(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
米国において宇宙食の安全性を確保するために開発された食品衛生管理の手法であるHACCP(Hazard Analysis Critical Control Point)は日本の食品衛生法においても取り入れられ、近年においてはすべての食品に対する衛生管理への導入が奨励されつつある。
【0003】
このHACCPは、原材料から最終製品に至る各々の工程において衛生管理のための重要な管理点(CCP)を特定し、危害発生の防止や排除を行うシステムであり、食品工場等においては、設備や機器類の保守管理とともに、排水の衛生管理も対象となっている。
【0004】
そこで、近年、上記食品工場などの食品を取り扱う施設においては、その排水系として、洗浄性や抗菌性、さらにはメンテナンス性に優れる各種構造の排水桝が採用されている。
【0005】
例えば、
図2A乃至
図2Cに概略的に示されるように、従来のHACCP対応の排水設備は、床面1の開口部内に配置される、耐食性に優れたSUS304製の排水溝2、排水溝2に連通する排水桝3、及びグレーチング蓋4から構成される。
図2Cに示すように、排水桝3は、大きさの異なる上部桝と下部桝により形成され、下部桝には生ごみを取り除くためのストレーナ(換言すれば、バスケットまたはしさかご)5、及び、臭気を防ぐためのトラップ機構6等が組み込まれている。また、排水桝の内壁にR加工を施す、上部桝と下部桝との間の目地部を一体加工するなどの工夫により、清掃しやすい形状とし残渣を残さず清掃できるようにしている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法では、設置された排水桝に排水が流れ込んだときに生ごみはストレーナ5により分離されるものの、それを外部へ排出するためには定期的に人力で生ごみを回収する必要があった。特に、24時間操業の食品工場等では仮に8時間ごとに回収を行ったとしても、その回収間隔の間はストレーナ5の中に生ごみが入ったままとなり、雑菌繁殖や腐敗臭の原因となることが危惧される。
【0008】
また雑菌繁殖を防ぐために、定期的に殺菌剤を流したりする必要があった。また排水溝2や排水桝3の定期的な清掃にも時間を要していた。
【0009】
本願発明は、上記問題点を解決し、食品工場の厨房などから発生する生ごみを含む排水など、固形物を含む排液を対象とした、低コストで効率的な真空式排液収集システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明によれば、真空式排液収集システムであって、固形物を含む排液を受け入れる第1槽、第1槽に連通する第2槽、及び、第1槽と第2槽の間の連通部に配置され、第1槽の排液の固液分離をするための固液分離装置を備える、排水桝と、第1槽の排液が収集される集水タンク及び集水タンクに負圧を導入する真空ポンプを備える真空ステーションと、第1槽を前記集水タンクに連通させる連通路と、を備える、真空式排液収集システムが提供される。この構成によれば、排水桝が、第1槽と第1槽に連通する第2槽とを有し、第1槽と第2槽の間の連通部に、第1槽の排液の固液分離をするための固液分離装置が配置されているので、固形物を含む排液のうち、固形物と少量の液体のみを真空ポンプによる負圧下で集水タンクに収集することができる。従って、例えば、食品工場の厨房で発生する生ごみを、手で触れることなく効率的に屋外へ排出することができるので、屋内における雑菌繁殖や腐敗臭の原因を元から断つことができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の真空式排液収集システムであって、連通路を開閉するように設けられる真空弁を備える、真空式排液収集システムが提供される。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項2に記載の真空式排液収集システムであって、真空弁が、制御盤を介して制御可能である、真空式排液収集システムが提供される。この構成により、操作者は、第1槽内の生ごみ等の固形物の状況を見て、適切なタイミングで真空弁を操作し、第1槽内の固形物を含んだ排液を、屋外へ排出することができる。