若しくは多官能性アミンである。
【0019】
ポリエーテルポリオールはまた、ヒマシ油のような天然油ベースのポリオール、又はアルコキシル化変性天然油又は脂肪酸も含み得る。
【0020】
使用されるポリエステルアルコールは、通常、2〜12の炭素原子を有する多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、又はペンタエリスリトール等と、2〜12固の炭素原子を有する多価カルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の異性体、又はア上記酸の無水物等との縮合によって調製される。これはまた、ジメチルテレフタレート(DMT)、ポリエチレングリコール−テレフタレート(PET)等のその他の原料も含む。
【0021】
ポリエステルの調製において、さらなる出発材料として、疎水性材料の同時使用をすることも可能である。疎水性材料は、非極性有機ラジカルを含み、さらにヒドロキシル基、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1個の反応基も有する水不溶性材料である。疎水性材料の当量は、好ましくは130〜1000g/molの範囲である。例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、又はリノール酸等の脂肪酸、及びヒマシ油、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、ココナッツ油、オリーブ油、又はトール油等の油脂を使用することが可能である。ポリエステルが疎水性材料を含む場合、疎水性材料の比率は、ポリエステルアルコールの総モノマー含有量に基づいて、好ましくは1〜30mol%、特に好ましくは4〜15mol%である。
【0022】
使用されるポリエステルオールは、好ましくは1.5〜2.5、特に好ましくは1.8〜2.4、特に1.9〜2.2の官能価を有する。
【0023】
イソシアネートに反応性である基を有する化合物(b)は、さらに鎖延長剤、及び/又は架橋剤を含む。鎖延長剤及び/又は架橋剤として、特に、二官能性又は三官能性アミン及びアルコール、特にジオール、トリオール、又はその両方が使用され、それぞれの場合、350未満、好ましくは60〜300、特に60〜250の分子量を有する。ここで、二官能性化合物が鎖延長剤と称され、三官能性、又はより高い官能性の化合物が架橋剤と称される。例えば、2〜14個、好ましくは2〜10固の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族ジオール、例えば、エチレングリコール、1,2−、1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−ペンタンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−、1,3−、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びビス(2−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン等、1,2,4−、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール、及びトリメチロールプロパン等のトリオール、並びに開始剤分子としてエチレンオキサイド、及び/又は1,2−プロピレンオキサイド、並びに上述のジオール及び/又はトリオールに基づく低分子量ヒドロキシル含有ポリアルキレンオキサイド等を使用することが可能である。
【0024】
イソシアネートに反応性である基を有する化合物(b)が、2.5以下の官能価、及び220mgKOH/gより大きいヒドロキシル価を有する芳香族ポリエステルポリオール(ポリオール1)(b1)、4以上の官能価、及び400mgKOH/gより大きいヒドロキシル価を有するポリエーテルポリオール(ポリオール2)(b2)、1種以上の低分子量鎖延長剤、及び/又は1種以上の架橋剤、及び/又は1種以上のo−トルエンジアミン開始ポリエーテルポリオール(「TDAポリオール」)(まとめて、ポリオール3)(b3)を含むことが本発明に重要である。なお、本明細書において、ポリオール3というときは、二官能性又は三官能性アミンである場合の鎖延長剤及び/又は架橋剤を含むものとする。
【0025】
本発明による硬質ポリウレタンフォームは、全てのポリオールが、13000mPas(25℃)未満の粘度、好ましくはポリオール1が、5000mPas未満の粘度を有することが好ましく、さらに好ましくはポリオール1〜3の混合物の粘度が5000mPas未満である。
【0026】
