特許第6378146号(P6378146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378146
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】多層膜形成方法及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/26 20060101AFI20180813BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20180813BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20180813BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20180813BHJP
   C08G 61/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   G03F7/26 511
   G03F7/40 521
   G03F7/11 503
   G03F7/11 502
   H01L21/30 573
   H01L21/30 574
   C08G61/00
【請求項の数】7
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2015-172045(P2015-172045)
(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-81041(P2016-81041A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-211611(P2014-211611)
(32)【優先日】2014年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−156018(JP,A)
【文献】 特開2007−047580(JP,A)
【文献】 特開2014−178602(JP,A)
【文献】 特開2009−126940(JP,A)
【文献】 特開2010−085893(JP,A)
【文献】 特開2010−113209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 − 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に多層膜を形成する方法であって、
(1)前記基板上に、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で示されるフルオレン構造を含む繰り返し単位を有する樹脂を含有する下層膜材料をコーティングし、熱処理して硬化させることで下層膜を形成する工程と、
(2)前記下層膜上に、チタン、ジルコニウム、ハフニウムのアルコキシドの加水分解縮合物から選ばれる金属酸化膜材料をコーティングし、金属酸化膜を形成する工程と、
(3)前記金属酸化膜上に、炭化水素膜材料をコーティングし、炭化水素膜を形成する工程と、
(4)前記炭化水素膜上に、珪素酸化膜材料をコーティングし、珪素酸化膜を形成する工程、
を含むことを特徴とする多層膜形成方法。
【化1】
(式中、Xはベンゼン環、ナフタレン環、又はカルバゾール環である。Rは水素原子、グリシジル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数2〜6のアルケニル基である。Rはそれぞれ独立に、単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基であり、エーテル基、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、グリシジルエーテル基から選ばれる1つ以上の基を有していてもよい。R、Rはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環であり、ベンゼン環、ナフタレン環中の水素原子は炭素数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよい。p、qはそれぞれ独立に0〜2の整数である。)
【請求項2】
前記(1)工程の熱処理を、250℃以上800℃以下の温度で10秒〜4,000秒間の範囲で行うことを特徴とする請求項1に記載の多層膜形成方法。
【請求項3】
前記(1)工程の熱処理を、250℃以上700℃以下の温度で10秒〜600秒間の範囲で行うことを特徴とする請求項2に記載の多層膜形成方法。
【請求項4】
前記(1)〜(4)工程の材料のコーティングを、スピンコート法で行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多層膜形成方法。
【請求項5】
前記(1)工程において膜厚30〜20,000nmの下層膜を形成し、前記(2)工程において膜厚3〜100nmの金属酸化膜を形成し、前記(3)工程において膜厚5〜100nmの炭化水素膜を形成し、前記(4)工程において膜厚10〜20nmの珪素酸化膜を形成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の多層膜形成方法。
【請求項6】
パターン形成方法であって、
(A)請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多層膜形成方法によって基板上に形成された多層膜上に、フォトレジスト膜を形成する工程と、
(B)前記フォトレジスト膜に対して露光及び現像を行ってフォトレジストパターンを形成する工程と、
(C)前記フォトレジストパターンをマスクにしてドライエッチングを行い、前記珪素酸化膜にパターンを転写する工程と、
(D)前記パターンが転写された珪素酸化膜をマスクにしてドライエッチングを行い、前記炭化水素膜にパターンを転写する工程と、
(E)前記パターンが転写された炭化水素膜をマスクにしてドライエッチングを行い、前記金属酸化膜にパターンを転写する工程と、
(F)前記パターンが転写された金属酸化膜をマスクにしてドライエッチングを行い、前記下層膜にパターンを転写する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
前記(F)工程のドライエッチングを、酸素ガス、水素ガス、アンモニアガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化硫黄ガスから選ばれる1種以上のエッチングガスを用いて行うことを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられるレジスト下層膜として有用な多層膜の形成方法、及び該多層膜形成方法で形成された多層膜を用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が進行している中、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0003】
レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源として、水銀灯のg線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)等が広く用いられており、更なる微細化のためにダブルパターニングが検討されている。
【0004】
ダブルパターニングは、レジストの解像度を倍加することができる技術であり、これによってデバイスの微細化はますます加速されている。微細化の進捗に伴い、寸法精度が高いドライエッチング技術とハードマスク材料が求められている。また、3次元のNANDメモリーやDRAMのキャパシタ作製等、深い穴や溝をドライエッチングで作製するニーズが高まっている。このような背景があって、エッチング耐性に優れるハードマスクが必要となっている。
【0005】
一方で、レジストパターンの寸法の縮小によるパターン倒れを防止するため、レジスト膜厚は薄膜化され、この薄膜化によるドライエッチング耐性の低下を防ぐ手段として、多層レジストプロセスが用いられている。この場合の多層プロセスとは、下層に炭化水素膜(炭化水素下層膜)を形成しその上に珪素を含有する中間膜(珪素含有中間膜)、その上にレジスト膜を形成する3層(トライレイヤー)プロセスが一般的である。珪素含有中間膜と炭化水素下層膜の両方に反射防止効果を持たせることによって、高度な反射防止効果を得ることができる。高NAレンズと組み合わせた液浸リソグラフィー時代になって、基板への光の入射角度が浅くなることで基板反射が増加したため、反射防止効果の高い反射防止膜が必要となり、反射防止効果に優れる珪素含有中間膜と炭化水素下層膜を用いたトライレイヤープロセスが一気に広がった。
【0006】
フォーカスマージンが狭い微細パターンのリソグラフィーを行うためには、下地を平坦にする必要があり、炭化水素系の下層膜と酸化珪素を含有する中間膜をスピンコートによって成膜した場合、埋め込み特性に優れる材料を適用することによって、スピンコートとベークのみの簡便なプロセスで膜表面を平坦化できるメリットがある。その一方で、スピンコートによって成膜したこれらの膜はダブルパターニングや深い穴や溝を掘るためのドライエッチング耐性が不足するという問題があった。
【0007】
このことから、ドライエッチング耐性に優れた金属系の膜が検討され、スパッタリングやCVDで形成したシリコン膜や窒化チタン膜等のハードマスクが広く用いられてきた。しかし、スパッタリングやCVDで形成したハードマスクは、下地の凹凸を平坦化することができないため、膜形成後にCMPで膜表面を削って平坦化する必要があり、また、スパッタリングやCVDには専用の装置が必要となるため、コストが増加するという問題があった。
【0008】
