特許第6377849号(P6377849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6377849荷電粒子線装置および荷電粒子線装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377849
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置および荷電粒子線装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20180813BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20180813BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H01J37/22 502H
   H01J37/22 502A
   H01J37/28 B
   H01J37/20 D
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-523049(P2017-523049)
(86)(22)【出願日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】JP2015066875
(87)【国際公開番号】WO2016199271
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2017年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛司
(72)【発明者】
【氏名】唐鎌 章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 典夫
【審査官】 道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−171936(JP,A)
【文献】 特開2011−65888(JP,A)
【文献】 特開2003−203594(JP,A)
【文献】 特開2014−137974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/20
H01J 37/24
H01J 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上の試料へ荷電粒子線を照射する電子線源と、
前記ステージを駆動するステージ駆動部と、
前記試料から放出される荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器からの信号を画像データとして、第1画像転送プロトコルを用いて転送する第1画像転送部と、
前記検出器からの信号を画像データとして、第2画像転送プロトコルを用いて転送する第2画像転送部と、
前記ステージの状態に基づいて、前記第1画像転送部と前記第2画像転送部を切り換えて使用する切換部と、
前記第1画像転送部または前記第2画像転送部のいずれかから通信ネットワークを介して受信する画像データを表示する端末と、
を備える荷電粒子線装置。
【請求項2】
前記第1画像転送プロトコルは前記第2画像転送プロトコルよりも信頼性の高いプロトコルであり、
前記切換部は、前記ステージの状態が停止中であると判定した場合、前記第1画像転送部を選択する、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項3】
前記第2画像転送プロトコルは前記第1画像転送プロトコルよりも転送速度の速いプロトコルであり、
前記切換部は、前記ステージの状態が移動中であると判定した場合、前記第2画像転送部を選択する、
請求項2に記載の荷電粒子線装置。
【請求項4】
前記切換部は、スキャンモードのスキャン速度が所定値以上の場合は、前記ステージの状態が停止中であっても、前記第2画像転送部を選択する、
請求項3に記載の荷電粒子線装置。
【請求項5】
前記切換部は、前記第2画像転送部を選択している間に、前記端末からスキャン停止が指示された場合、前記第2画像転送部から前記第1画像転送部に切り換える、
請求項4に記載の荷電粒子線装置。
【請求項6】
前記ステージの状態は、前記ステージの移動速度から判定される、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項7】
前記ステージの状態は、前記ステージ駆動部へ入力されるステージ駆動指令に基づいて判定される、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項8】
前記ステージの状態は、前記ステージ駆動部へ入力される前記ステージ駆動指令としての加速指令または減速指令の有無と、前記ステージの加速度とに基づいて判定される、
請求項7に記載の荷電粒子線装置。
【請求項9】
前記ステージの状態は、前記端末からの指示に基づいて判定される、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項10】
前記ステージの状態は、前記ステージ駆動部へ入力されるステージ駆動指令と、前記端末からの指示とに基づいて判定される、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項11】
前記ステージの状態が停止中である場合は、前記端末から選択されたスキャンモードで動作し、
前記ステージの状態が移動中である場合は、予め用意されている所定のスキャンモードで動作する、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項12】
