特許第6378106号(P6378106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378106化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子および電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378106
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20180813BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180813BHJP
   C07D 491/147 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/22 A
   H05B33/22 C
   C09K11/06 690
   C09K11/06 640
   C09K11/06 650
   C09K11/06 645
   C07D491/147
【請求項の数】35
【全頁数】83
(21)【出願番号】特願2015-22733(P2015-22733)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-213155(P2015-213155A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2017年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-85041(P2014-85041)
(32)【優先日】2014年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 俊成
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭
(72)【発明者】
【氏名】田崎 聡美
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0168734(US,A1)
【文献】 特許第6220341(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/070963(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
発光層と、
陰極と、を含み、
前記発光層は、第一の化合物および第二の化合物を含み、
前記第一の化合物は、下記一般式(1)で表される遅延蛍光発光性の化合物であり、
前記第二の化合物は、一つの分子中に下記一般式(21)で表される部分構造および下記一般式(22)で表される部分構造のうち少なくともいずれかを含む化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(前記一般式(1)において、
Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、
は、単結合、または連結基であり、Lにおける連結基としては、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、
〜Y12は、それぞれ独立に、窒素原子またはCRであり、
は、酸素原子、硫黄原子、N−R10、CR1112、SiR1314、またはGeR1516であり、
,R10〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R,R10〜R16が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択され、
複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRのうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。)
【化2】
(前記一般式(21)において、
21〜Y26は、それぞれ独立に、窒素原子、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
ただし、Y21〜Y26のうち少なくともいずれかは、前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
前記一般式(22)において、
31〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
ただし、Y31〜Y38のうち少なくともいずれかは、前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子である。)
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、−Ar11と、−L−Ar12とが異なる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Ar11は、無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、前記Lは、連結基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Lは、単結合であり、前記Ar11および前記Ar12は、同じである有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第一の化合物は、下記一般式(10)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化3】
(前記一般式(10)において、X,Y〜Y12,L,Ar11およびAr12は、それぞれ、前記一般式(1)におけるX,Y〜Y12,L,Ar11およびAr12と同義であり、Rは、置換基であり、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。)
【請求項6】
請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Ar11と前記Lとが同じであり、前記Rと前記Ar12とが同じである有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Ar12は、下記一般式(11)で表される基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化4】
(前記一般式(11)において、
13〜Y17は、それぞれ独立に、窒素原子またはCRであり、
は、水素原子または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基としては、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択され、
複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRのうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。)
【請求項8】
請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Y13〜Y17のうち少なくとも一つが窒素原子である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Y13〜Y17は、それぞれ独立に、CRである有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Rの少なくとも一つが、シアノ基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Ar12は、下記一般式(11a)で表される基、下記一般式(11b)で表
される基、下記一般式(11c)で表される基、下記一般式(11d)で表される基、または下記一般式(11e)で表される基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化5】
【化6】
(前記一般式(11a)〜(11e)において、Y13〜Y17は、それぞれ前記一般式(11)におけるY13〜Y17と同義である。)
【請求項12】
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Ar12は、下記一般式(11f)で表される基、下記一般式(11g)で表される基、または下記一般式(11h)で表される基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化7】
(前記一般式(11g)〜(11h)において、Y15は、それぞれ前記一般式(11)におけるY15と同義である。)
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Y13〜Y17は、CRであり、Rは、水素原子である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Xは、酸素原子または硫黄原子である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Y〜Y12は、CRであり、Rは、水素原子である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記一般式(21)で表される部分構造は、下記一般式(23)で表される基および下記一般式(24)で表される基からなる群から選択される少なくともいずれかの基として前記第二の化合物に含まれる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化8】
(前記一般式(23)および前記一般式(24)において、Y21,Y22,Y24,Y26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
21は、水素原子または置換基であり、R21が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。)
【請求項18】
請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記R21は、水素原子または置換基であり、前記R21が置換基である場合の置換基は、
フッ素原子、
シアノ基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記R21は、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
請求項17から請求項19のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記Y21,前記Y22,前記Y24,前記Y26は、それぞれ独立に、CR21である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
請求項17から請求項20のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記一般式(22)で表される部分構造は、下記一般式(25)で表される基,下記一般式(26)で表される基,下記一般式(27)で表される基,下記一般式(28)で表される基,下記一般式(29)で表される基,および下記一般式(30)で表される基からなる群から選択される少なくともいずれかの基として前記第二の化合物に含まれる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化9】
【化10】
【化11】
(前記一般式(25)〜(30)において、
31〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR22であり、
22は、水素原子または置換基であり、R22が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R22における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
前記一般式(25),(26)において、Xは、窒素原子であり、
前記一般式(27)〜(30)において、Xは、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
23は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。)
【請求項22】
請求項21に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記一般式(25)において、Y31〜Y38は、それぞれ独立に、CR22であり、
前記一般式(26)および前記一般式(27)において、Y31〜Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、CR22であり、
前記一般式(28)において、Y31,Y32,Y34,Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、CR22であり、
前記一般式(29)において、Y32〜Y38は、それぞれ独立に、CR22であり、
前記一般式(30)において、Y32〜Y37は、それぞれ独立に、CR22であり、
複数のR22は、互いに同一または異なる有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項23】
請求項21または請求項22に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記R22は、水素原子または置換基であり、R22が置換基である場合の置換基は、
フッ素原子、
シアノ基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R22における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項24】
請求項21または請求項22に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記R22は、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、ただし、前記R22における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項25】
請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第二の化合物は、下記一般式(20A)で表される基を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化12】
(前記一般式(20A)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
31,Y32およびY34〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子、CR22、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21およびR22が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21および前記R22における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
23は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY34とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152を介して架橋されていてもよく、
24とY32とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5354を介して架橋されていてもよく、
51〜R54は、それぞれ独立に、前記R23が置換基である場合の置換基と同義である。)
【請求項26】
請求項1から請求項25のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第二の化合物は、下記一般式(20B)で表される基を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化13】
(前記一般式(20B)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
31,Y32,Y34,Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR22であり、
41〜Y45,Y47およびY48は、それぞれ独立に、窒素原子、CR24、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
21,R22およびR24は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21,R22およびR24が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21,前記R22および前記R24における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
は、NR25、酸素原子、または硫黄原子であり、
23およびR25は、それぞれ独立に、置換基であり、R23およびR25が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23および前記R25における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY34とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152を介して架橋されていてもよく、
24とY32とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5354を介して架橋されていてもよく、
51〜R54は、それぞれ独立に、前記R23,R25が置換基である場合の置換基と同義である。)
【請求項27】
請求項1から請求項26のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第二の化合物は、下記一般式(20C)で表される基を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化14】
(前記一般式(20C)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
51,Y53,Y54およびY55は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR26であり、