また、金属系の膜としては、金属の酸化物をスピンコートで成膜する材料も提案されており、フォトレジスト膜の下にメタルハードマスク膜、その下にカーボン膜を形成し、トライレイヤープロセスでパターンを形成する方法が知られている(非特許文献1)。
【0009】
このような金属の酸化物をスピンコートで成膜する場合、スピンコート後のベーク温度を250℃以上に上げる必要がある。このときに、通常の炭化水素膜を下層膜として適用すると熱分解してしまうため、下層膜としては高耐熱性の炭化水素材料が必要である。このような材料としては、フルオレンビスナフトールのノボラック樹脂やカルバゾールとフルオレノンとのアルデヒド縮合物を挙げることができる(特許文献1、2参照)。
【0010】
また、上述のようなトライレイヤープロセスにおいては、有機溶剤現像によるネガパターンの形成が提案されている。この場合、エッチング耐性を有する環状の保護基が脱保護した膜が残ることと、保護基の脱保護によって膜厚が減少してしまうことの両方の影響によってレジスト膜のドライエッチング耐性が大きく低下し、レジスト直下の珪素含有中間膜をドライエッチング加工するためのマージンが不足する。このため、珪素含有中間膜の薄膜化が検討されている。現在、珪素含有中間膜の膜厚は30〜40nmの範囲とされている。これは、この範囲で基板反射が最低になるということと、レジスト膜のパターンを転写するためのエッチング速度と、珪素含有中間膜のパターンを下層の炭化水素膜に転写するためのエッチング速度とのバランスで決定されている。一方で、上述のレジスト膜のドライエッチング耐性不足に対応するためには、珪素含有中間膜の厚さを10〜20nmに設定する必要がある。しかしながら、珪素含有中間膜を薄膜化すると2つの問題が生じる。1つは基板反射が増大することであり、これによってリソグラフィーのマージンが縮小する。もう1つは、珪素含有中間膜のパターンをマスクにして下層の炭化水素膜をドライエッチングで加工するための十分な耐性を確保できなくなる点である。
【0011】
また、半導体の微細化は限界が見え始めたため、メモリーデバイスにおいては微細化に頼らない容量増大を行うことが求められており、フラッシュメモリーではメモリーセルを縦に積層した3次元メモリーによる容量増大が検討されている。この場合、数十層に積層した膜にホールパターンを形成し、ここにゲート電極を埋め込んでトランジスタを形成する。つまり、微細なホールを上記有機溶剤現像によって形成し、これを使って深いホールパターンを形成するためのドライエッチングをする必要がある。従って、このような加工にはエッチング耐性が低いネガパターンを転写でき、かつ積層膜を深く加工できる優れたエッチング耐性を有するハードマスクが必要である。
【0012】
以上のように、微細なパターンの形成や積層構造の加工のために、基板反射を低減でき、ドライエッチングの寸法精度が高いパターン形成を行うことができる多層膜の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許5336306号公報
【特許文献2】再公表特許 WO2010/147155
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Proc. of SPIE Vol.8682 86820S (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、リソグラフィーにレジスト下層膜として用いられる多層膜の形成方法であって、反射率を低減でき、ドライエッチングの寸法精度が高いパターン形成方法に有用な多層膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明では、基板上に多層膜を形成する方法であって、
(1)前記基板上に、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で示されるフルオレン構造を含む繰り返し単位を有する樹脂を含有する下層膜材料をコーティングし、熱処理して硬化させることで下層膜を形成する工程と、
(2)前記下層膜上に、チタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜、ハフニウム酸化膜から選ばれる金属酸化膜材料をコーティングし、金属酸化膜を形成する工程と、
(3)前記金属酸化膜上に、炭化水素膜材料をコーティングし、炭化水素膜を形成する工程と、
(4)前記炭化水素膜上に、珪素酸化膜材料をコーティングし、珪素酸化膜を形成する工程、
を含む多層膜形成方法を提供する。
【化1】
(式中、Xはベンゼン環、ナフタレン環、又はカルバゾール環である。Rは水素原子、グリシジル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数2〜6のアルケニル基である。Rはそれぞれ独立に、単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基であり、エーテル基、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、グリシジルエーテル基から選ばれる1つ以上の基を有していてもよい。R、Rはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環であり、ベンゼン環、ナフタレン環中の水素原子は炭素数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよい。p、qはそれぞれ独立に0〜2の整数である。)
【0017】
このような多層膜形成方法であれば、反射率を低減でき、ドライエッチングの寸法精度が高いパターン形成方法に有用な多層膜を形成することができる。
【0018】
またこのとき、前記(1)工程の熱処理を、250℃以上800℃以下の温度で10秒〜4,000秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0019】
このような加熱温度であれば、下層膜材料を効率良く硬化させることができ、下層膜材料中の樹脂が分解する恐れがない。また、このような加熱時間であれば、下層膜材料を効率良く硬化させることができ、スループットが悪化する恐れがない。
【0020】
更に、前記(1)工程の熱処理を、250℃以上700℃以下の温度で10秒〜600秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0021】
このような加熱温度及び時間であれば、下層膜の形成を更に効率良く行うことができる。
【0022】
またこのとき、前記(1)〜(4)工程の材料のコーティングを、スピンコート法で行うことが好ましい。
【0023】
スピンコート法であれば、簡便なプロセスで膜表面の平坦性が高い下層膜、金属酸化膜、炭化水素膜、及び珪素酸化膜を形成することができる。また、スピンコート法で全ての膜を形成することで、スパッタリングやCVDで膜を形成する方法に比べてコストを低減することができる。
【0024】
またこのとき、前記(1)工程において膜厚30〜20,000nmの下層膜を形成し、前記(2)工程において膜厚3〜100nmの金属酸化膜を形成し、前記(3)工程において膜厚5〜100nmの炭化水素膜を形成し、前記(4)工程において膜厚10〜20nmの珪素酸化膜を形成することが好ましい。
【0025】
各層をこのような膜厚とすることで、反射率を更に低減でき、ドライエッチングの寸法精度を更に高めることができる。
【0026】
また本発明では、パターン形成方法であって、
(A)上記の多層膜形成方法によって基板上に形成された多層膜上に、フォトレジスト膜を形成する工程と、
(B)前記フォトレジスト膜に対して露光及び現像を行ってフォトレジストパターンを形成する工程と、
(C)前記フォトレジストパターンをマスクにしてドライエッチングを行い、前記珪素酸化膜にパターンを転写する工程と、
(D)前記パターンが転写された珪素酸化膜をマスクにしてドライエッチングを行い、前記炭化水素膜にパターンを転写する工程と、
(E)前記パターンが転写された炭化水素膜をマスクにしてドライエッチングを行い、前記金属酸化膜にパターンを転写する工程と、
(F)前記パターンが転写された金属酸化膜をマスクにしてドライエッチングを行い、前記下層膜にパターンを転写する工程、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0027】
このようなパターン形成方法であれば、反射率を低減でき、ドライエッチングの寸法精度が高いパターン形成方法となる。
【0028】
またこのとき、前記(F)工程のドライエッチングを、酸素ガス、水素ガス、アンモニアガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化硫黄ガスから選ばれる1種以上のエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0029】
このようなエッチングガスを用いることで、ドライエッチングによる下層膜へのパターン転写を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明の多層膜形成方法であれば、リソグラフィーにおいてレジスト下層膜として好適に用いることができ、反射防止膜としての最適なn値、k値と埋め込み特性、優れたエッチング耐性を有する多層膜を形成することができる。また、このような多層膜を用いた本発明のパターン形成方法であれば、例えば上述のような特性をもつ多層膜とフォトレジスト膜で5層(ペンタレイヤー)プロセスによってパターンを形成するため、特にドライエッチング耐性が脆弱かつ薄膜な有機溶剤現像のネガティブトーンレジストパターンであっても高精度で転写することが可能となる。
更に、スピンコート法を用いて形成する下層膜を、高耐熱性を有するものとすることで、その上に金属酸化膜(無機ハードマスク)を形成する際の高温ベーク処理にも耐えうる下層膜とすることができるため、スピンコート法で得られた下層膜と金属酸化膜(無機ハードマスク)を組み合わせた低コストのパターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の多層膜形成方法の一例を示すフロー図である。