前記所定のスキャンモードは、前記端末に表示される画像が観察者にとって動画として見える程度の間隔で更新されるモードである、
請求項11に記載の荷電粒子線装置。
【請求項13】
前記第1画像転送プロトコルは、コネクション型のプロトコルである、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項14】
前記第2画像転送プロトコルは、コネクションレス型のプロトコルである、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項15】
ステージ上の試料へ荷電粒子線を照射し、当該試料から放出される荷電粒子を検出して画像を表示する荷電粒子線装置の制御方法であって、
切換部が、ステージの状態に基づいて、第1画像転送部と第2画像転送部を切り替え、
検出器から出力された画像データが、前記第1画像転送部または前記第2画像転送部のうち選択された画像転送部から通信ネットワークを介して端末へ転送される、
荷電粒子線装置の制御方法。
【請求項16】
前記第1画像転送部の使用する第1画像転送プロトコルは、前記第2画像転送部の使用する第2画像転送プロトコルよりも信頼性の高いプロトコルであり、
前記ステージの状態が停止中であると判定された場合は、前記第1画像転送部が選択される、
請求項15に記載の荷電粒子線装置の制御方法。
【請求項17】
前記第2画像転送部の使用する第2画像転送プロトコルは、前記第1画像転送プロトコルよりも転送速度の速いプロトコルであり、
前記ステージの状態が移動中であると判定された場合は、前記第2画像転送部が選択される、
請求項16に記載の荷電粒子線装置の制御方法。
【請求項18】
スキャンモードの更新頻度が所定値以上の場合は、前記ステージの状態が停止中であっても、前記第2画像転送部を選択する、
請求項17に記載の荷電粒子線装置の制御方法。
【請求項19】
前記第2画像転送部を選択している間に、前記端末からスキャン停止が指示された場合は、前記第2画像転送部から前記第1画像転送部に切り換える、
請求項18に記載の荷電粒子線装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置および荷電粒子線装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高倍率の画像が得られる走査型電子顕微鏡 (Scanning Electron Microscope:SEM)などの荷電粒子線装置は、集束させた電子線で試料を走査し、それによって試料から出てきた2次電子を検出する。
【0003】
検出された2次電子は、映像信号として、電子線の2次元走査に同期したディスプレイなどに供給される。従来の荷電粒子線装置を用いれば、高い倍率で試料の表面構造の状態を観察できるため、広い産業分野で使用されている。
【0004】
荷電粒子線装置で像を観察する場合、最初にユーザは、パーソナルコンピュータなどの端末から装置本体に対して、装置本体を動作させるためのコマンドを送信する。荷電粒子線装置の装置本体は、端末からのコマンドを受け取る。装置本体は、受領したコマンドの内容に従って、試料の載ったステージを移動させたり、ステージの姿勢を変化させたり、電子線源から荷電粒子線を照射するスキャンモードを切り換えたりしながら、試料の像(拡大像)を検出する。
【0005】
装置本体は、試料の拡大像を映像信号等の画像データに変換し、その画像データを装置本体からユーザの端末に向けて通信ネットワーク回線を介して転送する。ユーザは、端末画面に像を表示して観察する。
【0006】
装置本体とユーザの端末とを接続する通信ネットワーク回線としては、いわゆるイーサネット(登録商標)回線が使用される。イーサネット(登録商標)を用いる通信プロトコルとしては、TCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)が知られている。
【0007】
TCPは、通信速度よりも信頼性を重視した転送方式である。TCPでは、例えば、何らかの障害が発生してパケット欠落が生じた場合でも、欠落したパケットを再転送するなどの、信頼性を高めるための仕組みが設けられている。TCPは、通信の信頼性が高い一方で、プロトコル処理のオーバーヘッドが大きいため通信速度は比較的低い。
【0008】
UDPは、通信の信頼性よりも通信速度を重視した転送方式である。UDPでは、例えば、パケットが欠落した場合、欠落したパケットを再転送しない。従って、UDPでは、プロトコル処理が単純でオーバーヘッドが小さいため、高速通信が可能である。
【0009】
特許文献1では、通信ネットワーク回線の容量が変化する電子顕微鏡において、転送方式を切り替える。これにより、特許文献1では、回線容量が大きい場合でも小さい場合でも、画像の更新レートを早くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−171936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明者が、通信の耐障害性を高めつつ、ステージ移動に対する追従性も向上させる画像転送について鋭意検討した結果、次の知見を得るに至った。
【0012】
イーサネット(登録商標)を用いた画像転送を行う荷電粒子線装置では、通信の耐障害性を高めるため、信頼性の高いTCPを用いるのが一般的である。しかし、TCPはプロトコル処理のオーバーヘッドが大きいため、拡大画像の転送に必要な転送速度を得るのが難しい。
【0013】