21およびR26は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21およびR26が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21および前記R26における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY51とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556を介して架橋されていてもよく、
24とY55とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5758を介して架橋されていてもよく、
55〜R58は、それぞれ独立に、置換基であり、R55〜R58における置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R55〜R58における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。)
【請求項28】
請求項1から請求項27のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第二の化合物は、下記一般式(20D)で表される基を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化15】
(前記一般式(20D)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
51,Y53,Y54およびY55は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR26であり、
31〜Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、窒素原子、CR22、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
21,R22およびR26は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21,R22およびR26が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21,前記R22および前記R26における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
23は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY51とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556を介して架橋されていてもよく、
24とY55とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5758を介して架橋されていてもよく、
51とY37とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5960を介して架橋されていてもよく、
53とY35とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR6162を介して架橋されていてもよく、
55〜R62は、それぞれ独立に、前記R23が置換基である場合の置換基と同義である。)
【請求項29】
請求項1から請求項28のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第二の化合物は、下記一般式(20E)で表される基を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化16】
(前記一般式(20E)において、
31,Y32,Y34,Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR22であり、
41〜Y45,Y47およびY48は、それぞれ独立に、窒素原子、CR24、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
22およびR24は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R22およびR24が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R22および前記R24における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非
縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
は、NR25、酸素原子、または硫黄原子であり、
23およびR25は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R23およびR25が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23および前記R25における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。)
【請求項30】
請求項1から請求項29のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第二の化合物は、金属錯体ではない有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項31】
請求項1から請求項30のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層には金属錯体が含まれていない有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項32】
請求項1から請求項31のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間に正孔輸送層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項33】
請求項1から請求項32のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陰極と前記発光層との間に電子輸送層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項34】
請求項1から請求項33のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器。
【請求項35】
下記一般式(1)で表される遅延蛍光発光性の化合物。
【化17】
(前記一般式(1)において、
Ar11は、無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基であり、
、連結基であり、Lにおける連結基としては、無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基であり、
〜Y12は、それぞれ独立に、窒素原子またはCRであり、
13〜Y17は、それぞれ独立に、窒素原子またはCRであり、
13〜Y17のうち、一つ以上三つ以下が窒素原子であり、
は、酸素原子、硫黄原子、N−R10、CR1112、SiR1314、またはGeR1516であり、
,R10〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R,R10〜R16が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択され、
複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRのうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよく、
は、水素原子または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基としては、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択され、
複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRのうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という場合がある。)に電圧を印加すると、陽極から正孔が、また陰極から電子が、それぞれ発光層に注入される。そして、発光層において、注入された正孔と電子とが再結合し、励起子が形成される。このとき、電子スピンの統計則により、一重項励起子、及び三重項励起子が25%:75%の割合で生成する。
一重項励起子からの発光を用いる蛍光型の有機EL素子は、内部量子効率25%が限界といわれており、携帯電話やテレビ等のフルカラーディスプレイへ応用されつつあるものの、一重項励起子に加えて三重項励起子を利用する更なる効率化が期待されていた。
【0003】
このような背景から、遅延蛍光を利用した高効率の蛍光型の有機EL素子が提案され、研究がなされている。
例えば、TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence、熱活性化遅延蛍光)機構が研究されている。このTADF機構は、一重項準位と三重項準位とのエネルギー差(ΔST)の小さな材料を用いた場合に、三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差が熱的に生じる現象を利用するものである。熱活性遅延蛍光については、例えば、『安達千波編、「有機半導体のデバイス物性」、講談社、2012年3月22日、261−262ページ』に記載されている。このTADF機構を利用した有機EL素子が、例えば、特許文献1や非特許文献1に開示されている。
しかしながら、有機EL素子には、高電流密度領域における発光効率の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/070963号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】安達千波矢、外3名、「Efficient green thermally activated delayed fluorescence(TADF) from a phenoxazine-triphenylazine(PXZ-TRZ)derivative」、ChemComm、2012年、DOI:10.1039/c2cc36237f
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高電流密度領域における発光効率を向上させることのできる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供すること、当該有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる化合物を提供すること、並びに当該有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、陽極と、発光層と、陰極と、を含み、前記発光層は、第一の化合物および第二の化合物を含み、前記第一の化合物は、下記一般式(1)で表される遅延蛍光発光性の化合物であり、前記第二の化合物は、一つの分子中に下記一般式(21)で表される部分構造および下記一般式(22)で表される部分構造のうち少なくともいずれかを含む化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0008】
【化1】
【0009】
(前記一般式(1)において、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、Lは、単結合、または連結基であり、Lにおける連結基としては、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、Y〜Y12は、それぞれ独立に、窒素原子またはCRであり、Xは、酸素原子、硫黄原子、N−R10、CR1112、SiR1314、またはGeR1516であり、R,R10〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R,R10〜R16が置換基である場合の置換基は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、置換シリル基、置換ゲルマニウム基、置換ホスフィンオキシド基、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、およびカルボキシ基からなる群から選択され、複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRのうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。)
【0010】
【化2】
【0011】
(前記一般式(21)において、Y21〜Y26は、それぞれ独立に、窒素原子、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、ただし、Y21〜Y26のうち少なくともいずれかは、前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、前記一般式(22)において、Y31〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、ただし、Y31〜Y38のうち少なくともいずれかは、前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、Xは、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子である。)
【0012】
また、本発明の一態様によれば、前記一般式(1)で表される遅延蛍光発光性の化合物が提供される。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、高電流密度領域における発光効率を向上させることのできる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供すること、当該有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる化合物を提供すること、並びに当該有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る有機EL素子の概略構成を示す図である。
図2】過渡PLを測定する装置の概略図である。
図3】発光層における第一の化合物および第二の化合物のエネルギー準位およびエネルギー移動の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第一実施形態〕
(有機EL素子の素子構成)
本実施形態に係る有機EL素子は、一対の電極間に有機層を備える。この有機層は、有機化合物で構成される複数の層が積層されてなる。有機層は、無機化合物をさらに含んでいてもよい。本実施形態の有機EL素子において、有機層のうち少なくとも1層は、発光層である。ゆえに、有機層は、例えば、一つの発光層で構成されていてもよいし、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、障壁層等の有機EL素子で採用され得る層を含んでいてもよい。
【0017】
有機EL素子の代表的な素子構成としては、例えば、次の(a)〜(e)などの構成を挙げることができる。
(a)陽極/発光層/陰極
(b)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/陰極
(c)陽極/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(d)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/障壁層/電子注入・輸送層/陰極
上記の中で(d)の構成が好ましく用いられる。ただし、本発明は、これらの構成に限定されるものではない。なお、上記「発光層」とは、発光機能を有する有機層である。前記「正孔注入・輸送層」は「正孔注入層および正孔輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味する。前記「電子注入・輸送層」は「電子注入層および電子輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味する。有機EL素子が、正孔注入層および正孔輸送層を有する場合には、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層が設けられていることが好ましい。また、有機EL素子が電子注入層および電子輸送層を有する場合には、電子輸送層と陰極側との間に電子注入層が設けられていることが好ましい。また、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層は、それぞれ、一層で構成されていても良いし、複数の層が積層されていてもよい。
【0018】
図1に、本実施形態における有機EL素子の一例の概略構成を示す。
有機EL素子1は、透光性の基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された有機層10と、を含む。有機層10は、陽極3側から順に、正孔注入層6、正孔輸送層7、発光層5、電子輸送層8、および電子注入層9が、この順番で積層されて構成される。
【0019】
(発光層)
有機EL素子1の発光層5は、第一の化合物および第二の化合物を含む。発光層5は、金属錯体を含んでも良いが、本実施形態では、燐光発光性の金属錯体を含まないことが好ましく、燐光発光性の金属錯体以外の金属錯体も含まないことが好ましい。
【0020】
<第一の化合物>
本実施形態の第一の化合物は、下記一般式(1)で表される。本実施形態の第一の化合物は、遅延蛍光発光性の化合物である。本実施形態の第一の化合物は、金属錯体ではない。
【0021】
【化3】
【0022】
前記一般式(1)において、
Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、
は、単結合、または連結基であり、Lにおける連結基としては、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、
〜Y12は、それぞれ独立に、窒素原子またはCRであり、
は、酸素原子、硫黄原子、N−R10、CR1112、SiR1314、またはGeR1516であり、
,R10〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R,R10〜R16が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択され、
