【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、CREST、委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2突出部は、マンガン酸リチウムの結晶からなるとともに、前記第1突出部の上面及び側面において、外側に向かって放射状となるように延在していることを特徴とする請求項11に記載の電極体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して各実施形態を説明する。なお、添付図面は、構成の特徴を分かり易くするために特徴となる部分を便宜上拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、各部材の断面構造を分かり易くするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示している。
【0009】
(第1実施形態)
以下、
図1〜
図3に従って第1実施形態を説明する。
図1(a)〜(c)に示すように、リチウムイオン二次電池に用いられる電極体10は、集電体Cと、集電体Cに積層される活物質材料11とを備えている。活物質材料11は、マンガン酸リチウムを含む。
【0010】
集電体Cは、周知の材料から構成される。集電体Cは、例えば、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、及びInから選ばれる少なくとも一種の元素を含む金属材料により構成される。汎用性の高い金属材料としては、例えば、プラチナ、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金が挙げられる。集電体Cの形状としては、例えば、薄膜状、及び板状が挙げられる。
【0011】
活物質材料11は、複数の活物質突出部12を備えている。また、活物質材料11(マンガン酸リチウムの連続した結晶構造)は、集電体Cと接した構成であり、活物質材料11と集電体Cとの間における直接的な電子伝導経路が確保されている。
【0012】
活物質突出部12は、集電体Cの主面C1から突出する第1突出部12aと、第1突出部12aの外面から突出する複数の第2突出部12bとを有している。
第1突出部12aは、集電体Cの主面C1と接した下面と、その下面とは反対面に位置する上面と、第1突出部12aの上面及び下面を連結する側面とを備えている。
【0013】
複数の第2突出部12bは、第1突出部12aを中心として放射状となるように延在している。具体的には、第1突出部12aの上面及び側面において、外側に向かって放射状となるように延在している。また、各第2突出部12bは、多面体形状(多角柱状)を有している。
【0014】
本実施形態の電極体10は、活物質材料11を含んで構成される凹凸構造を有している。詳述すると、電極体10は、集電体Cの主面と第1突出部12aとにより構成される凹凸(第1凹凸構造)、及び第1突出部12aの外面と第2突出部12bとにより構成される凹凸(第2凹凸構造)とを備えている。第1凹凸構造の凹部分における内底面は、集電体Cの主面により構成され、第1凹凸構造の凸部分は、第1突出部12aにより構成されている。また、第2凹凸構造の凹部分における内底面は、第1突出部12aの外面により構成され、第2凹凸構造の凸部分は、第2突出部12bにより構成されている。
【0015】
第2凹凸構造は、第1凹凸構造の凸部分上に位置し、第1凹凸構造よりも相対的に微細である。このように、電極体10は、少なくとも2つの異なる種類の凹凸構造(表面粗さ)を有している。そして、活物質材料11の外面は、第2凹凸構造により構成されている。
【0016】
電極体10の活物質材料11は、隣り合う活物質突出部12同士が互いに離間した構成と、隣り合う活物質突出部12同士が部分的に接した構成とを含んでいてもよい。具体的には、電極体10の隣り合う活物質突出部12において、第2突出部12bの先端同士が離間した構成と、第2突出部12bの先端同士が接触した構成とを含んでいてもよい。また、電極体10の活物質材料11の全体において、隣り合う活物質突出部12同士の全てが互いに離間し、集電体Cの主面C1が露出した構成であってもよいし、隣り合う活物質突出部12同士の全てが部分的に接した構成であってもよい。
【0017】