図2】本発明のパターン形成方法の一例を示すフロー図である。
図3-1】3層プロセスにおいて、珪素酸化膜(n値=1.6、k値=0.2)と、炭化水素膜(n値=1.4、k値=0.4)の、それぞれの膜厚を0〜100nmの範囲で変化させたときの波長193nm、NA=1.35、ダイポール照明における基板反射率の関係を示すグラフである。
図3-2】5層プロセスにおいて、下層膜(n値=1.4、k値=0.4;膜厚100nm)、チタン酸化膜(n値=1.6、k値=0.7;膜厚30nm)とし、珪素酸化膜(n値=1.6、k値=0.2)と、炭化水素膜(n値=1.5、k値=0.3)の、それぞれの膜厚を0〜50nmの範囲で変化させたときの波長193nm、NA=1.35、ダイポール照明における基板反射率の関係を示すグラフである。
図3-3】5層プロセスにおいて、下層膜(n値=1.4、k値=0.4;膜厚100nm)、チタン酸化膜(n値=1.6、k値=0.7;膜厚30nm)とし、珪素酸化膜(n値=1.6、k値=0.2)と、炭化水素膜(n値=1.6、k値=0.3)の、それぞれの膜厚を0〜50nmの範囲で変化させたときの波長193nm、NA=1.35、ダイポール照明における基板反射率の関係を示すグラフである。
図3-4】5層プロセスにおいて、下層膜(n値=1.4、k値=0.4;膜厚100nm)、チタン酸化膜(n値=1.6、k値=0.7;膜厚30nm)とし、珪素酸化膜(n値=1.6、k値=0.2)と、炭化水素膜(n値=1.7、k値=0.3)の、それぞれの膜厚を0〜50nmの範囲で変化させたときの波長193nm、NA=1.35、ダイポール照明における基板反射率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上述のように、トライレイヤーを有する多層レジスト膜によるパターン形成方法は、単層レジスト膜やレジスト下層に有機反射防止膜を敷いた方法よりも優れたパターン転写精度を有するが、微細化の進展に伴うレジスト膜の薄膜化とレジスト膜のドライエッチング耐性の低下によって、トライレイヤープロセスを用いてもパターンの転写精度の低下の問題が発生した。そこで、パターン転写精度を高めることができる多層膜の形成方法と、これを用いたパターン形成方法の構築が求められていた。
【0033】
ここで、図3−1に、レジスト膜の直下が珪素酸化膜(n値=1.6、k値=0.2)、その下が炭化水素膜(n値=1.4、k=値0.4)、基板がSiのトライレイヤー用基板において炭化水素膜と珪素酸化膜の膜厚を変化させたときの基板反射率を示す。なお、このときの波長は193nm、光学照明はNA=1.35、ダイポール照明の液浸リソグラフィーである。また、グラフ中の濃淡は色が濃い部分ほど基板反射率が低いことを示している。図3−1から、トライレイヤーの場合は、珪素酸化膜の膜厚が35〜60nmの領域では炭化水素膜の膜厚を変動させても反射率が1%以下の黒い領域が存在するが、珪素酸化膜を35nm以下に設定すると基板反射が増大することがわかる。このことから、トライレイヤーでは、反射率の低減と、珪素酸化膜の薄膜化を両立できないことがわかる。
【0034】
レジスト膜と珪素酸化膜と炭化水素膜からなるトライレイヤーの場合、基板の凹凸を穴埋めして炭化水素膜の膜厚が変化しても一定の基板反射になるようにする必要がある。このため、炭化水素膜の膜厚が変化しても基板反射が一定になる厚膜領域を使い、更に基板反射が一定になるように、吸収が高い即ちk値が大きい材料を選択する。反射を抑える観点だけでは炭化水素膜のk値の最適値は0.2〜0.3だが、これだと吸収が十分ではなく、炭化水素膜の膜厚変動の影響で基板反射が増減する。よって、トライレイヤー用には前述の理由でk値が0.4以上の材料が用いられる。しかしながら、この場合珪素酸化膜の膜厚を20nm以下に薄膜化すると反射が増大する問題が生じる。
【0035】
また、ネガティブ現像によるレジストパターンは、微細化の進展に伴うレジスト膜厚の薄膜化や、エッチング耐性を向上させる環状の保護基が脱保護することによる膜厚のシュリンクの影響によって、エッチング耐性が極めて低い。このようなエッチング耐性が極めて低いレジストパターンを転写するために、レジスト膜直下の珪素酸化膜の薄膜化が検討されているが、トライレイヤーの場合、上述のように珪素酸化膜を薄膜化すると基板反射が増大するため、リソグラフィーのマージンが低下するという問題がある。
【0036】
本発明者らはこのような問題の解決策として、ペンタレイヤープロセスによるパターン形成に着目した。
ここで、図3−2に、レジスト膜の直下が珪素酸化膜(n値=1.6、k値=0.2)、その下が炭化水素膜(n値=1.5、k値=0.3)、その下がチタン酸化膜(n値=1.6、k値=0.7;膜厚30nm)、その下が下層膜(n値=1.4、k値=0.4;膜厚100nm)、基板がSiのペンタレイヤー用基板において炭化水素膜と珪素酸化膜の膜厚を変化させたときの基板反射率を示す。チタン酸化膜は、波長193nmにおける吸収が非常に大きく、チタン酸化膜上での反射が大きい。これはジルコニウム酸化膜、ハフニウム酸化膜においても同様である。図3−2から、ペンタレイヤーの場合は、珪素酸化膜の膜厚を20nm程度に薄膜化しても基板反射が1%以下になる領域が存在することがわかる。このことから、ペンタレイヤーであれば、反射率の低減と、珪素酸化膜の薄膜化を両立できることがわかる。
【0037】
更に、図3−3には上述のペンタレイヤー用基板において炭化水素膜のn値を高くした場合(n値=1.6、k値=0.3)、図3−4には上述のペンタレイヤー用基板において炭化水素膜のn値を更に高くした場合(n値=1.7、k値=0.3)の基板反射率を示す。図3−3、図3−4から、ペンタレイヤーにおいて炭化水素膜のn値を高くすると、珪素酸化膜を20nm以下に薄膜化しても基板反射を抑えることができる領域が、炭化水素膜の薄膜側に広がることがわかる。
【0038】
このことから、本発明者らは、下層膜によって基板の埋め込みと平坦化を行い、その上にチタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜、ハフニウム酸化膜から選ばれる金属酸化膜を設けると、金属酸化膜上で光は全反射するが、その上にコーティングする反射防止膜(炭化水素膜、珪素酸化膜)は下地が既に平坦であるため膜厚の変動によって反射率が変化することはなく、ピンポイントの最低反射の膜厚を選択することができることを見出した。また、特に炭化水素膜としてn値が高い材料を選択することによって、珪素酸化膜の膜厚を薄膜化することが可能であることを見出した。
【0039】
また、従来のトライレイヤープロセスによるパターン形成方法において、下層にアモルファスカーボン膜を形成し、その上にSiON等の反射防止膜を兼ねたハードマスクを形成した場合、SiONハードマスクは下層のアモルファスカーボン膜に対して優れたエッチング耐性を示し、アモルファスカーボン膜はその下の被加工基板に対して優れたドライエッチング耐性を示す。これはドライエッチング耐性の観点では強固な組み合わせである。しかしながら、アモルファスカーボン膜の成膜にはCVD法を用いるが、CVD法では被加工基板となる基板の凹凸を平坦にすることはできないため、基板面を平坦にするためにCMP法でアモルファスカーボン膜の表面を平坦に削る必要がある。即ち、CMPプロセスが付与されることによってプロセスコストが増大する問題が生じる。
【0040】
一方、平坦なカーボン膜表面を形成するにはスピンコートによる塗布が効果的である。この場合、塗布とベークの簡便なプロセスによって膜表面の平坦なカーボン膜を形成することができるために、スループットが高く低コストである。即ち、本発明において下層膜による基板の埋め込みと平坦化のためには、スピンコートによる下層膜の形成が効果的である。
【0041】
更に、上述のように下層膜の上に金属酸化膜を形成する際には、スピンコート法等でコーティングを行うが、スピンコート後、基板温度を250℃以上に上げること(ベーク)によって強固な金属酸化膜が形成される。従って、本発明において金属酸化膜の下地となる塗布型の下層膜としては、250℃以上の高耐熱性が必要である。本発明者らは、このような高耐熱性を有する下層膜材料として、特定のフルオレン構造を含む繰り返し単位を有する樹脂を用いることに想到し、本発明を完成させた。
【0042】
即ち、本発明は、基板上に多層膜を形成する方法であって、
(1)前記基板上に、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で示されるフルオレン構造を含む繰り返し単位を有する樹脂を含有する下層膜材料をコーティングし、熱処理して硬化させることで下層膜を形成する工程と、
(2)前記下層膜上に、チタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜、ハフニウム酸化膜から選ばれる金属酸化膜材料をコーティングし、金属酸化膜を形成する工程と、
(3)前記金属酸化膜上に、炭化水素膜材料をコーティングし、炭化水素膜を形成する工程と、
(4)前記炭化水素膜上に、珪素酸化膜材料をコーティングし、珪素酸化膜を形成する工程、
を含む多層膜形成方法である。
【化2】
(式中、Xはベンゼン環、ナフタレン環、又はカルバゾール環である。Rは水素原子、グリシジル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数2〜6のアルケニル基である。Rはそれぞれ独立に、単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基であり、エーテル基、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、グリシジルエーテル基から選ばれる1つ以上の基を有していてもよい。R、Rはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環であり、ベンゼン環、ナフタレン環中の水素原子は炭素数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよい。p、qはそれぞれ独立に0〜2の整数である。)