本発明による硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール1〜3のポリオール混合物のモル平均OH−官能価が、2.3及び3.3の間である、及び/又は前記ポリオール混合物、及び前記イソシアネート成分のOH、及びNCOのモル平均合計官能価が、2.5及び3.0の間であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明による硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール1〜3のポリオール混合物の芳香族含有量が、13%(ポリオール中のベンゼン単位の質量%に基づいて)より多い(50%より多い芳香族ベースのポリオールに相当する)ことがさらに好ましい。
【0028】
鎖延長剤は、平均で少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、特に好ましくは少なくとも50%、特に少なくとも60%の第二級OH基を有する(総OH基に基づいて)。鎖延長剤は、個々の化合物の混合物であり得る。鎖延長剤は、好ましくはジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及び/又は2,3−ブタンジオールを、単独あるいは任意に互いに、又は他の鎖延長剤と混合して含む。従って、特に好ましい実施形態において、鎖延長剤として、ジプロピレングリコールが、第二の鎖延長剤、例えば、2,3−ブタンジオール、モノ−プロピレンングリコール又はジエチレングリコールと一緒に使用される。
【0029】
さらなる実施形態において、イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)は、架橋剤を含む。架橋剤として、1,2,4−、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール、及び/又はトリメチロールプロパンを使用することが好ましい。架橋剤としてグリセロールを使用することが好ましい。
【0030】
成分(b1)の比率は、成分(b)の総質量に基づいて、好ましくは45〜70質量%、特に好ましくは46〜65質量%、特に47〜60質量%である。
【0031】
成分(b2)の比率は、成分(b)の総質量に基づいて、好ましくは20〜40質量%、特に好ましくは27〜38質量%である。
【0032】
成分(b3)の比率は、成分(b)の総質量に基づいて、好ましくは15〜25質量%、特に好ましくは15〜20質量%である。
【0033】
イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)におけるポリエーテルオール(b1)、(b2)及び(b3)の比率は、イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも95質量%、特に好ましくは少なくとも98質量%、特に100質量%である。
【0034】
成分(b)の合計官能価は、好ましくは2.3及び3.3の間、特に好ましくは2.5及び2.8の間である。成分(b)の平均OH価は、好ましくは250mgKOH/gより大きく、特に好ましくは250〜500mgKOH/gの範囲、特に300〜450mgKOH/gの範囲である。
【0035】
イソシアネートプレポリマーが、イソシアネート(a)として使用される場合、イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)の含有量は、イソシアネートプレポリマーを調製するために使用される、イソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)を含めて計算される。
【0036】
発泡剤(c)として、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFCO)が使用される。その化合物は、(Z)若しくは(E)立体配置で、又は(Z)/(E)混合物として使用され得る。
【0037】
HFCOは、商標Solstice(登録商標)のもと、Honeywell International Inc.から、又はAFA−L1としてArkema SAから市販されている。
【0038】
さらなる物理的又は化学的な補助の発泡剤が使用され得る。好ましくは、HFCOは、発泡剤c)の総量の90mol%、さらに好ましくは95mol%の量で使用される。特に好ましくは、発泡剤c)はHFCOからなる。
【0039】
ポリオール及び他の添加剤が、例えば、総ポリオール質量の0.2質量%等の、一定量の残留水を含み得ることはよく知られている。これは、ほとんど防止、又は除去することはできない。本発明によれば、この潜在的な残留量の水は、発泡剤c)として考慮されない。
【0040】
発泡剤(c)は、成分(a)〜(f)の反応によって形成される硬質ポリウレタンフォームの密度が、補強材を考慮せずに、好ましくは75〜200g/lの範囲、さらに好ましくは80〜150g/lの範囲、もっとも好ましくは80〜120g/lの範囲であるような量で使用される。
【0041】