複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRのうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。
【0023】
本実施形態において、−Ar11と、−L−Ar12とが異なることが好ましい。すなわち、前記一般式(1)で表される構造において、窒素原子に結合するAr11と、別の窒素原子に結合するL−Ar12とが異なることが好ましい。
また、本実施形態において、前記Ar11は、無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、前記Lは、連結基であることも好ましい。この場合も、前記一般式(1)で表される構造において、窒素原子に結合するAr11と、別の窒素原子に結合するL−Ar12とが異なることとなる。また、Ar11の置換基としてシアノ基が好ましい。
【0024】
本実施形態において、前記第一の化合物は、下記一般式(10)で表されることも好ましい。
【0025】
【化4】
【0026】
前記一般式(10)において、X,Y〜Y12,L,Ar11およびAr12は、それぞれ、前記一般式(1)におけるX,Y〜Y12,L,Ar11およびAr12と同義であり、Rは、置換基であり、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。
【0027】
前記一般式(10)において、−Ar11−Rと、−L−Ar12とが異なることが好ましい。すなわち、前記一般式(10)で表される構造において、窒素原子に結合するAr11−Rと、別の窒素原子に結合するL−Ar12とが異なることが好ましい。
【0028】
本実施形態において、前記Y〜Y12は、CRであることが好ましく、Rは、水素原子であることがより好ましい。この場合、例えば、前記一般式(1)は、下記一般式(1C)で表される。
【0029】
【化5】
【0030】
前記一般式(1C)において、X,L,Ar11およびAr12は、それぞれ、前記一般式(1)におけるX,L,Ar11およびAr12と同義である。
【0031】
本実施形態において、前記Ar12は、下記一般式(11)で表される基であることが好ましい。
【0032】
【化6】
【0033】
前記一般式(11)において、
13〜Y17は、それぞれ独立に、窒素原子またはCRであり、
は、水素原子または置換基であり、Rが置換基である場合の置換基としては、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択され、
複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRのうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。前記一般式(11)において、波線部分は、前記Lとの結合箇所を表す。
【0034】
本実施形態において、前記Ar12が、前記一般式(11)で表される基である場合、前記一般式(1)は、下記一般式(1B)で表される。
【0035】
【化7】
【0036】
前記一般式(1B)において、X,Y〜Y12,L,およびAr11は、それぞれ、前記一般式(1)におけるX,Y〜Y12,L,およびAr11と同義であり、Y13〜Y17は、それぞれ、前記一般式(11)におけるY13〜Y17と同義である。
【0037】
本実施形態において、前記Y13〜Y17のうち少なくとも一つが窒素原子であることが好ましく、一つ以上三つ以下が窒素原子であることがより好ましい。
【0038】
また、本実施形態において、前記Y13〜Y17は、それぞれ独立に、CRであることも好ましい。この場合、複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0039】
本実施形態において、前記Y13〜Y17のうち少なくとも一つがCRであることも好ましく、前記Rの少なくとも一つが、シアノ基であることが好ましい。
【0040】
本実施形態において、前記Ar12は、下記一般式(11a)で表される基、下記一般式(11b)で表される基、下記一般式(11c)で表される基、下記一般式(11d)で表される基、または下記一般式(11e)で表される基であることが好ましい。
【0041】
【化8】
【0042】
【化9】
【0043】
前記一般式(11a)〜(11e)において、Y13〜Y17は、それぞれ前記一般式(11)におけるY13〜Y17と同義である。前記一般式(11a)〜(11e)において、波線部分は、前記Lとの結合箇所を表す。
【0044】
本実施形態において、前記Ar12は、下記一般式(11f)で表される基、下記一般式(11g)で表される基、または下記一般式(11h)で表される基であることが好ましい。
【0045】
【化10】
【0046】
前記一般式(11g)〜(11h)において、Y15は、それぞれ前記一般式(11)におけるY15と同義である。前記一般式(11f)〜(11h)において、波線部分は、前記Lとの結合箇所を表す。
【0047】
前記一般式(11a)〜(11h)において、前記Y13〜Y17は、CRであることも好ましい。この場合、Rは、水素原子であることが好ましい。また、Rが置換基であってもよく、置換基Rは、シアノ基以外であることが好ましい。複数の置換基Rがある場合は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0048】
本実施形態において、前記Ar12に1つ以上の電子吸引性基が置換されていることも好ましい。電子吸引性基としては、例えば、シアノ基、フルオロ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキル置換アルキル基、ニトロ基、カルボニル基等が挙げられる。これらの電子吸引性基の中で、シアノ基、フルオロ基、ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化アルキル置換アルキル基が好ましく、シアノ基がより好ましい。前記Ar12に置換される電子吸引性基が複数ある場合、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記Ar12にシアノ基が置換される場合、1つまたは2つであることも好ましい。一方で、前記Ar12にシアノ基が置換される場合、3つ以上であることも好ましい。
【0049】
本実施形態において、前記Ar12は、置換もしくは無置換のピリジニル基、置換もしくは無置換のピリミジニル基、または置換もしくは無置換のトリアジニル基であることも好ましい。例えば、前記Ar12は、下記一般式(11i),(11j),(11k),(11m),(11n),(11p),(11q),(11r),(11s)のいずれかで表される基であることも好ましい。
【0050】
【化11】
【0051】
【化12】
【0052】
【化13】
【0053】
前記一般式(11i),(11j),(11k),(11m),(11n),(11p),(11q),(11r),(11s)において、Ra,Rb,Rc,Rdは、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、Ra,Rb,Rc,Rdが置換基である場合の置換基としては、前記Rが置換基である場合に列挙された置換基の群から選択される。Ra,Rb,Rc,Rdが置換基である場合の置換基としては、シアノ基以外であることが好ましい。
前記一般式(11i),(11j),(11k),(11m),(11n),(11p),(11q),(11r),(11s)で表される基の中では、例えば、前記一般式(11q)で表される基が好ましく、RaおよびRbは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であることが好ましく、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基であることがより好ましい。前記一般式(11i),(11j),(11k),(11m),(11n),(11p),(11q),(11r),(11s)において、波線部分は、前記Lとの結合箇所を表す。
【0054】
本実施形態において、前記Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であることが好ましく、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基であることがより好ましい。
また、前記Lは、フェニレン基、ビフェニルジイル基またはナフチレン基であることが好ましく、フェニレン基またはビフェニルジイル基であることがより好ましく、p−フェニレン基がさらに好ましい。前記Lの置換基としては、フェニル基、アルキル基、およびシアノ基の少なくともいずれかが好ましい。
【0055】
本実施形態において、前記Xは、酸素原子または硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
【0056】
本実施形態において、前記Ar11は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基であることが好ましく、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、およびトリフェニレニル基からなる群から選択される芳香族炭化水素基であることがさらに好ましい。
【0057】
本実施形態において、置換シリル基は、−Si(R100で表されることが好ましい。R100は、それぞれ独立に、置換基である。置換基R100は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基であることが好ましい。複数のR100は、互いに同一でも異なっていてもよい。
本実施形態において、置換ゲルマニウム基は、−Ge(R101で表されることが好ましい。R101は、それぞれ独立に、置換基である。置換基R101は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基であることが好ましい。複数のR101は、互いに同一でも異なっていてもよい。
本実施形態において、置換ホスフィンオキシド基は、下記一般式(100)で表されることが好ましい。
【0058】
【化14】
【0059】
前記一般式(100)において、R102およびR103は、それぞれ独立に、置換基である。置換基R102および置換基R103は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0060】
・遅延蛍光発光性
遅延蛍光(熱活性化遅延蛍光)については、「有機半導体のデバイス性」(安達千波矢編、講談社発行)の261〜268ページで解説されている。その文献の中で、蛍光発光材料の励起一重項状態と励起三重項状態のエネルギー差ΔE13を小さくすることができれば、通常は遷移確率が低い励起三重項状態から励起一重項状態への逆エネルギー移動が高効率で生じ、熱活性化遅延蛍光(ThermallyActivated delayed Fluorescence, TADF)が発現すると説明されている。さらに、当該文献中の図10.38で、遅延蛍光の発生メカニズムが説明されている。本実施形態における第一の化合物は、このようなメカニズムで発生する遅延蛍光を示す化合物である。
遅延蛍光の発光は過渡PL(Photo Luminescence)測定により確認できる。
【0061】
過渡PL測定から得た減衰曲線に基づいて遅延蛍光の挙動を解析することもできる。過渡PLとは、試料にパルスレーザーを照射して励起させ、照射を止めた後のPL発光の減衰挙動(過渡特性)を測定する手法である。TADF材料におけるPL発光は、最初のPL励起で生成する一重項励起子からの発光成分と、三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光成分に分類される。最初のPL励起で生成する一重項励起子の寿命は、ナノ秒オーダーであり、非常に短い。そのため、当該一重項励起子からの発光は、パルスレーザーを照射後、速やかに減衰する。
一方、遅延蛍光は、寿命の長い三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光のため、ゆるやかに減衰する。このように最初のPL励起で生成する一重項励起子からの発光と、三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光とでは、時間的に大きな差がある。そのため、遅延蛍光由来の発光強度を求めることができる。
【0062】
図2には、過渡PLを測定するための例示的装置の概略図が示されている。
本実施形態の過渡PL測定装置100は、所定波長の光を照射可能なパルスレーザー部101と、測定試料を収容する試料室102と、測定試料から放射された光を分光する分光器103と、2次元像を結像するためのストリークカメラ104と、2次元像を取り込んで解析するパーソナルコンピュータ105とを備える。なお、過渡PLの測定は、本実施形態で説明する装置に限定されない。
試料室102に収容される試料は、マトリックス材料に対し、ドーピング材料が12質量%の濃度でドープされた薄膜を石英基板に成膜することで得られる。
試料室102に収容された薄膜試料に対し、パルスレーザー部101からパルスレーザーを照射して励起させる。励起光の90度の方向から発光を取り出し、分光器103で分光し、ストリークカメラ104内で2次元像を結像する。その結果、縦軸が時間に対応し、横軸が波長に対応し、輝点が発光強度に対応する2次元画像を得ることができる。この2次元画像を所定の時間軸で切り出すと、縦軸が発光強度であり、横軸が波長である発光スペクトルを得ることができる。また、当該2次元画像を波長軸で切り出すと、縦軸が発光強度の対数であり、横軸が時間である減衰曲線(過渡PL)を得ることができる。
【0063】
上記したように過渡PL測定によって、縦軸を発光強度とし、横軸を時間とする発光減衰曲線を得ることができる。この発光減衰曲線に基づいて、光励起により生成した一重項励起状態から発光する蛍光と、三重項励起状態を経由し、逆エネルギー移動により生成する一重項励起状態から発光する遅延蛍光との、蛍光強度比を見積もることができる。遅延蛍光発光性の材料では、素早く減衰する蛍光の強度に対し、緩やかに減衰する遅延蛍光の強度の割合が、ある程度大きい。
本実施形態における遅延蛍光発光量は、図2の装置を用いて求めることができる。前記第一の化合物は、当該第一の化合物が吸収する波長のパルス光(パルスレーザーから照射される光)で励起された後、当該励起状態から即座に観察されるPrompt発光(即時発光)と、当該励起後、即座には観察されず、その後観察されるDelay発光(遅延発光)とが存在する。本実施形態においては、Delay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上であることが好ましい。
Prompt発光とDelay発光の量は、“Nature 492, 234−238, 2012”に記載された方法と同様の方法により求めることができる。なお、Prompt発光とDelay発光の量の算出に使用される装置は、前記の文献に記載の装置に限定されない。
また、遅延蛍光発光性の測定に用いられる試料は、例えば、第一の化合物と後述する化合物TH−2とを、第一の化合物の割合が12質量%となるように石英基板上に共蒸着し、膜厚100nmの薄膜を形成して作製することができる。
【0064】
本実施形態の第一の化合物は、遅延蛍光発光性の化合物であり、その発光色は特に限定されない。例えば、第一の化合物は、主ピーク波長が550nm以下の発光を示すことが好ましく、主ピーク波長が480nm以下の発光を示すことがより好ましい。一方で、第一の化合物は、主ピーク波長が550nmを超える発光を示すことも好ましい。主ピーク波長とは、測定対称化合物が10−5モル/リットル以上10−6モル/リットル以下の濃度で溶解しているトルエン溶液について、測定した発光スペクトラムにおける発光強度が最大となる発光スペクトルのピーク波長をいう。
【0065】
・ΔST
本実施形態において、第一の化合物の一重項エネルギーS(M1)と、第一の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M1)との差ΔST(M1)が、下記数式(数1)の関係を満たすことが好ましい。本実施形態では、一重項エネルギーSとエネルギーギャップT77Kとの差をΔSTとして定義する。
ΔST(M1)=S(M1)−T77K(M1)<0.3[eV] …(数1)
ΔST(M1)は、0.2[eV]未満であることが好ましい。
【0066】
一重項エネルギーSと三重項エネルギーTの差に値するΔSTを小さくするには、量子化学的には、一重項エネルギーSと三重項エネルギーTにおける交換相互作用が小さいことで実現する。ΔSTと交換相互作用の関係性における物理的な詳細に関しては、例えば、次の参考文献1や参考文献2に記載されている。
参考文献1:安達千波矢ら、有機EL討論会 第10回例会予稿集、S2−5,p11〜12
参考文献2:徳丸克己、有機光化学反応論、東京化学同人出版、(1973)
このような材料は、量子計算により分子設計を行い合成することが可能であり、具体的には、LUMO、及びHOMOの電子軌道を重ねないように局在化させた化合物である。
本実施形態の第一の化合物に用いるΔSTの小さな化合物の例としては、分子内でドナー要素とアクセプター要素とを結合した化合物であり、さらに電気化学的な安定性(酸化還元安定性)を考慮し、ΔSTが0eV以上0.3eV未満の化合物が挙げられる。
また、より好ましい化合物は、分子の励起状態で形成される双極子(ダイポール)が互いに相互作用し、交換相互作用エネルギーが小さくなるような会合体を形成する化合物である。本発明者らの検討によれば、このような化合物は、双極子(ダイポール)の方向がおおよそ揃い、分子の相互作用により、さらにΔSTが小さくなり得る。このような場合、ΔSTは、0eV以上0.2eV以下と極めて小さくなり得る。
【0067】
・三重項エネルギーと77[K]におけるエネルギーギャップとの関係
ここで、三重項エネルギーと77[K]におけるエネルギーギャップとの関係について説明する。本実施形態では、77[K]におけるエネルギーギャップは、通常定義される三重項エネルギーとは異なる点がある。
測定対象となる第一の化合物に関しては、三重項エネルギーの測定は、次のようにして行われる。測定対象となる化合物(第一の化合物)と、化合物TH−2とを石英基板上に共蒸着し、NMR管内に封入した試料を作製する。なお、この試料は、下記の条件にて作られたものである。
石英基板/TH−2:第一の化合物(膜厚100nm,第一の化合物濃度:12質量%)
【0068】
【化15】
【0069】
この測定試料について、低温(77[K])で燐光スペクトル(縦軸:燐光発光強度、横軸:波長とする。)を測定し、この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]に基づいて、次の換算式1から算出されるエネルギー量を77[K]におけるエネルギーギャップT77Kとした。