もしも必要な転送速度が得られない場合は、例えば、試料ステージの移動に対して端末での画像表示が十分に追従することができず、荷電粒子線装置の信頼性や使い勝手が低下する。より高速な規格に適合したハードウェアを用いれば、転送速度を高めることもできるが、高速な規格に適合したハードウェアは高価であるため、荷電粒子線装置のコストが増大する。
【0014】
TCPの代わりにUDPを用いれば、高い転送速度を得ることができるが、通信の耐障害性が低いため、操作性が低下するおそれがある。例えば、試料を精密に調べるべくスキャン速度を非常に遅く設定し、1枚の画像をゆっくりと、数分間かけてスキャンする場合を検討する。この場合、もしもユーザの端末で画像を表示している間に何らかの通信障害が発生して一部のパケットが欠落したとすると、完全な画像を得るために新たに撮影し直さなければならない。UDPでは、欠落したパケットを再送信せず、欠落したパケットに含まれる画像データは端末画面に表示できないためである。
【0015】
本発明の目的は、ステージ移動に対する追従性と、通信の耐障害性を向上させることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ステージの状態に応じて、複数の画像転送部を切換使用することに関する。本発明の一つの観点に従う荷電粒子線装置は、ステージ上の試料へ荷電粒子線を照射する電子線源と、前記ステージを駆動するステージ駆動部と、前記試料から放出される荷電粒子を検出する検出器と、前記検出器からの信号を画像データとして、第1画像転送プロトコルを用いて転送する第1画像転送部と、前記検出器からの信号を画像データとして、第2画像転送プロトコルを用いて転送する第2画像転送部と、前記ステージの状態に基づいて、前記第1画像転送部と前記第2画像転送部を切り換えて使用する切換部と、前記第1画像転送部または前記第2画像転送部のいずれかから通信ネットワークを介して受信する画像データを表示する端末と、を備える。
【0017】
第1画像転送プロトコルは第2画像転送プロトコルよりも信頼性の高いプロトコルであり、切換部は、ステージの状態が停止中であると判定した場合、第1画像転送部を選択してもよい。
【0018】
第2画像転送プロトコルは第1画像転送プロトコルよりも転送速度の速いプロトコルであり、切換部は、ステージの状態が移動中であると判定した場合、第2画像転送部を選択してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ステージの状態に基づいて第1画像転送部と第2画像転送部を切り換えて使用するため、第1画像転送プロトコルの特性と第2画像転送プロトコルの特性とを活かして画像を転送することができる。
【0020】
ステージが停止中に、信頼性の高い第1画像転送プロトコルを用いる第1画像転送部を選択すれば、スキャン速度の遅い精密な画像を高い信頼性で操作端末へ転送することができる。ステージ移動中に、転送速度の速い第2画像転送プロトコルを用いる第2画像転送部を選択すれば、ステージの移動に追従して画像を操作端末へ転送できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施例に係る荷電粒子線装置の全体構成図である。
図2】ステージ状態を判定する処理のフローチャートである。
図3】画像転送方式を切り換える処理のフローチャートである。
図4】スキャンモードを選択する処理のフローチャートである。
図5】第2実施例に係る荷電粒子線装置において、ステージ状態を判定する処理のフローチャートである。
図6】第3実施例に係る荷電粒子線装置において、画像転送方式を切り換える処理のフローチャートである。
図7】第4実施例に係る荷電粒子線装置の全体構成図である。
図8】ステージ状態判定処理のフローチャートである。
図9】第5実施例に係る荷電粒子線装置の全体構成図である。
図10】ステージ状態を判定する処理のフローチャートである。
図11】第6実施例に係る荷電粒子線装置の全体構成図である。
図12】ステージ状態判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の荷電粒子線装置1は、以下に詳述する通り、信頼性優先の画像転送方式(例えばTCP)を用いた画像転送を行う第1画像転送部20と、速度優先の画像転送方式(例えばUDP)を用いた画像転送を行う第2画像転送部21とを備える。さらに、荷電粒子線装置1は、予め設定される所定条件に従って画像転送部20,21を切り換える切換部23を有する。
【0023】
切換部23は、ステージ13の状態を判定し、その判定結果に基づいて第1画像転送部20または第2画像転送部21のいずれか一つを選択する。さらに、切換部23は、スキャンモードの更新頻度(スキャン速度)やスキャン制御指令を考慮して、画像転送部20,21を切り換えることもできる。
【0024】
このように構成される本実施形態によれば、第1画像転送部20を選択することで画像転送時の耐障害性を高くでき、かつ、第2画像転送部21を選択することでステージ13の移動に対する追従性を向上できる。この結果、本実施形態では、高価なハードウェアを用いずに比較的低コストで、信頼性と使い勝手を向上できる。
【実施例1】
【0025】
図1図4を用いて第1実施例を説明する。まず、図1を用いて荷電粒子線装置1の全体構成を説明する。
【0026】
荷電粒子線装置1は、例えば、装置本体10と、クライアント用パーソナルコンピュータ50とから構成されており、装置本体1とクライアント用パーソナルコンピュータ50は、例えばイーサネット(登録商標)のような通信ネットワーク回線30により接続されている。
【0027】
クライアント用パーソナルコンピュータ50は、装置本体10を操作する端末であり、「操作端末」の一例である。クライアント用パーソナルコンピュータ50は、装置本体10の隣に設置してもよいし、あるいは装置本体10から離れた場所に設置してもよい。以下、パーソナルコンピュータを「PC」と略記する。先にクライアントPC50の構成を説明する。