【0043】
以下、本発明の多層膜形成方法について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
<多層膜形成方法>
図1は本発明の多層膜形成方法の一例を示すフロー図である。図1の多層膜形成方法では、(1)基板1の上に成膜された被加工層2上に下層膜材料をコーティングし、熱処理して硬化させることで下層膜3を形成し、(2)下層膜3上に金属酸化膜材料をコーティングし、金属酸化膜4を形成し、(3)金属酸化膜4上に炭化水素膜材料をコーティングし、炭化水素膜5を形成し、(4)炭化水素膜5上に珪素酸化膜材料をコーティングし、珪素酸化膜6を形成することで、基板1(被加工層2)上に多層膜を形成する。
【0045】
以下、本発明の多層膜形成方法の各工程について更に詳しく説明する。
[(1)工程]
本発明の多層膜形成方法の(1)工程では、基板上に、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で示されるフルオレン構造を含む繰り返し単位を有する樹脂を含有する下層膜材料をコーティングし、熱処理して硬化させることで下層膜を形成する。
【0046】
(基板(被加工基板))
本発明の多層膜形成方法に用いられる基板(被加工基板)としては、基板上に被加工層が成膜されたものであることが好ましい。基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α−Si、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等からなるものであり、被加工層と異なる材質のものが好適に用いられる。被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜が好適に用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nm厚さに形成し得る。
【0047】
(下層膜)
本発明の多層膜形成方法に用いられる下層膜材料は、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で示されるフルオレン構造を含む繰り返し単位を有する樹脂を含有するものであり、このようなフルオレン構造を含む繰り返し単位を有する樹脂を含有することで、耐熱性やエッチング耐性に優れた下層膜を形成することができる。
【化3】
(式中、Xはベンゼン環、ナフタレン環、又はカルバゾール環である。Rは水素原子、グリシジル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数2〜6のアルケニル基である。Rはそれぞれ独立に、単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基であり、エーテル基、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、グリシジルエーテル基から選ばれる1つ以上の基を有していてもよい。R、Rはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環であり、ベンゼン環、ナフタレン環中の水素原子は炭素数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよい。p、qはそれぞれ独立に0〜2の整数である。)
【0048】
なお、下層膜材料としては、
(i)上記一般式(1)又は上記一般式(2)で示されるフルオレン構造を含む繰り返し単位を有する樹脂を必須成分とし、通常(ii)有機溶剤を含むものであるが、スピンコート特性、段差基板の埋め込み特性、膜の剛性や耐溶媒性を上げるために、必要に応じて
(iii)ブレンド用ポリマーやモノマー(上記(i)の樹脂以外のポリマー)、
(iv)架橋剤、
(v)酸発生剤、
等を添加してもよい。
【0049】
一般式(1)又は一般式(2)で示されるフルオレン構造を含む繰り返し単位を有する樹脂は、フルオレンフェノール、フルオレンナフトール、フルオレンカルバゾール等の構造を繰り返し単位中に含む。また、フルオレンビスフェノール、フルオレンビスナフトール等の構造を含む繰り返し単位、特にはフルオレンビスフェノール化合物、フルオレンビスナフトール化合物等をアルデヒド類存在下でノボラック化して得られる構造を含む繰り返し単位を有する樹脂を好適に用いることができる。また、一般式(2)のように、フルオレンを2つ有する構造を繰り返し単位に含むものとしてもよい。
一般式(1)又は一般式(2)で示されるフルオレン構造を含む繰り返し単位として、以下のものを例示できる。
【0050】
【化4】
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
(式中、R、Rは上記と同様であり、RはRと同様であり、RはRと同様であり、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10のアリール基であり、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、ラクトン環から選ばれる1つ以上の基を有していてもよい。)
【0053】
また、上記の繰り返し単位を有する樹脂に加えて、下記のフルオレン構造を有する化合物(モノマー)等を添加してもよい。
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
【化9】

(式中、R、R、R、Rは上記と同様である。)
【0056】
フルオレンビスフェノール、フルオレンビスナフトール等の構造は4級炭素のカルド構造を有し、これによって非常に高い耐熱性を有する。下層膜上に無機ハードマスク中間膜(金属酸化膜)を形成する場合、スピンコート後のベーク温度として最低250℃、好ましくは300℃、より好ましくは350℃以上の高温が必要であり、下層膜としてもそれに耐えうる高耐熱性が要求される。また、特にフルオレンビスナフトールはナフタレンによる長波長側への吸収シフトによって波長193nmにおける吸収が比較的小さく、多層プロセスとしたときに良好な反射防止効果が期待される。
【0057】
上記化合物のうち、R、RがHのフルオレンビスフェノールやフルオレンビスナフトールは、フェノールやナフトールと対応するフルオレノンを常法に従って反応させることによって得ることができ、R、Rがグリシジル基のものは、上記方法によって得られたフェノール基やナフトール化合物の水酸基を常法に従ってグリシジル化することによって得ることができる。
【0058】
本発明の多層膜形成方法に用いられる下層膜材料には、上述のようにフルオレンビスフェノール化合物、フルオレンビスナフトール化合物等のフルオレン構造を有する化合物をアルデヒド類存在下でノボラック化して得られる構造を含む繰り返し単位を有する樹脂を好適に用いることができる。ここで用いられるアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、1−ナフタアルデヒド、2−ナフタアルデヒド、フルフラール等を挙げることができる。
【0059】
これらのうち、特にホルムアルデヒドを好適に用いることができる。また、これらのアルデヒド類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記アルデヒド類の使用量は、フルオレン構造を有する化合物1モルに対して0.2〜5モルが好ましく、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0060】
フルオレン構造を有する化合物とアルデヒドの縮合反応に触媒を用いることもできる。具体的には塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を挙げることができる。
【0061】
これらの酸性触媒の使用量は、フルオレン構造を有する化合物1モルに対して1×10−5〜5×10−1モルである。スチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ヒドロキシビニルナフタレン、カルバゾール、ビニルカルバゾール、ビニルアントラセン、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどの非共役2重結合を有する化合物との共重合反応の場合は、必ずしもアルデヒド類は必要ない。
【0062】
重縮合における反応溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、又はこれらの混合溶媒を好適に用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0〜2,000質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0063】
反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができるが、通常10〜200℃の範囲である。
【0064】
重縮合の方法としては、フルオレン構造を有する化合物、アルデヒド類、触媒を一括で仕込む方法や、触媒存在下フルオレン構造を有する化合物、アルデヒド類を滴下していく方法がある。重縮合反応終了後、系内に存在する未反応原料、触媒等を除去するために、反応釜の温度を130〜230℃にまで上昇させ、1〜50mmHg程度で揮発分を除去することができる。
【0065】