複数の活物質突出部12は、その基端(集電体Cと接している下面)から先端(第2突出部12bの先端)までマンガン酸リチウムの連続した結晶構造を有している。また、本実施形態の複数の活物質突出部12(活物質材料11)は、その露出部分のみではなく内部に至る全体がマンガン酸リチウムの結晶で構成されている。なお、活物質材料11(複数の活物質突出部12)には、必要に応じて、マンガン酸リチウム以外に導電助剤及び結着剤を含有させてもよい。しかしながら、高密度の活物質材料に基づいてリチウムイオン二次電池のエネルギー密度を高めるという観点から、本実施形態のように活物質材料11(複数の活物質突出部12)は、導電助剤及び結着剤を含まない構成であることが好ましい。
【0018】
活物質材料11としては、例えば、LiMn
2O
4(124型のマンガン酸リチウム)、Li
2MnO
3(213型のマンガン酸リチウム)、及びLiMnO
2(112型のマンガン酸リチウム)が挙げられる。マンガン酸リチウムは、単体であってもよいし、例えば、マンガン酸リチウム(例えば、Li
2MnO
3)と、LiNiO
2やLiCoO
2との固溶体であってもよい。
【0019】
次に、電極体10の製造方法について説明する。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、本実施形態の電極体10の製造方法は、集電体Cの主面C1にサブトラクティブ工法又はセミアディティブ工法を用いたマンガン又はマンガン合金めっきにより、複数のめっき突出部22を形成する工程を有している。さらに、本実施形態の電極体10の製造方法は、フラックス法により、めっき突出部22とリチウム化合物を含む活物質原料とから活物質材料11を生成する工程を有している。電極体10の製造方法において、活物質材料11を生成する際に、めっき突出部22の形状に基づく第1突出部12aと、第1突出部12aの外面から突出し、第1突出部12aよりも微細な第2突出部12bとが形成される。また、電極体10の製造方法で形成される第2突出部12bは、マンガン酸リチウムの結晶からなるとともに、第1突出部12aの上面及び側面において、外側に向かって放射状となるように延在している。
【0020】
まず、複数のめっき突出部22を形成する工程で得られるめっき基板について説明する。
めっき基板は、集電体Cと、その集電体Cの主面C1に積層されたマンガン又はマンガン合金(例えば、マンガン−ニッケル合金、マンガン−鉄合金等)のめっき層とを有している。
【0021】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、めっき基板20の有するめっき層21は、集電体Cの主面C1から突出する複数のめっき突出部22を備えている。複数のめっき突出部22は、第1突出部12aの原型となるパターンを備えている。
【0022】
めっき基板20の有する複数のめっき突出部22の平面形状は点状であり、同めっき突出部22の立体形状は柱状(円柱状又は多角柱状)で多面体形状である。複数のめっき突出部22の表面積は、集電体Cの主面C1の面積100mm
2に存在するめっき突出部22の表面積に換算した場合、110〜190mm
2の範囲であることが好ましい。
【0023】
上記表面積に換算した複数のめっき突出部22の表面積が110mm
2以上の場合、電極体10において、活物質材料11の表面積が十分に確保され易い。上記表面積に換算した複数のめっき突出部22の表面積が190mm
2以下の場合、隣り合う活物質突出部12同士が、互いに離間した構成を有する電極体10が得られ易い。
【0024】
複数のめっき突出部22は、互いに離間して配置されている。隣り合うめっき突出部22の間隔は、めっき基板20の平面視において、0.5〜5μmの範囲であることが好ましい。隣り合うめっき突出部22の間隔が0.5μm以上の場合、電極体10を備えるリチウムイオン二次電池において、電解質の進入経路が確保され易い。隣り合うめっき突出部22の間隔が5μm以下の場合、電極体10において、単位面積当たりの活物質の量を増大させることが容易となる。
【0025】
めっき基板20の有する複数のめっき突出部22の突出長さは、2〜15μmの範囲であることが好ましい。複数のめっき突出部22の突出長さが2μm以上の場合、電極体10において、単位面積当たりの活物質の量を増大させることが容易となる。複数のめっき突出部22の突出長さが15μm以下の場合、電極体10において、複数の活物質突出部12の形状が安定化され易い。