換算式1:T77K[eV]=1239.85/λedge
燐光の測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF−4500形分光蛍光光度計本体を用いた。なお、燐光測定装置は、ここで用いた装置に限定されない。
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線(すなわち変曲点における接線)が、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の15%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
ここで、本実施形態に用いる第一の化合物としては、ΔSTが小さい化合物であることが好ましい。ΔSTが小さいと、低温(77[K])状態でも、項間交差、及び逆項間交差が起こりやすく、励起一重項状態と励起三重項状態とが混在する。その結果、上記と同様にして測定されるスペクトルは、励起一重項状態および励起三重項状態の両者からの発光を含んでおり、いずれの状態から発光したのか峻別することは困難である。しかしながら、基本的には三重項エネルギーの値が支配的と考えられる。そのため、本実施形態では、通常の三重項エネルギーTと測定手法は同じであるが、その厳密な意味において異なることを区別するため、上述のようにして測定される値をエネルギーギャップT77Kと称する。
【0070】
・一重項エネルギーS
一重項エネルギーSは、次のようにして測定される。
測定対象となる化合物の10μmol/Lトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトル(縦軸:発光強度、横軸:波長とする。)を測定した。この吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を次に示す換算式2に代入して一重項エネルギーを算出した。
換算式2:S[eV]=1239.85/λedge
本実施例では、吸収スペクトルを日立社製の分光光度計(装置名:U3310)で測定した。なお、吸収スペクトル測定装置は、ここで用いた装置に限定されない。
【0071】
吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線は以下のように引く。吸収スペクトルの極大値のうち、最も長波長側の極大値から長波長方向にスペクトル曲線上を移動する際に、曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち下がるにつれ(つまり縦軸の値が減少するにつれ)、傾きが減少しその後増加することを繰り返す。傾きの値が最も長波長側(ただし、吸光度が0.1以下となる場合は除く)で極小値をとる点において引いた接線を当該吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線とする。
なお、吸光度の値が0.2以下の極大点は、上記最も長波長側の極大値には含めない。
【0072】
・第一の化合物の製造方法
前記第一の化合物は、例えば、下記実施例に記載した方法により製造することができる。
【0073】
本実施形態に係る第一の化合物の例を以下に示す。なお、本発明における第一の化合物は、これらの例に限定されない。
【0074】
【化16】
【0075】
【化17】
【0076】
【化18】
【0077】
【化19】
【0078】
【化20】
【0079】
【化21】
【0080】
【化22】
【0081】
【化23】
【0082】
【化24】
【0083】
【化25】
【0084】
【化26】
【0085】
【化27】
【0086】
【化28】
【0087】
【化29】
【0088】
【化30】
【0089】
【化31】
【0090】
【化32】
【0091】
【化33】
【0092】
【化34】
【0093】
<第二の化合物>
本実施形態の第二の化合物は、一つの分子中に下記一般式(21)で表される部分構造および下記一般式(22)で表される部分構造のうち少なくともいずれかを含む化合物である。
【0094】
【化35】
【0095】
前記一般式(21)において、
21〜Y26は、それぞれ独立に、窒素原子、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
ただし、Y21〜Y26のうち少なくともいずれかは、前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
前記一般式(22)において、
31〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
ただし、Y31〜Y38のうち少なくともいずれかは、前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子である。
【0096】
本実施形態において、前記一般式(21)で表される部分構造は、下記一般式(23)で表される基および下記一般式(24)で表される基からなる群から選択される少なくともいずれかの基として前記第二の化合物に含まれることが好ましい。
【0097】
【化36】
【0098】
前記一般式(23)および前記一般式(24)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
21は、水素原子または置換基であり、R21が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
前記一般式(23)および前記一般式(24)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0099】
本実施形態では、前記一般式(23)において、前記Y21,前記Y22,前記Y24および前記Y26は、それぞれ独立に、CR21であることが好ましく、複数のR21は、同一でも異なっていてもよい。
また、本実施形態では、前記一般式(24)において、前記Y22,前記Y24および前記Y26は、それぞれ独立に、CR21であることが好ましく、複数のR21は、同一でも異なっていてもよい。
【0100】
本実施形態において、前記一般式(22)で表される部分構造は、下記一般式(25)で表される基,下記一般式(26)で表される基,下記一般式(27)で表される基,下記一般式(28)で表される基,下記一般式(29)で表される基,および下記一般式(30)で表される基からなる群から選択される少なくともいずれかの基として前記第二の化合物に含まれることが好ましい。
【0101】
【化37】
【0102】
【化38】
【0103】
【化39】
【0104】
前記一般式(25)〜(30)において、
31〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR22であり、
22は、水素原子または置換基であり、R22が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R22における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
前記一般式(25),(26)において、Xは、窒素原子であり、
前記一般式(27)〜(30)において、Xは、NR23、酸素原子または硫黄原子であり、
23は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
前記一般式(25)〜(30)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0105】
本実施形態では、前記一般式(25)において、Y31〜Y38は、それぞれ独立に、CR22であることが好ましく、前記一般式(26)および前記一般式(27)において、Y31〜Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、CR22であることが好ましく、前記一般式(28)において、Y31,Y32,Y34,Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、CR22であることが好ましく、前記一般式(29)において、Y32〜Y38は、それぞれ独立に、CR22であることが好ましく、前記一般式(30)において、Y32〜Y37は、それぞれ独立に、CR22であることが好ましく、複数のR22は、同一でも異なっていてもよい。
【0106】
本実施形態において、第二の化合物は、下記一般式(20A)で表される基を含むことも好ましい。
【0107】
【化40】
【0108】
前記一般式(20A)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
31,Y32およびY34〜Y38は、それぞれ独立に、窒素原子、CR22、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21およびR22が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21および前記R22における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
23は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY34とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152を介して架橋されていてもよく、
24とY32とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5354を介して架橋されていてもよく、
51〜R54は、それぞれ独立に、前記R23が置換基である場合の置換基と同義である。
前記一般式(20A)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0109】
例えば、前記一般式(20A)において、Y22とY34とが、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152を介して架橋される場合は、下記一般式(20A−1)で表される。
【0110】
【化41】
【0111】
ただし、前記一般式(20A−1)において、Z21は、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152である。前記一般式(20A−1)において、X,Y21,Y24,Y26,Y31,Y32,Y35〜Y38は、それぞれ、前記一般式(20A)におけるX,Y21,Y24,Y26,Y31,Y32,Y35〜Y38と同義である。
【0112】
本実施形態において、前記第二の化合物は、下記一般式(20B)で表される基を含むことも好ましい。
【0113】
【化42】
【0114】
前記一般式(20B)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
31,Y32,Y34,Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR22であり、
41〜Y45,Y47およびY48は、それぞれ独立に、窒素原子、CR24、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
21,R22,R24は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21,R22およびR24が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21,前記R22,前記R24における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
は、NR25、酸素原子、または硫黄原子であり、
23およびR25は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23および前記R25における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY34とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152を介して架橋されていてもよく、
24とY32とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5354を介して架橋されていてもよく、
51〜R54は、それぞれ独立に、前記R23および前記R25が置換基である場合の置換基と同義である。
前記一般式(20B)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0115】
例えば、前記一般式(20B)において、Y22とY34とが、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152を介して架橋される場合は、下記一般式(20B−1)で表される。
【0116】
【化43】
【0117】
ただし、前記一般式(20B−1)において、Z22は、酸素原子、硫黄原子、またはCR5152である。前記一般式(20B−1)において、X,X,Y21,Y24,Y26,Y31,Y32,Y35,Y37,Y38,Y41〜Y45,Y47およびY48は、それぞれ、前記一般式(20B)におけるX,X,Y21,Y24,Y26,Y31,Y32,Y35,Y37,Y38,Y41〜Y45,Y47およびY48と同義である。
【0118】
本実施形態において、前記第二の化合物は、下記一般式(20C)で表される基を含むことも好ましい。
【0119】
【化44】
【0120】
前記一般式(20C)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
51,Y53,Y54およびY55は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR26であり、
21およびR26は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21およびR26が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21および前記R26における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY51とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556を介して架橋されていてもよく、
24とY55とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5758を介して架橋されていてもよく、
55〜R58は、それぞれ独立に、置換基であり、R55〜R58における置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R55〜R58における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
前記一般式(20C)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0121】
例えば、前記一般式(20C)において、Y22とY51とが、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556を介して架橋される場合は、下記一般式(20C−1)で表される。
【0122】
【化45】
【0123】
ただし、前記一般式(20C−1)において、Z23は、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556である。前記一般式(20C−1)において、Y21,Y24,Y26およびY53〜Y55は、それぞれ、前記一般式(20C)におけるY21,Y24,Y26およびY53〜Y55と同義である。
【0124】
本実施形態において、前記第二の化合物は、下記一般式(20D)で表される基を含むことも好ましい。
【0125】
【化46】
【0126】
(前記一般式(20D)において、
21,Y22,Y24およびY26は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR21であり、
51,Y53,Y54およびY55は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR26であり、
31〜Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、窒素原子、CR22、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
21,R22およびR26は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R21,R22およびR26が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R21,前記R22および前記R26における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
23は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
22とY51とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556を介して架橋されていてもよく、
24とY55とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5758を介して架橋されていてもよく、
51とY37とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR5960を介して架橋されていてもよく、
53とY35とは、酸素原子、硫黄原子、またはCR6162を介して架橋されていてもよく、
55〜R62は、それぞれ独立に、前記R23が置換基である場合の置換基と同義である。 前記一般式(20D)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0127】
例えば、前記一般式(20D)において、Y22とY51とが、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556を介して架橋される場合は、下記一般式(20D−1)で表される。
【0128】
【化47】
【0129】
ただし、前記一般式(20D−1)において、Z24は、酸素原子、硫黄原子、またはCR5556である。前記一般式(20D−1)において、X,Y21,Y24,Y26,Y31〜Y35,Y37,Y38およびY53〜Y55は、それぞれ、前記一般式(20D)におけるX,Y21,Y24,Y26,Y31〜Y35,Y37,Y38およびY53〜Y55と同義である。