一般式(1)又は一般式(2)で示されるフルオレン構造を有する樹脂を得るためのフルオレン構造を有する化合物(モノマー)は単独で重合してもよいが、他のフェノール類を共重合してもよい。共重合可能なフェノール類としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール等を挙げることができる。
【0066】
その他、共重合可能なモノマーとしては、具体的には1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、4−トリチルフェノール、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、ヒドロキシピレン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、キシレン、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどが挙げられ、これらのものを加えた3元以上の共重合体であっても構わない。
【0067】
また、芳香族化合物とアルデヒドとを反応させ、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、ハロメチル基等で置換された芳香族類と共縮合することもできる。ヒドロキシメチル基等のアルコールで置換された芳香族類は、具体的にはジメタノールベンゼン、トリメタノールベンゼン、ジメタノールトルエン、ジメタノールエチルベンゼン、ジメタノールプロピルベンゼン、ジメタノールブチルベンゼン、ジメタノールシクロヘキシルベンゼン、ジメタノールキシレン、ジメタノールメシチレン、ナフタレンジメタノール、ナフタレントリメタノール、メチルナフタレンジメタノール、エチルナフタレンジメタノール、プロピルナフタレンジメタノール、ブチルナフタレンジメタノール、ジメチルナフタレンジメタノール、アントラセンジメタノール、フェナントレンジメタノール、ピレンジメタノール、ペンタセンジメタノール、フルオレンジメタノール、フルオレンジメタノール、ビフェニルジメタノール、ビスナフタレンジメタノール、フルオランテンジメタノール、インデンジメタノール、アセナフチレンジメタノール、アセフェナントリレンジメタノール、アセアントリレンジメタノールが挙げられる。アルコキシメチル基で置換された芳香族類は、上記化合物のヒドロキシメチル基をアルコキシメチル基で置き換えた化合物、ハロメチル基で置換された芳香族類は、上記化合物のヒドロキシメチル基をハロメチル基で置き換えた化合物である。この場合、共縮合反応時にアルデヒドは必ずしも必要ではない。
【0068】
一般式(1)又は一般式(2)で示されるフルオレン構造を有する樹脂のポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量(Mw)が1,000〜30,000、特に2,000〜20,000であることが好ましい。分子量分布は1.2〜7の範囲内が好ましく用いられるが、モノマー成分、オリゴマー成分又は分子量(Mw)1,000以下の低分子量体をカットして分子量分布を狭くした方が架橋効率が高くなり、またベーク中の揮発成分を抑えることによりベークカップ周辺の汚染を防ぐことができるため、好ましい。
【0069】
一般式(1)又は一般式(2)で示されるフルオレン構造を有する樹脂は、他のポリマーとブレンドすることもできる。ブレンド用ポリマーとしては、一般式(1)又は一般式(2)で示されるフルオレン構造を有する樹脂と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つポリマーが好適である。具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアセタール、ポリビニルエーテル等の軟化点を低下させるようなポリマーが好適である。
【0070】
また、炭素密度が高くエッチング耐性の高い材料をブレンドしてもよい。このような材料としては、後述の炭化水素膜材料として挙げるものと同様のものを挙げることができる。
【0071】
上記ブレンド用ポリマーの配合量は、一般式(1)又は一般式(2)で示されるフルオレン構造を有する樹脂100質量部に対して、0〜1,000質量部、好ましくは0〜500質量部である。
また、本発明の多層膜形成方法に用いられる下層膜材料には、上述の一般式(1)又は一般式(2)で示されるフルオレン構造を有する樹脂の縮合に用いるモノマー成分を添加することもできる。モノマー成分の添加は光学定数を変えずに埋め込み特性を向上させるメリットがある。添加量は一般式(1)又は一般式(2)で示されるフルオレン構造を有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0〜1,000質量部、より好ましくは0〜500質量部であり、埋め込み特性を観察しながら適宜添加量を調整することができる。モノマー成分の添加量が多すぎるとベーク中にアウトガスとなってパーティクルが発生し、ベーク炉を汚染してしまうことがあるため、モノマー成分を添加する場合は埋め込み特性を確保できる最小限の添加量にとどめておくことが好ましい。
【0072】
従来、反射防止膜機能を含むレジスト下層膜に要求される性能の一つとして、レジスト下層膜の上に形成される、珪素を含有するレジスト中間層膜及びレジスト上層膜とのインターミキシングがないこと、レジスト上層膜及びレジスト中間層膜ヘの低分子成分の拡散がないことが挙げられる(Proc. SPIE Vol.2195、p225−229(1994))。これらを防止するために、一般的に反射防止膜のスピンコート後のベークで熱架橋するという方法が採られている。
そのため、本発明においても多層膜形成材料(下層膜材料、後述の金属酸化膜材料、後述の珪素酸化膜材料、後述の炭化水素膜材料等)の成分として架橋剤を添加する場合、材料となるポリマーに架橋性の置換基を導入してもよい。架橋剤を特に添加していない場合でも、一般式(1)又は一般式(2)で示されるフルオレン構造を有する樹脂を含有する下層膜材料は250℃以上で加熱することで硬化させることができる。また、特にフルオレン構造を有するノボラック樹脂の場合は、300℃以上で加熱することで後述の反応機構によって架橋させることができる。
【0073】
(添加剤)
本発明の多層膜形成方法に用いられる多層膜形成材料には、架橋剤を添加することができる。架橋剤としては、具体的には、特開2007−199653号公報の(0055)〜(0060)段落に記載されている材料を挙げることができる。
【0074】
また、本発明の多層膜形成方法に用いられる多層膜形成材料には、熱による架橋反応を更に促進させるための酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。酸発生剤としては、具体的には、特開2007−199653号公報の(0061)〜(0085)段落に記載されている材料を挙げることができる。
【0075】
更に、本発明の多層膜形成方法に用いられる多層膜形成材料には、保存安定性を向上させるための塩基性化合物を添加することができる。この塩基性化合物は、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、具体的には、特開2007−199653号公報の(0086)〜(0090)段落に記載されている材料を挙げることができる。
【0076】
また、本発明の多層膜形成方法に用いられる多層膜形成材料には、有機溶剤や水等の溶剤を添加することが好ましい。使用可能な有機溶剤としては、材料に用いるポリマー、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007−199653号公報の(0091)〜(0092)段落に記載されている溶剤を挙げることができる。
【0077】
また、本発明の多層膜形成方法に用いられる多層膜形成材料には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤としては、具体的には、特開2008−111103号公報の(0165)〜(0166)段落に記載されている材料を挙げることができる。
【0078】
本発明の多層膜形成方法に用いられる下層膜材料は、後述のフォトレジスト膜材料と同様にスピンコート法などで被加工基板上にコーティングする。スピンコート法を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。
【0079】
また、スピンコート後、溶媒を蒸発させて上層に形成される金属酸化膜とのミキシングを防止し、また架橋反応を促進させるためにベークを行う。ベーク時の温度としては、好ましくは250℃以上800℃以下、より好ましくは250℃以上700℃以下、更に好ましくは300℃以上700℃以下、特に好ましくは350℃以上600℃以下である。またベークの時間としては、好ましくは10〜4,000秒間、より好ましくは10〜3,000秒間、更に好ましくは10〜600秒間の範囲である。ベーク温度が250℃以上であれば下層膜材料を効率良く硬化させることができ、800℃以下であれば下層膜材料中の樹脂が分解する恐れがないため、好ましい。また、ベーク時間が10秒以上であれば下層膜材料を効率良く硬化させることができ、4,000秒以下であればスループットが悪化する恐れがないため、好ましい。また、下層膜上に金属酸化膜を形成するときの温度が250〜600℃の範囲であるため、上記のような熱処理条件でベークを行うことで、金属酸化膜形成時に下層膜からアウトガスが発生するのを防ぐこともできる。また、超高温のベークを下層膜に行うことによって、その下の被加工基板をドライエッチング加工するときのエッチング耐性を高めることもできる。
【0080】
ノボラック樹脂は、加熱によってフェノキシラジカルが生じ、ノボラック結合のメチレン基が活性化されてメチレン基同士が結合し架橋する。この反応はラジカル的反応なので、脱離する分子が生じないために耐熱性が高い材料であれば架橋による膜収縮は起こらない。ベーク中に酸素が存在すると、酸化カップリングによる架橋も進行する。酸化カップリング架橋を進行させるためには、大気中のベークを行う。