従って、真空弁を開閉する回数を最小限にすることができ、また、負圧下で搬送する液体の量も抑えることができる。従って、設備規模が小さく経済的な排液収集システムを実現することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の真空式排液収集システムであって、第1槽と第2槽の間に配置される固液分離装置が取り外し可能であり、第2槽は、第2槽の排液の固液分離をする固液分離装置を取り付けるための取り付け部を有する、真空式排液収集システムを提供することができる。この構成によれば、真空弁や真空ステーションの機器故障時には、第1槽と第2槽の間の固液分離装置を取り外して、第2槽に、第2槽の排液の固液分離をする固液分離装置を取り付けることができるので、機器故障時にも工場の操業を止める必要がない。
【0014】
請求項5の発明によれば、固形物を含む排液を受け入れる第1槽、第1槽に連通する第2槽、及び、第1槽と第2槽の間の連通部に配置され、第1槽の排液の固液分離をするための固液分離装置を備える、排水桝が提供される。
【0015】
請求項6の発明によれば、請求項5に記載の排水桝であって、第1槽と第2槽の間に配置される固液分離装置が取り外し可能であり、第2槽は、第2槽の排液の固液分離をする固液分離装置を取り付けるための取り付け部を有する、排水桝が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排液中の生ごみ等を手を触れることなく効率的に屋外へ排出し、排水溝や排水桝の清掃時間短縮と屋内における雑菌繁殖や腐敗臭の原因を元から断つことができる、低コストで効率的な真空式排液収集システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1を参照して、本発明の一実施形態による真空式排液収集システムを説明する。本発明の一実施形態による真空式排液収集システムは、特に、固形物を含む排液を収集するのに好適に用いることができる。尚、以下の実施形態では、固形物を含む排液の例として、食品工場などの厨房から排出される、生ごみを含む排水を対象としている。しかし、この例に限られず、本発明の真空式排液収集システムは、固形物を含む液体を排出する施設において、広く適用することができる。
【0019】
[全体概要]
図1に、本発明の一実施形態による真空式排液収集システム(以下、単にシステム)400の全体概要を示す。一例として、システム400は、屋内(例えば、食品工場の厨房内)の床面100に形成される開口部内に取り付けられる排水溝101と、排水溝101に連通する第1槽200a及び第1槽200aに連通する第2槽200bを備える排水桝200と、屋外に設置され、第1槽200aの排水が収集される集水タンク300a、300b及び集水タンク300a、300bにそれぞれ負圧を導入する真空ポンプ301、302を備える真空ステーション300とを備えている。第1槽200aと集水タンク300a、300bは連通路500によって連通可能である。
図1に示すように、連通路500には、連通路500を開閉する真空弁501を設けることができる。
【0020】
[排水桝について]
排水桝200は、排水溝101と共に、床面100に形成された開口部内に取り付けられる外付けの部材である。尚、
図1において、排水溝101及び排水桝200は、その外形輪郭のみ(換言すれば、床面100を形成する床部材との境界のみ)が示されており、実際の壁部は図示を省略されている。排水桝200は、概ね有底筒状の2つの排水桝としての第1槽200a及び第2槽200bが、越流開口202を介して横並びに連結された2槽式の構造を有している。排水溝101及び排水桝200は、上記HACCPに対応するため、通常、耐食性に優れたSUS304製である。第1槽200aの側壁には、排水溝101と連通する入口開口201が形成されており、入口開口201を通して排水源からの排水が第1槽200aに受け入れられる。尚、
図1中、102はグレーチングである。
【0021】
排水桝200は、第1槽200aと第2槽200bとを連通させる連通部を備えており、