【0028】
クライアントPC50は、例えば、通信インターフェース51、PC本体52、情報入力部53、情報出力部54、外部記憶装置55を備えている。
【0029】
通信インターフェース51は、通信ネットワーク回線30を介して通信するための回路である。PC本体52は、例えば、マイクロプロセッサ、キャッシュメモリ、主記憶、入出力インターフェースなどを含むコンピュータ装置である。
【0030】
情報入力部53は、装置本体10へ指示等を与えるための装置である。情報入力部53は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス、トラックボール、音声入力装置などから構成することができる。情報出力部54は、装置本体10から受領した画像データを出力するための装置である。情報出力部54は、例えば、ディスプレイ、プリンタなどから構成することができる。
【0031】
外部記憶装置55は、装置本体10で撮影した画像データを保存するための装置であり、例えばハードディスクドライブやフラッシュメモリデバイスから構成される。
【0032】
装置本体10の構成を説明する。装置本体10は、例えば、電子銃11、鏡体12、ステージ13、ステージ駆動部14、制御部15、検出器16、ステージ速度測定器17、第1画像転送部20、第2画像転送部21、通信インターフェース22、画像転送方式切換部23、スキャンモード切換部24を含んで構成されている。
【0033】
図1に示す構成には、ハードウェアとして実現される装置と、ソフトウェアとして実現される機能とが含まれている。例えば、電子銃11、鏡体12、ステージ13、ステージ駆動部14、検出器16、ステージ速度測定器17はハードウェアである。これに対し、例えば、第1画像転送部20、第2画像転送部21、画像転送方式切換部23、スキャンモード切換部24は、主にソフトウェアで実現される機能である。制御部15や通信インターフェース22は、ハードウェアとソフトウェアの協働で実現される。ただし以上の説明は例示であり、ハードウェアとして実現される装置をソフトウェアとして実現したり、逆に、ソフトウェアで実現する機能をハードウェア回路で実現してもよい。
【0034】
電子銃11は、「電子線源」の一例であり、ステージ13に載った試料SAMPへ向けて、「荷電粒子線」の一例としての電子ビームを照射する。鏡体12は、電子ビームの照射方向や焦点などを制御する。
【0035】
ステージ13は、各種の試料を載せるための可動式の台である。例えば、ステージ13は、X方向、Y方向に所定量ずつ移動することができ、さらに、XY平面に対して傾動することもできる。ステージ駆動部14は、ステージ13の移動(姿勢変化を含む)を制御する装置である。
【0036】
制御部15は、装置本体10の全体動作を制御するための装置である。制御部15は、クライアントPC50からの指示(コマンド)に従って、スキャンモードを変更したり、ステージ13の移動を制御したりする。制御部15は、例えば、マイクロプロセッサ、メモリ、入出力回路、補助記憶装置(いずれも不図示)を備えて構成される。
【0037】
検出器16は、電子ビームが照射されることで試料から放出される2次電子や反射電子を検出するための装置である。ステージ速度測定器17は、ステージ13の移動速度を測定する装置である。なお、図中では「速度測定器17」と略記している。
【0038】
第1画像転送部20は、「第1画像転送プロトコル」の一例であるTCPを用いて、画像データを転送する。第1画像転送部20は、検出器16の検出信号から得られる画像データを、通信インターフェース22および通信ネットワーク回線30等を介して、クライアントPC50へ転送する。TCPは、コネクション型プロトコルである。
【0039】
第2画像転送部21は、「第2画像転送プロトコル」の一例であるUDPを用いて、画像データを転送する。第2画像転送部21は、検出器16の検出信号から得られる画像データを、通信インターフェース22および通信ネットワーク回線30等を介して、クライアントPC50へ転送する。UDPは、コネクションレス型プロトコルである。
【0040】
ここで、コネクション型プロトコルは、通信開始前に通信相手との間に通信経路を確立し、通信相手にデータを送信するたびに通信相手から確認応答を受領する。従って、コネクション型プロトコルであるTCPは、コネクションレス型プロトコルであるUDPよりも信頼性は高い。
【0041】
これに対し、コネクションレス型プロトコルは、通信開始前に通信相手との間に通信経路を確立せず、通信相手に向けて一方的にデータを送信する。コネクションレス型プロトコルでは、通信相手からの確認応答を受領しない。従って、コネクションレス型プロトコルであるUDPは、コネクション型プロトコルであるTCPに比べて、オーバーヘッドが少なく、結果的に通信速度を速くすることができる。
【0042】
倍率の高い画像データや、スキャン速度の遅い画像データのように、通信一回あたりのデータ量が大きい画像データは、TCPを使って送信するのが好ましい。TCPは、一部のパケットが何らかの障害で失われた場合でも、その消失したパケット(欠落したパケット)だけを再送信できるためである。これに対しもしも、一回あたりのデータ量の大きい通信をUDPを用いて行う場合、通信障害などで一部のパケットが消失すると、データ全体を再送信する必要がある。UDPでは、消失したパケットだけを再送信することはできないためである。従って、UDPは、一回あたりのデータ量が比較的小さい画像データを短時間で送信するのに適している。
【0043】