【0130】
例えば、前記一般式(20D)において、Y51とY37とが、酸素原子、硫黄原子、またはCR5960を介して架橋される場合は、下記一般式(20D−2)で表される。
【0131】
【化48】
【0132】
ただし、前記一般式(20D−2)において、Z25は、酸素原子、硫黄原子、またはCR5960である。前記一般式(20D−2)において、X,Y21,Y22,Y24,Y26,Y31〜Y35,Y38およびY53〜Y55は、それぞれ、前記一般式(20D)におけるX,Y21,Y22,Y24,Y26,Y31〜Y35,Y38およびY53〜Y55と同義である。
【0133】
本実施形態において、前記第二の化合物は、下記一般式(20E)で表される基を含むことも好ましい。
【0134】
【化49】
【0135】
前記一般式(20E)において、
31,Y32,Y34,Y35,Y37およびY38は、それぞれ独立に、窒素原子、またはCR22であり、
41〜Y45,Y47およびY48は、それぞれ独立に、窒素原子、CR24、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
22およびR24は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R22およびR24が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R22および前記R24における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
は、NR23、酸素原子、または硫黄原子であり、
は、NR25、酸素原子、または硫黄原子であり、
23およびR25は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R23および前記R25における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
前記一般式(20E)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0136】
本実施形態において、前記第二の化合物は、下記一般式(20F)で表される基、下記一般式(20G)で表される基、および下記一般式(20H)で表される基のうち少なくともいずれかの基を含んでいてもよい。
【0137】
【化50】
【0138】
【化51】
【0139】
【化52】
【0140】
前記一般式(20F),前記一般式(20G)および前記一般式(20H)において、Y21,Y22,Y24,Y26,Y31〜Y38,Y41〜Y48,Y61〜Y65,Y67およびY68は、それぞれ独立に、窒素原子、CR27、または前記第二の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
27は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R27が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R27における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
およびXは、それぞれ独立に、NR28、酸素原子、または硫黄原子であり、R28は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択される置換基であり、ただし、前記R28における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環であり、
前記一般式(20F),前記一般式(20G)および前記一般式(20H)において、波線部分は、前記第二の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0141】
本実施形態において、前記Xは、酸素原子もしくは硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
前記Xは、酸素原子もしくは硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
前記Xは、酸素原子もしくは硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
また、前記Xおよび前記Xが酸素原子であることが好ましい。
また、前記Xおよび前記Xが酸素原子であることが好ましい。
【0142】
本実施形態において、前記R21,前記R22,前記R24,前記R26および前記R27は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であって、前記R21,前記R22,前記R24,前記R26および前記R27における置換基は、フッ素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であることが好ましい。前記R21,前記R22,前記R24,前記R26および前記R27は、水素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であることがより好ましい。ただし、前記R21,前記R22,前記R24,前記R26および前記R27における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
【0143】
本実施形態において、前記R23,前記R25および前記R28は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であることが好ましく、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基からなる群から選択される置換基であることがより好ましい。ただし、前記R23,前記R25および前記R28における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
【0144】
本実施形態において、前記R51〜R62は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基からなる群から選択される置換基であることが好ましく、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、および置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基からなる群から選択される置換基であることがより好ましい。ただし、前記R51〜R62における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基は、非縮合環である。
【0145】
本実施形態において、第二の化合物は、芳香族炭化水素化合物、又は芳香族複素環化合物であることも好ましい。
また、本実施形態において、第二の化合物は、分子中に縮合芳香族炭化水素環を有していないことが好ましい。
【0146】
・第二の化合物の製造方法
前記一般式第二の化合物は、例えば、国際公開第2012/153780号(WO2012/153780A1)や国際公開第2013/038650号(WO2013−038650 A1)に記載の方法により製造することができる。
【0147】
本実施形態に係る第二の化合物における置換基の例は、例えば、以下のとおりであるが、本発明は、これらの例に限定されない。
【0148】
芳香族炭化水素基(アリ−ル基)の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾアントリル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、フルオランテニル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基等を挙げることができる。
置換基を有する芳香族炭化水素基としては、トリル基、キシリル基、9,9−ジメチルフルオレニル基等を挙げることができる。
具体例が示すように、アリール基は、縮合アリール基及び非縮合アリール基の両方を含む。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基が好ましい。
【0149】
芳香族複素環基(ヘテロアリール基、ヘテロ芳香族環基、複素環基)の具体例としては、ピロリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピリジル基、トリアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、アザジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、ベンズオキサゾリル基、チエニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンズチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等が挙げられ、好ましくは、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基等を挙げることができる。
芳香族複素環基としては、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基が好ましく、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基がさらに好ましい。
【0150】
本実施形態の第二の化合物において、置換シリル基は、置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、置換もしくは無置換のアリールアルキルシリル基、または置換もしくは無置換のトリアリールシリル基であることも好ましい。
置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基を挙げることができる。
置換若しくは無置換のアリールアルキルシリル基の具体例としては、ジフェニルメチルシリル基、ジトリルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等を挙げることができる。
置換若しくは無置換のトリアリールシリル基の具体例としては、トリフェニルシリル基、トリトリルシリル基等を挙げることができる。
【0151】
本実施形態の第二の化合物において、置換ホスフィンオキシド基は、置換もしくは無置換のジアリールホスフィンオキシド基であることも好ましい。
置換もしくは無置換のジアリールホスフィンオキシド基の具体例としては、ジフェニルホスフィンオキシド基、ジトリルホスフィンオキシド基等を挙げることができる。
【0152】
本実施形態に係る第二の化合物の例を以下に示す。なお、本発明における第二の化合物は、これらの例に限定されない。
【0153】
【化53】
【0154】
【化54】
【0155】
【化55】
【0156】
【化56】
【0157】
<TADF機構>
本実施形態の有機EL素子では、第一の化合物としてΔST(M1)が小さい化合物を用いることが好ましく、外部から与えられる熱エネルギーによって、第一の化合物の三重項準位から第一の化合物の一重項準位への逆項間交差が起こり易くなる。有機EL素子内部の電気励起された励起子の励起三重項状態が、逆項間交差によって、励起一重項状態へスピン交換がされるエネルギー状態変換機構をTADF機構と呼ぶ。
図3は、発光層における第一の化合物および第二の化合物のエネルギー準位の関係の一例を示すものである。図3において、S0は、基底状態を表し、S1は、第二の化合物の最低励起一重項状態を表し、T1は、第二の化合物の最低励起三重項状態を表し、S1は、第一の化合物の最低励起一重項状態を表し、T1は、第一の化合物の最低励起三重項状態を表す。図3中の破線の矢印は、各励起状態間のエネルギー移動を表す。第二の化合物の最低励起三重項状態T1からのデクスター移動により、第一の化合物の最低励起一重項状態S1または最低励起三重項状態T1にエネルギー移動する。さらに、第一の化合物としてΔST(M1)の小さな材料を用いると、第一の化合物の最低励起三重項状態T1は熱エネルギーによって最低励起一重項状態S1に逆項間交差することが可能である。この結果、第一の化合物の最低励起一重項状態S1からの蛍光発光を観測することができる。このTADF機構による遅延蛍光を利用することによっても、理論的に内部効率を100%まで高めることができると考えられている。
【0158】
本実施形態において、第二の化合物の一重項エネルギーS(M2)は、第一の化合物の一重項エネルギーS(M1)よりも大きいことが好ましい。
また、本実施形態において、第二の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M2)は、第一の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M1)よりも大きいことが好ましい。
【0159】
・発光層の膜厚
本実施形態の有機EL素子1における発光層5の膜厚は、好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは7nm以上50nm以下、さらに好ましくは10nm以上50nm以下である。5nm未満では発光層5の形成が困難となり、色度の調整が困難となるおそれがあり、50nmを超えると駆動電圧が上昇するおそれがある。
【0160】
・発光層における化合物の含有率
本実施形態の有機EL素子1では、発光層5において、第一の化合物の含有率は、10質量%以上99質量%以下であることが好ましく、第二の化合物の含有率は、1質量%以上90質量%以下であることが好ましい。発光層5における第一の化合物および第二の化合物の合計含有率の上限は、100質量%である。なお、本実施形態は、発光層5に、第一の化合物および第二の化合物以外の材料が含まれることを除外するものではない。
【0161】
(基板)
基板2は、有機EL素子1の支持体として用いられる。基板2としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックなどを用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0162】
(陽極)
基板2上に形成される陽極3には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
これらの材料は、通常、スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1質量%以上10質量%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。また、例えば、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5質量%以上5質量%以下、酸化亜鉛を0.1質量%以上1質量%以下含有したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
陽極3上に形成される有機層のうち、陽極3に接して形成される正孔注入層6は、陽極3の仕事関数に関係なく正孔(ホール)注入が容易である複合材料を用いて形成されるため、電極材料として可能な材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物、その他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素も含む)を用いることもできる。
仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて陽極3を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0163】
(正孔注入層)
正孔注入層6は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。
また、正孔注入性の高い物質としては、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等やジピラジノ[2,3−f:20,30−h]キノキサリン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN)も挙げられる。
また、正孔注入性の高い物質としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0164】
(正孔輸送層)
正孔輸送層7は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層7には、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体等を使用する事ができる。具体的には、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BAFLP)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。
正孔輸送層7には、CBP、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(PCzPA)のようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
正孔輸送層を二層以上配置する場合、エネルギーギャップのより大きい材料を含む層を、発光層5に近い側に配置することが好ましい。
【0165】
本実施形態において、正孔輸送層7は、発光層5で生成する三重項励起子が正孔輸送層7へ拡散することを防止し、三重項励起子を発光層5内に閉じ込める機能を有することが好ましい。
【0166】
(電子輸送層)
電子輸送層8は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層8には、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、3)高分子化合物を使用することができる。具体的には低分子の有機化合物として、Alq、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、BAlq、Znq、ZnPBO、ZnBTZなどの金属錯体等を用いることができる。また、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(ptert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。本実施態様においては、ベンゾイミダゾール化合物を好適に用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔輸送性よりも電子輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層8として用いてもよい。また、電子輸送層8は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