図1の例では、連通部は、越流開口202により形成される。越流開口202は、第1槽200aの底部から所定の高さで開口するように形成されている。これにより、第1槽200a内の排水は、所定の水位を越えると越流開口202を通り、第1槽200aから第2槽200bに流入することができる。
【0022】
本実施形態では、連通部(
図1の例では越流開口202)に固液分離装置を配置することにより、排水桝200の第1槽200a内の排水の固液分離を行うことができる。
図1の例では、固液分離装置は、越流開口202を覆うように配置される網目部材203によって形成されている。網目部材203は、例えば、SUS304で形成することができ、越流開口202を覆うのに十分な外形寸法を有する板状部材により形成することができる。連通部への固液分離装置の取り付け方法は、特に限られない。
図1の例では、例えば、網目部材203のような板状部材を、越流開口202周囲の側壁にねじ留めすることなどにより取り付けることができる。しかし、固液分離装置は、第1槽200a及び第2槽200bと別個の部材でなくてもよく、第1槽200a及び/または第2槽200bと一体に形成されていてもよい。固液分離装置は、排水溝101から第1槽200aに流入した
排水に含まれる生ごみ等の固形物を分離し、液体のみを第2槽200bに流入させることができればよい(すなわち、排液の固液分離を行うことができればよい)。従って、固液分離装置は、例えば、網目部材によって形成することができるが、網目部材に限らず、想定される固形物の寸法等に応じて、細長いスリット状の開口を有する部材であってもよい。固液分離装置が有する開口の大きさ、形状及び数等は特に限られない。
【0023】
また、本発明において、排水桝200を構成する第1槽200aと第2槽200bの相対位置は、図示されるものに限られない。すなわち、第1槽200aと第2槽200bは、必ずしも横並びに配置されていなくてもよく、異なる高さ位置に、例えば上下方向に並んで、配置されていてもよい。また、第1槽200aと第2槽200bの間の連通部は、越流開口202のような開口に限らず、一定の長さを有する連通路で形成されていてもよい。
排水桝200に接続される排水溝101の方向や形状についても、図示する形状に限られない。設置場所の条件に応じて、例えば2方向から流入させる、グレーチング102の代わりにチェッカープレート状の蓋にするなどの異なる形状で形成されてもよい。
さらに排水溝101を設けず、第1槽200aの上部に開閉できる蓋を儲けバケツ等から人力で排水してもよい。また第1槽200aの上部に調理器具から直接ドレン排水管を接続する方法で排水してもよい。
【0024】
第1槽200a内には、真空ステーション300の真空ポンプ301、302により導入される負圧と大気圧との差圧によって、第1槽200aの排水を吸引するための吸い込み管505が開口している。吸い込み管505は、第1槽200aと集水タンク300a、300bを連通させる連通路500の一部を構成している。第1槽200aの水位が越流開口202の下端を越えることはないため、吸い込み管505の開口端は、越流開口202の下端よりも下方に配置される。
【0025】
図1の例では、第2槽200bは、側方に越流開口202を有する点を除いて、異なる大きさを有する上部桝及び下部桝を備えた従来の排水桝と実質的に同様の構成を有している。すなわち、内側にストレーナ(換言すれば、濾過部材)(図示せず)を取り付けるための取り付け部を有する、概ね有底筒状の排水桝の形状を有している。しかし、本実施形態では、第2槽200bは、ストレーナを取り外した状態で使用されてよい。第2槽200bの底部は、排水を自然流下させるように勾配を以て配置された排水管103に連結されている。第2槽200bと排水管103との連結部には、排水トラップ205が設けられている。
【0026】
[真空ステーションについて]
次に、真空ステーション300について説明する。本実施形態における真空ステーション300は、2基の集水タンク300a、300b、集水タンク300a、300bにそれぞれ負圧を導入するための真空ポンプ301、302及び真空ポンプ301、302の動作制御を行うための動力制御盤304を備えている。真空ポンプ301、302からの負圧は、集水タンク300a、300bを介して連通路500に導入される。真空弁501を開くことにより、連通路500内の負圧と大気圧との差圧によって、第1槽200a内の排水を吸い込み管505から集水タンク300a、300bに集水することができる。尚、504は逆止弁である。