【0081】
ベークはホットプレート上で行うこともできるが、ファーネス中で行ってもよい。ファーネスを使うと一度に大量のウェハーを処理できるのでスループットを稼ぐことができる。
ベークは大気中で行ってもよいし、窒素やヘリウム、アルゴンガス等の不活性ガス中で行ってもよく、不活性ガス中でベークを行った方が膜の収縮量が少なくて済む。また、不活性ガス中でベークを行うことで酸化を防止することができるため、吸収が増大したりエッチング耐性が低下したりすることを防ぐことができる。不活性ガス中のベークは、架橋後のベークで行うことが好ましい。また、酸化を防止するためには酸素濃度をコントロールすることが好ましく、不活性ガス中の酸素濃度としては好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
【0082】
下層膜材料の塗布後に架橋のためのベークを行い、その後に金属酸化膜形成前のベーク(高温ベーク)を行うこともできる。架橋反応として上述の酸化カップリング反応を用いる場合は、塗布後にまず大気中で架橋のためのベークを行い、その後に不活性ガス中で高温ベークを行うのが好ましい。
【0083】
また、従来、被加工基板のドライエッチングにフロロカーボン系ガスを用いた場合、ドライエッチング後の下層膜のラインが曲がる現象が起きることがある。このラインの曲がりは、ドライエッチング中に下層膜がフッ素化されて体積が増大することによって発生すると考えられている。これに対し、本発明のように高温ベークした下層膜であれば、緻密で剛直な下層膜となるため、このようなドライエッチング後の下層膜のラインの曲がりが生じにくいというメリットもある。
【0084】
なお、下層膜の厚さは適宜選定されるが、30〜20,000nmとすることが好ましく、より好ましくは50〜15,000nm、更に好ましくは80〜10,000nmである。
【0085】
[(2)工程]
本発明の多層膜形成方法の(2)工程では、上述のようにして形成した下層膜上に、チタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜、ハフニウム酸化膜から選ばれる金属酸化膜材料をコーティングし、金属酸化膜を形成する。
【0086】
(金属酸化膜)
金属酸化膜の形成は、スピンコート法で行うことが好ましい。スピンコート後、基板温度を例えば250℃以上に上げることによって強固なチタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜、ハフニウム酸化膜を形成することができる。
【0087】
チタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜、ハフニウム酸化膜から選ばれる金属酸化膜材料としては、例えば特開2014−134581号公報に記載の材料及び製造方法を好適に用いることができる。この製造方法では、チタン、ジルコニウム、ハフニウムのアルコキシドの加水分解縮合物を用い、嵩高い芳香族系の配位子によって安定化させた化合物を用いる。芳香族系の配位子以外には嵩高いジオール化合物やアミノアルコールを配位させて安定化させた化合物を用いることもできる。このような材料では、コート後のベークによって配位子が外れて金属酸化膜が形成される。
【0088】
金属酸化膜の膜厚としては、3〜100nmとすることが好ましく、より好ましくは5〜50nmである。チタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜、ハフニウム酸化膜から選ばれる金属酸化膜(ハードマスク)はドライエッチング耐性に優れるので薄膜で構わない。
【0089】
金属酸化膜の上には、通常のトライレイヤー用の炭化水素膜を形成し(工程(3))、その上に珪素酸化膜を形成し(工程(4))、その上にフォトレジスト膜を形成する(後述のパターン形成方法の工程(A))。露光光は金属酸化膜上で反射し、その下の下層膜には届かない。金属酸化膜の上の炭化水素膜と珪素酸化膜の2層を反射防止膜として位相と吸収を制御することによって反射を抑えることが可能になる。炭化水素膜の屈折率のn値がフォトレジスト膜のn値に近い値であれば、珪素酸化膜の膜厚を20nm以下とした場合でも基板反射を1%以下にすることができる。上述のように、基板反射率の低減と珪素酸化膜の薄膜化の両立は本発明の目的の一つであり、従ってフォトレジスト膜直下の珪素酸化膜の膜厚を20nm以下の薄膜にするために、珪素酸化膜下の炭化水素膜のn値が高い材料を選択することは重要である。
【0090】
[(3)工程]
本発明の多層膜形成方法の(3)工程では、上述のようにして形成した金属酸化膜上に、炭化水素膜材料をコーティングし、炭化水素膜を形成する。
【0091】
(炭化水素膜)
本発明の多層膜形成方法に用いられる炭化水素膜材料としては、炭素密度が高くエッチング耐性の高い材料が選ばれる。このような材料としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5’−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどのノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート、及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0092】
また、特開2004−205658号公報記載のノルトリシクレン共重合体、同2004−205676号公報記載の水素添加ナフトールノボラック樹脂、同2004−205685号公報記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、同2004−354554号公報、同2005−10431号公報記載のフェノールジシクロペンタジエン共重合体、同2005−128509号公報記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、同2005−250434号公報記載のアセナフチレン共重合、同2006−53543号公報記載のインデン共重合体、同2006−227391号公報記載のフェノール基を有するフラーレン、同2006−259249号公報、同2006−293298号公報、同2007−316282号公報記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、同2006−259482号公報記載のジビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、同2006−285095号公報記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、同2007−171895号公報記載のヒドロキシビニルナフタレン共重合体、同2007−199653号公報記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、同2008−26600号公報記載のROMP、同2008−96684号公報記載のトリシクロペンタジエン共重合物等の樹脂化合物をブレンドすることもできる。
【0093】
これらの材料の中でn値が高い材料は、芳香族基の含有率が低くて脂環族基の割合が高い材料である。例えばノボラック系材料よりも、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、アセナフチレン、アダマンタン、ROMP、ノルトリシクレン系を含有する樹脂が好適である。これらの材料はn値が高いので、その上の珪素酸化膜の膜厚を20nm以下に薄膜化しても、基板反射率を1%以下に抑えることができる。
【0094】
本発明の多層膜形成方法において、炭化水素膜の形成はスピンコート法で行うことが好ましい。また、炭化水素膜の膜厚としては、5〜100nmとすることが好ましく、より好ましくは10〜80nmである。
【0095】
[(4)工程]
本発明の多層膜形成方法の(4)工程では、上述のようにして形成した炭化水素膜上に、珪素酸化膜材料をコーティングし、珪素酸化膜を形成する。
【0096】
(珪素酸化膜)
本発明の多層膜形成方法に用いられる珪素酸化膜材料としては、特開2007−302873号公報に示される露光波長に吸収を有するシルセスキオキサン系の材料を挙げることができる。
本発明の多層膜形成方法において、珪素酸化膜の形成はスピンコート法で行うことが好ましい。また、珪素酸化膜の膜厚としては、10〜20nmとすることが好ましい。
【0097】
以上説明したような(1)〜(4)工程を含む方法によって、基板上に、下層膜、金属酸化膜、炭化水素膜、珪素酸化膜の順で積層された多層膜を形成することができる。
このような多層膜形成方法であれば、リソグラフィーにおいてレジスト下層膜として好適に用いることができ、反射防止膜としての最適なn値、k値と埋め込み特性、優れたエッチング耐性を有する多層膜を形成することができる。
また、スピンコート法で全ての膜を形成することで、スパッタリングやCVDで膜を形成する方法に比べてコストを低減することができる。
【0098】
<パターン形成方法>
本発明では、上述のようにして形成された多層膜を用いたパターン形成方法であって、
(A)上述の多層膜形成方法によって基板上に形成された多層膜上に、フォトレジスト膜を形成する工程と、
(B)前記フォトレジスト膜に対して露光及び現像を行ってフォトレジストパターンを形成する工程と、
(C)前記フォトレジストパターンをマスクにしてドライエッチングを行い、前記珪素酸化膜にパターンを転写する工程と、
(D)前記パターンが転写された珪素酸化膜をマスクにしてドライエッチングを行い、前記炭化水素膜にパターンを転写する工程と、
(E)前記パターンが転写された炭化水素膜をマスクにしてドライエッチングを行い、前記金属酸化膜にパターンを転写する工程と、