通信インターフェース22は、通信ネットワーク回線30を介して通信するための回路である。「切換部」の一例である画像転送方式切換部23は、ステージ13の状態に基づいて、第1画像転送部20または第2画像転送部21のいずれか一つを選択する。以下の説明では、画像転送方式切換部23を切換部23と呼ぶ場合がある。なお、第1画像転送部20と第2画像転送部21を切り換えることを、画像転送部を選択すると表現する場合がある。
【0044】
選択基準は後述するが、例えば切換部23は、信頼性の高い通信が必要な場合は第1画像転送部20を選択し、高速な通信が必要な場合は第2画像転送部21を選択する。
【0045】
スキャンモード切換部24は、制御部15から出力されるスキャンモードと、ステージ速度測定器17で測定されるステージ速度とから、実際に使用するスキャンモードを選択する。スキャンモードの選択方法の例は後述する。
【0046】
図2は、ステージ状態を判定する処理を示すフローチャートである。本処理は、例えば切換部23が周期的にまたは所定の契機で、実行する。
【0047】
切換部23は、ステージ速度測定器17からステージ速度を取得する(S10)。ステージ速度とは、ステージ駆動部14によって位置や姿勢が変化するステージ13の速度である。
【0048】
切換部23は、ステージ速度が0であるか判定する(S11)。切換部23は、ステージ速度が0であると判定すると(S11:YES)、ステージ13の状態は”ステージ停止中”であると判定する(S12)。これに対し、切換部23は、ステージ速度が0ではないと判定すると(S11:NO)、ステージ13の状態は”ステージ移動中”であると判定する(S13)。
【0049】
後述のように、ステージ状態の判定結果に応じて、画像転送部の選択やスキャンモードの切り換えが行われる。頻繁な選択や切り換えが発生するのを抑制するために、例えば所定の場合には、判定結果を変更しないようにしてもよい。例えば、”ステージ移動中”から”ステージ停止中”への切換後は、たとえステージ速度が0ではない場合であっても、クライアントPC50からステージ駆動指令が入力されるまで”ステージ移動中”に戻さない。
【0050】
なお、ステージ速度測定器17の検出するステージ速度が0である場合に”ステージ停止中”と判定する場合に限らず、ステージ速度が停止用閾値に低下した場合に、”ステージ停止中”と判定してもよい。画像転送部20,21やスキャンモードの切り換えに必要な時間を見越して、早めに”ステージ停止中”と判定するためである。これにより、実際にステージ13が停止するよりも前に、あるいは停止とほぼ同時に、画像転送部等の切り換えを終了することができる。従って、比較的滑らかに試料の撮影を続けることができ、荷電粒子線装置1の使い勝手が向上する。
【0051】
ここで、停止用閾値とは、ステージ13が停止したと判定するために用意された基準値である。例えば、ステージ駆動部14によるステージ13の最高移動速度の10%程度の値を、停止用閾値として設定してもよい。10%は例であり、これに限定しない。
”ステージ停止中”と判断してから実際にステージ13が停止するまでの時間が、”ステージ停止中”と判断してから画像転送部20,21やスキャンモードの切り換えを終了するまでの時間とほぼ同じであれば、ステージ状態の判定から画像転送部等の切り換えを終えるまでの待ち時間を解消できる。待ち時間を完全に解消できなくても、待ち時間が短縮されるだけでユーザの使い勝手は向上する。
【0052】
図3は、画像転送部20,21を切り換える処理を示すフローチャートである。本処理は切換部23が周期的にまたは所定の契機で、実行する。
【0053】
切換部23は、図2で述べたステージ状態判定処理の判定結果を取得し(S20)、ステージ13の状態が”ステージ停止中”であるか判定する(S21)。切換部23は、ステージ状態の判定結果が”ステージ停止中”である場合(S21:YES)、第1画像転送部20を選択する(S22)。これに対し、切換部23は、ステージ状態の判定結果が”ステージ停止中”ではない場合(S21:NO)、つまり”ステージ移動中”の場合、第2画像転送部21を選択する(S23)。
【0054】
図4は、スキャンモードを選択する処理を示すフローチャートである。本処理は、スキャンモード切換部24が周期的にまたは所定の契機で、実行する。スキャンモード切換部24は、図1に示すように、制御部15およびステージ速度測定器17からの入力をそれぞれ受け付けてスキャンモードを決定し、決定したスキャンモードを電子銃11に送信する。電子銃11は、受領したスキャンモードに従って電子ビームを試料に照射する。
【0055】
スキャンモード切換部24は、上述したステージ状態判定処理の判定結果を取得し(S30)、ステージ13の状態が”ステージ停止中”であるか判定する(S31)。
【0056】
スキャンモード切換部24は、ステージ状態の判定結果が”ステージ停止中”の場合(S31:YES)、制御部15から出力されたスキャンモードを選択する(S32)。これに対し、スキャンモード切換部24は、ステージ状態の判定結果が”ステージ停止中”ではない場合(S31:NO)、すなわちステージ13が移動中の場合、予め用意されているステージ移動用スキャンモードを選択する(S33)。
【0057】
ステージ移動用スキャンモードとは、ユーザがクライアントPC50を介してステージ13を移動させながら試料の観察対象箇所を探すのに適したスキャンモードである。ステージ移動用スキャンモードは、ディスプレイに表示される画像が観察者(ユーザ)の目にとって動画として見える程度の所定値で更新されるモードであることが好ましい。つまり、ステージ移動用スキャンモードとは、ユーザが観察対象箇所を短時間で見つけることができるように、比較的滑らかに画像を更新できるモードである。