【0026】
めっき層21は、サブトラクティブ工法又はセミアディティブ工法によって集電体Cの主面C1に積層される。サブトラクティブ工法では、集電体Cの主面C1にめっき層21を積層しためっき積層体を用いる。サブトラクティブ工法の一例では、めっき積層体にドライフィルムレジストを積層した後、所定の領域を露光及び現像することで、ドライフィルムレジストに開口部を形成する。その開口部内に露出するめっき層21をエッチングで除去した後に、ドライフィルムレジストをめっき層21から剥離することで、複数のめっき突出部22を有するめっき基板20が得られる。
【0027】
セミアディティブ工法の一例では、集電体Cの主面C1にドライフィルムレジストを積層したレジスト積層体を用いる。そのレジスト積層体の有するドライフィルムレジストの所定の領域を露光及び現像することで、ドライフィルムレジストに開口部を形成する。その開口部内に露出する集電体Cにめっき層21を積層した後、ドライフィルムレジストを集電体Cから剥離することで、複数のめっき突出部22を有するめっき基板20が得られる。
【0028】
なお、サブトラクティブ工法又はセミアディティブ工法では、ドライフィルムレジストを液状レジストに変更してもよい。また、レジスト材料は、現像型に限定されず、例えば熱硬化型であってもよい。また、集電体Cには、例えば、下地めっきが施されていてもよい。
【0029】
めっき層21は、高精密なめっき突出部22を形成するという観点から、セミアディティブ工法を用いて得られることが好ましい。
また、めっき層21(めっき突出部22)の表面に粗化処理を行ってもよい。粗化処理としては、例えば、エッチングを用いることができる。めっき層21(めっき突出部22)の表面を粗化した凹凸面を形成することで、表面積が増えるため、フラックスとの反応効率を高めることができる。
【0030】
続いて、めっき基板20の有する複数のめっき突出部22とリチウム化合物を含む活物質原料とから活物質材料11を生成する工程について説明する。
活物質材料11は、フラックス法により生成される。フラックス法は、マンガン又はマンガン合金と、マンガン又はマンガン合金の融点よりも低い融点を有するリチウム化合物(フラックス)とを接触させた状態でエネルギーを与え、マンガン酸リチウムを含む活物質を生成する方法である。
【0031】
活物質原料として用いられるリチウム化合物としては、例えば、LiOH・H
2O、Li
2CO
3、LiCl、LiNO
3、Li
2SO
4、LiBO
2、LiF、及びLi
6B
4O
9が挙げられる。これらのリチウム原料は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
活物質原料には、例えば、KOH、NaCl、KCl、KNO
3、KF、KI、NaNO
3、K
2CO
3、及びNa
2CO
3から選ばれる少なくとも一種を含有させてもよい。
活物質原料が二つのフラックス成分を含む場合の具体例としては、LiCl−LiNO
3、LiCl−KCl、LiNO
3−LiF、LiOH−KOH、LiOH−LiBr、LiOH−LiCl、LiOH−LiF、Li
2CO
3−LiOH、LiOH−Li
2SO
4、LiOH−NaOH、LiNO
3−Li
2SO
4、Li
2CO
3−LiNO
3、Li
3BO
3−LiSiO
4、NaCl−KCl、及びKI−KClが挙げられる。
【0033】
活物質原料が三つのフラックス成分を含む場合の具体例としては、LiF−NaCl−KCl、及びKF−KI−KClが挙げられる。
活物質原料には、必要に応じて、蒸発抑制剤、増粘剤、上記以外の金属化合物等を含有させることもできる。
【0034】
活物質原料は、より高純度のマンガン酸リチウムの結晶からなる活物質材料11を得るという観点から、導電助剤及び結着剤を含まないことが好ましい。
活物質原料は、必要に応じて水等の溶媒に溶解され、めっき基板20の有するめっき層21に塗布される。なお、活物質原料は、粉体やペーストの剤型でめっき基板20塗布されてもよい。
【0035】
活物質原料をめっき層21に塗布する方法としては、例えば、ディップコート法、スクリーニング法、溶液滴下法、印刷法、ロール・ツー・ロール法、スピンコート法、転写法、バーコート法、スキージ法、及びインクジェット法が挙げられる。
【0036】