触媒(d)として、イソシアネート−ポリオール反応を加速する全ての化合物を使用することが可能である。そのような化合物は公知であり、例えば、「Kunststoffhandbuch,volume 7,Polyurethanes」, Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.4.1に記載されている。これらはアミンベースの触媒、及び有機金属化合物に基づく触媒を含む。
【0042】
有機金属化合物に基づく触媒として、例えば酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、及びラウリン酸スズ(II)等の有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば二酢酸ジブチルスズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ、及び二酢酸ジオクチルスズ等の有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩等の、有機スズ化合物、並びに例えばネオデカン酸ビスマス(III)、2−エチルヘキサン酸ビスマス、及びオクタン酸ビスマス等のビスマスカルボン酸塩、又は例えば酢酸カリウム若しくはギ酸カリウム等のカルボン酸のアルカリ金属塩等を使用することが可能である。
【0043】
触媒(d)として、少なくとも1種の第三級アミンを含む混合物を使用することが好ましい。これらの第三級アミンは、通常、例えばOH、NH、又はNH基等のイソシアネートに対して反応性である基も有し得る化合物である。最も頻繁に使用される触媒には、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N,N,N−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N−トリエチルアミノエトキシエタノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルイミダゾール、N−エチルイミダゾール、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、ジメチルアミノプロピルアミン、N−エチルモルフォリン、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロノネン等がある。
【0044】
用語、泡安定剤e)は、泡形成の期間で、均一なセル構造の形成を促進する材料を称する。言及され得る例として、ジロキサン−オキシアルキレン共重合体、及び他の有機ポリシロキサン等のシリコーン含有泡安定剤が挙げられる。脂肪族アルコール、オキソアルコール、脂肪族アミン、アルキルフェノール、ジアルキルフェノール、アルキルクレゾール、アルキルレゾルシノール、ナフトール、アルキルナフトール、ナフチルアミン、アニリン、アルキルアニリン、トルイジン、ビスフェノールA、アルキル化ビスフェノールA、ポリビニルアルコールのアルコキシ化生成物、並びにホルムアルデヒド及びアルキルフェノール、ホルムアルデヒド及びジアルキルフェノール、ホルムアルデヒド及びアルキルクレゾール、ホルムアルデヒド及びアルキルレゾルシノール、ホルムアルデヒド及びアニリン、ホルムアルデヒド及びトルイジン、ホルムアルデヒド及びナフトール、ホルムアルデヒド及びアルキルナフトール、並びにホルムアルデヒド及びビスフェノールAの縮合生成物のさらなるアルコキシ化生成物。これらの泡安定剤の2種以上の混合物もまた使用され得る。
【0045】
泡安定剤は、好ましくは、成分(b)〜(f)の総質量に基づいて、0.5〜4質量%、特に好ましくは1〜3質量%の量で使用される。さらなる添加剤(f)として、難燃剤、可塑剤、さらなる充填剤、及び酸化防止剤等の他の添加剤を使用することが可能である。ポリオール成分b)〜f)の粘度を具体的に修正する、又は成分b)〜f)の間の相溶性を改善する、他の添加剤が使用され得る。可能性のある添加剤の別の種類は、パーフルオロ化されたアルカン、アルケン、モルフォリン、フラン又はアルキルアミンのようなパーフルオロ化合物である。これらの添加剤は、一般に、フォームのセルの大きさを縮小するために使用される。
【0046】
難燃剤として、先行技術から公知の難燃剤が、一般に使用され得る。適切な難燃剤は、例えば、臭素化エーテル(IxolB251)、ジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコール、及びPHT−4−ジオール等の臭素化アルコール、並びにトリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェート(TCPP)、トリス(1,3−ジクロロイソプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、及びテトラキス(2−クロロエチル)エチレンジホスフェート等の塩素化ホスフェート、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