また、電子輸送層8には、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを用いることができる。
【0167】
本実施形態において、電子輸送層8は、発光層5で生成する三重項励起子が電子輸送層8や電子注入層9へ拡散することを防止し、三重項励起子を発光層5内に閉じ込める機能を有することが好ましい。
【0168】
(電子注入層)
電子注入層9は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層9には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、陰極4からの電子注入をより効率良く行うことができる。
あるいは、電子注入層9に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層8を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0169】
(陰極)
陰極4には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて陰極4を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
なお、電子注入層9を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、グラフェン、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いて陰極4を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0170】
(層形成方法)
本実施形態の有機EL素子1の各層の形成方法としては、上記で特に言及した以外には制限されないが、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ法、イオンプレーティング法などの乾式成膜法や、スピンコーティング法、ディッピング法、フローコーティング法、インクジェット法などの湿式成膜法などの公知の方法を採用することができる。
【0171】
(膜厚)
本実施形態の有機EL素子1の各有機層の膜厚は、上記で特に言及した以外には制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0172】
本明細書において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジニル基は環形成炭素数5であり、フラニル基は環形成炭素数4である。また、ベンゼン環やナフタレン環に置換基として例えばアルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、環形成炭素数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の炭素数は環形成炭素数の数に含めない。 本明細書において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば単環、縮合環、環集合)の化合物(例えば単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ピリジン環は、環形成原子数が6であり、キナゾリン環は、環形成原子数が10であり、フラン環は、環形成原子数が5である。ピリジン環やキナゾリン環の炭素原子にそれぞれ結合している水素原子や置換基を構成する原子については、環形成原子数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の原子数は環形成原子数の数に含めない。
次に前記一般式に記載の各置換基について説明する。
【0173】
本実施形態における環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基(アリール基と称する場合がある。)としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、クリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾ[a]アントリル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、トリフェニレニル基、ベンゾ[k]フルオランテニル基、ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾ[b]トリフェニレニル基、ピセニル基、ペリレニル基などが挙げられる。
本実施形態におけるアリール基としては、環形成炭素数が6〜20であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜12であることが更に好ましい。上記アリール基の中でもフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ターフェニル基、フルオレニル基が特に好ましい。1−フルオレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基および4−フルオレニル基については、9位の炭素原子に、後述する本実施形態における置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基や置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリール基が置換されていることが好ましい。
【0174】
本実施形態における環形成原子数5〜30の複素環基(ヘテロアリール基、ヘテロ芳香族環基、または芳香族複素環基と称する場合がある。)は、ヘテロ原子として、窒素、硫黄、酸素、ケイ素、セレン原子、およびゲルマニウム原子からなる群から選択される少なくともいずれかの原子を含むことが好ましく、窒素、硫黄、および酸素からなる群から選択される少なくともいずれかの原子を含むことがより好ましい。
本実施形態における環形成原子数5〜30の複素環基(ヘテロアリール基、ヘテロ芳香族環基、または芳香族複素環基と称する場合がある。)としては、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリニル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、イミダゾピリジニル基、ベンズトリアゾリル基、カルバゾリル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、ピペラジニル基、モルホリル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基などが挙げられる。
本実施形態における複素環基の環形成原子数は、5〜20であることが好ましく、5〜14であることがさらに好ましい。上記複素環基の中でも1−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、1−ジベンゾチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、3−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基が特に好ましい。1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基および4−カルバゾリル基については、9位の窒素原子に、本実施形態における置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基が置換されていることが好ましい。
【0175】
また、本実施形態において、複素環基は、例えば、下記一般式(XY−1)〜(XY−18)で表される部分構造から誘導される基であってもよい。
【0176】
【化57】
【0177】
【化58】
【0178】
【化59】
【0179】
前記一般式(XY−1)〜(XY−18)において、XおよびYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子であり、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、またはゲルマニウム原子であることが好ましい。前記一般式(XY−1)〜(XY−18)で表される部分構造は、任意の位置で結合手を有して複素環基となり、この複素環基は、置換基を有していてもよい。
【0180】
また、本実施形態において、置換もしくは無置換のカルバゾリル基としては、例えば、下記式で表されるようなカルバゾール環に対してさらに環が縮合した基も含み得る。このような基も置換基を有していてもよい。また、結合手の位置も適宜変更され得る。
【0181】
【化60】
【0182】
本実施形態における炭素数1〜30のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよい。直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、アミル基、イソアミル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、3−メチルペンチル基、が挙げられる。
本実施形態における直鎖または分岐鎖のアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。上記直鎖または分岐鎖のアルキル基の中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、アミル基、イソアミル基、ネオペンチル基が特に好ましい。
本実施形態におけるシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。シクロアルキル基の環形成炭素数は、3〜10であることが好ましく、5〜8であることがさらに好ましい。上記シクロアルキル基の中でも、シクロペンチル基やシクロヘキシル基が特に好ましい。
アルキル基がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基としては、例えば、上記炭素数1〜30のアルキル基が1以上のハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、トリフルオロメチルメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0183】
本実施形態における炭素数3〜30のアルキルシリル基としては、上記炭素数1〜30のアルキル基で例示したアルキル基を有するトリアルキルシリル基が挙げられ、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−n−オクチルシリル基、トリイソブチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジメチル−n−プロピルシリル基、ジメチル−n−ブチルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等が挙げられる。トリアルキルシリル基における3つのアルキル基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0184】
本実施形態における環形成炭素数6〜30のアリールシリル基としては、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基が挙げられる。
ジアルキルアリールシリル基は、例えば、上記炭素数1〜30のアルキル基で例示したアルキル基を2つ有し、上記環形成炭素数6〜30のアリール基を1つ有するジアルキルアリールシリル基が挙げられる。ジアルキルアリールシリル基の炭素数は、8〜30であることが好ましい。
アルキルジアリールシリル基は、例えば、上記炭素数1〜30のアルキル基で例示したアルキル基を1つ有し、上記環形成炭素数6〜30のアリール基を2つ有するアルキルジアリールシリル基が挙げられる。アルキルジアリールシリル基の炭素数は、13〜30であることが好ましい。
トリアリールシリル基は、例えば、上記環形成炭素数6〜30のアリール基を3つ有するトリアリールシリル基が挙げられる。トリアリールシリル基の炭素数は、18〜30であることが好ましい。
【0185】
本実施形態における炭素数1〜30のアルコキシ基は、−OZと表される。このZの例として、上記炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。アルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基があげられる。アルコキシ基の炭素数は、1〜20であることが好ましい。
アルコキシ基がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、上記炭素数1〜30のアルコキシ基が1以上のフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
【0186】
本実施形態における環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基は、−OZと表される。このZの例として、上記環形成炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。アリールオキシ基の環形成炭素数は、6〜20であることが好ましい。このアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基が挙げられる。
【0187】
炭素数2〜30のアルキルアミノ基は、−NHR、または−N(Rと表される。このRの例として、上記炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。
【0188】
環形成炭素数6〜60のアリールアミノ基は、−NHR、または−N(Rと表される。このRの例として、上記環形成炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。
【0189】
炭素数1〜30のアルキルチオ基は、−SRと表される。このRの例として、上記炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。アルキルチオ基の炭素数は、1〜20であることが好ましい。
環形成炭素数6〜30のアリールチオ基は、−SRと表される。このRの例として、上記環形成炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。アリールチオ基の環形成炭素数は、6〜20であることが好ましい。
【0190】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0191】
本発明において、「環形成炭素」とは飽和環、不飽和環、または芳香環を構成する炭素原子を意味する。「環形成原子」とはヘテロ環(飽和環、不飽和環、および芳香環を含む)を構成する炭素原子およびヘテロ原子を意味する。
また、本発明において、水素原子とは、中性子数の異なる同位体、すなわち、軽水素(Protium)、重水素(Deuterium)、三重水素(Tritium)を包含する。
【0192】
また、「置換もしくは無置換の」という場合における置換基としては、上述のようなアリール基、複素環基、アルキル基(直鎖または分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基)、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基の他に、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、およびカルボキシ基が挙げられる。
ここで挙げた置換基の中では、アリール基、複素環基、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルシリル基、アリールシリル基、シアノ基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとした具体的な置換基が好ましい。
これらの置換基は、上記の置換基によって更に置換されてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成してもよい。
【0193】
アルケニル基としては、炭素数2〜30のアルケニル基が好ましく、直鎖、分岐鎖、または環状のいずれであってもよく、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、スチリル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、シクロペンタジエニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基等が挙げられる。
【0194】
アルキニル基としては、炭素数2〜30のアルキニル基が好ましく、直鎖、分岐鎖、または環状のいずれであってもよく、例えば、エチニル、プロピニル、2−フェニルエチニル等が挙げられる。
【0195】
アラルキル基としては、環形成炭素数6〜30のアラルキル基が好ましく、−Z−Zと表される。このZの例として、上記炭素数1〜30のアルキル基に対応するアルキレン基が挙げられる。このZの例として、上記環形成炭素数6〜30のアリール基の例が挙げられる。このアラルキル基は、炭素数7〜30のアラルキル基(アリール部分は炭素数6〜30、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜12)、アルキル部分は炭素数1〜30(好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)であることが好ましい。このアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基が挙げられる。
【0196】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは前記置換基で置換されておらず、水素原子が結合していることを意味する。
なお、本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX〜YYのZZ基」という表現における「炭素数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表すものであり、置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX〜YYのZZ基」という表現における「原子数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表すものであり、置換されている場合の置換基の原子数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、前記と同様である。