活物質原料が塗布されためっき基板20は、例えば、500〜1000℃の温度範囲で加熱される。加熱の際の昇温速度は、例えば、0.1〜100℃/分、好ましくは15℃/分程度である。活物質原料が塗布されためっき基板20は、上記の温度範囲で、例えば、1〜50時間維持された後、徐冷される。徐冷の際の降温速度は、例えば、0.1〜2000℃/分、好ましくは200℃/時程度である。加熱及び徐冷は、例えば、電気炉の温度制御により行われる。なお、徐冷については、電気炉を用いずに行ってもよい。
【0037】
上記の加熱及び徐冷により、マンガン又はマンガン合金とリチウム化合物とからマンガン酸リチウムが生成される。これにより、マンガン酸リチウムを含む活物質材料11を有する電極体10が得られる。詳述すると、加熱により融解したリチウム化合物に、マンガン又はマンガン合金が溶解した後、その溶解液が徐冷されることで、マンガン酸リチウムの緻密な結晶が生成する。めっき層21(めっき突出部22)の表面から外側に突出して生成した緻密な結晶が第2突出部12bとなる。
【0038】
なお、フラックス法では、加熱以外の方法でエネルギーを与えてマンガン酸リチウムを生成することも可能である。エネルギーを与える方法としては、例えば、加熱処理、活性エネルギー線照射又はプラズマ処理が挙げられる。活性エネルギー線照射やプラズマ処理としては、例えば、レーザー照射、真空紫外光照射、紫外光照射、大気圧プラズマジェット、大気圧マイクロプラズマジェット等が挙げられる。
【0039】
マンガン酸リチウムの結晶の生成後、必要に応じて、水等を用いた洗浄工程及びドライエアー等を用いた乾燥工程が行われる。
次に、電極体10の一製造例について説明する。
【0040】
まず、集電体Cとしての白金(Pt)製の基板に、セミアディティブ工法を用いてマンガンのめっき層21を積層することで
図2(b)に示されるめっき基板20を得た。次に、めっき基板20の有するめっき層21に1MのLiOH−KCl水溶液を滴下した後、900℃/時の昇温速度で900℃まで電気炉中で加熱した。この温度でめっき基板20を1時間保持した後、200℃/時の徐冷速度で室温まで徐冷することで
図1(b)及び
図1(c)に示される電極体10を得た。なお、この電極体10は、残留していたLiOH−KClを温水で洗浄することで除去し、さらに100℃の温度条件で乾燥したものである。得られた電極体10の活物質材料11は、
図3に示すXRD(X線回折)チャートからマンガン酸リチウムであることが確認された。
【0041】
続いて、電極体10の用途について説明する。
電極体10は、リチウムイオン二次電池の正極として用いられる。リチウムイオン二次電池は、電極体10、負極、セパレーター、及び電解質(電解液又は固体電解質)を備えている。こうしたリチウムイオン二次電池において、電極体10の有する活物質材料11は、正極活物質となり、充電時にはリチウムイオンを放出し、放電時にはリチウムイオンを吸蔵する。詳述すると、正極活物質であるマンガン酸リチウムは、例えば、スピネル型結晶構造を有している。スピネル構造を有するマンガン酸リチウムは、例えば、コバルト酸リチウム等の層状化合物とは異なり、リチウムイオンの拡散経路が結晶面で大きく制限されないという特徴を有する。また、こうしたマンガン酸リチウムは、コバルト酸リチウムと異なり、マンガン酸リチウム中の全てのリチウムを放出したとしても、結晶構造が崩壊せず、また充放電時の酸素の脱離も起こり難いため、サイクル特性や安全性に優れる。さらにマンガンはコバルトよりも安価であるため、低コストのリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【0042】
次に、電極体10の作用について説明する。
リチウムイオン二次電池の使用時において、活物質材料は、リチウムイオンの出入りや温度変化により膨張又は収縮する。このような活物質材料の体積変化が大きくなると、活物質材料にクラックが発生し易くなる。例えば、活物質材料が隙間なく一様に形成されている場合、活物質材料の体積変化が大きく影響してクラックが発生し易くなる。しかし本実施形態の電極体10の有する活物質材料11は、複数の活物質突出部12からなるパターン(第1凹凸構造)を備えているため、活物質材料11の体積変化が緩和され易い。
【0043】