【0027】
2基の集水タンク300a、300bは、それぞれ、別個の真空ポンプ301、302に連結されており、一方の集水タンクのみが運転されるように動力制御盤304によって切り替え制御が可能である。連通路500は、集水タンク300a、300bの手前側で分岐しており、2つの枝管が、それぞれ、流入電動弁307、308を介して集水タンク300a、300bの天井部またはその近傍に延びている。尚、309、310は逆止弁
である。集水タンク300a、300bの気相部には、大気開放弁(電動弁)305、306が設けられた通気管が接続されている。
【0028】
また、図示は省略するが、集水タンク300a、300bの各々には、集水タンクの気相部の圧力を計測する圧力計と集水タンク300a、300b内の水位を計測する水位計とが設けられている。これらの測定値は動力制御盤304に出力される。
【0029】
集水タンク300a、300bの下部開口には、排水電動弁311、312が設けられ、配管313を介して油脂分離阻集器104に連結されている。油脂分離阻集器104には、従来と同様にストレーナ105が配置されており、ここで、集水タンク300a、300bから流入する排水中の生ごみ等が分離され、液体のみが、油脂分離阻集器104の下流側のマンホール107に集められる。ストレーナ105によって分離された生ごみ等は定期的に人力で除去されることができる。マンホール107に回収された液体は、汚水用水中ポンプ106または自然流下により排水処理施設108に送出される。第2槽200bに連結される排水管103を通る排水もまた、マンホール107に集められ、汚水用水中ポンプ106または自然流下により排水処理施設に送出される。尚、集水タンク300a、300bからの排水を回収する機構は、従来の油脂分離阻集器に限られない。
【0030】
[真空弁について]
本実施形態では、連通管500を開閉する真空弁501を設けることができる。本実施形態によれば、真空弁501は、第1槽200aの排水を吸い込み管505から吸い込む必要がある場合にのみ開かれるように、制御盤(現場盤)503を介して手動制御することができる。換言すれば、真空弁501は、操作者の判断で所望のタイミングで開閉することができる。真空弁501としては、例えば、特許第2546718号に記載される構造の真空弁を用いることができる。具体的には、閉弁時は、真空弁501のシリンダ室(図示せず)が大気圧下におかれ、連通路500内の負圧と大気圧との差圧によって、弁体を備えるピストン部材が閉弁方向に押圧されて、第1槽200aに対する連通路500の連通が遮断される。そして、開弁時のみシリンダ室を連通路500に連通させ、シリンダ室に負圧を導入することによりピストン部材を開弁方向に移動させる。これにより、真空弁501を開き、第1槽200aに対する連通路500の連通を許容することができる。本実施形態では、真空弁501のシリンダ室の大気圧側と負圧側の切り換えを、電動三方弁502により行っている。本実施形態では、電動三方弁502を、例えば押しボタン式の制御盤503で操作することができる。こうして、電動三方弁502、ひいては真空弁501を、手動制御することができる。尚、真空弁501の口径は、排水中に含まれる固形物の形状、サイズ、及び弁開口部の閉塞等を考慮して、例えば、50mm径にすることができる。また、本発明の他の実施形態によれば、上記したような大気圧と負圧との差圧によって弁体を作動させる真空弁501に代えて、例えば、電動式ボール弁を使用することもできる。好ましくは、弁体が回転する際の固形物の噛み込み等を防止する観点から、偏心構造を有する電動式ボール弁を使用することができる。すなわち、本発明では、連通路500を開閉するために使用される弁の種類は、特に限られない。
【0031】
[動作方法について]
上記のように構成された本実施形態の真空式排液収集システム400は、次のようにして動作することができる。
【0032】