【0197】
本実施形態において、置換基同士が互いに結合して環構造が構築される場合、環構造は、飽和環、不飽和環、または芳香環である。
【0198】
(電子機器)
本発明の一実施形態に係る有機EL素子1は、表示装置や発光装置等の電子機器に使用できる。表示装置としては、例えば、有機ELパネルモジュール等の表示部品、テレビ、携帯電話、タブレットもしくはパーソナルコンピュータ等が挙げられる。発光装置としては、例えば、照明、もしくは車両用灯具等が挙げられる。
【0199】
〔第二実施形態〕
第二実施形態に係る有機EL素子の構成について説明する。第二実施形態の説明において第一実施形態と同一の構成要素は、同一符号や名称を付す等して説明を省略もしくは簡略にする。また、第二実施形態では、特に言及されない材料や化合物については、第一実施形態で説明したものと同様の材料や化合物を用いることができる。
第二実施形態の有機EL素子は、発光層に含まれる第一の化合物が、下記一般式(30)で表される点で第一実施形態の有機EL素子1と相違し、その他の点については第一実施形態と同様である。第二実施形態の有機EL素子が備える発光層は、下記一般式(30)で表される遅延蛍光発光性の第一の化合物と、第一実施形態で説明した第二の化合物とを含む。本実施形態の第一の化合物は、金属錯体ではない。本実施形態では、発光層は、燐光発光性の金属錯体を含まないことが好ましく、燐光発光性の金属錯体以外の金属錯体も含まないことが好ましい。
【0200】
【化61】
【0201】
前記一般式(30)において、
Ar11およびAr12は、それぞれ、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、Ar11およびAr12は同じであり、
11およびL12は、単結合、または連結基であり、Lにおける連結基としては、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、L11およびL12は同じであり、
〜Y12は、それぞれ独立に、窒素原子またはCRであり、
は、酸素原子、硫黄原子、N−R10、CR1112、SiR1314、またはGeR1516であり、
,R10〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、R,R10〜R16が置換基である場合の置換基は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のフルオロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換シリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、および
カルボキシ基からなる群から選択され、
複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRのうち少なくとも2つが置換基である場合、置換基R同士は、互いに結合して環構造が構築されていてもよい。
【0202】
本実施形態においても、前記L11および前記L12は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であることが好ましい。
【0203】
また、本実施形態において、前記L11および前記L12は、単結合であり、前記Ar11および前記Ar12は、同じであることも好ましい。前記L11および前記L12が、単結合である場合、前記一般式(1)は、下記一般式(1A)で表される。
【0204】
【0205】
前記一般式(1A)において、L,Y〜Y12,およびXは、それぞれ前記一般式(1)におけるL,Y〜Y12,およびXと同義である。前記一般式(1A)において、Ar11およびAr12は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基であり、同じであることが好ましい。さらに、前記一般式(1A)において、YとY12とが同じであり、YとY11とが同じであり、YとY10とが同じであり、YとYとが同じであり、YとYとが同じであり、YとYとが同じであることが好ましい。
【0206】
本実施形態において、例えば、前記一般式(30),(1A)において、YとY12とが同じであり、YとY11とが同じであり、YとY10とが同じであり、YとYとが同じであり、YとYとが同じであり、YとYとが同じであることが好ましい。
【0207】
本実施形態において、前記Y〜Y12は、CRであることが好ましく、Rは、水素原子であることがより好ましい。
【0208】
本実施形態においても、前記Ar11および前記Ar12は、前記一般式(11)で表される基であることが好ましい。
【0209】
また、本実施形態においても、前記Ar11および前記Ar12は、前記一般式(11a)で表される基、前記一般式(11b)で表される基、前記一般式(11c)で表される基、前記一般式(11d)で表される基、または前記一般式(11e)で表される基であることが好ましい。
【0210】
また、本実施形態においても、前記Ar11および前記Ar12は、前記一般式(11f)で表される基、前記一般式(11g)で表される基、または前記一般式(11h)で表される基であることが好ましい。
【0211】
また、本実施形態において、前記Ar11および前記Ar12に1つ以上の電子吸引性基が置換されていることも好ましい。電子吸引性基としては、前述と同様の基が好ましい。
【0212】
本実施形態においても、前記Ar11および前記Ar12は、置換もしくは無置換のピリジニル基、置換もしくは無置換のピリミジニル基、または置換もしくは無置換のトリアジニル基であることも好ましい。また、本実施形態においても、前記Ar11および前記Ar12は、前記一般式(11i),(11j),(11k),(11m),(11n),(11p),(11q),(11r),(11s)のいずれかで表される基であることも好ましい。
【0213】
また、本実施形態において、前記Ar11および前記Ar12は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基であることも好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、およびトリフェニレニル基からなる群から選択される芳香族炭化水素基であることがより好ましい。この場合、当該芳香族炭化水素環基に、1つ以上の電子吸引性基が置換されていることが更に好ましい。
【0214】
本実施形態においても、前記Xは、酸素原子または硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
【0215】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良などは、本発明に含まれるものである。
【0216】
例えば、発光層は、1層に限られず、複数の発光層が積層されていてもよい。有機EL素子が複数の発光層を有する場合、少なくとも1つの発光層が前記第一の化合物および前記第二の化合物を含んでいればよい。例えば、その他の発光層が、蛍光発光型の発光層であっても、三重項励起状態から直接基底状態への電子遷移による発光を利用した燐光発光型の発光層であってもよい。
また、有機EL素子が複数の発光層を有する場合、これらの発光層が互いに隣接して設けられていてもよいし、中間層を介して複数の発光ユニットが積層された、いわゆるタンデム型の有機EL素子であってもよい。
【0217】
また、例えば、発光層の陽極側や陰極側に障壁層を隣接させて設けてもよい。障壁層は、発光層に接して配置され、正孔、電子および励起子の少なくともいずれかを阻止することが好ましい。
例えば、発光層の陰極側で接して障壁層が配置された場合、当該障壁層は、電子を輸送し、正孔が当該障壁層よりも陰極側の層(例えば、電子輸送層)に到達することを阻止する。有機EL素子が、電子輸送層を含む場合は、発光層と電子輸送層との間に当該障壁層を含むことが好ましい。
また、発光層の陽極側で接して障壁層が配置された場合、当該障壁層は、正孔を輸送し、電子が当該障壁層よりも陽極側の層(例えば、正孔輸送層)に到達することを阻止する。有機EL素子が、正孔輸送層を含む場合は、発光層と正孔輸送層との間に当該障壁層を含むことが好ましい。
また、励起エネルギーが発光層からその周辺層に漏れ出さないように、障壁層を発光層に隣接させて設けてもよい。発光層で生成した励起子が、当該障壁層よりも電極側の層(例えば、電子輸送層や正孔輸送層)に移動することを阻止する。
発光層と障壁層とは接合していることが好ましい。
【0218】
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【実施例】
【0219】
<合成実施例1> 化合物BDの合成
(1)化合物(1−1)の合成
【0220】
【化62】
【0221】
ジベンゾフラン 20.0g(80.9mmol)、および脱水テトラヒドロフラン 200mlを反応器としての三口フラスコに入れ、反応器を窒素雰囲気下にて−70℃に冷却した。反応器に1.68M s−ブチルリチウムへキサン溶液 53ml(88.9mmol)を滴下し、−70℃にて1時間撹拌した。その後、反応器にさらにホウ酸トリイソプロピル 37.3ml(162mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。反応終了後、1N HCl水溶液 100mlを加え、30分撹拌した後、試料溶液を分液ロートに移し、ジクロロメタンにて数回抽出した。抽出後の溶液を、無水硫酸マグネシウムで、乾燥、ろ過、および濃縮した。濃縮して得られた固体をヘキサンにて分散洗浄し、白色の固体を得た。収量は15.9g、収率は93%であった。
【0222】
(2)化合物(1−2)の合成
【0223】
【化63】
【0224】
三口フラスコに化合物(1−1)25.0g(97.7mmol)、2−ヨードニトロベンゼン74.7g(300mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液250mL、1,2−ジメトキシエタン500mL、およびPd(PPh 2.30g(1.95mmol)を入れ、窒素雰囲気下にて12時間還流させた。反応終了後、試料溶液をろ過し、得られた固体をメタノール、およびヘキサンにて洗浄した。収量は26.5g、収率は66%であった。
【0225】
(3)化合物(1−3)の合成
【0226】
【化64】
【0227】
三口フラスコに化合物(1−3)26.5g(64.6mmol)、および亜リン酸トリエチル430mlを加え、170℃で16時間加熱撹拌した。
反応終了後、蒸留を行い、残った亜リン酸トリエチル、および亜リン酸トリエチル残渣を除去し、得られた有機層をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、淡黄色の固体を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでの精製において、展開溶媒としてヘキサンおよびジクロロメタンの混合溶媒を用いた。混合溶媒における混合比率としては、ヘキサン:ジクロロメタン=10:1、5:1、1:1の順番に徐々に変化させて、目的物を流出させた。
収量は12.1g、収率は54%であった。
【0228】
(4)化合物(1−4)の合成
【0229】
【化65】
【0230】
三口フラスコに化合物(1−3)3.46g(10mmol)、ヨードベンゼン2.04g(10mmоl)、ヨウ化銅1.90g(10mmol)、リン酸三カリウム4.24g(20mmol)、シクロヘキサンジアミン2.28g(20mmol)、および1,4−ジオキサン30mLを入れ、窒素雰囲気下にて12時間還流させた。
反応終了後、不溶物をセライト(登録商標)で濾別し、濾液を分液ロートに移し、ジクロロメタンにて数回抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、および濃縮した。濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、白色の固体を得た。シリカゲルクロマトグラフィーでの精製において、展開溶媒としてヘキサンおよびジクロロメタンの混合溶媒を用いた。混合溶媒における混合比率としては、ヘキサン:ジクロロメタン=10:1、5:1の順番に徐々に変化させて、目的物を流出させた。収量は3.38g、収率は40%であった。
【0231】
(5)化合物BDの合成
【0232】
【化66】
【0233】
三口フラスコに化合物(1−4)2.11g(5mmol)、中間体A 1.94g(5mmol)、Pd(dba) 90mg(0.1mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.12g(0.4mmol)、ナトリウムt−ブトキシド0.67g(7mmol)、および脱水トルエン100mLを入れ、アルゴン雰囲気下にて48時間還流させた。
反応終了後、試料溶液をトルエン5000mLに加えて、110℃に加熱し、不溶物をセライトおよびシリカゲルに通して濾別した。濾液を濃縮して得られた固体を、トルエンで繰り返し洗浄することにより、目的物(化合物BD)を固体とし得た。収量は2.77g、収率は76%であった。FD−MS(Field Desorption Mass Spectrometry)分析の結果、分子量729に対してm/e=729であった。
【0234】
<合成実施例2> 化合物2の合成
【0235】
【化67】
【0236】
三口フラスコに、化合物(1−4)2.11g(5mmol)、中間体B(WO2011−132683号公報に記載の方法に従って合成した。)1.94g(5mmol)、Pd(dba)90mg(0.1mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.12g(0.4mmol)、ナトリウムt−ブトキシド0.67g(7mmol)、および脱水トルエン100mLを入れ、アルゴン雰囲気下にて48時間還流させた。
反応終了後、反応溶液をトルエン3000mLに加えて、110℃に加熱し、不溶物をセライト及びシリカゲルに通して濾別した。濾液を濃縮して得られた固体を、トルエンで繰り返し洗浄することにより、目的物(化合物2)を淡黄色固体として得た。収量は2.35g、収率は64%であった。FD−MS分析の結果、分子量729に対してm/e=729であった。
【0237】
<合成実施例3> 化合物3の合成
(1)中間体Cの合成
【0238】
【化68】
【0239】
三口フラスコに、2−フルオロフェニルボロン酸 7.0g(50mmol)、2−クロロ−4,6−ジフェニルトリアジン13.4g(50mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液62.5mL、1,2−ジメトキシエタン(DME)100mL、およびトルエン100mLを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.73(1.5mmol)を加えて、アルゴン雰囲気下にて8時間、加熱還流攪拌した。加熱還流攪拌後、有機層を分取して、減圧下で有機層を濃縮した。濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン溶媒)により精製し、得られた固体をメタノールにより懸濁洗浄することにより、中間体Cを白色固体として得た。収量は11.6g、収率は71%であった。
【0240】
(2)化合物3の合成
【0241】
【化69】
【0242】
三口フラスコに、化合物(1−4)1.5g(3.55mmol)、中間体C1.4g(4.28mmol)、炭酸カリウム0.6g(4.34mmol)、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)20mLを加えて、アルゴン雰囲気下にて24時間150℃で加熱撹拌した。反応溶液を水200mLに注ぎ、析出した固体を濾集した。次いで、濾集した固体をアセトンに懸濁させて60℃で加熱撹拌し、不溶物を目的物として濾集することにより、目的物(化合物3)を淡黄色固体として得た。収量は2.5g、収率は96%であった。FD−MS分析の結果、分子量729に対してm/e=729であった。
【0243】
<合成実施例4> 化合物4の合成
【0244】
【化70】
【0245】
三口フラスコに、化合物(1−4)2.11g(5mmol)、中間体D(WO2003−080760号公報に記載の方法に従って合成した。)1.74g(4.5mmol)、Pd(dba)90mg(0.1mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.12g(0.4mmol)、ナトリウムt−ブトキシド0.67g(7mmol)、および脱水トルエン50mLを入れ、アルゴン雰囲気下にて10時間還流させた。
反応終了後、反応溶液をトルエン5000mLに加えて、110℃に加熱し、不溶物をセライト及びシリカゲルに通して濾別した。濾液を濃縮して得られた固体を、トルエンで繰り返し洗浄することにより、目的物(化合物4)を淡黄色固体として得た。収量は1.55g、収率は47%であった。FD−MS分析の結果、分子量728に対してm/e=728であった。
【0246】
<合成実施例5> 化合物5の合成
【0247】
【化71】
【0248】
三口フラスコに、化合物(1−4)4.2g(10mmol)、4−フルオロフタロニトリル1.75g(12mmol)、炭酸カリウム2.1g(15mmol)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)25mLを加えて、アルゴン雰囲気下にて10時間80℃で加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液にメタノール100mLとアセトン50mLを加えた後、析出した固体を濾集した。次いで、水で固体を繰り返し洗浄して無機塩を除くことにより、目的物(化合物5)を黄色固体として得た。収量は4.8g、収率は87%であった。FD−MS分析の結果、分子量548に対してm/e=548であった。
【0249】
<合成実施例6> 化合物6の合成
【0250】
【化72】
【0251】
三口フラスコに、化合物(1−4)3.0g(7.1mmol)、2−クロロ−4,6−ジフェニルトリアジン1.9g(7.1mmol)、Pd(dba)0.13g(0.14mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.16g(0.55mmol)、ナトリウムt−ブトキシド0.96g(10mmol)、および脱水トルエン300mLを入れ、アルゴン雰囲気下にて12時間還流させた。
反応終了後、反応溶液をトルエン7000mLに加えて、110℃に加熱し、不溶物をセライト及びシリカゲルに通して濾別した。濾液を濃縮して得られた固体を、トルエンで繰り返し洗浄することにより、目的物(化合物6)を淡黄色固体として得た。収量は2.0g、収率は43%であった。FD−MS分析の結果、分子量653に対してm/e=653であった。