【0058】
スキャン速度を遅くして精密な画像を作ると、画像1枚あたりの生成所要時間が長くなるため、ユーザが試料中の観察対象箇所を発見するまでに長い時間を要する。そこで、本実施例では、ステージ13が移動中の場合は、制御部15からの出力にかかわらず、ステージ移動用スキャンモードを選択し、ユーザが観察対象箇所を発見し易くする。
【0059】
もしもステージ13が移動中の場合にスキャン速度を遅くすると、画像の生成が完了する前にステージ13が移動してしまうため、その画像を完成できない。ユーザは、不完全な画像を見て、観察対象箇所を見つけなければならず、使い勝手が低下する。そこで、本実施例では、ステージ移動用スキャンモードを用意し、ステージ13が移動中の場合は、制御部15からの出力を無視して、ステージ移動用スキャンモードを選択する。
【0060】
このように構成される本実施例では、ステージ13の状態(停止中/移動中)に適した画像転送部20,21を選択するため、信頼性とステージ移動の追従性との両方を向上することができる。
【0061】
さらに本実施例では、ステージ13の状態に応じて、画像転送部20,21を選択するだけでなく、スキャンモードも切り換えるようになっている。本実施例では、ステージ移動中の場合に、ステージ13の移動に追従して画像を更新すべく、ステージ移動用スキャンモードを選択すると共に(S33)、第2画像転送部21を選択する。ステージ移動用スキャンモードはスキャン速度が速いため、ステージ移動用スキャンモード下で得た画像をクライアントPC50へ転送するには高い転送速度が求められる。装置本体10からクライアントPC50へ画像データを短時間で送信する必要があるためである。
【0062】
その一方、ステージ移動用スキャンモード下で得た画像の転送に際しては、信頼性はあまり要求されない。つまり、ステージ移動用スキャンモード下で得た画像データの転送時に、一部のパケットが欠落した場合であっても、その欠落パケットを再送信する必要性はほとんどない。なぜなら、一部のパケットが欠落したために画像が完成しなかったとしても、すぐに次の画像データがクライアントPC50へ送られてくるためである。
【0063】
クライアントPC50のディスプレイ上では、最新の画像で次々に上書きされていくため、欠落パケットを再送信する必要性に乏しい。従って、本実施例では、ステージ移動中の場合に、通信の信頼性(画像品質)よりも、通信速度(ステージ移動に対する追従性)を優先する。
【0064】
一方、ステージ13が停止中の場合、ユーザが、観察対象箇所について時間をかけて観察している可能性が高い。逆に言えば、ユーザは観察対象箇所を発見すると、ステージ13を停止させて、精密な画像をクライアントPC50のディスプレイに表示させる。ユーザは、スキャン速度を遅くすることで(フレーム更新レートを低くすることで)、観察対象箇所についての精緻な画像を得ようとする。
【0065】
この場合、大きなデータ量の画像データが通信ネットワーク回線30を経由して装置本体10からクライアントPC50へ送られる。大容量画像データの一部のパケットがもしも欠落すると、欠落パケットに対応する領域の画像が欠けてしまうため、ユーザは観察対象箇所を十分に観察できないおそれがある。欠落したパケットを再送信する機能を持たない通信プロトコルの場合は、大容量画像データをもう一度すべて装置本体10からクライアントPC50へ送信する必要があり、使い勝手が低下する。
【0066】
そこで、本実施例では、ステージ13が停止中の場合は、通信の信頼性に優れた画像転送部20を選択する。これにより、精密な観察中に、一部のパケットが欠落した場合でも、その欠落したパケットのみを装置本体10からクライアントPC50へ再送信するだけでよいため、ユーザの使い勝手が向上する。
【実施例2】
【0067】
図5を用いて第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例は、第1実施例の変形例に相当する。そこで、第1実施例との相違を中心に説明する。
【0068】
第1実施例では、ステージ速度測定器17の検出したステージ速度に基づいて、ステージ13の状態が停止中であるか否か(ステージ停止中であるかステージ移動中であるか)を判別した。これに対し本実施例では、制御部15またはクライアントPCのいずれかから出力されるステージ駆動指令に基づいて、ステージ13の状態を判定する。
【0069】
図5は、本実施例によるステージ状態判定処理のフローチャートである。本実施例において切換部23は、制御部15からステージ駆動部14へ出力されるステージ駆動指令、または、クライアントPC50から通信インターフェース22などを介してステージ駆動部14へ出力されるステージ駆動指令を検出できるようになっている。
【0070】
本実施例の切換部23は、図5の処理を周期的にまたは所定の契機で、実行する。切換部23は、検出したステージ駆動指令に基づいてステージ速度を取得する(S40)。例えば、ステージ駆動指令が何らかの移動を指示する場合、ステージ13は移動していると判断することができる。したがって、ステップS40は、「ステージ駆動指令に基づいて、ステージの移動の有無を検出する」と言い換えてもよい。
【0071】
切換部23は、ステージ速度が0であるか判定する(S41)。図2で述べた処理と同様に、切換部23は、ステージ速度が0であると判定すると(S41:YES)、ステージ13の状態は”ステージ停止中”であると判定する(S42)。切換部23は、ステージ速度が0ではないと判定すると(S41:NO)、ステージ13の状態は”ステージ移動中”であると判定する(S13)。