上述のハロゲン−置換ホスフェートは別として、赤リン、赤リンを含む製剤、膨張性黒鉛、酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、酸化ヒ素、ポリリン酸アンモニウム、及び硫酸カルシウム等の無機難燃剤、又はメラミン等のシアヌル酸誘導体、又はポリリン酸アンモニウム及びメラミン等の少なくとも2種の難燃剤の混合物を使用することも可能である。
【0048】
さらなる液体ハロゲンフリー難燃剤として、ジエチルエタンホスホネート(DEEP)、トリエチルホスフェート(TEP)、ジメチルプロピルホスホネート(DMPP)、ジフェニルクレジルホスフェート(DPC)等を使用することが可能である。
【0049】
本発明の目的のため、難燃剤は、好ましくは成分(b)〜(f)の総質量に基づいて、0〜25%の量で使用される。
【0050】
可塑剤として、例として、多塩基性の、好ましくは二塩基性のカルボン酸と一価アルコールとのエステルが言及され得る。そのようなエステルの酸成分は、例えば、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、クエン酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸及び/又はヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、無水マレイン酸、フマル酸、及び/又は任意にモノマー脂肪酸との混合物中のオレイン酸等のダイマー及び/又はトリマー脂肪酸から導かれ得る。そのようなエステルのアルコール成分は、例えば、分岐した、及び/又は非分岐の1〜20固の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンチルアルコールの種々の異性体、ヘキシルアルコールの種々の異性体、オクチルアルコールの種々の異性体(例えば、2−エチルヘキサノール)、ノニルアルコールの種々の異性体、デシルアルコールの種々の異性体、ラウリルアルコールの種々の異性体、ミリスチルアルコールの種々の異性体、セチルアルコールの種々の異性体、ステアリルアルコールの種々の異性体、及び/又は天然に存在する、若しくは天然に存在するカルボン酸の水素化によって得られ得る脂肪若しくはワックスアルコールの種々の異性体から導かれ得る。可能性のあるアルコール成分はまた、脂環式、及び/又は芳香族ヒドロキシ化合物、例えば、シクロヘキサノール及びその同族体、フェノール、クレゾール、チモール、カルバクロール、ベンジルアルコール及び/又はフェニルエタノールを含む。単塩基性カルボン酸とテキサノールエステルアルコール等の二価アルコールのエステル、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)又は2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート等;オリゴアルキレングリコール及びアルキルカルボン酸のジエステル、例えば、トリエチレングリコールジヘキサノエート、又はテトラエチレングリコールジヘプタノエート、及び類似化合物等もまた、可塑剤として使用され得る。
【0051】
さらなる可能性のある可塑剤は、上述のアルコールとリン酸のエステルである。ハロゲン化アルコールのリン酸エステル、例えばトリクロロエチルホスフェート等も、任意に使用され得る。後者の場合、難燃化効果が可塑化効果と共に達成され得る。当然に、上述のアルコール及びカルボン酸の混合エステルを使用することも可能である。
【0052】
可塑剤は、高分子可塑剤、例えばアジピン酸、セバシン酸、及び/又はフタル酸のポリエステル等であり得る。
【0053】
また、フェノールのアルキルスルホニルエステル、例えばフェニルパラフィンスルホネート等、及び芳香族スルホンアミド、例えばエチルトルエンスルホンアミド等も、可塑剤として使用され得る。ポリエーテル、例えばトリエチレングリコールジメチルエーテル等も、可塑剤として使用され得る。
【0054】
可塑剤は、好ましくは成分b)〜e)の総質量に基づいて、0.1〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%の量で使用される。可塑剤の添加は、特に低温で、硬質ポリウレタンフォームの機械的特性が、さらに改善することを可能にする。
【0055】
さらなる充填剤、特に補強充填剤は、公知であり、慣習の有機及び無機充填剤、補強材料等である。言及され得る具体的な例は、シリカ材料等の無機充填剤、例えばアンチゴライト、蛇紋石、ホルンブレンド、角閃石、クリソライト、タルク等の層状ケイ酸塩;カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物、チョーク、バライト等の金属塩、及び硫化カドミウム、硫化亜鉛等の無機顔料、並びにガラス等が挙げられる。カオリン(チャイナクレイ)、ケイ酸アルミニウム、及び硫酸バリウムとケイ酸アルミニウムの共沈物、並びに珪灰石、金属繊維、及び特に寸法によっては任意に被覆され得る種々の長さのガラス繊維等の天然及び合成の繊維状鉱物を使用することが好ましい。中空ガラスミクロスフェアを使用することも可能である。可能性のある有機充填剤は、例えば、炭素、メラミン、ロジン、シクロペンタジエニルレジン、及びグラフトポリマー、並びにセルロース繊維、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、及び芳香族及び/又は脂肪族ジカルボン酸エステルに基づくポリエステル繊維、及び特に炭素繊維が挙げられる。