また、単一の膜状を有する従来の活物質材料の場合、その活物質材料を薄膜状に形成することで、活物質材料の体積変化が緩和されるため、クラックの発生は抑制されるが、活物質材料の厚さをより薄くすることは、電極体の単位面積当たりの活物質の量を低下させることになる。しかし本実施形態の活物質材料11は、複数の活物質突出部12を備えている。さらに活物質突出部12は、第1突出部12aと、第1突出部12aの外面から突出する複数の第2突出部12bを有しているため、電極体10の単位面積当たりの活物質の量を確保することが容易となる。
【0044】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)電極体10の有する活物質材料11は、複数の活物質突出部12を備えているため、活物質材料11の体積変化が緩和され易い。さらに、活物質突出部12は、第1突出部12aと第1突出部12aの外面から突出する複数の第2突出部12bとを有しているため、電極体10の単位面積当たりの活物質の量を確保することが容易となる。従って、本実施形態の電極体10によれば、活物質材料11の体積変化が緩和され易くなるとともに、単位面積当たりの活物質の量を確保することが容易となる。これにより、リチウムイオン二次電池において、良好な電池特性が発揮され易くなる。
【0045】
(2)複数の第2突出部12bは、第1突出部12aを中心として放射状となるように延在している。詳述すると、複数の第2突出部12bは、第1突出部12aの上面及び側面において、外側に向かって放射状となるように延在していることで、単位面積当たりの活物質の量を確保することがさらに容易となる。
【0046】
(3)複数の第2突出部12bは多面体形状であるため、単位面積当たりの活物質の量を確保することがさらに容易となる。
(4)複数の活物質突出部12の基端は、集電体Cに直接、接しているため、例えば、密着層などを介する場合よりも、活物質材料11と集電体Cとの間の導電性が十分に確保され易い。
【0047】
(5)活物質材料11は、隣り合う活物質突出部12同士が互いに離間した構成を含んでいる。この場合、活物質突出部12の先端部から基端部まで連通する空間が確保され易くなるため、そうした空間に電解質が浸入し易くなる。これにより、活物質突出部12の先端部から基端部までの部分において、リチウムイオンが出入りし得るため、リチウムイオン二次電池において高い出力特性が期待される。
【0048】
(6)電極体10は、活物質材料11を含んで構成される凹凸構造を有している。その凹凸構造は、第1凹凸構造と、第1凹凸構造上に位置するとともに第1凹凸構造よりも相対的に微細な第2凹凸構造とを有している。そして、活物質材料11の外面は、第2凹凸構造により構成されている。これにより、電極体10の単位面積当たりの活物質の量を確保することが容易となる。従って、本実施形態の電極体10によれば、活物質材料11の体積変化が緩和され易くなるとともに、単位面積当たりの活物質の量を確保することが容易となる。これにより、リチウムイオン二次電池において、良好な電池特性が発揮され易くなる。
【0049】
(7)電極体10の製造方法は、集電体Cの主面C1にサブトラクティブ工法又はセミアディティブ工法を用いたマンガン又はマンガン合金めっきにより、複数のめっき突出部22を形成する工程を有している。さらに、この製造方法は、フラックス法により、めっき突出部22とリチウム化合物を含む活物質原料とから活物質材料11を生成する工程を有している。そして、この製造方法では、活物質材料11を生成する際に、めっき突出部22の形状に基づく第1突出部12aと、第1突出部12aの外面から突出し、第1突出部12aよりも微細な第2突出部12bとが形成される。この製造方法によれば、第1突出部12aと第2突出部12bとを含む活物質突出部12を有した電極体10を容易に製造することができる。
【0050】
(8)電極体10の有する活物質材料11に含まれるマンガン酸リチウムは、スピネル型結晶構造を有することが好ましい。この場合、コバルト酸リチウム等の層状化合物とは異なり、リチウムイオンの拡散経路が結晶面で大きく制限されないという特徴を有する。また、こうしたマンガン酸リチウムは、コバルト酸リチウムと異なり、マンガン酸リチウム中の全てのリチウムを放出したとしても、結晶構造が崩壊せず、また充放電時の酸素の脱離も起こり難いため、サイクル特性や安全性に優れる。さらにマンガンはコバルトよりも安価であるため、低コストのリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【0051】