【0072】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、制御部15またはクライアントPC50のいずれかから発行されるステージ駆動指令に基づいてステージ13の状態を推定するため、ステージ速度測定器17で検出したステージ速度を受信する必要がない。したがって、ステージ状態を判別する機構のみについて言えば、ステージ速度測定器17は不要である。
【実施例3】
【0073】
図6を用いて第3実施例を説明する。本実施例では、ステージ状態の判別結果と、スキャン速度と、クライアントPC50からの操作コマンドとに基づいて、画像転送部を切り換える。切換部23は、図6に示す処理を周期的にまたは所定の契機で、実行する。
【0074】
切換部23は、ステージ状態判定処理の判定結果を取得し(S50)、ステージ13の状態が”ステージ停止中”であるか判定する(S51)。切換部23は、ステージ状態の判定結果が”ステージ停止中”である場合(S51:YES)、制御部15の出力するスキャンモードが要求するスキャン速度が所定値以上であるか判定する(S52)。制御部15が要求するスキャン速度が所定値未満の場合(S52:NO)、切換部23は、第1画像転送部20を選択する(S53)。
【0075】
これに対し、切換部23は、ステージ13が停止中であっても(S51:YES)、制御部15の要求するスキャン速度が所定値以上である場合(S52:YES)、第2画像転送部21を選択する(S54)。切換部23は、ステージ状態の判定結果が”ステージ停止中”ではない場合(S51:NO)、つまり”ステージ移動中”である場合も、第1実施例で述べたと同様に、第2画像転送部21を選択する(S54)。
【0076】
切換部23は、第2画像転送部21を選択している場合において、クライアントPC50からスキャン停止が指示されたか判定する(S55)。スキャン停止が指示されていない場合(S55:NO)、本処理を終了する。所定時間の経過後、または所定の契機が到来すると、切換部23は本処理を再び実行する。
【0077】
切換部23は、第2画像転送部21を選択している場合において、クライアントPC50からスキャン停止が指示されたことを検出すると(S55:YES)、ステップS53に移り、第2画像転送部21から第1画像転送部20へ切り換える。
【0078】
ここで、ステップS52で分岐する理由を説明する。制御部15の指示するスキャン速度が所定値以上の場合、すなわちフレーム更新レートが所定値以上の場合、第1画像転送部20を用いたのでは必要な転送速度を得ることができない。換言すれば、ステップS52での所定値とは、第1画像転送部20を用いたのでは必要な通信速度を得られないと判定できる値である。この場合(S52:YES)、スキャン速度に見合った通信速度を確保するために、第2画像転送部21が選択される(S54)。
【0079】
スキャン停止時には、第2画像転送部21から第1画像転送部20へ切り換える理由を説明する。クライアントPC50からの操作コマンドがスキャン停止コマンドである場合(S55:YES)、停止前の最後の画像転送を成功させるために、パケット再送信機能を持つ第1画像転送部20を選択する。スキャン停止前の最後の画像データの転送時に、一部のパケットが欠落した場合は、完全な画像をクライアントPC50のディスプレイに表示することができず、ユーザは試料を十分に観察できないおそれがある。そこで、切換部23は、欠落パケットだけを再送信することができ、装置本体10からクライアントPC50へ高い信頼性で画像を転送できる第1画像転送部20を選択する。
【0080】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、ステージ13が停止中であってもスキャン速度が所定値以上の場合は、第2画像転送部21を選択するため、画像の更新頻度に追従してディスプレイに表示することができる。
【0081】
さらに本実施例では、第2画像転送部21を使用している場合であっても、スキャン停止時の最後の画像は、信頼性の高い第1画像転送部20を用いてクライアントPCへ送信する。従って、本実施例では、画像転送の信頼性を維持しつつ、高いフレーム更新レートに対応することができ、使い勝手が向上する。
【実施例4】
【0082】
図7図8を用いて第4実施例を説明する。本実施例では、切換部23は、制御部15からステージ駆動部14に入力されるステージ駆動指令に基づいて、ステージ状態を判定する。第2実施例では、制御部15またはクライアントPC50のいずれかから発行されるステージ駆動指令に基づいて、ステージ状態を判定する場合を述べた。これに対し、本実施例では、制御部15から出力されるステージ加速指令または減速指令と、ステージ13の等速移動状態とに基づいて、ステージ13の状態を判定する。
【0083】
図7は、本実施例による荷電粒子線装置1Aの全体構成を示す。図7の構成と図1の構成とを比較すると、図7に示す本実施例では、制御部15からステージ駆動部14へ入力されるステージ駆動指令が、切換部23にも入力される。さらに図7に示す本実施例では、図1で述べたステージ速度測定器17が取り除かれている。
【0084】
図8は、本実施例によるステージ状態判定処理を示すフローチャートである。本処理は、切換部23により、周期的にまたは所定の契機で、実行される。切換部23は、制御部15からステージ駆動部14へ入力されるステージ駆動指令を監視しており(S60)、加速指令も減速指令も制御部15から出されていないか判定する(S61)。切換部23は、制御部15が加速指令も減速指令も出力していないと判定すると(S61:YES)、ステージ13が等速移動していないか判定する(S62)。切換部23は、制御部15から出力されるステージ駆動指令の種類および出力タイミングなどに基づいて、ステージ13が等速移動しているか否か推定することができる。