【0252】
<合成実施例7> 化合物7の合成
(1)中間体Eの合成
【0253】
【化73】
【0254】
三口フラスコに、4−フルオロフェニルボロン酸 7.0g(50mmol)、4−ブロモフタロニトリル10.3g(50mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液62.5mL、1,2−ジメトキシエタン(DME)100mL、およびトルエン100mLを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.73(1.5mmol)を加えて、アルゴン雰囲気下にて6時間、加熱還流攪拌した。加熱還流攪拌の後、有機層を分取して、減圧下で有機層を濃縮した。濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン溶媒)により精製し、得られた固体をメタノールで懸濁洗浄することにより、中間体Eを淡黄色固体として得た。収量は9.3g、収率は84%であった。
【0255】
(2)化合物7の合成
【0256】
【化74】
【0257】
三口フラスコに、化合物(1−4)4.2g(10mmol)、中間体E2.2g(10mmol)、炭酸セシウム4.9g(15mmol)、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)30mLを加えて、アルゴン雰囲気下にて10時間130℃で加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を水500mLに注ぎ、析出した固体を濾集した。次いで、濾集した固体をアセトンに懸濁させて60℃で加熱撹拌し、不溶物を目的物として濾集することにより、目的物(化合物7)淡黄色固体として得た。収量は3.1g、収率は49%であった。FD−MS分析の結果、分子量624に対してm/e=624であった。
【0258】
次に、実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例の記載内容になんら制限されるものではない。
【0259】
有機EL素子の製造に用いた化合物を以下に示す。
【0260】
【化75】
【0261】
【化76】
【0262】
【化77】
【0263】
【化78】
【0264】
<化合物の評価>
次に、本実施例で使用した化合物の物性を測定した。測定方法および算出方法を以下に示す。
【0265】
・遅延蛍光発光性
遅延蛍光発光性は図2に示す装置を利用して過渡PLを測定することにより確認した。前記化合物BDと前記化合物TH−2とを化合物BDの割合が12質量%となるように石英基板上に共蒸着し、膜厚100nmの薄膜を形成して試料を作製した。前記化合物BDが吸収する波長のパルス光(パルスレーザーから照射される光)で励起された後、当該励起状態から即座に観察されるPrompt発光(即時発光)と、当該励起後、即座には観察されず、その後観察されるDelay発光(遅延発光)とが存在する。本実施例における遅延蛍光発光とは、Delay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上を意味する。化合物BDはDelay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上あることを確認している。Prompt発光とDelay発光の量は、“Nature 492, 234−238, 2012”に記載された方法と同様の方法により求めることができる。なお、Prompt発光とDelay発光の量の算出に使用される装置は、図2の装置や文献に記載された装置に限定されるものではない。
【0266】
<有機EL素子の作製および評価>
有機EL素子を以下のように作製し、評価した。
【0267】
(実施例1)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマティック社製)を、イソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄を行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。ITOの膜厚は、130nmとした。
洗浄後の透明電極ライン付き前記ガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に透明電極を覆うようにして化合物HIを蒸着し、膜厚5nmの正孔注入層を形成した。
次に、正孔注入層上に、化合物HT−1を蒸着し、HI膜上に膜厚80nmの第一正孔輸送層を形成した。
次に、この第一正孔輸送層上に、化合物HT−2を蒸着し、膜厚15nmの第二正孔輸送層を形成した。
さらに、この第二正孔輸送層上に、第一の化合物としての化合物BDと、第二の化合物としての化合物BHと、を共蒸着し、膜厚25nmの発光層を形成した。発光層における化合物BDの濃度を24質量%とし、化合物BHの濃度を76質量%とした。
次に、この発光層上に、化合物HB−1を蒸着し、膜厚5nmの障壁層を形成した。
次に、この障壁層上に、化合物ETを蒸着し、膜厚20nmの電子輸送層を形成した。
次に、この電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を蒸着し、膜厚1nmの電子注入性電極(陰極)を形成した。
そして、この電子注入性電極上に、金属アルミニウム(Al)を蒸着し、膜厚80nmの金属Al陰極を形成した。
実施例1の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH : BD (25, 76%:24%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。また、同じく括弧内において、パーセント表示された数字は、発光層における各材料の割合(質量%)を示す。
【0268】
(実施例2)
実施例2の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物BDの濃度を50質量%とし、化合物BHの濃度を50質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例2の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH : BD (25, 50%:50%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0269】
(比較例1)
比較例1の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物BDに代えて化合物CD−1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
比較例1の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH : CD-1 (25, 76%:24%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0270】
(比較例2)
比較例2の有機EL素子は、実施例2の発光層における化合物BDに代えて化合物CD−1を用いたこと以外は、実施例2と同様にして作製した。
比較例2の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH : CD-1 (25, 50%:50%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0271】
(比較例3)
比較例3の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物BHに代えて化合物CH−1を用いたこと、並びに障壁層における化合物HB−1に代えて化合物CH−1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
比較例3の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / CH-1 : BD (25, 76%:24%) / CH-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0272】
(比較例4)
比較例4の有機EL素子は、実施例2の発光層における化合物BHに代えて化合物CH−1を用いたこと、並びに障壁層における化合物HB−1に代えて化合物CH−1を用いたこと以外は、実施例2と同様にして作製した。
比較例4の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / CH-1 : BD (25, 50%:50%) / CH-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0273】
〔有機EL素子の評価〕
実施例1,2並びに比較例1〜4において作製した有機EL素子について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0274】
・駆動電圧
電流密度が1mA/cmまたは10mA/cmとなるようにITO透明電極と金属Al陰極との間に通電したときの電圧(単位:V)を計測した。
【0275】
・輝度およびCIE1931色度
電流密度が1mA/cmまたは10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の輝度およびCIE1931色度座標(x、y)を、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)で計測した。
【0276】
・電流効率L/Jおよび電力効率η
電流密度が1mA/cmまたは10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを、上記分光放射輝度計で計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、電流効率(単位:cd/A)および電力効率η(単位:lm/W)を算出した。
【0277】
・主ピーク波長λ
得られた上記分光放射輝度スペクトルから主ピーク波長λを求めた。
【0278】
・外部量子効率EQE
電流密度が1mA/cmまたは10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを上記分光放射輝度計で計測した。得られた上記分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行なったと仮定し外部量子効率EQE(単位:%)を算出した。
【0279】
【表1】
【0280】
・寿命(LT80)
初期輝度が1000cd/mになるように、素子に電圧を印加し、初期輝度に対して輝度が80%となるまでの時間(単位:時間)を測定し、この測定した時間を寿命(LT80)とした。
実施例1の有機EL素子の寿命(LT80)は、193時間であった。
実施例2の有機EL素子の寿命(LT80)は、260時間であった。
比較例3の有機EL素子の寿命(LT80)は、1時間未満であった。
比較例4の有機EL素子の寿命(LT80)は、1時間未満であった。
【0281】
実施例1,2の有機EL素子は、高効率かつ長寿命で発光することが分かった。
【0282】
(実施例3〜14)
実施例3〜14に係る有機EL素子の作製には、前記実施例で用いた化合物の他に、下記化合物も用いた。
【0283】
【化79】
【0284】
(実施例3)
実施例3の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物BHに代えて化合物BH2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例3の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH2 : BD (25, 76%:24%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0285】
(実施例4)
実施例4の有機EL素子は、実施例3の発光層における化合物BDの濃度を50質量%とし、化合物BH2の濃度を50質量%としたこと以外は、実施例3と同様にして作製した。
実施例4の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH2 : BD (25, 50%:50%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0286】
(実施例5)
実施例5の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物BHに代えて化合物BH3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例5の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH3 : BD (25, 76%:24%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0287】
(実施例6)
実施例6の有機EL素子は、実施例5の発光層における化合物BDの濃度を50質量%とし、化合物BH3の濃度を50質量%としたこと以外は、実施例5と同様にして作製した。
実施例6の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH3 : BD (25, 50%:50%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0288】
(実施例7)
実施例7の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物BHに代えて化合物BH4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例7の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH4 : BD (25, 76%:24%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0289】
(実施例8)
実施例8の有機EL素子は、実施例7の発光層における化合物BDの濃度を50質量%とし、化合物BH4の濃度を50質量%としたこと以外は、実施例7と同様にして作製した。
実施例8の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH4 : BD (25, 50%:50%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0290】
(実施例9)
実施例9の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物BHに代えて化合物BH5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例9の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH5 : BD (25, 76%:24%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0291】
(実施例10)
実施例10の有機EL素子は、実施例9の発光層における化合物BDの濃度を50質量%とし、化合物BH5の濃度を50質量%としたこと以外は、実施例9と同様にして作製した。
実施例10の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH5 : BD (25, 50%:50%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0292】
(実施例11)
実施例11の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物BHに代えて化合物BH6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例11の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH6 : BD (25, 76%:24%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0293】
(実施例12)
実施例12の有機EL素子は、実施例11の発光層における化合物BDの濃度を50質量%とし、化合物BH6の濃度を50質量%としたこと以外は、実施例11と同様にして作製した。
実施例12の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH6 : BD (25, 50%:50%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0294】
(実施例13)
実施例13の有機EL素子は、実施例1の発光層における化合物BHに代えて化合物BH7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例13の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH7 : BD (25, 76%:24%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0295】
(実施例14)
実施例14の有機EL素子は、実施例13の発光層における化合物BDの濃度を50質量%とし、化合物BH7の濃度を50質量%としたこと以外は、実施例13と同様にして作製した。
実施例14の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130) / HI(5) / HT-1(80) / HT-2(15) / BH7 : BD (25, 50%:50%) / HB-1(5) / ET(20) / LiF(1) / Al(80)
【0296】
〔有機EL素子の評価〕
実施例3〜14において作製した有機EL素子について、駆動電圧、輝度、CIE1931色度、電流効率L/J、電力効率η、主ピーク波長λおよび外部量子効率EQEの評価を行った。評価方法は、前述と同様である。なお、実施例3〜14では、有機EL素子を駆動させる際の電流密度を、0.10mA/cm、1.00mA/cm、または10mA/cmとした。各評価の結果を表2に示す。
【0297】
【表2】
【0298】
実施例3〜14の有機EL素子は、高効率で発光することが分かった。
【符号の説明】
【0299】
1…有機EL素子、2…基板、3…陽極、4…陰極、5…発光層、6…正孔注入層、7…正孔輸送層、8…電子輸送層、9…電子注入層。
図1
図2
図3