(F)前記パターンが転写された金属酸化膜をマスクにしてドライエッチングを行い、前記下層膜にパターンを転写する工程、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0099】
以下、本発明のパターン形成方法の一例(ペンタレイヤー(5層)プロセス)について、図2を参照しながら説明するが、本発明のパターン形成方法はこれに限定されるものではない。
【0100】
図2のパターン形成方法では、まず(A)工程として、上述の多層膜形成方法によって基板上に形成された多層膜(最上層の珪素酸化膜6)上に、フォトレジスト膜7を形成する(図2(A))。
【0101】
フォトレジスト膜7としては、ポジ型、ネガ型のどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。また、フォトレジスト組成物により単層のフォトレジスト膜を形成する場合、上述の下層膜等を形成する場合と同様に、スピンコート法が好ましく用いられる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、60〜180℃で10〜300秒の条件でプリベークを行うことが好ましい。なお、フォトレジスト膜の厚さは特に制限されないが、30〜500nmとすることが好ましく、特に50〜400nmが好ましい。
【0102】
次に(B)工程として、フォトレジスト膜7の所用部分(露光部分8)を露光し(図2(B−1))、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行った後、現像を行ってフォトレジストパターンを形成する(図2(B−2))。ポジパターンの場合は図2のように露光部分8が現像液に溶解し、ネガパターンの場合は未露光部分が現像液に溶解する。
【0103】
また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fレーザー光(157nm)、Krレーザー光(146nm)、Arレーザー光(126nm)、3〜20nmの軟X線(EUV(波長13.5nm)等)、電子線(EB)、X線等を挙げることができる。
【0104】
次に(C)工程として、フォトレジストパターンをマスクにしてドライエッチングを行い、珪素酸化膜6にパターンを転写する(図2(C))。
(C)工程に用いられるエッチングガスとしては、フロン系のガスが好適である。
【0105】
次に(D)工程として、パターンが転写された珪素酸化膜6をマスクにしてドライエッチングを行い、炭化水素膜5にパターンを転写する(図2(D))。
(D)工程に用いられるエッチングガスとしては、酸素ガス、水素ガス、アンモニアガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化硫黄ガスから選ばれる1種以上のガスが好適である。
また、(D)工程のドライエッチングは、酸素プラズマエッチングであってもよい。
【0106】
次に(E)工程として、パターンが転写された炭化水素膜5をマスクにしてドライエッチングを行い、金属酸化膜4にパターンを転写する(図2(E))。
(E)工程に用いられるエッチングガスとしては、臭素や塩素を含むガスが好適である。
【0107】
次に(F)工程として、パターンが転写された金属酸化膜4をマスクにしてドライエッチングを行い、下層膜3にパターンを転写する(図2(F))。
(F)工程に用いられるエッチングガスとしては、酸素ガス、水素ガス、アンモニアガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化硫黄ガスから選ばれる1種以上のガスが好適である。
【0108】
更に(G)工程として、パターンが転写された金属酸化膜4とパターンが転写された下層膜3をマスクにしてドライエッチングを行い、基板1の被加工層2にパターンを転写してもよい(図2(G))。
(G)工程に用いられるエッチングガスとしては、被加工層2がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチングガスが好適であり、被加工層2がp−Si、Al、Wであれば塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングガスが好適である。
なお、本発明において、金属酸化膜4と下層膜3は、上述の被加工層2のエッチングガスに対して耐性を有するものである。
【0109】
以上説明したような本発明のパターン形成方法であれば、反射防止膜としての最適なn値、k値と埋め込み特性、優れたエッチング耐性を有する多層膜とフォトレジスト膜で5層(ペンタレイヤー)プロセスによってパターンを形成するため、特にドライエッチング耐性が脆弱かつ薄膜な有機溶剤現像のネガティブトーンレジストパターンであっても高精度で転写することが可能となる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、ポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を示している。
【0111】
下層膜材料に用いた下層膜ポリマー1〜8、下層膜ブレンド用モノマー1、2を以下に示す。
下層膜ポリマー1 Mw=3,500、Mw/Mn=4.50
【化10】
【0112】
下層膜ポリマー2 Mw=3,100、Mw/Mn=4.80
【化11】
【0113】
下層膜ポリマー3 Mw=2,600、Mw/Mn=5.10
【化12】
【0114】
下層膜ポリマー4 Mw=3,600、Mw/Mn=4.80
【化13】
【0115】
下層膜ポリマー5 Mw=3,200、Mw/Mn=5.40
【化14】
【0116】
下層膜ポリマー6 Mw=6,200、Mw/Mn=6.40
【化15】
【0117】
下層膜ポリマー7 Mw=6,500、Mw/Mn=5.20
【化16】
【0118】
下層膜ポリマー8 Mw=3,200、Mw/Mn=5.40
【化17】
【0119】
下層膜ブレンド用モノマー1、2
【化18】
【0120】
金属酸化膜材料に用いたチタン酸化膜ポリマー1、2、ジルコニウム酸化膜ポリマー1、ハフニウム酸化膜ポリマー1を以下に示す。
チタン酸化膜ポリマー1 Mw=1,200、Mw/Mn=1.80
【化19】
【0121】
チタン酸化膜ポリマー2 Mw=1,200、Mw/Mn=1.90
【化20】
【0122】
ジルコニウム酸化膜ポリマー1 Mw=1,500、Mw/Mn=1.90
【化21】
【0123】
ハフニウム酸化膜ポリマー1 Mw=1,100、Mw/Mn=1.90
【化22】
【0124】
炭化水素膜材料に用いた炭化水素膜ポリマー1〜4を以下に示す。なお、比較例では、炭化水素膜ポリマー1と炭化水素膜ポリマー3を下層膜材料に用いた。
炭化水素膜ポリマー1(比較下層膜ポリマー1) Mw=6,900、Mw/Mn=1.88
【化23】
【0125】
炭化水素膜ポリマー2 Mw=7,200、Mw/Mn=1.79
【化24】
【0126】
炭化水素膜ポリマー3(比較下層膜ポリマー2) Mw=890、Mw/Mn=3.53
【化25】
【0127】
炭化水素膜ポリマー4 Mw=9,900、Mw/Mn=1.23
【化26】
【0128】
珪素酸化膜材料に用いた珪素酸化膜ポリマー1を以下に示す。
【化27】
【0129】
下層膜材料、炭化水素膜材料、珪素酸化膜材料に用いた酸発生剤AG1、AG2、架橋剤CR1を以下に示す。
【化28】
【0130】
フォトレジスト膜材料に用いたArFレジストポリマー1、酸発生剤PAG1、Quencher、撥水性ポリマー1を以下に示す。
【化29】
【0131】
また、下層膜材料、金属酸化膜材料、炭化水素膜材料、珪素酸化膜材料、フォトレジスト膜材料に用いた溶媒を以下に示す。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
Cyclohexanone:シクロヘキサノン

PGEE:プロピレングリコールモノエチルエーテル
GBL:γ−ブチロラクトン
【0132】
下層膜材料(UDL−1〜10、比較例UDL−1)の調製
上記下層膜ポリマー1〜8、比較下層膜ポリマー1、2(炭化水素膜ポリマー1、3)で示される樹脂、下層膜ブレンド用モノマー1、2、酸発生剤AG1、架橋剤CR1を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表1に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって下層膜材料(UDL−1〜10、比較例UDL−1)を調製した。
【0133】
【表1】
【0134】
金属酸化膜材料(MHL−1〜4)の調製
上記チタン酸化膜ポリマー1、2、ジルコニウム酸化膜ポリマー1、ハフニウム酸化膜ポリマー1で示される樹脂を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表2に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって金属酸化膜材料(MHL−1〜4)を調製した。
【0135】
【表2】
【0136】
炭化水素膜材料(HCL−1〜3)の調製
上記炭化水素膜ポリマー1〜4で示される樹脂、酸発生剤AG1、架橋剤CR1を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表3に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって炭化水素膜材料(HCL−1〜3)を調製した。
【0137】
【表3】
【0138】
珪素酸化膜材料(SOG−1)の調製
上記珪素酸化膜ポリマー1で示される樹脂、酸発生剤AG2を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表4に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって珪素酸化膜材料(SOG−1)を調製した。
【0139】
【表4】
【0140】
フォトレジスト膜材料(ArFレジスト1)の調製