厨房からの生ごみ等、固形物を含む排水は、排水溝101から入口開口201を通って排水桝200の第1槽200aに流入する。第1槽200aに流入した排液は、所定の水位を越えると、越流開口202に取り付けられた網目部材203を通って第2槽200bに流入するが、このとき、排水に含まれる生ごみは網目部材203により分離され、第1槽200a内に貯留される。従って、第2槽200bには、生ごみが除かれた液体のみが
流入する。こうして第2槽200bに流入した液体は、排水管103を通り、自然流下によって屋外に設置されたマンホール107へと排出される。マンホール107内の液体は、汚水用水中ポンプ106または自然流下によって、排水処理施設108へ送られる。一方、第1槽200aには、所定の水位に達した水量の液体と網目部材203により分離された生ごみを含む排水が貯留される。
【0033】
ここで、真空ステーション300の動作について説明する。真空ステーション300では、集水タンク300a、300bの圧力計の測定値及び水位計の測定値が動力制御盤304に出力されている。動力制御盤304は、集水タンク300aの圧力計の測定値に基づいて、集水タンク300aの真空度を所定の設定値に保持するように真空ポンプ301をオンオフ制御することができる。また、動力制御盤304は、集水タンク300bの圧力計の測定値に基づいて、集水タンク300bの真空度を所定の設定値に保持するように真空ポンプ302をオンオフ制御することができる。これにより、連通路500内を一定の負圧下におくことができる。これを確実に確認するために、連通路500における、逆止弁504と真空弁501とを連通させる部分に圧力スイッチ506を設け、当該部分が一定の負圧下にあるときに圧力スイッチ506から制御盤503に信号が出力され、制御盤503の盤面に弁開可能のランプ表示が行われるようにしてもよい。
【0034】
この状態で、第1槽200aに貯留された生ごみの状態を確認した操作者は、必要に応じて適切なタイミングで押しボタン式制御盤503を操作して電動三方弁502のシリンダ室を大気圧側から負圧側へと切り替える。こうして真空弁501のシリンダ室に連通路500内の負圧が導入され、これにより、真空弁501が開いて連通路500の第1槽200aへの連通を許容する。こうして、第1槽200a内の生ごみを含む排水が、連通路500内の負圧と大気圧との差圧によって吸い込み管505に吸い込まれ、連通管500を通って、集水タンク300a、300bに集められる。集水タンク300a、300b内の水量が所定の水位に達すると、動力制御盤304が、大気開放弁305、306を開いて通気管を大気に開放し、排水電動弁311、312を開いて、自然流下により排水を油脂分離阻集器104に回収する。このとき、油脂分離阻集器104内に設けられたストレーナ105によって生ごみ等の固形物が分離され、液体のみがマンホール107から汚水用水中ポンプ106または自然流下により排水処理施設へと送られる。
【0035】
このように、本実施形態では、集水タンク300a、300bからの排出は、大気圧による自然流下を利用しており、圧送ポンプを使用することなく行うことができる。
【0036】
尚、上記したように、本実施形態では、2基の集水タンク300a、300bは切り換え運転可能である。集水タンク300a、300bの切り換え運転は、例えば、次のような方法で行うことができる。集水タンク300aの運転モードでは、流入電動弁307のみを開き、流入電動弁308を閉じた状態で真空ポンプ301が、集水タンク300aの圧力計の出力値に応じてオンオフ運転される。このとき、大気開放弁305、306及び排水電動弁311、312は閉じられている。集水タンク300aの水位計が所定の値に達すると、大気開放弁(電動弁)305と排水電動弁311を開き、真空ポンプ301を強制的に停止すると同時に、流入電動弁307を閉じ、流入電動弁308を開く。こうして集水タンク300a中の排水が油脂分離阻集器104に排出されると共に、連通管500からの排水は、集水タンク300bに流入する。集水タンク300bの運転モードでは、集水タンク300bの圧力計の出力値に応じて真空ポンプ302がオンオフ運転され、集水タンク300bの水位計が所定の値に達するまで、排水が集水タンク300bに集められる。一方、集水タンク300aでは、排出により集水タンク300aの水量が低下し所定の値に達すると、大気開放弁(電動弁)305と排水電動弁311を閉じ、真空ポンプ301を再起動させる。このように2つの集水タンクの切り換え運転を行うことにより、一方の集水タンクが排出している間に他方の集水タンクで収集を行うことができ、シス