【0056】
無機及び有機充填剤は、単独で、又は混合物として使用され得、有利には、反応混合物中に、成分(a)〜(f)の総質量に基づいて、0.5〜30質量%、好ましくは1〜15質量%の量で組み込まれる。
【0057】
補強材として、硬質ポリウレタンフォームにさらに大きな機械的安定性を与える全ての材料を使用することが可能である。そのような補強材は、例えば、ガラス繊維、ガラス繊維マット、又は炭素繊維マット、好ましくはガラス繊維マット、例えばUnifilio(登録商標)U801又はU809(Owens Corning Vetrotex製)が挙げられる。補強材の比率は、好ましくは、補強材を含む硬質ポリウレタンフォームの総質量に基づいて5〜15質量%である。
【0058】
本発明はさらに、本発明による硬質ポリウレタンフォームを含む、液化天然ガスタンク用、特に船上の液化天然ガスタンク用の断熱材を提供する。
【0059】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、好ましくはベルト上で連続的に製造される。この目的のため、成分(b)〜(e)及び任意に(f)は、好ましくは混合されてポリオール成分を形成する。続いて、これらが、イソシアネート成分(a)と、好ましくは低圧混合装置、10MPa(100bar)未満の低減された圧力で高圧混合装置、又は高圧機械で混合される。別の方法として、成分(a)〜(d)及び任意に(e)がそれぞれ、個々に混合装置中へ導入され得る。この方法で得られた反応混合物は、続いて、補強材、好ましくはガラス繊維マット、好ましくは複数(例えば、4〜10個、好ましくは6、7又は8個)のドラムから連続的にベルト上へロール出しされ、そこで適切な数の層を形成するガラス繊維マット上へ置かれる。層の量は、必要なフォーム強化の程度、及び製造されるフォームの高さに応じて、自由に選択され得る。反応混合物は、繊維を濡らし、層に速やかに浸透しなければならない。この層の浸透は、反応混合物が泡を作り始める前(クリーム時間(cream time))に完了され、最終的なフォームにおけるマットの均一分布を確保しなければならない。その後、得られたフォームは、好ましくはベルト上で、損傷なしで切断され得るような程度に硬化される。これは、上昇された温度で、例えば、オーブンを通過する間に実行され得る。その後、得られたフォーム片は、好ましくは、完全な機械的強度を達成するためにさらに保存される。
【0060】
得られた硬質ポリウレタンフォームは、続いて、断熱パネルを製造するために。さらに加工される。この目的のため、得られた本発明の硬質ポリウレタンフォーム片は、ある大きさに切断され、好ましくは合板シート及び樹脂含浸ガラス繊維マットへ接着接合される。その後、これらのポリウレタンフォーム要素は、完成品の断熱要素を製造するために、鉄板、ネジ及び糸等のさらなる補助部品が設けられ、その後、液化天然ガスタンクの断熱バリアの製造に直接使用される。そのような断熱パネルの製造の詳細な記載は、例えば、Finetec及びKangrim(韓国)の会社のホームページで見つけられる。
【0061】
イソシアネート(a)及びイソシアネートに対して反応性である基を有する化合物(b)、物理的発泡剤(c)、触媒(d)、泡安定剤(e)及び任意にさらなる添加剤(f)は、好ましくはイソシアネートインデックスが100〜400、好ましくは100〜200、特に好ましくは110〜150の範囲となるような量で反応される。
【0062】
ここで、イソシアネートインデックスは、本発明の目的のため、イソシアネート基のイソシアネートに反応性である基に対する化学量論比に100を乗じたものである。イソシアネートに反応性である基は、この場合、反応混合物に含まれる全てのイソシアネート反応性基であり、化学的発泡剤を含むが、イソシアネート基それ自体は含まない。
【0063】
補強材へ速やかに浸透し、したがって結果として得られる硬質ポリウレタンフォーム中の補強材の均一分布を促進することは、本発明による反応混合物にとって特に有利である。本発明による反応混合物の長いクリーム時間は、短い反応時間と組み合わさって、同様に有利である。本発明の組成a)〜e)の組合せは、驚くべきことに、他のポリオールとの組合せb)又は他の発泡剤c)では達成できない速い浸透時間を可能とする。
【0064】
本発明による硬質ポリウレタンフォームは、好ましくは断熱の目的で使用される。本発明の硬質ポリウレタンフォームは、特に好ましくは液化天然ガスタンク、特に船(LNGキャリア)上の液化天然ガスタンクの断熱のために使用される。それらは、機械的に安定であり、低い熱伝導率を有し、例えば、穴又は亀裂がない等の優れたフォーム特性を示し、全て低温下でも、せん断強度、圧縮強度等の優れた機械的特性、優れたヤング係数を有し、且つ補強材の層の均一分布を有する。特定の組成(a)/(b)及び発泡剤としてのHCFOは、低減された収縮、低いラムダ値、長いクリーム時間及び速い浸透時間を導く。