【0085】
切換部23は、ステージ13が等速移動していないと判定すると(S62:YES)、ステージ13の状態は”ステージ停止中”であると判定する(S63)。切換部23は、制御部15からステージ駆動部14へ加速指令または減速指令のいずれかが入力されている場合(S61:NO)、または、ステージ13が等速移動している場合(S62:NO)、ステージ13の状態は”ステージ移動中”であると判定する(S64)。このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。
【実施例5】
【0086】
図9図10を用いて、第5実施例を説明する。本実施例の荷電粒子線装置1Bでは、クライアントPC50から入力されるステージ駆動指令に基づいて、ステージ状態を判定する。第2実施例では、制御部15またはクライアントPC50のいずれかから発行されるステージ駆動指令に基づいて、ステージ状態を判定する場合を述べた。第4実施例では、制御部15から出力されるステージ加速指令または減速指令と、ステージ13の等速移動状態とに基づいて、ステージ13の状態を判定する場合を述べた。本実施例では、クライアントPC50からの操作コマンドに基づいて、ステージ13の状態を判定する場合を説明する。
【0087】
図9は、本実施例の荷電粒子線装置1Bの全体構成を示す。本実施例において切換部23は、通信インターフェース22に接続されている。切換部23は、クライアントPC50から通信インターフェース22を介して制御部15に入力されるコマンドを監視することができる。
【0088】
図10は、本実施例によるステージ状態判定処理を示すフローチャートである。切換部23は、通信インターフェース22を介して、クライアントPC50から装置本体10へ入力される操作コマンド(操作入力とも呼ぶ)を監視している(S70)。操作コマンドとは、ステージ13の移動を指示するコマンドであり、ステージ駆動指令である。
【0089】
切換部23は、クライアントPC50から操作コマンドが入力されていないか判定する(S71)。操作コマンドが入力されていない場合(S71:YES)、切換部23は、ステージ13の状態が”ステージ停止中”であると判定する(S72)。切換部23は、クライアントPC50から操作コマンドが入力された場合(S71:NO)、ステージ13の状態は”ステージ移動中”であると判定する。
【0090】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。本実施例では、クライアントPC50から入力される操作コマンドに基づいてステージ状態を判定するため、ステージ13の実際の移動速度に基づいてステージ状態を判定する場合よりも早期に、ステージ13の状態を判定することができる。これにより、画像転送部20,21の切換を早期に指示することができ、切換完了までの待ち時間を短縮して使い勝手を向上することができる。
【実施例6】
【0091】
図11図12を用いて第6実施例を説明する。本実施例は、第4実施例と第5実施例を結合させたものである。すなわち、本実施例の荷電粒子線装置1Cでは、制御部15から出力されるステージ駆動指令と、クライアントPC50から入力される操作コマンド(クライアントPCからのステージ駆動指令)の両方に基づいて、ステージ13の状態を判定する。
【0092】
図12は、本実施例によるステージ状態判定処理を示すフローチャートである。本処理は、切換部23により、周期的にまたは所定の契機で、実行される。
【0093】
切換部23は、クライアントPC50から装置本体10へ入力される操作コマンドを監視している(S80)。切換部23は、クライアントPC50から操作コマンドが入力されていないか判定する(S81)。
【0094】
操作コマンドが入力されていない場合(S81:YES)、切換部23は、制御部15からステージ駆動部14へ入力されるステージ駆動指令を監視し(S82)、加速指令も減速指令も制御部15から出されていないか判定する(S83)。
【0095】
切換部23は、制御部15が加速指令も減速指令も出力していないと判定すると(S83:YES)、ステージ13が等速移動していないか判定する(S84)。切換部23は、ステージ13が等速移動していないと判定すると(S84:YES)、ステージ13の状態は”ステージ停止中”であると判定する(S85)。
【0096】
切換部23は、クライアントPC50から操作コマンドが入力された場合(S81:NO)、制御部15からステージ駆動部14へ加速指令または減速指令のいずれかが入力されている場合(S83:NO)、または、ステージ13が等速移動している場合(S84:NO)のいずれかである場合、ステージ13の状態は”ステージ移動中”であると判定する(S86)。このように構成される本実施例も第1実施例、第4実施例、第5実施例と同様の作用効果を奏する。
【0097】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、荷電粒子線装置は走査型電子顕微鏡に限らず、他の装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1,1A,1B,1C:荷電粒子線装置、10:装置本体、11:電子銃、12:鏡体、13:ステージ、14:ステージ駆動部、15:制御部、16:検出器、17:ステージ速度測定器、20:第1画像転送部、21:第2画像転送部、22:通信インターフェース、23:画像転送方式切換部、24:スキャンモード切換部、30:通信ネットワーク回線、50:クライアントPC
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12