(9)電極体10は、集電体Cと、その集電体Cの主面C1に積層されたマンガン又はマンガン合金のめっき層21とを有するめっき基板20を用いて得られるものである。めっき層21は、集電体Cの主面C1から突出する複数のめっき突出部22を備えている。活物質材料11は、複数のめっき突出部22を有するめっき層21とリチウム化合物を含む活物質原料とから得られる。この場合、単一の膜状を有する従来の活物質材料よりも、活物質材料11の体積変化が緩和され易くなるとともに、単位面積当たりの活物質の量を確保することが容易となる。
【0052】
(10)複数のめっき突出部22の表面積は、集電体Cの主面C1の面積100mm
2に存在するめっき突出部22の表面積に換算した場合、110〜190mm
2の範囲であることが好ましい。この場合、電極体10において活物質材料11の表面積が十分に確保され易く、また、隣り合う活物質突出部12同士が互いに離間した構成を含む電極体10が得られ易い。従って、良好な電池特性が得られ易くなる。
【0053】
(11)めっき基板20の有するめっき突出部22の平面形状は点状であるため、電極体10において活物質材料11(活物質突出部12)の表面積が十分に確保され易くなる。また、活物質材料11(活物質突出部12)の表面には、生成したスピネル型の緻密な結晶が突出してなる第2突出部12b(第2凹凸構造)が集電体Cと接する面を除く全面(上面及び側面)に形成されている。従って、良好な電池特性が得られ易くなる。
【0054】
(12)単一の膜状の活物質材料を有する従来の電極体では、単位面積当たりの活物質の量を十分に確保できるように厚さを厚く形成すると、その活物質材料は、電極体が湾曲された場合に応力が緩和され難く、活物質材料にクラックが生じ易い。この点、本実施形態の活物質材料11では、隣り合う活物質突出部12同士の隙間により応力が緩和される。これにより、電極体10の湾曲等の変形に対して活物質材料11の耐久性が得られ易い。
【0055】
(13)めっき基板20は、複数のめっき突出部22を有しているため、単一の膜状を有する従来のめっき層よりもリチウム化合物との接触面積を増大させることが可能である。このように接触面積を増大させためっき層21では、活物質材料11(マンガン酸リチウム)の生成が進行し易い。従って、マンガン又はマンガン合金の残留を低減し、活物質材料11の生成量を増大させた電極体10を容易に得ることができる。
【0056】
(第2実施形態)
以下、
図4に従って第2実施形態を説明する。この実施形態の電極体10は、活物質材料11の構成が上記第1実施形態と異なっているため、その相違点を中心に説明する。なお、先の
図1及び
図2に示した部材と同一の部材にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0057】
図4(a)に示すように、電極体10の有する活物質材料11は、集電体Cの主面C1を覆う被覆活物質材料13と、複数の活物質突出部12とを備えている。活物質突出部12を構成する第1突出部12aは、被覆活物質材料13から突出している。活物質材料11は、集電体Cの主面C1に被覆活物質材料13が接合された構成を有している。活物質材料11は、被覆活物質材料13と第1突出部12aとが接合された構成を有し、被覆活物質材料13と複数の活物質突出部12は一体となっている。こうした活物質材料11は、集電体Cと接した構成であり、活物質材料11と集電体Cとの間における直接的な電子伝導経路が確保されている。本実施形態の電極体10についても、第1凹凸構造及び第2凹凸構造を有している。本実施形態の第1凹凸構造の凹部分における内底面は、被覆活物質材料13により構成されている。また、本実施形態の第2凹凸構造は、第1凹凸構造の凸部分上、及び第1凹凸構造の凹部分における内底面上に位置している。そして、活物質材料11の外面は、第2凹凸構造により構成されている。
【0058】
図4(b)は、第2実施形態の電極体10を得るために用いられるめっき基板20を示している。このめっき基板20の有するめっき層21は、集電体Cの主面C1を覆う被覆めっき層23と、その被覆めっき層23から突出するめっき突出部22とを備えている。
【0059】