上記ArFレジストポリマー1で示される樹脂、酸発生剤PAG1、Quencher、撥水性ポリマー1を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表5に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってフォトレジスト膜材料(ArFレジスト1)を調製した。
【0141】
【表5】
【0142】
下層膜の屈折率と高温ベーク前後の膜厚測定
上記下層膜材料(UDL−1〜10、比較UDL−1)をシリコン基板(ウェハー)上に塗布して、200℃で60秒間ベークしてそれぞれ膜厚100nmの下層膜を形成し、入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE;J.A.ウーラム社製)で波長193nmにおける各下層膜の屈折率(n値、k値)と200℃ベーク後の膜厚aを求めた。次いで、UDL−1〜8、比較UDL−1では、ウェハーをホットプレート上350℃で1分間ベークし、350℃ベーク後の膜厚bを測定し、350℃ベーク前後の膜厚の比率を求めた。UDL−9、10では、窒素を封入して酸素濃度を10ppm以下に調整したファーネス中にウェハーを入れ、450℃で30分間ベークし、450℃ベーク後の膜厚bを測定し、450℃ベーク前後の膜厚の比率を求めた。結果を表6、7に示す。
【0143】
【表6】
【0144】
【表7】
【0145】
金属酸化膜、炭化水素膜、珪素酸化膜の屈折率測定
上記金属酸化膜材料(MHL−1〜4)、炭化水素膜材料(HCL−1〜3)、珪素酸化膜材料(SOG−1)をシリコン基板上に塗布して、金属酸化膜材料は350℃で60秒間ベーク、それ以外は200℃で60秒間ベークして、金属酸化膜は膜厚20nm、炭化水素膜は膜厚40nm、珪素酸化膜は膜厚20nmの膜を形成し、入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE;J.A.ウーラム社製)で波長193nmにおける各膜の屈折率(n値、k値)を求めた。結果を表8に示す。
【0146】
【表8】
【0147】
パターンエッチング試験
[多層膜の形成]
(実施例1〜15、比較例1)
膜厚200nmのSiO膜(被加工層)が形成された直径300mmのSiウェハー基板上に、表1に記載の下層膜材料(UDL−1〜8、比較UDL−1)をスピンコートにより塗布して、350℃で60秒間ベークし、膜厚100nmの下層膜を形成した(実施例1〜13、比較例1)。同様にして、膜厚200nmのSiO膜(被加工層)が形成された直径300mmのSiウェハー基板上に、表1に記載の下層膜材料(UDL−9、10)をスピンコートにより塗布して、350℃で60秒間ベークし、その後窒素を封入して酸素濃度を10ppm以下に調整したファーネス中にウェハーを入れ、450℃で30分間ベークし膜厚100nmの下層膜を形成した(実施例14、15)。
【0148】
次に、上述のようにして下層膜を形成した基板に対して、表2に記載の金属酸化膜材料(MHL−1〜4)をスピンコートにより塗布して、350℃で60秒間ベークし、膜厚20nmの金属酸化膜を形成した。次いで、その上に表3に記載の炭化水素膜材料(HCL−1〜3)をスピンコートにより塗布して、220℃で60秒間ベークし、膜厚40nmの炭化水素膜を形成した。更に、その上に表4に記載の珪素酸化膜材料(SOG−1)をスピンコートにより塗布して、200℃で60秒間ベークし、膜厚20nmの珪素酸化膜を形成し、多層膜(4層)とした。
【0149】
(比較例2)
膜厚200nmのSiO膜(被加工層)が形成された直径300mmのSiウェハー基板上に、表1に記載の下層膜材料(UDL−1)をスピンコートにより塗布して、350℃で60秒間ベークし、膜厚100nmの下層膜を形成した。比較例2では、金属酸化膜及び炭化水素膜を形成せずに、下層膜の上に珪素酸化膜材料(SOG−1)をスピンコートにより塗布して、200℃で60秒間ベークし、膜厚20nmの珪素酸化膜を形成し、多層膜(2層)とした。
【0150】
[パターン形成]
上述のようにして多層膜を形成した実施例1〜15、比較例1〜2の基板上に、表5に記載のArFレジストをスピンコートにより塗布して、100℃で60秒間ベークし、膜厚70nmのフォトレジスト膜を形成した。これにより、実施例1〜15及び比較例1はペンタレイヤー(5層)、比較例2はトライレイヤー(3層)の構造を形成した。
【0151】
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(NSR−610C;(株)ニコン製、NA=1.30、σ=0.98/0.78、ダイポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて、露光量を変化させながら露光を行い、露光後80℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、純水でリンス後スピンドライして、40nmのラインアンドスペースパターンを形成した。
【0152】
次いで、(a)上述のようにして形成したレジストパターンをマスクにしてドライエッチングを行い珪素酸化膜にパターンを転写し、(b)得られた珪素酸化膜パターンをマスクにしてドライエッチングを行い炭化水素膜にパターンを転写し、(c)得られた炭化水素膜パターンをマスクにしてドライエッチングを行い金属酸化膜にパターンを転写し、(d)得られた金属酸化膜パターンをマスクにしてドライエッチングを行い下層膜にパターンを転写し、(e)金属酸化膜パターンと、得られた下層膜パターンをマスクにしてドライエッチングを行いSiO膜にパターンを転写することで、被加工層を加工した。
【0153】
エッチング条件は下記に示す通りである。
(a)レジストパターンの珪素酸化膜への転写(エッチング)条件
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CFガス流量 75ml/min
ガス流量 15ml/min
時間 12sec
(b)珪素酸化膜パターンの炭化水素膜への転写(エッチング)条件
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75ml/min
ガス流量 45ml/min
時間 30sec
(c)炭化水素膜パターンの金属酸化膜への転写(エッチング)条件
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 300W
Clガス流量 30ml/min
BClガス流量 30ml/min
CHFガス流量 100ml/min
ガス流量 2ml/min
時間 30sec
(d)金属酸化膜パターンの下層膜への転写(エッチング)条件
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75ml/min
ガス流量 45ml/min
時間 100sec
(e)金属酸化膜・下層膜パターンのSiO膜への転写(エッチング)条件
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
12ガス流量 20ml/min
ガス流量 10ml/min
Arガス流量 300ml/min
ガス流量 60ml/min
時間 90sec
【0154】
なお、比較例2では、上記(a)の条件でレジストパターンの珪素酸化膜への転写を行った後、上記(d)の条件で珪素酸化膜パターンの下層膜への転写を行い、(e)の条件で下層膜パターンのSiO膜への転写を行い、被加工層を加工した。
【0155】
上述のようにして被加工層を加工した実施例1〜15、比較例1〜2の基板のパターン断面を電子顕微鏡(S−4700;(株)日立製作所製)にて観察し、形状を比較した。結果を表9に示す。
【0156】
【表9】
【0157】
表9に示されるように、本発明の多層膜形成方法によって形成された多層膜をレジスト下層膜として用いたペンタレイヤープロセスによってパターンを形成した実施例1〜15では、断面形状が矩形のパターンを得ることができた。
実施例1〜15では、表6、7に示されるように350℃又は450℃の高温でベークしても膜減りが少ない下層膜上に、チタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜、ハフニウム酸化膜のような金属酸化膜を形成し、その上に表8に示されるような屈折率(反射防止効果)を有する炭化水素膜、珪素酸化膜を形成する。これにより、金属酸化膜上で光が全反射するために、その上の炭化水素膜と珪素酸化膜の2層の反射防止膜によって基板反射を低減でき、またレジスト直下の珪素酸化膜の膜厚を薄くしても基板反射を抑えることができるために、レジストパターンをスムーズに珪素酸化膜へドライエッチング転写できる。金属酸化膜の優れたドライエッチング耐性によって、下地の被加工基板をドライエッチングした後の形状が良好となる。
【0158】
一方、下層膜材料として比較UDL−1を用いた比較例1では、表9に示されるように、パターンの断面形状がテーパーであった。また、金属酸化膜及び炭化水素膜を形成しなかった(トライレイヤープロセスの)比較例2では、表9に示されるように、パターン倒れが発生していた。
【0159】
以上のことから、本発明の多層膜形成方法によって形成された多層膜を用いてペンタレイヤープロセスでパターンの形成を行えば、従来のトライレイヤープロセスよりも反射防止効果に優れ、かつドライエッチングの選択性にも優れるため、形状が良好なパターンを形成することができる。
【0160】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0161】
1…基板、 2…被加工層、 3…下層膜、 4…金属酸化膜、 5…炭化水素膜、
6…珪素酸化膜、 7…フォトレジスト膜、 8…露光部分。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】