テムの真空運転を継続することができる。
【0037】
しかし、本発明の他の実施形態によれば、真空ステーション300は、単一の集水タンクを備えていてもよい。この場合、集水タンクの排出を、圧送ポンプによって行うことができる(
図3参照)。
【0038】
例えば食品工場の厨房では、調理の各段階で、都度なべや調理器具を洗ったりする工程(工程A)と室内全体を水で洗い流して洗浄する工程(工程B)が行われるが、特に生ごみは工程Aにおいて多く発生する。一方、工程Bにおいては非常に多くの排水(液体)が発生するが、生ごみの発生量は少ない。これらの異なる工程に対して、排水収集のすべてを真空式で対応しようと考えると真空弁の開閉回数が多くなり、また多くの排水量に対応するため真空配管や真空ステーションも大規模となってしまう。
【0039】
一方、本発明の一実施形態によれば、調理中、特に工程Aにおいて生ごみを含んだ排水が発生した場合には、その都度、第1槽200aの生ごみの状況を確認し、調理者など、真空弁501の操作者が判断して、制御盤503の押しボタンを押したときだけ真空弁501を開くことができる。このことにより、調理の流れの中で調理者が必要とする適切なタイミングで、手を汚すことなく即座に生ごみを含む排水を屋外へと排出することができる。従って、排水溝101や排水桝200の掃除時間を短縮することができ、また、屋内における雑菌繁殖や腐敗臭の原因を元から断つことができる。また、第1槽200aに流入した液体の多くを第2槽200bに越流させ、第1槽200aの液体と生ごみだけを吸引することができるので、真空弁501の開閉回数、及び、真空配管(連通路500)や真空ステーション300の規模を最小限にすることができる。連通路500は、屋内の天井部に向けて架空配管し、わずかな勾配で屋外の真空ステーション300に繋ぐことができる。従って、設備規模が小さく経済的な真空式排液収集システムの構成を実現することができる。
なお真空配管(連通路500)は屋内の天井部に架空配管するほかに、床面に配管用トレンチを設け、その中を配管してもよい。
【0040】
一方、工程Bにおいては真空弁501の操作を必要とすることなく、排水を従来どおりの自然流下で屋外へ排出することができる。万が一工程Bで床に落ちていた生ごみ等が流入したとしても第1槽200aに留まるため、清掃終了時に1回真空弁501を作動させるだけでよい。このように、生ごみの発生状況によって効率よく真空弁501を操作することができる。
【0041】
また本実施形態は、真空弁501や真空ステーション300の機器の故障にも適切に対応することができる点で有利である。特に食品工場は24時間操業の場合が多く、真空弁501や真空ステーション300が故障した場合でも、工場の操業を止めることは困難である。また、通常のメンテナンスの手法として採用されることが多い予備機器への現場交換作業についても、工場内に機械を扱える技術員が常駐していないケースもあり困難である。しかしながら、本実施形態によれば、機器故障により第1槽200aに対する真空式収集が困難な場合には、網目部材203を排水桝200から取り外し、従来の排水桝と同様に第2槽200bにストレーナ(換言すれば、濾過部材)を取り付けることができる。これにより、第2槽内で排水の固液分離を行うことができるので、工場の操業自体を止めることなく、機器修理までの応急対応とすることができる。
【0042】
尚、本発明の他の実施形態によれば、システム400内に複数の排水桝200が設置されていてもよい。この場合、複数の排水桝200の各々について、第1槽200aを連通路500に連通させるための真空弁501を設けることができる。また、複数の真空弁501は、上記実施形態のように手動制御されてもよいし、自動制御されてもよい。自動制
御の一例として、例えば、制御盤503をタイマー機能を有するように構成し、予め設定された所望の時間間隔で、複数の排水桝200の各々について設けられた真空弁501を、1つずつ順番に開閉するように制御することができる。