被覆めっき層23の露出面は全体として平坦状を有している。その被覆めっき層23の厚さは、1〜7μmの範囲であることが好ましい。被覆めっき層23の厚さが1μm以上の場合、電極体10において、単位面積当たりの活物質の量を増大させることが容易となる。被覆めっき層23の厚さが7μm以下の場合、電極体10において、活物質材料11の体積変化がより緩和され易くなる。
【0060】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(13)の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
(14)本実施形態の電極体10は、被覆活物質材料13を有するため、このような被覆活物質材料13に基づいて単位面積当たりの活物質の量を確保することが容易となる。
【0061】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記各実施形態では、複数のめっき突出部22の立体形状は略同一形状であるが、異なる立体形状のめっき突出部22を組みあわせてもよい。
【0062】
・上記各実施形態では、めっき突出部22の平面形状は点状であるが、例えば、線状に変更してもよい。線状のめっき突出部22は、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。なお、このように変更した場合であっても、異なる平面形状のめっき突出部22を組みあわせてもよい。
【0063】
・上記各実施形態の複数のめっき突出部22は互いに離間しているが、部分的に連結されていてもよい。但し、表面積をより増大させた活物質材料11を得るという観点から、めっき層21は、点状又は線状のめっき突出部22が互いに離間している構成を含むことが好ましく、円柱又は多角柱のめっき突出部22が互いに離間している構成を含むことがさらに好ましい。
【0064】
・上記活物質材料11中にマンガン又はマンガン合金が残留していてもよい。つまり、活物質材料11にめっき層21の一部が残留した構成であってもよい。
・上記電極体10には、マンガン酸リチウムの結晶における配向性の向上等を目的としたアニール処理が施されてもよい。
【0065】
・上記電極体10の製造方法は、第1実施形態に記載した製造方法に限定されず、例えば、集電体Cの主面C1に複数のめっき突出部22を形成する工程等を省略することも可能である。例えば、集電体Cの主面C1に活物質材料(活物質突出部12)を直接設けることで、電極体10を製造してもよい。但し、第1突出部12a及び第2突出部12bを備えた活物質突出部12を容易に製造できるという観点から、電極体10は、第1実施形態の(7)欄で述べた製造方法で製造されることが好ましい。
【0066】
以上の様々な実施の形態をまとめると、以下のようになる。
(付記1)
集電体と、前記集電体に積層され、マンガン酸リチウムを含む活物質材料と、を備えてなり、リチウムイオン二次電池に用いられる電極体であって、前記電極体は、前記集電体と、前記集電体の主面に積層されたマンガン又はマンガン合金のめっき層とを有するめっき基板を用いて得られるものであり、前記めっき層は、前記集電体の主面から突出する複数のめっき突出部を備え、前記活物質材料は、前記めっき層と、リチウム化合物を含む活物質原料とから得られたものであることを特徴とする電極体。
(付記2)
集電体と、前記集電体に積層され、マンガン酸リチウムを含む活物質材料と、を備えてなり、リチウムイオン二次電池に用いられる電極体であって、前記電極体は、前記集電体と前記集電体の主面に積層されたマンガン又はマンガン合金のめっき層とを有するめっき基板を用いて得られるものであり、前記めっき層は、前記集電体の主面を覆う被覆めっき層と、前記被覆めっき層から突出する複数のめっき突出部を備え、前記活物質材料は、前記めっき層と、リチウム化合物を含む活物質原料とから得られたものであることを特徴とする電極体。
(付記3)
前記複数のめっき突出部の表面積は、前記集電体の主面の面積100mm
2に存在するめっき突出部の表面積に換算した場合、110〜190mm
2の範囲であることを特徴とする付記1又は付記2に記載の電極体。
(付記4)
前記めっき基板の有するめっき突出部の平面形状は、点状又は線状であることを特徴とする付記1〜3のいずれか一項に記載の電極体。
(付記5)
前記平面形状が点状のめっき突出部は、円柱又は多角柱の立体形状を有することを特徴とする付記4に記載の電極体。