【0065】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲、本明細書の記載、及び実施例に記載される。言うまでもなく、本発明の主題の上記特徴、及び以下に説明される特徴も、それぞれの場合に示される組合せにおいてだけでなく、本発明の範囲を逸脱しない、その他の組合せにおいても使用され得る。
【実施例】
【0066】
以下の実施例により、本発明の有利な点を説明する。
【0067】
実施例1〜4のように本発明による硬質ポリウレタンフォーム、及び比較例C1〜C7のようにフォームを製造するため、表1に示したように、使用するポリオールを触媒、安定剤及び発泡剤と撹拌し、続いて、イソシアネートと混合し、発泡させ硬質ポリウレタンフォームを得た。ゲル化時間は、それぞれの場合、触媒の量を適応させることで360秒に設定した。100g/lの一定のフォーム密度を発泡剤によって設定した。イソシアネートインデックスは、それぞれの場合130であった。実施例は本発明によるポリオール混合物の、フォームの特性における効果を明らかにすることを意図しており、実際的な理由で、フォームは、補強材なしで製造した。
【0068】
寸法225mm×225mm×225mmを有する硬質ポリウレタンフォームを金型で製造した。硬化後、熱伝導率を測定するため、試験片を、この立方体から切り出した。
【0069】
実施例1〜4、及び比較例C1〜C7のように硬質ポリウレタンフォームを製造するための反応混合物の組成、並びにそれらの熱伝導率を、それぞれ表1及び2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
断熱は、23mW/mK未満のエージングしたラムダ値で良好とする。
【0073】
収縮に規定:
強い:2.5%収縮以上
少ない:1.0%収縮以下
【0074】
収縮の測定:フォームを735mlカップ中に作製し、24時間後、カップに水を、いっぱいになるまで注入する。水の注入の前後でカップの質量を測定し、その差が水の体積である。これを735で除した値が収縮のパーセンテージである。
【0075】
浸透時間の測定:
ガラス繊維マット中への反応混合物の浸透時間を、金型の底に7枚のガラス繊維マット(20×20cm、Unifilio(登録商標)U801(SaintGobain Vetrotex製)を置き、その上に反応混合物を注ぐことによって測定した。この目的のため、7枚のガラス繊維マットの最上部に、5点の印を付けた。報告した浸透時間は、反応混合物の塗布後に、印を付けた5点の少なくとも4点が再び見えるようになるのに必要な時間とした。この試験片の硬化後、ガラス繊維マットに垂直に切断し、隣接したガラス繊維マット間の距離を測定した。ガラス繊維マットの平均間隔及び標準偏差を計算した。マットの均一分布の場合、標準偏差が、非常に小さいものである。
【0076】
ラムダ値の測定:ラムダ値はDIN EN 13165に従って測定した。
【0077】
粘度は、それぞれの場合、25℃での粘度について表す。
【0078】
以下の出発材料を使用した:
ポリエステルポリオール1:無水フタル酸及びジエチレングリコールに基づくポリエステルポリオール、官能価=2.0、OH価=315mgKOH/g、粘度=2500mPas
ポリエステルポリオール2:無水フタル酸及びジエチレングリコールに基づくポリエステルエーテルポリオール、官能価=2.0、OH価=240mgKOH/g、粘度=3000mPas
Succh/Gly:シュクロース及びグリセリンに基づくポリエーテルポリオール、官能価=4.3、OH価=490mgKOH/g、粘度=8400mPas
TDAポリオール(1):官能価=3.8、OH価=160mgKOH/g、粘度=650
TDAポリオール(2):官能価=3.8、OH価=390mgKOH/g、粘度=12800
PPG1:ポリプロピレングリコール、官能価=2.0、OH価=100mgKOH/g、粘度=150
PPG2:ポリプロピレングリコール、官能価=2.0、OH価=250mgKOH/g、粘度=70
イソシアネート:高分子メチレンジ(フェニルジイソシアネート)(PMDI)、粘度=170〜250mPas、NCO含有量;30.5及び32.5質量%の間。
【0079】
安定剤:変性シリコーン含有泡安定剤
触媒:ジメチルシクロヘキシルアミン、PPG1中の10質量%濃度の溶液
365mfc:1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、発泡剤
245fa :1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、発泡剤
表1は、本発明による硬質ポリウレタンフォームが、低いラムダ値、及び少ない収縮、及び比較例(表2)と比較して、より速い浸透時間を有することを示す。